63次元 橙の国 陽の鬣は金色の調べの次元
はい今日は!まずまずのペースではないでしょうか?
新ストーリー開幕ですね。今回のスポットライトは何方に当たるのか。
然うです、又メインストーリーですね。(まぁ何時もメインだけれども・・・。)
此の話はずーっと、本当にずーっと書きたいなぁと兼ねてより中学の頃から思い描いていた話なので実現して感無量で御座います。
今回は滅茶苦茶挿絵も多いです。でもデジタルも慣れて来たので結構サクサク描けましたよ!うん!
サクッと読めるストーリーなのでどうぞお楽しみください、今回はモフモフだらけの楽園の御話です!
昊靄に包まれるは獣の楽園
争いも諍いも育たぬ地
古から閉ざされた島、静かに靄へ消えて行く
平和の象徴でもあろう、でももう直、
噫我等古の獣、未だ陽を迎えた事は一度となく
・・・・・
「ん、何か皆騒がしい様な・・・。」
茶を飲み掛けていたリュウは席を立って窓から外を見遣った。
今日も此処は沢山の龍で溢れている。皆思い思いに自由に過ごしていた。
落龍の詠の事があるので、特に今此処は龍が多い。余り次元や街に行かない様気を遣っているのだ。
見渡す限り旻や大地を龍達が駆けっているが・・・矢張り何か不審だ。
まるで皆何かを目指しているかの様に一ヶ所へ向かっている様な・・・?
走り去って行く先迄は此処からじゃあ見えない。何かあったのかと思ったけれども、龍達の顔は焦っている風ではなさそうだ。
一体何を見付けたんだろう?
「む、リュウよ。何か見えるのか?」
机で微睡んでいた千代がふわりと浮かんで彼の傍へ留まった。
そして繁々と窓の外を見、僅かに目を丸くする。
「ん、何じゃ此は。皆一体何処へ向かっておるのじゃ。」
「其が僕にも分からなくて・・・いやまさか、」
一つの答えに行き着き、急いで彼は扉へと向かう。
外へ繋がる扉を開け放つと、其処には無数の龍達が居た。
群がってしまっている、小さい子が潰されていないと良いけれども。
龍達は何処か期待の籠もった目をしていた。何だか随分楽しそうだ。
気圧される程の龍の群に思わず千代は少し後退ってしまう。
此じゃあ動く事も儘ならないだろう。でも其の群は少しずつ左右へ分かれて行った。
何度か龍達が鳴き交わしている声が聞こえる。如何やら声を掛け合って動いている様だ。
こんな協力し合っているなんて、矢張り此は、
然う思い待っていると見覚えのある影が奥から覗いた。
龍達を掻き分ける様にして此方へ来ている様だ。あんな絡まれる神なんて一柱しかいない。
「セレ、良く来ましたね!」
「リ、リュウか。済まないな、前来た許りなのに。」
然う言い姿を現したのはセレだった。
しっかりとフードをしているが、戯れ付く様に龍達に猛アタックを噛まされている・・・。
でも彼女が陽に弱い事は周知しているのだろう。何頭かの龍が翼や鰭を広げて日陰を作ってくれていた。
「うむぅ、まさか其方だったか。こんな龍達が出迎える等。」
「然うなんです。何だか嫉妬しちゃいそうですけど。」
千代は小さく一つ唸ったが、尾を振り奥へと引っ込んで行った。
「さぁセレ、遠慮する事はないですよ。どうぞ入ってください。」
「噫有難う。っと、ガルダ大丈夫か?」
如何やら同行者が居たらしい。セレが声を掛けると少し離れた所から手を挙げているのが見えた。
「セ、セレ!ちょっま、中々、進めなくて、」
「皆済まないがガルダを通してくれないか?」
「未だ遊んでないよ。」
―次は私ですよ!―
「う、うわぁモフモフかぁ!」
頭を摺り寄せて来る龍の誘惑に負けて彼女はモフモフに包まれてしまう・・・。此じゃあ埒が明かない。
「いや、本当に凄い数だな。何でこんな・・・、」
―・・・私が連れて行きましょう。―
龍の群に巻き込まれてガルダが踠いていると一つの影に覆われた。
見上げる間もなく彼の躯は持ち上がる。思わず身を捩ったが、如何やら一頭の龍が彼の服の襟を銜えて飛んでいる様だ。
其の儘緩りと旻を漂ってそっとセレの前で降ろされた。
「っと、何とか此処迄来れたぜ。」
「ん、噫有難うソルレイサー。」
―此位御安い御用です。でもその・・・、―
ガルダの上を大きな影が旋回する。
思わず見上げると巨大な菱形の膜が浮いているのが目に付いた。
少しマンタに似た龍族だ。全体的に濃い翠で棚引く様に揺れている。
だが其が緩やかに降下してちらとセレを見遣った。見えていた裏側と言う可きだろうか、其と表は全く別で、上部は薄い翠の体色をしていた。
冰に似た甲を背負い、尾はまるで葉を付けた木の枝の様だ。
大きな影に思わずガルダは一歩引いてしまったが、其の龍はセレの方へ頭を寄せている様にも見えた。
「ん、何だ・・・?おぉ、御前は細やかなタイプのモフモフなのか!」
そっとセレが寄せられた頭を撫でる。細やかなタイプのモフモフ、新しい言葉だ。
―あ、其処です其処です!―
ソルレイサーも嬉しいのか目を閉じている。・・・な、成程甘えたかったのか。
何と言うか・・・その、うん、凄いなセレは。こんなにもモテモテだなんて。
「えっとあの、俺からも有難な。」
声は掛けてみたけれども、すっかりセレに夢中らしく、嬉しそうな鳴き声が返って来た。
凄い、本当に此処はモフモフランドなんだ。
息を呑むガルダにリュウは忍び笑いを漏らした。
「ガルダも来てくれたんですね。ようこそ、どうぞ中へ入ってください。外じゃあ疲れちゃうでしょう。」
「悪いなリュウ、此処に寄るつもりじゃあなかったんだが。」
「何と言うか龍に絡まれて此処迄来ちゃった感じだよな。」
其はレリーシャ=ガーデンからの帰りの事、フェリナ達との御茶会を終え帰ろうとしたのだが、其の時一匹の龍に見付かったのだ。
見付かったと言っても別に只挨拶をした丈だったんだが。
すると其の龍は友達を呼んで来ると言って、龍が龍を呼び、気付けばすっかり俺達は龍に囲まれていたんだ。
俺は初めての事だし、何より落龍の詠があった後なので身構えてしまったけれども、大してセレは苦笑を浮かべている丈だった。
やられたと彼女は笑っていたが、良く此の状況で笑えるな、と驚いたけれども。
確かにセレは良く龍に絡まれると、好意を寄せられると聞いてはいたし、実態は幾らか見ていたけれども、其でも此処迄だとは思わなかったのだ。
こんな足の踏み場もなくなる様な、何でこんな事になったか分からなかった俺にセレは答えをくれた。
曰く、遊びたい丈だと。
何やら前遊ぶ約束をセレは何頭かの龍と交わしていたらしい。其を果たす機会だと龍が群がってしまったのだ。
いや其にしても遊びたいからってこんな・・・。
冗談かとも思ったけれど本当らしい・・・。何時もセレがリュウの所へ行くと帰りが遅かったが、斯う言う事だったのか。
身を以て体験して良く分かる。・・・やり過ぎだ!
一先ずセレは近付く龍達をどんどんモファンターの極意で鎮めて行ったが、手は二つしかないのだ、迚も足りない。
・・・因みに俺も撫でたりしたけれども全く満足して貰えなかった。うん、まぁ然うだよな。
然うして龍達に押されたりし、気付けばリュウの家に来てしまった訳である。
初めて来たけれど、まさかこんな形で訪れる事になるとは。
其処からリュウに招かれ、扉を潜る。
流石に家へ入れば多少は動ける様になる。小さい龍達は如何しても入ってしまうけれど、先の龍みたいな大型のは案の定外で御預けを喰らう事になった。
「・・・何だか集まって来る龍達が増えて行っている気がするな。」
流石に疲れた様で椅子に腰掛けるとセレは長く息を付いた。
もう一寸断ったり出来たら良いんだけど・・・自分は斯う言う押しにとことん弱い。
だって経験をした事が無かったから。最近やっと少し慣れて来たけれども其でも、龍達の歓迎は熱烈だ。
純粋に良い奴許りだし、其の行為を無下にしたくはない。然うして結局はじっくり満喫してしまうんだな。
席に着いたが早速自分の膝の争奪戦が秘かに足元で起こってしまう・・・。何匹かの龍が転がったり攀じ登ろうと頑張っていた。
斯う言うのを見るとうずうずしてしまう・・・。順番に乗せてあげようか。
「フフ、然うですね。リンクも大分繋がって来ましたし、一応落龍の詠の事があったので成る可くは此方に居て貰ってるんですよ。」
「然う言えば然うだったな。皆元気そうで良かった。」
そっとガルダもセレの隣へ腰掛けた。本当に足の踏み場もない程集まっている。
セレはもう慣れた物で、手近な龍達を次々撫でたりあやしたりしていた。
話し乍ら出来るなんて器用だな。片手間みたいな扱いになっているけれども龍達は其で満足しているみたいだ。
「さぁ茶を持って来たぞい。緩りするが良い。」
奥から器用にも盆を角に乗せて千代がやって来た。
机に下ろすと満足そうに胸を反らす。
「有難う千代、私の為にこんな、」
そして即セレに捕獲され、頬擦りされていた。胸を反らした所為で胸毛が素晴しい事になったのでセレも堪らなかったんだろう。
えっと此何て言うんだろう、龍吸い?すっかり顔を埋めて吸っているけれど。
俺の知らない所でセレのモフモフ愛が重症化している気がする。
「む、おぅ、其方も来ておったか。彼の時は随分世話になったぞい。ゆるりとするが良いぞい。」
セレに揉みくちゃにされ乍らもちらと千代は顔を出した。
満更でもない様だが、扱いは完璧に縫い包みの其だ。
「いやまぁ助かったのは此方も同じだし、良かったよ。」
落龍の詠の時、千代はリュウと協力して鎮めてくれる龍を探してくれた。
能力は無くとも其処は元龍の番神だ。然う言った知識で彼の右に出る者はいないだろう。
其の間にリュウが配膳を済ませ、カップと焼き菓子が盛られた。
先御茶した許りだけど、何か色々疲れたし、御相伴に預かろう。
「其にしても龍に絡まれたって、若しかして何処か行ったりしていたんですか?」
「ん、まぁ帰りだったがな。偶々イニオスに会って気付いたら・・・。」
つい苦笑を漏らしてしまう。自分が呼ばれたと許りに傍に居た一匹の龍が寄って来たのだ。
其の龍は水の雫に翼が生えた様な姿をしていた。
先から長く紐の様に触角が伸び、其を揺らして緩やかに飛んでいる。
掌に収まる位の大きさしかない龍だ。随分と自分を好いてくれている様でずっと付いて来ていたのだ。
不思議そうに自分の周りを旋回している。そっと触れると水の膜に包まれる様なひんやりとした変わった感覚が残る。
気持良いが余り突くと割れそうな気配がある、程々にして置こう。
「君が連れて来ちゃったの?」
リュウに尋ねられ、悪怯れる様子もなくイニオスは何度も頷いた。
下手したら褒めて貰えると思って然うな様子だ。可愛過ぎる。
「だ、駄目ですよそんな目をしても。程々に、セレと遊ぶのは程々にしなさいって。」
如何やら知らない所でそんな指導が入っていた様だ。其でもイニオスはそっと自分の後ろへと羽搏いて行ってしまった。
「う、うぅ~、僕の言う事は聞かないのに・・・。」
「まぁ別に龍の番神の言う事を聞かないとならないなんて決まりはないぞい。」
「いや本当に忙しい時とかは私も断るからそんな落ち込まないでくれ。」
龍は種類も数も膨大なんだ。全部管理する丈でも一苦労だろう。
龍は割合自由な存在だし、其の苦労は察するに余り有る。
何だか苦労してそうだし、自分からも少し落ち着く様龍達に言って置こうかな。
リュウは一つ息を付くとカップに口を付けた。何口か飲んで落ち着こうとしているみたいだ。
見るとガルダも似た様な具合だ。周りをすっかり龍達に囲まれて小さくなってしまっている。
「ガルダ、そんな固まらなくても。咬み付く様な奴も居ないし大丈夫だ。」
「う、うん分かってるけどさ。いやまさかこんな多いと思わなくて。」
慣れていないのかおどおどしているが、そんな彼を悪戯好きの龍が見逃す筈もない。彼の焼き菓子へ近付く者が居る事を自分は見逃さなかった。
さっと掬ってガルダを助けるとするか。
「ッ⁉あぁああああ‼何だ此のモフモフは!」
其奴に触れた瞬間に電撃が背を駆け抜ける。
う、あ・・・こ、此のモフモフは凄い!レベルが高過ぎる!
思わず其の儘ギュッと其の龍を抱き抱えた。ガルダからすると随分強引に見えたらしく僅かに目を剥いている。
・・・一応、悪戯を止めたんだからな?
「キャ、捕まっちゃった!」
「あざと可愛過ぎるぅ!」
「セレ、心の声出てるからな。」
彼に苦笑されたが構う物か。もう此は渡さないぞ。
「イリス・・・君態としたでしょ。」
ついリュウも苦笑してしまった。此の龍は甘えん坊で有名なのだ。
イリス、と呼ばれた龍は大人しくしていた。如何やら此が彼の目的だったみたいだ。
其の龍は石竹色をしており、何処となく兎かハムスターに似ている体型をしていた。
垂れ耳の様に伸ばされているのはマントで、彼の首元と尾はまるで雲華の様な形状をしている。
一見雲華の上に乗っている獣の様に見えるのだ。此の至上のモフモフトラップに彼女が掛からない訳がなかった。
何処迄も沈み込む様な、でもしっかりとした温もりと質量感がある。噫顔を埋めて眠ってしまいたい・・・。
「・・・セレって、何時もこんな感じなのか?」
恍惚な笑みを浮かべて彼女は心底幸せそうだ。うん、可愛いけれども。
「まぁ大体こんな具合ですね。」
「前来た時もこんなんだったぞい。」
もう完全に龍が彼女の弱点となってしまっているじゃないか。
まぁ安らげるのは良い事なんだけれども、ううん。
「そ、然うだ。リュウ、折角だし聞いて置こうと思ったんだが。」
「何ですかセレ。」
存外セレは早く理性を取り戻した様だ。イリスを抱いた儘だが話す能力は戻っている。
「噫前ある次元で漾蛉龍とレミレストに会ったんだが、一寸危ない所だったからな。元気にしてるかと思って。」
「漾蛉龍・・・噫多分彼の子達の事ですね。はい大丈夫ですよ。此処に戻って来た時随分興奮していましたが。」
「然うか。其なら良かったが、迷惑を掛けてしまったからな。」
「ん、其って確かグリスの次元に行ったとかって言ってた奴か?」
微妙に名に聞き覚えがあった。彼の話は軽くは聞いているけれども。
「噫、次元が無くなってしまったからな。巻き込まれていないか心配だったんだ。」
自分で捜そうかと思ったが、折角だしリュウに聞く方が早いな。
「成程其で・・・。良い次元だったのに惜しい事をしたと言ってましたが、でも自分が手を下さずに次元を護ってくれて助かったと喜んでいましたよ。」
「ん、然うだったのか。だったらまぁ良かったな。」
根が良い龍と言うのは知っていたし、然うか、然う取ってくれたのか。
「・・・僕の心配はしてくれないのかい?」
聞き覚えのある声に思わず耳が動く。
そして波紋に過る影があった。旻を覆う龍達の群に紛れていた様だ。
「っまさか御前は、」
「ど、如何したセレ、」
思わず席を立ったセレはじっと旻を見遣った。
壁が崩れた様になって大きく穿たれた窓、其処から一つの影が入り込む。
其は幾何学的模様を詰め込んだ様な現実感の無い姿、全てを見透かす様な鏡の瞳を有した龍。
然う、フリューレンスだ。心の龍が姿を現したのだ。
「ほぅ珍しいぞい。其方が此処へ姿を見せるとは。」
「うん、だって此処にセレが居るって聞いたから。」
そして遠慮勝ちに此方を見遣り、漂わせていた髭を震わせた。
「・・・良かった、元気になったんだな。」
落龍の詠の時みたいな、消えそうな不安定な躯じゃない。ちゃんと元通りになれた様だ。
「うん御蔭様で。もう僕は元気だよ。」
然う言って目を細めると小さく彼は鳴いた。
「セレ、此の龍って、」
「ん、噫然うか。ガルダは初めましてか。フリューレンスって言う心の龍だ。落龍の詠を止めてくれたのは此奴なんだ。」
「僕じゃないよ。彼は君の願いが皆に届いたからだよ。」
一寸気恥ずかしそうに彼は鰭を揺らした。余其の表情は見た事がないから何処か新鮮だ。
「あ、此の龍が然うなのか。へぇ・・・。」
龍、なんだよな。随分変わった姿をしているけれども。
何だか随分セレに懐いている様だ。然う言えばセレにプロポーズじゃないけど、熱烈なアタックをして来る龍なんだっけ・・・。
其は一寸宜しくない、良く見て置かないと。心の龍丈あってか漂う魔力は本物だし。
「フリューレンスさん、そんな風に喋ったりするんですね。」
「フン、僕はセレが好きな丈だよ。でも・・・、」
一度彼の瞳が曦を反射したかと思うとガルダを映していた。
じっと・・・瞳を動かさずに。
「・・・君、名前は何て言うの?」
「え?俺はガルダリューだけど。」
「ガルダリューか。フーン、君中々面白い心を持ってるね。何だか懐かしく思うし・・・うん、覚えて置くよ。」
何だか冷たい様な見透かす様な不思議な瞳に思わずガルダの背が伸びた。
「ガルダの心を勝手に読んだりしたら怒るからなフリューレンス。」
「勿論分かってるよ!でも、本当に変わった心をしているね。セレのを知らなかったらうっかり欲しくなっちゃいそうだ・・・。今時珍しいよこんなの。」
未練がありそうな目でガルダの事を見詰めていたが、ふいと彼は視線を外し、少しセレに近付いた。
「君は本当に面白いよ。君の仲間は変わった心を持っているのが良く集まるね。僕色んな次元を回ってるのに如何してこんなに見付けられるの?」
心底不思議然うにフリューレンスは首を傾げていた。何だか可愛らしい仕草なのでそっと鰭を撫でてやる。
「さぁてな。皆良い奴なのは間違いないが。」
「ま、良い奴なのは然うなんだろうけど。」
思わずガルダは苦い顔をしてしまう。如何しても思い浮かべるのは飃の事だ。
良い奴、なんだけど油断ならないのは確かだ。其の良い奴にセレは殺され掛けたんだから。
「僕も君と契約したら変われるのかな。・・・なんてね。」
然う言ってフリューレンスはセレの傍を低く漂った。今は傍に居たいらしい。
そっと目元を撫でると小さく鳴き返してくれた。
・・・まるで憑き物が落ちた様に、彼も他の龍達みたいに接してくれる様になった気がする。
うん、心の龍なんて大層な力を持っているからつい身構えたりしてしまうが、彼も龍族の一頭なんだ。
不図気付くとリュウと千代が黙である。まるで時が止まったかの様に固まってしまっていた。
二柱を置いてきぼりにしてしまったな。招かれた身として此は宜しくない。
「済まない二柱共。話の腰を折ってしまったな。」
「い、いえそんな事は・・・。只吃驚しちゃったので。彼がそんなに懐くなんて初めて見たから・・・。」
「うむ、永く生きてみる物だな。儂も初めて見たぞい。」
対してフリューレンスはそんな彼等に外方を向いてしまう。嫌われているのは本当の様だ。
