53次元 克ての曦獣ノ終わりの詠
え⁉もう次話⁉
と言う事で作者が一番吃驚しています、どうも今日は。
早過ぎる・・・同月内で投稿とか狂ってる。
まぁ其の分短いけれどね!けれども作業量多かったよ!
そんな今回はずっと書きたかった話の一つ。
何と・・・恋愛小説です!
私の人生初なんですよぅ、いや若しかしたら二度目の様な気もしますが、粗初めてです。
わぁ、とっても楽しみだなぁ!と言う事で、語りたい事は沢山あるので後書きに取って置きましょう!其では甘酸っぱい今作をどうぞ!
皓き翼は無垢の証
皓き刃は誓いの証
皓き羽根は導きの証
皓き鱗は護りの証
皓き瞳は真の証
・・・噫、そんな物、汚く醜い穢れた血に沈めてしまえば良い
・・・・・
私、アリアンヌは・・・恋をしています!
こんな事、噫、二百年も生きて来て初めてです。
分かっています、神なんかが恋なんて、教皇様に知られたら何と御叱りを受けるか。
其でも止まらない、止められないのです。
先刻起こった事が、ずっと忘れられないのです。
でも懐い出す丈で心が温かくなる様な、此の心地は矢張り恋、なのでしょうか。
其を確かめる為にも、もう一回、もう一回丈、懐い出してみましょうか。
彼の美しい皓い翼を持った、彼の事を、
・・・・・
「・・・此処が、En078△▽大聖堂か。」
聳え立つ皓く大きな建物を前に、ガルダは一つ溜息を付いた。
En078△▽大聖堂、其処はライネス国、王を支える四つの塔の内一つ。
主な役割は外交だとか治安維持、でも戦力等は一切無い。
教育機関、とでも言う可きか。蔵書も凄かったし、然う言うイメージがある。
本来だったら・・・二度と、来たくはなかったんだけど。
セレが、ゲートなんて物を手に入れてしまった以上、見過ごす事も出来ない。
彼女に近付く前に、全部壊さないと。
此処へは早速、クレイド§スフィアのゲートを使わせて貰った。
セレに内緒で、一柱丈使うと言う事を榔達に守らせて、俺はやって来たんだ。
・・・噫、気が重い、此処に居る丈で吐き気がする。
でも行かないと、うん、此処は早い所、来なきゃいけない。何れ決着を着けないといけないんだ。
全ては彼女の為に。彼女の為に俺は・・・、
En078△▽大聖堂は基本出入り自由だ。けれども此の儘の姿で、と言うのは良くないだろう。
惜しみなく、八翼の翼を広げる。此で此処に相応しい姿に成れた筈。
後は堂々として・・・良し、行こう。
重々しい純皓の扉を潜り抜け、俺は一歩を踏み出した。
中は結構神が多い。
解放している丈あって色んな種を見掛ける。
此なら紛れ込むのは訳ないだろう。
只、斯うして入るのは初めてだ。ちゃんと目的地に着けると良いけど。
余りうろつくのも危険だよな。何処か的を絞るか?
其処等で神々が雑談を繰り広げている。
けれどもEn078△▽大聖堂丈あって上品な話許りだ。
上辺丈の、何も踏み込ませない話。
まぁ神ってそんな物だよな。使命の為なら何をしても良いのなら。
使命の為丈にあるのなら、使命に関する事しか行わない物だ。
斯う言った所謂只生きている丈の神は結構多い。
然う、だから本当は、店での彼の光景が幻想みたいで・・・異常なんだ。
咲って、一緒に居て、普通に暮らしていて。
あんな当たり前は神に本来無い物だ。
珍しいとか然うじゃなくて、性質と合わないと言うか。
・・・うん、だから凄いんだろうなぁ。
セレ、矢っ張り御前は凄いよ。
神に成れない存在だったからなのか、彼女は神から逸脱している。
普通出来ない事を、当たり前の顔で出来てしまうんだ。
彼女は気付いてないんだろう。此の現状を知らないから。
今なら分かる。何かと此処は息がし難い。
生きている心地がしない。
自分が曖昧になってしまう様な、否応なく世界を回す歯車の一つだと思われてしまう。
・・・本当、だから来たくなかったんだよ。
何とか表情を殺して幾らか進んでいると、不図視線を感じた。
誰かに・・・見られている?
