50次元 数多の累時と景象の次元Ⅱ
楽しい楽しい後半戦!始まる!ドン!
と言う事で何やらピンチっぽいセレさん、敵に良い様にされちゃっています。
此の先は・・・作者でさえまさかまさかの大場面、キャラクターが勝手に動くって言いますが、正に此の作品はそんな感じです。
彼の子如何してるかなー、とか思っていたらひょこっと顔出しちゃうんですよね。
でも出て来たからには自由にさせたいし、作者の勝手な神の手で動かすのは本意じゃないので自分は只傍観しています。
気持としては筆者が一番最初の読者って感覚ですね、だから飽きずに書けているんだろうなぁ、しみじみ。
と言う事で、ラストの後書きで書きたい事山程あるのでザクザク行っちゃいましょう!
「・・・っ⁉」
躯が一気に跳ねて波紋が広がる。
何・・・も、見えない?其より私の躯は如何なっている?
本能の儘に手足を動かすが・・・如何やら躯はあるらしい。
痛みも無い・・・?怪我も治ってしまったのか?感覚がない訳じゃあなさそうだが。
意識が散漫する、何が起きたんだ。
―・・・っ、此は不味い事になったぞ。―
内側からの闇の声に知らず安堵する。
混乱していた頭が少し丈スッキリして来た。
「不味いって、今・・・如何なっているんだ?」
声が、出せる。良かった。此処が何処で、何なのか分からないが・・・自分はちゃんと居る。
まるで一瞬、意識体丈になった気分だった・・・嫌な感じだ。
其にしても此処は・・・、
緩りと波紋を広げる、此処はもう彼の研究所じゃない。
誰も居ない、何も無い。
闇すら無い、虚無だ。
だのに自分は・・・居るのか?
不思議な感覚だ。重力も、上下左右も分からない。
でも・・・自分は此処を知ってる?
何だ此の妙な懐かしさは。
―ア・・・ア、ア・・・、―
「っ誰だ!」
相変わらず揺らぐ波紋は役に立たない。
取り敢えず音のした方へ振り向いた。
此処では・・・波紋も役に立たない、見えているのか、感じているのか其すら分からない。
でも、自分が知覚して初めて其は現れた。
元々居たか如何かも分からない、でも今はっきりと見えている。
其処にあったのは一つのティアラだ。
銀色の、蒼と透明の輝石を埋め込まれた。そして其処からベールが垂れている。
でも・・・此は何だろうか。
其のティアラの下から妙な物が生えていた。
黔く長い其は人の腕、に近いと思われる。
背骨の様なのが沿っており、全体的にぼやけてはいるが、手だ。五本の指がある。
只其の手は一本丈ではなく、何本も何本もティアラから生えて来ていた。
そして其々が意思を持った蛇の様に動いている。
足の様に下を指す物、ベールを持ち上げ、支えている物、狐の様な形にしている物、複数の手で蛙の様になっている物。
特に後方には宛ら翼の様に複数の手が均一に広げられていた。
そんな腕しかない其の存在の内、二本の腕で作られた狗の頭の様な物が、じっと自分を見ている様だった。
目も無い、抑如何なっているかさっぱりな形だったが・・・でも、此は一体、
龍ではない、神でもない、何だ此の気配は、
―・・・っ、まさか、こんな所に居るなんて。―
「?丗闇何だ、彼を知っているのか?」
―知っていると言うより・・・、何だ此の感覚は、・・・懐かしむ、様な。―
「ん、ん?懐かしい?何だ其は。」
丗闇も可也混乱しているのかテレパシーが怪しい、独り言なのか良く分からないのが続く。
其より現状を理解しないと、謎の場所で、謎の者に絡まれているんだぞ。
此は生物なのか?其すら分からないなんて、
―ア・・・ア、ア、―
黔い手に因って作られた狗が口を開くと、そんなテレパシーが流れて来た。
此は・・・自分に向けて、話し掛けているのだろうか。
まるで初めて魔力達と話した時の様な、そんな未知との出会いの感覚。
不思議と敵意は感じられない、テレパシーも何処となく、女性を感じさせる様な穏やかな物だった。
丗闇が最初不味い事になったと言い、自分も慌てていたが・・・何故か今は安堵もある。
此に、会えて良かったと、不思議とそんな感情が、
此は・・・一体何なんだ。
思考も儘ならず、自分はすっかり固まってしまっていた。其処へ遠慮勝ちに黔の手は近付いて来る。
―噫・・・・貴方は、・・・セ、セレ、―
「っ如何して、」
不図消え入りそうな声が紡がれる。
でも其の音は間違いない、自分を指し示す物だ。
如何して、知っている、此は一体、
―・・・噫、私の愛しい子・・・セレ、セレ・ハクリュー・・・こんな所へ、来てしまったのですね・・・。―
外方を向いていた狐の手も寄って来る。
そして次第に流暢に話し始めた。
話し方のコツを掴んで来た様な、そんな具合だ。
でも、其にしても今、何と言った・・・?
信じられない様な言葉を、掛けられた気がする。
聞き間違いでなければ・・・はっきりと。
“私の愛しい子”・・・然う、言ったのか?
「御前は・・・何なんだ。」
声が自然に震えて掠れる、口が乾いて喉が鳴った。
だってそんな言い方じゃあまるで、
―私・・・は、―
狗の手は少し困った様に身を引き、首を傾げた。
其を気遣う様に蛙の手が前へ出る。
―憶えていないのも無理ないわ。私は只・・・貴方の揺籃に過ぎなかったから。―
―貴方はずっと眠っていた、私の姿も・・・知らないでしょう。―
―噫、何て輝かしい日々、―
声は次第に集まり、次々と発せられる。
目も何も無い、只手で真似て作った顔だろうに。・・・咲っている気がした。
時も忘れて其の手の動きを、一挙一動を見詰めていると、不意に闇に包まれた。
気付けば自分の隣に、丗闇が立っている。同じ様にじっと、彼等を見詰めていた。
まるで信じられない物を見るかの様に、呼吸も忘れて、じっと。
「御前は・・・ガイか。」
―っ!噫何て懐かしい気配、正に彼の子の、―
狐の手がすっと丗闇の元により、上目遣いに彼女を見遣る。
―ガイ、ガイ・・・然うね、然う呼ばれた事ならあるわ。―
「ガイって・・・じゃあ銀騎獅と同じか。」
黙って丗闇も頷く。
ガイは、此の世界の外の者、全くの別世界の者が、他世界で死んだら成る姿だったか。
確かに此の捉え所の無さは、通じる物がある。
此の世界の理の外の者、そんな者に会えるなんて。
「・・・此処は、鏡界だ。此で少しは御前も状況が読めるか。」
「鏡界⁉又其処に飛ばされたのか⁉」
何で⁉今回は死んでないよ!
