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不思議な事件が起こる学校で【原作版】  作者: 楠木 翡翠
第8章 11月 学校祭で起きた悲劇~化学と音楽とバトルの化学反応~
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14話 紫苑と科学部

 秋が深まってきた11月のある水曜日の帰りのショートホームルームが終わり、紫苑が鞄を持ち、教室から出ようとした時のことである。


「ねぇ、夏川」

「ハイ?」

「突然で申し訳ないんだけど、今年の学校祭で科学部のお手伝いをしてくれないかな?」

「えっ……!? 科学部ってあの男子がたくさんいるところですよね?」

「うん。簡単に行っちゃえばね……。白衣のお姉さんがいれば、小さい男の子はもちろん、女の子も興味を示してくれるかなぁと思って……」

「そうですか……。でも、私は放送委員の仕事と吹奏楽の発表もあるんですよ?」

「そっか……。夏川も大変なんだね」

「そうですよ。ところで、今年の科学部は何やるんですか?」

「まだ未定だけど。大丈夫! ちゃんと福山先生からの許可が下りてるからね!」

「福山先生からの許可が下りてるって……」

「そうだよ! 早速だけど、臨時の白衣のお姉さん、今から化学室に行こうか!」

「……。ハイ……」


 春原は紫苑の手首を優しく掴むと廊下にいる生徒達の間を通って化学室へ向かって行った。



 *



 春原に優しくかつ強引に連れられてきた紫苑は化学室にいる。

 そこにはたくさんの白衣のお兄さん達という名の男子生徒達が何やら話し合っていたらしく、春原が姿を現したため、話し合いは一旦中断。


「先生、こんにちは」

「こんにちは」

「先生、今日は嬉しそうですね!」

「うん! 今日は学校祭だけの臨時の白衣のお姉さんさんがきていまーす! どうぞ、入って!」


 紫苑は嫌々ながら、化学室に入ると、春原は少し後ろを向くよう促し、小声でこう言った。


「夏川は本当に男子がいる空間がダメなんだね」

「ハイ。男子がいると、私の人格が崩壊しますが、気にしないでください」

「了解」


 そして、彼女らは男子生徒達がいる方を向く。


「こちらは臨時の白衣のお姉さんの夏川 紫苑さん! 私のクラスの生徒でーす!」


 春原は勝手に紫苑の紹介を実に楽しそうにしている。


「先ほど紹介に預かりました。夏川 紫苑です。今日から学校祭までの短い期間ですが、よろしくお願いします」


 彼女は最後に一礼した。

 それを聞いた科学部の男子生徒達が……。


「オーッ! 本当に女の子だ!」

「この科学部に女の子がきたなんて……」

「新入生の見学期間に何人か女の子がきますけど、なかなか入部してくれないんですよね……」

「オレは女の子がきたから幸せすぎる!」

「……」


 突然騒ぎ出した彼ら。

 彼女は苛々し始めたようだ。


「この部に女子はいませんが、忙しい中、手伝いにきたのに、全くもって男子は……」

「夏川、ストップ!」


 暴走しかけた紫苑を春原が止める。

 1人の男子生徒が、


「先生、先輩、このお姉さんの白衣を着たら、結構似合いそうだと思いませんか?」

「うん」

「とっても似合いそう」

「本心なのか、お世辞なのか分からないし、棒読みだし……」

「まぁまぁ……」


 春原は珍しく少し呆れ顔を見せていた。



 *



 同じ頃、音楽室には福山と10人くらいの部員がロングトーンを終え、学校祭で演奏する曲を練習しようとした時……。


「あれー? 先生、今日は夏川さんはこないんですか?」

「うん。学校祭が終わるまでの毎週水曜日はこないよ。彼女は今、科学部と兼部してるからね」

「ふーん……」

「1年生はあとで紫苑の楽器と譜面台を片付けてね」

「ハイ」

「ついに、紫苑が捕まっちゃったか……」

「しょうがないよ」

「あの春原先生だもん」

「ハイハイ。3年生、お話はおしまい! コンクールの時にやった曲とか練習したかな? 全部1回通すよ」

「ハーイ」


 彼女らは楽器を構え、福山の指揮を見た。



 *



 吹奏楽部の練習が本格的に始まり、化学室ではそれをBGMに科学部員と紫苑は話し合いを始めた。


「じゃあ、今年の科学部のイベントはどうしようか? 何か案がある人はいる?」


 春原は自ら司会を始めた。

 その時、紫苑は先生は仕切りたがりやなのかなと思っていたが……。


「その仕事、ボクの仕事なんですが……」

「先生、部長がいるんだから、ちょっと引っ込んでてよ」


と言ったことから部長がいることが判明した。


「そう?」


 春原は彼らにそう言われたため、渋々と生物準備室に戻る。

 彼女がいなくなり、彼らだけになったので、話し合いが再開された。


「では改めまして、何かやりたいものはありますか?」

「今年決まってるのは人が乗れる程度のホバークラフトとべっこう飴は確定だよな」

「うん」

「そうだな……。一昨年の学校祭にやったスライムはどうかな?」

「あれはウケたよな」


 紫苑は科学部の部活内容は何も知らない。

 彼女は近くにいた部員に問いかけた。


「あの……この部の活動内容ってなんですか?」

「えーと……主にいろいろな実験と学校祭の準備くらいですね。ちなみに、今年は先月中に人が乗れる程度のホバークラフトを作り終わったので、それは確定ですね」

「へぇー……」



 *



 時刻は17時を回り、放送が入った。


「校内に残っている生徒に連絡します。これから校内の施錠を行いますので、戸締まりをしてから下校してください」


というアナウンスだ。

 放送していたのは誰だろうか。

 先ほどまで生物準備室に引っ込んでいた春原が顔を出した。


「みんな、話し合い中に失礼するけど、今、17時だけど……。今日は18時までにする?」

「そうですね……」

「分かりました。その件は微調整しますので」

「ハーイ。分かったよ」


 春原は生物準備室に戻った。

 そして、彼らは話し合いを再開したのであった……。


 彼女らは気づかなかった……。

 誰かが洗脳される予兆を……。

2015/01/03 本投稿

2015/08/14 改稿

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