51次元 犀魚よ願う詠ハ水月ヲ揺蕩って
皆様今日は!おぉ!今回は文字数の割に投稿が早いぞ!
と言う事で、宣言通りちゃんと毎日、今迄の倍作業量を増やしてみたのですが、効果が出ていますねぇ!
只未だ未だ慣れないです、もうずっと書いている気分、ずっと校正していて終わらないんですね。
でも此に慣れたらもっとスピーディに書ける筈!うん、此の調子で続けたいですね!
そんな今回は次元には行きません!そろそろ、書かないといけないなぁと言う話を盛ってみました。
・・・実は何気に広げ続けた風呂敷を纏めに掛かる作業に入っています。
佳境も、近そうですね。今回は新キャラが多いので御楽しみに!
然うでした、言い忘れていましたが、最近キャラ紹介とか、其の辺が余り進んでいません。
現在色んな複線回収の為に今一度作者自身の手で全話読み直し、手直し中なので、其の序でに其の辺も綺麗にしようと思います。
だから最初の頃の話が校正入っていたりするんですよね、主に誤字探しが殆どだけど。
其の為もう一寸更新遅れます!本編のスピードは速くなっているので其で赦してつかぁさい!
湖面の塔は静かに彳む
波紋を作るは精霊達の徒か
皓亜の人魚は哦うだろう
叶わないと知りつつも湖が枯れぬ事を、澱まぬ事を
私の詠が贄になるのなら
どうぞ此の声が枯れる迄捧げましょう
・・・・・
「やっと・・・緩り出来る様になって来た感じだな。」
「噫、中々、濃密な時間だったな。」
次元龍屋、其の居間にてガルダは御茶を準備していた。
其の間にセレは金平糖を火鼠達に振舞っている。
ALの次元での一件後、店はドタバタ続きだった。
如何やらZNは本当に店に連絡は入れていたらしく、スーが頑張って依頼を受けようとしていた然うだ。
T&Tについてはガルダが詳しいので聞いたら間違いないとの事。
今回は情報としては役に立たなかったが、結果ZNとALに繋がりがあって自分達が入り込み易くなったので、助かった。
今後も仲良くしたい所だな、矢っ張り金と言うか力が違う。
其とZ1-ΘとL⊝L⊝ ▼▲/の部屋も造ったのだが・・・。
L⊝ ▼▲/の方は未だ良い、ハリーの件もあったしな、自由にして貰った。
只Z1-Θは・・・少し調子が悪い様だ。
自分達も分からない事が多いのでALの報告待ちなのだが、向こうも思ったより資料が多くて大変そうだ。
此処にはメンテナンス出来るのも居ないし・・・此は彼の研究所の神適当に拉致すれば良かったかな。
まぁ一応殆ど全自動で出来るみたいだが、念の為な。
加えて魔力とロボットの融合と言うのが初めての事だったので気になる事も多い。
何と言うか性格やらが変わって行っているみたいだ。他の魔力に聞いても、彼はもう違う、仲間じゃないと言っていた。
果たして此が良い事なのか、今一分からない。安静にして置こうと言う事で、今は部屋に残って貰っている。
他の魔力達も気にしてくれてはいるので、何かあれば呼んで欲しいと伝えて置いた。
と、そんな具合でパーティの調整をしていたので数日が経った。
Z1-Θは自分が招き入れた訳だし、自分が離れる訳には行かない。未だ待機が必要だな。
暇だけれど未だAの所に行きたくないなぁ、病院恐いなぁと思っていたらガルダが御茶に誘ってくれたのだ。
勿論断る理由もない、今斯うして穏やかな時を過ごさせて貰っている訳だ。
「良しと、セレ、御茶が入ったぜ。」
「噫何時も有難うガルダ、然うだ菓子、とは少し違うが此ならあるぞ。」
時空の穴からプラスチックの容器を一つ取り出した。
「へぇ、龍から貰ったのか?一寸楽し・・・、」
セレが蓋を開けた所でガルダは固まってしまった。
容器の中はある物で満たされていた。
濃い絳紫の丸っこい皴の入った此の果実を加工した食べ物は・・・、
梅干・・・だ、此梅干だ!
「えーっとセレ、悪いけど確か此、御茶には食べないと言うか、多分御飯と食べる物だと思うけど。」
何かの冗談かと思ったが抑何故彼女は此を持っているのだろうか。
彼女は良く龍達から贈り物を貰っているし、其の内の一つだろうけれど、何だろう此の田舎の婆ちゃん感。
「あ、いや、私も然う思ったんだが、如何やら龍達に聞いたら此は御茶に合うと言われてな。」
「其、揶揄われてんじゃあないか?」
「い、いや私は信じるぞ。私は此を御茶と飲むんだ。」
彼女には悪いけれど自分は全く信じられないのでそっと菓子を準備する。
何時客が来ても良い様に備蓄はあるからな。まぁセレがリタイアしたら口直しに食べさせてあげよう。
ま、龍達の冗談じゃなかったら屹度其の龍の味覚が自分達と余りにも懸け離れた物だったんだろう、然う思おう。
「所で其って誰から貰ったんだ?」
「ん、貰ったと言うより生えて来たんだ。ほら覚えているか?前、と言うか初依頼が此の店に来た時にミーアとミルミが来ていただろう。」
「初依頼?えーっと・・・、」
何だか色々あり過ぎて思い出せない、抑依頼ってあったっけレベルだけど。
「ドレミが仲間になってくれたから、偽と言えども中々有意義な依頼だったがな。其を持って来てくれた龍族、巌遊兎の二柱だ。」
「!あ、噫あったなそんな事!何か懐かしいな、彼奴元気にしてるかな・・・家を派手に壊してくれた郵便屋さんか。」
何だか思い出して来た。彼の時は俺とハリーとセレで三柱しか居なかったんだよな。
あー懐かしい、此処に居たら時間間隔狂っちゃうけれど、凄く昔に感じる。
「ククッ、然うだったな。で、其の家を壊してくれた時に御礼で貰った種だ。」
「ふーん・・・え、種って彼の、何か吐き出して貰った奴?ちゃんと育ててたのか?」
「噫、御蔭でやっと収穫出来たんだ。」
「何か完全に忘れてたけど、忠実に頑張ったなぁ!えぇ、もう収穫って・・・何時の間に。」
確かウメーの実だったっけ・・・完全に芥だと思っちゃってたけど、セレは大事に育ててくれてたんだな。
「ククッ、然うだ。夢の自家栽培だぞ。前世で一度はやってみたいとずっと思っていたんだ。初物だぞ。」
あ、そんな憧れあったんだ。
何だか一寸意外だけど、まぁ彼の次元じゃあ自家栽培ってとんでもない高級品だったもんな。
「只、作ったものの食べ方が分からなくてな、龍達に聞いてみていたんだ。」
「其で茶が合うと。」
初物を台無しにしたくは無いけれども、と言うか梅干が成るんだな、梅じゃなくて。
勝手に干されるのってその・・・何なんだろ。
「良し、じゃあ・・・食べてみるぞ。」
セレは御茶を一口飲むと思い切ってウメーを頬張った。
そして・・・、
「・・・っっ⁉っ、‼」
突然カッと目を見開き、両手を広げて壮大なパントマイムを始めた。
何だ此は、発作か?ハリーの不思議な踊りが伝染ったか?
「セ、セレ大丈夫か⁉不味いなら吐き出しても、」
「う、美味い!美味過ぎるっ、な、何だ此信じられないっ!」
「・・・え、」
セレは感動の余りか半面を紅潮させて椅子から立ち上った。
そして恐れ戦く様にウメーを見詰める。
「ガ、ガルダ、此は・・・騙されたと思って食べてくれ、此は凄いぞ、世界が変わる!」
モフモフ以外で彼女がそんな熱意を向ける物なんて初めて見た。
此は・・・何方だ?
本当に美味いのか、其とも本当に不味かったから俺も共犯?にさせようとしているのか。
でも多分此食べないと尾とかで無理矢理食わされる奴だ・・・。
「わ、分かった食べるよ。」
覚悟を決めて一口、そして口に入れた瞬間分かった。
此・・・美味い!凄い甘くてほっこりする。
思わず目を見開くガルダに満足そうに彼女は頷いた。
「え・・・え、何此のジューシーさ。此完全にフルーツじゃん。」
「噫、私が今迄食べて来た物の中で間違いなく一番美味い!信じられない事だ!」
セレが感動するのも頷ける、此は確かに美味い。
でも何か・・・世知辛いなぁ、此の梅干擬きがセレの一番だなんて。
其を悲しいとも些とも思っていない所が又、
セレは余っ程気に入ったらしく、二個目は味わう様に緩りと噛み締めていた。
彼女がこんな幸せそうな顔をするのは珍しい事である。
見ていると此方も嬉しくなって来る、本当に良かったなセレ。
「ミルミ達にはちゃんと御礼言わないとな。」
「噫!私に出来る事なら何でもしよう!」
うわぉ、本当に何でも出来そうな勢いだな。
セレは其の後も脇目も振らず三つ立て続けに食べたが、其処で満足したらしく御茶を飲み始めた。
「ふぅ、大変美味だった。御茶も美味しいし、最高だな。」
「セレが嬉しそうで良かったよ。」
其を聞くと彼女は一寸とはにかんで目を伏せた。
「然うだ。最近何かとドタバタしていたからな、話せていなかったが前の次元で凄い事があったんだ。」
然う言う彼女は何と言うか、見た事の無い顔を浮かべていた。
優しい・・・然う、目元が凄く穏やかな気がして、何時も俺と話してくれる時よりも優しく咲って。
・・・一寸丈、彼女が離れる気がした。
如何してそんな風に思うんだろう、俺は、俺は、
彼女を縛りたい訳じゃなくて、寧ろ自由にさせたくて、
何時もと違う彼女を見られて嬉しい筈なのに、不意に騒ついた。
屹度今から彼女のする話が何か、予感めいた物を感じたからだ。
セレは迚も話した然うにしているのに、何度も言い淀んでいる様だった。
珍しい、はっきり物を言う彼女だけれども、若しかして・・・恥ずかしがってる?
「その・・・実は私の母さんに逢ったんだ。」
「・・・え、」
思わず呑み掛けていた紅茶を噴き出しそうになった。
慌てて口を離し、代わりに出していたクッキーを一つ摘まむ。
「母さんって・・・え、母親?セレの?」
其は凄い、初耳だ。
まぁ其の辺りの過去って何となくタブーかなって事で俺も前世では余り話さなかった訳だけれども。
抑彼女も、余り幼い時の事は憶えていないと言ってたしな。
「あ、母さんと言っても彼だぞ。生みの親の方じゃなくて、育ての親だ。」
然う言ってはにかむ彼女が何とも言えず可愛くてつい惚けてしまう。
い、いや駄目だちゃんと話を聞かないと。
「育てって・・・いや何の道初めて聞いたよ。逢ったって・・・じゃあ前世の次元に行ったのか?」
あんな所、彼女はもう二度と行きたくないだろうに。
然う思いつつも彼女は変わらず嬉しそうだった。
「いや、何と言うか、育てて貰ったのはうんと小さい時で、前世よりもその、前、と言うか、」
彼女は説明し難そうに何度か言いあぐねる。
けれども聞き逃せない単語が出て来た、前世よりも前って・・・?
「えーっと・・・前世って彼の次元だよな?じゃあ若しかして・・・彼の黔い手、とか?」
「っ⁉ガルダ知っているのか?」
驚きの余り彼女が目を見開く、思わずウメーへ伸ばしていた手が止まった。
「知ってるって、えといや、ほらセレ話してくれた事あっただろ?旻か何処かから堕ちて来た時に黔い手が如何とかって、」
「然う・・・だったか?まぁ然うだ。」
自分は余り憶えていなかったから殆ど触れなかった話だけれども。
何方かと言うと彼の時はガルダの方が憶えていたよな、うーん懐かしい。
黔い手ってのは確かボスが言っていたか・・・確かに話したかもな。
「と言っても結構姿は違ったけれども、口で言うのも彼だし、イメージを送るか。」
「ん・・・お、おぉ、こんな姿してたのか。」
思ったより手が一杯あって何とも恐ろしい姿をした化物の姿が脳裏を過る。
・・・って駄目だってセレの母親なんだから化物って思っちゃあ。
セレもあんな嬉しそうにしているんだ、屹度優しい母親だったんだよ。
「でも此の姿って・・・何かその、次元の者っぽくないよな?」
「噫、彼女はヲルと言うガイの一柱だ然うだ。」
ガイ・・・其って丗から退けられた者の事じゃないか。
俺は見た事無いけれど、まさかそんなのに会っていたなんて、
「ガイって、珍しいな。次元には余居ないイメージだったけど。」
「ん、次元じゃなかったな。その、鏡界に棲んでいたんだ。」
「噫鏡界・・・え⁉何で其処行ってんだ?セレ鏡界行ったのか⁉」
滅茶苦茶食い付いて来たので思わずセレは少し下がった。
でもそんな恐ろしい単語を聞いて吃驚しない奴の方がおかしい。
何しれっと世界一危険な所を旅気分で行ってるんだ!
「然うだな、其処の説明からすると一寸長くなってしまうが、ガルダは此を知っているか?」
然う言って彼女は時空の穴から小さな橙の水精を取り出した。
綺麗だけど、見た事はない。首を左右に振ると彼女は続けた。
「此は魔力抑制剤と言うらしい、如何やら私は此に滅法弱いみたいでな。此を先の次元で刺されて、私はまぁ謂わば死んでしまったんだ。」
「死・・・っ⁉え、此そんな劇薬なのか?ってセレ此持ってちゃ駄目だろ!」
何かの弾みで彼女に刺さってもいけない。何とか取り上げようとしたが、あっさり躱されてしまった。
お、おかしい、先迄楽しい御茶になる雰囲気だったのに動悸が凄い。
死んだの?何で当たり前の顔しているんだ!
「待ってくれ、此は貴重品だから未だ必要なんだ。其に死ぬって言ってもそんな事になるのは私丈だ。」
「じゃあ猶の事俺が持つって、」
手を伸ばしたが彼女は直ぐ時空の穴へ其を仕舞ってしまった。
くぅ、此じゃあ奪えない。前のセレは時空の穴の扱いが独特だったみたいで、俺もセレのを利用出来たりしたけれども。
流石に今はもうすっかり扱いに慣れてそんな事は出来なくなった。でも貴重な劇薬って何だよ、要らないだろ。高級な毒みたいなもんだろ。
「まぁ其でだ。私は当たり所が悪くて死に掛けて、中途半端に鏡界に行ってしまったんだ。でも其処で母さんに逢えたから結果オーライだな。」
「う、うーん・・・い、良いのか其で、ちゃんと帰って来れたから良かったけど。」
しれっと・・・帰って来てんだよな。当たり前の顔して前神未到の事して帰って来るの止めてくれないかな。
「一応ガイは自由に行き来出来るから大丈夫だよ。今回は彼の・・・昔使っていた罅が良い具合に出て来たから出られたけれども。」
「へぇ、何か使えなくなっちゃったって言ってた奴だろ?其はまぁ御疲れ様。」
罅って前世セレが良く使ってた奴か。
未だに彼の原理、分かんないんだけどな。
多分セレの特殊能力か何かなんだろうけど。
良く分からない力を使うのって恐いけれど、其で助かったのなら・・・まぁ。
「ま、鏡界はもう私にとっての故郷みたいな物だ。然う邪険にしないでくれると嬉しいな。」
「セレの母さんってずっと其処に居るのか?」
「みたいだな。外の世界が恐いって言っていたし、・・・時々様子を見に行くつもりだ。」
「其が良いな。家族って言うか、然う言うのが居て良かったよ。」
「うん、凄く良い奴だった。ククッ、あんな正面から何度も愛していると言われる何て思っていなかったよ。」
気恥ずかしさは大分抜けたのか彼女は只もう嬉しそうに話してくれた。
良い事だ。そんな当たり前みたいな幸せが彼女にあって。
其に最悪・・・何処にも居場所がなくなったら其処に帰れば良い。逃げ場所があるのは良い事だ。
俺は、彼女の翼を捥いじゃあいない、然うだろう?
