幸せだった日々を取り戻す為、逃走した王子様を探します!
かつて自然豊かで幸せな国があった。
しかし、国王の突然の死によって、その幸せは崩れ去った。
王子は国王暗殺を企てた首謀者として捕まった。
そして、その婚約者の姫も罪人となりました。
姫は奴隷のような惨めな扱いを受ける事となりました。
国王が死ぬ半月前ー
ロワール王国では周辺国との友好を深めるパーティーが開かれていた。
私はセナ王子の隣で、周辺国の方々に挨拶をして回る。
各国の王達が集まる大規模なパーティーに、私は緊張していた。
ニコリと微笑みながら、各国の王達と言葉を交わして行く。
セナ王子は私達の婚約が決まったことを話す。
「婚約が決まったのですか!
それはそれはおめでたい。」
白い髭を生やした大柄な男は笑いながら拍手をする。
「ありがとうございます。
結婚式の時は国を挙げて祝いますので、マハーン王も是非、お越し下さい。」
セナ王子は笑顔で握手をする。
「ハッハッハッ!
喜んで、招待させてもらうよ。
セナ王子も、絶世の美女と名高いリイネ姫を娶るんだな…国はますます安泰だな!」
「まぁ、マハーン王様、褒めすぎですわ。」
ウフフと控えめに笑う。
「これはリイネ姫、セナ王子を支えてあげなさい。」
「はい、心得ておりますわ。」
うんと頷くと、マハーン王は笑いながら、歩いて行った。
「挨拶はだいたい終わったかな…?」
セナは辺りを見渡す。
「セナ!」
その時、セナの弟であるリュウが男を引き連れていた。
「これはこれは、ハンス様、ご無沙汰しております。」
セナが手を差し出す。
「ああ、久しぶりだな、セナ王子。」
ハンスと呼ばれた男はセナの手を握り返す。
「セナとリイネの婚約が決まったと言ったら、ハンス様がセナに会いたいとおしゃってね…。」
「そうでしたか!
これはわざわざ有難うございます。」
セナは嬉しそうに笑う。
「婚約おめでとう。
結婚式はぜひ、招待してくれ。」
「はい、是非!」
「リイネ姫もおめでとう。」
ハンスはリイネを見つめながら、手を差し出した。
「はい、ハンス様、有難うございます。」
リイネも笑顔で笑いながら、手を握る。
その時、グイッと引き寄せられたように、リイネは何かに躓いた。
「きゃっ!?」
体がバランスを崩して、倒れる。
「危ない!」
ハンスが慌てて、リイネを支えた。
目の前にハンスの綺麗な顔がアップになる。
しかし、綺麗な顔は感情がなく、冷たい感じだった。
リイネは少し恐怖に体が震える。
「リイネ姫、大丈夫ですか?」
「えっ、ぇえ…ハンス様、有難うございます。」
リイネがハンスから離れようとした時、そっと耳打ちされる。
「リイネ姫、必ず貴方を私のものにしてみせますから、覚悟してください。」
底冷えするような小声で囁やかれた。
「えー…⁉︎」
その言葉に、ザワっと肌が粟立つ。
ハンス様、何を言ってるの⁉︎
驚いて目を見開いた。
ハンスは、意味深に笑っている。
怖くなり、リイネは慌ててセナの元に戻った。
「リイネ、怪我はないかい?」
セナは優しくリイネに聞いた。
ああ、やっぱりセナは優しいわ。
安心する。
「ええ、大丈夫よ。」
髪を整えながら、リイネはセナの後ろに隠れる様に立つ。
その様子をハンスとリュウは不貞な笑みを浮かべて見ていた。
「ハンス様、失礼しました。
では、そろそろ私達は国王の元に戻らねば…
どうぞ、楽しんでください。」
セナはリイネの手を取る。
「そうさせてもらう。
また、会いましょう、セナ王子にリイネ姫。」
「ハンス様、また、お会いしましょう。」
リイネは控えめに笑う。
それを見たハンスはリイネに微笑んだ。
私はセナ王子にくっつく様に寄り添った。
何か嫌な予感がする…
ハンス様…
私になんであんな言葉を言ったのかしら?
