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36日目~67日目。

36日目。

明日はばあちゃんの家から旅立つ日だ。この日のために、色々と準備を整えた。

旅人七つ道具やら、生活に必要な火種の魔術とか水汲みの魔術とかを覚えたりと、割と充実していたような気がする。

明日も早いので、今日はこの辺りで。

――そういえば、攻撃魔術をまだ習っていない。


37日目。

家を出るときに、ばあちゃんが拳銃みたいなのをくれた。

なんでも、嘗て異世界から訪れた勇者の持っていた道具を再現した武器らしく、鉛弾を飛ばすわけではなく、魔力を圧縮して発射する、という物らしい。

攻撃系の魔術の嫌いなばあちゃんの数少ない護身用の道具の一つらしい。

「あんたなら使い道を間違えないだろ」って渡された。信頼されているのかはてまた殺す勇気のないヘタレといわれているのか。まぁ、態々ネガティブに考える必要も無いか。

まぁ、最悪肉体強化でナイフをつかえばいいんだし。何とかなるだろう。

今日の晩御飯は干し肉をあぶったもの。野宿だった。


38日目。

空を飛んでいくという手段も考えたのだが、流石に疲れたところに魔物の襲撃、とかになると洒落にならない。そう、この世界魔物が存在する。

精々気をつけるため、地道に歩いていく事にした。

今日のエンカウント。

・ゴブリン×16、岩鳥×6、スライム×3

※先達の言う通り、スライムは強敵っぽい。


39日目。

さすが俺と言うか。二日目にしてばあちゃんの魔銃には大分馴染んだ感じがする。

なにせ元の世界では、ガンシューの名人としてその業界で名を馳せた俺だ。反射神経の賜物なのだが、この魔銃、反動が少ないというか、殆ど無いに等しい所為で、かなり扱いやすい。まぁ、その分威力は結構弱いのだけれども。

まぁ、その辺りは実動でカバーすればいい。

今日の晩飯は、捌いた兎。南無。


40日目。

今日は旅の冒険者と出くわした。なんでも近所の養蜂家の家の近くに、毒を吐く魔物が現れたのだとか。その毒が殺虫剤になっていたらしく、養蜂家には物凄いダメージになりかねなかったのだとか。

件の冒険者達は、その帰り道だったらしい。

サムとキャサリン。男女のペアだ。サムさんは優男な魔術師で、キャサリンさんはツンデレ剣士だった。見たときは思わず吹いたね。リアルで「あ、あんたのためじゃないんだからっ!!」とかやられると笑うぐらいしか出来ない。まぁ、対象はサムさんだったからそんな余裕が有ったんだけど。

折角なので晩御飯をご一緒した。今日はスープだった。


41日目。

やっぱり魔銃の使い方が間違っていたらしい。

魔銃っていうのは、ただ魔力の塊を発射するだけではなく、そこにそこに魔力を添付する事もできるのだそうだ。

魔術師の装備といえば、魔導書と杖と魔銃の三種類があって、杖は威力増幅、魔導書は術式演術補助、魔銃は照準補正の役割をこなすらしい。というか、普通に鉄砲として扱う人は稀なのだとか。ガンシューで培った鉄砲捌きを見てサムさんに物凄く驚かれた。

折角なので、サムさんに簡単な魔術を習う事にする。


42日目。

簡単な魔術を二つほど得た。

一つはスピア。武器に貫通効果を与える魔術で、魔銃で使えば貫通弾を放つ事ができた。

もう一つはファイヤーボール。有名な接触爆発型の魔術で、魔銃で使ったら射程範囲の広い榴弾砲みたいになった。

ファイヤーボールは割りと消耗する魔術らしいのだけれども、魔力潤沢な俺には、やっぱり全然消耗したという感覚は無い。サムさんにキャパシティーが大きすぎると呆れられた。

