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次元龍屋  作者: -Sare-
忘れられた世界の追憶
78/140

54次元 絳の饗宴に誘う笛の音轟く次元

※今回はR18に相当する反社会的な表現が含まれております。苦手な方は呉々も御注意下さい。




 今日は、先ずは一言。


 中学時代の私よ!遂に貴様が描きたかった世界が書けたぞ!


 如何しても此の事を報告したかった、書けたよ、私やっと此処迄書き切ったよ・・・。

 そんな今回は非常に私筆者の思い入れの深い御話。

 すっごく短いです、だから其の分詰め込みました・・・己の性癖を。

 だからとってもドキドキしています、可也はっちゃけたなぁと思う許り。

 けれども矢っ張り迚も晴れやかな気持で・・・ずっと此の話が書きたかったんです。

 因みに上で警告していますが、正直此処迄読んでいる方がいれば、何の事はありません。

 えぇ、全く。言う程グロくも蘞くもないです。

 只、今迄の感じと大分変わったなぁ・・・と思ったので一応注意付けました。恐らく可也特殊性癖に寄って来たので。

 人道的には結構厳しいですしね。私は斯う言うシチュエーション大好きですが、世間的には如何かな・・・?

 さぁ前置きは此の位にして、サクッと本編参りましょうか!うひょー!

噫欲しい其の果実を

寄越せ、喉が渇いて仕方が無いんだ

其の甘くて芳醇な馨を放つ果実を

噫其処にあるじゃないか、さぁ御手を

・・・何をしている、御前の事だよ

   ・・・・・

「キョキョ、キョキョキョ。」

「・・・・・。」

「キョキョ・・・キョキョッ。」

「分かった、直ぐ行こう。」

短いやり取りが続いてセレは電話を切った。

「ん・・・セレ、如何だったんだ?」

店に珍しく来た電話。

 昼食をセレとガルダ、二柱で食べ終えて直ぐ掛かったのだ。

 皿を片付けていると、急にセレは振り返り、ビシッとガルダを指差した。

「ガルダ、一緒に次元に行こう。」

「う、うん良いけど。」

誘ってくれるのは嬉しい。是非とも同行しよう。

「何とも珍しい、何と仕事の電話だ。(ツヨ)い神が欲しいそうだ。・・・多分な。」

「た、多分?」

二柱で片付け乍ら、準備をして行く。

 セレに二柱丈って誘われるのは、一寸(チョット)珍しい。

「鳥語だったからはっきりしないがな。取り敢えず行ってみよう。」

「鳥語って、鳴き声の事か?」

「噫、少し変わっていたがな。ソルが居れば分かっただろうが、気持は伝わる、屹度然うだ。」

「ふ、ふーん・・・凄い行き当たりばったりな生き方してるなぁ。」

「何を言うんだ、ガルダ。相手はモフモフだ間違いない。私を必要としてくれるのなら、其を生き甲斐に頑張ろう。」

モフモフが彼女の生きる原動力になっている・・・。

 良いけれども。俺としては理由が何であれ、其の言葉は嬉しいんだけれども。

 モフモフな敵が出たら・・・一体彼女は如何するのか気になる所はある。

「良し、と。片付けは済んだな。まぁ取り敢えず行こうかセレ。」

頷く彼女に誘われて、俺達は扉を開けたのだった。

   ・・・・・

「ん・・・あ、あれ、街に着いたな。」

着いた次元は街中、真っ只中だった。

 石畳が続いており、所狭しと家が並んでいる。

 少し六花(ユキ)を被っている家々が見られる辺り、少し此処は寒い。

 通りも薄暗く、近くの街頭に明かりが灯っていた。

 人通りは無いが、家々に明かりは付いているので、住人は居るのだろう。

「鳥って聞いてたからてっきり蕭森(モリ)とかかと思ったけれどな。」

「噫、私もだ。家に居るのは・・・人間みたいだな。」

明らかに彼女が気落ちしている気がしたのでそっと肩を叩いた。

 モフモフに会えると思ったら街だし、寒いしでテンションが上がらないのだろう。

「じゃあ次元の主導者(コマンダー)も人間なのか?」

気配はする、結構近い。

 感じからして近くの建物だ。

 家・・・と言うより何かの施設っぽいけど。

「然う・・・だな、一人の男だ。モフモフは、モフモフは一体何処なんだ・・・。」

「キョキョッ!」

何処からか響いた甲高い声に思わず耳が動く。

 此は・・・紛れもなくモフモフの声だ。

 波紋をより密に広げると、近くの家の屋根で動く物があった。

 見遣ると・・・小さな褐色の鳥が此方を見詰めていたのだ。

「キョッ、」

「若しかして・・・此の鳥が依頼主か?セレ、」

「電話の声は一緒だな。」

一体鳥が如何やって電話したのだろうか。

 然う思っていると鳥は飛び立ってセレの前で羽搏(ハバタ)いた。

 そっと手を出すと、其処へ垂直に留まる。

「っはわわわわっ‼」

「セ、セレ落ち着くんだ!」

モフモフにすっかり心奪われてしまっている。

 此の様子だと、只の野鳥ではないのだろうが一体、

 其の鳥は全身(クロ)っぽい褐色で、畳まれた翼の先や尾に(シロ)斑模様(マダラモヨウ)があった。

 腕に対して垂直に留まっているが、変わった留まり方に思う。

「キョ、キョッキョッ。」

「・・・・・。」

何か言っている・・・気はするけど。

 いや無理だって!キョキョ鳴いてる丈だもん!

 セレもモフるのは取り敢えず止め、じっと聞いていた。だが直ぐには口を開かない。

―・・・あ、失礼しました。此方なら分かりますか?―

突然のテレパシーに思わず腕を動かしそうになったが、何とか堪えた。

「あ、噫、分かる、御前が依頼主か?」

動揺しつつも応えると、鳥は一声鳴いた。

 何とこんな愛らしい鳥とは・・・素敵な依頼になりそうだ。

「分かった。先は失礼したな。私はセレ・ハクリュー、此方はガルダリューだ。次元龍屋から来たんだが。」

―良かった、御早い到着、感謝します。私は見ての通り夜鷹の神、今は此の次元に御世話になっているのです。最近は可也寒いですが・・・良い街なんですよ。―

鳥の神も勿論いるのだが、()うして出会うのは珍しいな。

 確かに寒そうに翼を寄せていたので、そっと手で風除けを作る。

「そんな寒いなら他次元に行けば良いじゃないか。如何して依頼なんて、」

夜鷹と言う鳥を自分は余り知らないが、見ていて寒そうだ。

 モフモフが凍えるのは忍びない、如何にかしないと。

―大丈夫です、未だ此の位なら。此処には、私の友が居るのです。彼を助けて欲しくて御願いをしたのです。―

言うや否や夜鷹は翼を広げて飛び立った。

 幽風(カゼ)を受け乍らも飛ぶ先は次元の主導者(コマンダー)の居る建物だった。

 其処の向かいに小さな雑木林がある。夜鷹は其処へ向かったのだ。

「向こうに次元の主導者(コマンダー)が居るな。」

例の建物を見るが他の家とは造りが違う。

 何と言うか、開放的だ。扉は開いており、中で何やら書き物をしているのが見える。

 歳は二十台位の青年で、黒っぽい肌に蒼の瞳、短い同じ蒼の髪は清涼感がある。

 身形も何処かしっかりしていると言うか、何時でも外へ行ける様な外套を着ている。

 更に良く見ると・・・拳銃をホルダーに入れている様だ。彼は一体・・・。

「然うだな、え、じゃあ次元の主導者(コマンダー)と友達なのか?」

―友と言うよりは恩があると言いましょうか。―

夜鷹はじっと彼を見詰めていたが、其の瞳は何処か優しい色をしていた。

―彼は私が弱っていた時に助けてくれて・・・今でも、食べ物とかを分けてくれるんですよ。迚も、良い方です。―

 恐らく此の夜鷹が此の次元を去らないのは彼奴の為だろうか。近くに・・・居たいのだ。

次元の主導者(コマンダー)を助けるのは私達も願っても居ない事だから勿論するが、一体何なんだ?」

都合が良い、だから店に電話が掛かったのか。依頼内容とマッチしたんだな。

―如何やら最近、此の街で殺人鬼が・・・出ているそうなんです。―

殺人鬼・・・急に不穏な話になって来た。

―私は直接見ていませんが、噂にはなっています。毎日、(ヨル)出歩いた四、五人程殺されている然うで。―

「う゛、又(ヨル)の殺人鬼かぁ・・・。」

(ヨギ)る神が一柱居る。あろう事か身内である。

―又、と言う事は流石です。もう手慣れた物ですか。―

「・・・いやぁ正直、(アレ)はもう御中一杯だけれども。」

「一応私の専門みたいな物だ。其なら力になれそうだな。」

―其は良かったです。如何にか二柱には其の事件を解決して欲しいのですよ。―

「ま、然うなるよな。」

飃の時みたいに一寸(チョット)ややこしくないと良いけど。

次元の主導者(コマンダー)がふらっと外出てやられても困るしな。分かった、如何にかしよう。」

殺人鬼相手の案件でも快諾なんて。

 ()う言う違いは流石だなぁ、俺も怯んでいられない。

―えぇ、何故だか彼、良く(ヨル)に出るんですよ。縄張の確認でしょうか。御蔭で心配で。―

(ヨル)は危険なのにか?其の殺人は続いているんだろう?」

―はい、何故だか街を一周して見て回ってるみたいで、だから如何にも気になって。―

見て回っている・・・?

 実は次元の主導者(コマンダー)が殺人鬼でしたぁなんてパターンは御免だぞ。明らかに面倒そうだ。

 でも仕事に行くとかなら普通に・・・ん、仕事、なのか?

