1話 学校騒動 #2
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準備を終えたニャンニャン仮面はラジカセの再生ボタンを押し、ズンチャカ、ズンチャと軽快なリズムから始まった。
イントロが長いため、ちょっと変身前に戻る……。
なんか、ここ最近、秋山先生は放課後に毎日のように音楽室にきていたような……。それと歌も意外と上手だったような……。と紫苑は思った。
さて、イントロが終わり、歌が始まったが、数秒後にブチッ! と音がしてラジカセが止まってしまった。
その理由は簡単でミサが拳銃で1発撃ったからだ。
「あっ! 謎の中略ミサ! 余計なことをしたな! せっかくヤ○ダ電機で買ってきたのにー」
ニャンニャン仮面が泣き声を上げていた。
その時、ニャンニャン刑事は呆れて何も言えないでいた。
「ヤ○ダ電機って言ってるけどさぁ、よく見ると『音楽室備品』って書いてあるじゃん変態仮面!」
ミサが怒った。
その時、
「ミサさん、落ち着いてください。ベルモンドが逃走したらどうするんですか?」
「そうね……」
さっきまで呆れていたニャンニャン刑事がたしなめ、ミサは冷静さを取り戻した。
「よーし! みんなで怪盗ベルモンドをやっつけよう!」
ニャンニャン仮面はいつものハイテンションで言う中で、
「いっそのこと、変態仮面はおいていって、私達2人で片付けちゃいましょ。ニャンニャン刑事さん」
「そうですね。ミサさん」
ミサとニャンニャン刑事はそう言い、スーッと素通りする。
2人の姿がみるみる小さくなっていく。
「あっ、2人とも、待ってよー」
ニャンニャン仮面はおいてきぼりにされ、2人に聞こえないように、
「あーあ。いいないいな。2人とも、気が合って……」
孤独に言うニャンニャン仮面であった。
*
ニャンニャン仮面をおいてきぼりにしてきた張本人達は……。
「ねぇ、ニャンニャン刑事さん! あなたは何をすることが好きなの?」
「ボクは映画を見たり、本を読んだりすることが好きだな。あと、ラジオを聞くことも好きだ。最近では『小説家になろう』という小説投稿サイトで投稿されたものを読むことにハマってる。ミサさんは?」
「私もラジオを聞くことも好きだし、小説投稿サイトで投稿されてる小説を読むことも好きなの。なんか、意外と私達って気が合うよね」
「ミサさんはどんなジャンルの小説が好き?」
「私はコメディが好き! 他には学園ものも好きね!」
「ボクもコメディは好きだな。学園ものやファンタジーなどなどとたくさんの作品があって読んでると楽しいよね」
「ねぇ。いろいろな作品があるからどれにしようか迷うよね」
「そうだね」
「なんか、2人で話してると楽しくない?」
「ああ」
ミサとニャンニャン刑事が楽しそうに会話をしているうちにニャンニャン仮面が追いついてきていた。
「オイオイ、謎の中略ミサとキザ刑事! オレを放置したままにするなよ!」
「あっ、ごめんなさい。おいてきぼりにしちゃった」
「すまないな、変態仮面」
2人は棒読みするかのような口調と声色で冷めたように言った。
それにつられて、
「おまえら、全然反省してないし……」
とニャンニャン仮面が2人と同様に言い返した。
*
それから、少しの間3人が歩いていると、首から懐中時計をぶら下げた黒ずくめの男性がいたからだ。
そして、両手には拳銃が握られていた。
「ついに3人の勇者達に見つかってしまいましたね……。これからが本当のお遊びの始まりですよ?」
「あなたね! キザ怪盗ベルモンドは!?」
ミサがベルモンドに確認するような口調で言った。
「え、ええ……。その「キザ」は少し余計ですが……。さて、本題に入ります。謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサさん、ニャンニャン刑事、ニャンニャン仮面さん! 今回は1対1の個人戦でやり合いましょう。3人中2人が勝ったら勝ちとしましょう」
「分かった」
「分かったわ」
「分かったぞ!」
そうして、ミサ、ニャンニャン刑事、ニャンニャン仮面はベルモンドとの1対1による戦いの火蓋が切って落とされる……。
*
ミサVSベルモンド(職員室にて)
2人は職員室にいる。
授業で使うプリントなどがきれいに置いてある。
「こんにちは、ミサさん」
「こんにちは、キザ怪盗」
と職員室の中心で2人は向き合って挨拶を交わす。
ミサとベルモンドは拳銃で撃ち合い始めた。
時折、いろいろな先生の机に乗っていたり、教科書を武器にしたりしている。
最初はきれいに置いてあったプリントが時間が経つにつれて散らかっていく……。
「ミサさん、なかなかやりますね……」
「そっちこそ……」
2人が机の上に飛び乗る。
「私は社会科の米川先生の机にいる」
「私は数学科の荒川先生の机です」
2人は全く必要のない今の位置情報を告げる。
「それにしても……。キザ怪盗はよくやるわね!」
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数10分後……。
まだ撃ち合いは続いていた。
ベルモンドの両手に持つ2丁の拳銃。
片方は調子のいい銃声をあげ、もう片方は1発撃っただけである。
一方のミサは相変わらず勢いよく拳銃を使っている。
まだ弾はあるようだ。
「あっ……。弾が切れた……」
その後、ベルモンドの拳銃の弾が切れてしまったため終了した。
その時のミサは勝ち誇ったような笑みを浮かべ、至るところが穴だらけで空薬莢に埋めつくされた職員室から姿を消した。
*
ニャンニャン仮面VSベルモンド(物理室にて)
ベルモンドが物理室に姿を現すとそこには、
「おーっ。ベルモンドようやくきたか」
と呑気な声で変態仮面……いやニャンニャン仮面が出迎えた。
