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ファナザリースと地球

私が勇者に出会った日に勇者が魔王を倒すことを決めました~魔王は私です~

作者: 雨森 雪華

勇者として召喚された俺は、日々色々な町を巡る修行の旅にすぐに出るなんて事はなく、王城で特訓してからしてかららしい。まあ、今のまま行っても確実に死ぬからな。


そんな修行の最中だった。あいつがやって来たのは。


銀髪だが、毛先十五センチほど赤く、緩やかなウェーブがかかった長い髪を一つに纏めている。健康的に焼けた肌。スタイルはまあ、一部がないことを除けば良い方に入るのかもしれない。そんな俺と同じぐらいの女の子だった。


普通の人間の様だった。しかし、そいつの瞳は紅かったのだ。紅い瞳は魔族の証だ。魔族は今、人間と争っている。俺達人間は青、緑、黄、紫、黒、等と言う風にたくさんあったが、魔族だけは紅い瞳だ。人間に紅い瞳を持つものはいない。


王城の庭にそいつは降り立った。魔法で飛んできたらしい。周りに誰かがいる事もなく一人で来たらしい。ボッチなのかも知れない。俺の先生をしているフロラインさんが、震えている。だが、俺にもその気持ちはわかる。あいつは別次元だ。戦うことが間違いなのかもしれない。


「問うが貴様らが勇者と呼ばれているものたちか? 違ったとしても構わないがな。我が名はモエリ。魔王と呼ばれし者だ。勇者に伝えておけ。我に歯向かうならそれ相応の覚悟をしろ。とな。」


それだけ言うと飛び去ろうとする自称魔王。俺はそれを呼び止める。


「おい、自称魔王! お前らがなんのつもりがあってこんなことしているのか知らないが、俺は戦うからな。今はまだ、お前の方が強くても、俺はお前に勝つ。」


俺がそう言うと、魔王は肩を震わせ笑って言う。


「お前なんかに私が負けるわけないでしょ? 百年経っても無理よ。諦めなさい。て言うか自称じゃないし。」


魔王のしゃべり方が変わったが気にしない。


「それを、死亡フラグって言うんだぜ。」


うっ。と声を詰まらせる魔王だが、直ぐに言葉を返してくる。


「……そ、それがなに? 人の失敗でしか勝てないあなたを誰が認めるの? 」


「それで勝っても認められるんだよ。勇者だからな。」


「あっそ。なら、私は負けないだけよ。」


俺らは睨み合う。そして、魔王が何かを言った様だが俺には聞こえなかった。


「……待ってるから。」


「……待ってろよな。」


俺が呟いた言葉も魔王には聞こえてないようだ。二人とも気付いていなかったが、奇しくもおなじような言葉を発していた。


「勇者。名前を教えて。」


「氷影。夕時雨氷影ゆうしぐれヒカゲ。」


「氷影ね。わかった覚えてあげる。但し、私の所に来れたらね。」


「ああ、魔王。」


気付いていなかったが俺はこいつを魔王だ。と認識していた。自称魔王等ではないと。


「モエリ。栗山萌梨! 私にもきちんと名前があるの。ちゃんと呼びなさいよね。」


頬を膨らませて怒るこいつをそんな風には中々見れないが。


「はいはい。魔王モエリ。」


「はいは一回! 」


「 はーい。」


「んもー。いいや。」


「魔王モエリ。」


さっきまでの怒った顔は何処に行ったのか、真っ直ぐな瞳で、見つめてくる。


「なに? 」


「お前は、俺が絶対勝つ。だから、俺が行くまで倒れるなよ。」


「なんだ。心配してくれたんだ。まあ、あんたよりは強いし、これからもっともーっと強くなるんだからね。覚悟しなさいよね。」


そう言うと同時に笑い出す魔王モエリ。だが、その瞳には涙が浮かんでいた。それに気づいた俺は固まってしまった。どうして、こいつは泣いてるんだ? 俺以外にも心配してくれるような奴はいるだろ。魔王なんだし。俺がそうやって固まっているのを見て、魔王モエリはいや、モエリは慌てる。


