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スライムと翠晶竜の狩り


パキィンッ パキバキバキィィンッ


魔力により空中で生み出された氷が一瞬にして氷柱となり、次々に地面へと突き刺さる。

小さな兎型の魔物に向かって落とされるそれらを、優れた瞬発力をもつ跳び兎は全て避けきり森を逃げる。()()()()()()()()()()



───順調、順調。


ただいま私達は狩りの真っ最中です。ユフィ―の背に乗った私が魔法で襲っているのはこの森の狩りの定番中の定番、跳び兎。普通の兎より一回り程大きく、小さな額の角と透明の羽をもつ魔物です。すばしっこいんですが生で食べても料理しても美味しいんですよ!


あ、そろそろ森の拓けたところに出ますね。


『そろそろ行きますよ、ユフィ―。準備はいいですか?』


『うん!』


良いお返事です!

ポヨンポヨンの衝撃には強い身体を活かしてユフィ―の背中から跳ね。そのまま地面に落ちる前に、


『凍れ!!』


落ちる前に準備しておいた魔法を解き放ち、跳び兎の行く手を阻む形で前方と左右に氷の壁を生み出します。よし狙い通り!私の身体も狙い通りポヨヨ~ンと跳び兎の後方へと落ちましたっ!格好悪いですけど仕方ないんです着地方法これしかないんですスライムですからっ

道を塞がれた跳び兎はクッと体に力を込め……、


ビュン!


ピョン、なんて可愛らしいものじゃない、ビュンです。

風切り音をさせるという兎にあるまじき力強い跳躍で、樹々が途切れ雲一つない青空へと鳥のように跳びあがる跳び兎。20メートルは跳んで移動できる跳び兎、このまま逃げるつもりなのでしょうが



残念、アウトです。



氷の壁を越え、樹々を跳び超えた先。上空に先回りしていたユフィーの鋭い爪が、跳び兎の体を捕らえたのです。



 。 ゜ 。 〇  。 ゜ 。



『上手にできましたね、ユフィ―。』


『うん。凄いねリリィお姉ちゃん!リリィお姉ちゃんの言った通りに跳び兎が動いて簡単に捕まえられた!どうして?』


『跳び兎は身体も小さく小回りもきくし、素早くとも身体が大きい翠晶竜では森の中での追いかけっこは不利です。何より跳躍力が厄介ですよね。ですが彼らが上に跳んで逃げる為には、わずかな時間ですが力を込める為の()()が必要なのですよ。ですので氷を上から降らせ、ルートを誘導するのと同時に追い立て、空へと逃げられないようにしました。』


氷柱を降らす事で焦らせ、上に逃げる為の力が溜まる前に前方へと跳ねさせる。こうすれば目的地まで跳び兎を誘導することが可能なのです。


『最後の氷の壁は?』


『追い立てられたには事で背後には敵がいる、と跳び兎は思っていたでしょうからね。3方向を塞いでやれば、跳び兎にはもう上空にしか逃げ道がなくなります。』


実際にいたのは素早い翠晶竜じゃなく鈍足スライムでしたが。まぁいないよりは良しです。

最初から氷の檻を作って捕らえられれば楽なのですが、そこは警戒心が強く瞬発力にも優れた跳び兎。追い立て鈍らせないとなかなか捕まりません。


『そっか。ボク、いっつもただ追いかけるだけだったよ。広い所ならそれでも捕まえられたけど、あまり上手くいかないのはそれでなんだね。』


『ふふ、ユフィ―は竜族の中でも素早さに特化した竜族ですからね。私のような鈍足の悪魔は知恵を使わないと。』


悪魔は手先が器用だしなにより魔法を操れるので、そもそもあまり追いかけっこな狩りはしないのですけど。鈍足なだけじゃなく丈夫な鱗も鋭い爪もありませんから。

さ、ちゃちゃっと血抜きしちゃいましょうか。


水の魔力で跳び兎の全身の血に干渉し、全ての血を傷口から外へと排出します。血はほとんどが水で出来ていますからね。生きている獲物の場合、血に含まれる魔力が干渉を受け付けず操ることなどできませんが、死んで抵抗さえなくなれば血抜きも簡単です。

処理した獲物をサッとユフィ―が袋に入れて持ってくれました。


『それじゃあ次の獲物にいきましょうか。ユフィ―、次はあなたが作戦を立ててみましょうか。』


『うん、頑張るよ!』


最初は拙い狩りしかできなかったユフィ―も、何度か経験を積んだことで徐々に頭を使った狩りの仕方を覚えてきています。すごく熱心だし、ユフィ―は将来有望な若き竜。

実に教えがいがありますね!


『じゃあ行きましょう!』




………ユフィ―に狩りを教えることに夢中になっていた私。

同じ頃、同じ森の別の場所で、セルヴィスが魔物に八つ当たりをしていたことなど全く気づきもしませんでした。


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