表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

思いやりあう相談

お待たせしちょります。

とりあえずエタらないようにします。

BBとの初陣以降、ガンズロ生活はのほほんとした平和なものになっていた。


というのも、例のおばあさんにゲームの基本的なことをレクチャーしたり、お孫さんの話を聞いてあげるのがゲーム内の日課になっていたからだ。


根が生真面目な中田は、おばあさんから質問されたり、操作方法のレクチャーをお願いされると断りきれなかったのもある。


内心、早くチームを組んで対戦をしたいなと思うことも勿論あったが、それと同じくらいに頼りにされるのも悪くなかった。


また、彼が驚いたのは、おばあさんの飲み込みの速さだ。順応性とでもいうべきか。


最初に会った時は、誰かれ構わずボイチャを仕掛ける厄介プレイヤーに片足を突っ込んでいた状態だったが、話を聞くとオンラインのゲーム自体初めてだったみたいなのだ。


しかも、このゲームはヘッドセットを頭に取り付けて行うゲームなので、視覚と聴覚も奪われる。パニックに陥るのも無理はないだろう。


実際に、ロビーでの操作やメニュー画面操作、プレイヤー同士の交流方法も一回のレクチャーでほぼ完璧に把握していた。


今ではゲームのコミュニケーションで使うゲーム内メール機能も使いこなしており、普段は別行動していて何かあるとメールでヘルプをくれるようにまでなった。


お年寄りには思えないスピードで使いこなせるようになっていくので、そのことを本人に伝えたところ、「あたらしもの好きなのよね」と恥ずかしそうにしていた。


ともあれ、おばあさんは間違いなくゲームのシステム理解が進んでいる。この調子なら近いうちに中田から教えられることもなくなりそうだった。


...相変わらず、何でこのゲームで遊んでいるのかという一番謎なところは釈然としないが。

孫の為でも、操作まで習得する必要はないような気がする。

次会う時はその辺りしっかり聞いてみようと決意し、今日もガンズロを起動する。


ゲームにログインすると早速メールが届いていた。

またBBさんかな?とすぐさま確認すると、意外な人物からのものだった。


その差出人はついこのあいだ一緒に戦ったセラさんだったのだ。すぐさま内容を確認する。


「タンクさんへ

突然連絡してごめんなさい。この間は組んでいただいてありがとうございました。


突然ですが最近、僕の周りで新しくこのゲームを遊び始めた女の子がいます。


先日組んでいただいたBBさんとタンクさんなら彼女と同じレベル帯で楽しく遊んでいただけるんじゃないかと思い、連絡させて頂きました。


僕は既にチームが決まっていて、彼女とのレベル帯も合わず上手く遊べず難儀していました。


もちろん、無理にとは言いませんが、先日のBBさんへの丁寧なレクチャーを見て、思わずあなたの事を思い出してしまいました。


彼女もいい人なので、もしフィーリングが合いそうなら一緒に遊んであげてください。


よかったらまた僕ともまた遊んでくださいね⭐︎

セラ」


最後の文章で少し茶目っ気を出して来たな...。タンクの第一印象だった。

この文章、悪しざまに捉えると体良く初心者のお守りを押し付けられているようにも見える。


しかし、タンクはそうは感じなかった。

何故なら、彼はこの手紙の文にあるように同じレベル帯の一緒に遊べる人を探すのにとても難儀しているからだ。要は、同じ悩みを持っているのである。


そして、今一緒に遊ぶ人を探している彼にとって、この提案は願ってもないものだった。

ただ少し気がかりなのは自分がそんな風に初心者さんのレクチャーを受けもって大丈夫なのか、という不安要素。


実際のところ、向こうから頼んできているのだからそこまで考える必要はないのだが、自分のゲームの下手さを痛感している彼は自信がなくなりつつあった。


その後、少ししてBBさんから連絡があり、合流してこの件の話をする。


「もう一人初心者さんがいらっしゃる?」


「そうなんです。どうやら先方は、オレたちが遊び相手がいた方がいいんじゃないかと思ってるみたいで...」


ちょっとサラリーマン風の弁明になってしまう。この辺りはもう職業病のようなものだ。


「うーんそうねぇ...」


BBさんは少し考え込む。引き続きゲーム内のアバターは弄っていないので、最初に設定されている女性アバターだ。


場所は最初に会った初心者向けロビーのあるエントランスエリアの一角で二人は話していた。


彼女の姿はあくまでカスタマイズする前の素体といった感じで特徴はないのだが、かえってその控えめな感じがおばあさんに似合っているようにも見えた。


「タンクさんさえ良ければ、こっちは構わないんですけど...」


そこまでいって、しっかりとこちらを向き直りながら言う。


「文字通りの老婆心なんだけれど、タンクさん、初心者さんの指導だけじゃなくて、何かやりたいことがあるんじゃあないの?」


前々から感じていた事だが、このおばあちゃんは凄く年長者の威厳を兼ね備えていた。偉そうという訳ではなくて、何かこう隠し事や嘘をつく気になれない公明正大な雰囲気があるのだ。


