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【Web版】剣と魔法と学歴社会 〜前世ガリ勉だった俺は今世では風任せに生きる〜  作者: 西浦 真魚(West Inlet)


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38 坂道部近況

予約投稿忘れていました!


学園入学からもうすぐ2ヶ月。


アレンの立ち上げた坂道部は盛況を極めていた。



「お前は上半身で走れって言ってんだろ!帰れ!」

「頭使えっつってんだろ!帰れ!」

「頭で考えるなっつってんだろ!帰れ!」

「先輩その調子です!最高!」

「土の声を膝で聞いて、尻で返事するんだよ!辞めちまえ!」



俺の坂道部の監督業は、相変わらずパワハラワードを投げながら、部員達を追い抜かしていくだけだ。



すでに思いつくままにテキトーにかけていく、罵倒する文句も尽き、いよいよ意味不明さに磨きが掛かってきているが、一向に脱落者が出ない。



脱落者どころか、坂道部は部員数が劇的に増えていた。



リアド先輩が、坂道部の朝練に参加するようになった3日後の放課後。


先輩に伴われ、3人の3年生が坂道部に加入したいと俺の下を訪れた。



『彼らは3年Aクラスに在籍する、僕の友人でね。

僕が坂道部の鍛錬に参加している事を聞いて、ぜひ自分たちも参加したいから、アレンを紹介してほしいと頼まれてしまってね。

年上を指導するのは、何かと大変だとは思うけど、いい加減な奴らじゃないし、部活動には真摯に向き合うと思うから、加入を認めてあげてくれないだろうか』


『『よろしくお願いします』』



先輩達は、不格好ながらも訓練した形跡の見えるお辞儀をして、加入を申し込んできた。



王立学園3年Aクラスに在籍する人たちだ。


プライドも高いだろうに、年下で、しかもぽっと出の俺に敬語を使って頭を下げるとは…

内心面白くないだろうに…



そんな事を思いながら、俺はすぐさま了承した。


そもそもリアド先輩の紹介だ。

断る選択肢などない。


元より、各々が思う目指す形を聞いて、先輩らの走る姿を見た後、アドバイスを送れば、後は俺の手を離れて勝手に走るだけの部活動だ。


大した手間ではない。



そんな事を思っていたのだが…



そのまた2日後、次は2年Cクラスの先輩方が、10人の大所帯で俺の下を訪れて、坂道部に加入したいと言ってきた。



わざわざ坂道部に入らなくても、勝手に走ればいいのになぁ、なんて思ったが、代表して話をした、いかにも体育会系と思しき、短い黒髪をツンツンに逆立てているコンリ先輩は、満身に気合を漲らせて、『俺たちは来年卒業。

何としても進級時に上のクラスに上がりたいんだ!

頼む!』


なんて悲壮な雰囲気を醸し出しながら、この世界では罪人が取らされる姿勢である土下座をして申し込んできた。



その気合いに押され、まぁ別にそこまでの手間ではないし…なんて思いながら了承し、放課後を1日潰して先輩方のヒアリングを行い、身体強化のオンオフや、魔力圧縮などの基本的な坂道部の活動方針の説明と、それぞれの課題についてアドバイスを送った。



だがその翌日は悲惨だった。



午後の講義が終わって、さぁ今日も街に繰り出そう。

親方の頑固な性格が災いして、腕は確かなのに寂れている鍛冶屋でも探すか、と教室のドアを引いたら、入部希望者達で長蛇の列ができていた。



その列を見て、俺の脳裏に、嫌な予感が掠めた。


ゴドルフェンの課題は当初、『午前中のクラスの惨状を何とかしろ』だった。


だが、交渉の過程で、『対象は坂道部の部員に限る』と俺は条件付けをしてしまっていた。



これはグレーゾーンだな…


スキームは完璧とはいえ、流石にこの人数になると、どんな不測の事態が生じるか分からない。


もしもゴドルフェンに、坂道部の部員全体が対象と強弁されては、万全だったはずの師の紹介に綻びが生じる可能性がある。


そんな事を考えていたら、折りしも先頭に並んでいた2年Aクラスの先輩は、非常に横柄な態度の、感じの悪いやつだった。



『君がアレン・ロヴェーヌかい?

知っているとは思うけど、僕は2年Aクラスでトップクラスの成績を収めているルーデリオ・フォン・ダイヤルマックというものだよ。

君が作った坂道部は、随分と評判を集めているみたいだね。

中々うまいことやったじゃないか。

僕も加入して、坂道部のブランド価値を高めたら、この部活動の名は国中に轟く事になるよ。

僕が加入する条件は1つ。

来年の進級時までに、僕と監督を交代する事。

もっとも、今すぐ代わりたいと言うならば、受けてあげてもいいけどね』


『『くすくすくす』』(取り巻き)


こんな事を言う、典型的なあほだった。



『これはこれは、高名なルード先輩に、わざわざご足労いただき恐縮です。

ですが、私は人に物を教えられるほど物事を修めたつもりはありません。

ましてや高名な先輩相手に何かを教えるなど、とてもとても』


『ぷっ』


俺は慇懃に加入を断ったが、後ろで見ていたフェイが笑ったせいで、ルード先輩は顔を真っ赤にして怒った。


『な!

加入条件は何もないという事は、調べがついているんだぞ!

僕の申し出を断る意味がわかっているのか?

僕はこの国に9つしかない侯爵家、ダイヤルマック家の跡取りだぞ?