此の感覚は良くない。視線の元を探ろうと目を滑らせる。
居た、少し離れた所に一柱の正女が。
一見自分の知る普通の人間っぽかったが、馬の様な透明の尾が生えており、耳は兎の様に長くて毛に覆われている。
何をするでもなく、じっと自分を見詰めていたのだ。
・・・何か、勘付かれただろうか。今になって視線を合わせると、彼女は慌てて手を組み、俯いてしまった。
尾が石竹色に染まって行く。動かなくてもそんな風に表現する尾もあるんだな。
少し探りを入れる可きか?其ともいっそ聞いてみるか。
頭の中でぐるぐると思考を巡らし、ガルダは正女に向け、足を伸ばした。
彼女は見ていた事がばれたのだと気まずそうにしていた。
斯うして近付く内も何だか慌ただしく、もじもじしている。
敵意は無さそうだし、大丈夫、とは思うけど。
「あ、あの、」
「っは、はい、何でしょう。」
声を掛けると背が一気に伸びて、上目遣いに見遣って来た。
怯えている・・・様な?そんな風に思わせてしまっただろうか。
正女は随分慌てていた様で、勝手に口を開いた。
「済みません私ったら、じっと見ていたから気になられちゃったんですよね、済みません済みません。その、他意は無くて、き、綺麗な翼だと思いまして・・・、」
「はぁ・・・えっと、有難う。」
何だかスーみたいだなぁと思いつつも、如何やら彼女は自分の翼に見惚れていたらしい。
然う言う事か、と安堵の息を付く。
昔から確かに此の翼目立つもんなぁ・・・良く言われていたっけ。
今では余、嬉しいって思わないんだよな。聞き過ぎて然う思うのか、何だろう此の気持。
「因みに・・・えっと、御名前を覗っても?私、貴方を存じてませんので。私はアリアンヌと申します。普段は書庫の整理とかをしているのですが。」
「っ・・・えっと、俺はカルラって言うんだ宜しく。実は長い事、次元の調査ってか、警護の任に就いていてさ、今回は一寸用事が出来たから此方に顔を出したんだけど。」
名前を聞かれるとは思わなった。誰にも言わず、終わらせる気だったのに。
けれども彼女、アリアンヌは目を輝かせて俺の事を見ていた。
「カルラ様、ですか!フフ、屹度高貴の生まれの方なんでしょうね。佇まいが違いますわ。御勤め御苦労様です。貴方方の御蔭で、今日も私達は平和に過ごせているのですね。」
「いやいや、そんな事は全くないよ。此も・・・使命なんだし。」
眩暈がする。
彼女の言葉の一つ一つが刺さる様だった。
態と・・・言っているのかと思ってしまう位。
苛ついちゃ駄目だ。少なくとも彼女が寄せているのは好意。
只、余り踏み込んで欲しくはないけれど、意外と近付いて来ると言うか。
此処にもそんな神が居たなんて盲点だった。
俺の正体を知ったら、一体彼女はどんな顔するんだろうな。
「えと、折角だから聞きたい事があるんだけど良いかな。君、此処に詳しそうだし。」
「あ、済みません私ばっかり!はいっ!何でも聞いてくださいませ。」
快活な返事につい破顔する。・・・やっと話に入れる。
「じゃあ遠慮なく、探している神が居るんだ。ターミエルと胥伊(ショイン)、ムルマの三柱なんだけれども、分かるかな。」
「ターミエル様と胥伊様は大賢者様の事ですよね。はい勿論です!ターミエル様は先御会いしたので未だ書庫におられるかと。胥伊様は此の時間なら中庭の薔薇園におられると思います。只・・・えっと、ムルマさん、と言う方は済みません、存じあげないのですが・・・。」
「そっか、分かったよありが、」
言い掛けた所でアリアンヌは近くの神に尋ねていた。
行動力のある子だ。相手は知っていたみたいで、手短に答えて去って行く。
だが其の答えを聞いてかアリアンヌは困惑した様だった。眉根を寄せ、口元に手を当てる。
「あ、あの済みません。ムルマ様って、大賢者様の一柱、だったんでしょうか。」
「えっと・・・多分、然うだったかな。」
正直役職は良く知らない。名前覚えている丈でも十分だったし。
「でしたら、その言い難いのですが、其の方はもうずっと昔に使命を終えたそうです・・・。」
「あ、然うだったのか。うん分かった。教えてくれて有難う。」
もう、くたばってしまっていたのか。
謝罪の一つも無しにあっさりと。
・・・本当、良い御身分だな。
「っす、済みません私その、」
慌てて顔を上げる。多分自分は酷い顔をしていたのだろう。
良くない、此は。此の感情は隠さないと。
「ご、御免俺こそ、違うんだ。その、タイミング、悪かったなって。」
此の手の感情を抱くと何時もセレの顔が浮かぶ。
彼女は何時も、此を抱えていたのだろうか。
其の上であんな咲ってくれるのだろうか。
・・・狂ってる、然う、写るんだろうな。
「えと、其より本当に有難う。御蔭で助かったよ。」
「然うですか。私も、御役に立てて良かったです。」
一転アリアンヌは零れそうな程の笑顔を浮かべてくれた。
軽く手を振って、そんな彼女から離れる。
此以上の接触は危うい。目的は達したんだ、離れないと。
書庫の場所は疎覚えだけれども分かる。
足早に、でも焦るな。
もう直ぐ、もう直ぐ終わらせるから。
全ては・・・彼女の為に。
・・・・・
何程か進むと書庫は直ぐ見付かった。
何となく記憶のある所で良かった。外れにあるのも良い。
先迄アリアンヌも居た様だが、此処はそんなに神も立ち寄らないだろう。
近付くに連れ、分かり易く神も疎らになった。金のプレートの掛かった扉を開けてみる。
少し埃っぽい書庫は、締め切られている所為で迚も静かだった。
物音一つしない、自分が立てる床の軋む音丈が響く。
書庫は見渡す限りの本棚で、まるで迷路の様な有様だった。
何の棚も一杯一杯迄入っている。此処迄来ると本の虫が出て来そうだ。
言ノ杜と何方が多いだろうか、目を見張る量だ。
何の本も手入れはされているが古臭い印象を受ける。
En078△▽大聖堂にある位なのだから屹度、色んな次元の迚も貴重な書物とかが多いのだろう。
軽く目をやると教典だとか、大魔術、丗の在り方等、頭の痛くなりそうな物が多い。
若しかしたら何冊か読んだ事はあるかも知れないけれど、懐かしさは沸かなかった。
ま、今回は其方が目的ではないのでそっと通り過ぎるのみだ。