前世みたいに俺が縛った所為で彼女が飛べなくなって堕ちるなんて所はもう見たくない。
「・・・ガルダ?」
僅かに首を傾げ、彼女はじっと自分を見ていた。
知らず下がっていた視線を上げる。
「ん、何だよ。凄く良い事じゃないか。」
「・・・其でも、私は、ガルダの傍に居るよ。忘れないでくれ。」
如何してそんな、見透かした様な事を、
思わず息が止まって、彼女は静かに微笑んでいた。
「時々逢いに行く丈だ。ずっとは居られない。私の居場所は此処だ。だからそんな顔をしなくても大丈夫だ。」
念を押す様に彼女に言われ、ついまごついてしまう。
俺、どんな顔してたんだろう、考えたくなくてそっと両手で顔を軽く叩いた。
「何方かと言うと、ガルダに連れて行って欲しい位だ。何処に行くのか見てみたい。私が此処に居る動機なんてそんな物だよ。」
「・・・うん。」
何も言葉が出なかった。
屹度其の言葉が余りに透明で、俺は其の温度を忘れられずにいたから。
時々彼女は不意に、信じられない事を言う。
其は、神になってから顕著な気がする、だから俺は、
彼女が独りで何処か行かないか、ずっと心配になってしまっているのだと思う。
連れて行ってって・・・そんな事を言われるなんて。
・・・何の道、今直ぐには無理なんだよな・・・。
「・・・ん、何の話をしてたか・・・噫母さんの話だったか。」
「そ、然うだな。えと、気になったんだけど、じゃあセレって鏡界で生まれたのか?其の辺りって教えて貰ったのか?」
「噫、其が如何やら良く分からなくてな。母さんは鏡界で拾って、其からずっと育ててくれた然うだ。だから拾う前は分からない。随分、探してくれていたみたいだが・・・。」
「そっか・・・でも見付けて貰って良かったな、其のガイに。本当の親も若しかしたら其の内ひょっこり見付かるかもな。」
「何だかもう十分かも知れないけれどもな。どうせ捨てる様な子なら要らなかったんだろう。今更会っても分からないかも知れないぞ。」
「そんな風に言ってやるなよ。若しかしたら事情があったのかも知れないし、会ってはみたいんだろ?そりゃあ子供を捨てる様な親なんて、って思っちゃうけれど、理由は聞いてみたくないか?」
「・・・まぁ・・・、」
意外にも可也彼女は言い淀んだ。
渋々と言うか・・・。
自分の種だとかが何なのか知りたいのなら其処から知った方が早いだろうに。
まぁ今更って言われたら・・・然うなんだけど。
「然う言えばセレってその、ガイに育てて貰っていた時の事って憶えてなかったんだっけ。良く互いに分かったな。」
御茶を一口、含ませる。何だか色々懐い出されるなぁ。
「噫、然うなんだ。如何やら其の時の私はずっと眠っていたみたいでな。だから憶えていなかった様だ。母さんが直ぐ気付いてくれたんだよ。」
「ずっと眠っていた・・・?ふーん、然うなのか。」
紅茶を又何口か飲んだ、何だか不思議な話だけれどもそんな物かな。
「ん、然うだ。ガルダは家族とかいないのか?聞いた事なかったな。言い難いなら話さなくて良いけれども。」
「家族かぁ・・・居たなぁそんなの。一応父さんと母さんと兄さんの四柱家族だよ。」
「兄・・・ガルダも兄がいたのか。」
「凄く齢が離れていたから余り兄弟って感じしなかったけどな。」
然う言う彼の目は何処か遠くを見ていた。
・・・余り口調の割に懐かしむ感じがしない、予感でしかないが懐い出さない様にしている気もする。
浮かれて、嫌な事聞いてしまったかもな。
でも然う語る彼の目は何処迄も皓く澄んだ。
如何してそんな諦めた目をするのか、何を見て来たのか。
触れて確かめる事すら烏滸がましく感じてしまう目だ。
私は此の目に惹かれて彼に付いて来た節もある所だ。
「元気、してるかな。ま、今何処で何してるかも知らないけどな。」
「・・悪い事聞いたな。」
「いやいや、セレが落ち込む事ないって。もう顔も覚えてないし、だから、せめてセレの親は居てくれて良かったなって思うんだよ。」
「・・・うん、有難う。」
ウメーをもう一つ摘む。
今でもはっきりと彼の闇の感触は憶えている。
温かい記憶だ。ガルダ以外にもこんな懐いを残す相手がいるなんて。
つい余韻に浸る様に薄く目を閉じる。
・・・うん、今なら大丈夫だな。
「良し、ガルダと話せて何だか凄く安心したな。折角だ、又今度Aの所へ行って来るよ。」
「おっと急だな。えーっと、ニコニコ医院って事だよな?」
「噫、魔力抑制剤について調べて欲しいんだ。私には劇薬だからな。」
「然うだな。次元だったから良かったものの、此方でやられたら洒落にならないもんな。」
一撃死は確かに恐ろしい、俺だって其は防げない唯一の弱点だ。
セレは脳天撃たれても平気になっちゃったけれど、光と其の薬が駄目なんだな。
他にも一応背中の機械、BDE-01も弱点だっけ・・・、斯うして見ると結構多いな。
何方かと言うとセレもアーリーみたいに護りの力の方を付けさせたら良い気がして来た。
何だかどんどん攻撃特化になっている気がする。
其の分弱点も顕著になると言うか、もっと均したい所だ。
・・・って言っても俺がセレに指南する事って無いけどな、教えた所で彼女は抑技術力でカバーして来そうだ。
彼女の言う通り、Aだとかの機関に頼って、調べて貰うのが良いかも知れないな。
「ライネス国の奴等に此がばれたら面倒だからな。・・・ん、」
クッキーに手を伸ばしていた彼女だが、不図其の耳が動いた。
其迄楽しそうにしていたのに、一気に不機嫌そうな顔になる。
「折角の御茶だったのに・・・変な奴が来たな。」
「変な奴?神、なのか?」
「恐らくは。大分離れていると思ったが、案外此方へ真直ぐ来ているな。」
ちらと窓を見遣ると確かに遥か先に何か影が見える。
でも目視じゃあ良く分からない。セレの波紋頼りだ。
知らない神が来るなんて珍しいな。セレの様子から依頼神、とかじゃなさ然うだ。
「敵意も無いが、勁い魔力を感じるな。・・・ガルダ、済まないが、」
「噫、今回は御開きだな、じゃ片付けようぜ。」
もう一寸話したかったけれども仕方ない。
一度丈眴せを交わして、二柱はそそくさと片付けに入ったのだった。
・・・・・
「さて、此方から出向いてやろうか気になる所だな。」
「大分近く迄来てるんだよな?」
静かに彼女は頷く。
さて、片付けも済んだ訳だが、相変わらず彼の神は緩り来ているな。
此処迄来たら間違いなく狙いは此の店だな。
まぁ敵なら本来、此処迄来れずに迷いの術に掛かる筈なんだが。
彼丈の魔力を持っているんだ、突破して来た可能性もある。
「・・・店を壊されても嫌だし、此方から挨拶しに行くか。」
―ん、気を付けてな。―
無言でギュッとセレは火鼠を抱き締めるとさっさと扉を開けて行った。
「っとおい待ってよセレ、」
行き成りだったので出遅れてしまう、数歩後からガルダも外へ出た。
「噫付いて来てくれるのか。」
「そりゃあ勿論、一柱で行くなよ危ないだろ。」
「ククッ、危ないか。」
何がおかしいのか小さくセレは笑うと早めていた歩幅を緩めた。
近付いて行き、珍妙な客神に思わずガルダは目を見開いた。
此方へ向かって来ていたのは、何て言うか巨大な蝸牛の様だった。
真黔の全長5mはありそうな蝸牛だ。只目の触角は無く、ピコピコ動く垂れ耳、逆立つ甲、鰭の様に揺らめく帯、其に浮かぶ四つの玻璃瓊。
アクセントのつもりなのか頸と思しき所には絳いリボンが掛けてあった。
其処丈見ると妙に愛らしいが、如何せん不気味と言うか、捉え所の無い姿をしている。
そんな蝸牛の背には殻の代わりに大きな金魚鉢の様な物が乗せられていた。
中には水が入っており、一頭の魚影が見える。
否、彼は魚ではない様だ。全身輝く許りに皓く細長い。
儒艮の様でもあるが、面は何処となく人間の其で、手は異様に長い。
長い蜘蛛の縷で編まれた様なケープを被り、金魚鉢の縁に手を掛ける様は女性の様に感じられた。
二柱共神・・・の様ではあるが、何だろう此の感覚は。
セレが困ったのも頷ける、一体彼女達が何なのか一切分からなかったのだ。
只向こうもセレ達に気付いた様で、其でも緩りと近付いて来た。
「一体、私達の店に何の用だ?」
声を掛けると蝸牛は進むのを止めて首を伸ばした。
儒艮も此方を見遣って少し丈水へ潜ってしまう。
何となく見た感じ此の儒艮の神の方が上の気もするが、セレはじっと蝸牛の神を見詰めていた。
其は敵意と言うより・・・何かに困惑している様で、
―・・・レイン、か?―
「っ・・・、」
突然の呟きに思わず顔を上げる。
今・・・何て、
丗闇の声だ、間違いなく。でも丗闇、その名は、
「レ、レイン・・・、」
「コークルル・・・クミャ?」
然う鳴き声を上げて蝸牛はより首を伸ばす。
良く見ると声ではなく、其の音は蝸牛の頭上に移動していた瓊が擦れて出した音の様だった。
「まさか・・・御前が然うなのか?」
セレの声は少し震えていた。
そして我を忘れた様に手を伸ばす。
「クリュリュリュ、キュムリ。」
耳をピコピコ上げて、蝸牛は急にセレに近寄った。
一瞬攻撃か何かかと思ってガルダがセレの前に出たが違うらしい。
「クリュリュピュ、ルル!」
何かを必死に伝える様に、何度か首を揺すり、尾を振る。
此の行為は一体、
金魚鉢に入っていた儒艮も少し驚いた様に蝸牛を見遣る。
「・・・・・。」
何か察した様にそっとセレは一歩出て、彼の頸に掛かっているリボンに触れた。
噫、懐かしい此の絳。
「・・・御前だったのか。」
未だ、こんな世界に居て、
心中に重しが乗っかった様に急に目元が熱くなって、
不図雫が零れそうになるのを必死で堪える。
其でも信じられなかった。
此奴は・・・彼の黒猫だ。
前世で自分に寄り添ってくれた、そして其の所為で殺されてしまった。
自分の・・・大切な、
レイン・・・然う、其は、一度も紡がれる事の無かった名前。
御前に、贈る筈だった名だ。
「キュールルム、クリュムリ、」
遠慮勝ちに蝸牛は触手を伸ばし、セレの背に触れた。
そして優しく撫でる。柔らかい其の感触を払い退ける気になる訳がない。
「御出で、」
「キュリャ!」
短く呼ぶと一気に蝸牛は頭をセレに押し付けた。
グリグリと擦り付ける様は昔と変わらなくて、
そっと彼女の頭を撫でた、信じられないから確かめる様に。
「セ、セレ知ってるのか此奴の事、」
「噫、ガルダにも少し話した事があったな。此奴は・・・前世で私の相棒だった黒猫だ。」
まさか先に丗闇が気付くとは思わなかったけれども。
「ネ、猫?え、嘘、此の姿がか?」
確かに聞いた事あるけど、え?
全っ然猫に見えない、前世の猫は俺だって見た事あるんだ。
其はこんな蝸牛みたいなのじゃなくて、もっと小さくてモフモフで、愛らしい存在だ。
其とも若しかしてセレは蝸牛の事をずっと猫と思っていたとか・・・?
一応なくはない、彼の次元に教育なんて物は無かったし。
其にしても此は違い過ぎる。と言うか前世にこんな奴が居たのか?
言っちゃあ悪いけれど、完璧に化物なんだけど・・・。
―・・・恐らく此が奴の真の姿だ。―
成程然う言う事か。
其処でやっと自分も合点が行った。
彼の黒猫は殺されて、神に成ったんだ。そして猫の姿を捨ててこんなに変わってしまった。
でも不思議と分かる、気配がするのだ。此の子は間違いなく彼の子だ。
「・・・まさか、ルナスが貴方の知り合いだったなんて、」
其迄黙っていた儒艮が口を開いた。
・・・流石に此方もそろそろ構わないと不味いな、魔力を感じるのは此方だし。
其の声音は良く通る澄んだ物で、如何やら女性の物の様だ。
良く良く見れば此の儒艮は人魚に見えなくもない、人魚の神か、人魚神って言うと何かややこしいな。
「再会を喜びたい所だが、御前達は一体なんだ?」
「っ、は、はい、私はその・・・レリーシャ=ガーデンの長、フェリナと申します、ルーララ。」
其の一言を聞いた瞬間、セレとガルダの二柱は身構えてしまう。
今何て言った・・・レリーシャ=ガーデンだと、
其はガルダから聞いた、オンルイオ国の王を支える四つの塔の最後の一つ、まさか其処の長だと?
其が単身で、一体何の用だと言うんだ。
確かに魔力丈見たら長と言われてもおかしくはないだろう、はったりではなさそうだが。
ちらとガルダに眴せを送ると緩りと彼は頷いた。
変わらず敵意は無いが、態々身分をばらすのも不気味だな。
確かレリーシャ=ガーデンは祈りの塔、だったか。
国を支える為に只祈りを捧げる、其の為丈の塔だったか。
兵が居るとかの話は聞かないが其でも、
「ララ・・・あ、その、済みません急に来てしまって、只私は貴方方と争いたい訳ではありません。出来れば話を・・・ルル、させてくださいませんか?」
詠う様に彼女は懇願した、祈る様に両手を合わせて。
其の姿は宛ら聖女か・・・話、話か。
斯うして正面から来た理由が其か、まぁ其なら分からなくもないが・・・。
此の塔は今回が初めての接触だ。話なんて一体何だろうか。
「話って・・・如何する、セレ。」
暫し二柱を見遣る。
黒猫は・・・もう自分に会えて満足なのか変わらず頭を寄せる丈だ。
人魚、フェリナは少し、怯えている気がした。
恐れている、自分達の事を。其の震えは演技じゃあなさそうだ。
辺りに仲間も居なさそうだし、本当に話す為丈に来たのか?
「・・・分かった、一先ずは店に案内しよう。」
立ち話もなんだ、斯うなったらじっくり聞いてやろうじゃないか。
「ルル、有難う御座います。」
然う言い頷くフェリナの目は勁い決意がある様に感じられた。
・・・・・
其の儘二柱を店に招き入れた。
只良く考えるとフェリナは人魚だ、店内に入る事が出来ないのだ。
金魚鉢毎じゃあ店に入らないし、代わりに椅子とかを店外へ出そうとしたのだが、
「良かったら私、足、ルララ、出せますよ。」
然う言うとフェリナは自らの尾に息を吹き掛けた。
すると忽ち尾は泡に包まれて人間の様な二本の足へ変化する。
黒猫が金魚鉢毎背を傾けると、彼女は其の素足で降りて来た。
不思議と足は濡れておらず、ケープを何重にも巻く。
慣れていないのか少しふら付いていたが何とかなりそうだ。
「手間掛けさせたな、どうぞ此方だ。」
店内を見せ、椅子を勧める。
フェリナは物珍しそうに店内をきょろきょろ見遣ったが、怖ず怖ずと席に着いた。
其を見遣り、黒猫は一気に小さくなった。
そして蛇の様に細長くなり、金魚鉢を其処に置いて店に入って来た。
そんな変形も出来るのか・・・つい見入ってしまったが、蛇は其の儘机の上に上り、此方を見上げていた。
二柱共席に着いた所でガルダが御茶を入れてくれる。今し方飲んだ物なので変な感じだ。
「其じゃあ先ずは挨拶からか。私は、知っているだろうが此の店の店主、セレ・ハクリューだ。」
「俺はガルダリューだ。」
「っ御二柱共、ルリラ、私の為に時間を割いて頂き、有難う御座います。」
然う言って彼女は又手を合わせた。
聞けば聞く程不思議な声だな。所々で小さく詠う様な、流水の様な声だ。
「キュピリィ。」
小さくなった黒猫が自分を見上げていたのでそっと撫でてやった。
其の儘丸くなって頭を寄せて来る。
ど、如何しよう可愛い。此の子撫でた儘ちゃんと大事な話出来るかな。
只顔がにやけない様引き締めて置かないと、一応此方が上を取りたい。
フェリナは相変わらず不思議そうに自分の事を見ていた。
ククッ、化物が猫を愛でるのがそんなにおかしいのだろうか、まぁ構わない。
「じゃあ用件を聞こうか。」
然う言えばスーが居ないな・・・客が来ているのに。
思ったが波紋を飛ばしてみると、地下のスーの部屋の扉が少し開いているのが見えた。
・・・彼奴隠れているな、神見知りも大概にして置かないと。
セレの無言の圧を感じたのか僅かに扉が閉まる・・・後で御説教だな。
「はい、私が御願いしたいのは、ルル、此方、次元龍屋の今後の活動について知りたいのです。」
恐がっている割には気丈に喋っている、何とか勇気を出そうとしている風にも見えた。
「今後の活動?何かそんな大それた事したかな。」
「いやセレほら、鎮魂の卒塔婆と虚器惟神の楼閣、二つの塔壊しちゃったしさ。」
「噫然うか、そりゃあ然うだな。」
ついうっかりしていた。次元を正している方かと思ってたよ。
―・・・うっかりで済むような大事では無いのだが。―
まぁまぁ彼は成行きだしな。
「はい、其の二つです。其処で・・・ルララ、若しや次のターゲットは私達の塔なのではないかと思いまして。」
「成程な。其で、其の確認をして如何するつもりだ。明日攻めに行くと言えば御前は今直ぐ私を殺すのか?」
「っ滅相もありません!私には、ルル、そんな力はありません。」
目を見開いた彼女は硬直し、慌てて首を左右に振った。
戦う力はなくとも、他にやり様はあるから其丈じゃあ信用は出来ないかな。
まぁ今直ぐやり合おうと言う気じゃないなら良いが。
其に、別に其方の塔を襲う気は一切無かった。
レリーシャ=ガーデンは今の所、何の動きも無かったし、無用な火種は起こさない。
其方よりは光の国の方が面倒だしな。
まぁ其は今伏せて置こうか、向こうは其を恐れている様だしな。
・・・と言うか塔壊すのが店の活動じゃないけどな!
