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一緒にしましょう!

最近、だいぶ調子が良くなってまいりました!


『それにしてもユフィ―。何故こんなところにいたんです?ここら辺は危険だと教わっていたでしょう?』


話したい事は沢山あれど、まずは安全地帯──ユフィ―の家に移動することになりました。ですがこれだけは先に聞いておきたい。私と偶然出会わなければ危うく命を落とす所だったのですから。

あ、一角猛虎は今の私には運ぶことも解体することも出来ず、でも勿体ないのでユフィ―が運んでくれています。一角猛虎の肉は硬く人間の食事には向かないのですが、素材としては良い品なのですよ。

ついでに移動の遅い私までその頭に乗せて運んでくれているので、傍からみたらちょっと変な図ですね。


『えぇとね。実は去年、ボクの妹が産まれたんだ。』


『え!?あ、そうですよね。あれから10年経ってたんでした。ユフィ―、妹誕生おめでとうございます!』


そうでしたそうでした、私が死んでから10年!ユフィ―のママのウェンディ―さんが妊娠したのがその1年前で、翠晶竜の妊娠期間は10年ですから当然もう産まれてますよね。

10年死んでたので、まだ膨れていないお腹をユフィ―と揃って見つめた日が先日のように感じていました。

そうですかー、あのお腹にいたのは女の子だったんですねぇ~……。


『ウェルナっていうんだ。すっごく可愛いんだよ!それでね。ボクもウェルナの為にゴハンを採ってきたかったんだ。』


『ユフィ―が?』


『父さんも母さんもお前はいいって言うんだけど、上の子は下の子の子育てを手伝うものでしょ?』


『それは……、確かにそうですが。ユフィ―にはまだ狩りは早いですよ。』


『そんな事ないよ!今日はちょっと踏み込みすぎて危なかったけど、いつもはもっと小さい獲物をちゃんと捕ってきてるもん!』


『見誤る時点でまずいんですよ、ユフィ―。アナタ、ちゃんと両親から狩りを単独でしても良いと許可を得ていますか?』


『う。………だめ、って言われてる。』


やっぱりですか。


竜族の子育てでは、確かに上の子が子育てを手伝うものです。しかしそれは上の子が十分に育ち、一人で狩りをしても大丈夫なぐらい大きくなって経験を積んでから。ユフィ―は体の大きさも少し足りないし、経験も身体に合わせ小さい獲物を対象にした狩りを両親に見守られながら積んでいる途中でしょう。

竜族の成長はゆっくりなのです。


『妹が可愛くて手伝いたい気持ちはわかります。ですが無理をすればご両親を悲しませる結果となるんですから、焦らずしっかりと実力をつけてから、子育てに参加するべきです。……それにユフィ―が傷ついたりしたら、私は涙が枯れるまで泣きますからね?』


『………。でも、早く強くなりたかったんだ。大事なものはちゃんと自分で護れるようになりたい。』


あらあら。10年見ない間にちょっと頑固になりましたね。いえ、向上心が強くなったと言うべきですか。

悪い事ではないのですけど。うーん、どうしましょう?


……………。


『あ。』


『?どうしたの、お姉ちゃん。』


『ユフィ―、こうしませんか?私と一緒に狩りをするのです!』



 。 ゜ 。 〇  。 ゜ 。



スライムが、いない。


家の中にも、庭の畑にも、家の周辺にも、湖にさえも。


「スライム、どこだー!?いるなら返事しろ!!」


スライムが行きそうな場所を手当たり次第に探すけれど、どこにもあの水色が見当たらない。



朝、畑仕事をしに外に出るとスライムが珍しくついて来なかった。いつもは犬みたいに纏わりつくのに、とは思ったけど、その時はそこまで変に思わなかった。でも昼になっても姿を見せないから家中探して、ようやくスライムが家にいない事に気づいた。


こんな事は初めてだ。一体どこに……昨日までいつも通りスライムだった。まさかどこかに出掛けて何かあったんじゃないだろうな?

他のスライムなら従魔師と契約もしてないスライムがどこかに行ったところで、逃げて野生に戻ったと思う。けどアイツは違う。根拠はないけど、オレを置いてどこかに行ったりしない!


クソッ 心当たりは全部探し尽くしたし、あと残るのは広大で危険な森だけだ。湖の影響が届く範囲の魔物なら人間のオレでも倒せるけど、森の殆どは人間では太刀打ちできない魔物が闊歩する危険地帯。


「頼むから迎えに行ける所にいてくれよ、スライ──────?」


森に突入しようとしたその矢先。ふと、茂みの奥の方から葉擦れの音がするのに気づいた。

段々と大きくなる音……何かがこっちに移動している?まさか!



「スライムか!?」


『久しぶりだね、クズ人間。』



……現れたのは、確かにスライムだった。ただ、いきなり人をクズ人間呼ばわりする見覚えのある翠晶竜の頭に乗った状態での登場に、オレがスライムの存在に気づいたのはタップリ30秒は経ってからだったけど。



 。 ゜ 。 〇  。 ゜ 。



『お姉ちゃんを護れなかったくせに、相変わらず生きてたんだ?しぶといね、クズ人間。』


『ピィ!ピピィーィ!!』


『う。ゴメンお姉ちゃん。でもコイツにだけだよ、他の竜や魔物にはこんな話し方しないよ。』


『ピゥゥイ!ピピピ!ピゥピピピ!!』


『えー、まぁ真実なんてボクもコイツに教えたくないけど。じゃあなんて呼べばいいの?』


『ピピ。』


『スラ犬?なにそれ?えと、スライム、のお姉ちゃん、こいつにそんな名前で呼ばれてるの!?』


『ピ。ピーピピ。ピュイピピー。』


『自称?ペットで愛犬ならぬ愛スライム??なに言ってるのお姉ちゃん!あとスライムって名前じゃなくて単なる種族名だからね!?名付けてないからね!?怠慢すぎるねアイツ!!』



……。


目の前でさっきから、魔族の翠晶竜(幼竜)と魔物のスライムが会話?を続けている。で、何でこうなった?