一通り見て回るが、本当に誰も居ない様だった。気配を一つも感じない。
入れ違ったとは思えないんだが・・・もう一周見回した所で奥の扉が目に付いた。
未だ部屋があった様だ。恐らくはもっと古い、力を持っているであろう本とかが眠っているのだろう。
息を詰めて、ドアノブを握った。
・・・鍵は付いているけど、掛かってはいない。其の儘音を立てない様扉を開ける。
中は随分と狭い部屋だった。粗真直ぐの、一目で全体が見える程度の。
両壁に背を預け、本棚が全面を覆っている。そんな小部屋の奥で一つ、動く気配があったのだ。
噫、其の背を俺は忘れない。
蒼い不定形の蠢く者、翼の様な形をした触手が幾つか生えている。
蠢く度に、水温が内側から響き、蒼の中で零星の様に曦が散っていた。
書庫内は冥いので其の躯は蒼皓く浮かび上がる。
間違いない・・・ターミエルだ。
そっと後ろ手でドアを閉め、鍵も掛けた。
ターミエルは何かを読み耽っている様で、振り向く気配はない。
「よぅ、久し振りだな。」
不意打ちでも良かったけれども、つい声が漏れた。
びくりと其の背が震え、ゆるゆると振り返る。
―んん・・・誰じゃ御前は。―
棘だらけの口を蠢かせ、ターミエルは触手を広げた。
正面から見ると、殻の代わりに翼を生やした蝸牛の様にも見える。
非常に特徴的な姿だ。だから直ぐ分かった。
そして其の声も・・・迚も馴染み深い物で。
聞いている丈で俺の躯に異変が起きている事に気付いた。
手が人の其では無くなり、皓い毛に覆われた獣の爪に成る。
犬歯が生え、口内に傷を付ける。
髪は皓髪混ざりになり、背に鬣が生えて来る。
俺の静かな変化を見詰めてか、ターミエルは少し戦いた。
―ま・・・まさか其の皓は、―
テレパシーが乱れる。触手の動きが不規則に揺れる。
「・・・・・。」
無言で俺は一歩近付いた。
此の一歩が彼女に届く様に。
もう奴に逃げ場はない。
罪を、罰を、救済を、曦を、道を、断罪を、導きを、
其を為す為に俺は、
―い、今更何の用で・・・、いや、抑如何して生きて、―
「・・・彼女の・・・為に。」
頭の中で声がする。
不意に爪が伸ばされ、無防備な奴を引き裂いた。
胴を横凪ぎに、不定形の形は薄い膜に覆われていたみたいで、粘性の無い液体が溢れ出る。
血の様に、でも蒼く輝く液体は溢れ、床を、本を浸して行く。
其が浮かび上がる様で・・・綺麗で、
―っぁあぁああああっ‼―
触手が傷口に触れるがそんな事では止まらない。
俺はそっと爪に散った蒼を見遣った。
——————殺セ。
然う、頭の中で声がするんだ。
彼女の声がするんだよ。
——————殺して、私の敵を。壊して、全てを。
うん、君の為なら何でもするよ。
——————大丈夫、貴方は何も悪くない、罪はないわ。
別にそんな事は構わない。どうせ其しか道は無いのだから。
一歩踏み出す。此の一歩が彼女に続くと信じて。
——————貴方が銃、私が引金を。
——————此は、私の意志だから。
噫、然う言ってくれるのなら。
俺と一緒に居てくれるのなら、其以上は望まないよ。
―ま、待て、まさか忘れたのか?儂等が一体、何千何万年と、―
「憶えているから此処迄来たんだろ。」
本当だったら二度と会いたくもなかったけれど。
もう戻れないんだよ、此処迄来たら。
爪を振るい、奴の伸ばされた触手を斬り落とした。
手応えはない。元々戦える様な神じゃなかったしな。
―な、何故じゃ、こんな事をされる謂れはない!恩を仇で返す所か、儂を殺しに来る等、―
「恩って、利害の一致だろ。」
もう適当に応えてしまっている。其の時が来る迄の繋ぎとして。
まぁでも確かに。あんな事が起きなかったら、今でも俺は変わらずに。
変われずに、居たんだろうな。此奴等と同じ様に。
・・・出来れば彼女への謝罪が欲しかった所だけど、今でもこんな様子なら到底無理か。
初めから分かり合える訳なかったんだ。俺丈が唯一の理解者なのか。
・・・だったらもう、良いかな。
―ぐぬぬ・・・其方の母君の言葉を信じたのが儂の失態だったか。―
一瞬、手が止まった。
でも今更だ、そんな物は。
頭に過る其を掻き消す様に、俺は刃を振るった。
的は何とも分かり易い、逃げも隠れも出来ないのだから。
僅かに肉を裂く感覚を残し、ターミエルは頭から両断された。
一気に蒼の血が飛び散り、降り掛かる。
仄かに光る其は、矢っ張り何処か綺麗で。
―ア・・・ア、其方を・・・恨む、ぞ。ガルダ・・・リュー・・・。―
救いを求める手の様に宙へ伸ばされた触手は何も掴まず。
ターミエルは其の儘後方へ倒れ込み、動かなくなった。
「恨むのは・・・御互い様だろ。」
やってしまえば、案外呆気ない。
感傷に浸る間も無かった。何も・・・過る物も無く。
不思議だよな。あんな・・・永い時を生きたのに。
時間の長さよりも矢張り密度、なのだろうか。
ターミエルの死体は直ぐに消えて行った。
飛び散った血も、跡形もなく綺麗になる。
神の死体は片付けが簡単だけれども、斯うも全てなくなるのは矢張り、
・・・神って、其の程度の物だって事だよな。
丗の神は見ているか、俺は与えられた愛を壊す。
其が証明になるのなら悉く、欠片を踏み付けてやる。
どうせ直ぐばれるけれど、一応痕跡は隠して置くか。
ざっと目前の机に目を向ける。先迄ターミエルが読んでいたであろう本が広げられていた。
此は・・・教典か。ライネス国の成り立ちとか書いてあった・・・頁の一文に見覚えがある。
こんな物、疾っくに暗記していただろうに。未だ縋っていたのだろうか。
二柱の王が丗の神に託されて、丗を見ていると。
そんなの幻想だ。其処に救いはない。
其の道の先を良く見てみろ。ほら、突き落とされる丈の崖じゃないか。
俺は・・・違う。俺は飛び立てる。其の為の翼を彼女から貰ったんだ。
本を片付け、そっと部屋を後にする。
―今日は何の本読むの?―
思わず目を張った。
―フフッ、然う慌てるな。先ずは此の経典を読んでから、―
―此、もう読み飽きたよ。―
幻聴だ、こんなの。
―其方には知識が必要なんじゃよ。そんなのではいかん。ほら、最初の一句、―
「・・・丗の神、クリエーターに捧ぐ詠を。」
扉を少し乱暴に閉める。
こんなの、罪悪感のつもりか?
