俺は主人公!
思いついたままに書きました
主人公で武力も知能も才能あって原作知識まで持っている。
まさに勝ったな、風呂入ってくる状態に転生した俺。
そして原作開始が始まったら美少女ヒロイン達とのウフフアハハを満喫してやろうと色々と妄想して、どんな立ち回りで、どんなルートでなどなど妄想し過ぎて計画書まで作り上げた。
そして原作開始。まずは入学開始時点でのヒロインの一人との出会い。ド定番の角でぶつかってパンチラからのクラス一緒じゃん!あの時の!などなどからの甘酸っぱいボーイミーツガールが始まるのだ。
その日が楽しみ過ぎて、ずっと前からリサーチしていたヒロインの自宅から学校までの登校ルートを下見済み。
更にはヒロインの家を昨日の夜からずっと監視して、万が一にもタイミングが合わないなんてことはないように、楽しみと寝不足で血走ってきた目で彼女が家を出るのを確認してから予定の位置まで移動するという徹底ぶり。
そして今、予定の角からいつ飛び出すかチラチラ様子をうかがいながらタイミングを見計らっている。
「何あれ?」「ほら噂の子よ」「何してるのかな?」「あいつと同じ学校なんだよなぁ・・・」
通りを行き交う人々に気を回している暇などないのだ、有象無象の雑音と存在を思考から排除し、全てをヒロインとの出会いに全神経を集中させる。
視界の先に軽やかな足音と共に彼女の姿を確認し、配置につく。
脳内シュミレーションは完璧。さらに完璧なタイミングを掴むために妹が部屋から出てくるタイミングで何度もぶつかりに行って実験済み。妹も草葉の影から見守っているだろう。
いざ!角ドン!
俺はタイミングを合わせて飛び出しヒロインの前へと躍り出た。
「危な!?何なのよアレ」
避けられた?!何故だ?!予想に反して隠れていた所からそれなりに距離が離れている所を彼女が駆けていたのが、今回の失敗に繋がったのかもしれないが
マズイ。このままでは完全に予定が狂う。このイベントから全ての計画を練っている。このイベントだけは絶対に外すことは出来ない。
俺は遠ざかっていく彼女の背を追いかけながら脳内地図を広げる。
この先学校までのルートでの角の数と、彼女の身体能力を計算する。勿論彼女の運動能力、体型、服装、下着の色までリサーチ済みだ。
次の角で仕切り直しだ。次の角まで約1分で彼女が到着する。なら30秒で到着すればいいだけだ。俺は加速して一瞬で彼女を抜き去る。
「へ?!速!?何?」
彼女の驚いているような呟きが聞こえてくる。妹に度重なるシュチュ実験を繰り返した結果「あんたは世に出してはいけない」と言われ何度も襲いかかってこられた経験から、シチュを滞りなく行うためには身体スペックを可能な限り上げておく必要があると身を持って知った俺に死角はない。
角を曲がった所で配置につき、再びチラチラと角から顔を出して彼女との距離を測り、タイミングを合わせて飛び出す。
「うわ!?ちょっと!?何なのよ!」
チッまた避けられた。しかし、諦める訳にはいかない。ここから次の角まで距離がないが、遂に包丁を持ち出し追いかけて来た妹から逃げ延びるために鍛え上げたこの俺に死角はない。
近くの塀へと飛び上がり、電柱を一息でよじ登る。そして家の屋根を跳ねるようにして移動し大幅にショートカット。
次の角から再びチラチラと顔を出して彼女の姿を確認し、若干青ざめている彼女と目が合ったので、念の為に分かっているな?と念を送ってから身を隠し、タイミングを合わせて角から飛び出す。
「イヤあ!?何なのよお!?来ないでえ!!」
飛び出した瞬間まるで飛び出してくるのが分かっていたかのようにヒラリと身を捩り躱された。
事前にリサーチしていた以上のスペックを発揮する彼女に一瞬驚愕するが、包丁を振り回す暗い目をした妹が、「今ならまだ間に合う。私がコイツを」などとブツブツ呟く妹をあしらいながら説得を続けた日々。主人公には不屈の精神も必要なのだと気付かされた俺に死角など存在しない。気を持ち直し再び彼女の背を追いかける。
「いったい何なのよアナタ!?」
息を荒げながら走っている彼女の横を通り過ぎていく時に声をかけられる。しかし、最初の会話イベントはここではないのでスルーする。
次の角に到着し、再びチラチラと様子を窺う。彼女は俺を見て顔を引き攣らせたあと、今度は顔を赤くしながら猛スピードで走り始めた。
その姿を確認して配置についた俺はタイミングを見計らい角から飛び出し
「いい加減にしろおお!!!」
飛び出した俺の胸部に、走り込んだ勢いのまま彼女が飛び上がり、素晴らしいパンチラを披露しながらドロップキックを叩き込んできた
俺の身体は勢いよく後方へと吹き飛び、交差点へと投げ出され、信号無視をして来た大型トラックに弾き飛ばされた。
直ぐに急ブレーキが踏まれたようで、しばらくして止まったトラックとは違い空中へと投げ出される俺
目まぐるしく変わる視界の中で唖然としている彼女と目が合った。
主人公とは強く!カッコよく!諦めない!そう俺だ!
カッ!と目を見開き空中で身体を捻り、三点着地を華麗に決めて、それでも勢いを殺せずガリガリと地を滑りピタリと止まる。
イベントの時間がやってきたのだろう。ヒロインだけではなく、道行く人々誰もが俺に注目し動きを止め、辺りが静まり返っている。
俺は優しく微笑みを浮かべて、用意しておいたセリフを目を見開いているヒロインに向かって呟いた
「怪我はないですか?お嬢ざん・・・ブホォ・・・」
込み上げる物を必死に我慢しながらも俺はやり切った。
ここから目くるめく冒険と、ヒロインとのキャッキャウフフな日々が俺を待っているんだ。
俺の吐き出した物で、滅菌処理までした彼女に会うためだけの制服が赤く染まっていく。
だが問題ない。代えの服ならまだ用意してある。フッやはり俺に死角はない。
初イベントを無事達成したことで気が緩んだのか意識が暗転していく。俺は脳内イベント帳にしっかりとイベント達成の印をつけて満足して目の前が真っ暗になった。
読んで下さりありがとうございます。