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第4話:勇者VS賢者のシチュー

 

 家に帰ってきた俺は懺悔室で手に入れた情報をまとめていた。

 とりあえず俺が現状分かってることは、レティスがやべぇってことと今日の夕飯が彼女のシチューってこと。


「回避は無理だから食べるけど」


 今までの旅でよくで出ていたシチュー。

 頻度が多かったその食事で、たまにぐらいだが食べた日の夜に体が火照っていたことを考えると、何かを盛られてる可能性があるけれど……逆にたまにしかなかったってことで変な感じである。

 仮に盛られていたとして、その晩だけは朝が来るまで鍛錬していたので襲われている心配はない。


「どうしたのノクス?」

「ダインか……えっと、聞きたいんだけどさ旅の食事って覚えてるか?」

「覚えてるよ。レティスが作ってたよね」

「美味かったよな?」

「変なノクス、レティスの料理はいつも美味しかったよ?」

「だよなぁ」


 一緒に居間で過ごしていた相棒に確認をとれば、やっぱりというかそんな答えが返ってくる。彼女が気付いてないのならば、安心というか何も問題がないのだろう。

 そもそもだあの旅の食事は自分で装うスタイルだったのでよく考えれば、何かを盛る暇などない。


「急な質問だけど、レティスと会ったから?」

「あーまぁそう。それに今日作りに来てくれるだろ、懐かしくて」

「ふふ、よかったね。私も久しぶりに食べれるなら楽しみ」


 それから夜になるまで家を軽く片付けて、レティスのシチューに合うようなパンでも用意しておく。怖い……というか意味不明が続いているが、流石に何か盛られている可能性は――減った、よな?


「あ、来たみたい」

「そうだな迎えてくる」


 チャイムが鳴る。

 この家に訪れるのは宅配の人か新聞配達の人ぐらいなので、この時間を考えると来たのはレティスだろう。

 少しの緊張、過去の旅の――いや、ずっと関わってきた彼女と、懺悔室に来た彼女を当てはめながらも齎された最初の爆撃を加味すると変な汗が流れる。

 でもあれ――いや、最初相談やば過ぎてあれも何もないか。


「合鍵渡したのに、鳴らす必要ないだろ」

「あ、そういえばそうでした。なんか緊張しちゃいまして」

「お前らしいな。あ、材料多いが高かっただろ」


 彼女が下げている布の手提げ袋。

 その中にはかなりの食材が入っておりどう見ても三人分ではない。

 

「にしても多くないか?」

「えっとですね、せっかくなら作り置きでもしようと思いまして、他に色々作れるように買ってきたんです」

「……まじか、ありがたい。というかそれなら払うぞ悪いし」


 助かるなとか思いつつも、ふと過る嫌な予感。

 シチューのみだったら何かを盛られる可能性が減ったが、沢山作られるとなると何に何が入るか分からない。


「早速なんですが、キッチン借りても良いですか?」

「あーそれなんだけど俺も手伝うわ」

「……勇者様がですか?」

「あぁ、ここ四年で料理始めてさ」


 だからこそ俺がやるのは一緒に作るということだ。

 流石に一緒に作る中で何かを盛る暇などないはずだ。

 故に、これこそが最強の作戦。まさに完璧であり、この手段を使えば俺の身の安全が保証される。


「いえ、流石に私が作りに来たのに悪いですよ」

「いや作り置きするってことはかなり時間かかるだろ、一人に任せるのはさ」

「…………」


 じとーっと見られる俺の顔。

 なんでそう頑なに手伝わせてくれないか分からないが、絶対にここは譲れない。

 視線が交差する。だけど、数秒で諦めてくれたのかそれならと言ってくれたので、なんとかキッチンに二人で入れた。

 かなりの数の食材が袋から出されて、それで大体作れそうな料理を決めた俺達はそのまま作り始める。


「そういえば、懐かしいな。なんか子供の頃にままごとでこういうのやったっけ?」


 ふと、思い出すんのそんな昔の話。

 今とは違いお転婆だったレティスが持ちかけてきたおままごと、そこで俺達は家族という設定で料理を一緒にした事を覚えている。


「そういうこともありましたね」

「こうして成長してからやると、なんか本当に家族みたいだよなぁ」

「…………我慢しなさい私」

「んあ、なにか言ったか?」


 こうして二人して二十歳になって再開して料理を作ってたからそう思ったのだが、突如としてレティスが固まり何かを言い聞かせていた。

 大丈夫かとも思ったが、すぐにテキパキと料理を勧め始めたので心配する必要はないようだ。


「よし……思ったより作ったな」

「そうですね。私としては勇者様が料理できるようになってて驚きです」

「そりゃあ、四年もやってたわけだしさ」


 とりあえず暫くしてから料理が完成。

 今日食べるのは彼女がメインで作ったクリームシチューと、俺が用意していたパンに追加で作ったソーセージとポテトのチーズ焼きを加えた三品だ。

 他の料理は冷蔵魔道具で保存したし、暫くは飯には困らないだろう。


「ダインも待ってるだろうし、運ぼうぜ?」

「そうですね、先に行っててください」

「了解、並べてくるわ」


 とりあえず量のあるチーズ焼きを持てって、俺は続けてシチューを運ぶ。

 一瞬だけ目を離してしまったが、その隙に何かを仕込むなんてことは出来ないだろうし警戒も完璧。それに、ここまで邪推し続けるのは彼女に悪いし、もう忘れて良いかもしれない。


「改めて久しぶりレティス」

「はい、私こそ。ダイン様も元気そうで何よりです」


 それからは他愛のない食事の時間。

 久しぶりに俺が食べる故か、口に含む直前までレティスに見られるということがありはしつつも、それは彼女の性格を考えると不思議ではないので大丈夫。

 

「あ、今日は遅いし泊まってけよ」

「いいのですか?」

「部屋は俺とダインのしかないからダインの部屋に泊まって貰う感じになるけど」

「ですが、流石に悪いような」

「いや、夜遅い中帰らせる方が心配だ」

「……それなら、甘えさせて貰います」


 警戒は薄めた。

 だからこそのこの提案。だって、本当に彼女が何かを盛ったり襲ってくるのならば今日で確かめられると思ったからだ。これでシロなら、これからも普通に付き合えばいい訳だし……と、そんなこんなで寝ることになったんだが。


「あれ……マジでなんか盛られた?」


 深夜のこと、何故か体が火照って目が覚めた。

 妙に目が覚めるというか、意識が定まらないというか……変な気分になってくる。


「…………おいおいおい、え? マジ、終わった?」


 一人自室で自問自答。

 ……溢れ出る嫌な予感に苛まれながらも、俺のベッドから感じる第三者の気配に驚いた。薄い布団を掛けているにしては暑いと思ってめくってみれば、そこには寝間着を着たレティスの姿が……。


「――あ、え? いッ――たい」

「……ふぇ?」


 驚きのあまりに放心し、ベッドから飛び起き頭をぶつける。

 その反動で目が覚めるレティスだが、俺の姿を認識した瞬間にみるみる顔を赤くして――そしてそのまま。


「え、なんで勇者様がベッドに?」

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