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不思議な事件が起こる学校で【原作版】  作者: 楠木 翡翠
第2章 5月 卒業アルバムの写真撮影
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2話 ミサ達と一緒に……

 中間テストが終わり、1週間が経った5月の金曜日。

 3年5組の教室を見てみると、なぜかクラス全員が浮かれていた。

 なぜなら、今日の午後は卒業アルバムの写真撮影の日であるからだ。

 教室には男子生徒が2人しかおらず、女子生徒がたくさんいるハーレム状態の空間である。

 そんな彼女らの前には過去卒業した先輩達の卒業アルバム。

 それらを眺めながら、


「ねぇ、どのポーズを取って写真を撮る?」

「あの写真のように撮りたいな!」

「いいねぇ!」

「うちはそうだね……。あーやって、こうやって……」

「あっ、いいじゃん! そのポーズ、カワイイよね!」

「やった! 褒められた!」

「ところでさぁ、このクラスでスタイルいい人っている?」


などと、ワイワイと話している。



 *



 チャイムが鳴り響く。

 白衣を着た女性が教室に入ってきた。


「あっ、先生がきちゃった! 席に着こっ!」

「ホレ! みんな、早く席に着いて!」


とよく通る声が教室中に響き渡り、生徒達はわらわらと席に着いていく……。


「今日の予定は午前中は普通に授業で、5限目と6限目はみんなのお待ちかねの卒業アルバムの写真撮影があるから、ちゃんとした服装をしていくんだよ!」

「ハーイ!」


 至るところからとても素直な生徒達の返事が帰ってくる。


「さて、楽しい写真撮影の前の生物はテスト返しだからね!」


 春原は悪戯な笑みを浮かべ、生徒達に言うと、


「げっ……」

「マジで!?」

「テスト、返ってこなくていいし」

「先生、テスト返しは写真撮影のあとにできないんですか?」


と生徒達からブーイングが沸き起こった。


「できないよ。だって、写真撮影の時間帯は決まってるもん」

「そっかぁ……」

「大丈夫。このクラスは赤点の人はきっといないはずだと思うから」

「だ、だよね……!」

「先生、嘘じゃないよね?」

「どうかな。さて、今日も1日頑張ろう!」


 テストの結果が気になって少し心臓がバクバクしている生徒達をよそに、春原はいつもの口調で言うと、すぐに教室から出て行った。



 *



 1限目から4限目は普通に授業が行われた。

 今日の授業は1限目は世界史、2限目は英語、3限目は数学、4限目は生物で、授業内容はほとんど中間テストの返却と答え合わせだけであった。



 *



 そして、昼休みを挟み、ついに、5限目と6限目。

 紫苑達のクラスである3年5組の卒業アルバムの写真撮影が始まった。

 まずはクラス全員で撮る集合写真。

 次に個人写真や友人同士で撮る写真という流れで写真撮影は行われる。


「集合写真を撮りまーす! 出席番号順になってください! じゃあ先生2人は真ん中に入ってください。んー……先生の隣に学級委員の人に入ってもらおうかな……」

「じゃ、夏川はここだね」

「ハイ。なんか強制的じゃないですか?」


 そうなのだ。

 紫苑以外のクラスメイトは出席番号順に座っていたり、立っていたりしていたからだ。


「ねぇ、春原先生。ポーズ、取ってもいい?」

「えー……1枚目はまともに撮って。あとはポーズをとるなりしていいよ」

「ワーイ!」

「やったぁ!」

「じゃあ、行きますよぉ!」


 カメラマンがカメラを構えて叫んだ。



 *



 カシャッ!

 クラス全員の集合写真が撮り終わった。

 1枚目は出席番号順でまともに撮ったもの、2枚目は出席番号順でポーズを取ったもの、3枚目は出席番号順を崩してポーズを取ったものである。


「個人写真を撮りながら、友達同士の写真も撮るんだよ! あと必ず1回は私や秋山先生と一緒に撮るんだよ!」

「ハーイ!」


 生徒達は春原の話を聞いてなかったらどうなるのだろうか?