心底驚いてしまう。
如何してあんなタイミングで、此処の事なんて些とも考えていなかったのに。
と言うより、じゃあ早く戻らないと。然うだ、自分は此処で惚けている場合じゃない。
原理も理屈も分からないが、其は後から考えれば良い。今は只、帰らないと。
「急いで戻らないといけないな。前みたいに、戻れると良いが。」
色々と知ってそうなガイに会えたのだし、沢山話を聞きたいが、其所じゃなかった。
タイミングが悪過ぎる。今は只、皆の所に。
正直戻り方も分からないけれど、本来ならもう出られない所だし。
前みたいに亀裂があれば・・・次元に戻れるかもだが。
―・・・もう、行ってしまうのですか。―
何処か寂しそうな声で狐の手が言った。
少し丈、胸の奥が締め付けられる様だ。でも、然うも言ってられない。
「悪いが今戦い中で・・・仲間が待っているんだ。だから戻らないと。」
―其でしたら・・・大丈夫ですよ。―
狐の手が又少しセレに近付き、鼻先を寄せた。
其の面は何処か、微笑んでいる様だった。
―此処は時間も存在しない所、次元へ位なら寸分と掛からず帰れます。―
―時は進まないから・・・慌てないで。―
「そ、然うなのか?」
確かに前も戻っても大して時間は経っていない様だった。同じ事が可能なのだろうか。
「・・・確かに、然うかも知れないな。時間とは次元毎の中で巡る物だ。」
―えぇ、貴方が望めば、同じ時に帰れるわ。だから先ずは落ち着いて。―
―ほら安心して、愛しい子。―
色々な動物を模した手が、自分に語り掛けて来る。
何処迄も優しく、澄んだ水の声。
「じゃあ・・・もう少し、話しても。」
ちらと丗闇の方を見遣る。・・・彼女は只頷いた。
如何やら丗闇も話を聞きたい様だ。珍しい、此処迄彼女が興味を持つなんて。
魅入られた様に・・・ガイを見詰めている。
其もまぁ、仕方ないか。此のガイは余りにもイレギュラーで、謎が多過ぎる。
そして屹度・・・自分を騙したり、嘘を吐いたり、然うはしないんじゃないかと。
不思議な安堵と確証を得たのだった。
此の、湧き出る泉の様な優しさが何なのか、自分は知らない。
―私も、赦されるなら、貴方と話したい。―
「・・・噫、分かった。」
真正面から彼女を見遣った。
ガイは幾つもの手を、自分達に向けていた。まるで招き寄せる様に。
―其と・・・後、・・・もう一つ、赦されるのなら。―
可也遠慮勝ちに、蛙の頭が寄っては離れてを繰り返す。
「何だ?話してくれ。」
余りにも遠慮するので一歩近付いてみた。すると彼女は少し身を引いてしまう。
―あ・・・あの、もう一度、抱き締めさせて頂戴。―
「・・・あ、・・・えっと・・・、」
何とか絞り出した声は何とも情けない物になってしまった。
・・・?何て言われたんだ?
分からず丗闇と顔を見比べる。
彼女も少し困った様に眉根を寄せている。・・・まぁ然うだな。
でも・・・うん、でも断る理由もない、か?
何とも言えない感情の儘、一度頷いた。
するとそっと・・・まるで壊れ物を扱う様に彼女の手が伸びて来た。
不思議と此の手は・・・不快に思わない。
一見人間の手の様で、でも崩れた特定し難い手なのに。
何と言うかされるが儘だ。一体何なのだろう此の気持は。
気付けば其の手は丗闇にも伸びていた。
けれども彼女も何処か惚けた様に動かなかった。・・・彼の丗闇がである。
此は下手したら何かの罠なんじゃあ、とも脳裏を過ったが、即其は違うと本能が告げる。
でも如何して?何も・・・分からない。
其の儘黔の手はそっとセレと丗闇、二柱を抱き締めた。
数多の手により視界が黔一色へと誘われる。
其の闇はまるで・・・温かくて・・・そして、
「っ・・・まさか此は、」
思わず顔を上げるも目元が緩くなってしまう、
噫、満たされる様な安堵感だ。
今迄感じた事のない様な、柔らかさにすっぽりと包まれる。
でも此の感覚には憶えがあった、段々と懐い出されて来たのだ。
然う其は前世の事、否前世よりも昔の事。
自分はずっと、捜していたんじゃなったか、闇を。
自分の全てを包み、肯定してくれる闇を、彼の温かい闇を。
今自分を包むのは、正に其じゃあないのか。
気付いてしまえば、後は只々愛しさが湧く丈で、もう此の儘全て忘れて眠ってしまいたい衝動に駆られた。
其程迄に、魅力的な闇だったのだ。
だが暫く然うして居るとするりと、手は解かれて行った。
少しずつ下がり、波紋も広がって行く。
つい、名残り惜しく其の手に触れた。
・・・温かい、此の手はこんなにも温かかったのか。
そして、此の抱いた事も無い感情は、
「まさか御前は・・・私がずっと捜していた。」
彼の闇なのか、然う問うと狐の手は緩り首を傾げた。
けれども丗闇はしっかりと頷いた。はっきりと、間違いなく。
「間違いない、前世で見ていた物だ。・・・御前のな。」
「っ教えてくれ、昔何があった。私は此処に居たんだろう?」
まさか鏡界生まれとは思わなかったが。
とんでもないルーツを知れてつい声が大きくなる。
―昔・・・然うね。貴方にとっては然うなってしまうのね。其でも私は・・・時を感じない筈なのに、長い時間心を痛めたわ。―
―御話ししましょう私の愛しい子、貴方の知りたい事全て。―
―私に答えられる事なら。―
複数の手が複雑に絡まり合い、又何頭もの動物の頭を作り直して行く。
然うして其々の口から、彼の女性のに似た声が流れて来るのだ。
―貴方は私が見付けたの、此の何も無い鏡界に独り、残されているのを。―
「見付けた・・・。じゃあ御前が私の親と言う訳でもないのか。」
此の温もりは、然う呼ばれる存在の物に等しいと思ったのに。
ゆるゆると狗の首が左右に振られる。
・・・まぁガイから子供が生まれるのとか謎だしな。
―私は只の揺籃、何処からか迷い込んだ貴方を、只抱き締めていた丈。―
―余りにも小さくて、壊れてしまいそうだったから、せめてと。―