「折角なんだし然うだな。フリューレンス、次元龍や皆が今如何か知ってるか?向こうも大事ないと良いが。」
「うん、皆大丈夫だよ。随分と世界の端っこへ移動しちゃったし、先ず見付からないよ。皆其処で大人しくしているよ。」
「だったら・・・良かったです。」
ほっとリュウは一息付いて茶を飲んだ。彼も随分と心配していたんだろう。
互いに不干渉の儘なら其の方が良い。
「若し何か困ったら何時でも相談してくださいね。僕は君達の味方ですから。」
「・・・気が向いたらね。」
ちらと丈横目で見遣るとフリューレンスは鼻先を上げてしまう。
何だか新鮮な反応だけど・・・自分以外に対して何時も彼はこんな風なのだろうか。
不思議な気分だ。自分は別に彼に対して特別何かをした訳じゃあないんだがな。
「くあぁ~・・・。ん?何だぁ騒がしいと思ったら客が来てたのか。」
随分と低い位置から声がしたと思ったら一匹の猫が奥から顔を覗かせた。
伸びをし乍ら欠混じりにやって来るが、全身灰色の其の猫は少し汚れている風にも見える。
実際長い尾をパタパタと振るっていたが、其で躯を叩く度に埃か灰の様な物が散っていた。
勿論此処に居るのだから只の猫ではない。でも此奴はまさか、
「若しかしてHi!猫か?初めて見たな。」
「おぅ、俺の事知ってんのか?物好きな奴だな。」
ツカツカとHi!猫はテーブル元迄やって来た。そして机に上りたかったのだろう、身を屈めた所でさっとリュウに止められてしまう。
不満そうに鼻を鳴らすと、次はセレの足元迄やって来た。
「え、此奴も龍族なのか。猫にしか見えないけど。」
「噫、ずっと会ってみたかったんだ。昔のレインそっくりだからな。」
手招く様に振るとあっさりとHi!猫は膝に乗ってくれた。
早速モフらせて貰うが・・・噫、此のサイズ感、感触が懐かしい。
「うん、此の感じだ。何だか懐かしくて癒されるな・・・。」
ついうっかりと目を細めてモフモフを堪能してしまう。
在りし日のレインのはもっと艶があって小さかったが、雰囲気がそっくりだ。
撫でていると懐かしさと同時に色んな懐いが込み上げて来た。
レインの事を思うと如何しても愛しさと悲しさが綯い交ぜになってしまう。
好いていると同時に後悔している事が沢山あるからな・・・。
彼の時は何程絶望したか、苦しかったか・・・理不尽さの象徴の様な懐い出だ。
レインと別れた後は何度夢に見たっけ・・・斯うして撫でたいと何度願った事だろう。
けれども其の感情全てに蓋をしたんだ。然うでもしないと彼の時は弱さに繋がってしまうから。
弱さを見せるな、生きたいなら感じるなと何度言い聞かせただろうか。
・・・・・。
色々懐い出されて来てつい感傷に浸っていると、じっとフリューレンスがそんな自分を見詰めている事に気付いた。
「・・・何だ、そんな変な顔してるか?」
「いや、君もそんな風に懐うんだって思って。」
悪意はないんだろうが、斯う自然に心を見られると何か歯痒いな。
一度レインの記憶は心の奥底に封じ込め、セレは一つ息を付いた。
「セレ、その何か灰塗れになってるけど大丈夫か?」
気付けばHi!猫を撫でた事ですっかり自分の膝元が灰に包まれてしまっている。
御蔭でHi!猫が保護色の様に紛れてしまった。
「此位、可愛い物だ。聖灰とかじゃあない限り大丈夫だ。」
「ん、おっと聖灰は駄目なのか。じゃあ撒かない様にするぜ。」
「・・・抑家の中だから一寸控えてくださいね。」
苦笑してリュウはさっとテーブルを払った。Hi!猫は如何しても其の性質上灰を撒いてしまうのだ。
「先一寸レインって言ってたけど、彼奴も昔はこんな風だったのか?」
「噫、真黔になって一回り小さくなった具合だな。」
「ふーん、本当に猫だったんだな。」
失礼な、レインは今も昔も立派な猫だぞ。
折角懐い出したので在りし日のレインのイメージをテレパシーでガルダに送ってやる。如何だ、何とも愛らしいだろう。
懐い出したのは小魚を取って来てくれた日の事だ。焚火を焚いて、一緒に食べたが彼の時の魚の味は忘れない。
数少ない、前世の取り分け幼少期の素敵な懐い出だ。
「ん・・・へぇ、こんな猫がまさか彼の街に居たなんてな。」
「噫、元々飼い猫だったんだが・・・。」
「小っちゃかったセレも何か懐かしいな。」
⁉余計な物迄一緒にテレパシーで送ってしまったらしい。
うっかり昔を懐かしんだからつい一緒に、何て事だ!
途端赤面しそうになったのでHi!猫を撫でる事に集中する。
忘れろ忘れろ、今は此の子に集中してあげないと。
「あ、然うですよセレ。実は其の子、鏡さん達に連れて来て貰ったみたいですよ。」
「ん、鏡か?然う言えば何か話してた様な・・・。」
猫、猫・・・確か、炭みたいな猫神に会ったとかって、ロードも居たからリュウの所へ行く様案内したんだって言ってたな。
な、成程、彼はHi!猫の事だったのか。炭みたいな猫ですっかり思考停止してしまっていた。
「炭をずっと食べている神に此処を紹介されたってやって来たんですよ。暫くは何処の親切な神だろうって思ってたんですが、他の龍達の話を聞いて行ったら恐らく店の者だって分かりまして。」
「ん?何だ御前さんの所に彼の変な神達が居るのか。」
「然うだな。一杯居るぞ。」
「セレ、流石に其は否定しようぜ。」
ガルダに苦笑されてしまったが、変なのは事実だからなぁ・・・。
一癖も二癖もある奴が大勢居るだろう。何も間違いではないと思う。
「ふーん然うか。まぁ世話になったから宜しく言って置いてくれ。此方の方が住み良いからな。」
「フフ、Hi!猫さんは甘えん坊ですからね。」
「う、煩ぇ小童が。」
にー、と一声鳴くとHi!猫は膝を降りて何処かへ駆けって行ってしまった。
うっかり追い掛けたくなる位可愛らしいフォルムだった。
「良く聞きますよ。龍達の間で次元龍屋は結構評判なんです。」
「龍って、不思議な知名度だなぁ・・・。」
まぁ実際色んな龍達に会って来てるもんな、何だか感慨深い。
昔はこんな事になるなんて些とも考えてなかったしな、不思議な気分だ。
ん、抑の切っ掛けって何だったっけ・・・?
「あれ、然う言えば何でリュウは俺達の所へ依頼してくれたんだっけ、一応然う言う何でも屋っぽいの他にもあるのに。」
「何だか一寸懐かしいですね。彼は月冠龍が其方を紹介してくれたからですよ。」
「ほぅ、奴とは中々珍しいぞい。」
適当にクッキーを漁っていた千代が顔を上げた。彼は結構食い意地が張っているのだ。
「ククッ、然うだな。私が一番最初に行った次元で会ったんだったな。然うか、其からな。」
「あれ、結局最初から龍スタートだったんだな。」
「龍は嫌われてしまう子も多いので、然うやって大事に想って貰えたから僕も頼めたんですよ。」
と言っても彼の時は店を探すの本当に苦労しましたけど、とリュウは苦笑した。
確かにな、屋が付く店だって情報丈で探したんだろう。難易度が高過ぎる。
不図見遣るとフリューレンスは大人しく話を聞いていた。若しかしたら彼は店について、幾らか興味を持ってくれているのかもな。
「嫌われるって・・・噫まぁ襲って来る奴も偶にいるもんな。」
落龍の詠を抜きにしても何か気に入らなかったのかバトルになってしまう事はある。
其を出来る丈無傷で鎮めるのは難しいけれども。
「然うですね。僕も然う言う子には手を焼きます。」
「ん、リュウも襲われたりしてしまうのか?」
「いえ、普通は襲われないんですけど、悪戯されたり、話したいのにずっと逃げられたりする事はありますよ。」
然う語り溜息を付く彼の視線はフリューレンスを向いている様で、又ふいと彼は外方を向いた。
まぁ龍の番神と言う丈あるし、そんな彼等ともしっかりコミュニケーションを取らないといけないんだろう。
「御前ももう一寸手伝ったりしても良いんじゃないか?」
「別に。僕は龍の番神と話す事ないからね。」
「此奴は元より然う言う奴ぞい。」
千代にも言われてしまった。好みの問題等も勿論あるだろうが、こんな物なのだろうか。
こんな自由な彼等を管理するなんて大変だな・・・。
又フリューレンスが頭を寄せて来たのでそっと撫でて置く。ちゃっかりと甘えては来るんだな。
感触が残り難い躯をしているので撫でられているか自信はないが、一応気持良さそうに目は閉じられていた。
フリューレンスは少々特異な龍だからか、他の龍達は少し遠巻きになっていた。クリエーターから多くの力を貰った龍だし、思う所があるのかも知れない。
然う言えば他にも特異な龍か何か居た様な・・・。
「然うだリュウ、一つ聞きたいんだが、神獣って知っているか?」
「神獣ですか?一体何の子の事でしょう。種類が多いので・・・。」
矢張り然うか、自分も龍古来見聞録の内容から、特定は厳しそうだと思った。
次元に因って然う呼ばれる龍は数多くいるからな。若しくは神になった獣も然う呼ばれる様になる訳だし。
神獣と言う名前の龍自体も居なかったしな。
「私が前行った次元で其の話が出てな。何でも其の次元の民に卵を託したんだと。で、永い間神殿で護られていた然うなんだ。若しかしたら千代が其の卵を預けたんじゃないかと聞いたんだが。」
「先代となると随分前ですね。」
「む?儂の事ぞい?」
クッキーを頬張り乍ら漂って来たので透かさず捕獲した。
噫、此の手触りが完璧過ぎるぅ。
「むむ、憶えがある様な・・・っ!懐い出したぞい!彼の次元だな、成程のぅ。」
「卵を託したって、そんな事もしてたんですね先代。」
「うむ、彼の龍達は中々大きな決断をしたからのぅ。然うか、中々良い次元じゃったろう。」
「噫、良い所だったんだが、その、もう壊れてしまってな。」
「其って、噫グリスの所の事か?」
「噫、其処で聞いたんだ。実際見てはいないから気にはなったんだが。」
「然うか。其は残念だったのぅ。でも卵は無事孵ったぞい、案ずるでない。」
ロードが教えてくれた通りで間違いない様だ。一先ずは良かったかな。
次元の概念だとかの話になったので少々難しかったが、卵自体は問題なかったみたいだ。
「其を聞くと言う事は・・・さては御主、其の神獣に会ってみたいのだな。」
「噫!其の通りだ!」
力強く宣言する。分かってくれて自分は嬉しいぞ。
自分の熱意を感じ取ってくれたんだろう、千代は頻りに頷いてくれた。
「うむうむ、分かるぞい。然うさのぅ、其方なら・・・問題はなさそうぞい。其にタイミングも悪くないやも知れぬぞい。」
何か見定められている様だ。思わず背が伸びてしまう。
矢張り普通は会えないのだろうか。元々卵も皇族にしか会えなかったしな。
「良しリュウよ。跡導石を持って来るぞい!」
「跡導石⁉あ、えっと・・・彼は、」
途端気まずそうにリュウが声を小さくする。
困った様に笑うが、其では誤魔化せなかった様だ。
「ぬ、如何したぞいリュウよ。儂は予備も含めて可也の数を渡したと思うが。」
「然うなんですが、その、気付いたら色んな子達に悪戯されて・・・、」
「まさか・・・全部、一つ残らず無くしたとでも言うのか?」
しゅんとリュウは項垂れてしまう。言葉よりも雄弁に態度が物語っている。
まぁ其の石か何かがどんな代物か分からないが、こんな自由に龍が出入りしてしまえば無くなったりはするだろうな。
・・・大事な物なら時空の穴に入れて置けば良かったのにと思わなくはないが。
「な、なな・・・何をしとるぞい!彼程、彼程大事にして置けと口を酸っぱくして言ったぞい!彼を管理するのも龍の番神の務めぞい!」
千代が怒りを顕にリュウへと激突した。セレの手を擦り抜けての猛アタックである。
思い切り彼の頭に命中し、角が刺さったリュウは呻いて頭を押さえてしまう。
血は出ていない様だが涙目だ。容赦のない一撃だったのだろう。
加えて未だ千代の怒りは収まらないらしく、尾でぺしぺしとそんなリュウを叩いていた。
止めたい所だが何と声を掛けて良い物か分からないので見ている事しか出来ない・・・。
「全く、何処に置いていたかとかは分からぬのか?」
「えっと確か、偶には磨かなきゃって出して、陽に当てようとベランダに出していたら・・・。」
噫其なら盗られても仕方ないなと思ってしまった。
磨いたと言う事は綺麗な石とかだったのだろう。そんな物を窓辺に置かれちゃあ綺麗物好きの龍達に持って帰られてしまうだろう。
悪用だとかはされないだろうが、コレクションにされているか、下手したら食べられてしまったかもな。
「噫何とも嘆かわしいぞい・・・。其処は直ぐに注意をして取り戻さんといけないぞい。其だからリュウは龍達に舐められるんだぞい。」
「うぅ、余りにも嬉しそうに持って行くのでつい・・・、」
あ、持って行く所も見てるのね・・・。
何とも言えない気持になってしまった。フォローがし難いのでつい黙ってしまう。
まぁそのなんだろう、誰が持って行ったのか分かっている内は未だましな気もするが。
自分だって嬉しそうにしている龍を見たら目でも甲でも渡してしまうだろう。うん、屹度そんな具合だったんだ。
「むむ・・・彼が無かったら一寸面倒ぞい。他に手があるとすればリュウの呼び掛けで直接其の龍を呼ぶかだが・・・。」
「・・・若しかして此の事?」
傍に居たイリスが徐に首元の綿の様になった毛から小さな石を取り出した。
先モフらせてくれている時には気付かなかったが、やるな。
手渡してくれたので受け取ってみたが、其は石ではなく輝石に近かった。
5㎝位の丸く黔っぽい瓊だが、良く波紋を飛ばすと中の模様が透けて見えて来る。
宛ら其は小さな宇宙の様だった。中心に輝く大き目の曦があり、其の周りを小さな色取り取りの曦達が螺旋を描いて廻っている。
其の螺旋の周期は一定ではないらしく、曦は色んな角度や色合いを見せてくれて、見飽きる事はなかった。
「へぇ、綺麗な石だな。」
「噫見ていると何だか落ち着くな。」
「あ!其です其です!まさか君が持ってたなんて・・・。」
リュウに見詰められて、イリスは小さく舌を出す。
其のあざとさに撃ち抜かれてついセレはイリスの頭をモフモフさせて貰った。
「欲しいならあげるけど、何か代わりに頂戴!」
「物々交換か・・・何か良い物持ってたかな。」
ちらと時空の穴を開けるが・・・うーん。旅の懐い出の品が多いから此は流石にあげられないな・・・。
「セレ良いですよ。僕が悪いので僕が出しますよ。ほら、御菓子とか如何かな。」
「イヤ!もっと良い物が欲しい!」
プイと外方を向かれてしまった。此は中々厳しいぞ。
「これイリス、其は元々儂のぞい。返してくれても良かろう。」
「エェー、もう僕の宝物だから駄目!」
さて如何しようかと思っていたらフリューレンスの忍び笑いが漏れた。鰭を揺らして何とも楽しそうだ。
「フフ、良い物持ってるじゃないか。其の手足の甲一つ分けてやったら如何だい?十分御釣りが出ると思うよ。」
「え、私の甲がか?」
思わず晒塗れの腕を見遣る。そりゃあ幾らかは抜けるけれど。
試しに軽く掻くと肘辺りの大き目の甲が一つ抜けた。
薄くて堅いが、鋭いので武器にもなる様な甲だ。
でも此、元はと言えば自分の血なんだよな・・・。少し複雑な気持になってしまう。
何と言うか生々しい様な、こんなのを欲しがるのは前世の彼の魔術具専門店の奴位だと思ったが。
「あ、其頂戴!其が良い!」
「ほ、本当にこんなので良いのか・・・?」
思わず困惑するが一応手渡してみる。するとイリスはギュッと其の甲を抱き締めようとした。
慌てて甲の端を持つ。凶器なのだから其の扱いは危険だ。
「鋭いから気を付けてくれ。然うだ、少し先を丸くしてから渡すから。」
「ウン分かったよ。」
あっさり手放してくれたので、甲の端を持ち直す。
丸くするには尾が丁度良いだろうか、牙で削るのもな・・・。
尾は出していなかったのだが、そっと袋へ通す様に出して行く。
龍に囲まれているので気を付けつつ伸ばして、先をくねらせる。
少し体勢は苦しいが、此なら何とか研げるか?早速尾の甲と手持ちの甲を擦り合わせてみた。
ガリガリと削られる音が如何しても響くけれども削られてはいる様だ。
「良し、と。はい此で怪我はしないと思うぞ。」
「ワーイやったぁ!ありがと!」
改めてイリスは甲を嬉しそうに抱き締めていた。
・・・うん、削って置いて良かった。そんな持ち方されたら怪我をしてしまう所だった。
其にしても別にモフモフでも何でもないのにこんなに喜ばれるなんて。
不思議な気持だ。若しかして何かに使うのだろうか。
・・・一応聞いてみようか。自分の血でもあるし、危険物にもなり得るからな。
「喜んでくれて嬉しいけれども、何に使うんだ?」
「此処に入れて置く!」
然う言ってイリスは自身の頭のモフモフに甲を突っ込んだ。
パッと見角に見えなくもない。新種の龍になってしまった。
「若しかして此は・・・ファッションって事ですかイリス。」
「ウン、良いでしょー!」
何処か誇らし気にイリスは胸を反らしたが・・・うーん此は。
自分は斯う言うのにとんと疎いので何とも言えない。まぁアクセントにはなってるけれど。
自分からしたら幾らでも抜けてしまう甲なので、芥が付いていると思ってしまうのだ。
何方かと言うとモフモフする時邪魔だなぁって思う位。
だが周りの龍達からは何処か羨望にも似た眼差しを送られている事に気付いた。
何と言うか、輝いている?何だ此の視線は。
如何やら龍達の独特の感性に触れたのか、熱を帯びている気がする。
―僕も欲しい・・・。―
椅子の後ろに居たイニオスが近寄った。
欲しいんだ、まぁあげるのは全く吝かじゃあないけれども。
―何かあげたらくれる?―
「石と交換?」
「綺麗な石!」
「取って来ましょう!」
囁き声はどんどん大きくなり、気付けば一部の龍達が家を飛び出して行ってしまった。
「え、あれ、何か大事になったな・・・。」
別に物々交換でなくて良かったのに。
と言うより自分は何丈甲をばら撒かないといけなくなるんだ。
此下手したら彼等に甲全部毟り取られそうな勢いなんだが。
其の様を想像して僅かにセレの顔色が悪くなる。
表層のは未だ良い。只其の下となると結構痛い。
丁度爪を剥ぐのと似た具合じゃあないだろうか、其を全部⁉
そんなセレを見てフリューレンスはもう隠す気もなく笑っていた。
何て奴だ。此方は拷問に遭うかも知れないと震えていた折りなのに。
「セレ、君は普段そんな顔をするんだね。」
「見ている位なら助けて欲しいんだが。」
元はと言えば彼の提案だ。彼の時は助かったが、此の結果は酷い。
「其は難しいな。僕も欲しい位だし。」
「え、御前も欲しいのか・・・。」
目の次は甲って、とんだプレゼントだと思うけど。
・・・目、ちゃんと使ってくれたんだよな?