「ええ、それはもちろんそうなんですが...。

この際だから、しっかりお互いの目的について話をするってのはどうでしょうか」


「そうしましょう、私もいろいろ教えていただいたからね。」


なし崩し的におばあさん、BBさんとのゲームでの人間関係を続けていたが、実はしっかりとこういった目的に着いての話はしてこなかったのだ。


「私の場合、大した話でもないからすぐに話させてもらうわね」


そこからおばあさんはとくとくと話し始めた。


「元々、何度もお話しした孫にあげるプレゼントとしてこのゲームを買ったんです。

でもあんまり孫はこのゲームに興味を示さなくって...」


確かにこのゲームはかなり難解な部類に入る。小さい子供がすぐ楽しいと思えるようなものではなかった。


「せっかく買ったのに、遊んでもらえないのも寂しいなって思って、何かこう私から楽しさを教えてあげられないかと思ったの」


「それでこのゲームを遊んでみるようになったんですね」


初めておばあさんと会った時のことを思い出す。確か当時の自分でもそんな推理をしていたが、概ね合っていたようだ。


「じゃあ今は、もう当初の目的は達成した感じなんですかね?」


こちらからゲームの仕組みをレクチャーしたし、対戦をメインにしないのならゲーム自体は問題なく遊べるはず。


「それはそうなんだけど、私も色々遊んでいるうちに楽しくなっちゃって」


「楽しい...このゲームがってことですか?」


こくりと頷くBBさん。


「もっと具体的に言うなら、このロボットに乗るのが凄く楽しくなっちゃってねぇ」


言われてみれば、前回も初陣とは思えない堂々とした戦いぶりだった。珍しい飛行機型だったのも印象深い。


「あの空を飛ぶタイプの機体は、うまく乗れる人が少なくて凄い難しいと言われているんです。よく乗りこなしますね」


「そうなのかしら?確かに最初は苦労したけど、機体のエンジン周りと荷重を意識して機体を作り替えたら、かなり気持ちよく飛ぶのよ?」


なんか凄い専門的な話をサラッとされた気がする。


「元々そういう機械を弄ったりみたいなのがお好きだったりするんです?」


この質問に対して、BBさんは目を伏せて少し沈黙する。聞いちゃいけなかっただろうか。


「機械弄りって程の複雑なのはあまりないけど、例えばちょっとした針仕事とか、孫の手提げみたいなのとかは作るの好きね」


「なるほど、創作全般がお好きなんすね。」


おそらく何か引っ掛かりがあったのだろうが、そこを深掘りする必要は今はないだろう。


「そうなの、だからこの世界も、とにかくもう少しロボットをいじって、飛ばしてみてっていうのはやってみたいのよ」


そういうことであれば、今回の話にお誘いするのも悪くはないのかもしれない。


「タンクさんは、このゲームをなんで遊んでらっしゃるの?」


今度はこちらが喋る番だ。包み隠さずこれまでの経緯を言葉にする。


「オレも、このゲームのロボットを戦わせる感じが凄い楽しくてですね。発売されてから少しずつ遊んでるんですけど、なかなか人間関係に恵まれなくて」


「いやー、そんなに社交的なのにちょっと信じられないわ」


おばあさんはそんな合いの手を入れてくれる。


「えーと、ですね。まあそりゃ、こないだ遊んでいただいたセラさんとか、良い人、ゲームが上手い人とはたくさんご一緒させていただきました。」


これまでの経験を思い起こしながら言葉を紡ぐ。