何か妙な勘違いはされている気がする。・・・テロリストかと思われてそうな。
自分は只向かってくる敵を始末している丈なので変な言掛りは止して欲しいな。
飽く迄自分は平和主義者なのでそんな風に思われたくはない。
「もし・・・良ければ、ララ、私は貴方と一つ約束事を結びたいのです。」
「約束、と言うと契約か。」
「然う取って貰っても構いません。」
意外な提案につい手が止まると、透かさず黒猫が頭を寄せて来た。
「内容を是非とも聞きたいな。」
「・・・私の塔、レリーシャ=ガーデンと停戦を。若し果たしてくれるなら私は貴方にゲートを御貸しします。」
「ゲート・・・?一体何だ其は。」
聞いた事もない、ちらとガルダを見遣ると、彼も首を左右に振った。
「ゲートは、レリーシャ=ガーデンが独自に所有している物です。レリーシャ=ガーデンと、ライネス国の塔、クレイド§スフィアを繋いでいます。」
「繋ぐと言う事はテレポーテーションでも出来るのか?」
「えぇ、此は私の推測ですが、貴方方はライネス国をも相手取っていますよね?ルラル、でも彼の国の護りは堅いです、正面からは入れないでしょう。でも私のゲートを使えば、裏を掻く事が出来ます。」
「・・・成程、面白い話だ。」
クレイド§スフィア・・・此方も名丈は聞いているな、言った通りライネス国側の塔の一つ。
何をしているのか全く分からない所だ。ガルダ曰く、在る丈で良いらしく、表立った活動はしていないとか。
全く分からない所を攻めるのは抵抗があるが、落とせれば可也有利にはなるか。
条件は悪くない、だが此奴の心理が分からないと乗るには恐ろしい話だ。
「其はつまり、御前の所のゲートとやらを使って、クレイド§スフィアから攻めて行けと、然う言う事か。」
「っ!ま、待ってください、ルル、榔は、いえ、クレイド§スフィアは、私が説得します。だから向こうも襲わないで欲しいのです。」
急にフェリナは必死になって止めに来た。
榔・・・名前っぽいな、成程、大方事情は分かった。
「榔って・・・確かクレイド§スフィアの長の名前の筈、知り合いなのか?でもライネス国と?」
「ガルダ、其の榔って奴の事知ってるのか?」
「噫一応、確か狼っぽい神だった筈だぜ。何だっけ・・・本来は呪われた一族だったのに、一頭丈然うじゃない奴が生まれたから、解放の象徴やらで長にされた筈、真皓の狼だった気がするんだよ。」
ガルダが話す内にフェリナの顔色が悪くなる。
元々皓いがもう青くなって震えている気がした。
「詳しいなガルダ、御蔭で助かったよ。で、其方の塔も見逃せって事か?一つならしも二つとなると、一寸此方も頷くのは難しいな。」
「そんな・・・御願いしますっ、他に私に出来る事ならしますのでっ、」
其迄以上に彼女は必死になっている気がした、黒猫も気になったのか手の隙間から彼女を見ている。
「いや、して欲しい事と言うより動機だな。其が分からないと信用する事も出来ない。御前の行為は闇の国の裏切りだろう。如何してそんな事をするんだ。」
「動機・・・ルル、然う、ですね。要求許りでは・・・分かりました。ルラル、私は、いえ私達の塔は戦う力なんて一つもありません、貴方方が攻めに来れば何も出来ずに壊されるでしょう。」
目を伏せた儘、彼女は変わらず詠う様に続けた。
「今だって私は・・・貴方が其の気になったら一瞬で・・・っ、だから、初めから分かっている争いなら、出来れば無傷の儘降りたい、其丈です。私達は今の儘、何も変わらず過ごしたい、だから、」
「オンルイオ国は死んでも頭を護れとは言って来ていないのか?」
「・・・王を思うなら然うでしょう。でも私は・・・ルラル、無駄と分かっていて迄やりたくないです。其が裏切りだとは分かっています。だからせめて、ゲートを貴方方に開放するのです。」
「ん、あえっと・・・そっか、オンルイオ国とライネス国って争い中だもんな、第三勢力って感じで俺達が向こうを攻めたら結果オンルイオ国が助かるのか。」
何度もフェリナは頭を下げる、攻撃の矛先を変えて欲しいんだな。
でもライネス国・・・俺は正直行きたくない、彼処は容赦がなさ過ぎる。
一度手を出せば・・・其こそ何方かが滅ぶ迄戦わないといけなくなる。
其は無謀って奴だ、国一つなんて無理だ。
かと言って此の儘チクチクやられるのもな、セレも絶対其が嫌な訳だし。
そりゃあ敵はいない方が良いけど、零にするのは・・・、
其に正直な所、俺は此奴がクレイド§スフィアの長を説得出来るのか不安だ。
光の国こそ規律に厳しい、そんな背信行為が出来るのか?
何と言うか・・・ゲートを使ったら直ぐ敵に囲まれて罠でしたーって落ちが見え然うだ。
其はセレも思っているのだろう、彼女は黙って手を組んでいた。
「私が其の条件を呑んだとして、御前は本当に榔を説得出来るのか?其の自信の程は?」
「その・・・実は私と榔は、こ、恋仲、でして・・・、二国の塔の長なので赦されざる恋なのは分かっていますが、其でも何千年と続けて来ました。だから榔とはもう話してまして、」
恋仲・・・へぇ、神でも然う言う奴はいるんだな。
じゃあ此奴は珍しく死にたがりじゃないタイプの神か、何千年とは相当な恋だな。
ゲートがあるのも其の関係か、確かに敵国同士が繋がっているなんて有り得ない話だよな。
恋仲だから助けたい、完全に口から丈の理由なのだが、だからこそ信じられる所もあるか。
「其に実は・・・今回の提案をしたのは榔です。光の国を御存知なら分かると思いますが、彼はその、長の中でも変わってまして、ルル、生い立ちの所為もあるでしょうが、彼はライネス国を・・・恨んで、います。だからこんな方法を採ったのです。」
「ん、長ともあろう奴がそんな物だったりするのか?まぁ随分と恨みを買っている国ではあるが。」
「一寸信じ難いぜ。恨んで置き乍ら何千年も居たなんて。」
「だから彼は今を好機だと捉えているのです、ルルラ、彼丈では抵抗も出来ないから、先程、貴方が仰った通り、榔は呪われた狼の一族の出です。只彼は、無理矢理ライネス国に攫われて、長になんてされてしまいました。ルララ、本当は故郷に帰りたかったのに、其を・・・赦して貰えなかった。」
「・・・故郷、そっか。確かに其なら・・・彼の国は其位するもんな。」
「そんな拉致した奴を長なんかにするのか、そんなので忠誠は生まれないだろう。」
「どうせ象徴が欲しかったんだよ。塔なんて只の見栄えとかブランドみたいな物だし、見世物として、連れて行かれたんだよ。」
「良く・・・御存知ですね、全く其の通りです。」
少し驚いた様にフェリナは目を見開いてガルダを見遣った。
気付いてそっと彼は顔を伏せる。
「ま、まぁな。でもセレ、今の話は信じても良いと思うぜ。有り得なくはないからさ。」
「はい、ゲートがあるのも、私が秘密裏に彼を故郷へ帰していたからです。ルル、だからゲートの存在は私達しか知りません。罠なんて無いので信じて欲しいのです。」
「・・・然うか、もう其処迄読んでいるか。」
先に言われてしまったな、確かに今の話なら筋は通る。
でも存外、ライネス国も一枚岩じゃないんだな。来る兵来る兵皆馬鹿の一つ覚えみたいに使命だの何だの言っていたのに。
其のボスが斯うであっては、彼等は如何思うんだろうな。
「仮に、ゲートの存在が他の奴にばれたら如何なるんだ?」
「っ・・・まさか、密告するつもりですか、」
然う言い彼女は身を硬くする。
然う言う代物なのか、隠したいのは御互いの様だな。
「私が密告した所で誰も信じないさ。確認したかった丈だ。」
「・・・ばれたら、私達は処分されるでしょうね。其も避けたい事態ですが、」
「分かった、互いに秘密と言う事か。」
ゲート・・・此は大きな突破口になり得るか?
確かにライネス国への攻め方はずっと悩んでいた訳だが・・・。
多少賭けにはなるが、当たればリターンは相当大きい。
「・・・一応、言って置きますが、ルル、私が死ねばレリーシャ=ガーデンは崩れ、ゲートも失われます。彼は私にしか創れない特別な物です。」
「だから殺すな、と。ククッ、然う言う交渉は嫌いじゃない。」
ちらと見遣ると彼女は背筋を伸ばした。別に威嚇した訳じゃあないが、まぁ構わない。
「序でに、其はクレイド§スフィアでも同じだって事だよな?ゲートの使用許可と、二柱の命を交換条件にって。」
「っはい、然う取って貰って構いません。」
「良し、良く分かった。其方が私達も襲わないと言うなら其の条件を呑もう。」
「・・・っはい、宜しく御願いします。」
彼女は手を合わせ、何度も頭を下げた。
自分が少し視線を寄越した丈で彼女は小さくなってしまう、晒越し、なんだがな。
「そんなもう硬くならなくても良い。手を出さないのなら茶位出す、此処は店だからな。一通り用が終わったなら、雑談にでも付き合ってくれ。」
条件を呑む、然う告げた瞬間、自分の中に鎖が繋がれた。
此が正当な契約として続く様願う許りだな。
フェリナは其処で初めて茶が出ていた事に気付いたのか急いで口を付けた。
まぁ今迄生きた心地もしなさそうな顔していたし、今なら味も分かるだろう。
「とまぁガルダ、勝手に話を進めてしまったが良いか?」
「え、噫俺は構わないぜ。只ゲートを使う時はちゃんと言えよ、一柱じゃ駄目だからな。」
「ククッ、分かっている。もう説教は勘弁だからな。」
「・・・お、美味しいです。」
一つ息を付くとフェリナはちらちらと自分とガルダを見遣った。
「え、えっと・・・何か?」
流石にガルダも気になって来た様でつい尋ねる。すると彼女は大きく肩を震わせた。
「あ、す、済みませんじろじろと・・・っ!ルララ・・・その、失礼な物言いを承知で言いますが、イメージと随分と違う方達だったので。」
「もっと化け物っぽくして欲しいなら応えるが?」
「お、おいおい店は壊すなよ。」
「いえ!今の方がずっと良いです!」
二柱の反応が面白いのでつい喉の奥で笑ってしまう。
そんな彼女を矢張りフェリナは不思議そうに見詰めるのだった。
「あの、実はこんな・・・話が出来る方とは思っていなかったんです。だから・・・ルル、あの、今はほっとしていると言いますか。」
「互いに悪い話じゃあなかったしな。私だって今では精霊の端くれだし、話位出来るさ。」
自分も茶を一口飲んでみたが・・・熱い、もう少し先だな。
「因みに一つ聞いてみるんだが、御前は随分私を買ってくれているみたいだな。私の力ならライネス国にも牙が届くと思っているのか?私としては犬死しそうな予感だが。」
吃驚した目でガルダから視線が向けられた。そんな彼に微笑を返す。
「だってガルダの話じゃあライネス国は色々とやばそうだし、な。私は全然知らない所だから不安に位はなるよ。」
「・・・然うですね、私は戦闘なんてからきしなので分かり兼ねますが、榔は然う言っていました。塔を二つも壊せたのなら其丈の力はあると。」
然うなのか、向こうの長に認められる位は自分もあるのか。
・・・正しく測れるなら是非とも行ってみたいが。
「あ、其でも貴方は彼の、虚器惟神の楼閣のソルドに打ち勝っていますよね・・・?だったら矢張り凄いです、彼の方は力丈で彼の地位を手に入れたので。」
「彼奴は性格も悪かったがな。どうせ何やら策を拵えて長になったと思ったが。」
「・・・然う、ですね。彼は本来長になる予定だった者を殺していますから、でも勁さは本物でした。だから彼が死んだと聞いて私驚いて、」
「成程其でか。矢っ張り彼奴は殺して正解だったな。何やら良からぬ事を色々していたみたいだし、悪が悪を潰すのは楽な物だ。」
「クーリュリュ。」
指の隙間から黒猫が顔を覗かせた。
まるで全てを知っているかの様な目で、少し心配そうで。
昔は此の目に良く救われていたのだろう。
「ん・・・噫外れていたのか。」
気付けば彼女の頸に掛けてあったリボンが解けていた。
屹度大きさが変わった所為だろう。そっと手を伸ばし、リボンを結び直した。
・・・何だか此の感覚も久し振りだ。リボンなんて此奴にしてやる時しかしなかったからな。
手付きは案外忘れてなかった様で、直ぐ元通りになる。猫も嬉しそうだ。
「然う言えば其の子は・・・若し、貴方方が望めば御返しします。塔の前でうろうろしていたのを見付けて、今迄一緒に居てくれましたが、ルル、こんなに嬉しそうにしているのは初めて見ましたので。」
「!然うなのか、私は勿論嬉しいが・・・ガルダ、良いか?」
「龍三頭とロボットに狐、鼠も居るし、今更猫一匹何とも言わないって、あ、その、猫なのか疑問だけど。」
「真の姿になっても猫は猫だろう。御前は如何だ?私と一緒に居たいか?」
そっと黒猫の背に触れる。
姿は変わってしまったけれど、自分も、すっかり変わってしまったけれど。
其でも共に生きられるなら、
・・・此処で御前と話せたら良かったんだがな、其は未だ叶わないらしい。
「キュリュルゥ!キィキィ!」
すると突然大きな声で黒猫が鳴き始めてグリグリ躯を押し付けて来た。
此は如何見てもOKと取って良いだろう、フェリナも何処か嬉しそうな目で見詰めていた。
「じゃあ御前にずっと与えたかった名があるんだ。良かったら聞いてくれるか?嫌なら然う言って欲しい。」
此の名を付ける事で、自分は御前を特別にしてやりたかった。
自分丈の、証を残そうと。
赦されるならと自分はずっと其の時を待って、
そして永遠に紡がれる事はないだろうと思われた名前。
・・・御前が自分の所為で殺されてしまったんだって事、ちゃんと打ち明けないといけないんだがな。
「レイン、レインだ。彼の世界で陰霖は常に私といてくれたから。・・・如何だ?」
「ク、ミィ!ククッ!」
黒猫は何度か鳴くとぴったりとセレの手にくっ付いた。
温かい、こんな姿でも彼女が自分に与えてくれる物。
如何やら・・・気に入ってくれた様だ。そっと昔みたいに首元を撫でた。
こんな手だが、撫で方は心得ている。
もうモフモフではないが、構わない。此の手に残る熱は本物だ。
「レインか・・・良い名前だな、宜しくな。」
怖ず怖ずガルダが手を出すと、黒猫兼蛇兼レインは何度か彼の匂を嗅いだ。
「キュミッ。」
そして然う短く鳴くと、又セレの手に引っ付いてしまった。
「本当にセレの事大好きなんだな。良かったな、又逢えて。」
「噫、フェリナ、偶然かも知れないが、今回は此の子を連れて来てくれて感謝する。今迄も世話して貰ったみたいで助かった。」
「っい、いえいえ!私も良かったです・・・ルララ、私も、余りに予想外で、」
緊張して来たのかフェリナは急いで紅茶を飲み、終には飲み干してしまった。
空になったカップを見て少しまごついている。
「・・・一つ聞くんだが、御前は此の後もう塔に戻るのか?」