そんな物、疾っくに瓦解した。復讐でもない、此は、
然う・・・彼女に捧ぐ詠だ。
「後・・・一柱、」
逃がさない、絶対に。
何をしてでも俺は成し遂げないと。
息を付く間もなく、ガルダは足を進めるのだった。
・・・・・
「其って、恋じゃないかしらアリアンヌ。」
「っ⁉や、矢っ張り然うなのかしら、エーデル。」
テラスにてアリアンヌと、彼女の親友であるエーデルは午後の御茶を楽しんでいた。
何時もは他愛もない話をする位だが、今回はアリアンヌの様子が明らかにおかしかった。
顔は赤く、何処かそわそわしていて、病気ではないかと疑う程だった。
けれどもアリアンヌは大丈夫と繰り返し、其よりも何かを話した然うで仕方が無い様だった。
其で聞いたのだ。例の皓の貴公子について。
今し方、アリアンヌは逢ったのだ然うだ。カルラと言う一柱の神に。
然う言う彼女の声音は明らかに恋する乙女の其で。
「其にしても驚いたわね。まさか貴方が恋だなんて。」
もう百年以上の付き合いだけれど、こんな事は初めてだ。
抑神が恋をするのは可也珍しい。然う言う感情は疾っくに潰えたと思ったのに。
初恋、と言う物だろうか。彼女は此迄にない位浮かれていて、甘くて、幸せそうだった。
「うぅ、矢っ張り変かしら。で、でも私、如何したら、」
「変なんかじゃないわよ。良い事じゃない、一体彼の何処を気に入ったのかしら。」
そんなアリアンヌが惚れるのなら、私も見てみたかった。
彼女の思考は十分知っている。私のタイプか如何かは兎も角、王子様みたいな神に見えたのだろう。
「そ、然うね。先ずは・・・翼が、本当に綺麗だったの。大きくて真皓な翼、まるで天使が地上に降りて来たみたいで、」
言いつつアリアンヌの尾は石竹色に明滅する・・・うん、分かり易い。
「天使・・・へぇ、実際然うだったのかも知れないわよ。」
天使と言うと、人に翼の生えた姿、で良いだろうか。
「でも、目は全然違ったのよ。其の目を私、屹度好きになってしまったんだわ。吸い込まれ然うな皓で、でも深い闇の様な物を感じたの。屹度永い時を生きて来たのよ。優しさも辛さも知った・・・そんな目だったわ。」
「成程・・・其は益々、私も会いたくなったわね。」
「一回丈だけど、私に咲ってくれた顔も素敵で。噫何て優しい方かと思ったの。任務で疲れていたでしょうに。何度か辛そうな顔をしていたのよ。其でも私には咲ってくれたわ。」
「フフ、其丈聞くと本当王子様みたいな神ね。其とも・・・王の護兵とでも言う可きかしら。」
「っ!然うね。向いていると思うわ。いや、若しかしたら本当は然うなのかも・・・。其程素敵な方だったの。」
すっかり浮かれてしまっている。
こんな嬉しそうな彼女を見るのは何十年振りか。つい応援したくなる。
「若しかして昊見た皓龍達の御利益かもよ。」
En078△▽大聖堂は今昊、一寸した騒ぎになっていた。付近で皓い龍の群が飛んでいたと言うのだ。
龍が来るなんてレアだ。然も皓い龍となれば縁起が良いと思う物だろう。
・・・私は見逃しちゃったけれども。
「あ、然うだったら凄いわ!・・・然うね、確かに似た皓い翼だったわ!まさかこんな効果があるなんて・・・、」
アリアンヌは本気で吃驚した様に口元に手を当てていた。
・・・今の彼女はどんな怪しい呪いとかでも信じそうな程盲目的だ。
「次は何時会う約束したの?」
「え・・・、」
其限彼女は固まってしまった。
紅茶を二回飲んで、たっぷり待ったが進展無し。
エーデルは深々と溜息を付いた。
「まさか、何もせず其の儘別れちゃったの?」
「え、えぇ然うよ。だってそんな迷惑掛けられないじゃない。」
「もう何言ってんのよ!次何時会えるかも分からない相手に恋しちゃうなんて。そんな奥手で如何するのよ。」
「で、でも、今更言われても私、」
こんな調子じゃあ次逢う迄にはもう百年位掛かるんじゃないだろうか。
容易に想像出来、エーデルはじっと親友の瞳を覗き込んだ。
「良い?彼は貴方に聞いて来たのでしょう?未だそんな経っていないなら逢える筈よ。会って、御茶の約束でも漕ぎ着けなさい。」
「そ、そんな急に無理よぅ!」
ぶんぶんと首を左右に振るアリアンナ。
何とも可愛らしい仕草だが、此処は心を鬼にしないと。此も全て彼女の為なのだ。