「セレ、そんな自分を安売りするなよ?一応セレの一部なんだし。」
「そりゃあ加減するけれども、でも此なら他の石も集まるかもな。」
「うむぅ、珍しいぞい。然う龍達は何かに執着はしないのだが。」
「私もまさかこんな欲しがられるとは思わなかったな。此方の石の方が価値が高いだろうに。」
跡導石だったか、此の石の方が綺麗で絶対高いぞ。
「すっかり話が逸れたぞい。リュウの説教は又後にするとして、其の石の事を教えるぞい。」
説教と聞いてしゅんとリュウは猶の事悄気てしまったが、構わず千代は続けた。
「其の石は特別な呪いが掛かっとるぞい。其を握って霄明けをイメージして次元へ行けば神獣の所へ導いてくれるぞい。」
「霄明けをイメージか?何だか変わってるな。」
「マジックアイテムなんだな。結構古い力は確かに感じるけど。」
「うむ、貴重な石ぞい。其方の功績を称えて特別に譲るぞい。大事にするぞい。」
「貴重・・・。」
ついガルダは苦笑してしまうが、まぁでも其は事実なのだろう。
「噫勿論だ。有難う千代!」
でもセレはもう其の辺りの事等気にしていない様だった。
彼女が思った事は只一つ。
やった、此でモフモフに会える!直ぐ行きたい!
霄明けと言うと長らく見ていないかな。今では恐怖の対象だが、でも此は素敵なチケットだ。
思わずセレがにやついている事に気付いて又ガルダは苦笑を漏らした。
矢張り彼女はモフモフに目が無いみたいだ。
「一応、行く時は其方が愛するモフモフ達やったか、其奴等を連れて行くが良いぞい。其が礼儀になるぞい。」
「・・・先代?」
思わずリュウは首を傾げたが、胸を反らす彼に言及はしない様だ。
対してセレの頭はフル回転をして早速計画を立てていた。
モフモフ、モフモフを連れて行くのか。
次元に行くのなら店の者に限定為可きだろうか。誰だ、誰を連れて行くんだ。
ローズ、ケルディ、ハリーにリーシャン、L⊝ ▼▲/・・・おぉ選べないぞ。
もういっそ・・・全部か⁉
夢の共演、そして酒池肉林撓な桃源郷が在り在りと浮かぶ・・・此は何としてでも行かねば。
「セレ、一応どんな所なのか聞かなくても良いのか? 」
「いや大丈夫だ。此の目で見届けよう!早速準備するぞ。」
セレは随分とやる気を出しているらしく、気合十分だ。
「うむ、しっかり楽しんで来るが良いぞい。」
其からは御茶所ではなくなり、慌ただしくもセレ達は帰宅する事になる。
因みに帰る迄に龍達が次々石を持って来てくれたので、同じ跡導石が六つ程集まってしまったのは又別の御話。
・・・・・
「さぁ皆準備は良いか!」
「セレちゃん何時になく気合入ってるね。」
次元龍屋の前で小さな一団が出来上がっている。
先頭にセレが立ち、ハリー、リーシャン、L⊝ ▼▲/、ドレミ、ローズ、ケルディ、ソル、ロードが並んでいた。
そしてしれっとセレの肩に火鼠が一匹留まっている。
「何だか急に誘われたけど、何此?」
ローズの頭にちょこんとケルディが座るが、何とも愛らし過ぎる。
捕まえたくなるが今は我慢だ。うん、偉大な目的が控えているのだから。
「今回集まって貰ったのは他でもない。今から皆である次元へ行きたいと思うんだ。」
然う言いつつ例の石、跡導石を取り出した。
早速興味を引かれたのかローズが近付いて来る。
―何だろう、此凄く綺麗だね。―
「然う、実は先日リュウの所で此の石を貰ってな。何と此があれば神獣の所へ行ける然うなんだ。」
―神獣ってまさか・・・彼の、うちの所の?―
「然うだ。ソルが護ってくれていた卵の事だな。」
「え?あそっか。然う言えば神殿には居なかったもんね。でもじゃあ何処に行くの?彼の次元は、その、」
少しドレミが言い淀んでしまう。如何しても彼の次元の事は痼が残ってしまっているからな。
「然うなんだが、千代に聞くと此の石で会いに行けるらしいんだ。折角だし行ってみようと思ってな。行く時には是非モフモフ達を連れて行けと助言を貰ったんだ。」
―其で私達が呼ばれた訳ですか。―
―若しかしてうちは此の耳、とか?―
恐る恐るソルが自身の耳に触れる。羽毛に包まれた様なフワッフワな耳だ。
「噫、立派なモフモフだな!」
―俺が呼ばれたのも其でか。―
火鼠も大きく頷く。種族として頼られる事が少ない火鼠だったので、誘われたのは新鮮だったみたいだ。
因みにドレミとロードはセレが楽しそうだったので野次馬気分で付いて来るらしい。
流石に多過ぎたので、ガルダも気にはなっていたが辞退した。帰ったら色々聞かせてくれと約束したんだ。
ガルダの翼のモフモフも捨て難かったが、仕方ないな。
―モフモフを連れて行くって・・・別にモフモフランドではないんですよね?―
―んん、うちも神獣を見た事はないからはっきりせんけど、然う、やと思う。でもうちも彼の卵の事気になるわ。―
「むぅ、我も其のモフモフにカウントされているのか。」
ハリー一柱首を傾げている。今は人身を取っているが、龍身であっても彼はつるつるしているタイプだからな。
「ハリーは前素敵なクッションを創ってくれたじゃないか。だからモフモフだ。」
「むむ!然うなのか、分かったのだセレ、又創るのだ!」
すっかりハリーもモフモフに屈してしまった様である。兎に角彼女のモフモフに対する食い付きは異常なのだ。
「此丈モフモフを集めたら失礼には当たらないだろう。出来れば私も成った方が良かったかも知れないが・・・。」
「又彼の小っちゃいセレちゃんに成れちゃうの?」
―成りたいなら何時でもさせてあげマスヨ。―
「いやモフモフが堪能出来なくなるから却下だな。」
「飽く迄も自分はモフモフを楽しみたいんだね。」
勿論だ。後ナチュラルに恐ろしい提案をしないでくださいBDE‐01さん。
「フフ、結局セレは未だ神獣の事、諦めていなかったのね。」
「うん、モフモフに対する愛は立派だと思うよ。」
まさか彼の話をしてから此処迄発展するとは思っていなかった様で、ロードは頬の輝石を鮮やかな黄へ輝かせていた。
彼女も彼女で興味津々な様だ。
「良し、じゃあ皆行くぞ。さぁモフモフの世界へいざ行かん!」
しっかりと跡導石を握り締め、地平一杯の霄明けをイメージする。
うっかり震えそうな程の見事な霄明けを瞼の裏に、セレは一歩踏み出した。
・・・・・
「ね、此処が其のモフモフランドなの?」
「ほぅ、中々良い景色なのだ。」
―何だか街の様ですね。―
皆が銘々感想を告げる中、ゆるゆるとセレは波紋を広げる。
其処は昊靄に包まれた様な橙の街が広がっていた。
石を切り崩して造ったのだろう家が幾つも立ち並んでいる。此処からなだらかな丘が広がっていて、奥の高い所には一際大きな建物が立っていた。
長く整備された道の両側にずらりと家が並んでいる。
其等の家は入口が低く、横に広がっている具合だった。
何の家も窓が非常に大きく、テラスの様になっている所も多い。
家々は蘚で隙間を詰めている様で、何も永く此処にあるのだろう趣を感じさせた。
又其は敷かれていた道も同様で、道は整備されつつも蘚が所々に生えているので絨毯の様に優しい感触だった。
そしてアクセントのつもりなのか、橙で統一されていると思われた其等の景色の所々に他の色の石が詰め込まれている。
御蔭で造りは似ているが、同じ様相の家は一件もなかった。
自ら曦を発しているのか其等の石は一際目立ち、まるで鏤められた零星の様にも見えた。
此処が・・・神獣の居ると言う街なのだろうか。波紋を広げて行くが、如何やら此処は一つの島の様だった。
加えて何と此の島、浮いている様だ。街の奥には小さな蕭森が広がっており、端が見え難いが、其の先は切り立った崖になっている。
そっとセレはフードを被ったが、如何やら陽は昇っていない様だ。全体的に靄が掛かった様にぼんやり旻が明るい丈で、光源は見当たらない。
確かに街は見た事も無い景色で素敵だったが、其より何より、
「おぉおおおおお‼モ、モフモフだ!モフモフが居る!」
家々があると言う事は勿論住んでいる者も居る訳で。
至る所にモフモフが溢れていたのだ。色んなモフモフが思い思いに過ごしている。
皆2、3mの四足の者である事丈共通して、後は種々様々だ。
す、凄い。まさかこんな所があったなんてっ!
大興奮のセレは跳び上がらん許りに喜んでいた。
只そんな彼等一行の出現に向こうも気付いたらしく、窺う様な気配が漂う。
セレが雄叫びにも似た歓声を上げたので少し遠巻きな気もする。警戒されてしまっただろうか。
「セレ!ストップよ。此の儘じゃあモフモフに逃げられてしまうわ。」
「っ!あ、噫然うだな。静かに、優しくだ。」
ロードに肩を叩かれ、思わずセレの背が伸びる。
危ない危ない、此処でうっかり駆け出したらどんな手段で止められるか・・・考える丈でも恐ろしい。
「何だかすっごく綺麗な街だね。此処に神獣が居るのかな。」
―歴史もありそうだし、楽しみだね。―
嬉しさの余りかローズが大きく尾を振る。思わず其のモフモフを目で追ってしまう。
―・・・あの、皆さんは一体、―
道を下り、一頭が一同へ近付いて来た。驚いてはいる様だが、興味が先に立つのか軽く尾が立っている。
其の獣は全体的に薄い水色をし、額に小さな角が生えていた。
目はくりくりとして愛らしく、手足や尾に立派なモフモフが宿っている。
つい抱き付きたくなるが、ぐっと堪えた。此処はしっかり信頼を得ないとな。
「噫、私達は次元龍屋と言う所から来たんだ。龍の番神から此の跡導石を貰ってな。此処へ来てみたんだが。」
―っ!龍の番神からですか。若しかして、遊びに来られたのですか?―
「噫!此処に来れば神獣と会えると聞いてな。良かったら案内してくれないか?」
―神獣・・・。然う、ですか。分かりました。―
少し歯切れが悪い気がしたが、一つ頷いて貰えた。
龍の番神の名が出た事が効いたらしく、警戒が解かれた気がする。
序でに軽く自己紹介をして置いた。其の間に周りに次々獣達が集まって来る。
おぉ・・・此は理性が試されているのだろうか。でもこんなの、我慢しろと言う方が・・・。
いっそ波紋を閉じてしまいたくなる。もう本当に至る所にモフモフが居るのだ。ある意味目のやり場に困る。
「セレちゃん頑張ってるね、凄い。未だ耐えてるよ・・・っ!」
「・・・っ、ぐ、フ、L⊝ ▼▲/!」
―あ、はい直ぐしますね。―
もう言われる迄もなくセレの頸へL⊝ ▼▲/が巻き付いた。肩に居た火鼠はセレの頭へと移動する。
ギュッと其のモフモフを握る・・・噫、落ち着く。
―では皆さんどうぞ此方へ。神殿迄御案内いたしますわ。―
―あ、うん宜しくね。えっと君は・・・何て言うの?―
―噫此は失礼しました。私はアイルと申しますローズ様。―
伏し目勝ちに然う言うと彼女は先を歩き始めた。
此の儘先導してくれるらしい。素直に有難いので付いて行こう。
「でも此処、色んな子が居るね。皆で暮らしてるのかな。」
「本物のモフモフランドに着いちゃったね。」
見渡していると一同を見送っていた獣達の何頭かはそっと後を付けている様だ。
敵意だとか、其の類は感じられない。皆純粋に興味があって付いて来ている様だ。
―済みません、皆外の者が珍しいのです。斯く言う私も初めて同族以外の者と目見えましたので。―
「ずっと皆さんはぁ、此処に棲んでるんですぅ?」
―はい、此の国を護り続ける事こそが私達の定めであり、喜びなのです。―
「国、国か・・・。」
此の街丸々一つが国、なのだろうか。念の為波紋を遠く遠く迄放って見てはいるが、他に島らしき物は見えない。飛んでいる者も見えないし、随分閉鎖的だ。
「若しかして此の次元から出られなくなっちゃってたのかな・・・。」
黔日夢の次元の事もあるし、多少は影響がある様にも思うけれども。
―いえ、私達が外へ出ないのは、出る必要が無かったからです。外は危険も多いですから。―
「然うだな。こんなモフモフが突然現れたら大変な事になってしまうからな。」
―多分、否絶対にそんな理由ではないと思いますけど。―
「モフモフの密猟はぁあるかも知れませんけどねぇ。」
アイルの足取りは緩りだが、周りの獣達は何事か話し始めると先に丘の上へ走り去って行き始めた。
俄に周りが騒つきつつある。慌てた様に走っているが如何したのだろうか。
「矢張り神獣は彼の神殿に居るのか?」
つい気持が焦ってしまう、ソルの所でも卵は神殿にあったそうだし、厳重なんだな。
―えぇ然うです。彼方は神獣様の住居に在らせられます。―
神獣の住居、何て素敵なワードだろう。
思わずセレは溜息を付く。神殿は随分と大きいし、となれば神獣も大きいのだろう。
神のモフモフ、考えた丈で幸せになれそうだ。
例えばクレイド§スフィアの長である榔だってあんな凄いモフモフだったんだ。
モフモフに優劣は付けられないが、其でも期待は募る。
周りに居る獣達も存分にモフらせて欲しいのだが、其の機会はちゃんと得られるだろうか。
そんな風に考えていると突然ローズの耳がピンと立てられた。
―・・・、皆一寸先に行ってて!―
振り返る事なく然う言うと突然駆け出してしまう。
神殿とは別の方向、家々の隙間を縫う様に入って行ったのだ。
「え、ロ、ロー君⁉」
思わずドレミが声を上げたが、直ぐに其の背は見えなくなってしまった。
「如何しよう、何かあったのかな・・・。」
「ふむ、彼奴だったら問題はないと思うのだ。小娘よりしっかりしているのだ。」
「もぅ、一言余計だよハリー君!」
大丈夫だとは思うけれども、余りにも唐突だったので驚いてしまったのだ。
―え、え?あれ、ローズ様は?―
遅れてアイルも気付いたらしく、きょろきょろと辺りを見渡した。
一目では分からなかったのだろう。前足を上げて二足になり、くるりと見渡した。
でも周りに集まる獣達の群の中から彼の橙の毛並は見当たらない。
「御免ね。ロー君、何か見付けちゃったのか向こうに行っちゃって。先に行ってても大丈夫だとは思うけど。」
―然うですか・・・。分かりました。では先ず皆様を案内しましょう。どうぞ此方に。―
一つ頷くと再びアイルは歩き出した。
目指すは丘の上の神殿、数多の獣を引き連れ、一行は先へ向かうのだった。
・・・・・
―待ってよ。一体何処迄行くの?―
ローズは前を見え隠れする絳い尾へ声を掛ける。
―此方だよ兄ちゃん!―
幼さの残るテレパシーが返って来て又尾はひょんと隠れてしまう。
先皆で一緒に居た時に誘った声。如何やら自分に丈掛けられたみたいだけど。
追い掛けてはいるが中々すばしっこい。消えた先と同じ角を彼も曲がって行く。
余り皆と離れると後で怒られてしまうのに、一抹の不安を覚えつつもローズは足に力を込めた。
―WF=11Y―
ローズの体毛が一気に脱色したかの様に皓く淡くなる。
耳は翼の様に大きく翻り、胸元に輝石が備わった。
走ってちゃあ埒が明かない。此処は旻から一気に追い掛けよう。
飛の鎧へと変化した彼は一気に大旻へと飛び上がった。
家自体は何も低いので直ぐ視界は開ける。少し視線を上げると家々に囲まれた小さな広場の様な所が目に付いた。
そして其処へ見覚えのある絳い尾を振る獣が一頭居た。
ローズを見失ったのか窺う様に身を屈めている。そんな彼に向けて翼を畳む様にローズは急降下した。
―良し!やっと捕まえたよ!―
―っえ⁉に、兄ちゃん何処から来たの⁉―
慌てて獣は少し跳び退いたが、もう逃げられない様ローズはそんな彼の上へ降り立った。
絳い獣は未だ幼いのか随分と小さく、すっかり足の間に入り込んでしまう。
―凄いや兄ちゃん!旻飛べるの?かっこいいね!―
仰向けに寝転がると嬉しそうに獣は手足をばたつかせた。遊びだと思っているのか尾が振られて何とも楽しそうだ。
―もう・・・こんな所迄逃げるなんて。一体如何したの。―
するりと其の子はローズの足の間を潜り抜けるとちょこんと座り込んだ。
少し鼻が長くて扇の様に耳が大きい。燃える様な毛並を一度ぶるっと振るわせると、其の獣は少し前足を上げた。
―ね、兄ちゃん外から来たんだろ?僕初めて見たんだよ!―
―然うなんだ。ずっと此処に棲んでるの?―
―うん!だから珍しくってさぁ!―
―カエイ!誰なんだ其奴。―
―あ、おい来てくれよ!此の兄ちゃん外から来たんだって!―
カエイと呼ばれた絳い獣が一声鳴くと家々から覗く鼻先が見えた。
然うして顔を出したのは皆小型の、子供と思われる獣達許りだった。
皆少しずつ特徴が違い、体毛も異なるので一気に華やかになる。
―うわ、一杯出て来たな・・・。―
此処は彼等の遊び場なのだろうか。気付けば十数の子供達にローズは囲まれていた。
―遊ぶんだったら悪いけど、一寸後にしてくれる?僕仲間を待たせてるから。―
―あ、一寸待ってくれよぅ、一つ御願いしたい事あってさ。兄ちゃんなら出来るかなって思ったんだよ。―
集まって来た子供達も暫くローズの匂を嗅いでは飛んだり跳ねたりしている。
向けられる目もキラキラと輝いている様で、期待が眩しい・・・。
こんな目をされると断る事なんて出来ない。ローズも又、ドレミと永い旅をして、すっかり御龍好しの癖が沁み付いてしまっていた。
取り敢えずは内容を聞いて、さっさと解決して戻れば良いんだ。モフモフの為に頑張ったと言えばセレも喜んでくれるだろう。
―分かったよ。其の御願いって何?―
―やった。矢っ張り兄ちゃんは話が分かるね!―
嬉しそうに前足をあげるとカエイはにっこりと笑い返すのだった。
・・・・・
―さぁ到着しました。此方が神殿です。―
アイルに連れられ、セレ達一行は丘の上へ到着した。
其処には其迄並んでいた家々とは違い、随分と大きな建物が聳え立っていた。
全員が入っても余裕があるであろう神殿で、一面橙の壁には染み一つない。
良く見ると幾つか刺青が彫られており、輝石が幾つも鏤められていた。
外見としては平屋の様に広く大きい建物だ。正面にある扉が歓迎する様に緩りと開かれる。
誘われる儘に足を踏み入れると、広がるは一面の昊焼けの様な景色だった。
壁を彩っていた橙は内側も同様で、余す事なく塗られている。
そして天井には色々な華等を象った切込みが入っており、曦が差し込んで来ていた。
そんな天井から緩やかに前方の壁へカーブを描き乍ら切込みが広がっているので大きな窓の様にも見えた。一方の壁が丸毎刳り貫かれている風になっているのだ。
街と同様、此方も息を呑む様な美しさで、空気が変わった様な気配を感じる。
此が畏怖と言う物か。徒広い神殿内を一陣の薫風が吹き抜ける。
静けさに包まれた空間、其処で何度もセレは波紋を放っていた。
其も其の筈だ。神殿が広く感じると言う事は、誰も居ないと言う事で。
其処にモフモフの、神獣の姿は何処にも無かった。
―凄い綺麗・・・。こんな所もあるんやね。―
彼の神殿とは又違う美しさに小さくソルの息が漏れる。