―此の前も腕を怪我したとかで、殺人鬼に襲われたみたいなんです。其なのに懲りずに続けて、私は心配で、―

「若しかして次元の主導者(コマンダー)って警官とかなのかな。」

「ん、成程、市民の為に、か。いやはや立派だな。」

彼の服装からは然う見えなくもない。

 前世では汚職(マミ)れで酷い所だった。結構ドンパチしていた所だが、さて此方は如何かな。

―警官、とは何ですか?―

「噫えっと・・街の人とか護る為に、パトロールとかする人だな。」

―成程!だったら納得です。―

「其でも一人で在中しているのは余り宜しい事じゃあないがな。」

前世では二人ペアが常識だったが、此方は又勝手が違うのだろう。

 一度襲われて助かっているのは不幸中の幸いだ。只確かに二度目はないだろう。

 彼のパトロールを止めるのも難しいし、殺人鬼の方を如何にかする方が早そうだ。

「じゃあ其の殺人鬼に付いて、何か情報を知らないか?」

次元の主導者(コマンダー)は詳しいだろうが、警官なら猶更見ず知らずの自分達に話さないだろう。

 (ムシ)ろ、こんな時分に会えば疑われ兼ねない。接触は避けた方が良いだろう。

―そ、其が・・・済みません。私も現場は見ていなくて、其に人間の文化だとかも(ウト)い物で、はっきりしないのです。―

「ん・・・然うか。情報が無いなら取り敢えず今回は見て回るか。数日は様子を見た方が良いだろう。」

「然うだな。ま、やばそうな奴見付けたら連絡したら良いだろ。」

―御願いします。あ、良かったら仮の住居(スマイ)は此方を使ってください。―

言いつつ夜鷹は又飛び立ってしまう。

 仮の住居(スマイ)って何だ。鳥の案内なので気になる所だが付いて行こう。

 其処は雑木林の少し奥まった所、木々で隠れていたが、大分古惚けた小屋が三軒程建っていた。

「此は・・・大分年季が入っているな。」

立派な所は想像していなかったが、随分な荒屋を提供されてしまった。

 まぁ野宿よりはずっとましか。其にしても此の家、

「・・・何だか、前世の家に似ているな。」

「あ、セレも思ったんだな。俺も。何か懐かしいな。」

つい感傷に浸りそうになる。まぁ其なら悪くないかな。

―此の家は長い事誰も使っていません。数日位なら大丈夫かと。―

「噫有難う、使わせて貰おう。」

軋む扉を開けて中を覗いてみる。

 中は埃っぽいが、木箱や藁が納められていた。

 此、完全に納屋だな。まぁ其の位の違いは如何でも良いだろう。

 一応、寝泊まりは出来そうだ。

―でも本当に来てくれて助かりました。やってみたら出来る物ですね。―

夜鷹は羽搏(ハバタ)き、今度はセレの肩に留まった。

 モ、モフモフが、直ぐ其処にあるっ、

 そっと・・・慎重に手を伸ばしてみる。此の角度、難しいが撫でられなくはない。

「?・・・あ、然う言えば電話して来たんだよな?一体如何したんだ?」

―電話、若しかして(アレ)ですよね?彼が居ない時に試してみたんです。何時も中から声が聞こえて来ましたから、若しやと思いまして。―

「噫其で思いがあったから店迄繋がったのか。」

彼って事は警官の所の電話を使ったんだろうけれど、夜鷹が受話器をひっくり返して電話しているのを想像すると中々愛らしかった。

 次元の主導者(コマンダー)を救いたい一心だったんだろう、何て健気(ケナゲ)なんだ。

「っあ・・・す、凄い、ツヤモフだ!表面は艶々しているが、内側がモフってる、流石羽毛だ、此のギャップ、堪らん!」

「お、おぉう、今日も果敢にチャレンジャーだなセレ。」

野鳥なんだが、セレは夜鷹の背を撫でていた。

 夜鷹も大人しくしている、何て良い子!

―・・・噂で聞いたんですが、此が報酬になるとか。―

「噫勿論だ、私は十分満足だぞ。」

一寸(チョット)其の噂の出所を怪しんだ方が良いけどな。」

まぁセレが嬉しいなら其で良いけれども。

 其の噂、絶対龍族とかが流しているんだろう。凄い安くセレが()き使われている気がする。

 現に今回だって、鳥に触らせてあげるので、殺人鬼如何にかしてくださいって事だろ?全然割に合っていない・・・。

「さ、モフモフを補充出来たぞ。私は何時でも大丈夫だ。」

「あ、もう見回り行くか。然うだな。」

情報が無いならまぁ足を動かすしかない。

「今街の人は事件でそんな出歩かないだろうし、飛んでもバレないと良いが。」

―恐らく大丈夫ですよ。私も良く(ヨル)飛びますが、人に会うのは稀です。―

「然うか、じゃあ遠慮は要らないな。」

「セレは(ヨル)に紛れるのに向いてるもんな。俺は目立つし、如何しようかな・・・。」

「ガルダも飛んで良いんじゃないか?でないと迚も街なんて見切れないぞ。其に若し人が居たら(ムシ)ろ尾行したら良い。良い餌になる。」

「囮かよ・・・結構其、リスクだけど。」

其で其の人が亡くなったら居た堪らない。滅茶苦茶後味が悪くなる。

「でも逆にガルダが出歩いて、出会い頭に首を刈られたりして死んだら、其の方が私は嫌だぞ。」

「噫・・・うん、心配してくれて有難う。」

心配と言うか何て言うか、でも然う言ってくれるのは嬉しいな。

「若し仮に然うなったら仇はきっちり取るから安心しろ。必ず犯人を見付けて、拷問に掛けて街の中心に晒してやる。」

「・・・う、うん、分かった。然うならない様にする。」

さらっと恐ろしい事を言われた。其は其で事件になるので止めて貰いたい。

 俺の為にしてくれていると思うんだけど、其見ても俺絶対喜ばないからな。

「まぁじゃあ俺も飛んで行くか。其の方が色々見て回れるし、何かあったら直ぐテレパシーな。」

「噫、(ツイ)でに怪しいスポットも探して目星を付けて置こう。」

二柱が話していると夜鷹はちらちらと見詰め乍ら聞いていた。

―如何やら、御任せして良いみたいですね。私は近くの碧樹()に棲んでいますので何かあったら呼んでください。では宜しく御願いします。―

「噫、モフモフに掛けて、事件を解決してみせよう。」

笑みを返すセレの背には、闇に溶ける八翼の翼が大きく広げられている。

 夜鷹が飛び立つのと同時に二柱も地を蹴る。

 静まり返った街に(シロ)(クロ)、二種の翼が舞い上がるのだった。

   ・・・・・

「っま、待て、止めてくれ!」

一人の男が息を切らせて路地を走っていた。

 足を前へ前へ動かすも、如何も背後が気になって仕方がない。

「くそっ、くそくそくそっ!何なんだよ(アレ)!」

悪態を()き、男は路地の壁に隠れた。

 こんなつもりじゃあなかったのに・・・引き時を間違えた。

 あんなのが居るって聞いていれば俺は、

 足音が・・・近付いて来てやがる。ばれているのか其とも・・・。

 反撃、してみるか?手にはナイフがあるが・・・。

 手元の使い慣れたナイフがこんなんにも頼りないと思ったのは初めてだ。

 ・・・駄目だ、こんな小さな刃じゃあ傷を付けるのがやっとだ。

 (ソモソモ)・・・(アレ)の急所は何処だ?

 考えたって分からない、だってあんなもんを見た事が無かったから。

 逃げる・・・しかない、其しか生き延びる道はっ!

 こんな所で殺されて堪るか、俺は未だ渇いているんだ。

 だから来るな、もう付いて来るな、狙うな、俺を、

 少し休んだ御蔭で足は未だ動かせる。

 走れ、走れっ此の先の路地は迷い易い筈。

 彼処の中庭を経由して行けば・・・行けるだろ、撒ける筈っ、

 考えを(マト)めて走り出す。

 未だ足音とは距離がある。悠長に歩いているんだ、此なら、

 もう後ろを見るのは止めた。息を整えて、只走る。

 ()の角を曲がって、そして・・・、

 畜生、俺は・・・何を考えている、何で逃げているんだ。

 本来なら今頃・・・、

 くそ、あんな物の所為ですっかり予定が御釈迦だ。

 (ユル)さない、何時か此の借りは返さねぇと。

 こんなナイフじゃなくて、(ノコギリ)だ。然うだ、(アレ)をぶった斬ってやる。

 其だったらあんなに()があっても問題ないだろ、全部落とせば・・・、

 其処で男の思考は止まる。

 其の・・・落としたかった首が・・・腹部から、生えていたのだ。

 つまり其は、其の意味する事は、

「あ・・・あ・・・っぐ・・・う、」

痛みが全身を駆け抜ける。感じた事の無い、絶望と言う痛みが、

「っ喰うな、俺の躯をっ・・・、」

男が声を荒げようとした途端、其の頸に何かが巻き付き、締め上げる。

 そして腹部に生えた首は・・・俺の内臓を、

 ぐちゃぐちゃと、音を立てて、

 止めろ、止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろっ‼

 俺を喰うな、俺の躯を返せ、俺の存在を奪うなっ!

