新たな私の名前
『あいつのセンスの悪さには、とことん絶望した…。』
とっても疲れた声色でそんなことを呟くユフィ―。ここ最近のユフィ―とセルヴィスのやりとりを思い出すと、それも納得ですけどね。
ユフィ―は3日に1度、一緒に狩りをするために、昔ユフィ―の家近くに私が敷いた転移魔法陣を使ってお迎えに来てくれます。そしてその度に名前の件で飛び交う怒号。当然セルヴィスとユフィ―の。
セルヴィスのあげた名前候補を次々とユフィ―が却下していくものですから、セルヴィスもムキになってしまって。
とうとう20個目の名前候補を出した今朝…っとうとう決まったのですよ!私の名前が!!
セルヴィスからの贈り物だと思うと本当に嬉しくて嬉しくて、今なら何でも狩れちゃう気がするー!という私。スライムじゃなかったら朝から顔が嬉しさに崩壊しているところです!
対して、ユフィ―はようやく決まったと脱力中。うーん、ちょっと罪悪感。
『私は別に、スラミでもプクプクでもスラゴンでもポイールでも、セルヴィスが贈ってくれる名前なら良かったのですよ?』
『あり得ないからね!?お姉ちゃん、例えばそこらの魔族や魔物、人間にそんな名前で呼ばれたらどうするの!?』
『?もちろん消し飛ばしますよ?例え今はスライムといえど、悪魔の私をそんなふざけた名前で呼ぶ輩は万死に値します。』
『ふざけた名前だってわかってるなら、あの野郎に怒りをぶつけようよ!!』
セルヴィスに対してそんな事するわけないじゃないですかっ
まぁ今の私じゃ消滅させたくても不可能な場合も多そうです。冒険者のディロック達は…許すのは無理にしろ、一応は知り合いの彼ら。消滅させれたとしても寝ざめが少し悪そうですよねぇ。そう考えると、
『リリィ、というのは、とても素敵な名前ですね。素敵な名前に決まって本当に嬉しいです。セルヴィスに良いアドバイスをありがとう、ユフィ―!』
『ようやくまともな名前が出てきて、ホント良かったよ…。お姉ちゃんが酷い名前になるなんて、ボク許せないし。』
リリィ。それが私の今世の新しい名前です!
セルヴィスが挙げるあまりの名前の……に、ユフィ―が『知り合いの名前をもらうか、少し弄れ!』とアドバイスした結果、セルヴィスが今朝発表した名前でした。
『リリアーナ』からとって『リリィ』。
『リリィ』は『リリアーナ』の愛称でもあります。
なんって素敵なのでしょう!
セルヴィスからの贈り物というだけでも嬉しいのに、私の名前からつけてくれたのです!自分の名前から名前をもらうというのも変な感じですが。
ハッ!そうです、これからはずーっと、名前で呼ばれるたびに愛称で呼んでもらってる気分を味わえるということ。あのセルヴィスが!私を愛称で!!
『ウフフフフフフ……。』
『お姉ちゃん、怖いから。』
『あ、ごめんなさい。嬉しくてつい。』
背中に乗ったスライムが怪し気な笑いを漏らしてるものだから、ユフィ―から苦情が来ちゃいました。でも嬉しいんですもの、スライムに顔があれば、だらしないニヤケ顔を晒している自信があります!スライムで良かったー。
名前なんてセルヴィスからなら何でも良いと思っていましたが、愛称、愛称ですか。ふふふ。
セルヴィスにアドバイスしてくれたユフィーに本当に感謝です!
とつぜんのファンタジー図録
【竜族】
魔物の頂点に位置する、一定以上の魔力・知能ともに兼ね備えた魔族と呼ばれる魔物の一種。巨大な羽根つき蜥蜴のようなものから水蛇のようなものまで姿は千差万別。人間には知られていないが、人間に近い姿に進化した竜族が悪魔と呼ばれている。
大概の竜族は自然と共に暮らし、自然を壊すことを好まない。その為、人間に対して不快感もあらわに襲う竜種もいる。翠晶竜は竜種の中でも特に穏やかな気質を持ち、比較的弱く流麗な外見から飼い慣らそうとする人間もいる。
特筆すべきは彼ら竜族は非常に誇り高く、誇りを傷つけられたと感じれば必ず報復をしてくる。また竜族が宝と定めたものに手を出した場合でも同じである。
竜族が宝とするのは何も物だけではなく、特定の人間を宝と定めた竜族もいたという。