因みに、実践で使ってみたらかなり戦力が向上していて驚いた。

今まで一匹一匹処理していたゴブリンの群れ。真ん中にファイヤーボール一発でカタがつくんだもん。詐欺だとしか思えない。今までの苦労はなんだったんだろうか。

もういい。寝る。


43日目。

漸く町に到着した。これでついに仕事に就ける。

二人の冒険者と別れて、とりあえず冒険者ギルドにいって登録した。

なんでも此処で発行してもらえるカードが、簡単な身分証名称になるらしい。金属製のプレートには、この世界の文字で確りと俺の名前が刻まれていた。ジン・ヤシロだって。

ギルドの依頼は、“収集”と“討伐”と“護衛”の大体三種類に分かれていた。護衛は色々面倒くさそうだし、収集と討伐も漸く町に入ったのに、また町の外に行けとかいう話らしい。

面倒なので他にないかと探していたら、簡単そうな街の雑用の依頼が張り出されているのを見つけた。

街クエ、お使いクエは初心者の王道。当然の如く其方を選択させていただいた。

町のおじいちゃんおばあちゃんの代わりに、力仕事をする、というもの。

割と感謝された。安かったが、気分は良い。


44日目。

今日も街クエで稼いだ。

どうも冒険者は冒険者なだけあって、好き好んで町の外へ冒険するような依頼を選ぶ傾向にあるらしく、街の中の依頼と言うのは、俺のほかにこなしている人間は殆ど居ないらしい。

つまり、俺の独占市場。

街の中の依頼なんて、そうそう難しいものは無かったので、一日に何個もこなす事ができる。

今日の収穫は合計で銀貨3枚。一つ家畜に被害を出す魔物退治が入った所為で、今日は割りと良い稼ぎに成った。


45日目。

なんだか依頼に指名されたと、ギルドのカウンターで声を掛けられた。

どうも雑務係として市井で評判になっているらしい。なんだ雑務係って。

仕事内容は協会の屋根の補修。報酬は安かったが、美女のシスターに感謝されて悪い気はしない。

その後は何時も通りおじいちゃんおばあちゃん達の依頼をこなした。


46日目。

街を歩いているだけで、妙にガキに絡まれる。

どうやら昨日教会で働いたときに、出入りしている子供に懐かれたらしい。俺って目つき悪いから、子供にはそんなに好かれる性質では無いと思うのだけれども。悪い気はしない。

割と平和を楽しんでいたら、財布をスられそうになった。その場で気付いて、身体強化の圧倒的な力で取り押さえた。なんというオッサン。これが美少女なら手加減しようものだが、オッサンなのでボコって有り金を全部奪い、その上で憲兵に突き出した。まさに鬼畜とか言われたらどうしよう。


47日目。

今日はギルドに行ったら、ランクが上がったとか言われた。今までは最下位のFランクだったのが、今回Eに昇格したのだとか。

それに伴い、昇格試験の代わりに一つ仕事を請け負ってくれと。

別に昇格とか面倒だったので断ろうかとも思ったのだけれども、受付嬢が、クラスが上がれば割の良い仕事が回してもらえるとか言うので、まぁ折角なので受けてみた。

内容は簡単。石で出来た魔物を一匹討伐しろとのこと。

なんだったか。ゴーレム? ガーゴイル? なんだか良くわからないが、スピアの魔法をこめた魔銃で撃ったら砕け散った。

一瞬でカタをつけたら、ギルドの人たちがなんだか騒然となっていた。やれといったのはそっちだろうに。

一応報酬は出るらしい。銅貨10枚。安い。


48日目。

今日は魔術工房にアルバイトに行った。

ギルドの募集票に、魔術の扱える人間を求む、との指示があったので、一応魔術師に分類されている俺はその依頼を受けてみた。

行ってしまえば、マジックアイテムの製造をお手伝いする、と言うもの。

中々に勉強になった上、魔銃の調整までサービスしてもらってしまった。ありがたや。


49日目。

今日も魔術工房にアルバイト。

なんでも今日は、魔術よりも魔力のほうが大切なのだとか言われていた。

んで、実際にやったのは、マジックアイテムに魔力をこめる、という作業。

マジックアイテムの核に使われている青水晶は、魔力を溜め、徐々に放出するといういわば電池のような役割をこなすのだが、それを入れるときの技術や、魔力の質や量によって性能、つまり価格が変動するのだとか。