「はい、私は基本塔から出ませんので。ルル、歩くのも、得意ではないですし。」
「然うか・・・良し、じゃあ若し良かったら私をレリーシャ=ガーデンに連れて行ってくれないか?ゲートを此の目で見てみたい。」
「っ⁉え、ちょっセレ、きゅ、急過ぎないか⁉」
驚いたのはガルダ丈ではなく、フェリナもだ。彼女に至っては声すら出せなくなっている。
順番が前後してしまったが、早ければ早い方が良い。
「・・・そ、然うですね、確かに。来て貰うのは構いませんし・・・、」
口元に手を当て、フェリナは何やら考え込み始めた。
「別に壊したりもしない、見て、話す丈だ。まぁ確かに見付かるリスクがあるなら今回は控えるが。」
本音は今回、もう此の儘行きたいがな。
未だ彼女の事を完全には信用していない、何の道行かなくてはいけないのなら早い方が良いに越した事は無いのだ。
変に間を開けると、何されるか分からないしな。
「大丈夫・・・大丈夫です、ルラ、其に。貴方が居れば榔も説得し易いかも・・・。レリーシャ=ガーデンの者には私が声を掛けて置きます。だから問題ありません。」
「ほ、本当に大丈夫か?行くなら俺も一緒に行くけど。」
「良し、じゃあ早い方が良いだろう。急かして悪いが此の儘良いか?」
「っ分かりました、行きましょう!」
フェリナは勢い立つと急いで店を出て行った。
今回はまぁ・・・ガルダと二柱丈で良いだろう。御忍びになるからな。
少し話して帰るつもりなので準備もそこそこに、セレとガルダも店を出た。
すると店の前で立ち往生しているフェリナと出会す、何か随分困っている様だ。
「・・・?如何したんだ?」
「あっ、そ、その、私とした事が、ルル、此の儘じゃあ帰れません、歩くには遠過ぎるし、」
然う言ってちらちらと金魚鉢を見ている。
然うか、確か来る時は、
「クミャ。」
未だセレの腕に巻き付いていたレインが首を伸ばした。
そして一気に其の躯は肥大化し、最初見た様な蝸牛の様な姿に変わる。
「ク、ピピ。」
「あ、ルナス、いえ、えっとレイン、良いのですか?」
レインは何度も頷いて金魚鉢を傾けた。
「まぁ然うだな。レインが良かったら連れて行って貰おう。」
昔から優しい子だったし、進んでやってくれるのなら止めはしない。
「其じゃあ御言葉に甘えて。・・・ルラル、今回で御迎えが最後だと思うと一寸感慨深いですね。」
「クーリュミニュ、リィリィ。」
フェリナが金魚鉢に入ると、忽ち足は魚の尾鰭へと変化した。
彼女がしっかり入った事を確認すると、レインの脇から触手がぞろぞろと生えて来る。
そして其を足に、まるで蜘蛛の様な姿になったレインは足早に歩き出した。
「おぉ・・・あんな事も出来たんだな。」
「・・・な、セレ。行き乍らで良いから彼の猫?の事、もう一寸教えてくれよ。」
「ん、噫然うだな。ククッ、分かった。ちゃんと話して置かないとな。」
然う笑うと彼女は背に翼を生やした。
レインは存外早い、恐らく最初来るのが遅かったのは、フェリナの心配が表に出ていたからなのだろう。
飛び立つ彼女に倣ってガルダも皓い翼を出すと飛び立った。
・・・・・
暫く飛び続けて遂に二柱はレリーシャ=ガーデンへ辿り着いた。
でも其処は想像とは全く違う所で。
先ず目に付いたのは細長い一本の塔。
煉瓦で出来た時計塔の様にも見え、少し古惚けた様に思えた。
其の塔も少し変わった造りで、大きな窓が多数あり、波紋を投じると如何やら塔の中心に太い管が一本、通っている様だった。
彼の中迄は残念乍ら見る事は出来ない。如何やら厚い玻璃管の様だが。
そして其の塔の周りを円形に崖が囲っていた。
然うして見ると塔は随分高い様に見える。
更に崖下は湖になっていた。丁度其の湖の中心から塔が生えている様に見えるのだ。
何だか一見観光地の様にも見える景色だ。鎮魂の卒塔婆の様に武骨な塔ではない。
此が、レリーシャ=ガーデンなのか。
確かに自分が無の一つでも放てばぽっきり折れそうだな・・・。
只幾ら波紋を投じても塔の中は無神に思われた。湖には多数の波紋が浮かぶので魚は多そうだが。
・・・若しや此の塔に居るのは魚神丈なのか?フェリナが事前に塔に何かしらテレパシーを送っているかも知れないが、其でも此処迄神払いは出来ないだろう。
「クキュルーキュキュ!」
崖ギリギリ迄来ると、レインは背負っていた金魚鉢を下ろした。
そして飛んでいるセレ達に向け、尾を振る。
如何中に入るのか分からないが、一度降りて置こうか。
緩り翼を畳んで着地する、するとレインは突然大きく伸び上がり、湖へ触手を突っ込んだ。
軽く10数mあるんだが、一体何処迄変形出来るんだろう。
「キュル!キュキュキュッ!」
そして上がって来た彼女の触手の先には一匹の小魚が掴まれていた。
銀色の、活きの良い小魚だ。手掴みしたのだろうか。
其の魚をレインは自分に差し出す様に押し付けた。
何度も嬉しそうに声を上げる。受け取ろうかと手を伸ばしたが、
「コラ!苛めてはいけません。帰してあげてください!」
フェリナに叱られ、しゅんとした彼女はそっと魚を崖下へ下ろした。
「然う怒らないでやってくれ、レインは昔みたいに私に魚を食べさせたかったんだろう。然うだろう?」
手を出すとレインは何度も擦り寄って来た。
然うだな、昔良く魚を斯うして持って来てくれたな。
「・・・た、食べるんですか、魚を。」
「まぁ今朝も食べたよな。」
ちらとガルダを見遣る。
うん、今朝の焼き魚は美味しかった。
自分達からしたら穏やかな会話なのだが、彼女はすっかり怯えた様に固まってしまっていた。
「・・・いや、別に人魚は食べないからな?」
「わ、私を食べても不老不死とかなれませんからね!ルララ!」
「いやだから人魚喰わないって。」
と言うより神に不老不死って要るのか?
何だか彼女は随分ビビってしまっているが、まぁ何とか落ち着いて欲しい。
レインだって魚喰うんだしな。・・・今の食性、然う言えば知らないけれど。
「と、兎に角案内しますので、えっとルリ、皆さんはレインに其の儘連れて行って貰ってください、ではっ!」
口早に然う告げるとフェリナは勢い良く金魚鉢から飛び出した。
そして躯を真直ぐにし、綺麗に湖へ落ちて行く。
流石人魚、何と優美な飛込だろう。
波紋で追っていると、如何やら彼女が飛び込んだ瞬間、湖の表面が銀に輝いた。
其は水面の波紋の様に輪を作り、次第に塊になってうねる。
恐らく水中の魚達だろうか、主の帰還に喜んでいるのかも知れない。
さて、レインに連れて行って貰えとの事だが・・・、
「クリュ!」
任せてと言わん許りに一声鳴くと、レインは一気に薄っぺらい姿になり、塔の方へと飛んで行った。
そして塔の窓の一つに掴まる、何と其丈で即席のレインの橋が出来たのだ。
旻中に浮かぶ吊り橋かカーペットの様である。確かに此なら渡れるな。
「凄いぞレイン、こんな事も出来るのか。」
「おぉー便利な躯だな。」
恐る恐る片足を出してみる。自分はまぁ軽いのだが、ガルダは大丈夫だろうか。
存外安定感は抜群の様で、全く揺れる事はなかった。
只一寸柔らかいので抜けそうで怖いが。
飛んで行くのも容易だったのだが、此処は彼女の厚意に甘えよう。
「セレ、大丈夫か?」
「噫、ガルダも緩り来てくれ。」
落ちない様にか触手が手摺の様に生えて来たので落下の危険はない。
其にしても何て気遣いの出来る良い子なんだ。
大切な仲間なので二つ返事で此方へ迎え入れた訳だが、此処でも大いに役に立っていたんじゃあないだろうか。
「お・・・おぉ、ちゃんと乗れるな。此の儘窓から入れば良いっぽいな。」
其の儘二柱は進んで、大事も無く無事にレリーシャ=ガーデンへ降り立った。
「有難なレイン、御蔭で来れたぞ。」
「キュウゥ!キピ!」
一気に胴が縮むとレインは其の儘塔に巻き付いた。
「へぇ、近くで見ると不思議だな。」
「なぁガルダ、此の管の中は如何なっているんだ?」
中心の玻璃管に手を付くガルダに聞いてみる。
「ん?何か只の水っぽいけど。あそっか、セレの波紋じゃ見えないか。」
水なのか・・・何だか上迄続いているが。
如何やら最上階は個室になっている様だ。其処迄管は伸びている。
「不思議な塔だな。何と言うか静かだ。」
「だな、誰も居ないのかな。・・・本当に此処がレリーシャ=ガーデンなのかなぁ。」
「うん、誰も居ないな。皆魚かも知れないぞ。」
「ま、魚神も勿論いるからな。」
そんな風に話しているとガルダが管の下の方を見遣った。
「え・・・噫成程な。セレ、中にフェリナが入ってる。下から来てるみたいだ。」
「成程、彼女は然うして移動するのか。」
恐らく地下、湖から此の塔に入れるんだな。
良かった、水中神殿じゃなくて。其だったら終わっていた。
最近何かと溺れ掛ける事が多いからな。不思議だ、自分、凄く浮き易い躯しているのに。
―二柱共御待たせしました。さ、此の儘上へ参りましょう。―
突然のフェリナのテレパシーについビクッとしてしまう。
悟られてないよな?自分は相変わらず姿が見えないから不意打ちみたいになってしまう。
波紋は斯う言う時不便だな・・・まぁ其の分恩恵はしっかり貰っているが。
「良し、セレ行こうぜ。」
「キュムリュ。」
二柱が階段を上り始めるとレインが背後から付いて来た。
道は階段とスロープが交互に来る、結構きついな。
元々此処は余所者を入れたりはしないのだろう。
暫く歩いているとやっと一番上の扉の前に来た。
フェリナは其の儘管から部屋に入って行く。
閉め切られているので波紋でも中は伺えないが・・・。
ガルダが扉を開けて入ると其処は一気に様相が変わっていた。
床一面はプールの様に水が張っている。そして其の上に玻璃板が敷き詰められているのだ。
中は窓も無いが、水が僅かな照明を受けて煌めき、天井に模様を作る。
何だか幻想的に見える空間だ。
「御二柱共どうぞ。此方がゲートです。」
フェリナが水中から上体を出すと、其の部分丈玻璃板が溶けた様に無くなった。
そして部屋の奥、大きな金属の輪へ近付いて行く。
彼女が泳ぐと次々床である玻璃板が溶け、代わりに彼女が通った後は又板が張り巡らされていた。
不思議な技術だ。流石塔、こんな物も造れるんだな。
急に水に落ちないか冷や冷やしてしまうが、玻璃は頑丈で軋む素振りも見せない。
「此が、ゲートか。」
奥に進み、其の銀の輪に近付く。
輪は高さ3m程あり、一見鏡の様だった。
だが揺らぐ表面、浮かぶ波紋と、如何やら表面は水面の様な作りになっている。
「此処に私の魔力を通せばクレイド§スフィアの景色が見える様になります。ルル、潜れば実際の其の場所に移る事も可能です。ルラ、如何でしょうか。」
「中々面白いな。こんな具合なのか。」
此はフェリナにしか為せない技なのかも知れない。何処となく彼女と同じ力を感じる。
言った事が本当なら何とも素敵な力だ。
「然うだな。早速其の榔とやらに繋いでみるか?向こうも手が空いていればだが。」
「おっとセレ、やる気あるなぁ。一応光の塔だぞ?」
警戒する気持も分かるが、今はどんな代物なのか見てみたい。此、とんでもない技術だぞ。
「多分榔は大丈夫ですよ。何時も暇してますし。まぁ屹度、相当驚かれますけど。」
ちらと彼女はセレを見遣った。まぁ・・・然うだろうな。
「じゃあサプライズだ。彼をそれなりに吃驚させてやろう。」
「い、一応少し下がっていてくださいね?じゃあ始めます。」
フェリナがそっとゲートの水面に触れる。
すると波紋が彼方此方から広げり、一気に景色を歪めて行く。
然うして現れたのは黔一色に包まれた部屋。
一瞬彼の闇、母なるヲルの物かと思った程だ。
何だ此は。牢獄の様にも見える暗闇だ。
一応波紋で中が見えるな。確かに此、向こうと繋がっている様だ。
只不思議な揺らぎがあって余り遠く迄見えない。此はゲートの性質なのか、向こう側、クレイド§スフィアが然うなのかは分からないが。
何とも殺風景な部屋だ。家具らしき物も殆ど無い。
壁や床には彫り物が施され、其は確かに見事な物だったが、其が却って寂しさと冷たさを感じさせてしまう。
「此が・・・クレイド§スフィアなのか?」
一つ頷くと徐にフェリナは詠を哦い始めた。
何処迄も通る澄んだ声、伸びる旋律は軽やかで、木の葉が薫風に舞い上げられる様。
浮かんでは戦ぐ様な音の羅列に、思わず溜息が漏れた。
詠ったのはたった一節だったが、其の余韻が何時迄も残る様だった。
“っ!フェルナーデ、其の詠はフェルナーデか、”
水面から声がする。ゲートを見遣ると急に景色が輝いた。
如何やら声の主はゲートの後ろ側に居た様だ。ぬっと現れた其に思わず息を呑む。
其は純皓に輝く狼、頭に捩じれた角、尾は引き摺る程に長く、まるで翼を象った様。
其でも四肢で立つ姿は紛れもなく狼の其で、一目でクレイド§スフィアの長、榔と分かった。
榔は自ら曦を発している様で、其の姿は今一判別し難い。
眩しく、正視すら出来兼ねる曦だ。其の所為で全体的に輪郭が怪しく、正しく捉える事は出来ない。
大きさは2m程で・・・最高にモフモフだった。
何と言うか然う、曦其の物がモフモフになった様な、比喩でもなく輝いているからより神々しく見える!
彼の曦の御蔭で、クレイド§スフィアの一室はすっかり姿を変えていた。
床や壁の彫刻は曦を反射して浮き出る様に輝き、吊るされていた球形の照明は曦で溢れた。
暗がりの中の銀河の様に、彼を中心に曦が躍り始めたのだ。
「本物は凄いな、こんな輝いているなんて、」
「噫、綺麗だな。だから部屋が黔かったのか。」
純皓の曦だが、忌避感はない。光属性ではない様で安心した。
不思議な曦だ。彼が居て初めて此の部屋は完成する。
「榔、逢いたかったわ。今時間はルル、大丈夫かしら?」
“噫もちろ・・・ん、だ、”
フェリナの姿を認め、榔は尾を上げていたが、其の儘固まってしまう。
其の視線はついと此方に向けられている様な気がして。
気付いた刹那、タンッと地を軽やかに叩き、榔は跳び上がった。
そしてゲートを潜り抜け、此方側にやって来る。
四肢を開き、力勁く玻璃板を踏み締めると彼は自分達とフェリナの間に入った。
「御前達は・・・っ如何して此処に、」
動揺を隠し切れない乍らも、しっかりと見据えて。
吼える様に榔は声を紡いだ。
成程、ああも簡単に移動出来るのか。
何此、すっごい便利じゃないか。脱出用とか攪乱用とか色々使えるぞ。
吼えても全く怯まず、寧ろ何処か感心している風のセレに、榔は警戒の唸り声を上げた。
だがもう彼女の目に彼はモフモフとしてしか写っていなかった。
斯うして出て来てくれたのでより其の体毛のリアルさが伝わって・・・つい生唾を呑む。
モフりたいっ、是非ともモフモフさせて欲しい。
だって光るモフモフだぞ!Sレアみたいな物だ、絶対凄い!