其は何位昔の事だろうか。・・・赤子、とか。
自分にもそんな時代があったのだろうか。
―貴方は・・・本当に良く眠っていたわ。眠り続けた儘、私はずっと貴方を抱き続けたの。―
―起きる事もなく貴方は抱かれた儘成長して行ったわ。此の子の中で時は流れているんだと私も知ったの。―
寝た儘・・・抱かれ続けて。
だから自分は、此のガイの事を知らなかったのだろうか。
まるで母の様に寄り添い続けてくれた彼女の事を。
でも、話を聞く内に、すっかりと夢中になってしまった幼き日の自分を思うと、ある景色が見えて来る様だった。
其は冥い、静かな、でも穏やかな記憶だ。
・・・・・
―噫、如何して・・・こんな所へ流れ着いてしまったの。―
只鏡界の中を漂っていたガイは見慣れない物を見付けた。
其は小さな小さな嬰児、掌にすっぽり収まる様な。
簡単に握り潰せば終わってしまう、そんな儚い命。
其の嬰児は真黔で、半身が靄の様に不安定な姿をしていた。
何かに成ろうとしているかの様に、靄丈は活発に蠢くが、其以外は一切動かない。
自分を抱き抱える様に小さくなっており、目と思しき物はしっかりと閉じられている。
―人間・・・と言ったかしら・・・でも聞いていたのと少し違うわ。―
四肢や顔の俤は人間らしいが、一体此の子は、
そっと両手を差し出して包み込む。
噫何て冷たいんだろう。でも抱き寄せてみると小さな寝息が聞こえて来た。
生きている・・・此の子は未だ生きている。
此の儘にしては置けないと、ガイは慌てて其処等を漂っていた布切れを手当たり次第に取って行った。
其でしっかりと其の子を包む。
此処に居るのは精々神や霊の成れの果てだ。此の子に危害を加える様な者はいないだろう。
其でも独りにするには余りにも冷たい。
せめて温もり丈でも与えられればと只々抱いて。
此の子は見た所、然う言った成れの果て達とは違う様だった。
存在は希薄だけれども彼等程じゃない、否此の子は透き通っているのだ。
何にでも染まれてしまう位、見落としてしまいそうな程の透明。
だから大事に抱いた、何にも染まらない、此の子丈の色を持てる様に。
―愛しい子・・・私が傍に居るわ。―
何度も声を掛けてガイは又、境界を巡った。
何本もの手で子を抱え乍ら、そして今迄以上に辺りに注意して。
ガイは探し続けた。此の子の親が近くに居るんじゃないか、生家は、次元は、何か糸口丈でも。
こんな所に居てはいけない、こんな袋小路へ、来る可きではない。
けれども何丈探してもガイは何も分からなかった。数多の次元を見て来たが、手掛かり一つなかった。
然うして希望が消えれば消える程、ガイは強く子を抱いた。
何としても自分が傍に居ると、何度も誓い乍ら。
・・・・・
其から何丈経っただろうか。
気付けば手の中に居た子は少しずつ成長をしていた。
ずっと眠り続けた儘だったが、其でも無事生きていたのだ。
全身を覆う様な黔い甲、鋭い爪を有した手足、複雑に絡まり生えて来る翼、
自分が見ていない内にすっかりと成長していたのだ。
―フフ、貴方は一体どんな姿へ成長するのでしょうね。―
―私のよりも綺麗で整った手足、何処迄も飛べそうな翼、細くてスリムな尾、木の葉みたいな愛らしい甲、何も私に無い物よ、愛しい子。―
遠慮勝ちに其の頬に触れた。
噫何て愛らしい、此の子は生きている。未来がある。
―若し赦されるのなら、貴方に願いを込めても良いかしら。―
屹度其の方が愛が深まるから。
何処に居ても、名で繋がるから。
―貴方は・・・何時か屹度、此の広い世界へ出て行くのでしょう。目を開けば、世界を見るのでしょう。だから。―
傷付けない様優しく、其の目元を撫でる。
穏やかに眠る顔を見詰めて。
―セレ・ハクリュー、其が貴方の名前よ。私が元々居た世界で、綴る者と言う意味を持つの。見て来た事全て、感じた事全て、記して欲しい、然う願うわ。―
―屹度辛い事も悲しい事もあるけれども・・・私が貴方に出会えた様に、全てなくなって良いとは思わない。全て繋がっているのなら、其を如何か証明してみせて。―
只眠る此の子に、届くだろうか。
いや、届かなくても良い。此は私の勝手な願いだから。
其でも良かったら・・・聞いて欲しい。
此の名を紡ぐ丈で、私が何丈貴方を愛しているのか、屹度伝わるから。
―噫何て愛らしい子なの、セレ・ハクリュー、其が貴方の名よ。屹度忘れないで頂戴。―
其からもガイは只々、セレと名付けた幼子を抱き、巡り続けた。
変わらず色々な次元の断片を見せ乍ら、一欠片でも此の子に届く様に。
少しずつセレは成長して行った。其の変化が嬉しく、愛おしく、何時目を醒ますのだろうと夢見て。
同時に、其の日が来る事も、恐れ始めた。
屹度此の子は、自分の元を去るのだろう。いや、去らねばいけない、こんな所に閉じ込めてはいけないのだ。
恐いけれども、でも一緒に、此の鏡界から出て外の世界へ。
此の子を自由にさせるの。其が一番良い、其が私の義務なのだ。
然う何度も言い聞かせた。別々の手が、反対の事を言う事もあったけれども。
最後は互いの頭を撫でて、落ち着かせた。
然うやって私は只待ち続けた。
セレは次第に、不思議な力を使う様になって行った。
自分の知らない、何の次元でも見た事のない力。
其は万物に罅を入れる力、全てを壊し、破壊する力。
気付けばセレの周りにはそんな罅が、時折入る様になっていた。
其に因り、腕を何本も失った。何度も此の子を取り落としそうになった。
慌てて抱き寄せては、腕が罅だらけになり、跡形もなく崩れ去ってしまう。
時には其の刃が、此の子自身を傷付ける事もあった。
―噫、噫、愛しい子、如何か落ち着いて。大丈夫よ、私しか居ないわ。―
何度も呼び掛け、そっと撫でてやる。
一体何が原因で起きているのか全く分からなかったが、自分には其しか出来なかった。
―危ないよ、離しなさい。―
―いいえ、私は未だ此の子を・・・、―