そして不意にセレを見遣ると何だか慌てている様な気配があった。
頸に巻かれているL⊝ ▼▲/も気にする様に首を傾げている。
「素敵な所ねアイルさん。此処がその、神獣が居られる神殿ですか?」
―えぇ、其の通りです。只皆様に御話ししなければいけない事があります。少し御時間を頂けないでしょうか。―
「勿論だ。是非話してくれ!」
即答だった。粗重なる位威勢の良い返事に、アイルは少し丈足を下げる。
つい神殿周りに集まっている獣達のモフモフに目移りしそうになるが、其所ではないだろう。
自分達以外は中に入らず、何やら見護っている様で。
アイルの目も静けさを湛える其に変わった気がした。
―有難う御座います。皆様が龍の番神に託された者だと信じて、此の話をさせてください。実は今、神獣様は・・・不在なのです。―
「な・・・なっ、な、何・・・だって、」
余りのショックに僅かにセレはふら付いてしまう。
まさかそんな、此処に居ると聞いたからやって来たのに。
不在と言う事は如何言う事だ。一体神獣は何処に。
セレのリアクションについドレミは軽く吹き出してしまったが、其以上は何とか堪える。
彼女にとっては其程大切な問題だったのだろう。其を笑うのは忍びない。
―そして私達の種族の事を御伝えせねばいけません。如何ですか皆様、其の辺は龍の番神から伺っていますか?―
「いや、其処迄は特に聞いていないが・・・。」
でも何となく予測は立ちつつあった。
自分は彼女達の事を知っている。龍古来見聞録で見た内容と一致する龍が居たのだ。
―分かりました。私達は古獣、と呼ばれる龍族なのです。―
「え⁉そ、其ってロー君と一緒だよ!でも・・・え、私達って、皆の事?」
「むぅ、皆全く違うのだ。何種類もが一緒に暮らしていると思ったのだ。」
「姿に関しては四足の獣である点位しか特徴がないからな。じゃあ此処は例の古獣の国なのか?」
―其方の方は御存じだったのですね。然うです。此処が私達古獣の安息の地、其の証拠にほら御覧なさい。―
然う言うとアイルは皆の後方を見遣る様に鼻先を上げた。其の視線を追って振り返ると、神殿の周りには種々様々な輝石が散らばり、山になっていた。
先迄こんな物は無かった筈なのに。曦を浴びて輝石は一つずつ異なる輝きを見せていた。
そして視線を戻すとアイルの姿も既になく、代わりに翡翠に似た瓊が一つ残されていた。
「此って・・・っ!然う言う事?ロー君が勾玉に成れるのと一緒?」
「然うだな。古獣の大きな特徴、輝石へ変身出来る力だ。」
―成程、ローズさんもこんな事が出来るんですか。―
「うん。だから次元に因っては勾玉に成って貰って一緒に行ってたんだけど、でも本当に皆然うだったんだ・・・。」
ついまじまじと輝石を見詰めてしまう。ローズのは見慣れていたけれども、他の同族を見たのは初めてだったので、不思議な心地だった。
―矢張りローズ様も同族なのですね。―
瞬きの後に輝石は形を崩してアイルへと変化する。
後ろで成り行きを見護っていた古獣達も元のモフモフへと戻る。
「う、うん然うだけど、まさかこんな所があったなんて・・・。」
古獣自体、可也珍しい龍族ではあった。
基本は国から出る事のない龍族だったから、だからドレミと一緒に旅をしていたと聞いた時は驚いたけれども。
―若し御存知であれば教えて貰えませんか。ローズ様とは何処で御会いしましたか?―
「何処って、えっと彼は・・・っあ!」
懐い出す様視線を彷徨わせて、ドレミは一つ大声を上げた。
懐かしく懐う彼の日の事を、姉と一緒にとある神殿に行った時の事を。
其処で見付けた輝石の様な卵の輝きが、鮮明に思い出されたのだった。
・・・・・
―此!ね、兄ちゃん直して欲しいの。―
―此って・・・井戸?―
カエイは傍にあった石造りの筒の様な物を鼻で突っ突いた。
直すと言うのは如何言う事だろう。そっとローズは中を覗き込んでみた。
―っわっと!お、御兄ちゃん誰⁉―
途端小さな毛玉が飛び出して危うくぶつかりそうになる。
如何やら古獣が一匹入り込んでいたみたいだ。
出て来た子は全体的に淡い体色をしており、鼻先付近は檸檬色、尾に掛けて旻色に変化していた。
耳はくるんとカールしていて、頸元に豊かな毛を蓄えている。
其の子は井戸から出るとカエイの傍へ腰掛けた。
驚いてはいる様だが、怖がってはいないらしく尾が振られている。
―ローエイ、此の兄ちゃんは外から来たんだって。若しかしたら此直してくれるかも知れないから連れて来てみたんだ。―
―へぇ、皆で頑張っても全然駄目だったのに、直せたら凄いよ本当。―
ローエイと呼ばれた子は井戸の傍をぐるぐると回り始めた。
―具体的には如何壊れてるの?―
改めて覗き込んで見たが、結構深い。でも見えるのは闇許りで、水は入っていない様だった。
―此処の、前は凄く美味しい水が出てたんだけど、急に枯れちゃって。僕達で交代して掘ってたんだけど、中々水が出て来ないんだよ。―
―うっすら地面は湿ってるんだけど。―
良く見ると確かに集まっている古獣達の手足は土がこびり付いていた。皆で先迄掘っていたのかも知れない。
―井戸か。・・・うーん。―
一応造った事は昔ある。ドレミと居た村で手伝わされたっけ。
地震とかが起きれば水路が変わったりするし、調整とかしていたけど。
急に枯れたと言う事は何か原因があった筈だ。此の土地についても詳しくないし、一寸難しいぞ・・・。
兎に角自分も中を確かめてみない事には分からないか。
―少しでも水が出れば、魔導核は動いているから大丈夫だと思うんだよ。でももう土が硬くって。―
―分かった。取り敢えずは中に入ってみるね。―
土を掘るとなると嵒属性か。何処迄掘れば行けるかな。
―EC=9E―
忽ちローズの体毛が土色に染まり、鬣が一枚岩の様に変化する。
姿が変わったローズに周りの子達は驚いている様だった。
―え、え⁉兄ちゃん凄い、変身出来るの?―
―かっこいい!そんな事出来ちゃうんだ!―
―じゃあ一寸離れていてね。危ないから降りて来ちゃあ駄目だよ。―
無邪気な子供達の声を聞いていると然う断る事は出来ない。
一つ息を整えるとローズは井戸の中へひらりと跳び込んだ。
井戸の深さは6m程で、何とか壁に足を掛けて着地した。
子供達は身軽で小さいのもあるからするする上ったりしていたんだろうが、中々の深さだ。
そして中に入ってみると井戸全体から微弱な魔力を感じた。若しかしたら此が魔導核なのかも知れない。其らしき物も良く見たら壁に嵌め込まれている様だ。
次いで足元を見遣ると、泥濘が出来ていた。
凸凹しているが、此が彼の子達が頑張った証なのだろう。
確かに枯れてはいるが、未だ完全ではない。
僅かに水の気配は感じる。もう少し掘り進めたら突き当たるかも知れない。
魔力のうねりを読み、そっと土を掻く。
するとローズを中心に穴が穿たれて行き、避けられた土が彼を囲う様に渦を巻く。
間違いない、此の下だ。下ろした前足の裏から水の流れる感触が伝わって来る。
魔術も使えば難なく掘れるけれども、此を素手となると厳しいだろう。
大きな石も避けられて行き、岩盤と変わらない様子だ。
此処迄来たら後は水流操作で行けるかも知れない。
―DF=8M―
余り連続で鎧を変えると疲れ易くなってしまうけれども致し方ない。
ローズの姿が一転して水の様に溶け出した。全身淡い水色へと転じ、耳の先や尾からしぶきの様に水が散る。
姿が変われば知覚する魔力も変わって来る。今でははっきりと地下を流れる水流を感じる事が出来た。
でも此、可也硬いな・・・少しは流せそうだけれども。
集中しているとローズの足元から水が沸き出した。其は見る間に満ちて行き、水位を上げて行く。
其の儘水に浮かんでローズは緩りと浮上した。
水の流れが少し不自然に感じるが、此が魔導核の力なのかも知れない。
上がりつつもそっとローズは辺りを見渡して井戸を観察した。漏れている気がするのだ。老朽化しているのかも知れない。
土も混ざってしまっているし・・・うーん、もう一踏ん張り頑張ろうか。
―GS=14P―
途端ローズの長い耳が蔓に覆われて行き、全身に蘚が生えて翠色へと変化する。
胸元に光る輝石も翡翠の様に煌めいた。
水も十分にあるし、今なら操り易いだろう。
幾らか念じて井戸の内側を包む様に蘚を生えさせる。
辺りの家も似た様な蘚で補強していたし、彼を真似させて貰おう。
隙間を詰める様に翠の線が入り、しっかりと石と石の隙間を埋めて行く。
其が全体迄行き届いた所で終にローズは井戸から顔を出した。
―御待たせ。何とか井戸は直ったよ。未だ一寸土があるけど、暫くしたら落ち着くと思うから。―
足を掛けて井戸から身を乗り出すと、ぶるっと一度ローズは身震いした。
其と一緒に鎧も解いて元の橙の毛並へ戻って行く。
水滴が跳ねると子供達は歓声を上げて急いで井戸を覗き込んだ。
―う、うわすげー!本当に元に戻ってる!―
―水出てるよ!やった、もう汲みに行かなくて良いんだ!―
―うわぁ、冷たい!―
もう子供達は大燥ぎで、水を掛け合ったりして遊び始めた。
如何にかなって本当に良かった。こんな喜んで貰えたら頑張った甲斐がある。
そっと前足を毛繕いしているとカエイがローズの背を突いた。
―兄ちゃん本当有難な!凄いな、あんな一杯変身出来て。ほら此食べてくれよ。向こうで採って来たんだ。凄く美味しいからさ!―
何時の間に持って来たのかカエイはオレンジを一つ銜えて来ていた。
折角の好意なので受け取ったローズは早速一口齧ってみる。
直ぐ様甘酸っぱい果汁が口一杯に広がった。疲れも吹き飛ぶ様で思わず舌舐りをする。
―本当だ。凄く美味しいね、有難う。―
他の子供達もローズに気を許したのか、毛繕いをしてくれたり、耳の先を噛み始めた。セレだったら卒倒する様な光景だろう。
―本当に凄いね御兄ちゃん。一体如何やったの?―
ちゃっかりローズの足の間に入ってローエイが甘え声を上げる。
―皆が結構掘ってくれていたからね。後は土を動かして、水流を操ったら直ぐだったよ。一応壁も直したからね。―
―えぇ・・・御兄ちゃん魔術凄い得意なんだ。そんな事迄出来るなんて!―
―でも皆も屹度僕と同じ古獣だよね?大丈夫だよ。大きくなったら屹度使える様になるよ。―
先から匂を嗅いでいて分かった。此の子達は自分と同族だ。
最初は戸惑ったんだけれども、まさかこんなに仲間が居るなんて。
今迄ローズは同族に会った事が無かった。ドレミと永い旅に出ている間も、出会う事は一度も無かったのだ。
自分の事、出自の事も良く分かっていなかったけれども、若しかしたらルーツが分かったりするのかな。
実際此の街を見たけれども、何だか迚も棲み易そうだった。配慮と言う可きなのか、歩き易い地面に、入り易そうな家、窓辺もあるし、居心地は良さそうだ。
吹く薫風の匂も何処か懐かしく感じるし・・・うん、若しかしたら僕の故郷は此処なのかも知れない。
・・・あ、でも僕の卵は遺跡にあったんだっけ。うーん、じゃあ矢っ張り彼処が故郷だよね。もう仲間は滅んでいるのかも知れない。
―えぇ、然うなのかなぁ。僕知らないよ。変身したの、兄ちゃんが初めてだよ。―
―俺も火なら一寸吐けるけど、水出したり飛んだり出来ないよ。―
子供達は鳴き交わして其の輪を少しずつ狭める。
―然うなんだ。若しかしたら僕は違う所から来たし、一寸違うのかな。―
―あ、然うだった。兄ちゃん仲間の所に戻るんだよな。多分神殿の方行ったと思うし、案内するよ!―
―神殿?じゃあ駆けっこだ!―
―あ、狡い!先行かないでよ!―
途端子供達は一斉に駆け出したので慌ててローズも後を追った。
子供の足なので直ぐ追い付く。けれども矢っ張りカエイは特に足が速い様で、既に先頭を走っていた。
―あ、ほら彼方だ!御兄ちゃん早くー!―
駆け回る彼等を見ていると、幼き日の自分と何となく重ねてしまう様で。
今一度胸一杯に息を吸うと、ローズはより一層足を速めた。
案外神殿迄は近かったみたいで、直ぐ其の入口へ差し掛かる。
何だか他にも沢山の古獣が集まっているみたいだ・・・。先導していた子供達も不思議そうに首を傾げる。
―あれ、何で皆こんな集まってるの?―
―もう中に入ってるんだよ屹度、ほら兄ちゃん!―
カエイが一歩先に扉を潜って神殿内へと入って行く。
ローズも賑わう古獣達の中に入り、何とか通して貰った。
彼が来た事に周りの者達も気付いたらしい。慌てた様に道を開け、子供達とローズを通してくれた。
―皆御免待たせちゃって・・・。―
神殿内をさっと見渡してみる。
中にはドレミや皆が居て、最初に案内してくれていたアイルの姿もあった。
・・・あれ、でもセレの姿丈ない気がする。頸に巻かれていたL⊝ ▼▲/も飛んでいるし。
然う思って視線を走らせると・・・見付けた。
神殿の入口に集まっていた古獣達の群の中に居たのだ。
噫もう彼は何と言ったら良いんだろう。もう完全に中に入ってしまって揉みくちゃにされている・・・。
もう上下左右前後も全て余す事なくモフモフに包まれていた。
すっかり懐かれてしまっているのか甘えられて代わる代わる擦り寄られている。
モフモフの山から時折彼女の晒に包まれた手が覗くか如何かと言った具合だ。もうやりたい放題である。
―えと・・・此は如何したの?―
「ロー君御帰り!えっと彼ね。その、セレちゃんもう我慢出来なくて。」
―あ、然うなんだ・・・。うん御免ね遅くなって。―
―ね、御兄ちゃん彼何?―
―楽しそう。僕も行こっかな!―
子供達もモフモフの塊に目移りしているらしく、尾を激しく振り出した。
―彼は・・・遊んで来て良いよ。―
―やったー!―
途端駆け出して子供達も混ざってしまう。
後に恐らくセレのだと思われる嬌声が聞こえた。
うん、本心から楽しんでいる様で何よりです。
―あ、戻られたんですね。一体何があったんです?―
自由の身になったのでL⊝ ▼▲/が傍に寄って来た。彼に連れられ、ローズも神殿に入って行く。
―先彼の子達に呼ばれちゃって・・・。井戸が壊れてたから直してあげてたんだ。―
―井戸ですか。其は良い事をしましたね。―
―うん然うなんだよ。御兄ちゃん凄かったんだよ!―
ローズの足元からローエイが顔を覗かせた。彼はちゃっかり其処が気に入っている様だ。
―土を操ったり水を呼んだり、色々変身出来るんだよ!―
「ロー君結構力使ったんだね。御疲れ様。」
―うん、でも直ったから良かったよ。一寸懐かしかったし。―
ドレミが屈んでそっとローエイの頭を撫でた。何だか小さな時のローズみたいで凄く可愛らしいのだ。
―子供達に代わって御礼申し上げますわローズ様。でも今変身と・・・?―
「うむ。ローズは色んな属性に成れるのだ。中々便利な力なのだ。」
「然うですねぇ、姿が変わるのも楽しそうですしぃ。」
―三大伝説龍に然う言われても何だかね。―
自分は十二法が扱える丈で彼等は唯一無二の力を持っている。
鎧は変身する丈で力を使うから一寸勝手が悪いのだ。
―所でどんな話をしてたの?然う言えば此方に来たのって神獣が居るからとかだったよね?―
もう出会っていると思っていたけれども、セレは他の古獣達に揉まれているし、神殿には他に誰も居ない様だ。
「うん、然うだったんだけど・・・。」
何か言い淀む様にドレミはアイルとローズを交互に見遣った。
何だろう、少し空気が変わった気がして思わずローズはきょろきょろと辺りを見渡してしまう。
―ローズ様、貴方は私達と同じ古獣ですね。―
―え、う、うん然うみたいだね。こんなに居たなんて吃驚だよ。―
―先程ドレミ様に伺ったのですが、ローズ様は遺跡で卵が見付かったのですね。其処でドレミ様と御会いしたと。―
―うん然うだね。随分手荒な方法で生まされたけど。―
然う答えるとついドレミは苦笑を浮かべた。文字通りの爆誕なのだから手荒も手荒だ。
でも何だろう、外の古獣が珍しいのか質問攻めだ。
僕としては他の古獣達が如何なのか気になるけれど。
―矢張り然うですか。・・・ローズ様、色々と不躾な質問をしてしまって済みません。只今の答えではっきりとしました。―
―え、何?僕の事知ってるの?―
思わぬ言葉につい一歩前へ出る。
てっきり生まれの違う古獣同士なのかと思い始めた矢先だったのに。
―ローズ様貴方は、―
「うぉおおぉお‼モ、モフモフが!モフモフが止まっ、あぁあぁああっ‼」
―ちょ、一寸セレさん!今良い所なので御静かに!―
突然のセレの叫びに思わず一同の背が伸びる。
何と言うか・・・うん然うだ。ずっと隣にあるモフモフの塊も好い加減一寸目障りになって来ていた。
埃が舞いそうな程の勢いで戯れていたので流石に止められる。でもL⊝ ▼▲/が上から注意しても中々古獣達は下がらない。
「セレ!一度ストップよ!モフモフは逃げないから!」
ロードが一声掛けると其のモフモフの塊から一つの影が跳び上がった。
流石セレだ。こんな時でも其の機敏さは、と思った矢先でぺシャリと彼女は着地を失敗して一同の前へ倒れた。
「セ、セレちゃん大丈夫?」
「何だかモフモフし過ぎてオーバーロード起こしちゃったみたい。」
何時の間にか彼女のポケットにケルディが入り込んでいたみたいで、ひょっこりと顔を出す。
モフモフのオーバーロードが何か分からないが、確かに彼女はぴくぴくと痙攣する丈で起きられそうもなかった。
ロードの声に反応して慌てて出て来たみたいだが、酷い様である。
「あ・・・あ・・・、す、凄過ぎて・・・っ、うっかり、おぉ・・・。」
まるで痺れてしまった様に震えているが、まぁ暫くしたら大丈夫だろう。
―ふぅ、やっと終わったみたいだな。―
傍に控えていた火鼠が気付けのつもりか其の背に乗って様子を見てくれている。
―その、セレ様は大丈夫ですか?―
「う、うん大丈夫だよ。だから続けて良いよアイルちゃん。」
ハリーが心配そうに彼女の傍に控えたが、残念乍ら彼では摩る事も出来ない。
一度仕切り直しの為にアイルは角を振った。
他の古獣達も察してか静かになって並んでいる。
―ローズ様、貴方は・・・神獣様なのです。―
―・・・え、え⁉ぼ、僕が⁉―
思わず鬣と尾が逆立ってしまう。余りにも寝耳に水な其の話につい固まってしまった。
ドレミ達は既に此の話を聞いていたのだろう、ローズ一頭が驚いてしまう。
―えー!御兄ちゃん凄い!僕神獣様初めて見た!―
―矢っ張り兄ちゃんは特別だったんだ!―
キャッキャと子供達が歓声を上げるが、ローズは前足一つ動かせなかった。
―えっと、如何言う事?いや待って、抑神獣って何なの?―
「矢っ張り吃驚しちゃうよね。先ドレミも聞いて、未だ信じられないんだけど。」
―然うやね、一寸複雑やし。―
こんな事ならちゃんと皆と話を聞きに行けば良かった。
小さな後悔を覚えつつもじっとローズはアイルを見詰めた。もう一声も漏らさない様にしっかりを耳を広げて。
