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過保護


先に声を上げたのは、サーシャだった。


「すごいわフドウちゃん! おとうさまが名前を教えるなんて!」


身を乗り出し、フドウに詰め寄る彼女はいつになく興奮しているらしい。

すごいわ、と。

何度も繰り返すサーシャに、やや間を置いて、やっとフドウが返す。


「……え、そうなの?」

「そうよ? 名前は大事ですもの。よっぽど気に入った人じゃない限り、魔物は自分の名前は呼ばせないわ」

「……へー……」


冥土の土産、とかじゃあ無いだろうなあ。


とても『気に入った』とは言い難かったヴァーナの態度を思い返し、フドウがぼんやりとそう思ったところで、ぱり、とサーシャの横の見えない壁が鳴った。

はっとして見ると、攻撃が止んでいるにも関わらず、ゆらゆらと空間が揺らめいている。


「あ、結構溜まってるみたい」


フドウの様子で、サーシャもそれに気付いたらしかった。


「何かに使えるかと思って攻撃の威力はまとめて保ったままなんだけど、どうしようかしらフドウちゃん。 要らないなら捨てちゃう?」


魔王さま、案外勿体無い精神が旺盛らしい。

いやそんな当たったら一撃で人間死ぬもんどうやって……、と。

言いかけたところで、はたと気付いてフドウは時計を確認した。

ジロウ予告した時間まで、あと1分30秒。

即座に、フドウはポケットから『機関』直通の通信機を取り出す。

ボタンを押すと、直ぐに反応が返ってきた。


『……全く連日……今回はちゃんとした用事でしょうね?』

「はい、早急に聞かないと人的被害に発展する感じのことが」

『ん? 外だな』

『あら、実習中? お疲れ様』

「端的に言います」


何処か呑気な声達の世間話を振り切って、フドウは一息に言う。


「アウトかセーフかだけ聞きます。『自身及び他人の身を守る為に、魔物が相手の魔力を反射して、止むを得ず攻撃元の人間に周辺の破片が飛んでしまった場合』です」


一瞬、沈黙があった。

あと1分。


『……破片ねえ? 間接的に攻撃出来るわよね?』

『反射、ではあるがな』

『身を守る権利は、人外といえどもあって然るべきですよう』

『んんー。悪用できる。悪用できるけどお……』


あと20秒。


『……今回は、日頃の行いに免じましょうか』

『了解』

『OKでーす』


あと10秒。


『『『セーフ』』』


「サーシャ!! それあの人達の真上の天井に向けて返してあげて!」

「え?! ええと、こうかしら?」


小さな手が、ぺちんと揺らめく壁を叩いた。

瞬間、ごうと音を立て二人が隠れる瓦礫を巻き上げ、一直線に揺らめきが天井に到達する。

ピシ、と、何かに亀裂が入る音。

次の瞬間には、梁を残してモルタルの天井全体が崩れ落ちた。


0秒。


犯人たちの悲鳴が上がると同時に、フドウが走り出る。

人数を確認する。

三人。

直近の一人に向かい、一息に間合いを詰めたフドウが振りかぶり。


「野郎!!」


最後の抵抗にか、犯人が銃口をフドウに向ける。

引き金を引いた瞬間。

びしりと音を立て、その銃が粉々に砕け散った。


ーーーーなんと言うか、気遣いが行き届いているというかぶっちゃけ。



「過保護!!!!」



気合と共に渾身の足刀を首筋に入れられた一人がくずおれる。

同時に、硬いもので肉を叩く鈍い音が二回。


「……派手にやったもんだ」


天井からの破片を払いながら。

あっという間に二人仕留めたジロウが、少しだけ驚いた様子で呟いた。




おとうさまを書いてるときが一番楽しいんですがチートすぎてあんまり出せないというジレンマ。


評価、ブクマどうもありがとうございます。


すごく励みになります。

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