 多分、大丈夫だろうと春原はそんな楽しそうに撮影に参加している生徒達を見て思っていた。



 *



 この高校は元は農業科や商業科などの実業高校だったため、自然がたくさんある。

 そんな中で、黒い帽子を被った人物が動いた。

 黒い帽子を被った人物と言われても、よく見ると他に黒い帽子を被った人物はいない。

 よって、彼は現れてしまった。


「今日は外で写真撮影か……」


 黒い帽子を被った人物が双眼鏡を使って様子を伺いながら言った。



 *



 それを知らずに生徒達と2人の教師は……。

 みんなそれぞれ写真を撮りまくっていた。

 個人写真はもちろんのこと、自由に撮る写真では何人の生徒がジャンプをしている写真や先生と生徒の写真、楽しく話をしている写真などなどとたくさんの写真を撮っていた。



 *



 ところが、紫苑は友人とたくさん写真を撮ったのはいいものの先生と撮った写真が1枚もなかった。


「夏川ー、酷いよー。友達といっぱい撮るのはいいけどさぁ、1回も私と秋山先生と撮ってないんだもん。秋山先生からも言っちゃってください」

「そうだぞ。他の人はみんな撮ったんだぞ?」

「(秋山先生が振り回されてる?)先生、じゃあ、撮りますか? カメラマンさん、次、お願いします!」


 だだこねる春原と振り回されている秋山の2人から逃げだそうとした紫苑。

 最終的には強制的に撮ることに決定した。


「ハーイ! 3人で撮りますか?」


とカメラマンが走りながら3人に問いかけた。


「ハイ」

「じゃあ、行きまーす!」


 カメラマンがカメラを構えた。


 *



 カシャッ!


「ん?」


 カメラマンが苦い顔をし、今度は目をこすり始めた。

 その時、紫苑は疑問を持った。

 なぜ、目をこすったりしているのだろうと。

 そして、彼女はこう問いかけた。


「カメラマンさん、どうしました?」

「なんか、黒い帽子を被った人物が……」

「黒い帽子を被った人物?」


 3人は首を傾げ、1枚の写真をじっと見つめた。


「こっ……これは……。怪盗ベルモンド!」


 3人は同じ答えを叫んでいた。

 それに気づいた生徒達が、


「えっ、何々? 紫苑、先生!」

「ねぇ、心霊写真?」

「嘘でしょ!?」

「怖いからやめてよ……」

「違うんじゃないの?」


などと言い、他の生徒達が集まり始めていた。



 *



 3人はそろそろ変身しようか……と思っていた。

 しかし、クラス全員を教室に戻すわけにはいかない。

 せっかくの卒業アルバムの写真撮影を台無しにしたくないと思ったからだ。


「ちょっと、私は教室に戻ってくる」

「俺は職員室に戻ってくる」

「私も生物準備室に戻ってくるね」


と3人はそれぞれそんな嘘をつき、それぞれの場所に向かった。



 *



 誰もいない3年5組の教室に戻ってきた紫苑は自分の席に向かい、鞄の中からバトンを取り出し、それを回し始めた。


「All my friend forever!」


 バトンはまっすぐ宙を回り、身体もくるくる回る。

 今回は短縮バージョンである。


「変身完了! ボクはニャンニャン刑事(でか)!」


 ごく普通の女子高生が白髪で白いラフな服装の少年に変わっていた。


「さぁ、急がなければ……」


 ニャンニャン刑事はそう言い、走って昇降口に向かった。



 *



 生物準備室に行った春原は……。

 戻ったはいいが、そこにたくさんの先生がいたため、化学室で変身しようと決意した。


「Please give your dream!」


 右手で指をパチンと鳴らし、いろいろと変身していく。

 こちらも短縮バージョン。


「変身終了! 私は謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサ!」


 彼女は白いロングワンピースと無駄に長い白衣を着ていた。


「急いでキザ怪盗を追い出さなくちゃ!」


 ミサは階段の手すりの上を滑り降り、その後はきれいに着地し、職員玄関へ向かう。



 *



 写真撮影現場に向かう謎の3人の人物。

 一般生徒には全く知らない存在である。


「あっ、あの人達は……」

「噂の謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサさんとニャンニャン刑事さんじゃない?」

「本当だ! 本物だ!」

「後から職員玄関から出てくるのは……? よく見るとニャンニャン仮面(かめん)さんだ!」

「うちら、凄くない?」

「正義のヒーローとかに会えるなんて……」



 *



 草むらに隠れていた黒い帽子を被った物体は……。


「あの3人がついにきたな……。さて、今回も始めようか……」


と誰にも聞こえないように言う。

 今回も本当に始まってしまうのだろうか……?