―はい、神獣様は此の国の王に在らせられます。神獣様が居なくては古獣は滅び去る運命にあるのです。―
―え、で、でも僕は此処で生まれた訳じゃないし、此処の事なんて全然。―
まさか興味本位で付いて行ったら王と呼ばれるなんて、そんな突飛な事はないだろう。
―抑神獣って確か・・・グリスの次元にあったんでしょ?僕は全然違うよ。―
ドレミはそっと混乱するローズの背を撫でた。
情報の渦にパニックになりそうだ。思わずローズはドレミの足に躯を擦り付ける。
―はい、此処は順を追って説明しましょう。如何やら数奇な縁でローズ様は此処迄導かれた様なので。―
―然うやね、うん。先の話だと、矢っ張り神獣の卵の事・・・此処から話した方が良いよね?―
ちらとソルがアイルに眴せを送ると、頷き返された。
積もる話もあるので、一つずつ整理しないと。
―じゃあうちから話そうかな、うん。ローズ先輩が言ったみたいに、確かにうちの次元で神獣の卵は預かったんよ、間違いない。―
「前の龍の番神、千代が預けてくれたのよね。其で神殿に安置していたと。」
「あ・・・あ、其の話は、私も聞いて来たぞ。・・・えと、噫、間違いない、持って行ったと言っていたな。」
何とか身を起こしてセレは頭を振った。やっと一寸落ち着けたらしい。
―でもうちの次元はその、もうなくなってて、でも卵は孵ったって話やったんやね。其処が次元の話やから難しいんやけど。―
―でも先の言い方だと其が僕だって言うんでしょ?でも僕は、ドレミの姉さん、フレスが卵を割ったんだよ。―
何となく其の時の事は憶えている。
何だか優しい声が聞こえて目を醒ますと、ドレミと姉さんが僕の事を見てて。
彼の時は僕も小さかったからしっかり手で抱かれていたんだ。一寸寒かったけど、直ぐドレミがフードの中へ包んでくれて。
確かに彼の時からドレミは次元移動が出来ていたんだろうけど、彼の時はフレスも居たんだ。彼が他次元だったなんて事は無い筈だ。
じゃあ如何したってグリスの次元と繋がらない気がするけど。
「其がねロー君、ドレミも先聞いて凄く吃驚したんだけど・・・その、実はグリちゃんはドレミの・・・御先祖様らしいの。」
―ご、御先祖様なんて言うと何か重いけれども。―
―え?えぇ⁉―
理解が追い付かず思わず跳び上がってしまう。
如何言う事だ?確かに違う次元の筈なのに。
「然うね。此はセレにも前話したけれども、次元其の物の概念の話になるのよ。一つの次元でも、時が経てば全く見え方が変わる様に、次元と一言で言っても在り方は随分違うわ。」
「噫、卵の話だったか・・・時間とかで次元は無数に生まれるって。」
「えぇ、だから言わば過去のグリスの時代と、未来のドレミの時代で別々に次元として存在するのは割と有り得る話なのよ。だから黔日夢の次元の影響も違ったりするし、反対に共通点もある筈よ。」
―共通点って・・・?―
「ほらロー君!グリちゃんの所に行った時、リリアスさんに会ったでしょ?ドレミと同じ武器使ってて。」
ドレミが腕を掲げると飾り瓊が揺れた。
然う其の武器、RC=HΦCもローズと同じ遺跡で見付けたのだ。
―あ、そっか。全く同じ武器だったよね。―
「うん、其に今思ったら彼の神殿とドレミが行った遺跡、似ている気がしたの。」
―後はうちとドレミ先輩の術も一寸似てるんやね。詠唱が独特やし。―
「何となく種族も似てるわね。二柱共可愛いし、宝石の目をしているわ!」
―か、可愛いは良いんよロード先輩・・・。―
「他にも、魔物についてとかもドレミの所は昔共存してたって聞いたけど、リリアスさんだって魔物が先祖だって言っていたし、近い所があるよ。」
―た、確かに似ているの・・・かも。―
然う言えばグリスの次元へ行った時に感じた妙な懐かしさも若しかしたら、
元を正せば同じ次元だったから感じた可能性は・・・ある。
ピースが一つずつ重なり、答えを確かな物にして行く。
グリスとドレミの次元は繋がっていた。となれば其処にあった卵はもう紛れもなく。
―僕が・・・神獣、だなんて。―
口に出した所で全く実感は沸かない。
だって何と言うか、僕も普通の古獣じゃないか。皆の所へ混ざれば見分けは付かないだろうに。
―ローズ様は御気付きでなかった様ですが、私達は元来、貴方の様に高度な魔術は扱えないのです。―
―高度って、鎧の事?―
―えぇ、私達は術に対する耐性はあります。ですが扱うとなると、精々一つか二つが限界です。十二法は扱えないのですよ。―
「然うだったんだ・・・。てっきりドレミ、ロー君しか古獣って知らなかったから皆斯うかと思ったよ。」
「噫私も、龍古来見聞録では見ていたが、書いているのと多少違うのは古獣の多様性の一種だと許り、」
大分元に戻ったセレは傍に来てくれていたハリーを撫でる事にする。
うん、今は此位ツルツルしているのが丁度良い、安心感がある。過剰摂取は危険だ。
其にしても千代め・・・恐らく店にローズが居る事を知っていたからあんな事を言ったんだ。
店の話は龍達から幾らでも聞けるだろうし、だからモフモフを連れて行けと。まんまとやられてしまった訳だ。
―でも抑、僕が然うだとして、如何して卵をグリスの所に預けたの?其とも卵は然うするのかな。―
驚きつつも、自分の出生を知れるなんて思っていなかったんだ。俄然興味が出たローズはアイルに一歩近付いた。
―其は、誤解のない様話させて貰いますと、本来私達は国の外へは出ません。卵を預けたのは特殊な例なのです。―
―特殊って、神獣の卵だからって事?―
―其もありますが、其の中でもローズ様のは特別だったのです。―
余り特別特別って言われると何だかむず痒いけれども。
少し視線を下げると、足の間に入っていたローエイは真剣な眼差しでアイルを見詰めていた。
神獣の話ともなると然うなのかも知れない。後ろに並ぶ古獣達も、動かずじっと聞き入っている。
国が滅ぶなんてのも言っていたし、其程大事な事柄なんだ。
―先代の神獣様は、斯う予言したのです。後に世界は大変な事になるだろう。其の時により力の勁い王が立てる様に、卵を預け外の世界を旅させると。其の為にも龍の番神にも協力頂きました。―
「そんな事あったんだ。でも先代の神獣って、若しかして家族が居たのかな?」
「いや、古獣は結構独特な増え方をした気がするな・・・。確か曦で増えるとか・・・。」
―はい、此の神殿へ曦が満ちれば卵へと収束されて行きます。其の力を最も受け継いだのが神獣様の卵として扱われるのです。―
「成程、じゃあ血の繋がりは無くても皆家族みたいな物なのね。」
―そっか、じゃあ僕も此処で生まれたんだ・・・。―
何だか不思議な感覚だ。卵の時なんて勿論憶えていないけれども、此処は何だか安心する。
本能で分かっているのかも知れない。此処が故郷だったんだ。
「其の先代の神獣は⁉」
ガバッとセレが起き上がった。又元気になったみたいだ。
今の彼女が神獣に会ったら別の意味で壊れてしまいそうだが、好奇心は抑えられないらしい。
―・・・もう役目を終えられ、輝石へ変えられています。神殿を彩る輝石の一つとして安置されているのです。―
「ほぅ、亡くなってしまわれると宝石になってしまうんですねぇ。」
然う言えば道中の家々にも輝石が鏤められていたが、彼等は全て元は古獣だったのかも知れない。
死して猶、国と共に在り続けるのだ。
「そ、そんな・・・も、もう、」
余程のショックだったみたいで又セレは頽れる。彼女にとっては輝石よりもモフモフなのだ。
「じゃあ今はもう神獣さんは居ないんだね。」
―はい、残念乍ら。だからこそ此の国は滅びの危機にあるのです。―
―ほ、滅びって一体どんな、―
一見国は平和そうに見えた。子供達も元気だし、争いもなくて長閑で。
滅びとは縁遠そうに見えたのに。
先代の神獣の予言は当たっているのだろう、世界は黔日夢の次元に因って大きな危機を迎えた。
でも此処は・・・其の影響が殆ど無い様に見えた。其程穏やかな国だったのだ。
―はい、皆様は初めて来られたので御存知ないでしょうが、永らく此の国には陽が昇っておりません。―
言われてつい見上げてしまう。
神殿の天井、切込みから旻が覗くが靄に包まれた様に仄かに明るい。
然う、明るくはあるのだ。でも陽の姿はなかった。
―陽が無ければ曦が足りず、卵は生まれないのです。此の儘では私達は数を減らし続け、何れは滅んでしまうでしょう。―
―然うやったんや。でも陽なんてそんなの、―
如何すれば良いか見当も付かない。光属性ですら陽なんて創れないのだ。
ローズも同じ答えに行き着いたのか何度か頷いた。
―其は大問題だけど、でも如何仕様もないよ。僕だって流石に其は出来ないよ。―
―いえ、問題ありません。神獣様であれば、陽は又昇るのです。―
アイルは胸を張って一歩ローズへ歩み寄る。其の瞳は一片の疑いも持っていない様だった。
「待ってアイルちゃん。然うだよ、ロー君でも其は流石に無理だよ。」
彼へのプレッシャーを感じてそっとドレミが間に入った。流石に此は責任が重過ぎる。
陽と言えば似た物を前丗曦が創っていたが、つまりは其丈の力が必要なのだ。そんな無理はさせられない。
―いえ、違うのですローズ様ドレミ様、此の神殿には特別な絡繰があるのです。其は神獣様に反応し、曦を生み出す装置です。―
「曦を・・・生み出す。」
考えた丈でセレの背が震えた。
何其恐過ぎる。自分は絶対足を踏み入れられないじゃないか。
いやでも曦に包まれたモフモフなんてそんなの・・・。
思わず喉が鳴る。モファンターとして是非とも其は見届けたい。
躯が腐るからって何だ。其が見られるなら命位・・・、
セレの中で小さな葛藤が起こる。悩んでしまう自分が悲しい、其処は即答しないと。
セレの苦悩等露知らず、ローズは其の装置と言う響きに耳を欹てた。
―装置って・・・何其?じゃあ僕が居る丈で陽は昇るの?―
「其は其で凄い仕掛けなのだ。」
―はい、此の神殿に王足る証を持っていると認められれば陽は昇る筈です。―
―王、王かぁ・・・。―
何だか難しそうだ。認められるって具体的に如何したら良いんだろう。
現に此処に居る丈じゃあ何も起きていないみたいだし、何かしないといけないのかな。
「ね、アイルちゃん。王とかって、如何したら成れるの?ロー君はその、生まれた時から神獣さんなんでしょ?」
ドレミが尋ねると、アイルは静かに耳を立てた。
―王の鎧と言う姿があるのです。其へ変身して貰えれば問題ないかと。―
王の鎧、と聞いた途端に控えていた古獣達が賑わいだした。
そしてローズへ注がれる視線が変わるのを感じる。皆信じているのだ、彼が神獣であると。
―王の鎧・・・。―
思わず一歩下がる彼にアイルは覗き込む様に顔を寄せる。
小さく頷いて、安心させる為か薄く咲っていた。
―大丈夫ですよローズ様、只私達は嬉しいのです。同胞が遥か永い旅を経て、戻って来てくれた事に。来訪者なんて何程久しいか。―
―君は、其の王の鎧を見た事があるの?―
―いえ、残念乍ら。此処に居る者達も殆どが見た事が無いでしょう。其程王は不在だったのです。先代の威光の御蔭で、其でも陽は暫く昇っていたのですが・・・。―
―然うだったんだ、でも・・・うーん・・・。―
成れるなら、勿論成ってあげたい。自分に出来る事があればしてあげたいけど。
王の鎧なんて全く知らない。一体其は何なのだろう。
「ロー君、如何?王の鎧ってドレミ初めて聞いたけど。」
―・・・うん、僕もなんだ。其って普通の十二法とは違うんだよね。―
―はい、寧ろローズ様がされている変身は、王の鎧の断片と思われます。力を一部丈行使しているかと。―
一部・・・彼の鎧の姿が一部なのか。
考えてみたけどイメージが中々湧かない。
―分からないのであれば如何でしょう。例えば神獣は特別な力が使えたとかありませんか?―
見兼ねたL⊝ ▼▲/がアイルの方を見遣ると、目を伏せられてしまう。
―其が・・・済みません。私達も御会いした事が無いので存じ上げないのです。只、神獣は金色の毛並を持つ雄々しき姿だと。―
「金、金色の鎧なんてあったっけ、ロー君。」
―・・・いや、一応雷が近いけど、彼は何方かと言うと黄だし、―
「ぬぅ、セレは如何なのだ?セレは龍に詳しいのだ。」
ハリーが首を傾げて何とかセレの手を取ろうとする。
彼女は先のショックから中々立ち上がれなくなっていたが、話は聞いているだろう。
「然うだな、其の神獣と言うのが古獣の王の事なら、記述はあったと思うが・・・、」
何とか思考を巡らせる。モフモフが困っているんだ、助けてやらないと。
「王は確か、もう同じ古獣と言っても別種と言って良い程違った筈だ。只姿に関しては矢っ張り神獣毎に違うんだろうな。私も金色の毛並を持っている事しか知らないが、其でも十二法全てを扱える存在だってあったな。」
「今のロー君も十二法は使えるけれど、其とは違う意味なのかな・・・。」
―いや、其より何か、其の色々変身せんでも使える、言う事なんやない?―
―え、でも僕、何かの鎧にならないと術は使えないよ。―
此処迄来ると、恐らく今迄ローズが成った事のない鎧があるのだろう。
薄々其の答えに行き着いて、誰彼ともなく溜息が漏れる。
此の辺りの感覚は最早ローズにしか分からないのだ。彼は困った様に耳を上げ下げしていた。
「ロー君、折角だし、一寸練習してみよう!ほら最初のだって、困っていたから鎧が使える様になったんだし、屹度感覚があるんだよ!」
―うん、然うかも知れないね。・・・良し、―
ドレミに励まして貰って何とか顔を上げる。今はやってみないと、気落ちしていちゃあ駄目だ。
今迄の鎧が断片だって言うのなら、全てが一つになった姿を考えれば良いのかも知れない。
となると相当力を使うかな・・・試した事はないけれども。
―ね、ローズは変身って何位出来るの?僕はした方が魔力が増えるから楽になるんだけど。―
―んー・・・試した事が無いからね。休み乍らなら四、五回連続で出来るし・・・。―
余り考えた事も、そんな鎧を使う事も無かったので難しい。サポートが主な使い方だったし。
「一応変身した儘で居るのも魔力を使うんだよね。えっと・・・ドレミも五回連続位しか見ていないかも。」
抑其以上使わせる事なんてのもなかった。そんな無理させられないし。
私が雷に成れるのと似ているかも知れないけれど、如何なんだろう。
「因みにぃ、どんな風にイメージして姿を変えているんですぅ?矢っ張り灯だったら火をイメージするとかぁ・・・。」
―然うだね。斯うしたいなぁとか思ったら其に合わせた姿に成れるんだよ。だから王って言うのが何だかイメージし難くって・・・。―
「金のモフモフ!金のモフモフをイメージするんだローズ!」
新たな可能性を見出してかセレは再び元気になった。
王の鎧と聞いて、希望を見付けたのだろう。新たな出会いに喜びが止まらない様だ。
「イメージ丈で姿が変われるのは寧ろセレの得意分野ね。」
「うん、今度は金色の小っちゃいセレちゃんに成るかもね。」
「い、いや彼の姿丈はもう・・・、」
懐い出したくない。あんなにガルダに甲斐甲斐しく世話をさせて。
悪い事はないが、擽ったくて申し訳ない許りの懐い出だ。
―うーん・・・金をイメージ・・・。―
自分の鬣が金色になるのをイメージしてみる。其から鎧を変えて・・・。
魔力を込めて足も踏み締めるが、姿が変わる様子はない。
駄目だ。寧ろ改めてイメージすると難しいかも知れない。
―兄ちゃんパパッて変身してたんだし、連続でしてたら成ったりするんじゃない?―
カエイが前足を上げてローズの背を突っ突いた。
簡単に言ってくれるが中々難しい要求だ。一応出来なくはないけれども。
「十二個全部一回成ってみるとか・・・そんなの出来るのロー君。」
―変わる丈なら出来るかもだけど。・・・うん、やってみるよ。―
取り敢えず光から順番に変わってみる。改めて感覚を掴む様に慎重に。
姿が変化する度に端からセレの歓声が上がるが・・・集中を切らしてはいけない。
消耗しつつも何とか次々と鎧を変え続け、最後の宙の鎧になってみる。
其からイメージを膨らませてみるが・・・。
集中が切れた所で元の姿に戻ってしまう。改めて己の姿を見詰めるが、何処も金の一片も見られない。
流石に可也消耗してしまったので荒く息を付く。
―だ、駄目だ。矢っ張り普通にやった丈じゃあ成れないよ・・・。―
―いえローズ様素晴しいですわ。まさかそんな風に姿を変えられるだなんて。―
目を見開いてアイルは気遣う様にローズを見遣った。周りの古獣達もすっかり息を呑んでいた。矢張り変化出来るのはローズ丈の様だ。
でも肝心の神獣に成る事は如何しても出来ない。肩を落とすローズの背をそっとドレミは撫でた。
「大丈夫ロー君、無理しちゃ駄目だよ。今は出来なくても何時か出来るかも知れないし、焦らなくて良いよ。」
―うん、もう一寸どんなのか分かったらイメージし易いけど・・・。―
「其だったら、例えば壁画とか残ってないかしら。こんな綺麗な神殿だし。」
ぐるりとロードは見渡したが、目に映るは輝かん許りの輝石のみで、華等は描かれているが、獣の姿はない。
―うーん、絵は無いよ。だって宝石に成っちゃうし・・・。―
―然うだよね。えっと、前の神獣様は此だっけ。―
子供達が神殿を走り回ってある一方へ集まる。
其処には大き目の金剛石が嵌められていた。
―此が・・・前の神獣なの?―
―はい、其の通りです。此の神殿内の輝石は全て神獣様のなので。―
―此処の全てなんですか。色々と、永い歴史なんですね。―
然う聞いて見渡すと、同じ景色でも見え方が変わって来る。
本当に種々様々だ。同じ物は一つとしてない。
別に神獣だからと言って、特徴は無い様だ。
「如何ですローズさん。何か感じますぅ?」
―んー・・・一寸魔力は感じるけど。―
言ってしまえば他の古獣達の輝石と同じだ。特別な力は感じない。
「此全部が元々はモフモフだったのか。」
考えると少し切なくなる。可也の数だ。金のモフモフがそんなに育まれて来たのか。何とかイメージしてみたいが・・・。
「セレよ。良かったら我が其のモフモフを創るのだ。セレのイメージから創れるかも知れないのだ。」
名案と許りに晒の下でセレの瞳が輝く。其は是非とも試してみたい。
「良いのかハリー!じゃあ如何したら良い、ハリーに私のイメージを送ったら良いのか?」
「うむ、任せるのだ。寸分違わず創ってみせるのだ。」
何とか胸を反らそうと頑張る様は微笑ましい。
手先は壊滅的でも事幻に関しては一流だ。
良し、じゃあ何をイメージしよう。一先ず金のローズか。
思い浮かべていると二柱の前にローズと寸分違わず、だが黄金に輝いた幻が現れた。
完璧な再現である。振り返って上目遣いで見る様はポイントが高い!
