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不思議な事件が起こる学校で【原作版】  作者: 楠木 翡翠
第3章 6月 合唱コンクール
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3話 合唱コンクールと洗脳と…… #1

 徐々に気温が高くなってくる6月のある日のことである。

 ある高校の1階の奥の方の教室から歌が聞こえてくる。

 歌が聞こえてくる教室は3年5組と入口のところに表札らしきものがついている。

 歌っている曲は3月9日だ。



 *



 その教室を覗いてみると……。

 この高校の制服は白の開襟シャツに男子生徒は黒のスラックス、女子生徒はスカートの夏服を着た32人の生徒がいた。

 男女比は2人だけ男子生徒がおり、残りは女子生徒というアンバランスなクラス。

 指揮をやっているのは身長160cm前後の女子生徒である。

 伴奏をしている生徒は欠席しているらしく、仕方なく伴奏だけ入っているテープがラジカセを通して流れている。

 現在は6限目でロングホームルームの時間だ。

 もうすぐ高校生活最後の合唱コンクールのため、担任と副担任の先生と話し合って練習時間に変えてもらったのである。



 *



 曲が終わった。

 指揮をしていた女子生徒がラジカセを止め、巻き戻しをし、後ろにいる先生達に問いかけた。


「先生、どうでしたか?」

「みんな、上手になってたよ! ねぇ、秋山先生?」


 白衣を着た理科の先生らしき女性教師が言った。

 身長は指揮をしていた女子生徒と同じくらいか少し低めだった。


「うーん、そうか? 指揮をやってる夏川だけが上手くなったような気がするが……。他は声の大きさが課題なんじゃないのか、春原先生」


 秋山先生と呼ばれた男性教師が答える。

 すると、


「えー!? そうかな?」


 春原先生と呼ばれた白衣を着た女性教師が不満そうに言い返す。


「そうって言ったらそうなの! さあ、立ち位置に戻ってもう1度!」

「ハーイ」


 秋山がそう言うと、生徒達は返事をし、元の立ち位置に戻った。

 そして、夏川と呼ばれた女子生徒も指揮棒を持って戻り、テープをかけようとした時……。



 *



 ピタッ。

 なにやら変な時空間にいるような気がするような雰囲気だ。

 よく周りを見回すと……。


「時間が……」


と紫苑が教室の時計を見ながら言う。

 あれから時間は止まっているような気がしたからだ。


「時間が?」


 春原と秋山がすぐさま反応した。

 そして、2人はようやくそのことに気づいた。


「時間が止まってる!」


 3人は時が止まった空間で同時に叫んだ。

 ここで動いている3人以外は時間も人の動きも完全に止まっているのである。

 教室のドアに寄りかかっている黒ずくめで首から懐中時計をぶら下げ、手には2丁の拳銃が握られていた。


「で、出た! 怪盗ベルモンド!」


 彼を見て思わず再び叫んでしまう3人。


「こんにちは。3人の勇者達よ」


とベルモンドが言い、拳銃から2回銃声をあげた。

 1発は眼鏡をかけた男子生徒に、もう1発は優等生に近いような女子生徒に向けて撃たれた。

 もちろん、春原達のクラスのうちの2人である。

 その時、2人の生徒は変な時空間にはいなかったが、時計の針や他の生徒達は止まったままだった。


「先生、2人が動いてます!」

「本当だ。2人とも、大丈夫?」

「……」

「ベルモンド、何をした!?」


 紫苑、春原、秋山の3人は各々と口を開く。

 春原の問いかけに答えない2人。

 秋山は怒りを露わに(あらわに)しているような口調だ。


貴方達(あなたたち)のクラスの生徒さんのうちの2人を拳銃(これ)で撃っただけですよ」


 淡々と答えるベルモンド。

 そして、


「今、思ったんですが……それってもしかして洗脳ということですか?」


 紫苑はベルモンドに彼女の考えを言ってみた。


「そういうことになりますね。さあ、私の優秀な相棒達よ! ここにいる人間達を人質にするのだ!」

「ハイ、ベル様!」


 ベルモンドと洗脳された2人の生徒は教室にいる生徒達を人質にする準備を始めた。

 彼らは約3人くらいずつロープで縛りつけていき、約10組くらいできた。

 これは非常事態である。


「さあ、夏川。今すぐ放送室に行ってきて!」

「えっ!? 先生が行ってきてくださいよ」

「放送委員でしょ? アナウンスしてきちゃいなよ」

「ハーイ。行ってきまーす」


 春原に促され、紫苑はしぶしぶではあるが、放送室に向かった。

 その時、指揮棒から自分の机の上に置いてあったバトンに持ち替えていた。



 *



 校内に放送のメロディーが鳴り響く。


「授業中に失礼します。たった今、校内に怪盗ベルモンドが出没しました! 生徒、職員のみなさんは大至急、校庭に避難してください。もう1度繰り返しお知らせします……」


 放送を終えた紫苑は緊張感のない声で、


「そろそろ、変身するかぁー♪」


と言い、バトンを取り出し、回し始めた。


「All my friend forever!」


 バトンはまっすぐ宙を回り、身体も回っている。


「変身完了! ボクはニャンニャン刑事(でか)!」


 狭苦しい放送室に1人の白髪の少年がいた。

 まだ読者の一部はちょっとおかしくないか? さっきまで女子生徒だったのに、なぜ、少年? と思った方は1話を読んでいただけると分かる。



 *



 さて、紫苑が放送室に行った後の教室では、


「そろそろ、変身しようかなー」


と春原は言った。

