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第24話「スキルを合わせて、いっくにゃ~!」

 ぼたん鍋を食べてお腹いっぱいだ。


 このままリルの尻尾にくるまれて眠りたいところだ。

 だけど、腹ごなしに新スキルのお試しをしようと思う。


 ぼたん鍋を食べてるときにゲットしてたんだよね。


「クルルゥ(すぐ戻るからね)」


 リルに断りを入れる。


「あっ! シュン、おトイレだね。怖くない? ついてってあげようか?」


 リルに何やら勘違いされてる……。


「ルニャン!(スキルのお試しだからね!)」


 ついでに用を足すかもしれないけど。

 あくまでついで、ついで……。





 林の中を進んでいく。

 スキルの効果が分からないから、とりあえず野営地からは離れよう。


 巨大イノシシを食べて手に入ったスキルは“猛進”だった。


 とりあえず自己鑑定で詳しく鑑定したところ、「体力と魔力を合わせた力で突き進む」だった。


 その説明を見て嫌な予感がした。

 

 この前の“飛行”での失敗は記憶に新しい。

 巨大イノシシの体力と魔力はどれくらいだったのだろうか。

 間違いなく俺の体力と魔力の合計値の方が高いはず。

 

 そんなわけで近くに人がいないところで試してみようと思う。


 林の中を進んでいると、嫌な感じの気配を感じた。

 位置的には隊長っぽいオークがいたところだ。


 様子を見に行ってみよう。


 近づくにつれて気配が色濃くなっていく。

 討伐軍の人が数人いて、そこに何かが近づいてる……?


 ちょっと急ごう。


 あと少しで到着するというところで、正面から猫が飛び出してきた。


「ニャッ!(あ! ボス!!)」


「クルル?(ボス?)」


 猫がこっちに向かって呼びかけてきた。

 つい反射的に後ろを振り返ったけど、もちろん誰もいない。


「ニャー(この前街で会った時に、元ボスの近くにいたうちの一匹っす)」 


 目の前の猫が身ぶり手ぶりで伝えようとしてくれる。


「クルゥ……(街で会った猫といえば、あの愉快な仲間たちしか……)」


 あれは怖かった……。


 キャサリンには身の危険を感じたよ。

 あれは危険度Aランクだった。

 俺の中では無かったことにしてた。


「ニャー(何すか……、ゆかいなって……。それよりボスを探してたっす! ボスが街の外に向かったのを見たやつがいたっす)」


「ルニャ?(ボスって? キャサリンがボスって呼ばれてたじゃん??)」


「ニャ、ニャー(キャサリンって? とりあえず、元ボスからの命令でボスが今のボスっす!)」


 あーそういえば、キャサリンって俺が勝手に呼んでるだけだった。

 キャサリンが俺のことを勝手に新しいボスと言ってるってこと? 


「クルニャー(俺はボスじゃないし、今ちょっと急いでるんだよ!)」


 ややこしいことになりそうなので逃げだすことにした。

 それにやばい気配があるから、急がないといけないのは本当だしね。


「ニャー(そういえば人の集まりに、強そうな気配が近づいてたっす)」


「クルル?(ところで君は何してたの?)」


「ニャー(ボスを探しに来たっす。ボスが倒したやつらからボスの匂いが少ししてたから、周囲の様子を見てたっす)」


 街の外に出たと知って、ここまで探しにきたってことか。

 それって実は結構すごいんじゃない?


 それより……、


 何? 俺って臭うの??

 ちょっとショックなんだけど……。


 今はショック受けてる場合じゃなかった。


「クルルゥ……(そしたら、人が集まって来たと……)」


 軍の人たちは、野営地の周囲を警戒しててオークの死体を発見したんだろう。


「ニニャー(そうっす。あ、なんかむかつく奴がいたからスプレーしてやったっす)」


 猫の言うスプレーって……。


「クルニャ?(そいつに向かっておしっこかけたってこと?)」


「ニャー(そうっす! 『愛にはモフで応え、悪にはひっかけろ!』っていう言葉が俺らにはあるっす)」


 何そのスローガン……。

 その「ひっかけろ」て元々の意味は「砂をひっかけろ」だったんじゃないのかな。


「クルニャ(分かったよ……。街に戻ったらキャサ……元ボス?に会いに行くよ)」


 全く気が乗らないけど……。

 行く先々を追い回されたら、落ち着かないからね。

 とりあえず先送り。


「ニャーン(了解っす! じゃあ街で待ってるっすね!)」


「クルニャ(おう、またな。)」


 俺は気を取り直して、嫌な気配がするところに向かった。





 とりあえず飛び出してみたものの……。


「クルルゥ?(オークジェネラルかな?)」


 目の前には、今までのオークとは一線を画する存在。

 一目でオークの上位種と理解(わか)った。


 背後では、騎士団長のおっさんが険しい顔をしている。


 少し離れたところには、ヴァレミーだっけ?攻撃を食らったらしく満身創痍だ。

 そこはかとなくヴァレミーの方から漂う臭いで、さっきの猫の言葉を理解した。


 この雰囲気なら、戦いの邪魔をしたとか言われないだろう。

 目前の敵に集中しよう。


「シュン……か?」


「クルニャーン!(こいつは任せて!)」


 名前を呼ばれて少し驚いた。

 見た目は猫だし、リルの従魔っていうのが皆の認識だと思ってた。


 オークジェネラルは俺が倒すよ!


