再会しました。
(セルヴィス……?)
畑で作業する青年は、間違いなくあのセルヴィスです。
道中、私が死んでからどの位時間が経ったかと思っていましたが、セルヴィスの姿から推測するにまだ数年なのでしょう。
以前のセルヴィスはまだ少年の幼さが抜けきれていませんでしたが、すっかり怜悧で美しい大人の男の顔立ちになっています。身体つきも細い印象はそのままですが、背が以前より伸びているような?
以前は短かったのに、今は背中まで伸びた白髪を無造作に一つに纏め、植えてある薬草の手入れをしているセルヴィス。
そりゃあ、逢えたら嬉しいとは考えていました。
ですが、まさか本当に会えるなんて!
あぁ、ここはやはり、今わの際に見る夢なのでしょうか?
(どうしましょう。成長した姿を傍でもっとよく見たいです!)
幸いにも今の私はスライム。そしてセルヴィスはスライム程度は歯牙にもかけず、放置するタイプ!ここは冒険してみるべきでしょう!
斬られたら……まぁセルヴィスになら仕方ないですし。
「ピ、ピィィ~(こ、こんにちは~)?」
「……。何だよ、お前?」
恐る恐る近寄って声(鳴き声ですが)をかけてみると、とっくに私に気づいていたらしいセルヴィスが怪訝そうな顔で答えてくれました!嬉しい!
「ピィ! ピィピ、ピィ!ピィィ!(セルヴィス!素敵ね、格好良いですよ!立派になってお母さんは嬉しいです!)」
わからない事を良い事に好き勝手に言っちゃいます。褒めると以前は憮然とした顔でスルーされたし、一度冗談でお母さんとか言ったら全力拒否を受けた事があります。
ついでに足にスリスリしちゃいましょう!
「やけに人懐っこいスライムだな。大抵の魔物はここには近寄れないはずだけど……、変だな。」
それは同感ですよ、セルヴィス。どうして魔物のスライムが、湖の清浄な気に満たされたここで平気なんでしょうね。生まれた場所もおそらく湖でしょうし、やはり変異種でしょうか。
まぁそれは追々考え……っ!?
「ピィ(きゃっ)!?」
ちょっ、高いっ!!
セルヴィスが私の身体を徐に持ち上げたのです。今の私に翼はないんですよ!?
「お前、随分ボロボロだな。」
え?
そういえばここに辿り着くまで、段差(今の私からすれば2階の高さ)から飛び降りたり、坂道であらぬ方向に転がったり、石や枝が体に当たって痛かったですが。おかげでスライムの体を動かすのに随分と慣れました。
スライムは流動体なので体が欠けても切れても元に戻りますが、痛みはあります。転がれば当然汚れもつきますし。
体を見れば、擦れたりした箇所の表面が凸凹です。土がついてて良くわかりますね。
生まれたばかりで弱いのでしょうか?私の知ってるスライムは───、
……スライムをマジマジ見た事ないので、切れたり欠けたりした部位の表面の詳細まで知りませんでした。きっと流動体でもすぐにはツルツルに治らないんですね。
「獣や他の魔物にでも追われたか?…仕方ない、治療してやるか。」
「ピ……(治療)!?」
やっぱりセルヴィスは優しい子です……!
以前も「その傷が原因でオレ以外の奴に狩られるのは許さないからな。さっさと治せ馬鹿!」って言いながら治療セットを渡してくれましたっけ。あの時は油断を誘うためもあったのかもしれませんが、やっぱり根は優しい子です。
。 ゜ 。 〇 。 ゜ 。
セルヴィスはあの後、家に張ってある結界を一度解き、私を家に入れてくれました。全身を洗って治療が済んだら追い出されましたが。
恐らく最後に私がこの家を出てから何年も経ってる筈なのですが、変わった様子が殆どありませんでした。いえ、物は少し古くなってましたが。私の趣味の可愛い飾り物なんか捨ててしまってもいいでしょうに。
どうしてセルヴィスは、まだこの家に残っているんでしょう。
……そして、家に帰れなくなった私はどうしたらいいんでしょう……。
困った末に、庭で飼われる犬よろしく、庭の片隅にある物置小屋の屋根の下で眠りました。暖かい時期で本当に良かったです……。