10話 戦闘開始までのカウントダウン
次の日……。
春原と秋山は職員室で紫苑の様子の変化について話していた。
「夏川の様子がおかしいと感じたのはここ2、3日くらいだけど……」
「確かに……。最近、彼女は何かを突き止めてやるっていうような目をしてるんだよなぁ……」
「本当に彼女はベルモンドに洗脳されたのでは……?」
「なぜ、ベルモンドは彼女を狙ったんだろう?」
「じゃあ、本人に聞いてみる?」
「そうだな」
彼等は彼女に事情を聞くことにした。
*
その日の朝のショートホームルーム終了後……。
「夏川、今日の放課後にちょっと話があるから生物準備室にきてくれる?」
「ハイ。私からも話があるので、先生の用件が済み次第、元家庭科のパソコン室で話します」
「分かった」
そうして、春原と紫苑の2人は1限目の授業の準備に取りかかった。
*
時が流れ、放課後に入った。
生物準備室に1人の女子生徒が姿を現した。
そこには春原はもちろんのこと、秋山も同席していた。
「夏川、なんで? なんで、ベルモンドに洗脳されたの?」
「……」
「黙ってないで何か言ってよ!」
春原が紫苑の肩を掴み、前後に揺する。
「……」
紫苑は黙り込んでいる。
「本当にどうしちゃったの? いつもの夏川なら……話してくれるのに……」
春原はほぼ涙目である。
同席している秋山も深刻そうだ。
そんな時、紫苑は口を開いた。
「先生? 私はベルモンドに洗脳されたのは事実です」
「えっ!?」
「もう1回言います。私はベルモンドに洗脳されています」
「う、嘘……」
「本当、なんだな」
「ええ。もう先生の用件は済みましたよね? 次は元家庭科のパソコン室に行きましょう」
紫苑は足早に生物準備室から出て行った。
「うん」
「分かった」
春原と秋山も彼女の後を追った。
*
生物準備室がある管理棟から元家庭科のパソコン室がある専門教科棟に着くまでに5分程度の時間を要する。
春原達がそこに着いた時には紫苑は既にそこに着いており、いつ姿を現したのかは不明なベルモンドと一緒に何やら準備をしていた。
「先生達はイスに座って少しの間、待っててください」
「何が始まるんだろう?」
2人が首を傾げて待っていると、映像が始まった。
最初にスクリーンに映し出されたのは何枚かの春原と秋山の静止画が流れ、職員室で話をしているものや授業中にどのようにして撮ったのか分からないようなもの、さらには2人の変身シーンの動画まで流れていた。
時折、ナレーションが入ったり、マウスのクリック音が聞こえたりする。
数分後、映像が終わったようだ。
「映像はこれで終わりです」
「これ、私達じゃん!」
「案外、バレてるじゃないか! 隠し撮りしたバカが分かったぞ!」
「本当に突き止められちゃってる!」
「結構、手が込んだ映像だなぁ」
2人は関心しているような口ぶりである。
「お褒めいただき光栄ですわ。貴方達の正体を突き止めたのは私なんだから」
秋山は紫苑の顔を覗き込む。
彼女は通常なら黒の瞳をしているが、今は紫色の瞳をしており、口調も変わっている。
「オイ、夏川の眼の色と話し方が…」
「変わってる……」
「ええ、そうですよ。彼女は貴方達の教え子ではありません。今は私の相棒ですから。さて、ここからが本当のゲーム開始ですよ」
今まであまり出番がなく、ようやく話したせいか、ベルモンドは少々おかしな声で言った。
*
春原と秋山は別々の部屋で本章2回目の変身をする。
そして、2人は決意した。
「すべては私(俺)の生徒のために……」
と。
そして、彼等は戦う。
すべてのものの取り戻すために……。
2014/11/27 本投稿
2015/08/13 改稿




