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議題2:不純異性交遊の定義と必罰性の有無

傾いた太陽の光が差し込む放課後の教室。未だ校舎内は騒がしく、あちこちで声がするなか、23HRとして宛がわれている教室は重々しい雰囲気に包まれていた。教室中央にはコの字型に並べられた机があり、椅子は全部で五つ。そのうち四つが埋まっている。


「さて、欠員はいるが、今日も今日とて会議を始めよう。」


いつものメンバーがいつもの席に座り、今日も生徒会 (サークル)の活動が始まる。


「それでは今日の議題だが、本来であれば火最少年の提案である『個々の性癖に対する寛容さと発露の場』という議題のはずだったんだが」


「おい待てそこのアホ。てめぇなんてもん提案してんだ。」


「なんですか、副会長?別に変な提案をしているわけではないでしょう?」


「無自覚かよ!尚のこと質が悪いわ!」


「そこの二人、静かにしたまえ。話は最後まで聞くのが常識だぞ、雨宮少年。」


会長に常識を説かれるとは…。まぁ今回は仕方ない


「すいませんでした、会長。」


「うむ。それで、本日はその議題で会議をするつもりだったんだが、急遽変更にせざるを得なくなった。」


非常に深刻そうな顔をし、重々しくそう告げる会長。


「何か、あったんですか?」


隣に座る水瀬ちゃんも心配そうに会長に尋ねる。


「実はな…。今朝、私のクラスの友人が不純異性交遊で生活指導室に連れていかれたんだ。」


「本当ですか?確か、うちの高校は主体性とか自由を強く謳っているけれど、そういうところはやけに厳しいって聞いたことありますが…。その会長の御友人は大丈夫だったのですか?」


「三日間の停学と…二人の恋仲の解消だそうだ。」


「なんですかそれ!横暴すぎじゃないですか!?」


「ああ、私もそう思う。だから私は本日の議題を変更して『不純異性交遊の定義と必罰性の有無』とし、この議事録を教員に提出して直談判することにした。幸いにもこの学校のサークル活動は力があるからな。皆、わかってくれるか」


「そういうことなら、僕は大いに賛成しますよ。」


「わ、私もです!」


「もちろん俺も異論なしです。」


「みんな…ありがとう。では、早速始めよう。急遽だったので資料はないが、まず不純異性交遊の定義について議論したい。」


「定義ですか。明確なラインを定めることは難しそうですね。」


「たしかに、人の感じ方に依るところが大きいからな。とりあえず普遍的な境界線を考える前に、この四人でセーフとアウトの境界を統一するか。」


「そうだな。私から時計回りで、自分が感じるギリギリセーフな事象を言っていこう。一周もすれば、四人ともセーフと回答するラインが見つかるだろう。」


ギリギリセーフか。なかなか難しいが、頬にキスぐらいならギリセーフ…かな?


「それでは始めよう。」


会長から…なんか嫌な予感が


「ディープキス」


「アウトだバカ野郎!」


「何故だ?ベロチューだと卑猥だからアウトだと思ったが、ディープキスならセーフだろう」


「行為自体は同じだからそこに差異はねぇよ!」


「それでは、次は僕ですね。」


「蓮司、頼むから真面目に頼むぞ。」


「流石にこんな場でふざけませんよ。安心してください。」


心外だと言わんばかりの蓮司の顔に、信用し切れなかったことが少し申し訳なくなる。

すまんな蓮司、会長があんなんぶっこんできたものだからつい


「ゴム有りS〇X」


「ふざけんじゃねぇぇぇ!!」


「うるさいですよ、副会長」


「そりゃうるさくもなるさ!なんで会長以上のブッチギリアウト物件持ってくるんだよ!てめぇはアホなのか!?」


「まぁ落ち着いて聞いてください。今は高校生を対象にした不純異性交遊のセーフラインを探しているのです。そう、高校生です。最も性欲滾り体力を持て余している高校生なのです。つまり、男女の仲であるにも関わらずS〇Xをしないというのは、むしろ純然な高校生でない、不純なのです。」


「なんだよその超常理論!ってか会長何なるほどみたいな顔してんだよ!思いっきりアウトだからな!」


「はっ!そ、そうだな。私としたことが火最少年の言い分に飲まれるところであった。では、今のところセーフ度的にはディープキス、ゴム有り〇EX、ベロチューの順だな。」


「だからその二つは同じだって言ってんだろ!会長の中でベロチューはどんだけアウトなんだよ!」


「それでは水瀬少女、君のギリギリセーフラインを教えてくれ。」


「は、はい!私は、その…手を、繋ぐぐらいだと、思います…」


「水瀬ちゃんはそっちに振れるのか……。」


なんで中間ぐらいの境界を探しているのに、こうも極振り連中ばかりなんだ!


「水瀬少女、もう少し攻めれれないか?流石にそのラインだと、アウトの人が続出してしまう。」


「わ、わかりました!すいませんでした!うぅぅー…で、では、体操服の匂いを嗅ぐ、とかでしょうか?」


「なんか方向性が明後日の方へ吹っ飛んだぞ!?」


「あっ!べべべつに私がしてたわけじゃないですからね!!本当ですからね!!」


「会計、意外と良い性癖ものを持っているじゃないですか。」


「そこの変態は仲間を見つけたみたいな目してんじゃねぇ!」


「水瀬少女」


「す、すいません!い、いま考えますので!!」


「この体操服の匂いを嗅ぐという行為は、体操服単体のときか?それとも相方が着ているときか?」


「なんでお前らはそろってがっつり食いついてんだよ…」


「そ、その、着ているときは…できないです。それに、恥ずかしくて、そんなに近づけない、です。」


「水瀬ちゃんも真面目に答えなくても…」


ん?今の言い方って、何となく体操服単体なら前科があるみたいに…いや、これ以上は止そう。


「それじゃ、最後は副会長だけれど、どうせ頬にキスとかでしょう?」


「はぁ!?あんたエスパーかよ!?」


「あ、本当にそうだったのか。なんか童貞臭いな。」


「うるせぇな!」


「まぁいい。私はセーフだぞ。」


「僕もセーフです。」


「わ、わたしも、せ、セーフで」


あれ…水瀬ちゃん手をつなぐがギリギリって言ってなかったっけ?ま、まぁいいのか?


「それではセーフの基準を頬にキスということにしよう。」


「それでは基準も決まりましたし、必罰性云々の前にとりあえず、今回の件を今の物差しで判定してみませんか?」


「そうだな。ってか、何をやって不純異性交遊とされたのか聞いていなかったな。会長、今回の件は具体的に何があったんですか?」


「うむ、今回罰を受けた私の友人がこの前犬を拾ってな。」


「ん?」


「その犬にハチロウと名前を付け、えらく可愛がっていてな。わざわざサークルを立ち上げて学校に連れてくるほどだったのだ。」


「んん?」


「そして毎日朝から晩までずっと一緒にいるうちに、その親愛が日に日に変化していったそうだ。」


「んんん?」


「そして昨日の放課後、ついに我慢の限界を迎えた彼女は、誰もいない教室でハチロウと」


「ちょっと待てぇぇぇぇ!!!!」


「なんだ、人の話は最後まで聞けと言ったばかりだろう。」


「お前まさか、不純異性交遊って」


「うむ、私の友人とハチロウだ。」


「……蓮司、議事録頼んだ。」


「うむ、任されました。」






議題:不純異性交遊の定義と必罰性の有無

結論:少なくとも相手が犬である場合はしっかりと罰して更生させるべき


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