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相対する


唐突に家の扉を開けて入ってきたナゾの男は、見るからに普通じゃなかった。


狐の耳と尻尾が生えてるだけなら魔狐とか獣人って可能性もあるけど、尻尾が9本もあるとか普通は聞いた事ないと思う。オレはリリアーナに聞いた事があったけど…、まさか会う事があるなんて考えもしなかった。

リリアーナの親代わりだったという【師匠】。リリアーナが慕っていて、でも100年以上逢っていないって聞いていたから。リリアーナが死んで10年、何の接触もなかったのに!


そんな想定外の人物の登場に、どう対応していいか戸惑いながらリビングへと通した。なんでかリリィが男の手の中でピッピピッピ必死に鳴いてるし。しかもじゃれてるし。男も笑みを浮かべているけどこっちを見る時の目は笑ってない。明らかに敵意を向けられている。…通用するかわからないけど逃げる術を考えておこう。


……というか、正直そんな場合じゃないけどさ! 家に残ってる師匠用のカップやら何やらから、勝手に【師匠】は女だと思ってたのに、男とか聞いてないよリリアーナ!!



 。 ゜ 。 〇  。 ゜ 。



男……ナギが来た理由は、オレをここから追い出す為だった。


当然かもしれない。この家は元々、ナギとリリアーナが住んでいたと聞いている。こいつはオレがリリアーナを仇だと狙ってきた事を知っていたし、リリアーナが知らせたのか調べたのか、とにかく自分の大事な弟子の命を狙っていた奴なんて住まわせたくはないだろう。


ただそこから予想外の方向に話がいった。

白い髪と紅い瞳は高い魔力を持つ証だと。都でなら普通に暮らせる、なんなら当面の面倒も見ると。


(なんで敵意を抱くオレなんかにそこまでする??)


率直に疑問をぶつけて────返ってきたのは、もはや隠そうともしない殺気。



────殺される。



冷や汗が伝う。本能で悟った。ああ、()()は人間程度が敵う相手じゃない。

リリアーナもそうだったけど、強さの次元が違いすぎる。リリアーナの事がなければ、会った瞬間に何の躊躇いもなく殺されている。


…この男はリリアーナの事が本当に好きだったみたいだから、躊躇うわけがないか。「僕のとってもとっても大事な女の子」って異性としても好きだったのかもしれない。

それでも殺さないのは『リリアーナの為』か。なるほど、それなら納得できる。でも納得できるからといって『はい、そうですか』と聞くわけにはいかない。



「悪いけど、それは出来ない。」


きっぱり断った瞬間、頬に熱い一閃が走る。ツツ、と垂れる血の感触。……覚悟してたけど、さすがにすぐには殺されなかった。そしてまったく攻撃が見えなかった……。


「拒否は許さないって言わなかった?次は警告じゃすまさないよ。」


どうやってか頬を切り裂いてきた張本人は、優雅に脚を組みながら微笑んでくる。抵抗はいっさい出来そうにない、かな。死んだらリリアーナが怒るし悲しむだろうから、出来れば避けたいんだけどなぁ。たぶんリリィも悲しむし───って、そういえばリリィ、さっきから鳴きも動きもしないけど……あ、よく見たら何か魔力のような何かの力がリリィに纏わりついてる。動きを封じられている?この男の仕業か。


リリィの事だけは心残りだな。ごめん、リリィ。


「アンタが許せないのはわかるよ。だから殺されても文句は言わない。ただ、ここを出ていく気はない。」


「ふぅん、僕の言う事を信じてないのかな?」


「アンタが言ったのが本当でも嘘でも関係ない。オレはここでやらなくちゃいけない事があるんだ。」


「例えばリリアーナの墓守、とか?」


「!」


図星をさされた。なんで知って…っ


「僕は遠くの物事を見通せる能力があってね。安心して?長いこと傍にいてあげられなかったんだ、リリアーナの墓守は当然、僕がするよ。ああ、それにスライムのリリィも預かるからね。」


つまりリリィは置いていけ、というわけか。ここで死んでもリリィは大丈夫ってことだけが救いかな。


「まさかそれでも、君はここから出ていかないと言うのかな?」


「────あぁ。」



ザシュッ という切り裂く音と衝撃。椅子ごと吹っ飛ばされて、床に叩きつけられた。

肺の中の空気が押し出されて「カハッ」と口から洩れる音と、身体のいたる所を裂かれた痛み。堪えて顔をあげると、男が椅子から立ち上がって無表情でこちらを見下ろしていた。


「いい加減にしなよ?君を殺すのなんて容易いんだ。素直にここから出て行け。」


「…っそぅ、言われても、ね。リリアーナの墓を護るのが、オレに出来る唯一の贖罪なんだ。例えリリアーナの師匠だろうが、他の誰にも譲れない!!」



もうちょっと詰め込んでシリアス終わらせるつもりが!もうちょっと続きます・・・っ

師匠、ハッスルしてます。

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