「大丈夫よアリアンヌ。貴方はやれば出来る子よ。多少強引でも良い、先ずは約束を作るのよ。其丈で印象が変わるわ。後の事は又私に相談なさい、兎に角、今は前進しないと。アリアンヌも此の儘は嫌でしょ?」
「・・・うぅ、」
きゅっと手を握り、彼女の目が泳いだ。
神として、感情をこんな表にする事は然うない。
永らくして来なかった事だ。其の分可也覚悟が必要になる。
でも二百年越しの恋なのだ。やらない訳には行かない。
「だって彼は、大賢者様が昔亡くなってたって事を知らなかったんでしょう?って事は滅多に此処に来れない位辺境の地から来たのよ。もう逃がせばチャンスは来ないわよ。」
「・・・然うね、私もてっきり亡くなられたムルマ様の事とは思わずつい聞いてしまったけれど・・・屹度可也離れに何時も居るのよね。」
尾を激しく振り、アリアンヌはギュッと目を閉じる。そして一つ息を付いた。
「・・・っ、分かったわエーデル!私、行って来る。」
背を押され、勢い良くアリアンヌは立ち上がった。
其の拍子に大きく机の上のカップが揺れたので慌てて両手を添える。
「エ、エーデル、悪いけど私、」
「フフフッ、良いよ良いよ、ほら早く行った。片付けはして置くから、戻って来たらちゃんと私に報告するのよ。」
「・・・えぇ、約束よ!」
はにかむとアリアンヌは急いでテラスを飛び出して行った。
其の後ろ姿を見詰めて、エーデルはそっと微笑むのだった。
・・・・・
「やっと・・・見付けた。」
碧豊かな庭園、其処はEn078△▽大聖堂の中庭にある薔薇園だ。
種々数多の薔薇が育てられていて、鮮やかに咲き誇る。
数々の次元の華が集められたんだろう。一口に薔薇と言っても其々全く違う姿だ。
華丈で1mはある物、蔦を伸ばして壁等を彩る物、薬玉みたいに集まって咲く物。
広大な分もあって、見て回る丈でも可也時間を使うだろう。
神気スポット、とでも言われるのだろうが、大分陽は陰って来ている。こんな頃合いは流石に少ないだろう。
霄に光る薔薇と言うのもあるらしいけれど・・・今日は結構寒いしな。
然う考えていた通り、広さの割に神の姿は全く見掛けなかった。
其に此処は結構入り組んでいる。迷路の様になっているので猶の事だ。
背の高い薔薇は多いし、其がアーチ状になっていたり、何かを象っていたりしているので隠れる場所も多い。
本当に此処に居ても見付からないんじゃ、と思い少しガルダは羽搏き乍ら捜していたのだ。
そして・・・見付けた。
黔い薔薇に囲まれた一角にて其の姿を。
「おや此は・・・何とも珍しい客神ですね。」
「余、驚いちゃいないんだな。」
背後に降り立ったつもりだが、バレていたらしい。
落ち着いた声音で然う告げた神は胥伊、と呼ばれる神だった。
其の姿は此又特徴的だから旻からでも割と直ぐに見付けられたのだ。
一見、絳い豹の様に見えるが、四肢が光る釼の様になっている。
其が音もなく地に触れ、絶妙なバランスで立っている風に見えるのだ。
胥伊は・・・薔薇を愛でていたのだろうか。緩りと此方を振り返った。
昔と変わらぬ、聡明で、でも何も写していないかの様な目。
俺を見ている様で見ていない、彼女が只見ているのは王丈。
「私は感じていましたから。燻る様な貴方の生を、悪意を、研がれた牙を。」
「・・・俺が生きていると分かっていて放置したのかよ。」
「えぇ勿論、其が貴方の罰なのですから。そして終に其が清められるのです。私の手に因って。」
「・・・っ!」
言うや否や胥伊はガルダに向け跳び掛かった。
豹の躯だ、其の瞬発力は凄まじく、一瞬で距離を詰め寄られる。
そして伸ばされていた釼の足が、走り抜け様にガルダを斬り付けた。
釼は可也鋭いらしく、感覚もなく翼が斬り落とされる。
翼程度なら直ぐ回復する。だが此で首を狙われたら、
「・・・さぁ懺悔の時です。」
背筋に悪寒が走り、咄嗟にガルダは背を丸めた。
又翼を犠牲にしたが、何とか堪える。
矢っ張り首を狙われている。弱点、分かってるもんな。
其の儘ガルダの頭上を跳び越え、胥伊は少し駆ける。
こんなに走っているのに音一つ立たない・・・。
此は可也厄介な相手だな・・・こんな手練れだなんて知らなかった。
一寸小難しい話をする御婆程度に思っていたけれども。
・・・いや、正体は俺だって見ているじゃないか、彼の時に。
然うだ忘れるな、此奴がした仕打ちを。
——————私の為に、何でもしてくれるんでしょう?
