4話 テスト中の訪問者 #2
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同じ頃、ベルモンド達は、
ベルモンドは近くに置いてあるイスに脚を組むように座り、ミサ達を監視していた。
一方の彼の相棒にあたるとされる男子生徒もイスに座り、居眠りをしていた。
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数分後……。
「よし!」
「できたぁ!」
「謎の中略ミサとキザ刑事、お疲れ!」
ニャンニャン刑事とミサが白いチョークを置き、嬉しそうに、ニャンニャン仮面は応援しがいがあったなというような顔をして言った。
それとは裏腹に、ほぼ居眠り状態のベルモンド達は目を覚ました。
「最終問題の答え合わせをします」
ベルモンドは赤いチョークを持ち答え合わせをしていく。
「……。正解です。あなた達の勝ちです」
よって、20問中19問正解したため、ミサ達は勝ち、洗脳から免れた。
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「さあ、ミサさん。前回洗脳された男子生徒を救わないとな」
「そうね」
ミサはまだ居眠りをしている男子生徒に近づいた。
彼女が持っているものは誰かが洗脳された時にミサがトドメを指そうと決めた時に使われるハートマークのシールが貼られた謎の水溶液が入った試験管である。
ところが、ミサが持っているその試験管はベルモンドに奪われてしまった。
「ああ、試験管が……」
ミサは愕然としていた。
ニャンニャン刑事は何かを思いついたようだ。
「大丈夫だ! ボクにいい考えがある。ちょっと耳を貸してくれ」
こしょごしょ……。
ミサとニャンニャン刑事はまたもや話し合いをする。
「ベルモンドの懐中時計を止めるのはどうかな?」
「ええ、いい考えね。でも、どうやって止めるの?」
「ボクの左手に注目だ!」
とニャンニャン刑事は左手の指をパチンと鳴らし、ベルモンドの懐中時計を止めた。
彼(?)の意外な能力だ。
本当にベルモンドの懐中時計が止まったため、ベルモンドはその場で動きを止めた。
「凄い! 本当に懐中時計が止まってる!」
「へへっ。ボクの左手には時間を操る能力があるんだ」
ニャンニャン刑事はベルモンドからハートマークのシールが貼られた試験管を奪い返した。
ミサはそれを受け取り、男子生徒のところに向かい、その試験管に入っている謎の水溶液を男子生徒に垂らした。
男子生徒は徐々に元の姿に戻っていった。
「んー……。オレは今まで何してたんだろう……?」
「あなたは今までベルモンドと一緒にいたのよ」
「……!? 本当ですか!?」
「本当さ。じゃあ、時間を進めるぞ」
「ええ」
「……? 時間を進める前に言いたいことが……」
「どうしたの?」
「何かな」
「謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサさんとニャンニャン刑事さん。オレを助けてくれてありがとうございました」
「いいえ、無事で何よりだ」
「どういたしまして! さっ、早く避難して! 今回は体育館が避難場所だと思うから」
「ハイ!」
男子生徒は自分の教室に戻り、荷物を持って体育館に向かった。
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男子生徒が教室から出たあと……。
「さて、改めて時間を進めるぞ」
「いいよ」
ニャンニャン刑事はまた左手の指を鳴らした。
時間は本当の時間になった。
何も知らないベルモンドは周囲を見回した。
時間が止められていたことはもちろんのこと、男子生徒がミサの手によって救われていたことも……。
「……。あれ……? 私の相棒は……?」
「彼なら、さっき体育館に避難したわ! あなた、寝ぼけてるの? それとも、頭が麻痺してるの?」
「そうですか……。寝ぼけていたかもしれません」
「ひょっとして……。泣いてるのか、ベルモンド。相棒がいなくなって」
「グズン。泣いてはいませんが……。」
「本当は純粋なんだな」
「……」
ニャンニャン刑事は穏やかな笑みだった。
ベルモンドは何も言えなかったようだ。
*
ベルモンドが出没して早1時間30分が経った。
彼は逃走車並びに改造車に乗り、逃走した。
「いつか誰かを敵に回してやる!」
彼は何やら企てて(くわだてて)いるようだった。
そんな彼にいい相棒が見つかることを願って……。
*
あれから数分後……。
「怪盗ベルモンドは謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサとニャンニャン刑事によって見事に追い出されました。本日の3限目のテストは中止です。本日の3限目のテストは明日の3限目に再実施しますので、生徒は速やかに帰路についてください。バスの時間は12時、12時30分、13時の3便です。後片付けなどは明日のテスト終了後に行ってください。もう1度繰り返しお知らせします……」