「みーつけた! こんにちは、キザ怪盗!」


 ミサに簡単に見つかってしまった。

 軽く舌打ちをするベルモンド。


「本来の計画が……」

「本来の計画が……って何?」

「うわっ! ニャンニャン刑事さんとニャンニャン仮面さん、いつからいたんですか!?」

「えっ、さっき」

「さっきからだが……」


 この状態から察すると4人でかくれんぼをしているような気がするが……。

 カメラマンが近づいてくる。


「あっ、そこの4人! 学生達と写真を撮りませんか? ちょうど個人写真の撮影が終わったんで。後は先生2人と生徒1人だけなので」

「いや、結構です!」


 4人は写真を撮られることに拒否反応を示した。


「実は数枚撮ってしまいました」

「……」


とカメラマンがにこやかに言い、ミサ達4人は目がテン状態になっていた。

 その時に生徒達が数人近づき、


「謎の中略ミサさん、ニャンニャン刑事さん、ニャンニャン仮面さん、一緒に写真撮ろうよ!」

「そうだよ! 正義の味方と写真を撮るのってレアじゃん!」


と誘ってきた。

 カメラマンが必死になっていたシャッターを押していく。

 ミサ達がカメラにたっぷりと写っていく。

 それらの写真たちは卒業アルバムにたくさん載らないといいのだが……。



 *



「さあ、戦闘開始ですね! ミサさん」


 ベルモンドはミサに話をふった。


「あっそう」

「ハイハイ」

「適当にやっておくかぁ♪」


 ミサはもちろんのこと、ニャンニャン刑事とニャンニャン仮面も今回はいい加減だ。

 かわいそうなベルモンドであった。



 *



 3年5組の生徒達に見守られながら、戦闘が開始された。


「オーッ! 流れ(ながれだま)だ! マジでリアルじゃん!」

「手榴弾も拳銃も本物だ!」

「凄い凄い!」

「生戦闘だ!」

「頑張れ! 謎の中略ミサさん達!」


と生徒達が揃って興奮したように言う。

 その時にカメラマンはカシャカシャと写真を撮りまくっている。



 *



 こちらはバトル中のミサ達。


「ミサさん……。本当に戦力を落とした方がいいと思われますが……」

「戦力を落とした方がいい? はぁ、何言っちゃってるの? キザ怪盗は。さりげなくピースしてるし!」

「たまにはいいじゃないですか。ハイ、ミサさんも」

「このノリ、なんか変態仮面みたいなノリだけど……。よし、撮ろうか!」


というノリでミサとベルモンドの2ショット写真が撮られた。



 *



 一方、こちらはミサ達応援団化している生徒達は……。


「オーッ! 謎の中略ミサの見事な毒舌が生で見られるなんて……。マジ、感激! オレ、ファンになっちゃいそう!」

「だよな! Sの女性、オレも好きだし!」

「あはははは……」


と2人の男子生徒は話していた。

 女子生徒達は、


「キャッ! ニャンニャン刑事がこっち向いた!」

「ニャンニャン仮面さんもこっち向いたよ! ピースしてる!」

「あの黒ずくめの人、ベルモンドって言うんだー。初耳!」

「ベルモンドって人、何気にイケメンだよね!」

「だよね!」


などと感嘆の言葉を述べていた。

 こちらも写真を撮られている。



 *



 ミサ達の写真はこんな写真を撮ることができた。

 さりげなくピースしているニャンニャン仮面とニャンニャン刑事、ミサが話し合っている写真、ベルモンドと壮絶なバトルを繰り広げているミサ、先程紹介したミサ達を応援する生徒達などなどとたくさん撮られていた。

 あんなにミサ達を撮りまくっているが、カメラのフィルムは大丈夫だろうか。

 あと3人分の個人写真の分まで保つだろうか……。


「大丈夫ですよ。フィルムはいっぱい残ってますし」


とカメラマンがにこやかにフィルムを交換しながら答える。



 *



 数分後……。

 やっと、ベルモンドは姿を消した。

 今回のベルモンドの滞在時間は2時間だった。

 その後、ミサ達は変身を解いた。



 *



 さらに数分後……。

 紫苑と春原、秋山は個人写真の撮影を終えた。

 ひとまず今日の撮影は終了。


「今日はありがとうございました。3年5組は他のクラスより多く撮ってしまいました。このクラスに正義の味方が3人いるなんて驚いていますよ。このクラスだけ数ページくらいクラスページを増やそうかと思っています。後日、授業風景や部活などの写真を撮りにきますので、よろしくお願いします」

「ありがとうございました」


 こうして無事に紫苑達のクラスの写真撮影が終え、彼女らは教室に戻ったのであった。



 *



 学校の敷地内は空薬莢(からやっきょう)などと大変なことになったが、校舎や他の学年や他のクラスに被害が及ばなかった。

 さて、その卒業アルバムの仕上がりはどうだろうか……?

 ミサ達ばかりじゃないと願うばかりである。

2014/09/15 本投稿

2014/09/15 サブタイトル変更

2014/11/15 改稿

2015/08/12 改稿

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