「お、おぉ!凄いぞハリー!」
―ほぉ、流石上手いもんだな。―
金丈あって曦を良く反射して煌めいて見える。只此だと一寸硬そうだな。金の像の様でもあるのでもっと柔らかさを表現したい。
セレがイメージして行くとどんどん金のローズは作り変わって行く。中々面白い創作だ。
周りの古獣達も事の成り行きを見ていたが、幻なんて見た事が無いので驚いて鳴き交わしている。金のローズはすっかり皆の中心に居た。
―ちょ、セレ、変な物創らないでよ!―
何だか一寸恥ずかしい。然も出来が良いのでまるで鏡だ。
憖じ彼女の干渉力も高いからか、今ではすっかり瓜二つの幻が完成していた。
「うーん・・・何か役には立つかも知れないけど、流石に斯うじゃないね。」
―此、完璧にセレの遊びやし・・・。―
失礼な、此も真面目な芸術だぞ。
折角なので龍古来見聞録に載っていた古獣達を思い出す。王なんて言う位だし、屹度素敵なモフモフだろう。
では素敵なモフモフとは何だろうか、今迄出会って来た龍達からヒントは得られないだろうか・・・。
セレが思いを馳せる度にぐにゃぐにゃと幻は形を変える。
余りにも見事な物だった為に其の様は少々グロテスクだ。一緒に見守っていた古獣達は一歩下がってしまう。
―ローズさんも御疲れでしょうし、今日は流石に休んだ方が良いのではないでしょうか。休んだら何か斯う、閃くかも知れませんよ。―
「うん然うだね。一寸ロー君も整理したいだろうし、如何かな。」
皆もうセレがモフモフワールドへ旅立っている事を悟っていた。そっと視線を彼女から外してしまう。
仕方ない、事モフモフに関しては彼女は抗えないのだ。
―然う・・・だね。良いかなアイル。又明日頑張ってみるから。―
―勿論構いませんよ。此処は貴方の故郷なのですからローズ様。只此処では皆様で休めないので、近くの空いている家に致しましょう。―
―あ、宿迄出してくれるん?だったら有り難いわ。うちも色々考えてみたいし。―
「だねグリちゃん。ドレミも吃驚しちゃったから。」
―では皆さんどうぞ此方へ。しっかり御休みなさってください。―
究極のモフモフへ果てなき道を歩み始めた三柱を残して、一同は神殿を後にするのだった。
ローズ一柱は如何も気落ちしてしまった様だが、其でも神殿の入口に集まっていた古獣達は嬉しそうに尾を振っていた。
戻って来てくれた事が嬉しいと許りに飛んだり跳ねたりと輪は広がって行く。
気付けば国中の古獣が集まっている様に思えた。すっかり此の一角が賑わっていたのだ。
思い掛けない所へ立ち寄ったけれども、折角の故郷なら楽しんで欲しいな、とドレミは秘かに願わずにはいられなかった。
二柱丈で旅をしていたら屹度見付けられなかった所だ。だから此処迄の道程を導かれて来たと言うのなら。
今は只感謝と共に、此の縁を噛み締めていたい。
―此方は如何でしょうか?皆さんで入れると良いですが。―
アイルに連れられ、一同は神殿の直ぐ傍の家へ通された。
「あら十分じゃないかしら。まさかこんな大部屋を用意して貰えるなんて。」
十分広々としている。平屋となっていたが、奥に棚や箱が揃えられており、嫩草で編まれたベッドが敷かれていた。
久方の来訪者と言っていたし、宿泊施設なんて無いだろう。此処は誰かの家だとは思われるが。
古獣しか住んでいない筈なのに、家具はまるで人の手が加えられた様にしっかりとした造りだ。
一部の力丈使える者も居るとの事だったし、然う言った古獣達が協力をして造ったのかも知れない。
神殿の装飾も凝っていたし、高度な文明を築いている様だ。
「こんな良い所泊まっても良いの?」
―はい、もう此処に住んでいる者も居ないので・・・。でも綺麗にしていて良かったですわ。斯うして又使って貰えたら家も喜びます。―
「うん、有難ねアイルちゃん。」
アイルもにっこり微笑むと尾を一つ振って家を出て行った。
此処迄ずっと案内してくれたし、彼女も疲れただろう。
―あ、兄ちゃん達一寸待ってくれよ!俺達御飯採って来るから!―
子供達が窓から身を乗り出して鼻先を向けて来た。くるくる良く動く目は何とも愛らしい。
―其なら大丈夫だよ、僕も行くよ。―
―いや兄ちゃんは休んでなよ。直ぐ裏の畑行く丈だからさ!―
―一番大きい実採って来れた奴が勝ちな!―
―えぇー!数にしようよ!―
有無を言わさず子供達は一斉に駆け出してしまった。
―あぁ、行っちゃった・・・。―
「フフ、皆良い子ね。付いて来て良かったわ。まさかこんな事になるなんて。」
取り敢えず床に腰を下ろしてみる。床は一面の蘚なのでふかふかだ。冷たく心地良い薫風が大きく開いた窓から入り込んで来る。
「然うだね。でもロー君の故郷だなんて。」
セレに誘われてローズ達は来た訳だけど、屹度セレも此の事は知らなかったよね。
嵌められたと言ったら聞こえは悪いけど、龍の番神に然う誘われたのかも知れない。
でも此方も困っちゃっていたみたいだし、其なら助けになりたい。良い機会だったんだと思う。
―然う言えばグリスとドレミが同族って言うか、先祖だったの吃驚したよ。僕の卵も、グリスは護ってくれたって事かな?―
―然う言う事になるんやね。何か不思議な感じやわ・・・。うちが見た卵は大きな紅玉みたいな宝石やったんよ。でもまさか其がローズ先輩だったなんて・・・。―
セレではないけれども、こんなモフモフが生まれるとは思っていなかった。
てっきり自分達が鳥の魔物と交わりがあったので、神獣とは大きな鳥なんだろうなと勝手に思っていたのだ。
若し自分が神殿に居た時に生まれていたら、彼はパートナーになってくれていたのだろうか。抑、自分の次元は如何なっていただろうか。ついそんな考えが過った。
「あ、矢っ張りそんな卵だったんだ。ドレミも見付けた時御宝かと思っちゃったし・・・。でもロー君随分長い間卵だったんだね。」
―若しかしたら何百年か経っとるかも知れんし・・・でもうち、卵護ってあげられなくて御免ね。無事生まれたから良かったけど。―
―いや寧ろグリスは大事にしてくれたんでしょ?扱いが酷かったのは姉さんの方だから。―
「フフ、でも何だかフレスらしいわ。私にも嬉しそうに報告してくれたし。」
「ロードさんはぁ大神さんって言う凄い神の所に居たと聞いてましたがぁ、ドレミさんの姉さんに会ってたんですぅ?」
意外な繋がりに思えたのだろう。首を傾げてリーシャンはロードを見遣った。
今の彼は蘚の上に留まっているが、柔らかくて心地良いのか少し目が閉じ掛かっている気がした。もう暫くしたら舟を漕ぎ出すかも知れない。
「然うね。フレスは神と夢で会ったりする力を持っていたから、其で色々と話してたのよ。」
「ドレミは其の力無かったからローちゃんと会ったのは店に入ってからだけどね。一寸姉ちゃんに似てるんだよ。」
「そんな関係があったんですねぇ。」
似ていると聞いてリーシャンは僅かに嘴を開けて考えてしまう。
ドレミの姉は卵を爆発させたと言っていたが、其とロードが似ていると言うのは如何なんだろう。
何だか暴力的な匂がする。彼女のマッチョも侮れないし、其の辺が似ていると言う事なのだろうか。
「っひゃ⁉く、擽ったい⁉」
突然ソルの背が伸び跳び上がってしまう。思わず彼女が髪を押さえると、中からひょんとケルディが跳び出した。
本当に何処にでも入り込む。そんな所に潜んでいたとは全く思っていなかったのでソルは目をおろおろさせていた。
―な、何々⁉何でケルディがうちの髪の中に⁉―
髪と言うよりは耳を甘噛みされた気がする。耳に残る不思議な感触につい彼女は顔を赤くして耳を押さえた。
「うーん、二柱共全然違うね。結構遠い御先祖様なのかな。」
如何やら其が気になって確かめていた様だ。
「え、あれケル君若しかしてドレミの髪の中にも入ってたの?」
思わず尋ねるが彼は悪戯っぽく尾を振って黙った儘だった。
―ケルディさん、流石に其は吃驚しちゃいますよ。―
「えへへ、御免ね。」
全く悪怯れる様子もなく謝ると、ケルディはL⊝ ▼▲/の背に乗った。
彼の胴に掛かっている輪を潜って遊び始めている。
―然うやね。うちはドレミの所は行った事ないから分からんけど、でも先祖言われても血の繋がりとかは全くないと思うんよ。別の大陸とかやないかな・・・。―
自分の一族自体は滅んでしまっているし、近似、と言った位じゃないだろうか。
あ、でも一応次元は違うし、生き残りが居たパターンもあるのかも知れない。
「んんー・・・難しいね。ドレミは自分の所、其処迄詳しくなかったし、斯うだったら姉ちゃんにもっと聞いたら良かったよ。」
―でも遺跡は僕も行った事あるけど、結構ぼろぼろだったよね。植物とかも大分違ってたから、下手したら・・・千年位、とか。―
―千年⁉そんな時を超えて出会えるなんて何だかロマンティックですね。―
「然うね。次元としては存在するけれども、斯うして出会うのは稀でしょうね。若しかしたら他にも意外な繋がりがあるかも知れないわよ。」
「何だか夢が膨らみますねぇ。」
「若しかしたらグリちゃんに聞いたら、遺跡の事もっと分かるかもね。ドレミ、トレジャーハンターしてたけど、分からないのも勿論一杯あったし。」
―っ!其だ!然うだよ。分からなかったら直接聞けば良かったんだ!―
俄に元気になった様でローズの尾が上がる。変わらず斯う言う事に興味がある様だ。
其の変わり様に思わずドレミは小さく吹き出す。
「ロー君が然う言う歴史とか好きなのは、若しかしたら此の故郷が影響しているからかも知れないね。」
―然う、なのかな。でも確かに此処も一寸丈、雰囲気は彼の神殿に似てるよ。―
―だから卵も預けられたのかも知れんね。―
「ぬ、皆此方に来ていたのだ。」
何頭かの古獣の背に乗ってハリーが戻って来た。しれっとそんな彼の頭の上に火鼠は移動している。
本来なら一頭で十分だったろうが、ハリーが其の背に上手く掴まれなかったのだろう。
複数の古獣が並んで走る事で動く床として彼を運んでくれた様だ。
―あ、御帰りなさい。御疲れ様です。―
「うむ、皆も助かったのだ。中々の乗り心地だったのだ。」
家の中へ降ろして貰い、ハローは古獣達へ手を挙げた。
撫でるなりしたかったのかも知れないが上手く行かず、勘違いした古獣がそっと尾を寄せる。
「ハリー君、今日は此処に泊まるからね。後・・・セレちゃんは?」
「ぬぅ、セレは又モフモフに捕まってるのだ。」
途端少し苦い顔をされてしまう。そっと窓から覗くと確かに外で又古獣の集まりが出来ていた。
彼の中にセレは包まれてしまっているのだろうか・・・大丈夫だろうか心配になる。
古獣達は全力で彼女に甘えてしまっている様だ。羨ましい様な微妙な心地になる。
先は堪らなくなってセレが古獣の一頭を撫でたら其を切っ掛けにああなったけど、今度は如何したんだろう。
一応他の古獣達にも会って来たけど、皆が皆甘えん坊だとか、そんな事はない。屹度何時ものセレの龍好き好きパワーの影響なんだろう。
「・・・彼は暫く掛かりそうね。」
「おぉ、中々の光景ですぅ。」
思わずリーシャンは身震いしてしまう。一見襲われている様にも見えなくもないのだ。
「フフ、此処はセレにとって正に楽園ね。・・・所で先のは結局如何なったのかしら。」
「其が、セレが至高のモフモフを創ろうと頑張っていたのだが、途中で本物を確かめたいと近くの奴の背を撫でたが最後・・・。」
神妙な面持ちで火鼠も頷いている・・・何だか哀れだ。
成程、其から此の混乱は始まったと。
何だか納得の理由だった。ある意味彼女らしい。
彼女にとってのモフモフ道は未だ未だ遠そうだ。
―良ーし、俺がいっちばん!―
然う言って家へ跳び込んだのはカエイだった。何個かのオレンジを銜えて来たみたいで嬉しそうに尾が振られている。
―矢っ張り君足が速いんだね。此美味しかったから嬉しいよ。―
―へへっ、神獣様に褒めて貰っちゃった。―
はにかむとカエイはそっとテーブルにオレンジを転がした。
急いで来たからだろう僅かに歯形が残っていたので、そっと彼は転がして其の跡を隠して置く。
―一寸!数で競おうって言ったじゃん。ほら僕一杯あるよ。―
窓から顔を覗かせた古獣は背に沢山の木の実を乗せていた。
良く見ると其の背は蔦の様な物が這っている。其に絡ませて運んで来たんだろう。
「わ、こんなに一杯皆有難うね。」
皆次々に木の実や果実をテーブルに置いて行ったので直ぐに山盛りになった。
―あ、僕彼方の御姉ちゃんに持ってこ!―
一匹の古獣が木の実を銜えて古獣の山、セレの所へ駆け出した。
今持って行けば木の実毎潰されそうな勢いだが大丈夫だろうか。屹度一緒に遊びたかったんだろうが。
「っ!此をくれるのか⁉あぁあぁ、有難う可愛い大好きだ!」
あ、無事届いたっぽい。
一寸心配そうにローズは窓から眺めていたが、古獣の群の中から晒に塗れた手が出て来た。
そして這い擦る様にセレが出て来る。手にはしっかり木の実を握っているが、立てそうにない。
「ぬぅ、もうモフモフは十分なのだ。セレも家に入るのだ。」
もう耐え兼ねた様でハリーが声を掛けると直ぐ古獣達は散って行った。そしてハリーにした様にセレを背に乗せ運んでくれる。
「お、おぉおお・・・あ、有難・・・う、」
「此は大分重症ね。」
何とか運んでくれた古獣達へ礼を言おうと手を伸ばすが、ぱたりと力尽きてしまう。
モフモフに完全敗北である。此は酷い。
気を遣ってかベッドへ降ろされたが、当分起き上がれないだろう。
「此って何だろう、幸せ過ぎてキャパオーバーしちゃったのかな。」
―何だか此処迄来たらアレルギーの様でもありますが・・・。―
古獣の子供達もセレが気になる様で、突っ突いたり匂を嗅いでいる様だ。暫くそっとしてあげよう。
兎に角折角御飯を持って来てくれたんだし、此方も頂こう。
―ん、矢っ張り此のオレンジ美味しいね。何個でも食べられそうだよ。―
―裏に畑ある言うてたけど見えるんかな・・・。―
―あ、ほら彼だよ。碧樹が並んでるでしょ。―
古獣達は警戒心を余り持っていないのかグイグイと身を乗り出して来る。
セレに骨抜きにされた子も多いだろうし、そっとソルも近くの此の背を撫でてみた。
見てみると確かに遠く続く丘に碧樹が整然と並んでいるのが分かった。
未だ色んな色の木の実が実っているのが見えるが、彼を採って来てくれたみたいだ。
「へぇ、畑ってしっかりあるんだね。皆も此処の食べてるの?」
―うん、此の絳いのが特に美味しいと思うよ。―
皆来訪者に興味津々だ。木の実を撮み食いする子も出て来たので一寸したパーティみたいに賑やかになる。
「セレよ。そろそろ起きるのだ。早くしないと御飯が無くなってしまうのだ。」
何とかハリーが彼女を揺すってみる。此の位なら多少は上達したのだ。
「ん・・・ん、あ、噫、大丈夫、大丈夫だよ。」
全く大丈夫じゃあなさそうな声で応えると緩り彼女は起き上がった。
未だぼんやりしている様にも見える。全快迄は程遠いだろう。
そして木の実を手にしていた事を思い出し、早速齧ってみる。
「ん、変わった味だが美味しいな、うん。」
―御姉ちゃん、其普通は外皮剥いて食べるんだよ。―
「そ、然うか此の事か?」
古獣達に突かれてセレは何とか皮を剥いて行く。
其の光景が何だか微笑ましく写って、ついドレミは吹き出してしまった。
「御帰りセレちゃん。満喫してるね。」
「噫、此処に永住したい位だ。」
―じゃあ住んじゃいなよ!―
可愛い事を傍に居た古獣が言ってくれたので思わずギュッとセレは其の子を抱き締めた。
すっかり御満悦である。屹度今彼女が尾を出していたら激しく振られていた事だろう。
―連れて来てくれて有難うセレ。御蔭で新しい事一杯知れたよ。―
「そんな事、でもまさかローズが神獣だったとはな。此は一杯千代に喰わされたな。」
食べた事で頭が働いて来た様だ。彼女もテーブルの傍へ寄る。