周りに散らばる意識から声がする。
此処は鏡界、取り込まれた神等の成れの果てが何れは溶けてしまう所。
だから何処にでも其は居る、常に。
―手を離した所で、其の子は無事だから。―
声に逆らう様、私は猶の事強く其の子を抱き締めた。
彼等は互いに干渉は余りしない、恐らく自分と言う物すら失ってしまっているからだ。
でも此の子が現れて、彼等は少しずつ、話し掛けて来る様になった。
私と同じ様に此の子を慈しんでくれる、あやしたり、見守ってくれる。
屹度奪われた訳ではなく、でも何も持たない此の子に、懐いを寄せてしまうのだろう。
―分かってるわ。でも私は・・・未だ此の子を手放したくはない。―
罅は、時を経る事に大きくなって行った。
無くなったと思えば急に現れる。
私は此の時初めて、自分がこんな姿で良かったと心底思った。
幾ら手を失っても無限に生えて来る、私足り得る物は此の手しかない。
だから何があっても此の子を抱く事の出来る姿で、本当良かった。
其でも未だ罅は大きくなって行った。
セレ自身も何度も傷付けられ、血が絶えなくなった。
―噫愛しい子、一体如何すれば、―
幾ら布で包んでも止まらない、布事罅が入ってしまう。
其でも少しでも安らげばと思い、しっかりと布で包んでいた。
―・・・?―
だが暫くして布は罅に耐え切れなくなり、バラバラになってしまう。
でも其の中に・・・彼の子は居なかった。
―な、何て事、彼の子はっ、セレはっ!―
幾本もの手が滅茶苦茶に動き回り、手当たり次第に捜す。
噫、全ての手が空くだなんて何時振りか。
彼の子の冷たさを感じられない、其がこんなにも動揺させるなんて。
―落ち着いて、一緒に捜そう。―
―屹度近くに居るから、大丈夫。―
声に励まされるも手は全く止まらない。
こんなに感情が動くのなんて何時振りだろうか。
まるで生きていた時みたいで、吐き気がする。
―彼の子は、彼の子は、彼の子はっ!―
布の残骸が残っているが、彼の子が巻き込まれた訳ではないだろう。
念入りに欠片を探すも、彼の子じゃない。
捜していると未だ罅が残っている所を見付けた。
罅は大きくなり過ぎて、空間が壊れつつあった。
暫く放って置けば直るだろうが、今迄のよりずっと大きい。
慎重に近付くと罅は幾らか瓦解している様だ。
そして・・・其の先が覗けていたのだ。
鮮やかな眩しい曦、此は・・・、
まさか、次元、なのでは、
彼の子の罅は、此処迄大きくなってしまっていたのか。
此の穴を潜れば鏡界を出られるのかも知れない、次元へ行けてしまう。
まさかまさか彼の子は・・・、
慌てて其の罅の中へ手を伸ばした。
脇目も振らずに伸ばしたので何本かの手が罅割れ、砕け散る。
其でも・・・行かないと、
未だ早い、彼の子に外の世界は、
手丈を潜り抜けた先は、矢張り何処かの次元だった。
外に出るのは恐い・・・又ガイだと知られたら何をされるか。
其でも、彼の子を放って置けない。
手を伸ばせば、其の子は直ぐ近くに居た。
変わらず眠っている様で、慌てて抱き寄せる。
怪我も酷くはなっていない・・・周りに誰も居ない事を確認し、直ぐ様戻った。
恐ろしかった・・・まさかあんな力を使うとは。
一つ息を付き、繁々と手の中を見遣る。
セレは眠っている、何も無かったかの様に。
其の冷たさに安堵し、猶の事強く握り締めた。
良かった、本当に。
もうあんな懐いはしたくない。
―見付かったのね、良かったわ。―
―目が離せなくなってしまうな。―
周りを漂う声に頷き乍ら、ガイは何度も確かめる様に、其の子を撫でるのだった。
然うして又、何丈経っただろうか。
日増しにセレを取り巻く罅は矢張り大きくなる。
罅に落ちてしまい、セレが次元へ行ってしまう事は、一度や二度ではなくなった。
其でも、其の度にガイはセレが開けた罅から何度も助け出し、護り続けた。
只、余りにも頻繁に起こる様になった為、ガイの手ですら追い付けなくなって来た。
時間のずれもあって、助けるのに時間が掛かり過ぎる事も出て来た。
此の子は・・・鏡界を出ようとしている。
相変わらず眠り続けているけれども分かる、自由になろうとしているのだ。
―そろそろ・・・潮時ね。―
何処となく、そんな予感が過っていた。
悲しいけれども何時か。
そんな風に思っていた矢先、又彼の子は私の前から居なくなってしまった。
相変わらず此の喪失感には耐えられず、私は我武者羅に彼の子を捜し続けた。
けれども今回は、中々見付からない。
罅ももう閉じてしまった、斯うなっては近くの次元を片っ端から見て行くしかない。
・・・いや、次元丈ではないのかも知れない。
若しかしたら・・・次元の迫間に。
そんな考えが過った時、境界に罅が入ったのだ。
懐かしくも彼の子の気配がした。
慌てて私は其の罅へ無理矢理手を伸ばす。
待ってて、もう直ぐに。
伸ばした先に、彼の子は居た。
けれども其の俤は私の知る彼の子より随分窶れていた。
何時もの様に閉じられた目も、何処か力なく。
噫、何て可哀相に。
痛ましい姿に私は何丈心を切り刻まれたか。
矢張り世界は恐ろしかった。貴方を傷付ける物だった。
ぼろぼろになってしまった彼の子へ何度も手を伸ばす。
けれども、私達の間を罅が何重も阻んでいた。
手が、次々と壊されて行く、其でも、
伸ばしても伸ばしても届かない。
彼の子はどんどん・・・堕ちて行く。
噫、其処で私は気付いてしまった。
此処が一体何処なのか。
忘れもしない彼の目を、彼の子を冷酷に見詰める数多の目を。
御前達が、此の子を突き堕としたのか。如何してそんな酷い事を。
目に竦みつつも私は未だ何度も手を、
彼の子はどんどん堕ちて行く、此の先は・・・次元だ。
でも、何だろう彼の次元は、あんな・・・歪な、
まるで彼の子の罅を落とし込んだ様な・・・そんな壊れた次元。
一体此は何なのか、でも良くない気配はする。
いけない、彼処に堕ちてはっ!