「別に泣いてないもん。心の汗だもの。」


「あはは、ボッチなのか。」


「違うもん。そんなことないよーだ。」


あっかんべーとこちらにしてくる。その顔にはもう涙は無かった。


「勇者は色仕掛けと言うか、女の子の涙に弱いっと。」


おい。何メモしてるんだ。


「演技だったのか。」


「さあね? どうでしょう。まあ、少なくとも私にも仲間がいるのよ。」


ふふっと不敵に笑うモエリ。あーあ、こんなやつ心配するんじゃなかった。


「ま、何はともあれ私は行くわね。私を倒して見せなさい。勇者。」


「ああ、お前は俺が倒すよ。魔王。」


そうしてあいつは飛び去った。

そうして俺も、鍛練に戻る。フロラインさんが、ボーッとしていたので顔の前で手を叩く。所謂猫だましだ。


「うおっ。何すんだ。じゃなくて、何でお前はあんなやつと会話出来るんだよ。」


「そりゃまあ、俺が勇者だからな。」


「そんなもんか? 」


「そんなもんだろ。」


納得できてないが、まあ、そんなもんかと強引に自分に言い聞かせるフロラインさん。そして、何度か首をたてに振り、俺にこう言う。


「氷影にも、ようやく勇者として魔王と戦うことにしたのか。なら、今日は実戦形式で行くか。」


…………やめて下さい。死んでしまいます。フロラインさんはこの国随一の剣の使い手だ。剣聖、剣姫と呼ばれている。二つ名からわかるように女性だ。かなりグラマーだ。出るところは出ていて引っ込むところは引っ込む、かなり良い体型をしている。これ以上言うと、セクハラで訴えられそうなのでやめておこう。


モエリはフロラインさんの一部を見て、殺気だっていた。一瞬だけだったが。それ故に、モエリに怯えていたのだろう。彼女は剣の腕はたつのだが、戦闘が出来ないらしい。殺気に弱いのだ。だから、普段は王族の警護をしている。守るべきものがいるときは殺気にすら勝つ。あんたが勇者すれば良いのに。いや、それはダメだな。俺の存在意義が無くなるし、モエリと約束したしな。



少し時は遡る


魔王として今日は勇者のいるところに乗り込んだ訳だけど、よもや勇者以上の敵がいるとは。あ、別にまだ、私成長期だからね? まだ、中学2年生だから。とは言え、もう身長も伸びなくなってきたが。


「どうだった? モエリ。勇者は。」


私の仲間の一人ディーネが聞いてくる。僕っ娘だ。そして、私の仲間だ。いろんな意味で。


「まあ、変な人かな? 面白かったよ。色々とね。それよりも聞いてよディーネ。エウラ並みがいた。」


それを聞いたディーネが驚愕で目を見開き、その他の仲間は、は? と言う顔をしていた。エウラは私の仲間の中で一番胸が大きい、私の秘書だ。


「サラナとはどっちが上? 」


「あいつ。」


サラナとは、私の仲間の中では二番目の大きさで、エウラと少しの差だ。ディーネと双子だ。双子なのにこの差。何が原因なのか。それは不明。


「それは確実に排除せねば……。」


シスコンと言うわけではないが、胸の大きさで許せるのがサラナまでなのだ。仲間は基本例外だ。


「でも、かなり腕がたちそうだよ。」


「ふーん、関係ないね。僕の前にたったのが運のつきさ。」


燃えるディーネ。ディーネは水魔族だから、燃えないはずなのにな。


「まあ、それは置いとこう。」


お、今日は珍しくディーネが立ち直るのが早い。


「そうですわね。」


そんなディーネの言葉に応えたのはサラナだった。一応サラナの方が妹だ。


「で、魔王様? どうして一人で行かれましたの? 」


と、エウラが尋ねてくる。笑顔だがその目は真剣だ。怖い。


「え、いや、あのさ、なんと言うか。まあ、ね? 」


これで理解できたら凄い。


「ね? と言われましても。私達も心配になりますわ。きちんと言ってくれないと。それとも、魔王様は、いえ、モエリは私達のことが信頼できませんの? それに、モエリは私達の家族なんですの。確かに元は人間だったのだから人間のことが気になっても仕方ないとしましても、私は、皆は心配なのですわ。モエリになにかあったらと。」


サラナのその言葉に反論の余地はない。私の単独行動で皆に心配させてしまったのだ。


「ごめんなさい。」


そう、素直に謝る。ディーネがいたずらっ子の顔でサラナを止める。


「一番慌ててたのはサラナだからね~。仕方ないか。」


慌てて首を横に振るサラナ。


「そんなことないですわ。一番なら、エウラですわ。」


いきなり、話を振られ赤面しつつも応えるエウラ。


「し、仕方ないでしょう。本当に心配したのですから。」


「ゴメンね。」


私は謝りつつエウラに抱きつく。


「ありがとう。」


そう小さく呟いた言葉を何人が聞き取れたのかは謎だ。まあ、ここにいる三人は聞き取れていたらしく。


「どういたしまして。モエリ。」


「どーいたしまして。モエリ。」


「どうってことないのですわ。モエリ。」


と、三人それぞれ返してくれたのだった。



奇しくも同じとき、違う場所で魔王と勇者は心に決めた。


「絶対に、仲間は守る。そのためにも勇者に負けるわけにはいかない」


と、魔王が、


「この約束。何年かかろうが果たして見せる。そのためにも魔王には勝つぜ」


と、勇者が、


そして、彼等は歩き出す。

片や勇者として

片や魔王として。


お互いの役目を果たすため

9月20日(火)午後7時45分、加筆修正しました。


モエリのパートの前の部分に時系列を表す言葉をいれました。

最後の一行を加筆しました。

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