田舎子爵家出身のぽっと出が、この僕に歯向かって、平穏無事な学園生活を送れるとでも思っているのか?!』



中々の勢いで凄まれたが、母上やゴドルフェンの殺気を知っている俺からすれば、子供のお遊びのようなものだ。


俺は、これ以上、ルード先輩とのやり取りに時間を使うのがアホらしくなって、無言でその場を後にした。



『きゃははは!』

『くすくすくす。

あなたは不合格だそうですよ?ルーデリオ先輩』


後ろから、非常に好戦的な声で、こんな事を言っている声が聞こえてきたような気もしたが、めんどくさいから無視した。



だがその翌日以降も、入部希望者は跡を絶たない。



誰から何がどう伝わったのかは分からないが、俺の趣味である『お辞儀』を、不恰好ながら習得してきた先輩及び同級生達が、毎日毎日加入を申請してくる。


面倒くさいし、ゴドルフェンの課題の懸念もあったので、全て断りたかったが、田舎子爵領の三男坊に、下げる必要のない頭を下げてくる誠意ある人たちを足蹴にするのは忍びない。


だが、見ず知らずの人間に、自分の時間を使うほど暇でもない。



俺は、元から一軍に籍を置くライオとダン、そしてすぐさま昇格したステラを巻き込むことにした。



『人を指導するというのは難しい。

俺もそうだが、お前らも、まだまだ人に物を教えるほど偉くなったつもりもないだろう。

だが、人を指導する過程だからこそ得られる、気づきがあるのもまた確かだ。

そして、俺も坂道部の監督になって強く感じたが、人の指導には、その指導する側にも反復訓練が必要だ。

お前らには、この坂道部の副部長として、指導に当たってもらう。

この機会を活かせ。

ライオが3年、ダンが2年、ステラが1年担当だ。

指導方針は任せる。

半年程度経ったら、3人の中から部長を選び、それぞれの方針の良いところを取り込んで、全体の方針に統一感を出す』



こんな感じで、思いつくままにもっともらしい事を言って、部員のヒアリングも含めて対応を丸投げした。


ライオとステラは根が単純なので、簡単に闘志をその目に宿したが、ダンだけは『それって、アレンが面倒くさいだけなんじゃ…』と、鋭いツッコミを入れてきた。


だが、顧問のゴドルフェンが方針に口を出さないと明言している以上、『ルールは俺』なので、俺は強引に押し通した。


暗黒政治最高である。



この2ヶ月で、俺がもう一つ、監督権限でスキームを作ったものがある。


それは、『マネージャー』の導入だ。


この世界には、どうやら部活動にマネージャーというポジションの役割をつけるという概念が無かった。

もちろん安定の万年帰宅部であった俺も、すっかりその存在を忘れていた。


だがある朝、寮の食堂で、どう考えても腐っているとしか思えないやばい臭いを発する焼き魚を、涙目になりながら食している友人達に、水を汲んで回っている委員長、もといケイトを見た時、ピンときた。


こいつ、マネージャーっぽい…


そこで俺は、監督権限を発動してケイトを強引に坂道部のマネージャーにした。


『マネージャーのいない部活動なんて、青ネギの入っていない、かけうどんのようなものだ!

お前は薬味という彩の大切さを何もわかっていない!』


俺のこの名言を、ケイトは無視して答えた。


『マネージャー…?

いったい私になにをさせたいのよ?』


1ヶ月を過ぎた頃には部員がなんと100名を超えており、毎日追い抜かすだけでは、全体の進捗がどうなっているのかさっぱり分からなくなった。


正直言って、部員達の進捗なんてどうでも良いのだが、ゴドルフェンに成果を報告する際に、『丸投げなのでさっぱり分かりません』と言うのは、あまりに無責任で心証が悪い。



なので、フェイに指示し、俺が一度は粉々に破壊した、あの魔力残量の推移を記録する腕時計のような物を作らせて、部員達が走っている間の魔力残量の推移を記録することにした。


費用も全てフェイ持ちだ。


『アレンは人使いが荒いな。貸し一つだよ?』なんて、恐ろしい事をニコニコと言っていたが、背に腹は代えられないと判断した。


フェイは、『既製品の改良だし、既に、設計図はできていたからね。外の人間も使えばこれくらいは出来るよ』なんて言いながら、頼んだ翌日には100個以上の魔道具を事もなげに納品した。

流石はドラグーン家が誇る才女だ。



こうして、俺は何もしなくても、その記録をマネージャーが回収して、纏めたデータが俺のもとへと日々届けられる実に楽ちんな仕組みが完成した。



ついでに、マネージャーが1人では大変そうだったので、ケイトを統括マネージャーという役職に付けて、マネージャーの取りまとめ役として、スカウトと育成もやらせた。


現在マネージャーは各学年に2名、計6人体制にまで拡大している。


もちろん全員ランニングも行うプレイングマネージャーである。



俺はデータ整理だけのつもりで頼んだのだが、王国中から選び抜かれた王立学園の、官吏コース生で構成された彼女らはとびきり有能だった。


頼んでもいないのに、部員の訓練状況と伸び率の関係を分析してレポートに纏めてみたり、体調やスケジュールを管理してみたりと、自分達で勝手に考えて次々に仕事をつくっていった。



そんな感じで、俺は細かな事には何も口出しせず、自分のルーティーンだけは死守しながら、部員達にパワハラワードを投げつけるだけの監督業に勤しんだ。



そして、ゴドルフェンから課題を出されて2ヶ月。



俺は、再度職員室へと突撃した。



今更ながら、ランキングタグ設定という物を発見しましたので、設定しました!


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(これまでお気に入りの作品を全然応援してこなかった…すみません…)

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― 新着の感想 ―
「土の声を膝で聞いて、尻で返事するんだよ!」がほんと何言ってるかわからなくて好き
[良い点] リアド先輩にだけ甘いのほんま草
[一言] 最初の罵倒リアド先輩にだけ激あまで笑う
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