・・・彼女の声が頭に響く。
其丈で不思議と勇気が出る。
屹度此は増悪、其に因る・・・勇気。
彼女の為なら、何をしても良いという大義名分。
噫、此の感覚に酔ってしまいそうだ。
血を幾ら流した所で直ぐ止まる。
此奴が斬撃を主にするなら十分やり易いじゃないか。
斬られてもくっ付ければ良い丈、急所に丈気を付ければ十分分がある。
「未だ、生きたいのですか。浅ましいですね。」
「そっくり其の儘返してやるよ。こんな永い時を生きても終えられない使命なんて吐き気がするな。」
「・・・終われなくしたのは、貴方でしょうに。」
言い終わるや否や胥伊が音もなく駆け寄る。
正面からなら未だ対処し易い、爪を交差して去なす。
斬る様に蹴り付けるが、其でも上体がぐらつく程度だ。
早さはあるけど、重さが無い。無理矢理押し切ったりは出来なそうだな。
後は斬れ味なんだけれども・・・。
そっと両の爪を見遣る。
・・・すっかり刃毀れみたいに欠けてしまっている。強度は負けているのか。
いや、若しかしたら彼の光る脚の釼は、魔術を込められているのかも知れない。
此は、下手に防ぐより前に出た方が良いかもな。
スライディングする様に胥伊がガルダに斬り掛かった。
早くて対応に遅れてしまう。両足が一刀両断され、足首でバッサリと斬られてしまった。
羽搏き、体勢を崩すの丈は防ぐ。
そして胥伊が斬り付け、通り過ぎる前に自分も斬り掛かった。
刃は命中し、胥伊の左頬に痛ましい跡を刻む。
大きく裂かれた爪痕は目に迄達し、胥伊の視界を半分奪った。
其の儘逃がさない様、一気に尾を生やして地へ突き刺す。
退路を断ち、此の儘近接戦を持ち込みたかったが、あっさり胥伊の刃は尾を裂いてしまった。
駆け抜けて胥伊は四肢で立つ。
怪我に、大して怯えないのか。ターミエルと違って何てやり難いんだ。
「私が、元々王の刃だった事、御存知なかった様ですね。」
「只の教育係だと思ったのに、そんな大それた称号持ってたのかよ。」
足も尾も直ぐ再生する。
俺にダメージはない、先ずは一手入れられたか。
「もう遥か昔の話、老い耄れだと思い油断しましたね。」
音もなく、胥伊の刃が迫る。
曦が足元で煌めいたと思ったらもう眼前だ。
此は、大分生命力を使う覚悟をしないと。
胥伊の両の刃は俺の太腿を突き刺し、無理矢理引き裂いた。
右足が断たれ、傾ぐ前に胥伊は俺の背後を取る様回り込む。
牽制に爪を振るったが、返しの足蹴りであっさり去なされてしまう、左腕の手首も斬り落とされた。
矢張り、早い。分かっていても対応が追い付かない。
此じゃあ音もなく首迄刈られてしまう。
背後を取られ、胥伊の釼は俺の翼を悉く斬り裂いた。
根元から、八翼全てを。
一気に背が軽くなっていっそ浮く様な、そんな感覚。
此でもう、逃げ道は断たれたか。
でも今更そんなの、何の障害にもならない。
最初から俺だって、逃げる気は一つも無いのだから。
素早く尾を胥伊の胴に巻き付ける。
長い手足だ。然う直ぐには斬り落とせない筈。
其の儘上旻へとぶん投げた。可也軽かったのであっさりだ。
投げる際に尾を斬られてしまったが構わない、奴を無防備に出来たなら。
がら空きになった胥伊の腹に向け、爪を突っ込む。
直ぐに気付かれて腕を斬られるが直ぐ治る。此の一突きの為に全生命力を集中させる。
俺の刃が、深々と胥伊の腹に突き刺さった。
柔らかい皮膚を裂き、手首毎突っ込まれる。
ターミエルとははっきり違う肉を裂く感触。
気持悪い・・・でも引く訳には行かない。
「・・・ガ・・・心臓を、狙った筈、でしたが、」
胥伊の釼も又、俺の胸元に刺さっていた。
深々と、背骨に達する位。
痛みに眩暈がする。でももう数瞬ずれていたら。
心臓を破壊されたら流石に不味かった。胥伊も捨て身で一気に入り込んで来ていたのか。
腕を少々乱暴に引き抜き、尾を振るって胥伊を殴り飛ばした。
爪が抜けた衝撃で、血を撒き散らせて胥伊は吹き飛ぶ。
毛皮が絳い所為で一見分かり難いが、夥しい量の血が出た事だろう。もう助からない。
奴を飛ばした所為で、自分も胸元から血が噴き出す。
一気に全身が凍える感覚、足がふら付いて力が入らない。
でもそんなの、数秒も経てば元通りだ。大きく息を吸い、全身に血を巡らせる。
大丈夫・・・俺は生きている。
どんな怪我をしても俺は、未だやれる。
此も全て、彼女の為だ。なら、動けるだろう。
全身で息を吸い、落ち着かせる。
もう戦いは終わりだ。暴れない様セーブしないと。
「噫・・・本当に、全てを、あんな物に、捧げたのですね。」
思わず耳が動く。
胥伊は何とか立とうしたが、力が入らず倒れ伏していた。
釼が曦を失い、まるで石の様な無骨な塊へと化す。
まるで足枷の様に、彼女を地に縫い付ける。
血を流し続けて、地をも濡らし始める。其でも胥伊は口を開いた。
「何と嘆かわしい、何と愚かな。あんな物に縋るなんて。」
「御前が、彼女の何を知ってるんだよ。」
声を荒げずにはいられない。
そっと胥伊に近寄る。
止めを・・・刺さないと。
「彼女・・・彼女ですか。ハハッ、噫貴方らしい、」
相変わらず何処を見ているのか分からない目で。胥伊は虚空を見詰める。
「彼は・・・彼女なんて呼んで良い物ではありません。彼は、名すら与えられなかった。存在してはいけなかった物、丗の神が認めなかった存在。」
「っ黙れ!彼女の事を侮辱するのは、俺は赦さない。」
もう四肢を横たえる丈の獣の腹に爪を掛けてやった。
裂き、血が溢れる。でも胥伊は嗤っている様で。
・・・此奴が嗤う声なんて初めて聞いた。こんな不快な物だったなんて。
「貴方は・・・崇拝す可き者を間違えた。我等と同じ、王丈を見ていれば良かったのに。」
