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静かな森


凶悪な魔物ばかりの森の奥。似つかわしくない、可愛くか弱い小さな魔物が徘徊する。

水色のぽよんぽよんした体を弾ませて。



ふふふ。私も日々、成長しているのですよ!

スライム生活初日こそ湖から家までの短距離すらものすごく時間がかかったものですが、数か月もスライム生活を送った今!私は倍以上もの距離をたった一時間で移動してきたのです!!

目指すは程よい強さの魔物を見つけて、ゴハンをゲット!!出来れば換金できる素材も!!


……いや、単に初日みたいに怯えて隠れたりせず、普通に移動しただけなんですけどね。あとスライムの体に慣れたというのもあります。

昔に比べたら半分以下のスピードでしか移動できませんが、まぁないものは仕方ないです。

いえ!昔より地面に近い分、珍しい素材が目に入りやすいと思えば…っ

視界は遥かに狭くなってますけど!あまり物を持ち運べないから見つけても殆ど持って帰れませんけどっ!!


(……マイナス要素の方がどう考えても多いですね……っ!!)


今更ながら落ちこむ私を嘲笑うかのように響く『クェーケッケッケ』と野鳥の声が更に涙を誘います…。

何ですか、鳥さんまで私を笑うなんて酷いじゃないですか。昔はわりと餌をあげてたのに恩を忘れたんですか!?多分あの時の鳥さんはあなたのご先祖様ですよ!?



そんな感じで一通りどうでもいい事を嘆いていましたが、進むにつれ思考は別の事に取って代わられました。




(……おかしいですね?)



───早く順調に進めるのは嬉しい。ですが、順調すぎる。



この辺りは家からも湖からも離れ、すでに魔物が出て来る域です。今の私は一撃くらったら即アウトな貧弱スライム。頑強で素早い魔物には出来るだけ遭遇しないよう、かつ今の私でも一撃で倒せるような弱めの魔物を見落とさないようにと意識を集中しまくって探しているのです、が。

小さな魔物一匹みあたらない。これは、どういう事でしょう。


(もしやマズイ時に出てきてしまいましたか…?)


可能性として考えられるのは、何か強い魔物が狩りをして暴れているか、通常よりずっと強力な魔物が突然変異で出現して他の魔物が逃げているか、です。


10年に一度くらい、この森では私達【魔族】程ではないにしろ強力な個体が突然変異という形で生まれてきます。そういった魔物は大変に凶暴で放置しておくには危険すぎる為、昔は私が倒していたのですが…。


……前回の出現は私が死ぬ1年前の事。もう10年以上、経ってます、ね。

万が一にも突然変異の強力な個体が現れたのだとしたら厄介です。今すぐUターンを───



そう考えを巡らせた、瞬間。



『キュアァァァァァ!!』



甲高い()()()()()()辺りに響き渡り、考えるより先に全速力で悲鳴のほうへと体を弾ませた。




 。 ゜ 。 〇  。 ゜ 。




(あれは……っ!)



見覚えのある幼い魔族。そのコを凶暴な魔物が襲っている光景が目に飛び込んできました。


一角猛虎。

突然変異の魔物でこそありませんが、知能も魔力も低いもののアレは相当に凶暴で、自分より格上の相手にだって平気で噛み付いてくる危険な魔物。


なるほど、あれが暴れていたから森が静かだったのですか!しかも襲われているのは魔物よりも遥かに強い、魔族の幼獣。親が現れれば巻き込まれるのは必須というもの。そりゃ逃げ出しますね!

ですがあのコの親が近くにいる気配は……、ないか!


(───仕方ないですね……っ!!)


はっきりいってスライムが一角猛虎に立ち向かうだなんて、アリが人間に立ち向かうようなもの。ですが()()()()を見捨てるなんて選択肢は存在しないのです。



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



スライム生で初の戦闘が最後の戦闘かもしれない、と一瞬で覚悟を決め。急速に魔力を練り上げていく。

反撃を喰らったら終わり。


今の私に使える最大の攻撃魔法を、一角猛虎に。




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