セナ王子と婚約しているのに…
ザワッと胸騒ぎがした。
時は進み…
国王が死んだ当日ー
隣国のザッハル王国の国王、ハンス様との会談が終わり、私達もオルハ国王に呼ばれ、夕食会が開かれた。
盛大な夕食会。
私の席はセナ王子の隣。
セナ王子の隣は弟のリュウ王子が座っている。
オルハ国王の両サイドはマリーナ王妃とハンス様だった。
楽しげに会話した後、乾杯の挨拶をオルハ国王がする為に、立ち上がる。
私は姫として、微笑みを浮かべ、オルハ国王を見つめていた。
どうやら、オルハ国王はご機嫌のようすで、話がうまく進んだ事を意味していた。
「皆、聞いてくれ。
近年は不安定な情勢のため、いつ、ロワール王国も他国に攻め入られるか分からない。
そんな我が王国だか、この度、同盟国であるハンス国王が我がロワール王国の防衛を高めてくれる事を約束してくれた!」
「「ワー!」」
その言葉に人々は熱狂する。
「セナ王子、ロワール王国も安泰ですわね。」
「ああ、リイネ姫。」
2人は穏やかに笑い合った。
「ここで、ハンス国王から、言葉を頂戴したい。」
凛とした佇まいで、ハンスは立ち上がる。
長身の為、聴衆はハンスを見上げる様に注目した。
「このロワール王国はザッハル王国にとって大事な同盟国だ。
オルハ国王の頼みですから、私もロワール王国の為に兵を派遣し、防衛を高める事をお約束します。」
「うむ。
では、同盟国の証として、乾杯したいと思う。
皆、グラスを持ってくれ。」
リイネはグラスを持つ。
「「乾杯ー!」」
オルハ国王とハンス国王はグラスを上に掲げた。
それと同時に、リイネもグラスを上に掲げる。
そして、皆、一気にグラスに入ったお酒を飲み干す。
「美味しいわ。」
「そうだね。
自然豊かな環境のロワール王国で採れた最高級のワインだからね。」
「ふふっ、ロワール王国は自然に恵まれているわね。
私、この国に、生まれて幸せよ。」
「ああ、僕も、リイネとこの国があれば幸せさ。」
「セナ…早く一緒になりたいわ。」
ふふっと幸せ過ぎて、笑みが溢れる。
「リイネ、僕も早く君と一緒になりたいよ。
美しい姫を早く僕のものにしたい…けど、結婚式はまだ、未定だからね。」
「もう、オルハ様のこだわりがすごいのよ。
私はそんなに派手じゃなくて良いのに…」
「それはいけないよ。
君が主役なんだから!
国王も僕も、リイネの為に一生思い出に残る結婚式にしたいんだ!」
「セナ…」
こんなに思ってもらえて幸せだわ…
この時までは幸せだったー
「ヴァァァア‼︎」
この世のものと思えない断末魔を聞くまでは…
「キャァァァア‼︎」
マリーナ王妃の絶叫に近い悲鳴が上がる。
「オルハ国王!?」
ハンスは何事かと目を見開いている。
「ガッァア‼︎」
オルハ国王は苦しげに立ち上がり、喉を掻きむしる。
口から血が流れ出し、ブフォっと口から血を噴射した。
その反動で後ろに倒れ込んだ。
「オルハ国王⁉︎」
セナは国王の異常な様子に、慌てて駆け寄る。
周りの人達もバタバタとオルハ国王に近づく。
「アアッ‼︎ガアッ⁉︎
ーーーー………。」
オルハ国王は目を極限まで見開き、顔が固まったまま、動かなくなった。
シーンっと辺りは静寂に包まれる。
「なっ…一体何が…オルハ国王、目を開けてください!」
セナはオルハ国王を揺さぶる。
しかし、オルハ国王はもはや、死体となっていた。
「オルハー!」
マリーナ王妃は死体に縋り付く。
「オルハ国王が死んだ?」
「うそ…」
「キャァア!」
周りの者達はざわざわと騒然としだす。
「オルハ国王から離れなさい‼︎」
ダダダっと騒々しい音を立てて、王立騎士団がやって来た。
そして、その場を素早く、仕切り出す。
「なっ、なんだって⁉︎
一体、誰の権限でその様な事を言っている⁉︎」
セナは抗議をするが、騎士団長のクラリスはギロっと威圧に満ちた視線をセナに向ける。
「セナ王子とリイネ姫を捕らえよ‼︎」
クラリスが威勢よく言うと、部下達はセナとリイネを縄で縛り上げ、捕らえた。
「なっ、何をするんだ⁉︎」
「クラリス団長、これはどう言う事ですの⁉︎」
2人は困惑する。
「待って下さい、クラリス団長。
説明して下さっても良いのではないか?」
リュウはクラリスを見つめながら言う。
「それでは説明させていただきます、リュウ王子。
セナ王子とリイネ姫はオルハ国王の暗殺を計画した首謀者です。」
「何だって⁈」
リュウは絶句する。
「何を出鱈目な事を言っているんだ⁉︎
なぜ、私がオルハ国王を暗殺しなければならない?」
「そっ、そうですわ!