「然う言う御前だって、王だかを祀ってるけど、助けてもくれないじゃないか。俺なんかに、こんな所で殺される未来が、運命が、王から賜った物だなんて抜かすのかよ!」
噫、駄目だ。折角落ち着かせようとしていたのに。
此奴の声が、彼女の声を遠ざける。
もう黙れよ、彼女の声が聞えないじゃないか。
「ククッ・・・ハハッ、私は・・・此の終わりでも、満足、している。確かに、読みは、違えましたが、」
刃を振るう、柔らかい毛皮を裂く。
其の度に奴は呻くが、口は止まらない。
「まさか、未だに貴方が、あんな物に憑かれているとは、思わないでしょう。何ですか、その、生命力は、死ねない躯、死ねない魂、終われない使命、そんな物を与えた物を・・・貴方は、選んだのですよ。」
「違う、違う!此の力は、俺丈が彼女を忘れない様に、壊さない様にある為で、」
「噫、今では貴方こそが化物だ。そんな力なんて、昔の貴方にはなかった・・・憐れな、最早其は曦ですらない。」
「曦じゃなったら何だよ。導くのが曦丈だと思うなよ、俺は只、」
此奴、如何して死なない。
どんなに斬り付けても喋る。彼女を汚す口なんて要らないのに。
どんなに血で塗りたくっても、言葉が・・・消えない。
「曦でなければ・・・貴方は・・・虚無だ。」
手が、止まった。
虚無?・・・虚無だって?
其・・・は、
「ハ・・・ハハッ、然うか、俺が然う見えるのか。」
自然と笑みが零れる。
「噫、良い。其なら良いよ。其こそ俺が望んだ事だ。俺は只、彼女の傍に居たい丈、同じになりたい丈、一緒に居たい丈。」
「そんな物が・・・望みか。分かっているのに求めるなんて、本当に愚か、ですね。」
「どうせ分かり合えないんだろ。然う俺は、此は俺の望んだ形、俺が斯うあるのは彼女の為だ。」
——————其じゃあ殺して、私の為に。
刃を振るう。
止めるな、もう止めるな。
俺は此奴に認められた、其でもう良いじゃないか。
然う俺は虚無に、君と同じになれるんだよ。
「フフッ・・・噫、如何やら貴方の罰は未だ終わらない様ですね。私には分かる、分かるからこそ理解が出来ない。」
もう内臓が零れて、其すらも斬り刻まれて行くのに、未だ死なない。
未だ此奴は、殺せない。
「・・・もう彼は、壊れてしまったんでしょう。もう存在しない、・・・当然です、あんなに・・・私達が、壊した、のだから。」
「・・・っ違う、在る、彼女は未だっ!」
「噫、だから見苦しい。其でも未だ、貴方はこんな事を・・・続けている。もう・・・居ないのに。未だ其の影を、なぞって・・・いる、」
「在る、彼女は在る、壊れてなんていない。消えてなんていない、死んではいない、殺されてなんていない!だって俺には聞こえる、感じる、此の丗に未だ、だって・・・詠を聞いたんだ、だから俺は、」
——————<―>§i 《i》―〉i〈 //X〇i〇
噫、聞こえない。
彼女が俺に、語り掛けてくれているのに。
御前の所為だ、御前の所為で聞き取れない。
もう・・・黙れよ。
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れッ‼
もう後は只規則的に爪を振るった。
叩き潰す様に殴り付け、肉も毛皮も内臓も全てバラバラに。
御前こそ、無くなれ。消えてしまえ、俺は赦さない御前達を。
声が次第に鳴き声になり、呻き声になり、
只の肉塊になっても俺は止めなかった。
未だ、未だ此奴は存在する。消さないと全て壊さないと。
壊せ、壊せ、壊せ壊せ壊せ壊せ。
——————壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ壊セ、
ほら彼女も望んでいる。然う此は全て彼女の為に。
「彼女の為に、彼女の・・・為に、噫然うだ此は全て彼女の為、彼女の為に俺は何でもする。俺は、彼女の為に、」
「カルラ様っ!」
突然、新たな音が生まれた。
其は背後からの様で。
噫もう次から次へと、彼女の声を掻き消さないでくれよ。
緩り振り返った彼の姿を見て、彼女は息を呑んだ。
「如何して・・・一体何を、」
知らず声が震える。
如何して・・・如何してこんな事が、
アリアンヌは一つ息を吸った。でも其を吐く事は出来ない。
カルラ様は、私の教えた通り中庭に居た。
でもこんな広大な所で、然う見付けられないんじゃあ、と挫け掛けたけれども。
其でも走り回って、やっと見付けたのだ。
でも見付けた彼の姿は・・・全く変わっていて。
禍々しく伸ばされた爪、喰い殺さんとする鋭い牙、逆立つ甲に覆われた尾。
そして・・・殺意の宿った瞳。
そんな彼はもう皓くはなかった。
全身真絳に濡れそぼち、雫が幾つも伝っていて、
血だと、直ぐ分かった。眩暈のする程大量の。
最初声を掛けたのは、彼が大怪我をしたのだと思ったからだ。
でも・・・でも、
違う、此は・・・此の血は、
彼の目が雄弁に物語る。
私はこんな感情知らない、でも、
分かってしまう。此の絳を、其の冷たさを。
彼の前には見慣れない絳黔い塊があった。
其処からする、此の何とも言えない異臭、
此は、血と肉の、生々しい臭。
其の肉塊には、見覚えのある釼が生えていて。
でも其はもう何時もみたいに光っておらず、石の様で。
嫌だ、もう理解したくない。此以上気付いてしまったら、
私はこんな非現実的な現実を受け入れないといけなくなる。
自然足が震える。息も乱れてちゃんと吸えない。
彼の釼は・・・大賢者様の、胥伊様の脚に、良く似ていて・・・、
薔薇園の此の黔薔薇のエリアは、彼女が特に気に入っていた。
そしてカルラ様は・・・胥伊様を捜していて、
私が・・・場所を教えてしまって・・・、
私が、私が、私が、
私の所為で、胥伊様は殺されてしまったとでも・・・言うの?
