1/2
一話
「僕の前に二度と顔を見せるな!」
しまったと思ったときには、もう口に出していた。
サキは目尻に涙を浮かべてうつむいている。
彼女はうつむいたまま何も言わない。
何か言いたげに口を開くが、言葉が出ることなく口が閉じる。
僕はその場に居続けるのが嫌になり、そばに置いてあった自分の鞄を素早く引き寄せ、逃げるように教室を出た。
謝るでもなく逃げた。
自分は最低だ。
なんて最低なんだ。
今日は終業式で部活は今年度最後の部活。
次に会うのは必然的に次年度、一学期始業式である。
その日にサキを捕まえて、許してくれるまで謝ろう。
そうだ、そうしよう。
その夜、今日の出来事を思い返して胸が痛くなり、なかなか眠れなかった。
僕はその日に謝っておけば良かったと、後に後悔する事をこの時はまだ知る由もなかった。