 御前なんかにこんな・・・何も出来ずに、

 あ・・・あ、く、来る、来てしまう、此処迄、

 嫌だ、頼む、御願いだから、

 俺を喰わな、

   ・・・・・

「お、御帰りセレ。」

「ガルダも、見回り御苦労だったな。」

明るくなり掛けの街の中、セレ達は納屋の前へ降り立った。

「私は別に、報告する事無かったな・・・平和其の物だ。」

一応何度かテレパシーでやり取りをしたが、特に目ぼしい物は無かった。

 怪しい奴も居なかったし、然う言う所は見付けたが(ドレ)も空振りで。

 此でしっかり殺されていたら凄いなぁ、自分の目を欺けたと言う事だ。

 一度次元の主導者(コマンダー)が見回りに出ていたが、ガルダが尾行していた。

 でも彼の顔色を見るに、矢っ張り向こうも何事もなかった様だ。

「俺も・・・そんな感じだなぁ。」

ガルダが小さく(アクビ)を咬み殺している。

徹霄(テツヤ)飛行は堪えただろう、しっかり休まないとな。

「・・・あ、でも然うだ。飛んでる時何か変わった匂がしたんだよな。」

「匂?そんな気になる物だったか?」

・・・覚えがないな。

「うん、何か甘い果実って言うか・・・うん、果実酒って感じの。結構濃い匂だったけど。」

「然うか。私は分からなかったな。其処には何かあったのか?」

「いや、何て言うか街の色んな所でしててさ。行っても何も無かったし、家からしてるとかでもなかったし、何か気になってさ。」

「ん・・・色んな所でか。其は一寸(チョット)気になるが。」

直接は・・・関係なさそうだな。

「でも其丈だな。昨日は事件無かったのかなぁ・・・其は其で良い事かも知れないけどさ。」

「其か先に気付かれたか、だな。・・・思ったより面倒になりそうだ。」

―あ、二柱共戻って来られましたか。―

納屋の上で夜鷹が留まっていた。相変わらずモフモフで良い。

「噫、残念乍ら情報はなかったが、」

()の人が無事なら良いですよ。頑張ってくださいね。―

「分かった。じゃあ(ヨル)迄仮眠を取ったりするか。ガルダ、先に休んで良いぞ。」

「先にって、セレは如何するんだ?」

昼間なら、何なら一緒に休んでも良いと思うけど。

 (ヨル)ずっと飛び回ったんだし、疲れているのは御互い様だろう。

「私はまぁ街へ一寸(チョット)買い出しに。御飯とか買って来るから休んでくれ。」

「い、いや俺も行くって!何か情報あるかも知れないしさ。」

危ない危ない・・・今の言葉にすっかり乗っちゃう所だった。

 確かに買い出しは大事だけど、こんな直ぐ動くとは思わなかったな。

 セレは元気だな。と言うより慣れなのかも知れないけど。

「あれ、でも買い物って、金あるのか?」

「ん、私の爪を売るよ。大体金になるし。」

「っお、俺の売るから!」

普通に身売りしてビビった・・・(シカ)も此の様子、何か慣れてるな。

「そんな焦らなくても。少し先を斬る丈だぞ?」

「俺のは直ぐ再生するし、セレのは一応血だろ。俺のは余ってるからさ。」

無理に彼女の手を引く。

 一寸(チョット)ずつでも()うして引っ張ってやらないと。

 セレは不思議そうに、でも黙って付いて来てくれるのだった。

   ・・・・・

「何か一寸(チョット)、面倒な話になって来たなぁ・・・。」

「噫、一体何の予兆だろうな。」

昼間をたっぷり使い、休憩と情報収集に努めたが、

 正直何とも言えない・・・街を見た時、事件は大きく形を変えていた様だ。

 夜鷹は鳥なのもあって情報が弱いと踏み、自分達で見て来た訳だが。

 実は昨日も、事件自体は起こっていた然うだ。

 と言うのも、其の(ドレ)もが行方不明。

 (ヨル)出歩いた者が次々と行方不明になってしまっているのだ。

 証拠一つも無く、丸毎人丈いなくなっていたのだ。

 此は一体如何言う事なのか、話を聞いて回ったが何とも釈然としない。

 其迄起きていたのは殺人(バカ)り、其がぴたりと止まって行方不明が多数出た。

 殺人鬼と同一犯・・・とは一寸(チョット)考え難い。其の消えた人が如何なったかだな。

 人を一人消すのでも結構大変だ。昨日丈で五人消えたそうだが、複数犯じゃないと流石に無理だよな。

 ()の道生きているかは怪しいか。其の行方不明が其々同一犯かも分からない。

 其に殺人と違って証拠がないからな、実は気付いていない丈でもっといるかも知れないのだ。

「うーん・・・全くそんな風に見えなかったのにな。しくじったな・・・。」

「でもガルダの御蔭で次元の主導者(コマンダー)は巻き込まれなかったのかも知れないし、其処は良かったと思うぞ。」

「然うかなぁ、でも俺達にも見付からず連れ去るとか、出来る物なのか?」

「可也、難しいとは思うがな。目的も分からないし、見た所手当たり次第って言うのも気になるな。」

誰でも良いから攫うって、そんな事あるか?

「考えるとしたら組織包みが、何かの研究で人体実験として只人が欲しいとか・・・。」

「おぉ、えげつない事考えるなぁ。でも其が一番ありそうと言うか、納得出来るかも・・・?」

「でも()の道其迄の殺人と繋がらないな。ありそうと言う丈で何の根拠も無いしな。」

「うーんそっかぁ、難しい所だなぁ・・・。」

「目的が分からないと言う所が一番なんだろうな。其が分からない限り動き難いな。」

もう陽も大分陰っている、此の(ママ)(ヨル)になってしまうな。

「此はもう、地道にやるしかないって事だよな。尻尾掴む迄探すしか。」

「然うだな。まぁ神と呼ばれたって私達だ。犯人丈ひょいと捕まえる様な術は無いしな。」

「穴だらけな天網だなぁ・・・。」

頭を少し振ってガルダは息を付いた。

 しっかり休んだつもり。でも昼夜逆転は直ぐには慣れない。

 如何しても怠さが残る、早くけりつけないとな。

 セレは・・・前世から慣れてるんだろうなぁ。とは言っても()の頃は(アサ)起きるの結構遅かったよな。

 ()の道大して寝てないし、懐かしさはあるけれど、慣れた所ではない。

 上手に隠している丈だ。うん、俺も頑張らないと。

「そろそろ・・・ん、丗闇如何した?」

急にセレか首を傾げたが其の(ママ)ゆるゆると首を振る。

「セレ、何かあったか?」

「いや、丗闇が何か言い掛けたけれど・・・聞いても(ダンマリ)だな。まぁ良い、後で聞いてみよう。ガルダ、準備は良いな?」

「ん、噫勿論。今日も頑張ろうな。」

軽く手を合わせると二柱は其々の地へ向けて飛び立った。

   ・・・・・

 飛び始めて数刻、ガルダは胸中一杯に息を吸った。

 又・・・だ、此の何とも言えない甘い馨。

 そっと街を見下ろす。

 明かりの付いた家々が見渡す限り並んで、つい綺麗だと思った。

 でも屹度此の街で今も事件は起きている。

 流石に通りを歩いている人は然う見付からない。皆警戒しているんだろう。

 其でも全員じゃなくて、そして其の本の数人丈が刈られている。

 でも考えてみれば一体どんな手段を使っているんだろう。其こそ街中を見ていないと見付けられないと思うけれど。

 組織包みなら、とも思ったがそんな人影は矢張りない。

 うーん、()うなると、失踪した人其の物に何かあったりしたのかなぁ。昼はそんな頭回らなくて気付かなかったけれど。

 何かしらの共通点でもあったのかも・・・?

 考えていると自然鼻が動いた。

 矢っ張りする、此の甘い匂、一体何だろう。

 少し辿ってみる。気にはなるし、正体丈でも掴みたい。

 高度を少しずつ下げる、一応見付からない様しっかり注意して。

 匂は・・・此方の方が強いか?

 一気に進路を変えて飛んで行く。ぐっと匂が強くなって来た。

 其の(ママ)通路を飛んでいて不意に、

 ・・・何か、肉を斬る様な音がした。

 息が止まり、身が固まる。

 瞬時に気配を殺す・・・分かっているんだ本能で。

 今、一つの命が消えた。

 音からして此の角を曲がって直ぐの所。

 確かめ・・・ないと、やっと、見付けられたかも知れないんだ。

 地に降り、最小限の音に留めて足を動かす。

 壁に背を預け、じりじりと近付いて行く。

 不図、石畳に流れる物があった。

 此、血だ・・・大量の血が流れて来ている。

 矢張り殺人は起きていたのか。慎重に、絶対ばれない様に。

 もう一歩足を出そうとして地を蠢く者が現れた。

 其は巨大な蛇の上部に思えた。

 漆黔(シッコク)の、鱗も瞳も舌も(クロ)い蛇。

 蛇にしては何だか鱗は一枚一枚生きている様に波打ち、薄っぺらい存在に思えたが。

 蛇は血を一舐めして戻って行く。

 たった其の一舐めで血は完璧に舐め取られていた。

 血の跡が無い、染み込んだ分も舐め取れるのか?

 俺には気付かなかったみたいだけど、一体何だよ(アレ)

 蛇・・・魔物か?魔物が人を襲っていたのか?