あの翠晶竜は見覚えがある、よな?多分リリアーナが可愛がって仲良くしていた幼竜だ。そしてリリアーナには可愛く振る舞うくせに、オレにはやたらと敵意を向けてきていた奴だ。リリアーナがいなくなってから全く見なかったのに、何で今更ここに??

というか、何でスライムとアイツが一緒にいるんだ??


「え、と。……ス、スライム?」


……今の会話を聞いてると呼びかけにくい。後で絶対にスライムに名前つけよう。そうしよう。


『ピ?』


「何でその、そこの翠晶竜と一緒にいるんだ?」


『ピッピピー!』


嬉しそうになんか答えてくれてるのはわかるけど、意味がわからない!


『スライムお姉ちゃんとボクはすっごく仲の良い友達で、森で偶然会ったんだよ、馬鹿な人間。スライムお姉ちゃんの言葉もわからないお前なんかより、ずーっと前から、ずーっと親しいの!お前なんかよりずーっとずぅぅーっと!』


「っこの……!」


『ピキュッピピピーィィィーーー!!!』


相変わらず無性に腹の立つ竜に何か言い返してやろうと思ったら、スライムが辺り一帯に響き渡るような大声量で初めて鳴いた。何だ!?怒ったのか!?


『お、怒らないでお姉ちゃん!ごめんなさい、ごめんなさい!』


やっぱり怒ってた…っ


「ご、ごめん。」


『ピュイ。ピィ、ピピピピ。』


オレもとりあえず謝るとまるで「仕方ないですね」とばかりに大きく頷く(?)スライム。その後に翠晶竜に何か言っている。


『───わかった。でもわざわざ話す必要なんてないのに…ハァ。ちょっと人間、説明してあげるからちゃんと理解してね。』


「な、なんだよ?」


『スライムお姉ちゃんが魔石を食べないといけない事は聞いたよ。お姉ちゃんはそれを自分で調達したいんだって。でもお姉ちゃんは移動が遅いし魔物を倒せても解体が出来ない。で、ボクも産まれた妹の為に魔物のお肉が欲しいんだ。でも今のボクはまだ一人でそこまで大きな狩りは出来ない。だから、協力して狩りをすることに決めたから。』


はぁ!?


「何言って…っスライム!魔石の事なんて心配してたのか?家に沢山あるし、足りなくなったらオレが狩りをするから。お前は非力な小さいスライムなんだぞ?」


大きなスライムなら獲物を丸ごと包んで溶かす危険な魔物だけど、こんな小さいスライムじゃ子供にだって倒されてしまう。

ところが必死で止めるオレに、爆弾が投げられる。


『ナニ言ってるの人間。()()仕留めたの、お姉ちゃんだよ?』


『ピュイ!?』


「…………。」


翠晶竜が示したのは、その手が引きずっていた立派な角を生やした虎、だった。

森の奥地に住むという一角猛虎だ。リリアーナが狩ってきた事がある。ただしこの魔物はリリアーナが強大な力をもつ魔族だから狩れるのであって、人間の世界では目撃情報が少なすぎて伝説扱いされる程の超危険な魔物だ。

まず森の奥地に辿り着ける人間はいないし、森の浅瀬に出てきても、余程の幸運の持ち主じゃないと人間じゃ逃げられずに殺されるから、とか。


その一角猛虎を倒したのが、スライム?


「───お前が、倒したのか?」


『プ、プピィ~?』


……、なんとなくだけど、しらばっくれようとしてる気がする。


『これでスライムお姉ちゃんは強いってわかった?人間。』


「……ああ。」


『じゃあ問題ないでしょ。明日から一緒に狩りしようね、お姉ちゃん!』


『……ピ。』





翠晶竜と昔から友達だったとか、一角猛虎を倒したとか。会話できる程の知能を持っていることや、翠晶竜の気になる発言とか。


あまりにも気になる事が多すぎて。

見つめるオレの視線から隠れるように、スライムは翠晶竜の身体の影に移動していった。



『お姉ちゃんを護れなかったくせに、相変わらず生きてたんだ?しぶといね、クズ人間。』


『ユフィ!そんな風に言っちゃいけません!!』


『う。ゴメンお姉ちゃん。でもコイツにだけだよ、他の竜や魔物にはこんな話し方しないよ。』


『お姉ちゃん呼びは駄目!私だってバレちゃう!あとセルヴィスにもそんな話し方しない!!』


『えー、まぁ真実なんてボクもコイツに教えたくないけど。じゃあなんて呼べばいいの?』


『スラ犬で。』


『スラ犬?なにそれ?えと、スライム、のお姉ちゃん、こいつにそんな名前で呼ばれてるの!?』


『いえ自称です。ペットの愛犬ならぬ愛スライムを目指してるのです。名前はスライムって名付けてくれましたよ。』


『自称?ペットで愛犬ならぬ愛スライム??なに言ってるのお姉ちゃん!あとスライムって名前じゃなくて単なる種族名だからね!?名付けてないからね!?怠慢すぎるねアイツ!!』

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