「セレも知らなかったのね。まさか古獣の国だったなんて。」
「ドレミ達の件も驚いたけどな。」
新たな木の実を手に取ると、ケルディがあざとく甘えて来たので皮を剥いてやる。うん、今日も可愛いな。
「でもローズ、その大丈夫か?中々大変そうな事になったみたいだが。」
―うん然うなんだよ。又明日考えないとね。―
―セレは如何なん?先凄い一所懸命何か創ってたけど。―
「其が存外難しくてな・・・。今迄のローズの鎧全部を一つにした姿を想像してみたんだが。」
あれ、意外にちゃんと考えている。
失礼乍らもついソルはそんな事を考えてしまった。
―鎧全部を一つに?確かに其があってるっぽいけど。―
ひょんとローズの尾も上がる。興味が出た様だ。
「うむ、セレのイメージは中々複雑だったのだ。良く想像丈であんなに創れるのだ。」
「只要素を付け足して行くと如何もモフモフ感が損なわれて行ってしまってだな・・・。」
「あ、結局其処に帰結するんだね。」
―もう、別に神獣はモフモフとは限らないんだよ。―
ヒントになりそうだったのに余である。でも全部の鎧を一つにすると言う考えは強ち外れてはいない気がした。
確かに其の儘全部付けたらゴツゴツしてそうだけど、うーん・・・。
「でも安心してくれローズ。何時か屹度私は至高の王のモフモフを生み出すからな。」
「うむ、セレよ其の意気なのだ!」
―生みだして欲しいのは王の鎧だからね。―
駄目だ。矢っ張りセレはモフモフの事になると知能指数が著しく低下するらしい。
―でもそんな気負わなくて大丈夫ですよローズさん。ほら皆さんだって喜んでくれていますし。―
―然うだよ御兄ちゃん。変身した時かっこよかったよ!―
―うん、皆有難うね。―
分かっているけど、如何しても焦りは出てしまうんだ。こんな事になるなんて覚悟も何も出来ていなかったし。
―てっきりロードみたいなマッチョに成るのを一寸目指してたけど、王の鎧に成るのと何方が早いかな。―
「え、待ってロー君そんな野望持ってたの?」
―矢っ張り憧れちゃいますよねぇ。―
―え、え?其処同意するん?―
小さな混乱が起き始める。如何やら龍達にとって彼女の筋肉は魅力的に見えた様だ。
「あら嬉しいわ。じゃあ一緒にトレーニングするかしら。此処の走り込みも景色が良くて楽しそうよ。」
―若しかしたら筋肉付いたら王の鎧に成れるかも知れないし・・・。―
「待ってロー君!其は絶対違うと思うよ!」
「ッ⁉然うだ、駄目だトレーニングは危険だ!」
突然ガバリとセレが身を乗り出した。心做し其の肩は震えている気がする。
「急に元気になったね。如何したの?」
「セレは前一回一緒に行ったけど、其限だったわね。」
ロードの視線が此方に向けられ、思わずセレは喉の奥で小さな悲鳴を上げた。
途端に頭に浮かぶは灼熱の火山と闇より深い海底だ。薄ら出していない筈の翼が痛んだ気がした。
憶えている。しっかりと此の躯は彼の暴虐の数々を憶えているぞ!
「ロードの彼は・・・正に上級者、否神向けだ。私達素神が手を出してはいけない。禁忌に触れてしまったら、っ、お、悍しい事が・・・。」
「ど、如何しちゃったのセレちゃん・・・?」
―セレがこんな怯えてんの初めて見たわ・・・。―
必死とも取れる其の様相に皆も自然唾を呑む。
そんな中ロード一柱丈はまるで聖母の様に穏やかに微笑んでいた。
「もうセレ大袈裟よ。一寸泳げなかったからって。」
「いや鋼鉄で簀巻きにされた状態で泳げる奴はいないぞ。」
抑其ならロードのだって泳げていたかは怪しい。
彼は水の上を走っていたんだ。彼をスイミングの括りにする方が間違っている。
「い、一体どんなトレーニングしたんですかぁ。」
―・・・何だろう、多分マッチョに成るより王の鎧に成る方が簡単な気がして来たよ。―
変な励まし方になってしまったが、ローズも其で納得してしまったらしい。
うん、賢い子だ。此許りは本能に因る警戒心が勝ったのだろう。
「もうセレったら・・・。でもトレーニング仲間は何時でも募集してるわ。興味があったら何時でも声掛けて頂戴ね。」
「彼聞いて参加したら中々の猛者だな。」
未だ止まらない躯の震えを自覚し乍らセレは一つ息を付いた。
其からはドレミの元の次元の話だとかで盛り上がり、古獣達を交えた小さなパーティは御開きになったのだった。
・・・・・
薄く目を開け、ローズは小さく伸びをした。
家は十分広かったので一同伸び伸びと休む事が出来たのだ。
しっかり寝たが、旻は変わらず明るい儘だ。
然う、昨日も霄になったと思ったが旻はずっと曦に包まれていたので、此処は然う言う旻模様なのかも知れない。
其か若しかしたら彼が原因しているのかも知れないけれども・・・。
未だ皆寝ているが、すっかり目が覚めてしまったので、そっとローズは窓辺に近付いた。
本当に穏やかな所だ。窓からの景色は平和其の物で、丘に綺麗に沿って樹々が薫風に揺れている。
畑なのだが、実っている果実がカラフルで、風景を鮮やかに染めてくれる。
昨日はすっかり御馳走になったけれども、矢っ張り故郷だからなのか本当に美味しかった。
出来れば御土産に貰いたい位だ。思い出してしまって思わず舌舐りしてしまう。
・・・何やら金髪を靡かせて正女が一柱丘を駆けって行くのが見えた気がしたが、黙って目を瞑るとしよう。
そっと視線を外し、ちらと室内を見遣る。
皆ぐっすり寝ているが・・・既に一つのベッドが空いている。其丈でローズは全てを理解した。
因みにセレのベッド丈異様な光景になっている。
如何やら二匹の古獣の子がすっかり懐いていた様で、一緒に眠っていた。彼等に挟まれ、抱き付いた儘でセレは眠っていたのだ。
加えて強欲にもリーシャンを胸元に抱き、L⊝ ▼▲/を頸に巻いている。アクセントのつもりなのか顔に火鼠を置いているが息苦しくないだろうか。立派なモフモフのフルコースだ。
普段の彼女なら物音一つで起きるだろうが、此では寧ろ起きる事はないだろう。
そっとローズは家を出て神殿へと向かった。
未だ街は静まり返っている。誰も表に出ていない。靄に包まれた街はまるでもう文明が滅び去った遺跡群の様で。
屹度此の儘陽が昇らなければ、本当に此処は然うなってしまうのだろう。
次元の迫間にある神の街も似た様な物だと聞いた事がある。静かに滅び去って行くのだ。
折角見付けた故郷が然うなっては悲しい。でも・・・、
一つ息を付いて神殿へと差し掛かる。此処丈は矢張り空気が違う気がした。
そして覗いてみると一つの影がある事に気付いたのだ。
―・・・アイル?―
―あら、御早う御座いますローズ様。―
其処に居たのはアイルだった。神殿の中心に立って、じっと壁を見ていた様だけれども。
―御早う、早いね。何してたの?―
―はい、折角昨日此方へ案内したので、もう少し見て置こうかと思ったのです。―
一つ尾を振る彼女の傍にローズも腰掛けた。
神殿の壁に張り巡らされた切込みから薄く曦が漏れて来る。
靄の陰りに因るのだろう、少しずつだが其の曦が揺れて行く様だった。
―本当に綺麗な所だね。―
―はい、私も此処が大好きなんですよ。だから、克てはどんなに凄かったのだろうと思って。―
―然うだね。丁度僕も夢で昊陽を見た気がして、其で起きたんだよ。―
地平線から覗く様な昊陽、多分彼は何処かの次元の懐い出なんだろうけど。
良くドレミとは彼のギルドに入っていた次元で夕陽を見ていた。
彼の絳が、此の瞳に焼き付いているんだ。
―昊陽、ですか・・・。―
アイルは視線を少し上げて目を細めた。
―実は私、昊陽を見た事が無いんです。話で聞く丈で、どんな物なのか。―
―そっか。皆此の国を出た事が無いんだよね?―
―はい、だから私達の種族以外に会ったのも初めてなんです。此の国の外では皆さんの様な方が沢山居られるのでしょうね。―
―うん、本当に全然違う世界だよ。僕も色んな次元行って来たけど、其でも未だ未だ知らない所ばっかりだよ。―
―あの・・・良かったら外の話、聞いてみても良いですか?神獣様としてとかではなくて、ローズ様の事、聞いてみたいんです。―
―うん、其位だったら勿論。でも何処から話そうかな。―
少し宙を見る。懐い出は沢山ある。ドレミと二柱丈で回った次元も多いけど、店に入ってからも色々経験したからね。
―フフ、何でも構いませんよ。屹度・・・良い所許りでもなかったでしょう。けれどもどんな景色も世界も、私にとって新鮮ですから。―
―分かったよ。じゃあ印象に残っている所からかな・・・。―
然うだ、綺麗な所許りじゃない。恐ろしい事も悲しい事も一杯あったけれども。
咲って語れる事が多いのは、何て素敵な事なんだろうと思い乍ら、ローズはじっとアイルの碧の瞳を見詰め返すのだった。
・・・・・
「あ!ロー君矢っ張り此方に居たよ。」
暫くして神殿へとドレミ達がやって来た。
もう皆起きて来たのだろう、すっかり話し込んでしまった様だ。今更乍ら御中が空き始めている。
「おぉおお・・・・っ!モ、モフモフが、凄い!こんなに!」
「ボスさんはずっと其ですねぇ。」
然う、神殿内は何時の間にか子供達で溢れていた。
そっとローズの話を聞き付けた子が皆を集めて来たのだ。皆外の話に興味津々で、静かに聞き入ってくれていた。
其の瞳はキラキラと輝いていて何とも愛らしい。セレがメロメロになるのも頷ける。
皆大人しく伏せって聞いていたので、彼女からしたら上等なベッドの様に見えた事だろう。
―皆さん御早う御座います。昨日は休めましたか?―
「はいぃ、御蔭様でぇ元気一杯ですぅ。」
「うん、すっかり持て成して貰っちゃった。」
「此は何の集まりなの?何かの儀式?」
「然うだな。立派なモフモフの儀式だな!」
早速勘違いした彼女が傍に居た古獣の子をギュッと抱き締める。
・・・彼女がモフモフに呑まれるのも時間の問題だろう。
―ローズ様に旅の話を色々と伺っていたのです。何も素敵な御話でしたわ。―
―御姉ちゃん達とっても勁いんだね!―
―私、機械とか全然分からなかった・・・。―
―瀛海ってどんなのなんだろ。―
随分と色んな話を聞いた様で子供達は興奮し切っている様だった。
ドレミ達を見て尾を振っている子も多いが、一体何処迄話したのだろう。
―・・・?然う言えばロード様の姿丈見当たりませんね。―
少し前足を上げてアイルは後方を見遣った。他の皆は一緒に見えるのだが。
「あ、えっとローちゃんは走り込みだっけ。」
「・・・噫、延々と走っているな。」
少しセレが遠い目をする。
実の所走る丈では飽き足らず飛び始めているが、もう見ない事にする。
彼の例の飛行法だ。訓練にはなるだろうけれども、うーん。
彼女にとって此の島は小さ過ぎたのだろう。噴火させる高山も、渡り切る瀛海も無いのだから。
彼女が走っているのを見掛けたからだろう、何匹かの古獣の子が遊びつのもりだったのか彼女の後を追って駆けっていた。
其でも余りのスピードに次々脱落し、其の果てに飛んでしまっては追い付ける者はもう居ない。島の端ギリギリの所で彼女を見送っているが何匹か見えた。
彼でも大分彼女は手を抜いているな。未だ波紋でしっかり追えるスピードなら彼女にとっての軽いジョギング、否ウォーキング位の心地なのだろう。
・・・ん、彼女、此方へ向かっているのか?如何やら今昊のトレーニングとやらは終わったらしい。
一柱セレ丈は波紋で先読みが出来るのでちらと神殿入口を見遣っていると、ワンピースを靡かせて一柱の正女が入って来た。
何とも涼しい顔をしてらっしゃる。降臨の仕方が独特過ぎるだろう。
―あ、ロードさん御早う御座います。―
「えぇ、御早う御座います皆さん。御免なさい一寸出遅れたかしら。」
「そんな事ないよローちゃん!皆集まってた丈だからね。」
ニコニコと彼女は当たり前の顔をして此方へ加わった。
僅かにセレは手の甲が逆立つのを自覚したが、そっと抑える。
前油断し切った所に大ダメージを喰らったので、流石に躯が覚えてしまったのだろう。でも此処は抑えないと。
ロードは仲間なんだから・・・な?其の暴力を仲間に故意に振るう事は決してない。彼女は無自覚に襲って来る丈なんだ。
・・・おかしいな、全く甲が収まってくれないぞ。
―皆さんの御話をローズ様から伺っていました。本当に沢山の所を旅して来られたのですね。―
「然うだね・・・。うん、ロー君とは凄い遠い所迄一杯行って来たよ。でもセレちゃん達と一緒になってからは激しくなったね。」
「むぅ、激しくとは如何言う意味なのだ。」
一寸むっとしたハリーを見遣って小さく彼女は笑った。
「だって仕事とか今迄のと全然違うし、同じ一日や次元でも密度が全然違うよ。」
―うん、此方の方が充実はしてるね。―
二柱の話を聞いて小さくハリーは鼻を鳴らす。一応納得はしてくれたらしい。
―はい、仕事と言うのも新鮮でしたね。抑まさか外がそんな事になっていたとは気付きませんでした。―
「凄く平和な事よ。前の神獣は凄い力を持っていたのね。予言は当たっていたのよ。」
此の次元は正に平和其の物で、黔日夢の次元を知らなかったのだ。
外に出ないのだから当然だが、平和であり続ける次元と言うのは可也珍しい。
セレも此の次元には来なかったのだろう。入り方も独特だし、全く干渉を受けなかったのだ。
―でも次元を護るって何かかっこいい!ヒーローみたい!―
―御兄ちゃんも井戸直してくれたし、皆そんな事してるんだ。―
店の話は子供達に好評だった様で、嬉しそうに彼や是や話し合っていた。話題の少ない彼等にとって非常に刺激的な話だったのだろう。
―ですから・・・矢張りその、ローズ様は又此の国を出られるんですよね?―
上目遣いにアイルはローズを見遣った。思わず彼は鼻先を上げる。
―あ、えっと御免、然うだね。残る事は・・・その、考えていなかったから。―
全く思ってもなかったけれども然うか。此処に居た古獣達からしたら厳しい旅から故郷へ帰って来た風に見えるのだろう。残ると思われていても不思議ではない。
ドレミ達もはっとした様に背が伸びた。誰もローズが此処に残る事は考えていなかったのだ。
一同のそんな様子からアイルは一つ頷く。
―然うですね、はい。皆さんの一員になれて古獣として嬉しく思いますわ。又此処へは遊びに来てくれたら良いですから。―
―うん。でも然う言えば僕は神獣、でしょう?残らなくても本当に大丈夫なのかな。―
王の鎧に成れた訳じゃないけれども、今此処は神獣、王は居ないのだし、陽も昇っていない儘だ。困ってはいるだろうけど。
―其は・・・大丈夫ですよ。昨日は彼の様に話しましたがローズ様、神獣だからと使命に縛られないでください。今の貴方は本当に素晴しい事をしています。古獣の誰もして来なかった事を。―
ちらとアイルは傍で控えていた子供達を見遣った。皆目が合うと小さく尾を振っている。
―然う、だから今は貴方のしたい事をすれば良いと思います。一緒に此方に棲んでくれたら楽しいだろうなと思った私の我儘と言う丈ですから。勿論何時遊びに来て良いですし、此処が貴方の故郷である事に変わりはありません。―
―そっか。・・・うん、有難うねアイル。―
肩の荷が降りた様にローズは息を付いた。すると透かさず子供達が寄って来る。
―ねー話し終わった?僕先の続き聞きたい。―
―私も、又行っちゃうならもっと聞きたい!―
「す、凄い・・・か、可愛いな。皆こんなに懐いているなんて。」
―はい、可愛いですね。でも跳び込んじゃあ駄目ですよ。―
透かさずL⊝ ▼▲/がセレの頸に巻き付き、まるで手綱の様に彼女を制する。
直ぐセレもL⊝ ▼▲/の背を掴む様に撫でた。
あ、危ない、理性が飛ぶ所だった・・・。
モフモフの力は偉大過ぎる、自分はしっかりぐっすり熟睡してしまったが、あんな眠れる事なんて普通はない。