 兎に角全体像を見たい、魔物が只人を喰らっていた丈なら、事件は簡単に済むのだから。

「・・・え、」

角を曲がって俺は、思わず間抜けな声を上げてしまった。

 蛇の全体像、其は想像していたのと全く違って。

 其処には一つの人影が。水鏡(ツキ)に照らされて(タタズ)んでいた。

 其の背から数多の蛇が生え、辺りに散った血を舐め取って行く。

 其の人影に、俺は・・・俺は、

「セ・・・レ・・・?」

思わず、声を掛けてしまったんだ。

 だって如何見ても、いや、見間違えもなく、彼女だった。

 彼女が居たのだ。彼女が何かに馬乗りになっていて、

 血が、肉が、内臓が散らされて、明らかに其は人で、

 セレが・・・人を・・・喰っていて、

 倒れていた人だった物はもう動かない。其の腹部へセレは牙を突き立てていたのだ。

 そして肉を引き千斬る。躊躇いなく噛み千斬り、呑み下す。

 血が、彼女を染め上げていた。(アカ)く、(クロ)く、(クラ)く。

 其の光景は不思議と俺の心を掴んだ。

 恐怖とか、戸惑いとかは全くなくて、

 只々綺麗だと・・・思ったんだ。

 水鏡(ツキ)に照らされ、血に彩られた彼女が、余りにも美しくて、

 気付いた途端甘い馨に包まれる。

 其丈で何故か安心してしまって、

 俺は只じっと・・・彼女を見詰め続けていたのだ。

 一刹那か、一刻か、目に焼き付いた時間は分からないけれども。

 (ユック)りと彼女は振り向いた。そして俺と目が合って、

 彼女の顔は何処か頬が上気している様だった。甘く(ワラ)って、微笑んでくれているみたいで。

 でも其は刹那変わる。

 一気に絶望へと、突き落とされた様な。

 俺の前では一度だって見せた事のない顔。

 顔色が悪くなり、目が泳ぐ。そんな頬を血が伝って行った。

「・・・っ、」

其の雫が零れた刹那、彼女は何か言い掛けて、口を噤んで、

 俺に背を向け、一気に駆け出した。同時に翼を翻し、低空飛行で飛び去る。

「・・・何、が、」

俺がやっと声を出せたのは、彼女が完全に去った後だった。

 理解が追い付かない。今見た事が、幻なのではないかと思う位。

 そろそろと俺は足を踏み出した。残された死体の傍へ。

 如何やら死体は女の様だ。薄く目を閉じ、まるで眠っている様。

 けれども、腹部を穿つ大きな穴が全てを物語っている。

 死んでいる。いや、殺されている。

 セレだ。セレが・・・殺したんだ。

「・・・っ、」

目を逸らす訳には行かない。俺はまじまじと其の死体を見遣った。

 調べないと、彼女に何が起きたのか。

 死体は、穴を開けられてあるにも関わらず、案外綺麗だった。

 然う思うのは血も内臓も零れていないからだろう。

 穴の中は・・・空っぽだ。内臓がごっそりなくなっている。

 だからまるで、人形を見ている様で。

 不思議と吐き気はしなかった。

 若しかしたら辺りに漂う、此の甘い馨に酔っている丈かも知れないけれども。

 此は・・・喰らっているんだろう。食べる為に、殺している。

 でも、如何して。いや此以上は考えても分からないか。

 兎に角彼女に何か起こっている。其なら、

 俺に出来る事は、一つだろ。

 彼女の傍に行かないと。俺が離れちゃあ意味がない。

 あんな顔をさせた彼女を、独りにしてはいけない。

 死体を此の(ママ)にするのは申し訳ないけれども・・・。

 そっと祈りを捧げると、直ぐ様ガルダは翼をはためかせるのだった。

   ・・・・・

「はあっ、はあっ、っ、・・・はっ、はっ・・・、」

荒い息を付き、セレは納屋の壁に背を預けていた。

 其の(ママ)ずるずると座り込む。

 もう何も考えたくなくて、考えられなくて、適当に此処迄逃げてしまった。

 今し方迄過ごしていた納屋だ。でも他に行く所も無い。

 こんな所に居たら・・・でも、

 駄目だ。頭がぐしゃぐしゃで、吐き気がする。

 如何して、如何して如何して如何して、

 でも何が・・・何が一体、私に起こったんだ。

 気付いたら私は血溜まりの中に居た。目の前には見知らぬ死体があって・・・ガルダに声を掛けられて、

 ・・・っ嫌だ、思い出すな。

 理解出来ない、そんな事考えたくない。

 頭を抱えて(ウズクマ)る、然うしても(チッ)とも落ち着けなかった。

 私は・・・私は、

 人を・・・喰ったのか?

 口を噤む、同時に甘い舌触りが残っていて、

 違う違うっ!人間はこんな味しない筈だ。

 こんな甘くて、優しくて、安心してしまう様な・・・そんな、味じゃなくて、

 美味しくなんか、無い筈だっ!

 吐き出したかったが、如何(モガ)いても無理だった。

 噫、分かってしまう。此の味を、私は知っているんだ。

 慣れているんだ。だから吐きたくない。

 ()()()()()、吐き出せる筈がない。

 ・・・何時からだ、何時から私はこんな風になった。

 分からない、記憶が曖昧だ。如何してだか今迄気付かなかった。

 まさか昨日も・・・?いやもっと前からとか・・・?

「・・・っ丗闇、丗闇、見ているんだろう!」

然う言えば数刻前、丗闇は何か言い掛けていた。気付いていたんじゃないか?

 もう、自分は駄目だ。自分で自分に自信が持てない。

 丗闇の目を・・・借りないと。

―・・・気付いたか。―

「気付いたって、御願いだ丗闇教えてくれ。何時から私は()()()()()?」

―・・・・・。―

何か言い淀む気配、自分が焦れば焦る程、彼女は遠ざかる様で。

 御願いだ、今は・・・独りにしないで、

 いや、でも私は、

 私は、独りでないとっ・・・、

「丗闇、御願いだから教えてくれ。私は、何時から人を喰っていたんだ。」

―・・・我が、見た限りならば、御前が龍の依頼を受けて、街の・・・死体置き場を探っていた時が最初だ。―

「其って・・・、」

龍の依頼、其って・・・まさか、クルル達の依頼か?