「ただオレはその、一緒にチームを組んで、継続的にゲームに取り組む仲間に恵まれなかったんです。やっぱり、若い人とは歳の差もあってなかなかソリが合わなかったりで。」


おばあさんが入ってるアバターは、こちらの目をじっと見据えて続きを促してくる。


「でも、やっぱり前にご一緒した戦いもありましたけど、このゲームは初対面同士でも一緒に盛り上がれる迫力と楽しさがあると思ってて。どうにか一緒に楽しく遊べる人がいないかなと足掻いている時にBBさんに出会ったんです」


「それで、一緒に遊ぶ人を探しているとおっしゃってたのね」


どうやら納得してくれたみたいだ。ひとまずホッとする。


「私もこれまで色々人の集いに参加させてもらったけど、確かに、一緒に何か作品を作ったり、物事を進めるっていうのはなかなか難しいものよね。腕前とか、使える時間も、気概もまちまちだし。」


「はい。感じのいい人は既に自分のチームがあったりして、なかなか組んで欲しいというのも難しくて。」


このやり取りで問題なくこちらの意図が伝わったのを確信する。本当に聡明なお年寄りだ。素直に感服する。


「でもそういうことならもうこの問題は解決したも同然じゃないかしら?」


「と申しますと?」


「ひとまず、今回紹介していただいた初心者さんと、私と、タンクさんでチームを組めば糊口を凌げるんじゃないかしら」


「ああー、いや、まあそうなんですけど」


思わずしどろもどろになる。お互いの最大火力をぶつけ合って、マシンをぶっ壊し合う派手なファイトに、おばあさんを巻き込んでいいものか。


「もちろん私も、今は機械を飛ばすので精一杯だけど、タンクさんに教わってゲームの仕組みを理解できたみたいに、戦いのことも教えて頂ければ勉強したいと思うわ」


そう言われれば、確かにこのおばあさんは頭が良くて、あたらしもの好きで、ロボット好きなところがある。他人を慮ることもできる。向上心まであるならまさに自分のチームメイトの理想像でもあった。


「ごめんなさい、伝え方が難しいのでハッキリ言いますけど、結構若い人向けの激しめなゲームなので、BBさんに負担をかけてしまうのが怖くて」


思わず一番の懸念を口にしてしまったが、それを聞いたBBさんは子供のようにカラカラと笑った。


「いやーね、こんな物好きなババアにそんな気を遣わなかったっていいのよ。現に前回問題なく遊べたんだから、もし気分が悪くなることがあれば、そん時はそん時考えりゃあーいいだけじゃない。」


ごもっともである。流石に小学生の孫と渡り合っているだけのタフさを感じる。


「確かにずっとやってるとくたびれちゃうし、しばらくは全然お役にも立たないかもだけど、少なくとも初心者なりに頭数には数えて欲しいわね」


その自信ありげな物言いに、改めて感動する思いだった。


「そこまで仰ってくださるなら、こちらからもぜひお願いします。」


「ええ、大丈夫。自分の体のことはまだわかってるつもりだから。何か不安なことや嫌なことがあればこれまでみたいに無遠慮に相談させてもらうわ」


この後、細かい話をしてセラさんからの話に返信して、我々二人でその初心者さんを迎えることになった。


ついに、このおばあさんと正式にチームとしてゲームに取り組んでいくことになったのである。

お膳立てが終わったので、次回からはおっさんたちがバチバチにゲームやりまくる...様子を書きたいので書きます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