其にクレイド§スフィアの長なら、モフ度も其丈上がるだろう。噫期待で胸は一杯だ。
光る事も、塔の長と言う肩書も、モフモフの手触りとは一切関係が無いのだが、もう彼女が其を冷静に考える余裕はない。
只撫でたいと、思考停止した彼女はじりじり榔に近付いて行った。
「ロ、榔もう大丈夫よ。私此の神達と、ちゃんと和平協定を結んだの、だから、」
「いや信用ならん!見よ彼の手付きを、我々を一体如何するつもりだ!」
尚近付くセレに榔は何度か吼えた。でも全く怯まない。
「ちょっセレ待った!モフモフは分かるけど今は話さないと。後でモフらせて貰えないぞ。」
「っ!ぐぐ・・・然うか、今は待たないと、こ、堪えないとな。」
深呼吸をし、何とかセレは平静を取り戻した。
危ない危ない、理性を手放してモファンターとして覚醒する所だった。
「えっと、御前が榔、だよな?俺達、多分知ってると思うけど、次元龍屋から来たんだ。で、フェリナとちゃんと契約したから、手は出さないって。本当だぜ?」
「・・・そ、然うか。まぁフェルナーデが連れて来たのなら然うだろうが・・・。」
榔も冷静さを保てた様で、只ちらちらとセレを見遣った。
「あ、此奴のは彼だ。その・・・榔の毛並を迚も触りたいみたいで、気持良さそうだからさ。」
こくこくと何度もセレも頷く。通訳が成立したみたいだ。
「然う言えばルル、レインもずっと撫でてましたね。」
「毛並?・・・噫然う言う事か。まぁ確かに何時もブラッシングして貰っているし、オイルも欠かしてないからな。自慢ではあるが、でも・・・、」
「ブラッシング⁉オイルだと⁉何て手入れされたモフモフなんだ!此は是非とも、」
手を出そうとするセレのオーバーコートを掴んで止めた。
榔の気持は分かる。セレの事、凄く勁い神って思っていたし、黔日夢の次元の事もある。
だからイメージが固まっていたのだろう、其が中身はこんなモファンターだったなんて。
「兎に角此方は争う気も無いんだしさ。その、話せたらと思って来た丈で。」
「・・・あい分かった。其の言信じよう。其にしてもフェルナーデ!まさか君は一柱で行ったのか⁉言っただろう行く時は二柱で行く様にと。大事が無かったから良かったが、」
「ご、御免なさい榔。でも塔の長二柱が一緒だと猶の事警戒されそうだし、貴方をそんな連れ回したら流石に勘付かれるわ。」
「・・・ぐ、そ、然うだが、其でも私は心配になるだろう!」
困った様に前足を出す榔を、フェリナはそっと抱き締めた。
「大丈夫、大丈夫よ、ルル、私は戻って、」
「うぉおおぉおお‼」
二柱が折角逢瀬を楽しんでいたのにセレの吼え声で台無しである。
ビクッと同時に跳ねた二柱は目を見開いてセレを見詰めた。
「こ、こらセレ落ち着くんだ!ほら俺の翼モフって良いから!」
ガルダが翼を傾けると、ひしっとセレは抱き付いた。
気恥ずかしいとか言ってられない、斯うでもしないともうセレは止められないのだ。
「あ、あの俺達の事はもう少し後でも良いので、」
だからそんな見ないでください、信じられないって口開けないでください。
「い、いや私こそ神目も憚らず・・・、申し訳ない。」
「御互い様だから俺は良いけれども、」
「・・・ふぅ、ガルダ有難う、大分落ち着いた。」
「そ、然うか。もう飛び込んじゃ駄目だぞ。」
諭すと何度も彼女は頷いた。
良し、ちゃんと言う事聞く所は良い子だな。
抱き付くのは止めたけれども未だ翼をぎゅっと握られている。・・・まぁ此の位は良いか。
「えっと、取り敢えずフェリナとした話、もう一回しとくか。」
「忝い、宜しく御願いするぞ。」
其から榔には、フェリナとした契約した内容を掻い摘んで説明をした。
元々榔が提案した事でもあるので、彼はすんなり受け入れた様だった。
話し終える頃には榔もすっかり落ち着きを取り戻しており、考え込む様に尾が振られていた。
其の度にセレのガルダの翼を掴む手に力が入る・・・何て分かり易いんだ。
「・・・兎に角話は良く分かった。いやでも、此処迄すんなり行くとは思わなかったから未だに信じらえないが。」
「本当なのよ榔、私達が聞いていた話とは大分違う方達なのよ。」
一体どんな風に自分達は伝わっているのだろうか。
気になるけれども聞いたら後悔しそうな予感はあるな。
「勿論私は信じているとも。只噂とは逆と言うか、此の神達が本当に塔を壊したのかと思ってな。」
「ん、実力を疑うと言うのなら何時でも証明出来るぞ。」
「御遠慮願います、ルララ、」
「まぁ何だ。私もちゃんと話さないとな。フェルナーデから聞いている通り、ゲートは使ってくれて構わない。只私の塔、クレイド§スフィアが壊れてもゲートは崩れるから気を付けて欲しい。」
「ま、敵対していない所を態々突かないな。」
「其なら良い。只、一応使う時は私にも声を掛けて欲しい。何の道出て来る所を誰かに見られたらクレイド§スフィアが疑われてしまうからな。」
「分かった。じゃあ本当にクレイド§スフィアを、ライネス国を攻める拠点として使って良いんだな?」
「勿論だ。其の時は私もサポートしよう。」
随分と物分かりの良い長だ。此方も助かるけれども。
彼が抑今回の件を提案したと言うのは本当の様だ。此処迄協力的とは思わなかったからな。
「聞いてみるんだが、榔、御前は自分達の命云々よりライネス国を攻めて欲しいのか?」
何となく言葉の端々に感じる、命乞い丈なら此処迄しなくて良い筈だ。もう契約もしたのだから。
「・・・然うだな。其の気はそんなになかったつもりだが、私は・・・もう彼の国に飽き飽きしているからな。」
「話も粗方終わったし、其の辺りを聞いても?」
尾をスッと上げ、榔は此方を見遣った。
全身輝いているので其の表情は読めない。狼の面だから猶の事だ。
「然うだな。無条件に協力許りしては不審がられるだろう。私は半ば無理矢理クレイド§スフィアへ連れて行かれたのだ。」
一応軽くはフェリナから聞いているが、念の為整合性も確認して置こうか。
「私達一族はオンルイオ国の近くに棲んでいた。偉大な神の翼を咬み千斬った罰で呪われてしまった狼の一族だ。」
「呪いか、然う言う伝承とかがあるんだな。」
「噫然うとも。呪われた私達は皓き躯を失って黔皓の斑になってしまった。其でも・・・生きて行くには十分幸せな所だったのだ。」
其の時を懐かしむ様に榔の喉が鳴った。
フェリナに頭を撫でられ、少し目を閉じる。
「呪いは甘んじて受ける。私達には私達の信念があって行ったのだから。そして、其処で私は生まれた。呪いなんて一つも無いかの様に輝く此の姿で。」
「・・・其でライネス国か、彼奴等が気に入りそうな姿だもんな。」
「噫其の通りだ。全く、姿丈で呪われているのは私も同じなんだがな。私が生まれて少しした頃、ライネス国は王を称える為だとか何とか言って塔を造り始めていた。そして其処の長に私は決められた。解放の象徴だとかと宣い、私を一族から引き離した!」
唸り声が混ざる榔の声音、恐らく随分昔の事なのだろうが未だに彼は恨んでいる様だ。
「一方的に、か。本当に拉致に近いな。」
「もう其の物と言って良い。彼の部屋が其の証だ。私が居て初めて煌びやかに光る部屋。綺麗だが知らないが彼処は冷たく、此の四肢で歩くには床が堅い。見た目丈で何とも棲み難い部屋だ。」
「攫って置いて其の待遇は解せないな。」
其なら怒って当然だ。自分だって前世、貴族に飼われた時は良く暴れていたし。
物扱いが嫌なんだよな、屹度先彼が言っていたブラッシング等も其の一環だろう。
モフモフは只表面丈の物ではない。心も満たさねば真のモフモフにはなり得ないのだ。
ライネス国は如何やら其の事を分かっていない様だな。全く嘆かわしい。
「フッ、分かってくれるか。だからまぁ私は・・・直ぐ脱走したのだ、故郷へ帰ろうと。そして何とかライネス国から出て、偶然フェルナーデに会った。」
「・・・何だか懐かしいですね。其の日の事は未だ、ルララ、はっきり憶えています。」
「噫私もだ。私は直ぐ追っ手に付けられていたが、彼女が塔へ匿ってくれたのだ。そして話す内に意気投合し、今の付き合いがあるんだな。」
「然うか。一応故郷には帰れたのか。」
「・・・噫、只ずっと居ても連れ戻される丈だからな。彼女のゲートの御蔭で、里帰り出来ていると言った具合だ。」
「流石ライネス国だな、未だそんな事してるのか。」
「ん、他にも然う言う話はあるかガルダ。」
「噫結構聞くぜ。向こうは伝承とか大好きだからさ、何かと理由を付けて、次元とかからでも取ってっちゃうんだよ。」
「豊かになっても、心は満たされんと言うのにな。如何だ、私の話はこんな物で良いだろう。」
「良く分かった。其なら、此方の手伝いをしてくれるのも頷けるな。」
只塔を壊して行く丈じゃあ此処は変われないが、其は腹癒せに近い物だろうか。
「信用して貰えて助かる。出来れば君達の話も聞きたいが、流石に一度戻るか。」
「然うね、榔、又近い内に連絡するわ。」
「噫、君達も大事にされよ。私にとっては大事な要なんだから。」
「ん、まさかもう戻る気なのか?」
「・・・?何だ、未だ何か、」
言い掛けて榔は口を噤む。
何か・・・感じる、野生の勘が告げる。
今、何か不味い物に手が届こうとしている、分かるのだ此は、
此の気配、噫矢張り此の方は、
霄と水鏡と殺しの破壊神だ。
セレから流れて来る、其迄と違った。殺意にも似た物に思わず足が竦む。
何を間違えてしまったのか、否初めから、
瞬時に後悔やらが押し寄せて来るが構ってはいられない。
今はフェルナーデを護らないと、
四肢で堪えようと踏ん張った瞬間、セレは榔の目前迄移動していた。
まるで瞬間移動だ、瞬きの間にこんな、
此じゃあもう逃げられないっ、
思わずギュッと目を閉じた榔が感じたのは冷たさだった。
頬に感じる其は別に痛みを伴わず、只々冷たい丈で。
そろそろ目を開けると、矢張り眼前にセレが居た。
一体何をしているのか謎だったが、彼女の手を見ると、如何やら自分に触れている様である。
噫此の冷たさは彼女のか、ってえ・・・?
攻撃ではなさそうだが趣旨が理解出来ずつい観察する様に固まってしまう。
此は・・・まさか撫でられている?喉元とか頭を、
すっかり固まってしまった榔に構わずセレは変わらず榔をモフり始めた。
其の表情はもうすっか蕩けており、先感じた殺気が嘘の様だ。
「え、あ・・・え?」
やっと其丈声を絞り出すと、外野の二柱もやっと気付いた。
「え⁉セレ何時の間に!」
「ッ⁉ルル、榔⁉え、セレさん何を⁉」
「す・・・凄い、凄いモフモフだ・・・。」
ガルダが近付いて引き剥がすか悩み始めた、楽しんでいる丈なんだよな・・・。
「えっと悪い、セレ余っ程榔の事、撫でたかったみたいだな。彼だったら直ぐ放すけど。」
「あ、撫で・・・其だったら、大丈夫だ。問題は無いが、」
然う言えばずっとモフらせてくれだとか何とか言っていた気がする。其にしても急だ。
成程、自分が帰ろうとしたから慌ててか、其にしても・・・吃驚した。
殺気と言うよりは彼は逃がすまいとした上か、憖じ力がある所為で全てオーバーになってしまうのだろうか。
其にしてもこんな、こんなもみくちゃにされる程撫でられたのは久し振りである。
クレイド§スフィアの長だからと言うのもあるが、狼なので近付く者も少ないのだ。
でも彼女の手はどんどん遠慮が無くなり、背とかもガシガシ撫でられる。
あんな硬そうな爪でも全く痛みを感じないと言う事は其丈気を付けてくれているのだろうか。
加えて何だか段々・・・気持良くなって来たかも?
今迄に味わった事のない感覚に彼は戸惑った。
セレのモフモフに対する扱いは完璧だった、最早プロの域だった。
今迄数多の龍達と接して来た彼女である。
加えて秘かに彼女はリュウから撫での心得を受けていた。
もう彼女に愛せないモフモフは無い、モフモフを愛し、モフモフに愛されるのだ。
「凄い、流石曦のモフモフ、熱を逃がさない毛皮の効果と相俟ってより温かさを感じる。目ですらモフモフを感じられたのは初めてだ。此が4D!遂に触覚、視覚、モフモフの心の声聴覚と、此処迄網羅して来たのか・・・っ!あ、侮っていた、いや分かってはいたんだがこんな・・・っ、いやこんなの抑想像出来ない、此の世は余りにも広い、未だこんな新体験があるなんてっ!」
「おぉ此迄にない新しい評価基準、此は得点が期待出来そうだ。」
「ぐぬぬ此は・・・未知数!測定不能だ!」
やる気のない合いの手にも全力で応えるセレだった。
何と言うか熱が凄い、彼女の生ける熱量が全て此処に集まっている気がする。
「わ、私は如何したら良いんだ・・・。」
「っ!モフモフはモフモフの儘で良い!大丈夫だ、私が保証する!」
霄と水鏡の殺しの破壊神に言われても・・・。
「良し!充電が完了した、御協力感謝するぞ榔、御前の事は私が全力で護ろう。」
「セレ御前モフモフで動いていたのか・・・?」
「え、えと忝い・・・?」
満足したのか自信満々に彼女は胸を叩いていた。
色々突っ込みたいが、答えは帰って来そうにない。
兎に角彼女が落ち着いたなら良かった、何とも幸せそうな顔をしてらっしゃる。
「あの榔、その、大丈夫だったかしら・・・。」
「噫以外にも、ちゃんと撫で回されたと言うか・・・。」
「いやぁ素晴しい体験だった。良ければ毎日のルーティンとしてゲートを使いたい位だ。寧ろ私の部屋と繋いで欲しい。」
「セレ、モフモフの私物化は駄目だぞ。」
「ルル、流石に毎日は怪しまれるので控えてくださいね・・・?」
フェリナと榔、二柱が何とも心配そうな目で見る。
悪いが此がセレなんだ。仕事とかはちゃんとするので信じてやって欲しい。
「・・・では、私は今度こそ戻るぞ。」
言うや否や榔はゲートに飛び込み、クレイド§スフィアに戻ってしまった。
さて、仲が深まったのか何と見えない具合である。
「何と言うかセレさんあの、ルル、色々エネルギッシュですね。」
「あ、えっとその、騒がしくしてしまって済みません。」
何だか俺、セレのモフモフマネージャーみたいだな。
「い、いえいえ、私も何と言うか、色々見られて良かったです、ルル。」
「じゃあセレ、もう満足か?そろそろ帰っても。」
何だか満足の方向性が変わっちゃった気がするけど。
彼女は非常に満ち足りた顔をしていた。鼻唄でも詠いそうである。
「噫もう十分だフェリナ、世話掛けたな。此でちゃんと契約通りに動くとしよう。」
「あ、有難う御座います、宜しく御願いします。」
一先ず如何にかなって良かった。一瞬ヒヤッとしたけど、此なら大丈夫だ。
「然うだ。帰る前に一つ、レインの事なんだが、何か注意する事あるか?前世の姿と大分変わってしまったからな。」
「キュムリ?」
自分の名が出たからだろうか、気付けばレインはセレの足元に来ていた。扉は閉めていたが、其の隙間から入って来たらしい。
でも全部は入り切らないのか一部分丈だ。・・・然うか、然う言えば四つ付いていた瓊は入って来れないのか。
何となく此方を向いて鳴いている時は彼の瓊が前にあるので、彼が目と言うか顔の役割を果たしているのかも知れないな。
「注意ですか・・・ルル、然うですね。私は寧ろ前世の姿を知らないので難しい所ですが、でも其の子は殆ど手が掛からなかったんです。だから大丈夫とは思いますが、ルララ、強いて言ったら・・・御飯が少し変わっているかも知れないです。」
「御飯?魚じゃないのか?」
「な、何食べさせているんですか⁉」
いや然う言われても、猫は肉食なんだから肉か魚しか食わないよ。
「さ、魚じゃなくて・・・黔い物です。黔かったら何でも食べます。炭とか石とか煙とか。」
「お、おぉ其は確かに変わってるかも?」
魚より変な物食べさせてるじゃんとは突っ込んではいけないのだろう。
うっかりレインに何喰わせてんだ!って言い掛けたけど。
前世で魚を喰い合った仲の自分が寧ろ、彼女に食って掛かられそうだから黙っていよう。
「でも炭なら鏡と一緒だな。只好みもあるかも知れないし、又確認してみよう。分かった、助かる。」
此で一先ずは安心だろうか。用が済んだなら直ぐ帰った方が良い。長居は無用だ。
「其じゃあ御暇しよう。フェリナ、今後も良い付き合いを御願いするぞ。」
「私こそ、宜しく御願いします。」
フェリナが急いで扉を開けると、直ぐ様レインが又絨毯の様に伸びて、レリーシャ=ガーデンの外へ道を作ってくれる。
挨拶もそこそこにセレ達はレリーシャ=ガーデンから出て行った。
念の為見られていないか、何時もより波紋を強目に放つが問題なさそうだ。
「良し、と。じゃあレイン一緒に帰るぞ。」
「クキュムリィム!」
レインは一気に巨大化し、見上げる程大きく丸くなった。
そして息付く間もなく突然大口を開け、二柱を呑み込んだのだった。
・・・・・
「・・・っえ、」
セレとガルダ、二柱の喉から同じ音が発せられる。
何が起きた、今一瞬視界が失われた気が、
二柱は緩り互いの顔を見合わせた。
目の前には店が・・・次元龍屋がある。レリーシャ=ガーデンではない。
「ウニャロゥ~。」
声に思わず振り返ると巨大化して丸くなったレインが居た。
何処となく誇らし気な顔である・・・?