と平和なアナウンスが校内に流れる。
体育館に避難していた生徒達や先生達が校舎に戻っていく……。
「やっと終わったよ」
「今回の戦いは意外と短かったよな」
「また今回も派手にやってただろうな……」
「まぁ、あの4人だもんね」
「あの人達だとさ、後片付けが大変だもん」
「でも、後片付けは明日の3限目の後でしょ」
「あっ、そうだったね」
「くそーっ! 苦手な英語が再実施はあり得ないだろう」
「英語は捨ててたからもう1度勉強し直せるからよかった」
などとテストの再実施に関する不満やミサ達のことを話しながら生徒達は昇降口に向かい、帰路についた。
そんなこんなで3限目以外の2日目は終了。
*
残っている生徒がまばらになっている校舎に廊下を歩いている人がいた。
1人はこの学校の校内に1人いれば十分とされる鞄とバトンを持っている女子生徒で、もう1人は白衣を着た女性である。
「ふーっ。テスト中にいろいろあったけど、なんとか終わったね!」
「そうですね。そうそう、生物のテストはどうでしたか?」
「生物のテストの赤点は1人もいないから安心して!」
「よかったぁ……。でも、今日のテストは頑張りたかったんですよね」
「……。なんで?」
「なんというかですね……。好きな英語のテストが再試験っていうのが……」
「心残りだって言いたいんじゃないの?」
「そうかもしれませんね。先生、さようなら」
「また明日ね!」
女子生徒と白衣を着た女性は昇降口で別れた。
*
ついにテストは最終日。
その日の朝、教室や職員室に入ってきた生徒達や先生達は、
「おはよう! あっ、教室がキレイ。あの人達、あまり派手にやらなかったんだね!」
「そうだね。でも、黒板は昨日の朝よりかなり汚くない?」
「でもさ、私達のことを考えてくれたんだよね。謎の中略ミサさん達。」
「テスト用紙が凄いことになってること以外はよかったんじゃない?」
「せめて、テスト用紙くらいは片付けよう?」
「カンニング疑惑になるからね」
生徒達は教室中に散らかったテスト用紙を教室のごみ箱に捨て、カンニングにならないよう、そのごみ箱を廊下に置いた。
その行為は他の学年、クラスでも行われていた。
いろいろと片付けているうちにチャイムが鳴り、ショートホームルームが始まった。
「今日はテスト最終日だから頑張るんだよ!今日は数学と実技選択(注・この高校は音楽、美術、書道の3教科から1つ選択し、クラスを越えて学年で授業を受ける)と昨日の英語の再試験! 最終日だからって気を抜かないでね!」
「ハーイ」
こうして、落ち着いた環境でテスト最終日を迎えたのであった。
*
テスト3日目の1限目の数学も2限目の実技選択も無事に終了した。
3限目の英語の再試験は昨日の本試験と同じ問題で、リスニングテストもスムーズに放送され、無事に終了した。
*
無事にテストが終わり、翌週の月曜日からテスト返却が行われた。
自分が赤点かどうかが不安になる時期である。
開放感に満ちているはずの生徒達は緊張感でいっぱいだった。
各学年で赤点を取ってしまった人達を集めて追試験を受けるという面倒なことをしなければならないのだ。
紫苑は赤点は免れたが、彼女のクラスのほんの一部の生徒が生物以外の教科の赤点を取ってしまっていたため、春原にこっぴどく怒られていた。
春原の声は学生時代に剣道をやっていたせいか普通の人の声に比べて大きいため、3年生の教室か理科室関係の部屋がある管理棟のどこかの教室にいるとすぐに分かってしまう。
今日も春原先生は元気だなぁと紫苑は思いながら生活するのであった。
*
そして、時は流れて、1学期の終業式のロングホームルーム終了後……。
紫苑は部活があるため、友人と軽く会話を交わしたあと、教室を出た。
昼食はどこで食べるのかと思った読者がいると思うが、紫苑は吹奏楽部に所属している。
そのため、彼女は音楽室で後輩と同級生と一緒に昼食を食べているのである。
そんな彼女がいなくなった教室に何やら1人の男子生徒らしき人が入ってきた。
彼の手に持っているものは1通の手紙である。
「夏川 紫苑さんっていう人はこのクラスですか?」
「えっ、うん。そうだよ!」
「紫苑に用があるなら音楽室にいるよ」
「そうですか……」
「電話して呼ぼうか?」
「いえ。じゃあ、夏川さんの席はどこにありますか?」
「紫苑の席はね……。廊下側から3列目の2番目にあるよ」
「ありがとうございます」
「いえいえ」
と紫苑のクラスメイトの何人かと彼は話していた。
そして、彼は紫苑の席にそっと手紙を入れた。
「では、失礼します」
「ハーイ」
彼は教室を出た。その正体は男子生徒になりすませたベルモンドであった。
「よくもこの私を敵に回しやがって……」
その手紙の内容は紫苑はもちろんのこと、誰も知らない……。
2014/10/05 本投稿
2015/08/12 改稿