行ってからそんな責任重大な事だというのを知らされて、戦々恐々とした。

まぁ、やってみたら案外簡単で、後半はバンバン量産したのだけれども。

そういえば、なんだか後半、工房が妙にざわついていたような気もする。

報酬は何故か割り増しされていて、今日はかなり儲かった。

ついでに書いておくと、この青水晶、俺の魔銃の中にも内臓されている。いっかいこの青水晶に魔力を充填し、それを引き金引いて射出するのだ。だから青水晶の予備とか買っておいたら、魔力の無い人でも青水晶を交


換するだけで魔力の弾丸を撃ち続けられるわけだ。

まぁ、俺の場合はその場で充填するのに数秒もいらないんだけど。


50日目

今日はひさしぶりに街の外の仕事をメインに据えて働いてみた。

というのも、今日はギルドに街の中での依頼が殆ど無かった所為だというのもある。どうも、溜まっていた街中の依頼は、俺が殆ど消化してしまったらしい。楽だったし良いんだけどなぁ。

そういうわけで、今日は待ちの外で魔物討伐。ついでに素材収集で大分金を稼いだ。

ちょっとゴブリンが毒とか使ってきてびびったけど、解毒の魔術も一応覚えていたのでなんとかなった。

流石に毒は怖い。


51日目。

今日はギルドで、ダンジョン探索へ同行してくれと依頼されてしまった。

ダンジョン自体はこの街から半日ほど行った場所で、そのダンジョンも既にある程度探索は終わっている洞窟なのだという。

ただ、こういうダンジョンは定期的に見回っておかないと、何等かの魔物の巣窟になっている場合がある。街から近いのだ。そういうのが街を襲わないとは限らない。

ので、事前にある程度掃除しておく必要があるのだとか。

今日はダンジョンの一室で就寝。晩飯は久々に干し肉。


52日目。

寝てたらいきなり轟音がして、気付けば魔物の群れに囲まれてた。相当焦った。

ミノタウロスっていうんだろうか。牛頭の魔物が大量に。驚いた事に、毛深い所為か貫通が貫通しないという驚異の自体に陥った。

とりあえずファイヤーボールをミノタウロスの顎に当てて頭を揺らしてやった。前後不確定に為った所を、他の冒険者達に始末されてた。

帰ってから、依頼報酬と回収した素材の代金を山分けした。




53日目。

今日は件の教会で荷物運びをお手伝いしてほしいとの依頼が来ていた。

孤児院を兼ねているらしいこの教会には、チビジャリがいっぱい。

シスターにも感謝されて、ジャリと共に菓子を食った。そういやこの世界に着てから嗜好品を食べたのって初めてじゃね?