「グゥ! グガァァァアアア!!」


 オークジェネラルが大剣を振り下ろしてきた。


 なかなかの威力だけど、そんなの当たらないよ。


 かわしざまに攻撃を加える。


「クルニャ!(くらえ風刃!)」


 猫パンチ連打の要領で風刃を連発した。


 風刃の斬撃がオークジェネラルに吸い込まれる。


「クルル(やったか!)」


 ところが、オークジェネラルの体を揺らしただけで、あまり効いてる感じがしない。

 硬いなこいつ……。


「グゴゴガァァァ!!」


 俺の攻撃にいらついたのか、オークジェネラルは連続で剣を振ってくる。


 隊長っぽかったオークよりは、確かに強い……。


 けど……、以前戦ったことのあるドラゴンの爪撃に比べたら、威力もスピードも遥かに劣っている。


 オークジェネラルの連撃が終わったところで、間合いが開いた。


 さて、そろそろ決着をつけようか。


 俺は竜鱗の右手を構える。


 その時、オークジェネラルが大きく咆哮した。


「グゥゥゥ……ゴァァアア!!」


 なっ!? これは!?


 毒のあるものを食べた時に近い感覚。

 状態異常の耐性を持っているのに、その状態異常の攻撃を受けた感じだ。


 俺の二つの耐性が反応している! 


 この咆哮は、精神攻撃と混乱攻撃が付加されているようだ。


 精神攻撃は完全に抵抗(レジスト)できた。


「クルルゥ……(ミーナさん、ありがとう……)」


 ふとミーナさんの顔と……、あの料理が浮かびそうになったけど……、頭を振って料理の方は振り払った。


 混乱攻撃は完全にレジストできていないようで、少し頭が混乱している。

 多分、自己鑑定したら“混乱(小)”とかがついてると思う。

 酔っぱらっている感覚に近いだろうか。


 なんとか戦えなくもない、といった感じだ。

 まあ酔拳とかあるしね……。


 いけるいける! 凄くイケる気がしてきたにゃ~!

 な~んか気持ちよくなってきたもんね~!


「クルクルニャ~(そ、そうだ! そういえばスキルのお試しをしようと思ってたんだった!)」


 ぶっつけ本番は危ない? そんなわけないにゃ~!。


「クルクルクルン……(右腕をオークジェネラルに向けて……)」


 ちょっと目が回ってる気もするけど、気にしない気にしない!


 さ~て、“猛進”いってみようか~!

 あ、いいこと思いついたにゃ~!!


 “猛進”と同時に“飛行”も使っちゃうもんね~。


 さらにさらにさらに~! “風刃”も使っちゃおうかな~!


 ――この時の俺はどうかしていたと思う――



 “猛進”と“飛行”と“風刃”の同時発動。


 いっくにゃ~~~!!


「クルクルニャー!!!(――空竜猛進(ボルテックスチャージ)!!)」


 ………………

 …………

 ……


 自分の体が爆発したかと思った……。


 オークジェネラルの上半身を突き抜け、さらにその先にあった大木の上部をくり抜き……。


 俺は空高くに打ち上げられた……。

 

 今いる場所は、少なくとも高度200メートル以上はあると思う。

 あー、街が小さく見えるなあ。


 一気に酔いがさめるとは、正にこのことだろう。


 どうやらスキルを同時発動したことで、スキル合成的なことが起こったのだろう……。

 

 猫ミサイルとなり、すさまじい勢いでぶっ飛んだ。

 一瞬の間に、こんなはるか上空に打ち上げられるとは……。


「クルナー……(スキルが合成できることを初めて知ったよ……)」


 混乱した勢いで気づいたのは、なんかアレだけど……。

 これは、可能性が無限にふくらむのではなかろうか。


 ちょっと前向きに考えてみる。


 もしかしたらあの夢の合成魔法、『メド〇ーア』だって使えるようになるかもしれない!


 


 ……実はそんなふうに夢を膨らませていたのは現実逃避のためだ。


 俺は今、高度200メートルから落下中だ。


 落ちる速度もグングン上昇していく。


 凄い勢いで近づいてくる地面。


「クルニャー……(いくら猫が高いところからの着地が上手いからって……)」


 限度ってものがあると思う。


 この高さでも大きな怪我をしない自信はあるけど……。

 落下が怖くないかどうかは別だと思う……。


 でもとりあえず、オークジェネラルを倒せたっぽいしよしとするか。

 結構強かったなあ……。


 オークキングはどれくらいの強さなのだろうか……。


 ボルテックスチャージはオークキングに効くかな……?


 落下しながらも俺は…………、


空竜猛進(ボルテックスチャージ)”をまた使って、もう一度空に打ち上げられる覚悟をしたのだった――――。




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