何故だろう、彼女を見た瞬間、其迄感じなかった恐怖に一瞬襲われた。
「・・・ガルダ、何故私は店に帰って来ているんだ?」
「オ、俺もさっぱり・・・。」
考えても埒が明かない訳だが、波紋を広げていると見知った者が入った。
「彼は・・・ミルミか?久し振りだな。」
店の直ぐ近くに穴に埋もれた状態でミルミを発見した。
近付いてみたが何やら震えている様に見える。
ミルミが来たと言う事は手紙か何かあるのだろうが、一体如何したのだろう。
―あ、セレ様、ど、どうも。―
穴から顔は出してくれたが未だ怯えている様だ。外敵はいなさそうだが・・・。
「如何したミルミ。何かあったか?」
―な、何かって・・・び、吃驚したんでしゅよ、だって其の化物の口からセレ様やガルダ様が出て来たので、喰われたのかと・・・、―
「キュルムゥ!」
何か気に障ったのかレインが声を上げるとミルミは自分の足に隠れてしまった。
化物って・・・レインの事か?まぁミルミからしたら大怪獣だが。
口から・・・?喰われた?あれ、若しかして自分達って、
覚えている限り最近の物を思い出す、然う言えば確かにレインが口を大きく開けていた様な・・・。
そして其に・・・包まれて、呑み込まれた気が、
「ん、あれ?私若しかして喰われたのか?」
「ピィ!」
ミルミが悲鳴を上げて隠れてしまう。こら、手紙を出しなさい郵便屋さん。
「え、えぇ?・・・?で、でも俺もそんな気がして来た。」
「ミ、ミ、ピルル。」
レインがそっとセレのオーバーコートの裾を咥えた。
そして突然、目にも止まらなぬ速さで地面へ潜って行ったのだ。
巌遊兎顔負けの勢いである。何て速い。
彼の巨体が一瞬で見なくなる。加えて振動も殆ど無い。
一応波紋で後を追えるが中々のスピードである。
まさか・・・斯うして自分達を運んだのか?
然う、としか考えられない。レインに食べられて、其の儘店の前迄輸送されたのだ。
一応唾液とは付いていない、喰われたと言うより包み込まれたのかも。
「えっと・・・レインが此処迄運んでくれたのか?」
「ピピキュ!」
一気に躯を細長くさせてレインが穴から顔を出した。
な、成程、何て前衛的な方法だ。
屹度其の穴を辿ればレリーシャ=ガーデンに繋がっているのかな。
「え、えぇ⁉そ、そんな俺達本当に喰われてたのか!」
「然うか、フェリナは金魚鉢に入っていたからこんな方法出来ないし、何とも万能型だなレイン、有難う。」
ポンポンと其の頭を叩くと見る見る小さくなって行った。
然うして掌サイズ迄収縮するとセレの肩に跳び乗った。
「ミルミ、此なら恐くないか?」
―ふみゅー、ぱい、御仲間さんだったんでしゅね。吃驚したぁ・・・。あ、此言ノ葉ですっ!―
然う言うとミルミは一通の書簡を吐き出した。
相変わらず綺麗な状態である。此方も此方で凄い技術だな。
「どうも御疲れ様、差出人は・・・ん、ZNか。」
文字で見るのは初めてだが、読めるもんだ。神って便利だな。
「ZNってええっと・・・前次元で会ってるんだっけ。」
「電話で、だがな。T&Tの社員だな。」
―じゃあ配達完了!―
片手を挙げるとミルミは直ぐ様又地面へ潜って行った。
未だ仕事の途中なのだろう、熱心な事だ。
さて、手紙で来るとはな。内容は何だろう、Z1-Θの事だろうか。其にしては薄いな。
手紙を持って店内へ。大変中身が気になる。
皓い封を開けると一枚の便箋が出て来た。
「・・・おや、如何やら此は御飯の御誘いみたいだな。」
「え?二柱でか?」
「いや、他にも会いたい神が居るから色々連れて行くって。其で情報交換とか顔合わせしたいんだと。」
然う言う付き合いは初めてだ。然も手紙で誘われるなんて。
「店は『霧のさざめき』、初めて聞く所だな。・・・おぉ、」
「ど、如何したセレ、」
ガルダが何だか落ち着かない。別に怪しい手紙ではないぞ?
そんなセレには不思議なイメージが頭に流れ込んで来ていた。
「此が霧のさざめきか?成程凄いな。場所も良く分かる。」
意外に此方の店と近いが今迄気付かなかったな。
と言うのも実は手紙の下の方に“此処に触れた儘店名を言ってください。”と華のマークが入れてあったのだ。
試してみると頭の中に店のイメージが流れて来る。何とも分かり易い。
更に其の下に“此がT&T新商品の手紙です!是非御贔屓に。”と書いてあるのだから抜け目ない。
「面白いぞガルダ。ほら手紙の此、見てくれ。」
「どれどれ。」
ちらと手紙を一読するとガルダも模様に指を置いてみた。
「霧のさざめき・・・お、おぉ、不思議だな。」
「噫、此は中々便利だぞ。」
面白い技術だ。イメージを魔力と共に手紙に埋め込んでいるのか?
「霧のさざめきって彼処か。然う言えば長らく行ってないなぁ、manjuの行き付けなんだけど。」
「ん、ガルダは行った事あるのか。流石次元の迫間について詳しいな。」
「いや其程でも。確か此処はバーだぜ。何処の国にも属してないし、紹介が無いと入れない隠れた店の筈。ま、大丈夫とは思うけど・・・セレ一柱で行くのか?」
「まぁ招待されているのは私丈、みたいだな。」
「然うだよな。まぁ気を付けて行けよ。此の所、一寸物騒だからさ。」
「物騒って、何かあるのか?」
自分達が塔を壊している以上に物騒な事なんてあるだろうか。
「何か風の噂だけどさ。其にオンルイオ国の方の話だけど、最近行方不明者が多いみたいなんだよ。」
「行方不明・・・?神の、か。其って単に使命を終えたとかじゃないのか?」
「然うじゃないっぽいぜ。本当突然いなくなると言うか、霄出掛けて帰って来ないんだってさ。」
「神攫いか・・・?分からないな。まぁ私には其以外も敵が多いし、気を付けよう。」
「ま、まぁそっか。ってか何気今日の誘いっぽいな、其。」
手紙で斯う言う誘いは難しい気が・・・テレパシーがあるのに如何したんだろう、形式だろうか。
―お、おいセレよう、一寸聞くんだが。―
「ん?如何した、御飯か?」
暖炉に居た火鼠達が恐る恐る尋ねて来た。
然う言えば此の子達にも名前を付けてあげたいが数が多いんだよな・・・全貌が未だ掴めないし。
―いや飯は良いんだが、その・・・肩に乗ってる奴ってまさか、いやまさかとは思うけどよ。―
「噫此奴はレインだ。今日から仲間だぞ。元猫だったんだが。」
―猫ぉ⁉―
勇ましい筈の威嚇態勢だと言うのに何とも情けない声が出てしまった。
然うか、燃えていても鼠は鼠か。
「キュピピィ?」
―ひぃいぃ・・・オ、俺達が今日迄育てて貰えてたのってまさか、―
「いやいやレインは食べないぞ。・・・まぁ前世は彼だが。」
激レアで捕っていたのは内緒だ。
「ッキュキュ!」
其迄火鼠をじっと見詰めていたレインが急に伸び上がった。
そして目にも止まらぬ速さで彼等に跳び掛かる。
「っお、おいレイン⁉」
掴んだ所で意味はない、彼女は何処迄も伸びてしまうのだ。
だがレインは其の儘煙突の中に入り、上へ上へ昇って行ってしまった。
「クキュルル~。」
何だか嬉しそうである。自分の足元で四つの瓊が回転した。
「あ、彼じゃないかセレ、其奴の御飯って黔い奴だろ?」
「然うか煤か、煤と煙を喰いに行ったのか。」
―な、何だよぅ、変な物喰う奴だなぁ。―
安心したのか彼等の纏う焔が少し落ち着く。
「ま、仲良くしてやってくれ。何だか良い感じに共生出来てるしな。」
火鼠は喰われないって丈で共生じゃあないけど、其処は目を瞑ろう。
「クルル、キュクルミニ、キュピカカッ。」
「んん、如何したんだレイン。」
何か必死に伝えようとしているが、はっきりしない。
レインは其の儘自分の手元を離れ、屋根の上迄移動してしまった。
其処から先は波紋でしか見えない、又地面へと潜って行ってしまう。
「っ⁉な、何だ何だっ、」
突然襲う地響き、激しい揺れに思わず手を付く。
「セ、セレ此って、」
「地震じゃない、レインが何かしてるな。」
暫くすると揺れは何事もなく収まった。
だが自分の波紋はしっかり捉えている、な、何て事をしてくれたんだ。
「ガルダ、店が・・・凄い事なってる。」
「え?揺れた丈じゃないのか?」
「外だ。窓の外を見てくれ。」
セレが何処か冷や汗を掻いている、珍しい。
言われる儘に窓の外を見てみた。
景色は別段変わっていない、蒼い旻に翠豊かな大地、気候は穏やか其の物だ。
でも良く見ると其の景色が少しずつ右へ動いている様なのだ。
ん・・・ん・・・ん?
地動説を体感している気分だ。いや何の道動いているのを自覚するのはおかしいけれど。
此じゃあまるで店丈が動いていないみたいじゃないか。
・・・ん、いやまさか!
慌てて窓を開けて下を覗き込んだ。すると、
「クキュルルン!」
元気良くレインが首を伸ばし、窓から入って来た。
其の躯は長く、店の下に続いている。
そして店の下は、地面に接している筈の其処は真黔になっていた。
「・・・え、あれ、此店取り込まれるのか?」
「いや、多分フェリナの金魚鉢みたいな事じゃないか?」
「金魚鉢って・・・え⁉じゃあ店が動いてるのか⁉」
口に出して初めて実感が沸いた。
然う言う事か、先の地震、レインが家を持ち上げて背中に乗せたんだ。
其で今は動いていると・・・動いているにしては中が全く揺れなかったから気付かなかった。
「レインは力持ちなんだな。」
「そ、然う言う問題じゃないだろ。」
「屹度レインはレインなりの考えがあるんだろう。斯うして店が動けば位置が特定され難くなるだろう。いざと言う時店毎逃げられるし。」
「な、成程・・・?」
思わず納得し掛けたが、いや、いやいやでもおかしいって!