 そんな、(アレ)は随分と昔で、でも街の死体置き場って、

 ・・・其しか考えられない。噫然うだ、断言されて、自覚して初めて分かる。

 私は・・・()の時に、()の日の(ヨル)、独りで、死体置き場に行って、

 表向きは煌輝を探す為だった。でも()の時既に自分の躯はぼろぼろで。

 自分で分かっていたんだ。壊れそうだったから、だから、補おうとした。

 其処には、腐ってはいたけれども大量にあったから・・・私の餌が。

 思わず口を塞ぐが、伸びた牙は唇を傷付けて血が流れた。

 然うだ、其の時に私は・・・可也、死体を喰い散らかしていた。

 少しでも足しにしようと、飢えを満たそうと。

 ・・・あ・・・あ、あ、

 其処からは鎖の様に次々と記憶が溢れて来た。

 自分で封じていたんだ。気付けば、如何なるか位分かっていたから。

 何度も何度も、人を、血を、美味しそうだと見てしまって、

 ソルドと殺し合い、紅鏡()に因って躯の芯迄腐らされた時・・・其の帰りに何柱かの神を喰い殺した。

 声を掛けて来た奴を、帰り着く迄の充てにした。

 他にもアティスレイが御茶会に私を呼んだのは、人を喰わせる為で、

―貴方はもう少し食べて置く可きだわ。私、其が心配だったから。―

―貴方の飢える姿は見たくないの。其の証拠に幾らでも食べられるでしょ?―

・・・()の言葉も意味も、今なら分かる。私が飢えている事にアティスレイは気付いていたんだ。

 だからせめて夢の中丈でもと、私を持て成した。

 ・・・他にも幾つも幾つも、知らなかった筈の情景が流れる。

 其の(ドレ)もが血に(マミ)れた物で・・・噫(オゾマ)しい。

 屹度ガルダが言っていた、オンルイオ国の最近出ていた行方不明も。

 ・・・私、だ。私が()()な、喰いに行っていたから。

 然う、今日と同じ様に。

 分かっている。段々喰らう頻度が増えている。

 だからばれた。一日に何人も、彼丈(アレダケ)殺せば流石に足が付く。

 で、でも私は、

「・・・私は、ずっと喰って来たのか。」

―・・・噫。―

「・・・っ、」

然う、なんだな。然うなんだろう。

「・・・如何して、今迄黙ってたんだ。知っていたなら如何して、」

責めるつもりはなかった。でも、一寸(チョット)でも分けたくて。

 認めるのは恐いから、せめて足掻く様に。

―御前に・・・そんな顔、させたくなかったからだ。―

はっと思わず顔を上げた。

 私の為、か。そんな風に想ってくれるのか。

 然う想いを掛けてくれるのなら、話しても良いだろうか。

 ・・・御免、屹度ずっと悩んでいた。

 (オクビ)にも出さない様、考えていたんだろう。

「・・・此の(ママ)じゃあ、駄目だろうな。」

人を喰うなんて、益々化物だ。

 いや案外其の事自体は良いんだ。別に嫌いな人間を喰い殺す位。

 でも其の嫌いな人間の中に・・・ガルダやドレミ、ロード達が含まれているとしたら、

 あってはならない事なんだ。

 仲間を・・・只の肉だなんて思う事は。

 思考が進んで吐き気が酷くなる。考えたくなくても考えてしまう事だ。

 今迄、こんな自覚無しに喰らって来たんだ。なら何時、仲間を襲ってもおかしくない。

 襲う可能性がある、其丈で最悪だ。

 誰かと次元に行った時に周りに人間が居なければ、怪我して、血が必要になった時は、

 手に掛けてしまう可能性が・・・ある。

 嫌だそんなの、其じゃあ本物の化物じゃないか。

 ドレミ達だって、こんな化物が傍に居たら嫌だろう。

 いや拒絶してくれないと・・・屹度取り返しの付かない事になる。

 何となく・・・分かってしまうんだ。ドレミ達なら若しかしたら、そんな自分を受け入れてしまうのではないかと。

 だって家族を殺した様な奴と一緒に居るんだぞ、在りうる、無くはない。

 自分が考え付かない事を彼女達はしてしまう。

 其は本来喜ばしい事だ。でも今回に限っては悲劇の引金になり兼ねない。

 (ユル)し合ってしまって、安心して・・・忘れた頃に、

 安心し切って無防備な寝姿を晒す奴を、化物が見逃すとは思えない。

 そんな事は、絶対あってはならない。

 だったら店を離れるか、誰も居ない所迄。

 ・・・屹度、無理だ。自分の事は、多少なりとも分かっているよ。

 こんな化物が其の程度で落ち着く訳がない。

 離れた所で、脅威は減らない。恐らく自分は血肉を求めて彷徨(サマヨ)う様になってしまう。

 遠からず、牙が届いてしまう。駄目だ、其じゃあ不十分なんだ。

 じゃあ・・・他に取れる手段なんて、

「・・・死ぬしか、ないじゃないか。」

其しかもう、考えられない。

 無理にでも生きると決めたよ。ガルダの願いを言訳にして来たよ。

 其でも()うなってしまっては、誰も望まない未来へ行く丈だ。

 (ソモソモ)ガルダ達を殺してしまったら、そんな願いなんて潰える。

 そんな事になる位なら、

 私は・・・此の舞台を降りる。

―・・・・・。―

何度か言い淀む様な気配を感じる。丗闇が見護ってくれているんだろうか。

 丗闇が出て来なくて良かった。今の私なら、喰い殺し兼ねないから。

 丗闇がずっと言えなかったのは屹度・・・此の結論を理解していたからで。

 如何足掻いても死ぬしかない、だから、

 だからずっと・・・言えなかったんだ。

―・・・御前は、―

「ッセレ、」

知らず閉じていた波紋を広げる。

 私の目の前にはガルダが立っていた。

 荒く息を付いて、後ろ手で納屋の扉を閉める。

「セレ、良かった此処に居た、」

「っ来るな!」

一歩此方へ彼が足を向け、反射的に声を上げた。

 両手で自分を抱く様に固くなる。閉じ込める様に、小さく。

 ガルダは言われた通り其処に居た。じっと自分を見定める様に。

 然うしている間に私は気付いた。知らず、自分の息が荒くなっている事に。

 あ・・・あ、駄目だ、此の感覚は、

 口が開いて牙がぞろりと並ぶ。ざわざわと、全身の甲が逆立つ。

 嫌だ、如何して、

 自覚した途端、こんなにも。

 彼へこんな目を向けたい訳がない、こんな・・・私は、

 ・・・晒も無い今、ばれてしまっているだろう。私の目が、獲物を見る其に変わっている事に。

 こんな筈じゃ・・・なかったのに。

「セレ、大丈夫だから落ち着いて、話をしよう、な?俺は此処から動かないから。」

「・・・っ、」

話、話なんて今更・・・。

 いやでも話さないと、急に消えたら納得は出来ないか。

 ・・・話した所で、納得させられるかは怪しいが。

 其に、此の(ママ)抑えるのも苦しい、今にも気を緩めば、飛び掛かりそうで。

 今は抑えて、御願いだから。其丈は、あってはいけないから。

「・・・分かった。話せる・・・うん、話せると、思う。」

「良かった。・・・じゃあセレ、何が起きたか、(ユック)り話してくれないか?」

言った通り、一歩も動かず彼は優しく聞いてくれた。

 こんな時でも変わらず、つい縋ってしまいそうな声音で。

「・・・私は、人を喰っていたんだ。(シカ)も今に始まった事じゃなくて、ずっと前から。」

「・・・うん。」

「先其の事に、初めて気付いた。・・・私は、もう何十人と喰い殺している。」

ちらと彼を見遣った。

 其の目は迚も澄んでいて、痛みも悲しみも全部抱き上げる様で。

 一度合わせれば、もう離せなくなる。

「今も・・・危ないんだ。未だ足りない、だからガルダ、私は、」

「足りないって、何位(ドレクライ)だ?」

(ドレ)・・・位?」

予想していない言葉につい聞き返す。・・・量って、事だよな・・・。

「・・・分からない。未だ何十人でも、足りるか如何か、」

言葉にしてしまうと自覚する。

 如何しようもなく自分は飢えているんだ。幾らでも食べられてしまう位。

「食べないと矢っ張り・・・その、死んじゃうんだよな。」

「・・・・・。」

無言で頷く。

 本能の様な物で感じている。食べないと、又()()()()()と、指摘されている様で。

―・・・恐らく、喰らった分は御前の存在の割に溢れる魔力を抑える為に充てられている。又は、殺す事で欠けた穴に入り、少しでも存在を残そうとしているのだろう。―

「セ、丗闇・・・?」

「然う言う事か。じゃあ矢張り切っては切れないな・・・。」

今迄は殺す事其の物が、自分の精霊としての存在証明となっていが、其丈じゃあもう足りないのだろう。

 いっそ殺すなら、喰らえば良い。其の方が都合が良いだろう?

 そんな風に内側で、考えてしまっているのだろう。

 だから殺すしかない、喰らうしかない。

 ・・・其自体は、当たり前の、普通の事なんだけれども。

「そっか・・・因みに人間だったら何でも良いのか?」

「な、何だ其の質問は、」

「大事な事だろ。答えてくれよ。」

「・・・良い、とは思うが、」

今一質問の意図が読めないが、取り敢えず答えた。

 もうそんなに、自分では考えられないから。少しでも時間を使って落ち着けようと。

 でも、矢張り分かってしまう。ガルダと居る丈で、牙が・・・疼いてしまう。

 欲しているんだ・・・此以上は、

「・・・・・。」

答えを聞いて、ガルダは暫し黙り込んでいた。

 其処へ自分は一つ息を付く。

「だからその・・・ガルダ、私は、」

「セレ、何を考えてるんだ。」

下がり掛けていた顔を上げる。何時もの優しさが尖れた、そんな声だった。

「其は聞いたら俺が怒る事か?」

怒る・・・怒るか・・・嫌な聞き方するなぁ。

 今回のガルダは手厳しい様だ。絶対に逃がさないって圧を感じる。

 逃げる気はないよ。どうせ何処へも行けないんだから。

「・・・答えたくない。」

「怒る事確定かよ・・・。」

大きく一つガルダは溜息を付いた。其の瞳の(シロ)が、深くなる様で。

 只々綺麗だった。一つの世界を詰め込んだ様なそんな目が。

「・・・一歩でも、近付いたら駄目か?」

「駄目だ。本当だったら出て行って欲しい位だ。」

「其は出来ない相談だな。」

頭を一つ掻き、ガルダは目を閉じた。

 私は只じっと待つ。殺意と食欲に抗い乍ら。

 どんどん形を持って大きくなる其を何とか噛み砕いて呑み込み乍ら。

 息がどんどん荒くなってしまう。深呼吸も(ロク)に出来ない。

 そんな様子の私を、彼は只見ていて、

「セレ、屹度セレの考えてる事は、セレにとって救いだろうし、簡単な方法だろうけど、俺は嫌だぜ。そんな事したら、俺は絶対(ユル)さない。」

まぁ・・・予想は大方付いてしまうだろうな。

 私の思考は単純で極端なんだ。でもそんな答えしか出ない頭だよ。

 此でも一所懸命なんだ。ずっと(モガ)いているんだから。

(ユル)せないなら如何するんだ。殺すか殺されるかしかないだろう。」

其を聞いてガルダは迚も悲しそうな目で、いっそ涕き出しそうな目で見て、

 瞬時、胸が苦しくなった・・・罪悪感の味がした。

 そんな目をしないでくれ、そんな目をさせたかったんじゃない。

「・・・其じゃあ、如何したら(ユル)してくれるんだ。」

だからそんな顔しないで。私は、駄目なんだよ。

 噫・・・()うなるならもっと早くにでも。

 もう嫌になる位何度目かの後悔だ。

 ガルダは知らないんだろうな。私の唯一の後悔が、其だと言う事を。

「セレ、俺は御前の守護神だ。だから・・・助けるよ、絶対に。セレが例え望んでいなくても。」

一歩、ガルダが足を踏み入れた。

 瞬時に身が固まる、来るな、来ないでくれ。

「ガルダ、止めろ私は、」

来て欲しくない、触れて欲しくない。

 屹度其の先は又誤りだって分かっているから。

 其でも彼の足は止まってくれなくて、

「っ来るな、私にはもう此しかないんだ、もう、」

死ぬしか、ないんだ。

 然う呟いた途端、酷く両腕が痛んだ。

 そして指先から一気に(ヒビ)が入り、肘迄達する。

 同時に激しい痛みに襲われて、思わず呻いた。

 腕を怪我する事なんて無いから猶更だ。何時もは(ホトン)ど感覚の無い所から伝わったのは痛み丈だった。

 何だ此・・・此の(ヒビ)はまるで、

 思う間もなく激しい痛みに背を丸める。

 (ヒビ)の隙間から血が溢れ出た。

 痛い・・・痛い。

 思考の全てを其の痛みに集約されてしまう。

「っ駄目だセレ、自分を否定したら、セレが壊れてしまう。」

途端駆け寄って来たガルダはそっとセレの背に手を回した。

 ・・・っ駄目だ、近付いたら、ガルダが近くに居たら、

 其の血を、肉を・・・も、求めてしまう様に、

「セレ、俺が必ず助けるから。消させなんてしない、壊させたりしない。・・・俺を、信じてくれるんだろ。」

「っ何を、するつもりなんだガルダ、」

腕の痛みなんて其方の気で。自分は牙を抑えるのに必死だった。

 目の前にガルダが・・・駄目、考えてしまったら、

 私は、嫌だ。そんな事をしたくないっ!