「・・・アリアンヌ、如何してこんな所に来たんだ。」
凱風の音すら聞こえなくなった世界で、彼の声丈が耳に残った。
私の名前を覚えていてくれた、なんて思ったのは一瞬で。
後は只々恐ろしいと思ってしまったんだ。
私を見ないで、私に気付かないで。
如何して、先迄と同じ柔らかい声なのに。
「わ、私は只、あ、貴方ともっと、話が・・・したくて、」
何とか声を絞り出す。でも其丈で限界だった。
じっと目を合わせた儘、カルラ様は私へ足を伸ばす。
音もなく、只見詰めて。
噫其の目の意味を、嫌でも私は分かってしまう。
其の皓は、迚も残酷で、
・・・獲物を逃がすまいとしているんだ。
胥伊様の遺体だったのであろう肉塊が消えて行く。
同時に、カルラ様の全身は又皓く輝いて、
冥く成り掛けた頃合いに因り輝いて見えるのと同じく、
より寒く感じ、思わず躯を抱いた。
一体、如何して胥伊様を、
若しかして先に居場所を聞いたターミエル様ももう・・・?
此が彼の使命なのだろうか、でもあんな、
肉塊に・・・変えてしまう程執拗に手を加えるなんて・・・、
思い半ばして吐き気が込み上げて来る。
嫌だ、嫌だあんな悍しい物、
気付けばカルラ様は私の目前に迄来ていた。
相変わらず其の瞳は綺麗で、どんなに逸らせたくても目を外せなくて、
・・・開いた旻に、彼と同じ皓い影が舞った。
其は龍、今昊見たのと同じ様な。
噫、彼等は吉兆の印なんかじゃあなくて、寧ろ、
「・・・恨みなんて、一つも無いんだけど、」
小さく、本当に小さく呟く声がした。
そしてゆるゆると彼は刃を備えた右手を上げる。
其の顔は矢張り辛そうで・・・でも、咲っている気がした。
心から・・・咲っていたのだ。
「全て、全て・・・彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に、彼女の為に、」
噫私は分かってしまった。
私の此の恋は、初めから叶う事はないと言う事を。
届く事は、決して無いのだと言う事を。
だって貴方は、ずっと違う方を見ているから。
私が入る余地なんて、一片だって無かったんだわ。
・・・有難う、私に恋を教えてくれた貴方、左様なら、私を殺す貴方。
・・・・・
汚れた皓き翼は不浄の証
穢れた皓き刃は裏切りの証
堕ちた皓き羽根は堕落の証
淀んだ皓き鱗は破壊の証
虚無の瞳は彼女への誓いの証
然う、此の身全てが・・・彼女へ捧げる詠だ
うん!血腥かったね!
と言う事で如何だったでしょうか、恋愛小説だったでしょ?ね?
其と同時にガルダくん大暴れの回。やぁーっとだよ、ずーっと此の子ぐずぐずしてるんだもん、やっと動き出してくれた感じです。
今回の彼を見たら何となく、あ、此の子の未来、丗曦になるわ。と予兆が出て来るのではないでしょうか。
加えて懐かしき二話で彼が狼を殺し捲って笑っていたのですが、斯う言う一面があったと言う事ですね。別に彼は、彼が今から裏切るから、変な意味持たせてみようぜ、と言う思い付きではありません。
思った以上に彼がヤンデレ化した気もしますがね、でももっと重くても良いかも知れない。
彼の事は嫌いになっても良いので、ヤンデレは好きになってください。作者との約束です。
書きたくてうずうずしていた割にはあっさり終わっちゃいましたけれどね・・・余彼等に喋らせるとネタバレオンパレードだったんだもん。
其と何気に全ての塔の名前が出ましたね。ややこし過ぎるわ、自分で言っちゃう。もう中二病所じゃないよ。
何気今回は特に大賢者様の姿や名前、大聖堂の名前だとかは全て由来と言うか繋がりがあります。気付けたら本当に凄いです、尊敬します。分からせる気が無いので可也難解にしました。解けても全く納得はしないと思うので、何となく分かったら噫、程度に留めてくれると良いなぁ。
そんな次回は、マジのマジで書きたかった話!うぉおお!テンションぶっ壊れ!
もう堕ちる所迄堕としちゃう話です!やったぁ私の性癖のオンパレードだぁ!
此迄以上に、追い掛け難い話になってしまうと思いますが、何卒個人趣味なので御了承くださいな。
其では又、御縁がありましたら!