けれども願い虚しく彼の子は其の次元へ堕ちてしまう。
其でも未だ、未だとガイもあらん限り手を伸ばした。
地の底、更に奥へ、まるで地獄の様に広がる次元へ。
行かないで、行かないで、如何か、
罅も気にせず伸ばす。私には此しか出来ないから。
其でも彼の子は私の手を次々に擦り抜けてしまった。
其の儘遥か遠くへ・・・セレは堕ちてしまった。
手の届かない所迄・・・行ってしまった。
其の後、何丈捜しても、もうセレに会う事はなった。
最後の光景を私はずっと忘れない、彼から時は止まってしまった。
こんな未来へ行き着くのなら、私が彼の子を拾う可きではなかったんじゃないか。
私の所為で、彼の子は消えてしまった。
後悔の叫び声を上げても何処にも届かず、境界で彷徨う丈の日々に戻るのだった。
・・・・・
不図・・・そんな情景が浮かんで来た。
まるで体験したかの様に、自然と流れて来る。
噫、間違いない、此のガイの語った事は真実だ。
嘘なんて無い、彼女はずっと自分を愛してくれていたんだ。
そんな存在が・・・自分にも居たんだ。
知らず、目元が潤んで涙が止まらなくなった。
拭う事も忘れて、其の儘流れる儘に任せてしまう。
・・・こんな黔い半面でも涙は流れるのだな。
後から後から、涙は、溢れ続ける。
でも別段、其を止めようとも思わなかった。素直な気持だと分かったから。
何も言わずにガイはそっとセレの頬を撫でた。
涙を掬い、狐の手が頭を摺り寄せて来る。
―噫愛しい子、涕ける貴方が羨ましいわ。私には出来ない事、何とも綺麗で、純粋ね。―
「そんな事は・・・無い。」
駄目だ、強がれない。
彼女の前で自分は、彼の小さな幼子に戻ってしまう。
「今の話、良く分かった。」
一柱丗闇は何度も頷いていた。
そして緩りと目を閉じ、考える。
「・・・そんな事があったんだな。」
「噫私も、ガイに育てられたとは思わなかった。」
彼女の話した続きが・・・彼の前世だろう。
じゃあガイに拾われる前は如何だったのかと言えば、其は分からないみたいだ。
・・・其以前のルーツを探るのは又難しそうだな。
其に自分は元々前世があると思っていたが、結局何なのだろうか。
神なのか其とも・・・鏡界に居たから余計分からなくなって来た。
其でも、
「逢えて良かった、本当に。」
―えぇ、私もずっと逢いたかったわ。―
無条件の愛をくれる存在、紛れもなく彼女が自分の母と呼ぶ可き存在なのだろう。
「出来ればずっと此処に居たいけれども、済まないな。私は戻らないといけないんだ。」
―えぇ分かって居るわ。良いの、会えた丈で私は・・・本当嬉しかったから。―
黔の手がそっとセレの顔や背の翼を確かめる様に撫でる。
気付けば丗闇もベタベタと触れられているが、撥ね退ける気は無い様だった。
何処か難しそうな顔で、黙っている。
―外に居場所が出来たのなら其は素敵な事よ。やりたい事があるなら、其は願ってもいない事よ。良かった、貴方が立派になって、私は・・・本当に嬉しくて。―
「・・・立派か。私は世界に嫌われているよ。沢山の物を奪った。世界を滅茶苦茶に壊したよ。私の死を願う者なんて山程いるよ。」
語り掛ける様に、私はそっと告げた。
黙っていても良かったけれど、彼女には隠したくなかった。
悲しませてしまう事は分かっているけれども、其でも、
―そんな事は関係ないわ。只貴方は私の愛しい子、セレ・ハクリュー。貴方の御蔭で、私は自分の存在に意義を持てた。其は何程尊いか、ガイには勿体無い事か。―
―其に貴方の話を聞いていれば分かる、貴方がしようとしている事。其の先に見ている物があると。やりたい事、やる可き事があるのなら、其の儘突き進みなさい。どんな結末になっても、私は愛しい子、貴方と共に其の未来を願うわ。―
「・・・・・。」
つい、言葉が詰まった。
噫此が・・・無償の愛か。
其の一言が世界を何程傷付けるのか、裏切るのか。
其でも願ってくれるのか、こんな化物を見てくれるのか。
息が上手に吸えなくて、思考が固まる。
私は・・・私は、
此を受け取る資格なんて無いのに、
苦しそうな顔を見られてしまい、ガイは何度も自分の頬を撫でた。
・・・ずっと此処に居たら、私も変われるかも知れないな。
前世の初まりの時みたいに素直に・・・。
もう、見る事のない夢だけれども。
「良かったら、名前を教えてくれないか?私は御前の事、何も知らないんだ。」
―名前ね、何て懐かしい。私はヲルって言うの。覚えてくれると嬉しいわ。―
「ヲルか、噫忘れない、絶対に。」
忘れる訳がない、自分にこんな近しい者なんていなかったのだから。
「後は・・・その、えっと、」
一寸言い難い、けれども此の胸に灯る懐いは伝えて置きたい。
ガイ、ヲルは静かに待ってくれた。彼の時の闇の儘で居てくれた。
「・・・今迄、私を愛してくれて本当に有難う。其と、御前の事を・・・母、と呼んでも良いか?」
自分の本当の母なんて知らない。
其でも、彼女が其に最も近しい存在だとは分かる、だから、
せめて此の繋がりを絶たれない様に自分は紡ぎたい。
―っ!・・・えぇえぇ、私も、然う呼んで貰えたら嬉しいわ、有難う。―
又ヲルはセレと丗闇の二柱を抱き締めた。
数多の手が重なる様は見ていて不思議と落ち着く。
噫、本当にずっと此処に居られたら。
つい何度も願ってしまうけれども、止まる訳には行かない。
私には、やる可き事があるんだ。
―私は何時でも此処に居るから、好きな時に帰って来なさい。只、此処は鏡界だから程々にしないといけないけれども。―
「噫分かった。次は・・・もっと沢山話をしよう。御前の・・・いや、母さんの事をもっと聞きたい。私の事も、色々と話したいから。」
―えぇ、今度は其の日を待って巡るとしましょう。フフ、私の愛しい子、如何か元気で。―
ゆるゆると彼女の手が下がって行く。
母さん、なんて前世の自分が聞いたら如何思うだろうか。でも・・・、
少し、気恥ずかしいけれども、良い物だよ。
噫然うだ、此をずっと自分は捜していたんだな。
やっと・・・見付けられたよ。
「さて、じゃあ戻る前に丗闇、幾つか確認したいけれども良いか?」
「ん・・・あ、噫問題ない、何だ。」
丗闇はすっかりヲルを魅入っていたが、幾らか瞬いて此方を見遣った。
彼女は随分とヲルを気に入っている様である。彼の闇の温かさに、闇の神として思う所があったりするのだろうか。
まぁ癖になるからな、其の気持は良く分かるぞ!モフモフと甲乙付け難い。
ヲルは少し離れてちらちらと交互にセレ達を見遣った。
彼女は如何思っているのだろうか、愛する子が二柱になっている様に写るだろうが、今は口を挟まない様だ。
逢えたらもう其で十分、と言う事なのだろう。
・・・然う言えば、今回は居ないが、此処には様々な神が取り込まれているんだったか。
恐らく前自分の背を押して助けてくれたのは其の内の一柱だったのだろう、昔自分をあやしてくれた様に、助けてくれたんだ。
・・・会えたら彼等にも礼を言わないとな。
若しかしたら飃、昊の彼も元々は此処に居た神だし、昔・・・会っていたのかもな。
「聞きたいのは・・・直ぐ此処から出ても良いけれども、奴に何をされたかが分からなかったからな。」
「奴?・・・噫例の神か。随分と好き勝手されていたな。」
然う言われると・・・、
つい不満そうに目を細める。本当嫌な奴だ。
「噫、妙な力を使っていたのも気になるが、最後に彼奴は私に何をしたんだ?丗闇は知らないか?恐らく彼奴の所為で私は鏡界へ飛ばされたって事だよな?」
其しか・・・考えられない。
彼の肩に刺された橙の水精、彼に何か入れていたんだ。
でも神を鏡界へ転送するアイテムってありなのか?チートじゃないか?
