第5話。抜け道
第5話までお読みいただきありがとうございます!
もうそろそろ年末です。
早いものですね・・・
まずは森を私達は出る事にした。
だが少女は私が先頭に切る事を阻んだ
当然私は理由を聞いた、理由は簡単であった
少女曰くこの森には勇者がかけた魔法があり、外から入るものも内から出る者も、すべて迷宮魔法の加護がかかると言う。
だが少女は自分ならそれを避けるルートが分かると言って見せた。
少女は失った左目に手を当てながら、少しばかり顔を歪めながら右目を開いた
何かが起きるのか?と私はとても興味がそそられた
それはまるで最新機種のゲーム機やソフトが出る時のようなワクワク感
だが次の瞬間少女はまぶたを少しばかり開けた瞬間に、瞳を閉じた上に右目を激しく押さえつけた。
それと共にワクワクして買ったゲームをいざ手に入れ、始めるか!といきこんだがなぜかやる気が出ない感じに陥った。
「大丈夫かい⁉︎」
「ごめんなさい・・・むり・・・」
「・・・」
この森の先に無数の殺気・・・
多分アレは魔獣、それもかなり血気だった奴ら・・・
どうしよう・・・ううん・・・どうしようもない・・・だ・・・。
伝えたいけど・・・痛みで・・・口が・・・
私はあまりの突然の事に無言になってしまった
それは少女の不安を煽るような行為にしかならないと頭の片隅では、分かってはいたのだが・・・
黙らずには居られなかった
数秒黙り込んだ後ハッと気付き直し直ぐに少女に声をかけたが、時すでに遅し・・・
少女は両目を閉じたまま開ける事ができなくなった上に罪悪感と不安が心を支配する始末であった。
恐らくだが左目はえぐり取られた痛みで開く事はおろか今でも激痛が走っているのだろう。
そして右目は何かをしようとしたのか?それとも目を普通に開こうとした瞬間に左目を凌駕する痛みが走ったのだと思われる。
それは今でも変わらず今少女は仮の盲目状態となってしまっている
「急いでまずは街に行こう、手を貸してくれるかい?」
「!!・・・」
「大丈夫。全部わかってる。」
少女はスッと手を出してきたが、その小さな手にはおそろしいほどまでの試練を溢れるほど抱えていた。
私にはそれを感じ取る事ができてしまった
それを幸か不幸かどちらかと言われれば、取り方次第だとしか私は答えられない。
神のお告げを授かったとはいえ私ですら人の域を出ない凡夫なのだからーーーーー。
「不安や恐怖、辛い時は立ち向かう事も大切だが、逃げる事も忘れては行けない。どんなに押し潰され命を絶ちたいと思ったとしても・・・
命を絶つよりは逃げる事を選びなさい。そうして生き残った後は生きている実感を噛み締め、人に優しくなり貴方が指導者となるために奔走しなさい。貴方にしか出来ないのです、その苦しみを分かち合う事と、解決する事はーーーーー」
「少しばかり難しいかな?」
「う、うん・・・」
「でも・・・なんとなく分かる・・・」
「それは良かった、震えも少し治まったね。大丈夫、そう信じさえすれば導きが訪れるから(`・ω・)b」
私は祈りを捧げた
少女と無事にこの森を抜けられるように
少女の目が化膿しないように
少女が無事に試練に打ち勝てるように
私が一時的に少女の心の剣となれるように
「止まるよ・・・」
数刻歩いた。
まだ森は抜けられずに居た時、霧が薄っすらと森を包み始めていた
そんな時血生臭い匂いが何処からか臭ってきた。
私は何故か足を止める事を選んだ。
既に日も落ちかけているこの森の中で後ろに下がる事も前に進む事も辞め、足を止めたのだ。
なんとなくだが、何かがいるのがわかった
それはとても殺気立ち、息を殺し、何かを探し求めているような・・・
大きさは全くわからないだが、大きい事はよくわかる
