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おねーさんのプロローグ

今回はこれまで出てこなかった新キャラのおねーさんの視点で進みます。(前回連絡をしてた人ですね)

これまで分も含めて、ゲームの中の話と現実の話を行ったり来たりするので読みにくいかもです...。

誤字脱字修正も含めて、読みやすい形を見つけたらガシガシ編集するかもしれません。

久々に男友達から連絡が来た。


彼とは一時期、一緒によくゲームで遊んでいて仲が良かった。

しかし彼はゲームに入れ込み過ぎるきらいがあり、その熱量に付いていけず、少しずつ距離が空いていった。

とはいえ、遊びに熱中しても周りへの配慮を欠かさない出来た人間でもあったので、そんな彼がまたこうして連絡をくれるのは嬉しかったりもする。


どうやら、週末に軽く飲み屋でご飯を食べないかという話だったので、すぐに了承する。

当日、軽くオシャレをして約束の場所へ向かう。


「セラくんおつかれー!」


「リョーさんご無沙汰してますー!」


数年ぶりのはずだが、しっかりお互いに相手のことが認識できた。


「会えて嬉しいっすよ。お元気そうで何より。」


そう語るセラくんは数年前からあまり変わっていないように見えた。

相変わらずちょっと猫背で、染めた茶髪の頭はあまり手入れされていないようだった。


「とりあえず、お店入りましょうか」


彼に促されて、ささっと飲み屋に入る。


カッコつけられる場所ではなく、とりあえず飲み屋というのが彼らしかった。


まあ今更カッコつけられても困るけれど。


席につき、お通しに口をつけながら軽く世間話をする。


「リョーさんはもうバリバリ働いている感じっすよね」


「うん、そーね、今は仕事に集中してる感じね。そーゆー君はどうなのよ」


「いやー、働いてるっちゃ働いてるけど、やっぱりゲームが一番優先度高いっすよね!」


...まあそんなことだろうとは思っていた。今回の用事もゲームに関連することみたいだし。


色々お小言を言いそうになるが、せっかく対面で会えているのでグッと飲み込む。


「あたしも全くゲームやってないわけじゃないけど、前みたく対戦とか、人と一緒にってーのはあんまやらなくなっちゃったわ」


「忙しくなるとそうなりますよねー」


そんな具合でお互いの近況を伝え合い、最近の面白かったゲームの話などをする。途中で食事を注文したりお酒を飲んだりして、順調に会話は弾んでいく。


しかし、いつまで経っても今日の本題に進まない。今もゲーム優先と言い切った彼のことだ、何か私にその手の相談なりお願いなりがあるはず。


ただ会いたくて...なんてそんなことを言い出すキャラじゃない。言い出されても困るんだけど。


「んで、お腹も膨れてきたけど、今日はただの旧交を温める会ってわけじゃないんでしょ?」


こちらから切り出してみる。


「んん...いや、流石にわかりますよね。

どうしようかなー、伝えていいものか」


どうやら本人的には言い難いことらしく、これまでの話の中でいつのまにか切り出せなくなってしまっていたようだった。


「何、金貸せとかその手のナメた話じゃないんでしょ?聞くだけなら聞くわよ」


「まあそうですね、じゃあ話すだけ話させてもらいます。」


そう言って少しずつ話を始めた。


ガンズロというゲームにハマっていること。その中で最近凄くゲームが上手い初心者さんを見つけたこと。その初心者さんがおばあさんと呼ばれていたこと。


「おばあさんのゲーマーねぇ...」


「ガンズロなんて対戦ゲームでもだいぶ硬派なのに、そんなので遊ぶお年寄りがいるとは思えないんすよね」


「何より君がそんなに褒めちぎるくらいなら、本当に上手なんだろうし」


「そんで、他ならぬリョーさんにお願いっていうのはッスね...」


「あたし、ガンズロはしばらくやってないしよくわかんないんだけど」


「い、一応こちらの言い分をひとしきり書いてもらってもいいですか!?」


「はいはい、聞くだけね」


彼曰く、そのお婆さんと一緒に少し遊んでみてほしいということだった。