セナ王子には理由がありません!」
「とある男が白状したんです。
セナ王子とリイネ姫に指示を受け、オルハ国王が飲むグラスに毒を入れたとね…。」
「いい加減にしないか?
僕はオルハ国王を暗殺する理由なんかないし、そんな男も知らない!」
「そうですわ!
オルハ国王の暗殺を首謀したとはなんたる濡れ衣…恥を知りなさい!」
「残念ですがー…オルハ国王が死んだ瞬間、一時的な権限は王立騎士団長である、この私にあります。
そして、セナ王子とリイネ姫が暗殺を首謀したとなれば、貴方達は罪人だ!
よって、裁かれなければならない!」
「なんだと⁈」
「証拠もないのにあんまりですわ!」
「証拠なら、この男が証人だ。
オルハ国王のグラスに毒を入れた張本人だ!」
料理人の格好をした男が縄に縛られながら人々の前に晒される。
「お前がセナ王子とリイネ姫の命令で毒を入れたのか?」
リュウは緊迫した状態で聞く。
「はい。
私はセナ王子とリイネ姫の命令でオルハ国王のグラスに毒を入れました。」
「まさか…セナ王子とリイネ姫が…本当に?」
リュウは驚きを隠せない。
「その男が言っていることは出鱈目だ!
僕は初めてそいつを見た!」
「いいや、セナ王子は俺の家族を人質に取り、言う事を聞けなければ家族を殺すと言って来た。
だから、私は仕方なく、オルハ国王のグラスに毒をー…ウワァー‼︎」
発狂した様に男は泣き叫んだ。
「信じたくないが…セナ王子…いや、罪人、セナとリイネを幽閉する…。」
「リュウ、お前、実の兄を罪人と呼ぶのか⁉︎」
「残念ですが…セナ王子は最早、王子ではない!」
リュウはハッキリと断言した。
「リュウ王子、冗談ですわよね…?
セナ王子がそんなことをする訳がない事はリュウ王子が1番よく知ってるはずです!」
「首謀者の言う事は信じられない。
リイネ、君も罪人だ。
クラリス団長、2人を幽閉して下さい。」
「ハッ‼︎リュウ王子‼︎」
クラリスはセナを連れて行く。
「セナ王子‼︎」
「リイネ姫‼︎」
セナは抵抗したが、クラリスに動きを封じ込められた。
連れて行かれるのを私は見つめることしかできなかった。
「リイネ、貴様を幽閉する。」
「そんな…何かの間違いです!」
「来いっ‼︎」
目隠しをされ、王立騎士団に無理矢理に引っ張って連れて行かれる。
暫くしてー
ドサッ‼︎
放り込まれると、ドアが閉まる音がした。
私は慌てて目隠しを解く。
「ここは⁉︎」
「地下牢だ‼︎処分が決まるまで、リイネ、あなたを幽閉する‼︎」
「待って!いやぁ‼︎」
叫びも虚しく…
暗い地下牢へ私は幽閉された。