12話 すべてのものを取り戻した時
「ミサさん、ネオンって誰ですか?」
「紫苑ちゃんはついさっきまでベルモンドの相棒だったのよ」
「へぇー……いろいろと大変だったんですね……」
紫苑はミサの顔を首を傾げながらじっと見つめている。
「ん? 紫苑ちゃん、どうしたの?」
「あ、なんか、ミサさんに似たような先生がいたような気が……」
「……? そうなんだ。その先生はどんな先生なの?」
「その先生はとても優しくて、白衣がとても似合う理科の先生なんです」
「へぇー。その先生に1度会ってみたいなぁ」
「いつか会えますよ」
「いつかね」
「じゃあ、私は体育館に行きますね。ミサさんも頑張ってください!」
「ありがとう」
彼女らは数分くらい話し、紫苑は体育館へ向かった。
*
あれから数分後……。
ニャンニャン刑事がめちゃくちゃになった教室に姿を現した。
「どの教室も酷いなー……」
「あっ、ニャンニャン刑事さん、こんにちは(こんばんは、かな?)。今日はくる時間が遅かったけど、どうしたの?」
「やあ、キザ刑事は遅刻か?」
「ミサさん、変態仮面、遅くなってすまない。今日、ボクは諸都合があって……(実はベルモンドによって洗脳されてたなんて言えない……)」
「そっか。刑事って大変だもんね」
「やっぱり、キザ刑事は仕事もプライベートも大変なんだな」
「へへっ。なんだと!? さて……怪盗ベルモンド、覚悟はできているだろうな?」
「さあね……」
「どうだか……」
ニャンニャン刑事はついに壊れたのか……?
ミサとニャンニャン仮面は顔を見合わせていた。
「よし、行くか!」
「どうした? キザ刑事」
「ニャンニャン刑事さん、狂っちゃったの?」
「いや、ちょっと、ベルモンドと1対1で話してくる」
*
2階教室棟と管理棟の渡り廊下。
「ちくしょう! 私はなんてことをしたんだ!」
「ベルモンド、ちょっと、話があるんだが……」
「なんですか? ニャンニャン刑事さん」
「ストレートに聞くが、なぜ、彼女(紫苑)を洗脳させたんだ?」
「……」
「黙ってないで何か言ってくれ!」
「……。私はあなたの元の姿はもちろんのこと、あなたのすべてを知っています。そして、ミサさんやニャンニャン仮面さんのことも……。あなたのあなたの左手の能力にひかれました。それで彼女を私の相棒にしました……」
「……。なるほど……。話は終わりだ」
「……。そうですか……」
という訳で今回の事件は解決したのであった。
*
翌日の朝のショートホームルーム前……。
いつもの朝の光景だった。
話の話題は昨日の放課後のことで持ちきりである。
「昨日の放課後はなんか知らないけど、騒がしかったよね?」
「そうだね」
「きっと、ベルモンドとかが暴れてたんじゃない?」
「あくまでも噂なんだけどさ、2年生と1年生の一部の教室が凄い被害受けたんだってさ」
「そうなんだ」
「で、そのクラスは今日から専門教室棟で授業だってさ」
「うちらのとこじゃなくてよかったよね」
「まぁね」
「でも、移動するのが大変そうだよね」
「うん」
「紫苑も戻ってきたしね!」
「おかえり!」
「ただいま!」
と生徒達が話していた。
*
チャイムが鳴り、生徒達が各自の席に着き始める。
春原が教室に入ってきた。
「ハイ。みんな、席に着いて! 今日からテレビ撮影が再開するよ」
「あれ? ベルモンドは?」
「オイ、それ、さっきも言ってなかったっけ?」
「ベルモンドは昨日、逃走したらしいよ」
「そっかぁ」
「なるほど……だから昨日の放課後、なんか騒がしいなと思ったからさ」
「という訳で、夏川は任欠ね! ナレーションの方は最初から撮り直しになるけと、頑張ってくるんだよ! このショートホームルームが終わったらすぐ放送室ね」
「ハーイ!」
「紫苑、頑張ってね!」
「うん! 行ってきまーす!」
「行ってらっしゃーい!」
クラスメイトに見送られながら紫苑は台本を持って放送室に行った。
*
放送室では紫苑のナレーションの撮り直しが行われた。
そして、彼女のクラスメイトはテレビカメラに映ることができてとても嬉しそうであった。
*
時は流れ……。
10月のある日曜日にちょっと事件に巻き込まれながらも時間をかけて撮影した学校紹介が放送された。
*
放送された日の翌日の朝のショートホームルーム……。
「ハーイ! みんなは昨日放送された学校紹介は見たかな? 見た人は手を上げて!」
春原は機嫌よく言うが、生徒達は誰も手を上げなかった。
見たけど手を上げるのが恥ずかしいからだろうか?
それとも見ようと思っていたが、放送日を間違えたからだろうか?
それとも単に見ることを忘れたのか?
様々な理由が考えられる。
春原はそんなことを気にしてないかのように、
「えーっ! 誰も見てないのー。私はリアルタイムで見たし、録画もしたよ!」
と録画し、ダビングしたであろうDVDを掲げて言っている。
「だって、バイトで忙しかったんだもん」
「その日検定だったし……」
「録画したけどまだ見てない」
「放送されたの昨日だったんだ……」
などと、次々と生徒達から本音らしきものが飛び交う。
「そっか。じゃあ、明日のロングホームルームで、このDVDをみんなで見ようか!」
「うん!」
「ハイ!」
*
火曜日……。
6限目の開始を告げるチャイムがなった。
今、春原が受け持つクラスである3年5組の生徒達がいるのは生物室。
「じゃあ、再生するよ!」
春原はDVDプレイヤーに学校紹介の映像をダビングして持ってきたDVDをセットし、再生ボタンを押した。
軽快な音楽のオープニングが流れ、映像とナレーションはもちろんのこと、BGMは学校のイメージに合わせてなのかは不明だが、爽やかさが伝わってくるものが流れている。
*
そして、映像の最終シーンで生徒達は驚いた。
映っていたのはミサ達が戦っているところが流れたからである。
「あっ、謎の中略ミサさん達だ!」
「でも、ニャンニャン仮面さんはいるのに、なんで、ニャンニャン刑事さんはいないの?」
「誰? この黒ずくめの女の子は?」
「さぁ……」
「あっ、ベルモンドじゃん!」
「本当だ」
と、生物室中が黄色い声を上げ始めた。
そんな中、春原と紫苑は苦笑いをしながらそのシーンを見て、
「みんなはこのことは知らないですものね……」
「そうだね……」
と2人は他の生徒達に聞こえないように話していた。
2014/12/07 本投稿
2015/08/13 改稿