「でだガルダ、因みに店の基礎と言うか、然う言うのって大丈夫だっけ。」
「んー・・・干渉力次第だろうな。普通じゃ無理だし、持ち上げられたって事は、寧ろ最初から無かったんだろ。」
何て欠陥住宅だ。フォードめ、ケチったな。
「・・・って、然う言えばスーは⁉」
慌ててガルダは地下への扉を開いた。
スーの部屋は地下、普通に考えたら壊されてしまっている。
行き成りこんな黔い良く分からない奴が現れたらビビる所じゃない。
開けてみたが、如何やらスーの部屋は其の儘無事な様だった。
只地震に驚いてしまったのか奥の方で震えて縮こまるスーを発見した。
「ガ、ガルダ、な、何か、い、いい、今凄い、揺れて、」
「怪我無いか?何か変な事とか。」
「?だ、だだ、大丈夫、れ、れす、」
声は全然大丈夫じゃないけれども良しとしよう。
多分彼の様子じゃあ部屋から出て来ないな、此の儘にしてあげよう。
「一応、スーは大丈夫だったけど、一体如何なってるんだ?」
レインが通った跡を見てみるが、特に地面が抉れた様子等はない。
となると・・・益々意味が分からない。
「其の地下室って巧が造ったんだろう?じゃあ皆の部屋と同じ様に扉の先は別次元だとかに在るんじゃないか?」
「あ、然う言えば然うだった。うっかり前世の常識が邪魔したな。・・・いやー焦ったぜ。」
一先ずは安心だろうか。うーん、流石セレの元相棒と言うか、中々アクロバティックな事をするな。
「まぁ好きなら其の儘させても良いけど・・・良いのかな?」
「レイン、持ってくれるのは有り難いが、重くないか?無理はしちゃ駄目だぞ。」
「クキュム、キュル!」
窓を開けると直ぐ首を伸ばして擦り寄って来た。
大丈夫・・・と言う事かな。何だか滅茶苦茶に伸ばしたり縮めたりして動いているけれども。
「分かった。じゃあ宜しくな。」
「キュキュ!」
一声上げるとレインは何処か嬉し気に、当て所もなく歩き始めるのだった。
・・・・・
霄に掛かり始めた頃合い、旻は冥くなる所か不思議な碧の筋を増やして行く。
一見極光の様だが実物を見た事が無いので何とも言えない。
こんな見た事のない景色を常に見せるのが次元の迫間の特徴だろう。
そんな時間帯にバー霧のさざめきの扉が来訪の音を告げる。
「水鏡も眩む宵にようこそ。只済みません、本日は貸し切りで・・・、」
ひらりと扉前に舞い降りる蒼の影、外を見遣って直ぐに手を挙げた。
「噫貴方様でしたか。でしたら大丈夫です。さぁようこそ霧のさざめきへ、迷い込まれない様気を付けて。」
「邪魔するな。」
入って来たセレに向け、幾つか声が上がった。
「お、終に主役の登場だ。」
「っな、何で御前が居るんだ・・・?」
思わず足が止まってしまう。
久しく見ていなかったが、見間違いではないだろう。
「噫セレ神さんいらっしゃい、どうぞ此方へ。」
声に誘われる儘に向かう。
霧のさざめきはガルダの言った通り一見極普通のバーだった。
木造で、壁の所々に華が掛けられている。其の為か店内全体が甘い様な薫りに包まれていた。
其の中で丸テーブルが何席か、奥にバーカウンターもあり、もう先客が三柱程居た。
此処のオーナーは機械仕掛けの蝶の様な神で、翅は鮮やかな蒼が美しく、少し傾ぐ度に色が薄い翠や水色に変化して行く。
翅以外は機械の様である。所々歯車が回っていたり、背から蒸気が出たりと細かな音を立てる。
彼も何処かの種、なのだろうか。無機物っぽく見えるが、まぁZ1-Θも喋るし、おかしくはないか。
取り敢えずは席に着く。バーカウンターと言っても緩やかに曲がっているので全員の顔が良く見える。
そんな自分の隣には誘ってくれたZN、巧、そして・・・マスターが居た。
マスターは彼のギルドマスターである。ドレミが御世話になっていた・・・。
途中から明らかに避けていたし、怪しいとは思っていたが、まさかこんな所で出会うとは。
セレの意思絡み合う視線等何のその、マスターはカラカラ笑ってグラスを仰いでいた。
今様色の瞳が徒っぽく煌めく。
「ZN、だな。今回は誘ってくれて有難う。早速話したいが、一寸気になる客が居るんだが、」
ZNとは初対面なので一見、では難しいが、今迄見覚えのない彼が然うなのだろう。
其の姿は巨大な偽花魔王蟷螂の様だった。
首が長く、頑丈そうな甲に覆われていて触覚が何本も生えた面をしているが、躯付きは粗蟷螂である。
手足は濃い紅色で、全体的に薄い石竹色をしており、複数ある足も器用に組んで畳んでいた。
ちらと此方を見遣る眼は濃い紺の複眼である。
成程、若干姿がALに似てなくもない・・・だから繋がりがあったのかも知れないな。
とは言っても彼の次元の人々は何でも受け入れに来る節があったが。
「えぇ、御会いするのは初めてですね!どうぞ此方こそ、急な御誘いなのに来て頂いて有難う御座います。」
「急だったが、私も会いたかった所だ。其に彼の手紙は中々面白かったぞ。」
「お、御気に召しましたかぁー良かった!早目に御誘いしようと思ったんですけどね、色々訳ありな訳ですから私達、敢えて予約として立てない様にしてみたのですが。」
「成程な。先店に入る時に言われたが、今回は貸し切りなのか?」
ZNは見た目が少々厳ついがビジネスマンみたいで話し易い、斯う言う関係は気が楽だ。
「勿論ですよ。でないとおちおち静かに飲めないでしょう。」
「えぇ、静かにしたら辛気臭いだろ、此処はパーッとだな!」
「小父さんが一番元気っすねぇ、まさかもう酔ったっすか?目絳いですよ?」
「目は元からだっての。もう蜥蜴ちゃんは釣れないねぇ。」
うーん、見れば見る程、聞けば聞く程マスターだ・・・。
何の面下げて堂々座っているのか知らないが、良い機会だ。じっくり聞いてやる。
「ほらほら、飲み物頼みますよ。オーナー、ブラッディメアリーと・・・セレ神さんは何飲まれます?大抵の物は此処で飲めますよ。」
「いや実は私は御酒を嗜んだ事が無くてな。殆ど初めてに近いから出来れば余り強くない物を。」
前世のギルドとかで多少は飲んだ事があるが、抑幼い時だしな。
集中力が切れてしまうので昔は苦手だったんだ。
「おや、天下のセレ神様が下戸とは。じゃあインペリアル・フィズとか如何だ?飲み口は良いぞ。」
「然うですね、オーナー済みません、ブラッディメアリーとインペリアル・フィズを御願いします。」
「はい喜んで。」
オーナーは、棚に並んだ様々な瓶を取り出して行く。
ウォッカにレモンソーダ、トマトジュース・・・取り出した其々を並べて行く。
斯う言った店自体初めてなので少しワクワクする。
前世ではバーなんて洒落た物は無かったしな。此は中々楽しめそうだ。
さて一体如何作るんだろうと見守っていると蝶宜しく口吻がオーナーの口から飛び出した。
そして其を其々の瓶に突っ込んでいる。・・・まさか、
二つ置かれた空のグラス、其等に口吻を触れさせて、液体が満たされて行った。
薄い黄色と真絳なグラス、其を自分とZNに差し出す。
「どうぞ、インペリアルフィズとブラッディメアリーです。酔いの一口をどうぞ。」
「あ、有難う。」
今・・・飲んだよね?え、飲んで体内で混ぜたの?其を注ぐと・・・おー凄い、何と言うか凄い。
名前からは今一想像出来ていなかったが、出て来たのは薄い黄色の、ほんのり柑橘系の薫りがする一杯だ。
ま、まぁロボなんだし、別に問題ないよな。
「~っ、噫、沁みますね!」
ZNなんてさっさと飲み始めている。濃い絳の液体は何だかアルコールが強そうだが。
「・・・ん、結構さっぱりしているな。」
違和感を持たれる前に一口飲んでみた。
アルコール独特の苦みと、レモンの酸味が広がる。
カクテルだがあっさりしていて爽やかだ。此なら飲みやすいな。
「口に合った様で何より。さ、別の華が恋しくなったらどうぞ御呼び付けてください。」
然う言うとオーナーは周りの華の様子を見たり、グラスを磨き始めた。
「あ、オーナーじゃ一寸悪いけど、此もう一皿とグリーンサラダ一つ頼むぜ。」
「えぇ、直ぐ御作りしますね。」
オーナーは手が複数ある為か一気に準備が片付いて行く。
「んじゃ、そろそろ御喋りしようかセレ神さん。俺の事、気になって仕様がないんだろ。」
マスターはビールを仰ぐと今様の瞳を此方に向けた。
綺麗な絳だ。目丈、青年の様な。
まぁ其方から振ってくれた方が助かるな。
「噫、御前は・・・神なんじゃないかとは薄々思っていたが、T&Tの者だったのか?」
「んにゃ、其は違うねぇ。俺はしがないギルドマスターだぜ。T&Tは取引してるから仲が良いが。」
「ギルドマスターって彼のギルドか?」
ドレミやフレスが居た、あんなのと言ってはなんだが、一つの次元の。
「彼も、と言う可きだろうなぁ。俺は色んな次元を跨いでギルドマスターしてるのさ。ギルドを造る事で其の次元の御悩み事を一寸でも解決してやる、然う言う神なのさ。」
「然うだったのか、其じゃあ随分上役だな。」
少し自分達の店と似ているだろうか、然う言う次元の救い方もあるんだな。
怪しいな、とは思っていたが此は認識を改めないといけないか。
「そんな大したもんでもねぇよ。前世でまぁ・・・色々学んだからな。其より今回は礼を言いに来たんだよ。」
「礼?私にか?」
「おぅ、ドレミを連れて行ってくれたし、フレスの願いも叶えてやってくれたし、俺は大満足だよ、有難な。」
「そんな事、此方だって助かっているんだ。礼を言われる事じゃない。」
其に彼はドレミの意思だ。自分がした事なんて。
「お、料理出来たぜ。ほら腹減ってるだろ。どうぞ。」
「あ、噫済まない、有難う。」
サラダと此は・・・小魚の天麩羅だろうか。フェリナが発狂しそうなメニューだ。
「あ、セレ氏、其、横の緑の粉付けて食べたら旨いっすよ。」
「抹茶塩ですよ。粉と言われると一寸誤解生みそうなので変えてくださいよ。」
「・・・ん、確かに此は旨い。」
一寸感動すら覚える。天麩羅は知識で知ってはいたが、食べるのは初めてだ。
ガルダも此の店、来た事あるって言ってたな・・・頼んだら作ってくれないかな。
「ハッハッハ!良い食べっ振りじゃねぇか。いやはやセレ神さんが話し易い神さんで良かったぜ。」
「話し易い?然うか?」
愛想そんな良くない自信あるぞ。
何方かと言うとマスターが御喋りと言うか、気兼ねしていない丈な気がするが。
「だって色々聞いてんぞ。仕事も順調そうだし、ドレミ達も仲良くやってんだろ?其丈の力持っていて話せるのは凄い事だ。」
「そっすよ、セレ氏の部屋って斬新なんすよ!」
「私も、良い商売仲間になると思ってますよ。」
「え、あ、あの一寸⁉」
お、おかしい、此の話の流れはおかしいぞ。
まるでドレミとフレスに散々言われた時みたいなそんな、手玉に取られた気分だ!
「おやセレ神さん顔が赤い気がするけど、まさか飲んでもねぇのに酔っちまったかい?」
「っいや、そんな事は、ない!」
慌ててカクテルを一口飲む。
流されて堪るか、自分はもう成長した筈だぞ。
・・・あ、一寸一気に飲み過ぎたかも、少しだけ頭がくらっと来た。
まぁ此の程度何でもない、適当にサラダを食べよう。
「然う言えば顔で思い出したけど、何と言うかセレ神さん色々隠し過ぎじゃないか?此処は次元の迫間なんだからもっと肩の力抜いて大丈夫だぜ?」
「確かに、前会った時は翼出してたっすよね?」
「ほぅ、其なら出してくださいよ!私丈大判取っちゃってるんですから!」
然う言ってZNは鎌を上げて威嚇の様なポーズを取って来た。
おぉ・・・大きい分迫力あるな、確かに自分も一瞬吃驚した姿だけど。
「いやでも晒全部は・・・見て余り良い物じゃないぞ。」
「正直、此方としても顔見えねぇのは何か気が引けるんだよ。其とも何か?出せねぇ理由あるのか?他神の目なんて如何でも良いだろ。」
「指定手配されているから顔を晒せないのはあるな。」
「ハッハッ!そりゃあ違いないな!」
まさか大受けするとは思っていなかった。マスターは顔を赤くして机を叩いている。
あの・・・自分で言うのも彼だが、不謹慎だぞ此。
「まぁ酷い面なのは本当だよ。最近どんどん変わってるし。」
「変わってる・・・?ほぅ、若しかしてセレ神さんって変態タイプの方ですか?じゃあ何の道今しか見られないじゃないですか。」
「抑女子がそんな下卑ちゃいけねぇよ。もっと自信もって出しちゃいなよ。」
「う・・・そ、然う言う物か・・・?」
や、やり難い、遊ばれている様な変な心地だ。
でも、負けないぞ。自分だって半神前だが神としてのキャリアは積んで来たんだ。
「分かった。じゃあ出すが、嫌だったら構わず言ってくれ。」
晒を取り、尾と翼を解き放った。
全部出すと気は楽だが矢張りでかいな、出し過ぎない様気を付けないと。
「おぉ凄ぇ!成程なぁ、其の姿なら納得だな、勁そうだ。」
「確かに前見たのと違ってるっす!神になっても成長するんすねぇ。」
二柱が感心した様に見詰めて来る・・・その、余じっくり見ないで頂きたい。
何の道注目を集めてしまう姿だ。矢張り解せないな・・・。
「・・・好き。」
「へ?」
適当に半面の目を叩いて閉じたりしていると不意に囁きが聞こえた。
「セレ神さんの躯、滅茶苦茶タイプ・・・かも、」
「お、おい頭大丈夫か?」
ZNが何処か熱を持った目で見て来る。複眼の全てに自分が写っていた。
今何て言った、酒が回ってしまったんだろうか。
マスター、巧も言葉を失った様でちらちらとZNの様子を窺っていた。
「・・・っ!わ、私は何て事を!わ、忘れてください、す、素敵だって言いたかったんです!」
「・・・彼の奥手な蟷螂君が大胆だ・・・ぐえぇっ、」
マスターが言い終わらぬ内にZNは其の鋭い鎌で彼の頸を引っ掛けた。
其の儘ギュッと自身に引き寄せるが中々恐ろしい図である。
「ちょまっ!ZN神さんストップ!ほら俺何も言ってねぇから!」
「おっと済みません。つい勢いで首を刈る所でした。」
「照れ隠しに首取る奴がいるかよ!」
慌ててマスターは鎌の下から脱出すると一息付いた。一応怪我はない様だ。
巧も何か言い掛けた様だが口を開き掛けて固まっている。まぁあんな物見たらな。
「え、えっとZN、その、有難う?」
「いえ私こそその、済みません。」
甲に覆われた面なので表情は今一読めないが、彼は慌ててカクテルに口を付けた。
・・・演技ではなさそうである。
本気か?自分でも此の姿、ないわーって思ってたのに。
何か気に入られてしまった様である。其の後もZNはちらちらと自分を見遣っていた。
・・・悪い視線じゃあないが、今迄になかった類だから変な気分だ。
言ってしまえば彼も、大柄な鎌、足にも膜の様な物が付いていたりと色々主張の激しい躯だ。だからこそ、なのだろうか。
うーん、新しい発見だな。
「と・に・か・く!話し戻しますよ。然う言う下世話な話良いんで。」
「お、下世話な事考えてた・・・うぉお!」
無言でZNの鎌が襲って来たのでマスターは頭を下げて難を逃れる。
「えっと話なら・・・巧、又近々店の事頼むかも知れないから宜しくな。」
此以上進めたら死神が出るかも知れない、早い事話を変えよう。
其にしてもオーナーは先から我関せずでグラス拭いているが気にしないのだろうか。
然う思っていると来客を知らせるベルが鳴った。今日は貸切なので帰さないといけないな、オーナーも忙しい様だ。
「お、今度は何ですかぁ~。自分で言うのも彼っすけど、大分やっつけ工事感出て来ましたよ。」
「然う言えば今は基礎も無いしな。大分凄い事なってるぞ。」
「え、え⁉何魔改造してるんっすか!其なら此方に・・・っおぉ!此は又凄い!」
イメージを巧に送ってみた。レインが蝸牛宜しく店を背負っている姿である。
「相変わらず奇抜っすねぇ!此、新しい御仲間さんっすか?」
「噫、レインって言うんだ。然うやって店を運んでくれるのが好きみたいで。」
折角此方が話題を変えたと言うのにマスターは又ZNを揶揄っている。
もう知らない、襲われても助けないからな。あんな笑って死ねたら奴も本望だろう。
「成程ぉ~。あ、じゃあ鞍とかあった方が良くないっすか?其なら手配するっすよ。」
「確かにあった方が良いかもな。でも流石に其は御前の専門外だろう。」
レインが怪我しちゃいけないし、大事かもしれないけれど彼の形だと特注だろう。
「舐めて貰っちゃあ困るっすよ。斯う見えて此方、亀の上に神の住居造ったり、鳳の足から次元繋げたりして来てるんすよ。蝸牛の上に家なら余裕っす!」
おぉ、彼こそが創造神だったのだろうか。絶対に伝説の一つや二つ創っているじゃないか。
「じゃあ御願いしようかな。他にも一部屋改装が入りそうなんだ。」
Z1-Θの部屋だ。取り敢えずで造って貰ったんだが、彼は今色々と取り込み中である。
何と言うか進化、していると言うのか機械と魔力の融合か、変化している節がある。下手したら性格から変わるだろうな。
「へぇ、中々繁盛してるんすね、良いっすよ。又イメージ下さいっす、土師と一緒に駆け付けるっすよ。」
其は頼もしい。さて、食事でも再開しようかな。
小魚の天麩羅を何口か摘む。本当に此美味しい。
御酒も美味しいし、良い店だ。少し気分が良くなって来た。
然う思った矢先、後頭部に鈍痛が走り、思わず呻く。
「え、あ!セレ神さん御免なさい、手当たっちゃって!」
如何やらZNの鎌が当たってしまった様だ。マスターを狙っていたのだろうが、大きく振り上げたのか勢い余って此方に命中してしまったらしい。
「あらあら蟷螂君、怪我神出すのは感心しないねぇ。」
「っ何で貴方は無傷なんですかもう!あぁセレ神さん大丈夫ですか!」
「あ、噫、少し痛かった丈だから、」
吃驚した・・・見えていたつもりだったんだが・・・。
怪我はしていないのだが、ZNは気遣う様に鎌を下げ、他の手で摩る様にしていた。
形が形だから然う言う事柄に敏感なのかも知れないな。
「本当に大丈夫だぞ。私を誰と心得ているんだ。」
「噫、そんな風に言われちゃったら・・・、済みません、次は気を付けますね。」
「ハハッ!こんな所でやられちゃ様ないしなぁ、っと、然うだった。折角の御近付きの印に一つ教えとかなきゃな。」
「・・・何ちゃっかり自分の話持って行くんですか貴方。」
「此が年季の差だねぇ、ほらセレ神さんって何か龍?集めてんだろ?」
「ん、別に集めてる訳じゃないぞ。好きではあるけど。」
確かに三大伝説龍とか揃ったし、然う言う印象はあるかも知れないが。
一応自分はリュウに依頼をされているのが元だからな。
「土師の事知ってたっすもんね、龍については良く知ってると思うっすよ。」
「ありゃ、然うだったのか。俺の情報力も未だ未だだなぁ。ま、好きってんなら良いかな。実は!俺のギルド、坎帝の牙って龍だったんだぜ!」
何やら格好付けて鼻を鳴らす。
斯う言う所は確かに鼻に付く。
「坎帝の牙って、まさか其の儘ラークセラーだったのか?」
「おう!知らなかっただろう。」
ラークセラー、然う言う名の龍族が居るのだ。
高山の様に巨大な姿。躯も殆どが土や岩で出来ているので一目で見分けるのは難しい。
抑余り動かない龍なので、高山に擬態されたら右に出る者はいない。
大抵は気に入った場所に蹲り、背に草木が生えたりして完全に同化してしまう様な龍だが。
ギルドが龍、と言う事はつまり彼の崖は・・・、
「じゃあ何だ、皆奴の胃袋で酒盛りしてたのか!」
「ハッハッ!然う言う事だな。ほら彼奴の中って生きてるからか温かいし、丁度良いと思ってさ。」
丁度良いって、そんな共生の形なんてあるのか・・・。
確かにラークセラーは肉を食べたりしない。流れる水等からエネルギーとして魔力を吸収する龍だ。
其にしても自ら奴の胃袋に行こうとは普通思わない。
其をあんな、改装しちゃって住み良くしてしまうとは。
「ま、奴とは付き合い長いだしさ。好きで互いにやらせて貰ってるぜ。前もセレ神さんとフレスが話してるの、彼奴聞いててハラハラしたって言ってたぞ。」
「まさか彼が聞かれるとはな。」
「崖の所が顔だしな。皆鼻先に集まるから嚏を出さない様気を付けてくれてたぜ。最近は、ドレミの詠が聞えないから一寸寂しいとも言ってたなぁ。」
「そんな可愛らしい奴だったのか。」
其だったら又会いたいなぁ。彼の時は未だ未だ新神だったので其の辺の勝手が分かってなかったのだ。
まぁドレミの事もあったから其所じゃあなかったが。
「龍と言えば、セレ神さんこんな話も聞いた事ありますか?最近傷付いた龍達が集まっているって例の、」
「ん、何か其聞いた事あるな。余り私は詳しくないが。」
確か・・・フリューレンスとかが言っていた気がするなぁ。
彼の時は毛嫌いしていたからちゃんと話を聞いてやれなかった、其が悔やまれる。
感情的になってはいけない、昔からの自分の悪癖だ。
・・・いや、屹度昔の方が抑えられていた筈なんだけれど。
「普通龍ってのは、異種の奴等とそんな群れねぇんだぜ。其なのに同じ目的で動いてる、なーんか、人間臭い事しちゃってるんだって奴だろ。」
「えぇ、正に人間への復讐が目的とか。彼等の生態で言うと、粗あり得ない話なんですけど、矢張り聞いてますか。」
「復讐って、具体的に如何言う事なんだ。其ってもう活動しているのか?」
龍と人間・・・うーん、絡みたくない。
自分が関わるなら間違いなく龍側だが、かと言って人間と争って欲しくはない。
勿論人間が心配とかそんな話じゃない、あんなのは勝手に滅べば良い。
只問題なのは、龍達が傷付く事、拗れる事だ。
龍に因っては本当に勁いのもいる。只・・・人間だって馬鹿じゃない。
必ず、良くない事が起こる・・・其は、嫌だ。
「其が何とも。噂ばっかりでしてねぇ。だからセレ神さんなら若しや、と思ったんですが。当てが外れましたねぇ。」
「ふーん、そんな恐い事起こってるんすねぇ、厄介事は勘弁っすよ。」
「誰だって然うだろ。ま、人間って名指ししてたのが俺も気になったけどな。何て言うか次元を跨ぐ奴等の言い方じゃないと言うか。まぁ俺の方も調べとくよ。気になるんだろ。」
「・・・噫、無視はしたくないな。」
「ヘッ然うだな。セレ神さんとは話が出来そうだ・・・っておい大丈夫か?」
マスターの声が何処か遠くで聞こえる。・・・何か、言ったか?
