9話 2人の正体を探る者達
生物室を覗いて見ると、2人の先生達が何やら話している。
自分達が受け持っているクラスの生徒が誘拐され、さらには洗脳までされてしまったというショック感に浸っていた。
「……。まさか、夏川が誘拐されたなんて……。あり得ない……」
「そうだよな……。意外すぎるよ……」
次の瞬間、カシャッ! とカメラのシャッター音が2人の耳に聞こえてきたようだ。
「今、カメラのシャッター音、聞こえなかった?」
「うん、聞こえた」
「誰だろう……」
「校内のバカが号外でも作るんじゃないのか? そうじゃなかったら……」
「ないない! でも、ありえるかも……」
2人が話している間に遠くに消えていく足音。
その足音を立てていたのは洗脳されている紫苑である。
そして、彼女はカメラをしまいながら口元に笑みを浮かべ冷ややかな声で、
「あの2人の正体を暴いてやるわ……! 絶対に!」
と脅すような口調で彼女は教室に向かった。
*
紫苑が教室に戻ると、クラスメイト達は心配していたようで、彼女に近づいてくる。
「紫苑、大丈夫だった?」
「大丈夫だよ」
「何かあったら、うちらに言ってね?」
「うん、ありがとう」
彼女は見た目の洗脳は解かれたようだが、中身は変わらず洗脳されたままの哀れな少女である。
「今日はいろいろあったから疲れたでしょ?」
「うん」
「なら、部活休んだら? 福山先生に伝えておくよ?」
「じゃあ、そうしようかな。今日は休むね」
「了解! また来週ね、バイバーイ!」
「バイバイ」
クラスメイト達と別れ、彼女は家路についた。
*
月曜日の朝のショートホームルーム……。
「今日から当分の間、テレビ撮影は中止になったからね」
「えっ!?」
「先生、なんで!?」
「先週の金曜日に怪盗ベルモンドが出たからね……。それにピンチがピンチを呼ぶかもしれない……」
「また出るかもしれないってこと?」
「うん。かもしれない」
「そうか……」
「残念」
そんな最中、1人の女子生徒は一瞬ではあったが、ニヤリと笑う。
表面上には表さず、心の中では高笑いをしたのであった。
*
やや時間が流れ、お昼の休憩時間に入った。
1人の女子生徒があるパソコン室にいた。
この学校のパソコン室は3ヶ所ある。以前にも描写したが、前は5学科の実業高校であった。
1つは元商業科のパソコン室、1つは元家庭科のパソコン室、最後の1つは元農業科のパソコン室となっていた。
しかし、現在3年生が1年生の時に実業高校から普通科に切り替わったため、パソコンを使う授業の時、先生達はどこのパソコン室にするか迷うことが時々ある。
パソコンの授業が重なった時は便利だというメリットがある反面、教室からの距離が遠く、移動することに時間がかかるというデメリットもある。
ちなみに、彼女がいるのは元家庭科のパソコン室である。
*
そのパソコン室のドアが開き、ベルモンドが姿を現した。
「こんにちは、ネオン」
「こんにちは、ベル」
「任務は順調か?」
「ええ」
「2人の先生の隠し撮りしておいた。是非、使ってくれ」
「どうも。実は私も隠し撮りをしていたのよ?」
ネオンと呼ばれた女性はベルモンドから隠し撮り写真を受け取り、彼女が撮ったとされるそれを出した。
「彼等が正解かどうかは保証できないが」
「大丈夫。実際、私には2人の正体はもう分かっているわ……」
ネオンはパソコンの電源を切り、彼女はそっと眼を閉じた。
2014/11/24 本投稿
2015/08/13 改稿