丗闇は少し考え込む様に手を組んだ。彼女も引っ掛かっている様だ。
「奴が使ったアイテムの所為だろうが、彼を使われて御前は如何なったんだ。」
「如何って・・・何か麻痺毒みたいだったな。手足も動かなくなって、声も出せなかったし。波紋も使えなかったな。」
本当嫌な感覚だった。
まぁ奴の御蔭で思い掛けず母と再会したが、其と此は別問題だ。
彼奴にはしっかりと御礼をしないとな。
「成程、魔力を攻められた臭いな。恐らく、御前だから彼処迄効いたんだろう。」
「ん、何か分かったか?是非とも教えてくれ。」
「予想でしかないが、彼は恐らく魔力抑制剤だ。魔力の働きを鈍らせて術だとかを使えなくさせる物だが、御前は精霊でもあるからな。」
「魔力抑制剤?恐ろしい名前だな。然うか、私は全身魔力みたいな物だから効果覿面と。じゃあ・・・如何なんだ?躯が動かなくなって・・・如何して鏡界に繋がるんだ?」
「魔力は謂わば御前の存在其の物だ。其が否定されれば、御前の存在は希薄になってしまう。流石に此処迄説明したら分かるだろう。」
「存在か・・・噫分かった。やっと納得が行ったよ。彼が効き過ぎて、私は存在を殆ど失い、次元に残れなかったから消えてしまったのか。そして中途半端な状態になってしまったから鏡界に取り残されたと。」
酷い話だ。と言うか完全に自分対策じゃないか。
あんなアイテム一つで此の様か。うーん、恐ろしい。
何と言うか魔力に頼り過ぎて逆に其の辺りが不便になってしまったな、反動が大き過ぎる。
自分の答えは間違っていなかった様で丗闇は頷いている。
やっと一歩前進か、じゃあもう少し答えを知りたいな。
「で、其を防ぐ方法ってあるのか?」
「・・・無い。」
「・・・・・。」
「・・・そんな見詰められても無い。」
そんなぁ、丗闇さんバッサリ行き過ぎっすよぅ。
魔力抑制剤を抑制する丈ですよ?
「じゃあ私は彼を注される度に此方に来るのか?」
「其の程度・・・いや、程度ではないが、其で済めば御前にとっては未だましかも知れないな。下手したら・・・、」
其限丗闇は黙ってしまう。
うん、何と苦い沈黙だ。此、自分で聞くか考えろって事でしょ?
「下手したら・・・如何なるんだ。」
「分かっていて御前も聞いているな。まぁ・・・御前の消滅だな。可能性は十分ある。」
―っ!愛しい子をそんな所へ帰せないわ、此処に居なさい!―
流石に心配になってしまったらしいヲルが後ろからギュッとセレを抱き締めた。
大丈夫って言ってやりたいけれど・・・うーん、此は駄目かも。
消滅・・・うん、消滅だろうなぁ。
自分は只でさえ希薄だし、精霊なんてのに成ろうとしているのに魔力を抜かれちゃあ・・・消えるな、うん。
誇張でも何でもなく、真実なのだろう。だからこそ困ったぞ。
「何とかバリア創るとかで防げないかな。」
「其自体魔力で御前は創るだろう。」
「じゃあ周りの・・・彼処には鉄板とかあっただろうし、其で即席の盾でも作るか。」
「其で彼の瞬間移動を防げればな。」
「・・・・・。」
其が一番の問題なんだよなぁ。
彼如何しよう、本気で絡繰が分からないタイプだ。
彼の山羊の神が何とかしているのは間違いない。
奴自身の能力なのかも知れないが、何か引っかかる。
奴の言葉と言うか・・・其処に引っ掛かる物があったんだ。
「一応、全く手が無いって訳じゃあない。ALが何か掴んでくれたし、如何にか出来る筈だ。」
―・・・本当に其で大丈夫なのかしら・・・。―
狐の手がじっと自分を見詰めて来る。
そっと笑みを返すと納得はしてくれたのか少し下がってくれた。
「其に、殺したと思った奴が無傷で一瞬で戻って来れば、吃驚して奴はもう手を出さないかも知れない。別に戦闘に慣れている風でも無かったし、行けるだろう。」
「相変わらずの楽観視だな。然う思うなら試せば良い。」
何だか今回の彼女は可也機嫌が良いみたいで良く話してくれる。
彼女も、ヲルに会えて嬉しかったりするのだろうか、闇の神だし。
前銀騎獅に会った時は嫌な感じがするとか色々言っていたけれど、随分対応変わったなぁ。
まぁガイに対する偏見が無くなるのは良い事なんじゃないだろうか、然うして彼女が社交的になってくれたら自分は嬉しいよ。
「其じゃあ戻ってALの言う通りちゃっちゃと例の機械壊すか。」
何だかすっかり此処で癒されたから直ぐ戦闘に入れるか少し不安だが。
・・・良し、ちゃんと切り替えて行こう。
丗闇の姿が崩れて自分の中へ戻って来るのを感じる。
良し、準備万端だ。
「じゃあ後は・・・えっと、如何やって次元に戻るんだ?」
ちらと背後で見送ってくれているヲルを見遣る。
蛙の頭は不思議そうに首を傾げていた。
―・・・?昔みたいに罅を入れれば良いのよ。此処は何の次元にも繋がっているから。―
「その・・・罅って今の私、使えないんだが。」
其って前世の奴だよな?
うーん、全く使えないって訳じゃあないと思うけれど、怪しい所だ。
と言うかあんなチート能力戻っていたらこんなやられたりはしない。
でも然う返すとヲルはすっかり黙ってしまった。
良くない沈黙だ。此は良くない沈黙だぞ!
―あら・・・然うなの。そ、然うね、じゃあ一応私が連れて行く事も出来るけれども、同じ次元、行けるかしら。―
成程、ガイは此の世界の常識とか通じないだろうし、そんな事出来るのか。
まぁ然うじゃないと抑此処にガイは来られないだろう。
って納得している場合じゃない。
・・・え、帰れないのか?その、元の所へ。
「頼みたいけれども、頼んだら別の次元とかに出てしまうのか?」
―一応、貴方が何処から来たかは見ていたから大丈夫よ。でも・・・時間とか、場所迄ちゃんと戻れるかは・・・、―
其限口籠ってしまう。
そ、然うか。其じゃあ元の次元に戻れても時代レベルで変わってしまう事もあるのか。
でも其じゃあ戻った事にならないよ!い、いや帰れる丈十分ましなんだけれども!
其でも彼の山羊に一発入れたいし、ドレミ達が心配だし、いやいやこんな所で終われないって!
