230日目~264日目。
230日目。
だんだんと熱くなってきた。温泉村なんてのも見る。
温泉はいいものだ。
232日目。
小さな村に魔物の軍勢が攻めてきた。
偶々居合わせたので、防衛線に参加。幸い、数より質の部隊だった所為で、十分に処理しきることが出来た。
俺に挑むなら数をもってこいというのだ。
239日目。
火の神殿。なんと火山の真下。溶岩に遮られた真ん中にどんと位置していた。
近くの街の人に聞くところ、魔術で飛んで渡るか、溶岩を冷して渡るか、火の精霊に溶岩を退けてもらうかなどなど。普通には通れないとのこと。
面倒なので飛んで渡った。
麗火が訪れた後と言うだけ有って、既に魔物は殲滅された後だ。
火の精霊に謁見させてもらった。赤毛のツンデレ美女だった。
240日目。
暫く火の神殿に滞在していけといわれた。まぁ、取り敢えずの目標は殆ど完遂したので、やる事はもう無い。
ので、その申し入れを受け入れた。
新しい魔導器も、色々設計してるし、そろそろ新しく何か作りたかったところなのだ。
街の工房と神殿を行き来して、新しい魔導器開発を進める事に。
242日目。
魔導器、マグマの杖を作ってみた。
といっても某RPGのやつではなく、本当にマグマから作り出した杖だ。
効果は火属性のあらゆる魔術を数倍に底上げするというもの。これを装備した途端、火に限ってはチートになるという仕様。
流石火の神殿の土地と言うか。マグマにも精霊の加護があるのだから感心する。この武器は、その加護の元に出来ているといっても過言ではない。
その杖を火の精霊に献上してみた。ツンデレといっても、不機嫌しか見せてもらえないのは寂しいのだ。
おかげでちょっと機嫌がよくなったらしい。軽く頬にチューされた。「べ、別に嬉しくなんかないんだからねっ!!」だって。ニヤニヤ。
248日目。
滑空ユニットを製造してみた。素材は基部が木製、残りは魔物の皮だ。
空を飛ぶ魔術は、その性質上あまり速度が出せない。そこで、この滑空ユニットで飛行魔術を補助するのだ。
仕込まれているのは、空力の加護と、ブースターユニット。これは魔力を流せば火を噴く、と言うだけの物。
要するにジェットエンジンだ。
試してみた。盛大に墜落しかけて、慌ててユニットを放棄した。
翼の制御が今一だなぁ。
250日目。
軽量化と調整を繰り返し、とりあえずの完成を見た。
素材は既に完全に魔物の骨と魔物の皮。空力は面倒だしなぁ。
とりあえず完成したものを担いで、火の神殿へ。そろそろ麗火を援護するため、魔王のところに乗り込みたいのだ。
言ったら、火の精霊は「勝手にしなさいよ」だって。なんだかちょっと罪悪感を抱きつつ、王都へと転移。
全くツンデレのこういうところが恐い。罪悪感て。なんだよそれ。
251日目。
気付いたら夜中、良くわからない場所を歩いていた。
どうやら呼ばれているらしい。装備は何時も通りの物。万全。
見ればどうやら石で出来た地下通路のようだった。折角ベッドで眠っていたのにと愚痴りつつ、奥へと進む。
最奥で神殿のような場所にでた。
もしかして此処、王城の地下?