54日目。

朝にギルドに行ったら、隣町まで護衛を探しているというひょろいオッサンにつかまった。なんでも学者らしいのだが、帰りの護衛が仕事を放り出して逃げてしまったのだとか。

腕利きを捜しているとかいう話らしいのだが、ギルドの受付嬢、何故俺を推薦する。おれは街中専門だというのに。

モヤシも俺の姿格好を見て胡散臭そうにしていた。そりゃそうだ。俺の装備、未だに布の服というか街服のまま。防具とか買ってません。

しかもおっさん、資金的に余裕が無いとかで、雇う冒険者は俺一人。しかも後払い。

ほんとに大丈夫なんだろうか。


55日目。

モヤシの馬車に揺られて二日目。

今日は盗賊と魔物の群れ、に襲われた。盗賊は一回、魔物の群れは四回ほど。

ファイヤーボールを魔銃で撃っておいたら勝手に逃げてくれた。面倒が無くて良い。


56日目。

隣町に到着。到着したのはいいんだけれども、帰り如何しよう。

とりあえずモヤシから報酬を受け取った。どうもモヤシ、いい所の先生らしく、この町で歓待を受けていた。

本拠まで護衛してほしいといわれたが、残念ながら俺の拠点はあの町なのだ。あんまり遠出すると、かえってこれなくなりそうだし。

惜しまれつつ、モヤシと分かれ、今日はとりあえず宿を借りた。

さて、ついでに店でも見てくるか。


57日目。

この街のギルドで仕事をした。

昨日店で色々買った。といっても、精々「街人の服」が「旅人の服」になった程度の変化。

防御力は毛が生えた程度の変化。ただポケットが増えてたり、防寒防風対策が確りしてたり、着心地もかなり良い。

見た目は黒いローブと言うか、なんか遠目には黒衣に見えなくも無い。その上に毛皮のコートだ。

武器のほうは変化無し。ちょっと整備しただけで済ませた。


58日目。

あの街に帰るべく行動を開始する。

とはいっても、あの街まで結構な距離がある。何せ馬車で4日近く。歩くより少し早い程度のペースだったとはいえ、結構な距離だ。

貯金を崩して馬を買うべきか。それとも貯蓄をまもって歩くべきか。

悩んだ結果、歩いて帰ることにした。

森で迷った。


59日目。

何で森よ。行きに森なんて通ってない筈なんだけど。

なんて考えてたら、ワラワラと溢れてくる魔物に襲撃された。狼とか猿とか毒スライムとか蝸牛とか。

洒落にならんので、町で買ってあった道具の一つ。毒煙球をばら撒いた。ちょっと目が痛い。

なんてやってたら、森の中で角の生えた馬を見つけた。確かユニコーンとかいうやつ。

驚いた事に、コイツ意思疎通が出来るらしい。助けたら、生え変わる前の角とか言うのをくれた。なんだろうか、抜けた角って、抜けた爪みたいなものか? なんなのかよくわからないまま、ユニコーンに誘導されて森を抜けることに成功。

ユニコーン曰く、此処から東南東に進めば街に着くとのこと。ユニコーンに礼を言って、街へ向けて再び歩き始めた。

晩飯は干し肉。


60日目。

どうもあの森はショートカットになっていたらしい。まぁ、あれだけの量の魔物がいれば、誰も好き好んで通ろうとはしないと思うが。

そんなわけで、何時もの街に帰ってくることが出来ました。

街中ですれ違う人たちに、おかえりって声を掛けられるのがちょっと嬉しかったり。


61日目。

今日は久しぶりにじいちゃんばーちゃんの依頼を受けた。どうも俺が留守にしていた間にちょっとずつ依頼が溜まっていたらしい。他の冒険者もこういう仕事してくれればいいのに。


62日目。

なんだか他所の冒険者に喧嘩を売られた。

無視したら顔を真っ赤にしてた。鼻で笑ってやったらキレた。

失礼かなー、とも思ったんだけれども、なんかムカついた仕方ない。

面倒なので逃げたんだけれども……後が怖いなぁ。


63日目。

凄く疲れた。今日は街に大量の魔物が襲撃をかけてきて、その防衛戦に駆り出されてしまった。

大量の、多種多様な魔物の軍勢が、この街に向かって進軍してくる様は中々に圧巻だった。

俺は今回、高台の上からファイヤーボールを魔銃で乱射してるだけだったしなぁ。


64日目。

なんだか街で一番偉い人が、俺のことを表彰したいとか言って来た。

俺は後衛で魔術連発してただけですからって言って断っておいた。でも、報酬は貰っておいた。

金貨5枚。貯めてた分とあわせれば、もう金貨30枚分くらいあるんじゃないだろうか。

そろそろばあちゃん家に行って、お世話になった分を返しに行かなきゃなるまい。


65日目。

面倒くさいので空を飛んでいく。

途中鳥型の魔物と出くわしたものの、空中戦で普通に勝利。あいつ等上見るのが苦手らしい。

晩飯はチキン。


66日目。

魔力エンプティーを恐れていた過去が懐かしい。空を飛んでもまだまだ魔力には余裕がある。

初めてあの目玉がくれた力の桁違いさに感謝したかもしれない。

ばあちゃん家に到着して、金貨30枚全部渡そうとしたのだけれども、ばあちゃんは一枚だけソレをとって、後は全部お前のだって押し付けられた。

まぁ、貰える物はもらっておくけど。


67日目。

今日は珍しく、ばあちゃんに客が来た。

フレックスさん。フレックスタイム? とか思ったのは内緒だ。

なんでもフレックスさんは、大きな学校を経営しているらしい。そこの講師に、ばあちゃんを雇用したいらしい。

ばあちゃんは拒否してたんだけど、何故か俺がその学校に転入するとか言う話に成っていた。

一体何処でどう転んでそうなったのか。

と言うわけで、再び旅に出る事に。

今日はばあちゃんの手料理を食った。美味かった。



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