「斯うなったら・・・自力で出ないといけないか。」
罅・・・罅なぁ・・・。
一応、時々は出ているんだよな、完全には扱えていなかったけれど。
アティスレイとか使っていたが、同じ事は出来るだろうか。
幼き日の自分だって使えていたんだし、
・・・一寸、頑張ってみようか。
そっと何もない空間へ手を伸ばしてみる。
結局はイメージだ、干渉力だ。・・・然うだろう?
せめて此処から出る丈の力でも、
何度も彼の罅を心に思い描く。
そして空間を・・・衝いた。
「・・・っ、」
入る、罅が世界に。
蝕む、全ての理をかなぐり捨てて其処に、ある。
彼の時見慣れた罅が、其処にはあった。
少しずつ広がり、自分一柱は入れそうな穴を作る。
前世では・・・此処に入るのを恐れたが。
分かる、今なら。此の先から漂う気配、間違いない。
―・・・まさか自力で創り出せたのか。―
「みたい・・・だな。うん、やれば出来るもんだ。」
只此・・・然う扱える物じゃない。
創って分かった、消耗が半端ないのだ。
今ので膝が軽く笑ってしまっている、零星を作った時の比じゃない。
魔力じゃないな、一体何を消耗したのか。
此の感覚は、魂、とかか?
存在をごっそり持って行かれた感覚だ。
―創れたのは良いが、余り多用為可き力ではなさそうだな。―
「っ・・・然う・・・だな。此はきつい。戦いで使える様な代物じゃない。」
肩で息をする程疲弊してしまっているんだ。
此を使うより無の方が余っ程良い、効率が全く違うな。
違う、違うけれども・・・そんな風に否定しないでくれよ。
「正直矢っ張り原理とかも分からないしな。でも折角出来たんだ。今回は利用させて貰おう。」
力んだら出来たってレベルなので本当謎だが、まぁ良いだろう。
使えれば十分、さぁ行ってみようか。
もう一度丈、黙って見送ってくれているヲルを見遣った。
波紋でも勿論見えているけれども、正面からちゃんと。
狗の手が名残惜しそうに見えたのは屹度、自分の懐いが然うさせるのだろう。
「・・・又、近い内に帰って来るよ。だからその、行って来ます。」
―えぇ、気を付けて。今度話を沢山聞かせて頂戴ね。―
何処迄も広がる温かい闇其の物である母は、然う見送ってくれた。
振られる手に自分も返し乍ら、
罅へ一歩、二歩と踏み出す。
此の中へ入るのは、如何しても気後れするが、信じるしかない。
一度丈息を吸って、罅の中へ、セレは飛び込むのだった。
・・・・・
「セ、セレちゃんは・・・何処⁉」
二階から身を乗り出そうとするドレミを、ローズがローブの裾を噛んで止めた。
―あ、危ないってドレミ。―
「でも、今、消えちゃったよ⁉」
変な喪失感、知らず心臓が早鐘を打つ様で。
気持悪い、嫌だ此の感覚。
一瞬、明らかにセレは動揺していた。彼の山羊っぽい研究員に何かされたんだ。
「・・・思った以上の効果だった様だ。」
「グォオォオォオッ‼」
山羊の神がセレが取り落とし、床を転がっていた水精に手を伸ばすと、そんな雄叫びが響いた。
「セレを、何処にやったのだっ!」
振り向けば巨大な縹色の龍が此方に顎門を開いていた。
一体何だ此奴は、然も何時の間に此処迄接近したっ、
山羊の神は大きく目を見開くも、動かない。
一瞬の沈黙の後、複数の銃弾が龍の全身を貫いた。
其でも龍は止まらない、威嚇する様に神に向けて牙を剥いた。
「此奴っ、銃が効かないのか⁉」
「駄目、術も当たらないわ!」
巨大な龍と言うのは皆の注目を一気に集めたらしく、研究員達の対象が動く。
だがどんな攻撃をしても龍には当たらない、透明になるかの様に透けてしまうのだ。
―ハ、ハリー先輩大丈夫なん!―
「うむ、我は幻の龍だぞ。」
「って此処に居るぅ⁉」
驚きの余り声に出してしまい、慌ててソルは自分の口を塞いだ。そして罰が悪そうに彼を見遣る。
中心で暴れているのがハリーだと思い込んでいたが、然う言えば隣の人身であるハリーは動いていない。
「そ、そんな驚く事もないのだ、全部幻なのだ。」
只其だと攻撃は出来ぬのだがな。
然う呟いて一つ息を付く。
セレには見破られた訳だが、自分は幻か現、何方か一方しか使えない。
かと言って彼の龍・・・と言うより本体を現にすると、あっさりやられてしまう可能性がある。
謎の例の銃が問題なのだ。実際あんな撃たれたら只では済まない。
取り敢えず現状を混乱させ、少しでも此方に傾けないと。
セレが・・・消えてしまった。
彼女が無事なのか、心配が尽きないがやれる事をしないと。
・・・彼女だって、屹度然う言ってくれる。だから、
―・・・来タ、―
事の成り行きを見守っていたZ1-Θが小さく呟く。
其の瞬間、中空に巨大な罅が入った。
「え・・・あ・・・あ、」
其の罅を見詰め、思わずドレミは後退る。
彼は・・・彼は、
忘れもしない彼の罅は、
鎮魂の卒塔婆で見た、セレが操っていた物。
知らず喉の奥で悲鳴が漏れ、更に一歩下がる。
其はローズも同じで、凍った様に目は動かなかった。
如何して彼が此処に、いやでも彼は、
「・・・っセレ、」
罅は一気に広がり、大きな穴を作る。
何も写さない闇が広がっている。
誰もが息を忘れて、其処を見詰めていた。
中空に浮かぶ謎の罅、そして本能が理解する。
彼はいけない物だって、此の世界にあってはいけない。
然う悍く予感した。
そして突然其の穴を潜り抜けてセレが飛び込んで来た。
サーカスで火の輪潜りをする獅子の様に、四肢で彼女は着地した。
罅に成る可く触れない様縮めていた翼を思い切り広げる。
「っ・・・ど、如何だ、」
波紋が一気に広がり、数多の情報を流してくれる。
色を、匂を、音を、取り戻して行く。
此処は、此処は間違いない、彼の研究所だ。
少し時間が進んでいる気もするが、皆無事だ。此なら問題ない。
やった、ちゃんと戻れたんだ。
喜び勇んで跳び上がりたい所だが今は止そう。
分かっている、沢山の視線を感じる。此の目は嫌いだ。
紛れもなく、自分が其の中心に居ると言う目だ。
罅はあっさりと戻って行く、世界に爪跡も残らずに。
そして閉じ切ってしまう前に、自分は飛んでいた。
「ど、如何して戻って来れた。お、御前はっ、」
自分へ向け飛んで来るセレから、山羊の神は目を逸らせなくなっていた。
