町に行こう
困りました……謎の体調不良が治りません。
「大丈夫か、お前?」
「ぴゅぃー…(駄目なようです)。」
まるで溶けた氷のようになった私に、セルヴィスが気遣った声をかけてくれます。
うぅ、セルヴィスに心配かけてしまって申し訳ないです。
あれから5日。身体はどんどん怠くなる一方でした。
今日なんかもう、どんなに気合を入れて丸まろうとしても駄目で、どうしてもヘニョンと溶けちゃいます。
溶けスラ犬ですね。
唯一の救いは病のように、体に引きずられて心まで弱らない事でしょうか。
身体はどうしようもなく怠いですが、心の中は元気いっぱいです。というか、身体が動かないストレスの分、心の中はいつもより元気なぐらいです。
これって病気なんでしょうかねぇ。スライムが病気にかかるのかすら全然知りませんし、セルヴィスも同じようです。
薬はありますが、スライムって普通の薬を飲んで平気なんでしょうか。そもそも熱もないし何の薬を飲めばいいのかもわかりませんけど。
セルヴィスは私を持ち上げて、眉根を寄せて何か考え込んでいます。
どうしました、セルヴィス?
「───決めた。スライム、町に行こう。」
はい?
え、今なんて言いました?
「町には冒険者ギルドがあるから。そこでなら、知り合いの従魔師に連絡が取れる。従魔師にならお前の不調の原因もわかるかもしれないし。」
ああーなるほどー従魔師ですかー………って、えぇぇぇ!?
知・り・あ・い!?
「ぴゅいいい(ちゃんと誰かと交流してたんですか)!!??」
私がスライムになって3か月、誰かと交流する姿なんて一度も見ていませんよ!?
町に行ってたんですか!?なんでそこで住まないんです!?
っていうかもしかしてセルヴィス、孤独じゃなかった!?お友達いた!?
一瞬あまりの衝撃に、だるい身体の事も忘れて大声(大鳴き?)しました。
2秒後にはまた溶けスラ犬になりましたが……。
「こら、無茶するな。」
軽く叱られました。
心配して怒られるなんて、いつぶりでしょう。100年以上?
身体は怠いのに心はホンワカです。
……困りましたねぇ。セルヴィスってば、優しすぎです。
私は傍にいさせてくれるだけで満足なのに、スライムになってからは優しいし甘やかすし、挙句の果てには私の為にわざわざ町に行くだなんて。
私の心が満たされ過ぎで溺れちゃいますよ?
昔ぐらい程々に冷たいぐらいが私には丁度良いんです。
……お礼をしたくてもスラ犬に出来ることなんて寄り添うぐらいで、時々胸が苦しくなっちゃうんですから。
。 ゜ 。 〇 。 ゜ 。
やって来ました人間の町!!
空から遠目に見たことはありますが、来るのなんて初めてですよ。興味はありましたが、まさか来ることが出来るなんて!
身体は怠いけど、心の中ではついついハイテンションになってしまいます。
タオルを敷いた籠に私を入れたセルヴィスがやって来たのは、私達の住む森の近くにある小さな町。セルヴィスが生まれた町だと道中で聞きました。
ここは元々人は住んでいなかったのですが、随分と昔に森の資源目当てに人が集まって、いつの間にか出来ていた覚えはあります。ハンターや冒険者の拠点となっている場所のようです。
きょろきょろと辺りを見る(いや目はないんですけど)私をよそに、セルヴィスは迷いなく道を進んで───たのに、急に止まりました。あれ?
「すみません。冒険者ギルドへはどう行けばいいですか?」
……はい?
あ、あれ?今セルヴィス、通りすがりの人に道を聞いていませんか?
あれ?知り合いがいるんですよね?町に一人で来てたんじゃないんですか?お友達、いるんじゃないんですか?
「きゅいぃ~(あれぇ~)?」
言葉はわからなくても困惑は伝わったのでしょうか。
道を聞き終えたセルヴィスがこちらを見て首を傾げました。
「道を知らない事が不思議なのか?小さい頃には町に住んでたけど、今は必要最低限でしか来た事ないから。俺も人の町に詳しくないんだよ。」
「………。」
必要最低限しか来た事なかったんですか………っ!!!
い、いえ!まだです!
短い滞在時間でも知り合いは作れますっ
私にはお友達かもしれない知り合いという希望があります!!
お願いフレンズ、現れてーっ!