知り合い?友達・・・。
「セルヴィス!?お前セルヴィスじゃないか!!何年ぶりだ!?」
「煩いな。叫ばなくても聞こえるよ。」
教えられた冒険者ギルドに行ってみれば、セルヴィスの【知り合い】と丁度よく居合わせました。
驚いた様子で叫ぶ彼に、嫌そうにセルヴィスの眉根がひそめてます。
ふ、ふふふふふ。
……正直、えぇ正直に言うと、すごぉぉぉぉくガッカリです。
あれ、悪魔だった時の私が正体隠して知り合った冒険者の一人です……セルヴィスに会わせたら仏頂面になっちゃった事のある……。
そう、ですね。彼は従魔師でした。従魔師のディロック。
ディロックったら随分老けましたね?出会った頃は子供みたいな駆け出し冒険者だったのに、今じゃすっかり大人びた顔になって。
当時セルヴィスの為に人間の知り合いを作りたかった私が、駆け出しの彼らが魔物に襲われて全滅しかけているのを見かけて、正体を隠して助けたのをきっかけに知り合いました。
彼らと話していたのは私ですが、後ろにいて殆ど話さなかったセルヴィスだって知り合い、ですね。一緒に住んでる子だって紹介しましたもんね。
でも、お友達とは…到底言えませんね。
仲悪かったですから。
~~~私の期待を返してくださいぃぃっ!!!
「本当に久しぶりだよな。お前、住んでるとこ教えてくれねーわ、町にはこねーわ、あの広大な惑わしの森で偶然でしか会えねーんだもんよ。」
「あんたなんか招いたら家が汚れるだろ。」
「汚れるとはひでーなぁ。ま、リリアーナさんとの思い出の家だもんな?」
ん?私?
「気持ちはわかるけど、さ。リリアーナさんが亡くなってもう10年だぞ?お前、ずっと独りで家に住んでるんだろ?」
おっと、思いがけない所であれから何年経ったかわかりました。
10年ですか。人間からしたら結構長い時間ですよね?
「何度もいうけど町に来いって!パーティの皆も、お前なら歓迎だって言ってるからさ!」
「やだね。リリアーナの墓を護れなくなるし。」
………っ!!??
雷のような衝撃が私の心に走りました。
セ、セルヴィス!?
そんな……あなた……っ、私の墓を護るためにあそこに住んでるんですか!?それとも体のいい言い訳ですか!?
どっちですか、うっかり喜んじゃうじゃないですかっ
心の中で目が潤んじゃうじゃないですか!
いやでも町に誘ってくれてるんですから、墓守なんてしてないで町に行きましょうよ。ディロックももっと言ってやって下さい!
「はぁー。まぁそういうとは思ってたけどよ。」
簡単に諦めないでください!!
。 ゜ 。 〇 。 ゜ 。
2人は場所を変えようと、違う建物に移動しました。
入ったのは何だか色んな食べ物の匂いのする場所です。ザワザワと驚くほどの人が中にいて、食事をしながらお話?むしろ大騒ぎ?をしています。
これはもしや【食事のお店】ですね!?師匠に人間の生活について習った時に聞きました。セルヴィスの服を買いに一度だけ【服のお店】に入ったこともありますから、間違いないでしょう!!
それ以外入った事はないんですが。…怖くて。
食事をするお店は……えっと【レストラン】?【居酒屋】?【食堂】?
なんだか色々種類がありましたが、ここはどれなんでしょう。
セルヴィス達が店の角のテーブルにつくと、すぐに人がやってきてお水と大きな本みたいな物を2人に手渡します。それを見ながら料理の名前を伝える二人に、それが【メニュー】というやつなのだとわかりました。やって来た人は【店員】という職業の人ですね。
暫くすると料理が運ばれてきました。おぉ凄いです!ここからじゃチラッとしか見えませんでしたが、見た事ない料理です!!
どうやら食事しながらお話するようですね。
「んで、今までどんなに会いに来いっつっても来なかったお前が、どういう風の吹きまわしだよ。明日は嵐か?」
「用もなくアンタの顔見て何が楽しいんだよ。それなら畑の世話してる方が有意義。」
「まぁ俺も会いに行くなら綺麗なお姉さんの方がいいわなー。」
んん?……あれ、なんか仲良くないですか?
昔は雑に最低限の返事しかしなかったのに、今は結構喋ってません?
もしかして。もしかしてお友達という希望の光が戻ってきました!?
「今日はこいつの事で相談があったから仕方なくね。魔物の事は、魔物を従える従魔師のお前に聞くのが一番だし。」
「こいつ?」
「3か月ぐらい前から家に住み着いたスライム。こいつなんだけど。」
それまでセルヴィスの隣の席に籠ごと置かれていた私が、テーブルの上に置かれました。
見た目は何の変哲もないスライムがテレンと垂れてる光景が目に入ったことでしょう。心の中では元気に喋れるんですけどね、やっぱり身体は怠くて駄目なんです。
「5日前からだんだんと元気がなくなってきて、今日に至ってはこの通り。丸い形を保つのもしんどいらしい。……何かわかる?」
セルヴィスの指が優しく身体を撫でてくれるので、ついつい甘えてすり寄ってしまいます。そうすると指の背ですりすり擦ってくれて、嬉しくて幸せ~。
「……お前、スライムにならそういう顔するのかよ。なんか負けた気分だわー。」
「ほっといてよ。」
「まーいいけど。どれどれ?」
ディロックが籠から私の身体を持ち上げました。「やぁお久しぶりー」とばかりに手の代わりに触手を作ってあげたいところですが……無理です、だるいです、垂れます。
「随分と弱ってるようだな。スライムを従魔にしてたのはガキの頃だしなぁ。」
ちょっと、摘まんで持ち上げないでください。みょんみょんと垂らして遊ばないで。セルヴィスの怒ってる顔を見てください!
暫く伸ばされたり撫でられたりグルグル色々な角度で見られたり───
と、何故かいきなり動きが止まりました。
視線だけ動かすとディロックが真剣な表情になっています。また様々な角度で観察し出しましたが、今度は真剣です。
?どうしたんでしょう?
「───……おい?これ、本当にスライムか?」
───はい?