ガンズロに限った話ではないが、この手のチーム対戦ゲームは一緒に遊ぶ人が居ないとゲーム自体続かないということ。

その素晴らしい伸び代の塊な初心者おばあさんをこのままほっぽっといていいものなのか決めかねているということ。

今のゲームから離れ気味なあたしなら、その推定おばあさんと近しい距離感で楽しく遊べるのではないか、ということ。


まあそんな感じの話を、少しお酒の入った彼から一生懸命熱弁された。

ただのゲームの話ではあるんだけど、真っ直ぐにこちらを説得しにかかる彼の様子を見るのは、真心を感じた。というか、こんな彼をみるのは初めてだった。


「一つ聞かせてね、なんであたしを噛ませようとするのかな?自分で聞いて話して、導いてあげればいいじゃない?」


「俺は、お年寄りも女性も得意じゃありません。それに、始めたての人に必要なのは、上達に導くコーチも重要だけど、一番なのは一緒に楽しくゲームする仲間だと思うんス。」


そこまで言って、彼は少しお酒を煽ってから続けた。


「俺は、リョーさんにはどんな人とも楽しく遊べる人の良さがあると思ってて、そこを見込んでの頼みです。」


お仕事とか忙しいとは思うんですけど...と続けた。


ふむ。彼の中であたしはそんな評価なのね。まあ及第点、というヤツだろう。懇願する彼をひとしきり楽しんだことだし。


「わかったわ、ばあちゃんゲーマーだなんて物珍しいし、まず一回ゲームん中で話を聞くだけはやってみましょう」


彼の表情が輝く。


「ホントっすか!?いやーよかったー!!」


「まず、最初にも言った通り仕事もあるから、暇な休みの日にまず一回話を聞いて軽ーく遊ぶ程度だからね。その先は約束できないわよ」


「それでじゅーぶんッス!!その人がどんな方なのかわかればそれだけでもいいっすから」


となれば、久しぶりに遊ぶガンズロックオンラインというタイトルについての情報も必要になる。その後彼には、ガンズロを楽しむための情報を教えてもらった。


「あとさ、この話を受ける代わりに、今度あの鎖に繋がれるやつやろーよ。あれ誰かとやってみたかったんだ!」


「まあ、頼み事している身分ですからやりますけど、リョーさん楽しくなってくると絶対偶然を装って下に飛び込むじゃないですか」


「いやーそりゃまあ必要に応じてそういうこともするかもね?」


「最上階を目指すゲームで下に落下する必要なんて絶対無いでしょう!!...やりますけど!!」


そんなバカ話もしながらその日は別れた。


♪♪♪


楽しい酒盛りも健康的な時間に終わり、帰路に着く。

茶髪の男は帰り道をたどりながら、頭の中で今日の成果を振り返る。とりあえず、リョーさんは例の初心者さんと遊んでみることを同意してくれた。

このお誘いに即返信を貰ったあたりから勝算は感じていたが、想像以上にうまくいった。

ちょっとオモチャにされたけれど。


しかし、こちらも向こうの圧倒的正しい人の在り方っぷりに気圧されて、いくつか隠し事をしてしまった。


ひとつは、ガンズロで主流ではないルールながら、結果を残して剣闘士という二つ名を手に入れ、本格的にプロを目指し始めていること。


もうひとつは、そのおばあさんに執着する理由である。


今後も剣闘士としての闘い方を続けていく場合、おばあさんのような()()()()()()()()()()()()であり、対策を練るための試金石として必要だと考えているからだった。


さらに言えば体感だが、このゲームで遊んでいて航空機使いと対面したのはごくまれで全人口の1%いるかいないか、という感覚でもあったのだ。そのうちに戦闘に集中して満足に飛べず、遮蔽物に衝突して自滅した機体だってたくさんあった。あの初心者にはそんな気配みじんもなかった。


とはいえ、そんなゲーム的な希少さを"正しい人"である彼女に打ち明けることができなかった。


どこかで、いい年してゲームに現を抜かしているダメな奴、というイメージを自分に当てはめてしまっているからだったのかもしれない。

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