夢の一つも無い完璧な睡眠だ。凄く躯が軽く感じるが、此がモフモフ効果なのだろう。
ガルダのくれたファフー縫い包みも素晴らしい一品だが、生きているモフモフは又別の良さがあるな、うん。
其にしてもモフモフへモフモフが集まる光景は見ていて癒されるものがある。本当に良い次元だ。
―うん皆良いかな?もう少し付き合っても。―
「勿論だ!私は一向に構わないぞ!」
―相変わらず俺達の事になると此の姉ちゃんは元気だな・・・。―
当然じゃないか、其の為に此処へ来たのだから。
「もうセレちゃんったら。でも然うだね。ドレミ達も色んな所行ってるし、御喋り大会で良いと思うよ。」
誰も異論なんてない。其の儘朝食を兼ねてのパーティが開かれる事になった。
子供達が次々果物を持って来てくれる。昨日とは違う碧樹から採って来てくれたらしく、今日は果物と言うより穀物に近い物が多い。
神殿で食べる事に気後れする者も居たが、神獣であるローズが良いなら構わないだろうとアイルに言われ、広々と使わせて貰う。
―・・・只話す丈もなんだし、ねセレ。セレはテレパシー得意だし、イメージを皆に流したり出来ないかな。―
「ん、んん、まぁ出来ると思うぞ。」
ざっと見たら数が多いが、子供達のキラキラした目を見てしまっては断れる訳がない。プロジェクターとしての務めを果たそう。
「うむ、だったら我も手伝うのだ。出来そうな所は幻で創り出すのだ。」
何だか楽しそうな事が起こる予感に子供達は俄に燥ぎ始める。
か、可愛い・・・だ、駄目だ。テレパシーをちゃんと送らないといけないんだから流されちゃあ。
「結構本格的だね。セレちゃん頑張って!」
「噫任せろ!」
きゅっと頸巻きのL⊝ ▼▲/を抱き締めてセレは意識を集中させるのだった。
・・・・・
―御姉ちゃん動かなくなっちゃった・・・。―
―壊れちゃったのかな。起きてよー。―
古獣の子供達に囲まれた中でセレは床に倒れ伏してしまっている。
時々思い出した様に指先が震えているが、僅かに呻くのみで起き上がる様子はない。
―ご、御免ねセレ、張り切り過ぎちゃったみたいで。―
「ぬをー!セレ、早く元気になるのだ!」
ハリーは彼女を起こそうとしているのだろうが、思う様に手が動かない。
謎の舞の様な手付きを披露してしまい、周りの子達も見様見真似で前足を動かし始めた。
・・・一見セレを犠牲にした危険な儀式の始まりである。
「まさかオーバーヒートするなんて思わなかったね。」
ケルディがローズの鬣から顔を覗かせる。一つ頷いてローズは耳を下げた。
セレのイメージは完璧だった。思い描いた其の儘を皆に伝えてくれて。
例えば瀛海なら潮の香が、街なら窓の一つ一つの明かり迄、精巧に再現されていたのだ。
其はハリーの幻と合わさって現実感を失う程だ。
余りの光景に、話している筈のローズですら目を奪われる程だった。
そんな幻を小一時間に渡り創り続けたのである。彼女の疲労はピークに達し、遂に倒れてしまったのだ。
干渉力の使い過ぎだろうが、大丈夫だろうか。元気になるだろうか。
―セレ、何でこんな無理したんや・・・。凄かったけども。―
「うん、ドレミも前何度かセレちゃんに此して貰った事あるけど、矢っ張り凄いね。でもモフモフの為にやり過ぎちゃったんだね。」
呆れるのは簡単だけれども、セレも子供達の為に頑張りたかったのだろう。
あんなにモフモフで癒して貰ったし、其の分御返しをしてあげたかったんだ。
何方かと言うとやり過ぎちゃう所が彼女らしいとも言えるだろうか。
でも其の御蔭で子供達には大好評だった。皆飛んだり跳ねたりと元気一杯だ。
自分もローズの話に合いの手を入れたりはしたけれども・・・うん、本当に懐かしい。
こんな事もあったなと次々記憶が呼び起こされる。流石にローズの話は辛かったり悲しかった所は省かれていたが、其でも十分語り切れない程の懐い出だ。
そんな記憶の旅に、アイルもすっかり心奪われた様で、暫く惚けてしまっていた。
そして慌てて首を振ると気遣う様にセレの方を見遣る。
―済みません、セレ様はその、大丈夫でしょうか・・・。―
「う・・・大丈夫、一寸反動が来た丈、だから。休んだら直ぐに・・・、」
長く息を付いてセレは起き上がった。干渉力の使い過ぎは危険だな。まさか倒れるとは思っていなかったのだ。
若しかしたら自分の存在の所を少し喰ってしまったかも知れない。旻だとかを想像し過ぎて自分が其の物に成り掛けた感覚があったのだ。
―其は流石に使い過ぎだ。―
返す言葉もありません・・・。
此は一種の緩やかな自殺にも近い。本当に旻と一つに成る前に戻って来れて良かった。
ちゃんと自分を知覚すれば大した事はない、もう大丈夫だ。力の使い過ぎと言っても一時的な部分だし、消耗自体は大してしていないのだ。
起き上がったセレに古獣達は頭を摺り寄せたりと甘えて来る。
途端理性が大きく動いた。・・・おぉ、此の緩急は苦しいぞ。
―姉ちゃん大丈夫か?此処の所倒れてばっかりだが。―
「噫干渉力を一寸使い過ぎた丈だから、もう全快だ。」
「うむ、流石セレなのだ!元気になって良かったのだ!」
―本当に素晴しい物を見せて貰いました。皆さん有難う御座います。―
―御兄ちゃんの幻も凄かったよ。初めて見たの。―
―瀛海綺麗だった!あんなに水があるの初めて見たよ!―
子供達はハリーにも懐いた様で何の子も頭を摺り寄せたりと賑わっている。
褒められて悪い気はしないのだろう。何処か誇らしそうに彼は鼻を鳴らした。
胸を反らそうとしたかも知れないが、上手く行かずに背伸びをする様な体勢になってしまう。
―私が見た事のない所も幾つかありましたし、然う言う所、又行きたいですね。―
「うん、楽しそうな所とか未だ一杯あるよ!」
子供達の群の中にひょっこりとケルディが混ざっていた。
彼程黔い毛の子は然う居ないので見分けは付くが、ちゃっかり入り込んでいる。
―・・・・・。―
本当に色んな懐い出があったとついローズは振り返る。
未だ話し足りない位、本当に世界は広いんだ。
でも、此処に居る仲間達は・・・、
自分が見慣れたと思っていた蒼旻一つでも彼等は喜んでいた。
視界一杯の草原も、華畠も蕭森も、全て目新しく写ったのだ。
其は此の世界が平和其の物で、何も変わっていないからだと思った。
景色を変えるは靄の動きのみ、此処には陽すら無いのだから。
色んな所を旅したローズからしたら、此の国は一日で見切れてしまう規模だった。
だから矢張りずっとは飽きてしまうだろう。数日も居たら外へ行きたくなってしまうに違いない。
然う思うとローズは何処か此処の者達が哀れに見えてしまうのだ。
平和だろうけれども変化も何も無い世界、外を知らなかったら其で良かったのかも知れない。でも、
でも自分は、皆に見せてしまった。其の景色、此の世界が如何に小さいかを。
だったらせめて見せてあげたいと思ったんだ。
仄かにローズの躯が光り始める。
陽を、昊焼けを、夕陽を、其に彩られた世界を。
然う、自分が夢に見た彼の昊陽の様に。
薄く目を閉じると見えて来る。懐いを馳せると昊陽の昇る様が。
此の神殿の切込みから差し込む陽を。其が落とす影を、其の匂を。
「・・・?あれ、ロー君?」
思わず呼び掛け、其の背へ手を伸ばし掛けたがドレミはそっと下げた。
何かが起きている。でも此は、
ローズの中心から輝く曦は徐々に彼を包み込み、全身へと波打つ様に広がって行く。
そして其の廻瀾が駆け巡る度に一段、一段と彼の姿は変わって行った。
躯はどんどん大きくなり、曦の弾ける四肢の先や尾に銀の煌めきが残る。
―・・・ローズ、様、―
もう彼は見上げる程に大きくなっていた。そして鬣が一層豊かになり、背から伸びて頸周りを一巡する。
長く棚引く鬣の尾は紐の様な物で編まれ、先に結わえられた瓊が煌めいた。
金属の輪が四肢に掛かる。頸周りの鬣の先にも瓊が結わえられて輝いた。
曦の廻瀾が緩りと落ち着く。でも彼は輝いた儘で。
薫風に吹かれて翻る輝石は色を変えて行った。
然う、曦は失われてはいなかった。彼が輝き続けるのは光源が変わったからで。
其は遥か先の地平、其処から強い曦が漏れて来たのだ。
姿が変わり切って緩りとローズは目を開けた。
途端に眩しい曦が飛び込んで来る。切込みの隙間から彼ははっきりと見えたのだ。
―・・・昊陽だ。―
アイル達も初めて別の輝きに気付いたらしく、慌てて視線を合わせる。
其処には幻なんかではない陽が輝いていた。
―彼が・・・陽だと言うのですか。―
子供達も黙って見詰めてしまう。皆が見詰める中、陽は緩やかに旻へ掛かって行った。
皆言葉を失った儘見詰めていたが、暫くして瞬き、意識を此方へと戻して行く。
そして改めてまじまじとローズを見遣った。
「・・・って、あのロー君、だよね?」
―うん、すっごく視点高くなっちゃったけど・・・。―
「あぁあぁああっ‼こ、此ぞ正に、王のモフモフ!凄いぞローズ!あったんだ!金のモフモフは本当にあったんだ!」
セレの雄叫びについ皆びくついてしまう。
もう飛び込みたいと許りに彼女は全身で喜びを表現していた。一柱で万歳を繰り返している。
―えっと・・・じゃあモフってて良いよ。―
「⁉有難うローズ、否ローズ様!」
パッと背を伸ばすと彼女は目の前で振られていた尾に飛び付いた。
尾は苦手だけれども、此で彼女が大人しくなるなら安い物だ。
「おぉおおおおぉお⁉す、凄、凄過ぎる!此が!此の手触りが王の⁉あ、あぁ、何時もの野性的なモフモフと違って此は、此の高級感、手を擦り抜ける心地良さに、しっとりと残る温かさ。然うか!此が陽光か!私が浴びる事が出来ない陽がこんな形に凝縮されて‼」
う、煩い。
如何しよう、想像以上に煩くなっちゃった。凄い勢いでボルテージが上昇している気がする。
―・・・あ、フリーズしました。―
セレの頸元を離れ、彼女を観察していたL⊝ ▼▲/だが、ぴたりと彼女が動かなくなったのを確認する。
多分又オーバーヒートしたのだろう。余りのモフモフに脳の回路が焼き切れてしまったらしい。
こんなあっさり無防備になるとは、とことん彼女はモフモフに弱いらしい。
一応しっかりローズの尾に抱き付いた儘だが・・・まぁ放っていたら何れ動き出すだろう。
―えっと、まぁ然うだね。此が王の鎧なのかな。―
「で、でも如何して急にぃ、吃驚しましたよぅ。」
「然う、ですわね。魔力も桁違いですし、王の名に相違ない姿だとは思いますけど。」
皆中々事態を呑み込めずに焦るが、間違いはないだろう。
此が古獣の王、神獣の姿なのだ。
―その、僕も良く分かってないけど、色々話をしてたら昊陽を皆に見せてあげたいなって思って。―
―へぇ、俺達が集まって変身するのとは訳が違ぇな。立派な物だ。―
「昊陽って、其丈で変身出来ちゃったの?」
「自覚を持った事が鍵だったのかも知れないわね。其の願いとリンクして屹度真の姿を得られたのよ。」
―王として、私達の為に何かしたいと懐った事も屹度大事な事だったんですわ。―
古獣達はすっかりローズの姿に魅入っていた。彼等にとっての王なら又違った見え方がしているのかも知れない。
気付けば神殿の入口も又昨日と同じ様に古獣達が集まっていた。皆息を詰めて王の姿を焼き付ける様に見詰めている。
―ローズ様、何と神々しい姿か。有難う御座います。再び此の国を甦らせてくれて。―
―うん、御兄ちゃん本当に凄いや。王様だ。―
殊更彼等には王の姿が眩しく見えるのか、気後れする様に一歩下がる。
そんな中ローズは目を瞬いてくるりとそんな彼等を見遣った。
―そんな皆畏まらないでよ。うん、でも良かった。本当に綺麗だね。彼を僕は見せたかったんだ。―
陽の曦が差し込み、神殿は様相を変えて行った。
橙の壁を照り付け、其迄と違う強い輝きに輝石も生きている様に曦を映す。
まるで神殿其の物が生きているみたいだった。色付き、息を吹き返して行く。
―ローズ様の姿も、良く映えていますわ。―
アイルを含め、古獣達は陽を背景にしてローズを見詰めていた。
陽が神殿の切込みを差し、其の影がローズの鬣に写ると、金に煌めいて見えるのだ。
此の景色を、目に焼き付ける様に。
もう一度丈ローズも陽を見詰め、緩りと目を閉じた。
すると其の背は段々と低くなり、瓊や輪は朽ちてなくなってしまう。
あっと言う間に元のローズの姿に戻ってしまった。其の尾に未だセレは抱き付いている。
―・・・ふぅ、一寸疲れちゃった。矢っ張り力を使うんだね。感覚は掴めたけど、もっと練習しないと。―
「っ⁉ロ、ローズ⁉え、あ、何で、王は如何し・・・っ、いや、此のモフモフも又、おぉ・・・。」
―・・・一寸セレさんは離した方が良いですね。―
L⊝ ▼▲/はセレの頸に巻き付くと、強引に引っ張りだした。
中々恐い絵面である。流石にセレも其には逆らえなかったらしく、大人しくローズから離れた。
「王の鎧は疲れちゃうから今回は終わりだよセレちゃん。」
「え、然うだったのか。其は済まなかったなローズ。大丈夫、今はもう大丈夫だ。」
ギュッとセレは代わりにL⊝ ▼▲/を抱き締めた。何とか理性は取り戻せた様だ。
―・・・ではもう行かれるのですねローズ様。―
振り返るとアイルがじっとローズを見詰め返していた。
変わらずじっと、優しい色の浮かぶ澄んだ蒼で。
―うん然うだね。勿論帰って来るよ。皆の顔見たいし。―
―御兄ちゃん、絶対又来てくれよ!御姉ちゃん達も、次はもっと遊んでよ。―
―然うだよ。次は駆けっ子とか、木の実集めとか、もっと色々したい!―
―又外出るなら旅の事とか、教えてよ。―
子供達がわっと集まって来る。此はセレでなくても可愛さに胸打たれる事だろう。
―然うやけど・・・陽ってもう彼で一応大丈夫なん?ローズ先輩居なくなったら又昇らなくなったりとか。―
―前の神獣様の時も陽は長い間残りましたし、屹度少し離れた位なら大丈夫だと思いますよ。―
―うん、又何かあったらテレパシーでも言ってくれたら直ぐ行くよ。―
子供達とも沢山約束を交わし、一同は帰路に着く事になった。
御土産と許りに沢山の木の実も貰って、多くの古獣が付き添ってくれる。
―其じゃあ皆有難うね。又帰って来るから!―
―はい、私達は皆さんの事、何時でも歓迎しますよ。では御気をつけて。旅を楽しんで来てください。―
小さくアイルが尾を振ると、古獣達も揃って真似をする。恐らく其が古獣の挨拶の様な物なのだろう。
昇り立ての陽に照らされた其の背は皆一様に橙に染められていた。
再び古獣達の国は安寧の時代を陽と共に迎えたのだった。
・・・・・
獣の楽園に曦差す
彩られる景色よ、皆橙に染まり
我等古の獣は王の子よ、見よ陽の下で我等は違える事も無き
金の鬣は陽の元への道標
銀の輪は曦を照らし、島の全てを包むだろう
王の姿は陽光の中に、此は古から続く獣の詠
今回の粗筋 ローズ君覚醒!
と言う事でいかがだったでしょうか。案外あっさり進化しましたね、へへ。
今後は此方も登場させるでしょうが、如何なる事やら、楽しみですね。
一応次回の話も書いてはいますが・・・若しかしたら今年中に間に合いそうですね。意外にハイペース!
結構手探りな、でも真に迫って来たストーリーが続くので筆者が一番わっくわくし乍ら書いております。斯う言う愉しみ、良いなぁ。
今回は一寸久々に面白いタイプの誤字が出たので御一つ丈紹介。
?期
此、何て読むか分かりますか?まさかのある単語の第一変換で此が出て当分自分も元の言葉が分かりませんでした。
変換ミスな訳ですが、何と此、『果てなき』です。あ、成程と分かった時は凄く納得しました。
一応『?』を入力する時は態々『はてな』なんて入力して変換なんて手間していませんが、何故か斯うなりました。
此のパソコン形の新しいセンスかも知れませんね。
と言う事で今回は此処迄!次回も御縁がありましたら御会いしましょう!