「今度は刀の使い手ですね……。これは余裕かもしれません……。さあ、始めますよ?」
「よし! かかってこい!」
ニャンニャン仮面は刀を武器に、ベルモンドは拳銃を武器にやり合い始めた。
物理室には横に長い机が横2列縦に8列並んでおり、それに合わせて回転イスが48個ある。
しかし、そこはあまり授業では使われないらしく、ものは置いていなく、きれいな状態を保っていた。
そんな中、2人は空薬莢を落としたり、壁や黒板などに穴が開けられたり、刀で切り刻んだりしていく……。
ニャンニャン仮面はそこにある回転イスに乗り、凄い勢いでベルモンドに襲いかかる。
「ちくしょう! 動きが早すぎるよぉー。ベルモンドー」
ニャンニャン仮面は自分を守るのに精一杯になってきていた。
今まで自分を支えてきた2個の回転イスは少しずつ離れていき、なんと開脚寸前だった。
「あわわ……。開脚寸前だぁー!!」
「ふふっ。この状態ではかかってこられませんね、変態仮面さん?」
「変態仮面って呼ぶな! 謎の中略ミサと同様にキザ怪盗って呼ぶぞ!」
「私はなんと呼ばれても構いませんよ、変態仮面さん?」
ベルモンドは皮肉たっぷりに言い、それとともに冷ややかな笑みを見せた。
おそらくもう決着がついたと思ったのだろう。
一方のニャンニャン仮面はダウン寸前だった。
むしろダウンしたといった方がいいのかもしれない。
「これはこれは……。もう終わりですね、ニャンニャン仮面さん?」
とベルモンドが言い、次の対戦相手であるニャンニャン刑事のところに行った。
ニャンニャン仮面はまたしても放置されたのであった。
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ニャンニャン刑事VSベルモンド(3年2組の教室にて)
ニャンニャン刑事は教卓の上に座ってベルモンドがくるのを待っていた。
「やっとボクの出番か……」
「手榴弾の使い手ですね……。結構手強そうだ……」
その教室はノートや教科書、食べ終わったであろう弁当箱が置いてあった。
ニャンニャン刑事は手榴弾をベルモンドは拳銃を武器に撃ったり投げたりする。
それと同時に机の上に置かれたもの達が穴開いたりして、元々汚い空間なのにさらに汚い空間になっていく……。
しばらくの間、音だけの戦いとなった。
そして、
「怪盗ベルモンド! このボクに逮捕されたいのか?」
とニャンニャン刑事は物が置かれていない机に乗り、ベルモンドを脅した。
「この私をどうやって逮捕するんですか、ニャンニャン刑事さん?」
と言われ、その言葉に反発したかのように手榴弾を5個投げ、ニャンニャン刑事は煙が晴れるのを待った。
煙がはれた頃にはベルモンドはダウンしており、ニャンニャン刑事は勝ち誇ったかのようにニヤリと笑って姿を消した。
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よって、最終結果はミサとニャンニャン刑事が勝ち、ニャンニャン仮面が負けた。
2対1だったので、ミサ達が勝利したのであった。
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ニャンニャン刑事にコテンパンにやられたベルモンドは、
「まさか……そこまで反撃されるとは思ってなかった……」
と言い、愛用の改造車であろう逃走車に乗り込み逃走した。
ミサとニャンニャン刑事。そして、ニャンニャン仮面はベルモンドを見送るようにすれ違った。
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ベルモンドが襲来して3時間が経った。
ピーンポーンパーンポーン♪
「生徒、職員にお知らせします。怪盗ベルモンドは謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサとニャンニャン刑事、ニャンニャン仮面が見事に追い出しました。本日の5限目と6限目は中止します。生徒のみなさんは速やかに帰りましょう。バスの時間は16時15分、17時10分、17時50分の全3便です。職員のみなさんは緊急職員会議を行いますので、帰りのショートホームルーム終了後、会議室に集まってください。もう1度繰り返しお知らせします……」
という紫苑の落ち着いたアナウンスが流れ、校庭に避難していた生徒達や教師達が、
「やっと終わったよ」
「結構長かったよな」
「誰だろう? 謎の白衣の美女パースエイダープレイヤー・ミサやニャンニャン刑事とニャンニャン仮面って」
「おそらく政府で雇ってる人達がやってるんじゃないの?」
「なるほど」
と言いながら自分の教室へ戻って行く……。
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無事に教室に戻ることができた生徒達は先生がくるまでおしゃべりをして待っていた。
すると、
「ハイ、じゃあ、席に着いてー。帰りのショートホームルームを始めるよー」
春原が教室に入ってきた。
「ハーイ」
「先生、くるの早い!」
「もう少しゆっくりきてくださいよ」
生徒達はいそいそと自分の席に着く。
「それでもゆっくりきたんだけどなぁ……。明日から中間テスト2週間前になるからそろそろ勉強を始めてね。3年生の1学期のテストは重要だから、赤点取ったら承知しないからね!」
「ハーイ」
「んじゃ、今日は終わり! みんな速やかに帰るんだよ!」
春原はそう言って教室を出た。
生徒達は帰路につくなり、おしゃべりをしたりして放課後を過ごし始めた。
この学校の非日常な学校生活が始まったばかりの騒動の話であった。
2014/09/14 本投稿
2014/11/10 改稿
2015/08/12 改稿