 何とか身を捩って逃れようとするセレを、ガルダは優しく抱き締めた。

 嫌だ、嫌なのに、

 逃げられない、無理矢理彼を振り解く事も出来ない。

 う・・・あ、こんな、近いと、

 嫌でも分かる。甘い血の匂が、鼻孔を(クスグ)って、牙が疼いて、

 喉が渇くし、腹が空いて、気が狂いそうになる。

 駄目、だ。牙を向けては、こんな獣みたいな顔、見せられない。

「セレ、大丈夫。大丈夫だから。そんなに恐がらないで、逃げないで良いんだよ。」

「・・・っぐ・・・い、・・・嫌だ、其丈、其丈はっ、」

首を左右に振るが、彼の抱く手の力は弱らない。

 息をする度に背が震える。口が戦慄(ワナナ)いて、涙が溢れそうで。

 何処迄も優しい彼の声が、今は途轍もなく残酷に思えた。

「俺の此の力は、此の時の為に貰ったんだよ。な、セレ、分かってるだろ。此しかない、此が一番の選択だよ。」

「違う、こんなの、選んじゃ駄目だ。・・・でないと、私は、」

こんな筈じゃなかったのに。

 後悔丈は、したくなかったのに。

「セレ、俺を喰え。」

「っ・・・、」

息が、止まった。

 其丈は、絶対に考えない様にしていたのに。

「俺なら大丈夫だからさ。セレが満足出来る迄、ずっと再生出来る。その・・・心臓とか、脳とかは無理だけど、他のなら幾らでもやる。だから遠慮するな。」

其の誘惑は何て甘くて、残酷だろう。

 震えが止まらない。涙も、止め処なく溢れて頬を伝う。

 彼が少しずつ私の選択を奪って行く。

 目の前には(シロ)い彼の首筋が、

 見ている丈で喉が鳴る。牙が騒めく。

 段々と思考が痺れた様に、働かなくなる。

 其でも動けずにいた私に痺れを切らしたのだろう、ガルダは自身の頸に手を添えた。

 そして腕を一瞬(シロ)い毛皮を蓄えた獣の其に変化させる。

 備わった爪で、首元を一文字に斬り裂いた。

 途端(アカ)い血が溢れ出た。

 噫なんて食欲をそそる(アカ)、綺麗で、抗い難くて、

 彼の頸をなぞる血は何て甘そうで、

「あ・・・ぐ・・・っ、」

息が乱れる、躯の震えが止まらない。

 嫌・・・だ、何も考えられなくなる。

 如何して此処迄本能に抗えない。

 違う、違うのにっ、

 ガルダは餌なんかじゃないっ!