・・・駄目だ、何か頭がぼーっとする、考えなきゃいけない事、あった筈だが、
「あれ、セレ神さん?き、聞いてます?」
「・・・う、えー・・・ん、」
声にならない声を出して、セレは突っ伏す様にカウンターに上体を預けた。
「え、お、おい未だ一杯だろ?ってかマジの下戸だったのかよ、」
「あらら~此はマスターやっちゃったっすね。セレ氏に何飲ませてんすか。」
セレは・・・眠ってしまったらしい、反面は仄かに赤くなり、起きる気配はない。
「此、酔い潰れちまったのか?本当に?あぁ~あ、やっちまったな・・・如何しよっかなぁ。」
マスター達が話していると突然、奥の席で動きがあった。
此の店には彼等以外にも来客が居たのである。
只一柱で、彼等の死角になる席に座っていた者が。
そっと其の影はバーカウンターへ近付いて行く。
「・・・え、あ、貴方、誰ですか。」
逸早く気付いたZNが振り返った。
ざわざわと足を広げて、席を立つ。
如何して他神が、今回は貸切の筈なのに。
今迄の会話を聞かれていたとでも、そして此のタイミングの接触は、
「・・・俺は、」
其の神が大きく一歩セレに近付いた。
「あ、其方はガルダ神さんじゃねぇか。」
「え、あっ本当っす。何時も御世話になってるっす。」
「し、知り合いですか⁉」
予想外の反応に、つい身構えていたのを解く。
てっきり相手も緊張している様だったから初対面かと。
「まぁえっと、セレの連れです。」
「噫、店の方でしたか。」
やっと合点が行き、ZNは軽く頭を下げた。
成程、其でオーナーは彼を入れていたのか。
迎えに来た、と言う事だろうか。タイミングが良かった。
「来ていたなら、一緒に飲みたかった所ですが、」
「えっと俺一寸心配性な丈で、まぁでも来て良かったかな。」
そっとセレの肩を叩くが反応がない。
寝てると言うより此は・・・早く連れ帰った方が良さそうだ。
「ハッハ!いや丁度良かったぜ。悪いけど御願いして大丈夫そうだな。」
「・・・何で貴方が居るんですか。」
如何やら彼が緊張していたのはマスターに対してらしい。
二柱にこんな目を向けられるって一体何したんだ。
「其はセレ神さんに聞いた方が早いぜ。覚えていればな、ハッハッハ!」
「全く此の神は・・・、済みません、無理に飲ませてしまった様で。」
「いや、加減を知らなかったセレもいけなかったので気にしないでください。その、俺もまさか此処迄弱いとは思ってなくて。」
・・・背負って帰れば良いかな。全然起きる気配がない。
「じゃあ途中で悪いけれども連れ帰りますね。あ、然うだ御代は、」
「噫気にしないでください、元から驕りなので。では道中気を付けてください、彼女を御願いします。」
「はい、じゃあ皆さん失礼しますね。」
軽く会釈し、彼女を背負おうとしたが、ぐったりして力が入っていないので難しい。
一寸気恥ずかしいけれども御姫様抱っこに変更した。
軽いので案外簡単に出来る。でも案の定何処からか口笛が聞こえた。
もう其には耳を貸さず、其の儘ガルダは店を後にするのだった。
―・・・御前が来てくれて助かった。―
幾らか歩いた所で不図そんなテレパシーが届いた。
彼女に似た、でも低い此の声は、まさか、
「えっと・・・ど、どうも・・・?」
丗闇だ、然う気付いた瞬間冷汗が噴き出すが何とか堪えた。
まさかの労いの一言である。一体如何言った風の吹き回しだろう。
「大丈夫、とは思ってたけど、一応さ。霄にセレ一柱で店ってのはって矢っ張思っちゃって来ちゃったけど、セレ、こんな酒弱かったっけ・・・。」
何かイメージと言うか、そんな事なかった気がするけれども。
今一度腕の中を見る。相変わらずぐっすりである。
熟睡だけれども、余りにも深い所為で生きているか心配になる位だ。
―・・・酒に弱い、とは少々違う様だがな。我も今回のは想定外だった。―
「想定外、ってえ?体質変化とか然う言う話か?」
―いや、何方かと言うと神として、の方だろう。其奴の存在は危うい、だから恐らく酒に酔って自我がぶれて、そして、―
「えっ⁉其って不味いんじゃないか?じゃあ此只寝てるんじゃなくて、」
丗闇の言わんとしていた事は何となく分かった。
セレは元々神に成る様なタイプじゃない、無理矢理神に成ったんだ。
そんな彼女が御酒を少し飲んだ事で若干酔って・・・其で自意識が保てなくなった。
たった其丈で、彼女の存在に影響を与え始めていると言う事だ。
だからこんなに生気を感じられないのだ、苦しくないと良いけど。
彼女を見遣るが、身じろぎ一つしない、無理にでも水を飲ませた方が良かっただろうか。
丗闇に後から自覚が足りないと怒られるのかなぁと心配していたけれども、此の様子だと彼女も心配をしてくれているみたいだ。
―流石に此の程度なら、何時かは起きるだろうが、其でも此処迄ギリギリで保っているとは思っていなかった。―
然うか、其で丗闇も想定外だったって。
其は俺もだ。まさかセレの自意識一つで、だなんて思っていなかった。
じゃあ矢っ張りセレは、死にたいと思ってしまえば其丈で今でも消えてしまうのだろうか。
俺の願いで、縛っている丈で。
懐い一つで、消える様な存在なのか、そんな儚い。
「・・・可也危うい橋の儘って事なんだな。」
―曖昧だからこそ、短期間で力を付けたとも言えるがな。何物にも囚われないと言うのは然う言う事だ。―
「セレ・・・。」
消えないで、然う願うのは俺の身勝手か。
俺の為丈の神で居て、手を離さないで。
自由になれなんて言わないでよ、同じ言葉を繰り返さないで。
御前自身の声を聴きたいんだよ。
「・・・っ、」
腕の中で小さく身じろぎ、薄くセレは目を開けた。
何処か惚けた様に虚ろで、意思は弱い様に思う。
然うか、此の目の内は駄目なんだ。
彼女は状況を理解していないのかボーっとしている。
普段だったら恥ずかしがって直ぐ降りる筈だけど、うーん。
「セレ、大丈夫か?」
声は掛けて置こう。其で目が醒めるなら其の方が良いだろう。
眠たいなら寝させてあげたいけれど、今の眠りは良くない。
「・・・ガ・・・ルダ?」
名を紡ぐが声に力はない。
此は降ろせないな、当分此の儘だ。
「セレ、何があったか覚えてるか?」
「?・・・あ・・・う、」
確かに此は重傷だ。全く自分を保てていない。
酒一杯で此の効き目は凄い、もう飲ませられないな。
俺は体質的に酔えないけれど、斯うなっちゃうのは一寸可哀相だな。
酔って忘れるとか、解放とか許されないんだ。其は自分を一時的とは言え、手放す行為だから。
其でもずっと縛られるのは・・・大変だ。
魔力抑制剤も、アルコールも駄目と。苦手項目、一寸ずつ増えてるなぁ。
彼女も其丈万能ではないって事だ。俺の方が頑丈な位。
「ん・・・ガルダ、」
只何とか名を紡ぎ続ける丈、意味は殆ど無いと思う。
でも呼ばれる度、少し安心するのは俺も軽いよな。
無意識だろうけれど、彼女は俺の服の裾をギュッと掴んでいた。
其の手を何処となく目で追う。
多分今話しても伝わらないだろうけど、一応言って置こう。少しでも喋って、頭を働かせた方が良い気がする。
「セレは霧のさざめきに行ってたんだよ。で、えっとZNだっけ、他にも巧とか居たな。ま、其奴等と御飯食べてたんだよ。」
「う・・・ん、あ・・・い。」
何とか返事をしようとしているけれども未だ厳しい。
無理はさせない程度に続けよう。
「其で、御酒飲んじゃったら倒れちゃって。如何やらセレ、御酒凄く弱かったみたいでさ。其で、俺が今連れて帰ってるの。」
小さく彼女は頷いてくれている。伝わっていると良いけど。
「帰ったら休んで、其から話しような。気分とか大丈夫か?何処か痛いとか。」
「・・・無い、多分・・・だ・・・だ、じょぶ、」
少し言語能力が戻って来ただろうか。此の分なら思ったより回復は早そうだ。
多分一気にアルコールでぐらって来たんだろう。彼の量で実際酔わないと思うから大丈夫な筈。
慣れていなかったから反動と言うのもあるんだろう。
今思えば俺が店に来ても一切気付かなかったのも、セレがZNの鎌を諸喰らったのも、彼の時既に酔い掛けていたのだろう。
一口目でやられちゃったみたいだな。
「じゃ、セレも起きたしちゃっちゃと帰るか。」
少し足早に帰路に着く。
御節介かなと思ってたけど、来て良かった今回は。
帰って、如何言う話だったかとか色々聞かないと。
「キュルキキュ!」
「え、あ、レ、レイン⁉」
気付けば随分と細長くなったレインが地面から顔を出していた。
黔くて瓊が付いている事しか類似点ないけど、多分然うだよな?
首丈って、店は如何したんだろうと思う間もなく、店が可也のスピードで寄って来た。
・・・店が動いているのって矢っ張り恐いかも、慣れるには時間が掛かりそうだ。
でも御蔭で直ぐ帰れた。レインも何か感じて来てくれたんだろうか。
そっか、店の方から来て貰うと言う手もあったのか、一寸変な話だけれども覚えてこう。
「その、有難な。」
「キュル、キ、ム、ムィ。」
レインはドアノブを掴むと扉を開けてくれた。良い子である。
其の儘事無きを経て帰って来れた訳だけれども、一刻程でセレは元に戻った。
・・・でも其の後の反動が凄まじかった。
まさか一杯で倒れるなんて、然もガルダが店に来ても気付かなかったなんて、御負けに御姫様抱っこで連れて帰られたって・・・etc。
反省点は挙げれば限がないらしく、彼女は悶え続けた。
今回丗闇の御説教は無かったが、まぁ其でも苦しかっただろう。
俺が迎えに来てくれた事に多大な感謝をすると同時に反省の余り自死しそうだった。
まぁでも大事にならなかったんだ、十分良かったと思うけど。
「と、兎に角彼の時あった話は以上だ。」
何度目かの反省を乗り越えて然うセレは締め括った。
「うん、御疲れ様。」
そしてやっとバーでの一部始終を話し終えた。
マスターが何で居たのかとか、やっと理解出来た。
・・・良かった、一寸心の片隅で若しや毒を盛られたのではと思ってしまっていたから。
疑いたくはないからさ、其が解消されて良かったよ。
「其であの・・・ガルダには何度感謝してもし切れないな。」
「又そんな事言って。もう其で最後な。もう飲まないんだろ?」
「勿論だ。・・・絶対飲まない。」
決意は固い様だ。トラウマに近い。
「じゃ俺御飯作るな。一応セレはもう一寸休むんだぞ。」
「噫私に拒否権は無い。」
「いや拒否しようとするなよ。」
もうすっかり霄だ。結局一日、使ったじゃないか。
何だか随分嬉しそうに語っていたので小魚の天麩羅でも作ってやるか。
レインが窓から寄越してくれた食材があるので、有り難く使わせて貰おう。
後ろ手でドアを閉めるガルダに寄越す彼女の視線は、
今ではすっかり悍い意志を取り戻したのだった。
・・・・・
詠が漣を作り、声が泡を作る
湖を満たせ、淀みなく蒼く
水よ澄んで、其処迄通る様に
人魚の詠は彼の地の神に届くだろう
噫其が破壊の祈りとしても構わない
今を願う詠に微笑むのなら、福音を授けるのなら
果てる先は虚無に溶けても、私は構わないのです
又仲間が増えたよ!やったね!増えすぎじゃいこらぁああ!!
と言う事で、立て続けに増えました、猫ちゃんです。
仲間加入イベントってもっと間を開けた方が・・・とか色々思ったのですが、現実問題案外増える時は一気に増えるんだなぁと実生活で体感した所だったのでいっその事と増やしちゃいました。
他に一気に塔関連イベントも進みましたね。此で一応光と闇を含めて半数の塔を攻略した形になります。
急じゃね?と思うでしょう。でも此方も良く考えてみたら、一度倒したドミノは倒れ続ける様に、速度が付いたら加速度的に上がって行くと思うんですよ。
自分が塔の主だったら、近くにいた塔二つも立て続けに壊れたら行動を急ぐな、と思いました。此処で悠長にしていては死ぬのです。
だから此は複線回収焦っているとかそんなんじゃないんですよ、本当に。言い訳ではなく、此の話は早めに書いて置きたかったんですよね。
だってやっと光の塔攻略開始ですよ⁉あぁ長かった!やっと此の物語の終点に近付いて来たなぁ!と実感した所です。
そして其と同時に、実は現在緊張しています。
と言うのも次回の話は良いのですが、其の後が割と急展開やら大きく話が変わる物が続くので。
今から既にそわそわしています、書けるかなぁ、書き切れるかなぁ、楽しみで仕方がないですね!
そんなこんなで今回は誤字紹介一つ丈して御開きにしましょう!
次の投稿も3割程書けている状態なのでそう遠くはない筈!
調子の良い内に書き切るぞ!と言う事で又御縁がありましたら!
「コラ!苛めてはいけません。帰してあげてください!」
フェリナに叱られ、しゅんとした彼女はそっと魚を崖下へ卸した。
レリーシャ=ガーデンに着いた時の一幕。
投稿直前で気付きました汗。結局魚が捌かれてしまっています。
斯う言う予期せぬ誤字って堪らなく好きなんですよね、けれども誤字には退散して貰わねばならぬのです、さらば!