252日目。
光の精霊に招待されて、食事を一緒した。光の精霊は光の精霊の癖に地下に閉じこもって、人も苦手な所為で神官もあまり持っていないのだそうだ。
寂しかったので、精霊達の間で話題になっている俺を呼びつけたのだとか。なんだそりゃ。
まぁ、一緒に食べた魚料理は美味しかった。
253日目。
麗火たちは、今現在、光、火、土と巡り、次は金の神殿に向かっているらしい。
鋼の神殿か。勇者スキルにいい感じで磨きが掛かるのだろう。
光の精霊曰く、光の加護とプラスすることで、退魔効果が跳ね上がるのだとか。
ふーんと唸り、そろそろお暇する旨を伝える。
誘ってもらった御礼に、旅の途中で手に入れた鉱石を削って作った玉をあげた。青い謎の鉱石で、暗い場所で良く光るのだ。もしかしたら空でも飛べるんじゃなかろうか。
そしたら、喜ばれて頬チューされた。
途端になんか身体が物凄く発光しだした。
光の精霊曰く、「全ての加護が揃った所為ですねー」とか。
なにそれ。加護って何時の間に。とかおもってたら、どうやらこのキスが加護を与えた事になるらしい。
なんというか。とりあえず、鼻の下なんて伸ばしてません。
256日目。
とりあえず、魔王の居所を精霊に頼んで探ってもらった。
どうやら魔王、真南の森で間違いないらしい。
さっそく魔王城目指して移動を開始しようと思った矢先、コーネに見つかって王城へ拉致された。
丸一日遊んださ。
257日目。
コーネに見つからない早朝の内に出発。
魔物を駆除しつつ南下。
俺が魔王を倒せるとは思わないが、魔王の側近くらいは消せる、と思う。
260日目。
いぇい。魔王の森に到着した。所々に変な魔物がいる。監視だろうと判断。
バイクは森の手前で隠しておいた。多分見つからないと思うが、一応偽装も施しておく。
漸く使い所か透明化の魔術。これって扱い間違えれば本当に危ない事にも使えるし(倫理的な意味で)。使いどころが難しかったんだよなぁ。
割と風が吹いたりして動きのある森だ。透過だけで普通に奥に進む事ができた。
野宿はするが火は焚かない。普通の森と違って、魔王の領域なのだ。下手に火を焚いて居場所を察知されるのは避けたい。
何せ、俺の目的は魔王の側近の暗殺。麗火が挑むまでの露払いだ。
261日。
森の木の上。あんまり登りすぎると、上空から鳥型の魔物に察知されてしまう。鳥型の魔物自体に、侵入者を報告するほどの知能は無いが、警戒班の魔物が、鳥型の魔物が反応しているという事を察知し、進入を察知されるかもしれない。ので、やっぱり隠密。
銃は使えない。何せ音が大きい。基本は安物の短剣と竜骨の剣で。
森が長い。疲れる。
262日。
なっが。森なっが。お菓子会社ではない。
それにしてもこの森、空気が綺麗だ。特に瘴気とか悪い気配は感じないんだよなぁ。
寧ろマイナスイオン溢れる良い感じの森。
本当に魔王の森なんだろうか。
263日目。
漸く魔王の城にたどり着いた。
なんだろうか。城ってか、城下町? 如何考えても魔王の城って雰囲気じゃないんですが。
なんだろうか。再び嫌な予感が湧いてきたんだが。
なんとか魔王の城に侵入する手段を探してみる。
264日目。
なんでさ。なんか裏口から普通に進入できた。
透明化して行きたいところだが、こういう人工的な場所の中では魔術行使の気配を探知されてしまう可能性が出てくる。ので、仕方なく変装することに。
荷物の類全部を、空間歪曲系の魔術で作った亜空間に補完する。手元に残す武器は、安物の短剣一本。最近亜空間に放置して忘れてた奴。ちょっと不安は残るが、魔力籠めてやれば側近くらい倒せるだろう。
執事服を着て城の中を探索した。
あ、魔王城の中には普通に執事服着てる人間も居た。なんでさ。
264日目。
なんというか。もうやってらんねーよ。
魔王と接触したものの、どうも魔王って悪い人間じゃないみたい。人間ではあったが。
どうやら魔王、異世界召喚された人間らしい。それも俺達よりも数十年早く。
なんでも、魔王と言う存在は、世界に発生した歪みを一身にその身に受け、勇者と言う世界のシステムの集合体に倒される事によって世界を浄化させるシステムなのだそうだ。
いわば掃除機の中の使い捨て紙パック。本気でそんな扱いなのだとか。
人の領域を浸食したのは、魔王を倒されたくない魔物たちの独断だったのだそうだ。信用していいものかと悩まなくも無いが、なんとなく信用するに値すると判断した。歪みも視認出来たし。
あ、麗火が見たという滅ぼされた村。これにいたっては完全に野良の魔物の可能性が高い。戦略的に価値の低すぎる村なんか、さすがに魔王軍は手を出さんって。
しかし、困った。なんという事だ。
実質的に敵でもなんでもない人間を、殺す? 妹が?
くそ。