 心の中で何度唱えても、其は只の言葉で。

 最早私を縛る枷にはなりえなかった。

「セレ、俺を喰え。」

二度目の声に、一度丈彼と目を合わせた。

「・・・御免なさい・・・有難う。」

噫、こんな筈じゃあなかったのに。

 尾が複数に裂けて分かれる。其々が意思を持った触手の様に蠢き、彼を取り囲む。

 ・・・もう、止められなかった。

 其の(ママ)彼に飛び掛かり、床へと押し倒す。

 只抱き締め続けて優しく(ワラ)う彼の首筋を舐めた。

 伝う血を舐め取って行く・・・噫、何て美味しかったか。

 一度味を知ってしまったらもう止められない。

 彼の傷は直ぐ塞がってしまう。もっと・・・もっと血を、

 強請(ネダ)る様に其の首筋に噛み付いた。

「・・・っ、」

感じた痛みは本の一瞬丈。

 牙が深く刺さっている割に、痺れた様な感覚丈が残る。

 でも其の後一気に血が持って行かれるのが分かった。流れに逆らう様に薄ら寒くなって行く。

 同時にセレの喉が鳴る音が内側を通して響くみたいで。

 今彼女の中を満たしているのは自分の血だと思うと、不思議な感覚だった。

 ・・・又、此の薫だ。

 何処からか甘ったるい、果実酒の様な薫が漂う。

 でも其は今迄嗅いだ(ドレ)よりも圧倒的に強い。

 嗅いでいたら不思議と安心してしまって、何だか満たされた様な心地だった。

 噫此・・・若しかしたらセレの毒かも知れない。

 夢の中に居る様なぼうっとした心地でゆるりとガルダは考えた。

 セレの牙から出る毒は、気化し易いとAが言っていた。そして其は一寸(チョット)した媚薬の様な、痺れる程度の毒。

 セレの牙が痛くないのも、其を()うして注入されているからなのだろうか。

 ・・・此の(ママ)で居られるなら、喰い殺されても良いかも、

 ついちらとそんな考えが頭をヨギる。不思議だ、此が毒なのか。

 中毒になってしまいそうだ・・・酔いそうで、終ぞ感じた事の無い甘い優しさがある。

 粗方(アラカタ)血は飲み干したのか、遠慮勝ちに彼女の牙が抜かれた。

 然うして上げた顔は綺麗で、頬が上気して惚けている様で。

 つい、見惚れてしまう。彼女はそんな顔、普段は絶対に見せないから。

 そんな顔を見せてくれるなら、俺は喰われても良い。御前の餌になれて光栄だよ。

 此は俺にしか出来ない事なら・・・本当に嬉しいんだ。

「・・・あ、然うだ服、」

服、脱がないと。

 残された死体を思い出す。()の死体は内臓を抜かれていた。

 血丈じゃあ満足出来ないだろう。だとしたら彼女が食べ易い様に服丈でも脱がないと。

 下は・・・い、良いよな?脱がなくても。

 一寸(チョット)其は気恥ずかしいと言うか、う、ううん。

「セレ、御免一寸(チョット)服、」

無理矢理頭を働かせて其丈言い、シャツに手を掛ける。

 でも構わず彼女の牙は俺の胸元を貫いた。

 痛みは・・・無い。(ムシ)ろ更に毒を入れられたんだろう、思考がぐらつく。

 セレの手が俺の肩に掛かって、服毎肉が引き千斬られた。

 (ムサボ)る様に、血の滴る肉を口に含んで、呑み下す。

 余り噛んでないけれど大丈夫だろうか。そんな心配がちらと丈脳裏を(ヨギって、

 只俺は其の様を見ていた。まるで絵画の様に。

 少しずつ俺の返り血に染まって行く彼女は矢っ張り、美しく見えた。

 瞳の鋭さ丈は変わらず、でも掛かる吐息は甘えるみたいで。

 服・・・破けちゃったな。

 まぁ良いか・・・時空の穴(バニティー)に替えの服あるし・・・。

 頭の隅でそんな事をつらつら考えて。

 何だか現実感が無い。夢を見ているみたいだ。

 でも存外、悪い夢じゃない気がした。

 遂に彼女の牙が内部に刺さる。

 恐らく、肺、かな。

 噛まれた瞬間に息が漏れ、血を吐いた。

 床に掛かった血を、這いずる彼女の尾が掬い取る。

 一片も残さず、全て、注がれる。

 少し・・・息がし辛い、流石に再生力を少し上げるか。

 血を巡らせる様に魔力を感じる。少しずつ、躯に馴染ませて。

 セレの食べる早さに、合わせて行こう。

 暫く彼女は肺辺りを手当たり次第に噛み付いていた。

 そして息を付いて顔を上げる。

 すっかり血に染まった面をペロリと、長い蛇の舌が舐めた。

 其の仕草が如何にも惹き込まれて、つい右手を上げた。

 そっと彼女の頬に触れ、なぞる様に撫でた。

「美味しい・・・か、セレ、」

不味くないなら良いけれども。

 せめて喰われるなら、美味しく、食べて貰えたら良い。

 彼女は(ユダ)ねる様に目を閉じた。

 でも其は本の数秒で、彼女は返事の代わりと(バカ)りに俺の腕に牙を立てた。

 そして遠慮なく引き千斬る。

 肉と皮膚が裂け、腱が覗く。

 生々しく血に(マミ)れた其処も、束ねられた(イト)を解す様に裂かれて行く。

 彼女の鋭利な牙に因って、腱に歯列が刻まれ、音を立てて筋に分かれて行く。

 然うして骨が、(シロ)く光った。

 其の骨を彼女は一舐めする。血が除かれ、(シロ)さが際立った。

 彼女が大きく口を開けて、思い切り骨に喰らい付く。

 そしてバキバキと、大きく喉を動かして俺の骨を砕いて行く。

 腕の感覚なんて最早無い。こんな風に喰われて行くのかと、何処か他神事(タニンゴト)の様に俺は見ていた。

 まるで映画の様で、生々しく(エグ)いのにも関わらず、つい見入ってしまう。

 其の腕を肉塊へ変える工程すら美しく見えた。少しずつ解かれ、内側が覗けて行く様が。

 終に骨も粗方(アラカタ)齧り終え、少し彼女が口を離す。

 其と同時に腕は折れてしまった。骨が噛み斬られ、中の髄が丸見えになっていた。

 真絳(マッカ)だと思っていたけど、案外黄色いな・・・。

 血なのか何なのか分からない液体が零れている、其をペロリと彼女の舌が舐め取った。

 歯に骨が刺さっただろうか、彼女は何度か、噛み合わせを確かめる様に牙を鳴らした。

 顎が外れないか心配していると、彼女は骨を(ユック)り口に(クワ)えた。

 中から・・・啜る音が聞こえる・・・不思議な感覚だ。

 背がぞっとする様な背徳感、してはいけない事をしている様な。

 そして其が、途轍もない・・・快感に変わって行く様な。

 喰われるのが・・・心地良い。

 彼女の内、落ちて行く肉が喜んでいる。

 俺は、彼女と混ざって一つになる、然う考えるともう・・・駄目だった。

 此は、毒の所為で、すっかりおかしくなってしまっているのだろうか。

 其でも・・・悪くはない、今迄生きて来た中で一番俺の心を満たしてくれている。

 酔う事も、楽に死ぬ事も出来ない俺が、満たされて行く。

 こんな感覚は・・・初めてだ。こんな心地良いなんて。

 啜り終わった彼女が顔を上げると、其の面は少しずつ変化していた。

 半面丈だったのが、全て・・・(クロ)くなっている。

 鼻が長く伸び、マズルが生えて行く。

 まるで狼の顔の様だ。六つの瞳が闇の中で煌めいた。

 噫、其の口だったら確かに、食べ易いかもな。

 短かったら鼻が邪魔だっただろうし、牙も立て難い。

 彼女が、少しずつ変わって行く。

 此の変化は、喜ばしい事だろうか。

 良く、分からない。俺には未だ何とも。

 変わる事で彼女が少しでも楽になれるなら、息が吸えるなら其が一番だけれど。

 少しずつ彼女は行き場を失って行っている気もする。何処にも行けなくなってしまっている。

 だから止まれない、変化せざるを得ないのではないかと、考えてしまう。

 其とも矢っ張り、若しかして俺が、御前の自由を奪っているのかな・・・。

 俺が其の翼を()ぎ、鎖で縛り付けてしまっているのか。

 ・・・あんな広くて綺麗な(ソラ)を見せて置き乍ら、

 残酷、だよな。こんな事。

 然うなる位なら、止まっていたかった。

 俺を閉じ込めた()の鳥籠みたいに、彼女をずっと護れたなら。

 其で良いと思ったのに、こんな無理矢理鳥籠に閉じ込めたかったんじゃなくて、自由に。

 止まるなら・・・然う、今が良いな。

 永遠と、彼女と()うしていたい。ずっと喰われ続けて、彼女はずっと俺丈を見ていて。

 俺を喰って、一つになって、混ざって、互いに分からなくなって、

 ・・・そんな終わりも、ありなんじゃないかって、思ってしまうんだ。

 其程迄に此の夢は甘くて、忘れ難かった。

 気付けば俺の腕は再生していた。

 そして自然と、目の前の彼女へ伸ばされる。

 又食われても良い。只今丈は、

 彼女の銀の髪に触れる、そっと撫でて、其の存在を確かめる。

 此処に居る、今は俺の目の前に。

 俺と同じ様に、存在しているんだ。

 彼女はそんな手に構わず、俺の腹部に噛み付いた。

 牙が()り込む、感触丈で痛みはない。

 形状が変わった事で牙がより食い込んでいる。噛まれた丈で血が一気に溢れた。

 蛇が這い寄る、血を一滴も残さず舐め取って、頭を寄せる様は甘えている様で。

 彼女が顔を上げると同時に肉が一気に引き千斬られる。

 皮と肉と・・・膜、だろうか?俺(アンマリ)詳しくないけれど、内側って()うなってるのか・・・。

 彼女の口から垂れ下がる其をぼうっと見詰める。

 不思議と、グロく見えないんだよな。(アレが今から喰われるのかと思う丈で。

 少しでも考えようとすると例の甘い馨に満たされてしまうからなのだろうか。

 先よりもずっと大きい咀嚼音をさせ乍ら彼女は肉を平らげて行く。

 行儀が悪いけれども、良い食べっ振りだ。怒ろうとは思わない。

 そんなに飢えていたのなら、好きな丈食べたら良い。

 俺に丈、其の顔を見せたら良いんだ。

 血が滴り、顎を濡らす。落ちた雫を蛇達が飲み干して行く。

 皮が除かれたなら、残るは、

 ちらと考える間もなく彼女は俺の中へ齧り付いた。

 先迄より少し勢いがあるな、若しかして内臓が好きなのだろうか。

 柔らかいとか、味の好みだろうか、腹の中を(マサグ)られる感覚は然う味わった事のない物だ。

 然う言えば死体も内臓、無かったもんな。

 何度か噛み千斬っては少し丈彼女は顔を上げる。

 其の口には(ヌメ)った腸が、生々しくも未だ脈打っている気がした。

 其を両手で掴んでは少しずつ噛み千斬って行く。

 少し丈、彼女は目を細めていた。そんな・・・美味しいのだろうか。

 何だか先よりも夢中になっている様で、味わいつつも急いで口に運んでいる様だ。

 肉ばっかりだけど、脂っぽくないのかな・・・。

 腸を平らげた所で、彼女は別の臓器に手を出す。

 掴んで引っ張り、口へと迷いなく運んで行く。

 そっか・・・食べ易くもあるのか・・・。

 最早血塗(チマミ)れで何の臓器を食べているのか分からないけれども。

 再生しては喰われて行く、余程御気に召した様だ。

 胃の腑を噛まれ、千斬られる。・・・何となく此は未だ分かるな。

 二、三口で食べ終えたかと思うと、肋骨をがりりと、削られた。

 噫骨、邪魔だったかな。

 少し手を掛けられて骨も折られる。

 骨ですら美味しそうに彼女は噛み砕いた。

 喉に、詰めないだろうか、刺さらないだろうか。其が一寸(チョット)心配だけれども。

 骨の髄を見せ付ける様に、端から削る様に丹念に噛み付いて砕いて行った。

 然うしている間に、又俺の内臓は再生を終える。

 同時に腸を千斬られる感覚、

 勢い余ったのだろうか、千斬れた腸が伸びて俺の顔の傍迄飛んで来る。

 何とも生々しい肉片だ。残されたら悲しいし、彼女にあげないと。

 何とか動く左手でそっと腸に触れる。

 ・・・噫、大丈夫かと思ったけれど、自分で触ると矢っ張り気持悪いな。

 あんな躊躇なく彼女は両手に持ってくれているけれども、内臓は内臓だ。

 此の何とも言えない(ヌメ)り気が、生きているみたいで嫌だ。

 其でも何とか左手に乗せ、軽く動かした。

 すると彼女は直ぐ気付いてくれた。少し手を伸ばして一気に彼女の顔が近くなる。

 途端どきりと心臓が跳ねた。

 まるで彼女の吐息が掛かるみたいで、自然頬が上気する。

 彼女は其の(ママ)、俺の左手にあった腸に噛み付いた。

 其処から動かさず、押さえ付ける様に喰らって行く。

 直ぐ横で、生々しく(ムサボ)る音が響いて、何も言えず俺は目を細めた。

 甘い馨が広がる。胸中一杯に其を吸った。

 彼女の息が左手に掛かる。

 其処へ舌が這って行く。血を舐め取って、掬って。

 口が触れて、ぞっと背筋が震えた。

 でもそんな感触は直ぐ(エグ)り取られる。左手は喰い千斬られて何も感じなくなった。

 こんなに夢中になってくれるなら、生餌で俺は構わないから。

 俺にしか出来ない事、俺の役目、俺の意義。

 其が此処へ集約するのなら。

 悪くはない、俺は只此の時を甘受しよう。

 堕ちるとしても、俺は此の道を選べて良かったよ。

 セレは屹度然う思わないだろうけど、俺は、良かったんだ。

 傷付けるって分かっていても、此の手は離せなかったよ。

 此の牙が、爪が、俺に安らぎを与える。

 彼女が此処に居ると、俺に教えてくれる。

 良かった、未だ此の手を掴めて、離れなくて、良かったよ。

 此処に居て、俺丈の傍で。

 此の(ママ)全て止まってしまえば。

 愚かにも俺はずっと其を唱えていた。

   ・・・・・

 気付いたら寝てしまっていたらしい。

 薄ぼんやり目を開ける。何があったのか直ぐには思い出せなかった。

 ゆるゆると鈍い頭で視線を巡らせる・・・えっと、先迄俺は、

 視界を動かしていると俺の胸元で眠るセレが目に付いた。

 吸った息が吐けなくなった、思わず口を噤む。

 規則正しく上下する俺の胸に合わせて、セレの背も動いている。

 ね、寝ているのか・・・すっかり上に乗っかっちゃってるけど。

 あ・・・噫然うだ俺、セレに自分を喰わせて・・・寝たと言うより()の甘い毒を吸い過ぎて昏倒してしまったのかも知れない。

 結構生命力を削られた感覚がある・・・長い事セレに食べられていた様だ。

 でも今は傷一つないし、セレも血に(マミ)れていない。()の蛇達が全て食べてくれたんだろう。

 っ・・・然う言えば服、破かれていたんだった。上半身が半裸になっていたのでついドギマギしてしまう。

 服を着るにもセレを起こさないと。ぐっすり眠っているから申し訳ないけれども。

 其に(アレ)から何位(ドレクライ)経ったかも分からない。現実の情報をもっと集めないと。

 其にしても・・・時が時だったからとは言え、何か随分大胆にしちゃったと言うか・・・。

 今我に返ると中々凄い事をした気分だ。

 いや、普通に食べられていた丈なんだけど、あの・・・二柱限でずっとくっ付いていたと言うか。

 別に(ヨコシマ)な考えも何も無かったけれど、俺一寸(チョット)()の時如何かしてたな・・・。

 (アレ)が毒に当てられたって事なのかな・・・然うだと思いたい。

「・・・っ、ん、」

俺が少し身じろぎしたからだろうか。セレの背が震え、(ユック)り彼女は顔を上げた。

 其の顔は何時も通りで、反面のみが(クロ)くなっている。

 少し寝惚けた様な目をした彼女だが、一、二度頭を振ると直ぐ俺の上から退()いた。

「えっと・・・セレ、御早。」

「お、御早うガルダ。」

何処か罰が悪そうに彼女の視線が泳ぐ。

 一応退()いてくれたので今の内にと俺は時空の穴(バニティー)から服を出してさっさと着た。

「・・・もう、大丈夫なのかセレ。」

「噫、御蔭で今は・・・何ともない。其よりガルダは、何処か痛まないか?」

「え?俺は何とも。でも良かった。俺のでも如何にかなるんだな。」

 そっと彼女に微笑んだが、セレは手を組んで少し下がってしまった。

「いや、でもガルダ、矢っ張りこんなのは、」

「でも他にないだろセレ。其に俺は嫌じゃなかったぜ。こんな形で御前の役に立てるなら嬉しい。」

「役って、そんなの・・・。」

踏ん切りが付いたと思ったけれど、未だ未だらしい。

 此は何とか納得させないと。

「ん・・・然うだな。意外かも知れないけどさ、セレの毒の御蔭かな。全く痛くも無いんだぜ?俺からしたら一寸(チョット)魔力が減った位なんだからそんな気にするなって。」

「・・・然うだとしても、ガルダが良いにしても、私は恐いよ。今はもうすっかり落ち着いているけれども。何時又急にああなるか、ガルダだって見ただろう。あんな獣染みた、私の姿を。」

獣って言うよりは俺は只、セレが苦しそうにしていた丈に見えたけどな。

 俺を襲わない様に必死だった、其の様が只々苦しそうで。

「其がコントロール出来たら良いな。じゃあセレ、戻ったらAの所、行ってみようぜ。何か分かるかも知れないし、別に人を食べる神ってのは其処其処居るんだ。何か良いアドバイスとか貰えるかも知れないだろ?」

