22話 クラスでクリスマスパーティ♪
今日は2学期の最後の日である12月25日はクリスマス。
そして、終業式の日でもある。
3年生は部活動を引退し、ほとんどの生徒達が進路が決まり、ほっとしていた。
しかし、終業式が終わったものの通知票が配布されていないため、生徒達はドキドキしている様子が見て取れる。
「ふーっ。やっと、2学期が終わるね!」
「うん!」
「今年の2学期は受験や就職試験でバタバタしたけど、去年より充実してたよね?」
「うんうん」
「だよね」
「紫苑はベルモンドに誘拐されたりして大変だったけどね」
「うん。凄く大変だったし、怖かったよ」
「それでも戻ってきてくれたもんね!」
「うん!」
「そうだね」
「球技大会では優勝することができたし、学校祭の『コスプレシアターカフェ』は新感覚だったらしくて楽しんでもらえたしね」
クラス全員で2学期を振り返る。
紫苑はその時、引っかかることがあった。
「『コスプレシアターカフェ』じゃないよ? 『シアターカフェ』だよ?」
と彼女が訂正する。
「どっちにしろコスプレしたのは事実じゃん」
「そうだけどさ……」
「だろ?」
「そういえば、あとは遠足だけだよね……」
「予餞会が終わったら、みんな、バラバラになるんだよね……」
「うん……」
「残り少ない高校生活を悔いなく過ごそうよ! ね?」
「うん!」
「そうだね!」
彼女らは残り少ない高校生活を悔いなく過ごすことを決意した。
*
あれから数分後……。
「ハーイ、みんな! お待たせ! これから通知票を配っていくよ!」
「それが終わったら、楽しいことが待ってるぞ!」
春原と秋山はサンタクロースのコスプレ衣装を着て教室に入ってきた。
そんな彼女らを見た生徒達は、
「先生達がついに壊れた……」
「秋山先生が春原先生の被害を受けてる」
「2人とも無駄にテンションが高いなぁ……」
「春原先生はともかく秋山先生は恥ずかしくなかったんかな……」
「秋山先生、哀れだ……」
とひそひそと小声で話していた。
一部の生徒達はかなり引いている。
*
一方、彼女らの隣の3年4組は、
「みんな、通知票を配るよ」
「ハーイ」
「じゃあ、出席番号順ね! あ……」
福山が出席番号1番の生徒を呼ぼうとした時に、
「いつも1番からだからたまには最後の38番からにしてー。それかシャッフルー」
「やめて、怖いから!」
「でも、通知票が配られるのあと何回かしかないじゃん」
「でも……」
「面白そうじゃん、シャッフル」
「たまにはハラハラしたいし」
と生徒から案が出てきた。
「じゃあ、シャッフルね! 1番は……」
福山がきれいに出席番号順に重ねられた通知票を適当に1枚抜く。
「菊池!」
「ハーイ!」
「菊池は現代文と数学、よく頑張ったね。世界史はあともう少し頑張ろうね」
福山はその生徒の努力した点と努力すべき点を言う。
「ありがとうございます! やっぱり変わらなかったな……。世界史、頑張ったんだけどな……」
こちらは春原のクラスに比べて多少のドキドキハラハラ感があるだけで、至って普通のロングホームルームである。
*
さて、5組では……。
「通知票が配られていい意味で嬉しかったり、がっかりしてる中で申し訳ないけど!」
「さつき、俺が楽しいことが待っていると言った! それはクリスマスパーティーだ!」
と春原はいつものテンションで、秋山は春原から事前に台本をもらって頑張って覚えてきたという口振りで生徒達を前にして言う。
「おおっ!」
「だから、サンタさんのコスプレしてたんだ!」
「なるほどね!」
「楽しそう!」
と生徒達が周囲とざわめきだす。
「みんな、クリスマスパーティー、やる?」
2人は生徒達に問いかける。
「うん!」
「ハイ!」
「やる!」
彼女らは各々の反応を示し、その準備をし始めた。
*
約数10分後……。
教室の準備が整い、生徒達はサンタの帽子やら、トナカイのカチューシャなどを装着している。
「準備できたかな?」
「うん!」
「先生達はみんなに伝えたいことがあります!」
「なんですか?」
「なーに?」
「みんな、進学先合格、就職内定おめでとう!」
「先生、普通に言えばよかったんじゃないですか?」
とサンタの帽子を被った紫苑が2人に突っ込みを入れた。
「夏川は意外と突っ込むな」
「普通に言ったら、面白味がないじゃん!」
「そうですけど」
「ワーイ!」
「先生達、ありがとうございます!」
それを聞いた生徒達が嬉しそうである。
2人は企画して、さらには恥ずかしい思いをしてよかったと思ったらしかった。
*
そのあと、約1時間から2時間ぐらいゲームをやったり、カラオケをしたりして、彼女らは楽しい時間を過ごした。
*
数分後……。
春原達は何かを乗せたサイドテーブルらしきものを何回か往復して7個持ってきた。
おそらく昨年度まで存在していた専門教科棟の中にある製図室という部屋から持ってきたのだろう。
「よし、クリスマスケーキを分けようか?」
と秋山が、
「それから、写真も撮ろうか!」
と春原が例のごとく愛用のカメラを取り出す。
「うん!」
「ハイ!」
「えっ!?」
「ところで、春原先生。写真ばかり撮ってどうするの?」
1人の女子生徒が春原に問いかける。
「みんなの高校生活の最後の思い出を残しておきたいからね。このクラスを受け持ったこと、過ごしたこと……。これからもずっとね」
「へぇー」
「春原先生はなんか、定年退職するか違う学校に異動する人みたいなことを言うね」
「そうかな? そんな風に聞こえる?」
「うん」
「みんな、ケーキを分けたから持ってけ」
秋山と男子生徒2人がケーキを切り分けたらしく、1つずつ紙皿にのせていた。
「ハーイ!」
「今行く!」
彼女らは彼らから切り分けてもらったケーキを受け取った。
*
ケーキを食べたり、写真を撮られているうちに、時計の針は16時50分を指していた。
「こんなに楽しいクリスマスパーティーは幼稚園以来だったな……」
「うん。またいつか、みんなで集まって何かやりたいよね」
「先生、凄く楽しかったよ!」
「楽しい時間をありがとうございました!」
生徒達からの感想を聞いた春原達は、
「みんなに喜んでもらえてよかった……」
「秋山先生は最初は嫌がったんだけどね」
「そうだよ。20日くらいに突然、クリスマスパーティーをやろうって言われて……。ケーキを予約するの大変だったんだぞ」
「サンタのコスプレも嫌がってたし」
「は、恥ずかしいだろ!?」
「そりゃ、そうだろうね……」
「そんないきさつだったんだ」
「そうなの! あっ、みんなであれを言おう」
「そうだな。せーの!」
「Merry Christmas! And happy new year!」
「ロングホームルームは終わりね! みんなよいお年を過ごしてね!」
「ハーイ!」
「先生達もよいお年を!」
生徒達が使用した紙皿を片付けをし、帰路についていった。
*
こうして、このクラスで過ごしたクリスマスパーティーは終了した。
今回は珍しくベルモンドが出てこなかったのは気のせいだろうか?
気のせいだと信じたい……。
2015/04/04 本投稿
2015/08/14 改稿