道中漢方に使えそうな薬草を抜いている時に、私の顔よりも遥かに大きな獣の足跡を見つけたからだ。
極度の緊張で少女の手を強く握っていたのに気づいた。
少女の顔は目の痛みとは違う苦痛に変わっていたが、声ひとつ出さずに我慢をしていた
私は力を緩めた後、謝罪をしたかったが、状況はそれを許さず、ゆっくりとしゃがみ込み、少女の失われた瞳から微かに匂う血の匂いを、匂いの強い生薬となる葉を手で擦り潰し、目の周りや、服で血を拭った場所に塗りたくった。
今目の周りにこの生薬を塗る事は激しい激痛の上にさらなる激痛を呼ぶ事となるだろうが、仕方がない。
死ぬか痛みに耐えるか?何方かを選択しなければならない時だったからだ
この生薬は紫色の花とオレンジ色の花びらが混同して咲くのが特徴であり、葉は強烈なハーブ臭がする。
この世界でも似たような植物があったため漢方の材料にしようと思い、少し摘んだのが幸いだった。
目眩がするほどのハーブ臭と激痛がするが我慢をしてもらうしか他無い
今は何か危ない物が近づいているとしか分からないが、こうするのが最善のような気がしたのだ。
心臓の音が身体から聞こえ居場所がバレるのではないか?
血の匂いが消えていないのではないか?
少女の苦痛の声が少しばかり漏れているではないか・・・。
不安に押しつぶされそうな心を支えたのは少女の小さな掌であった。
私の震える手を強くギュッと握りしめる少女の心の強さには感服した。
私は脂汗を拭うと、鎮静効果のあるハーブを1枚口に含み嚙み砕き、飲み込んだ。
程なくして、大地が揺れ動く、身体が上下に揺れ動くほどの振動が間髪入れず私と少女を襲った。
何か巨大なものが横を横切っている!!!!
それしかわからないーーーーー。
だが私と少女は見つからない事を祈るしか方法はなかった。
振動が消えてから数十分後は霧も晴れたが、今度は日が落ちるギリギリだ
少しばかり早歩きで森を抜けることにした
だがやっとの思いで抜けた先の向かい側も森ではあった。
だがよく見ると森と森の間に大きな砂利道が通っていたので少しばかり安堵、森の中を歩きながら、砂利道を失わないように歩く事にした。
「道に出たよ。このまま森の中を歩いていくね」
「本当ですか⁉︎・・・でもなんで“砂利道”を歩かないのですか?」
「それは山賊が怖いからさ。いるかどうかは分からないけど、僕は武器を持っていない。出会えば君は連れ去られ、僕は恐らくだが殺される。それはゴメンだからね」
「そ、そうですね・・・イタッ!」
「まだ目が痛むのかい?ッ⁉︎足を怪我したのか・・・。少しばかり痛むけど薬を塗るよ。そしたら少しおぶさりなさい、寝てしまっていいよ。疲れただろう?」
この青年はずっと目を押さえ両目を閉じる私の事を今まで勇気付けてくれていた。
薬は傷口に塩を塗って擦っているような痛みが足首を襲った
私は歩いている最中に枝か何か鋭利なものに足を引っ掛け、足が切れたのだと思うが・・・
青年は私を大事をとっておぶってくれた。
当然断ったが、半ば強引におぶられた・・・
青年の背中は大きくて、暖かく、まぶたがゆっくりと重くなってしまった。
「やっと寝たか・・・。余程辛いことがあったのだろう・・・こんなに小さな子があんなに心強いのだから」
私は夢の中で考えた。
あの異常な殺気を放つ獣を回避したこの男は一体何なのだろうか?
森の中に横一列に整列し、しらみ潰しに出会った生物を喰おうと言う神経の獣を回避したこの男は・・・。
この森の生物は馬鹿じゃ無い
その辺の生物なんかよりはよっぽど頭が良い
勿論人間も含めて・・・
【結論はーーーーーよくわかんないっ】
そしてまた思っていたよりも青年の大きくて、たくましい背中の温もりを感じながら瞳のまぶたを閉じた。