「ガルダは何時も、私を引っ張ってくれるな。・・・有難う、分かった。先ずは然うしよう。折角ガルダが心を砕いてくれているんだ。私も・・・しっかりしないとな。」

其の声は迚も気恥ずかしくて、耳を擽った。

 そんな風に言われたら・・・嬉しい、嬉しいけど。

「うんうん、其の調子だよセレ。じゃあ先ずは・・・依頼を如何にかしないとな。セレ、一寸(チョット)聞いてみたいんだけど。」

「噫其なら恐らく・・・もう解決している。」

苦笑してセレは少し視線を上げた。

「解決って言うと・・・?」

「此の次元に来た日に既にな。私が・・・犯人を、殺人鬼を食べている。彼奴で(ホボ)間違いないだろう。」

記憶は・・・はっきりある。

 自覚したからだろうな。自分の目はちゃんと見ていたんだ。

 動かなければ、毒で動けない様にしたのに。

 其の恐怖も同時に、刈り取ってやったのに。

 下手に逃げるから少し手間取ってしまった。

 奴はナイフを持っていた。反撃する意思もあった。

 明らかに他の街人と違った。誰も惚けた様に食われたのに。

 そして何より()の血の薫。

 何故か霄中(ヨナカ)に死体が落ちていたから、平らげていたら傍に奴が居たんだ。

 同じ血の匂を(マト)っていた。恐らく(アレ)は犯行現場だったんだろうな。

「然う・・・だったのか。いや、早期解決、だったんだな。」

犯人を殺してしまっている。証拠も何もなくなっちゃったけれど。

 一応事件を食い止められたのなら十分かな。

 今回の依頼主は夜鷹だし、深くは聞いて来ないだろう。

 まぁでも次元の主導者(コマンダー)は事件が迷宮入りしちゃうから困るかもな。

「夜鷹に聞いてみるか。恐らく昨日は三人・・・しか、被害者は居ない筈。其で合っていれば、昨日は私以外の殺人鬼は出なかった筈だ。」

「三人目が()の死体って事か・・・うん分かった。一寸(チョット)事件の事、聞いてみようか。」

セレには申し訳ないけれども此はちゃんと始末を付けないといけない。

 被害者は出てしまったけれども、犯人も消えた。其で如何にか折り合いを付けないと。

 ・・・今回の依頼者が鳥で良かった。人間相手、次元の主導者(コマンダー)とかだったら、何て説明すれば良いか分からなかったな。

 セレを犯人だと断定は出来ない筈・・・あんな綺麗に証拠を消されちゃあばれないだろう。

 だから此の次元には悪いけれども、俺達は早々に去った方が良い。

 万が一セレの罪がばれたら死刑は免れないだろう。けれど此の場合は如何裁かれるのだろうか。

 食べないと、生きて行けない存在だと言うのは、人間は何て判断するんだろう。

 ・・・考える迄もなく処刑だな。駆除か如何か、言葉の綾しかないだろう。

 人間にとって謂わば天敵を生かすメリットはない、情状酌量の余地もないだろう。

 だったら俺はセレを護る。そんな事はさせない。

 セレの罪だとしても俺は其を清めたいとは思わない。

 其に因って又彼女が傷付くのなら、俺は背負った(ママ)の方が良い。

「えっと、()の鳥は近くに居るのかな。あ、セレ一応フードしとけよ。」

扉の隙間から(ヒカリ)が漏れている。(アサ)、ではなさそうだけれども。

「噫、大丈夫だ。」

きゅっとセレはオーバーコートの裾を掴んで深く被った。

 扉をそっと開けてみる・・・此は、もう夕暮れ時みたいだ。

 半日位、寝てしまっていた様だ。昊焼(アサヤ)けとは違う、でも薄ぼんやりとした橙の(ソラ)が広がっていた。

 (ヒカリ)だと思っていたのは街灯の明かりが漏れた物みたいだ。

 何だか時間間隔が狂うな・・・本の一刻位の気持でいたのに。

「・・・ん、其処に居るな。」

セレが扉を潜ると傍の高い碧樹()を見遣った。

「キョキョキョキョ!」

すると上旻(ジョウクウ)から変わった(サエズ)りが降りて来た。

 そして黔褐色(クロカッショク)の小鳥が舞い降り、近くの枝に留まる。

―御二柱共、御疲れ様です。して、進展の程は如何でしょうか。―

「噫、悪くはない、かな。一つ聞きたいんだが、今昊(ケサ)、事件について何か聞いたか?」

―其でしたら私も少し情報を集めて来ましたよ。と言っても、私は夜行性なので詳しくはないんですが、―

夜鷹は思い出す様に嘴を少し上へ向けた。

()の人から聞いた限りだと、二人行方不明で、一人変わった死体で見付かったとか?何だか随分事件内容が変わって来ました。若しや、御二柱の御蔭でしょうか?―

「三人、か。恐らく間違いないな。」

「セレの言った通りだな。」

と言う事は此の次元に来た一昨日の行方不明も、全て自分の犯行なんだろうな。

 死体が一つも無かったのは丸毎全て喰らっていたから。

 まさか自分で起こした事件の調査を自分でしていたとは。

 だから丗闇も止めようか悩んだんだろう。気付けない限り、繰り返してしまうから。

 未だこんな早く見付かって良かったかも知れない。遅ければもっと取り返しが付かなくなっていただろう。

 未だまし・・・然う考えないとやって行けないんだよ。

 自分が殺した奴等は其じゃあ納得なんて出来ないだろうけれど。

 寒くて思わず両手を重ねた。

 ・・・大丈夫、今は本当に何でもない筈。

 此の衝動が何位(ドレクライ)抑えられるか分からないけれど。

「じゃあ恐らく、事件は解決だな。犯人はもう居ない。だから此以上死体が出る事はないだろう。」

自分が消えれば其こそ本当に殺人鬼は消える。

―え、本当ですか!凄いスピード解決ですね。―

「凄くはないよ。犯人は殺してしまったし、動機も分からず、被害者も可也増えた。自分じゃなきゃもっと上手くやれただろうが。」

―どんな形であれ、安全になったのなら良いのです!頼んで良かった、有難う御座います!―

まぁ夜鷹からしたら然うだろうな。

 次元の主導者(コマンダー)が無事なら良い、其の一点丈だろう。

 其の次元の主導者(コマンダー)は当分忙しいだろうがな。秘密裏に神達にこんな事件をぐちゃぐちゃにされて。

 其でも命よりはましか、然う、考えるか。

「じゃあ俺達は戻るか。一寸(チョット)急ぐ事があってさ。本当は念の為もう一寸(チョット)残った方が良いんだろうけど。」

犯人は若しかしたら複数かも知れないし、詳しい調査も出来ていない。

 セレの証言丈で切るのは早計だろうけども。

 かと言って留まるのも危険だ。セレは屹度可也不安な筈、早く手を打ってあげないと。

 俺を喰えとは言ったけど、遠慮もするし、抑えようとするだろう。でも自制が効かなくなったらアウトだ。

「・・・然うだな。又何かあったら直ぐ連絡してくれ。他に犯人が居てもいけないからな。」

―分かりました。済みませんどうも、有難う御座います。―

夜鷹は一声(サエズ)ると飛び立って行った。

「一応、此で依頼は達成だな。」

「・・・噫。」

「食べたくなったら何時でも言ってくれて良いからさ。取り敢えず戻ろうか。」

無言で頷く彼女の肩にそっと手を置いた。

 ・・・大丈夫、とは気軽に言えなかった。だから、先ずは行動しないと。

 二柱の姿が音も無く掻き消える。

 寒旻(サムゾラ)の下で、街は久し振りに静かな(ヨル)を迎えた。

「・・・ん、今日も来たのか。寒いだろうに。」

「キョキョ!」

交番から出て来た蒼色の髪の男に、優しく夜鷹は(サエズ)るのだった。

   ・・・・・

実は肉で、果汁は血で

鮮やかな色合いは生々しい血の色で

手にして()ぎ取った果実の何と罪深き物か

でも其を知って猶化物は(ムサボ)り尽くして詠う

足りない、未だ足りないと

数多の命を刈り取って目の前の最も甘美な其へ

伸ばされた手すらも喰い千斬ろう

だって其は貴方の願いだから

どんな化物になったって・・・生きていて欲しいんでしょう?

 どうも御疲れ様です。

 ・・・ね、結構はっちゃけてたでしょ?

 でも悔いはありません、性癖ぶっちゃけましたが良いですよ、もう。

 うわーって引かれても仕方が無いのです、正直其の自覚はありますね。

 けれども自分は此の道を貫き通します!と言う事で書き切ったぞイェイ!

 (色々吹っ切れてしまっているので温かく見守ってやってください。)


 今回の話は、前書きの通り、相当昔から組まれてはいました。

 けれども其から数年後、ある素敵な漫画家様の作品で相当似たシチュエーションがあり、

 やべぇ・・・パクリになっちゃうと、当時は頭を抱えた物です。

 勿論商業用のと比べるべくも無いのですが、同じ一つの作品としては、創作物としては考えてしまうんですね。

 其でも厳密には違うし、パクった訳ではないし、と何時書こうか悩んでいた訳です。

 いやぁ書けて良かった、今は只々感無量です。

 斯う言うのが好きなのを何て言うんでしょうか、ジャンルとかあるのかしら。

 如何しても線の細い女子が人間とか千斬って食べるの、凄い萌える物があるんですよ。

 字面にしたら大変酷い。何時から自分は斯うなってしまったんだ。


 そんな感じな詰め込んだ丈の今回ですが、次回は更新が可也遅れます。

 本当に滅茶苦茶先です、此の執筆スピードでも全く追い付けず。

 久し振りに大分割が起きそうですね、広げまくった風呂敷を畳む作業に入っているので仕方ないのですが。

 書けるか如何か、次は技術的な問題で大変不安な次回。

 勿論必ず書き上げるので、気長に待っていただけたらと思います。

 其では・・・人喰いとなった彼女が今後如何やって生きて行くのか、波乱が増える許りの本作を御楽しみに。

 又御縁がありましたら御会いしましょう!

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