 気づいたら秋山の姿が見当たらなかった。

 彼はどこに行ったのか気になったが、今はそれどころではない。


「まぁいっか。Please give your dream!」


 右手で指をパチンと鳴らし、いろいろと変身していく。


「変身終了! 私は謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサ!」


 彼女は白いロングワンピースと無駄に長い白衣を着ており、両手で試験管を持ち、ポーズを取っていた。

 容姿はあまり変わっていないが、若干変化している。



 *



 2人が変身している間に3年5組の生徒達以外は避難を開始していたらしく、ほとんどの教室には生徒や職員はいなかった。

 時間が止まっていた教室の時計は現在の時間まで回り、その教室にいる生徒達はロープで縛られた自分達を見て、悲観を覚えた。

 そんな中、謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサとニャンニャン刑事が姿を現し、生徒達はようやく救いの手をさしのばされた。

 しかし、あとからひょっこりと顔を出す人物が現れた。


「やあやあ。謎の中略ミサとキザ刑事さん! 今日も一緒に元気よく戦うか?」


 全く軽い男である。

 ミサとニャンニャン刑事の2人にはもう分かっていた。

 なぜなら、彼はネコ耳でマントをつけているからだ。


「で、出た! 変態仮面!」

「なんだよ。出ただなんて2人とも失礼だぞ。オレはニャンニャン仮面(かめん)だぞ~!」

「それよりドケ! 変態仮面」

「変態仮面って呼ぶな! キザ刑事!」

「……」


 ニャンニャン刑事とニャンニャン仮面が言い争いを始めている。

 ミサは知らないふりをし、何も言わない。

 言い争いはまだ続く……。


「そりゃ、事実だもん。キザ刑事って呼ぶな」


 まだまだ続く言い争いにミサは黙っていられなかった。


「2人とも、ストップ! ところでさぁ、変態仮面のその仮面がちょっとキザなんじゃないの? ニャンニャン刑事さんと比べてカッコよくないし。そこにいると……」

「そこにいると……?」


 ニャンニャン刑事が聞き返した。

 ところが、ニャンニャン仮面はミサに、


「なんだよ。謎の中略ミサまでキザ刑事と一緒するなよ」


と言い、反撃をしかけようとしたが、


「撃つよ! 変態仮面!」


 パパパパパー! とミサは拳銃でニャンニャン仮面をめがけて撃った。

 哀れなニャンニャン仮面。


「ふーっ、やっと変態仮面をやっつけたから、キザ怪盗をサクッと片付けてしまおう! ニャンニャン刑事さん!」

「そうだね、ミサさん」


 ミサとニャンニャン刑事とニャンニャン仮面の3人はなんだか漫才みたいになっていた。

 ミサがニャンニャン仮面を撃つ時にはベルモンド達によってめちゃくちゃになっている。

 元々めちゃくちゃになっていたが、さらにめちゃくちゃになっている。


「えーっ! 早く片付けなきゃ!」


 そのことを知ったミサとニャンニャン刑事は急いでニャンニャン仮面を放置したままその場から去った。



 *



 一方、あちこちいろいろなところを撃ちまくったベルモンド達は、


「さて、そろそろ姿を消すか」

「ハ、ハイ、ベル様!」


 3人は逃走をはかろうとしたが、


「ちょっと待ちなさい! 怪盗ベルモンド!」

「待て、怪盗ベルモンド!」


 よく通る女性と少年のような声が聞こえてきた。

 ミサとニャンニャン刑事だ。


「改めてこんにちは。謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサさんとニャンニャン刑事さん! 本番はこれからですよ!」


 ベルモンドは拳銃を2丁取り出した。


「ふふっ……。そのセリフを待っていたよ」


 ニャンニャン刑事は冷ややかに笑い、手榴弾を約10ダース準備し、ミサは涼しい顔をして、拳銃と数本の試験管を準備している。

 その試験管には透明な謎の液体が入っている。

 戦いの始まりだ。

 ところが、


「あっ、いたいた! 謎の中略ミサとキザ刑事!」


 脳天気な変態仮面が現れた。

 名前を出さなくてもわかると思うため、言わないが、服は多少焦げていたりしている。


「お前は戦わなくていい!」


 ミサとニャンニャン刑事に言われ、少々落ち込み気味のニャンニャン仮面は、


「オイ、2人とも……。オレ、そんなに不必要な人間なのか?」

「ああ」

「ええ」


 ミサとニャンニャン刑事は真顔で即答で返事をする。


「おやおや、3人揃って漫才ですか? それではこちらから攻撃を始めますよ?」


 しょぼけているニャンニャン仮面は放置して、ベルモンドは両手の拳銃で打ち始めた。

 それに対抗してミサは自分の拳銃を構え、ニャンニャン刑事は手榴弾を手に持ち投げた。

 パンパン、ボコッ、パンパン!


「2人とも、いつも思いますが、なかなかの腕前ですね」


 ベルモンドは少し首を傾げながら言った。

 多少マントが焦げている。


「次はこれね!」


 ミサは透明な謎の液体が入った試験管を3本つかんだ。


「ところで、ミサさん。その試験管には何が入ってるの?」


 ニャンニャン刑事が小声でミサに訊いてみた。


「これは塩酸、強酸(きょうさん)、水酸化ナトリウム水溶液が入っているの!」


 ミサはウインクをしながら試験管に入っているものを答えた。

2014/09/28 本投稿

2014/11/15 改稿

2015/08/12 改稿

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