有り得ない、怪我も治っている。一体何が起きた。
消えたと言う事は此の化物は間違いなく一度、此の次元から追い出された筈だ。
存在が希薄だと、魔力頼りだと聞いていた。だから消えたいと言う事は、行き着く所は一つだ。
鏡界、次元の迫間迄戻れず、其の境目で此奴は永遠に囚われる筈じゃあなかったのか。
其ともちゃんと次元の迫間に行き着けたのか、そんな不安定な状態で。
でも、然うだとしても何の道此の瞬間には戻れない筈、どんな干渉力があったって次元の理には触れられない。
其に彼の罅は何だ、あんな物見た事がない。
噫・・・腹が立つ、全て全てやる事成す事出鱈目で、滅茶苦茶だ。
こんな存在があって良い筈がない、こんなちぐはぐな物を神は創ったりしないのだから。
一気に様々な思考が過る中、山羊の神は慎重に銃をセレに構えていた。
傷は負わせられたのだ、又飛べなくさせてやれば良い。
化物だろうと、此の力に抗う事は出来ないのだから。
だが銃口が火を噴くより先にセレは大きく翼を翻し、旋回した。
「憖うは武、振るうは狂、応え・・・破壊の時だ。」
魔力を捕らえ、流れを読め、此処で一気に片を付ける。
「慈紲星座。」
満天の零星が自分を包んだ。
蒼い零星を其の儘、星座を紡ぐ事なく纏わせる。
そして一緒に奥の機械へ激突する。
自分の狙いは飽く迄此方だ。御前の相手は後からしてやる。
零星の斬れ味は抜群だ。一気に外装が拉げて折れ曲がる。
一応、ALが優しく壊せと言ったので気は付けるが、此の分は許容範囲だろう。
―セ、セレ戻って来たんや!待っててや、今度はちゃんと護るから!―
ソルが生やしていた黄の華々がセレの周りを覗う様動く。
此なら奴に背後から打たれても護れそうだな。
例の魔力抑制剤が恐いが、此なら多少は護れるだろう、枯れるなりしたら投げ込まれた証拠だからな。
―助かるソル、此の儘一気に壊すぞ。―
「っ止めろ其以上損傷したらっ、」
堪らず山羊の神が銃を乱射した。
此は・・・見える、見えていれば何て事は無い。
「自慢の早撃ちは如何した、そんなの当たらないぞ。」
寧ろ弾が逸れて機械にダメージが入ってしまっている。大分破壊して来たのか火花が走った。
「くそっ、やられたか・・・斯うなったら!」
「っまさか其を使う気か、範囲は、」
「そんなの構ってられんだろう、やれる内に使うぞ!」
山羊の神が近くの研究員を怒鳴り付け、そっと機械に触れた。
未だ手があるつもりなのか?此以上何を、
―っセレ!渡した彼使って!―
「っ今か!」
Z1-Θが何か気付いて明滅した。
彼は魔力だ、皆より先に機敏に感じ取ったのかも知れない。
急ぎ、時空の穴を作り、中から例の物を取り出した。
「此で、如何だっ!」
手にした其へ、魔力を一気に込める。
噫分かる、魔力が吸われて行くのを、
駄目だ、妥協する訳には行かない、可能な限り使わせてやる。
一見、何も起きていない様に見えた、だが見る見る山羊の神の顔色が悪くなる。
「何故・・・ちゃんと動作している筈なのに、」
「さて如何してだろうな。」
まぁ自分丈だったら何の道失敗していたが、此方には優秀な魔力が居るからな。
周りの研究員達も慌てた様に自分達を見遣っている。・・・何となく絡繰が読めて来たか。
「・・・?あれ、何も起きないですね・・・?」
何を恐れてか目を閉じて小さくなっていたALもそろそろ首を伸ばす。
「おい彼、何だったんだよ。」
大きくなったケルディに小突かれ、僅かに彼は驚いてしまった様だ。
「えっとぉ・・・間違っていなければ恐らく、時間操作出来る機器みたいで。今押したボタンも、巻き戻しかと、」
「っじゃあ又時間戻っちゃうの?でも・・・何ともないよ?」
「成程、然う言う事か。此が今回の事件の犯人だったと。」
人じゃなく、正確には・・・龍だがな。
零星を滑らせ、曲がった外装を一気に弾き飛ばした。
金属板が吹っ飛び、研究員の視線が集まる。
弾け飛んだ機器の内部は複雑そうな電子機器、丈ではなかった。
寧ろ然う言った類の物は極少数で、ある物が中身の大部分を占めていたのだ。
其は巨大な皓銀の姿。
長くうねる其は明らかに異質で。
見覚えのある姿に思わずセレは息を呑んだ。
いやはやまさか、此の線は最初否定したと思ったが。
だからこそ気付けなかったと言う可きか。
其処に居たのは時の龍L⊝ ▼▲/だったのだ。
時間と言えば此奴だったが、でも悪さをしない龍だから確信が持てなかった。
其でも斯うして捕らえられてしまっては仕方がない。
どんな扱いを受けていたか分からないが、こんな箱の中に閉じ込められていたんだ。碌な物じゃないだろう。
可哀相に、とつい同情の念が湧いて来る。人間以外に対しては案外素直に沸く物だ。
其の長い躯には何本ものチューブが付けられている。無理矢理力を使わされたのだろう。
前世でも近い物を見たなぁ・・・良く自分もこんな目に遭い掛けたよ。
如何して人間は自分達をそんな物みたいに扱うんだろうな、彼奴等をこんな風に繋いでも何にもならない癖に。
でも然うと分かれば諸々の絡繰は簡単だ。まぁ此の龍の力でも時間を巻き戻す事其の物は無理な筈だが、其処は得意の技術力で応用させたのかも知れない。
次元が丸毎時間を巻き戻されていたのは間違いなく此だ。
他にも屹度、彼の山羊の神がしていた事も此だろう。最後は例の不思議な力は使っていなかったが、口振りからするに此の機械が大分めげて来たから出来なかったのだ。
恐らくは時間停止の類か、ALの言っていた龍の鱗の力を思えば、一部の場所辺りを限定して時間を操作も出来る筈。
成程、何とも便利な力の使い方だ。
真の目的とかは聞かないと分からないが、そんな研究を続けていたのだな。
「大丈夫か?助けに来たぞ、動けるか?」
中へ入り込み、そっとL⊝ ▼▲/の鼻先に触れた。
ALが優しく壊せと言ったのは此の事だったのだろう。
確かに彼を傷付ける所だった、危ない危ない。
L⊝ ▼▲/は全身の鱗に因りツルツルの手触りだ。
出来れば鬣のフサフサを堪能したい所だが、其はもう少し仲良くなってからにしよう。
L⊝ ▼▲/はゆるゆると目を開け、ちらとセレの方を見遣った。
澄んだ黔い真珠の様な目だ。何とも穏やかな色合いで、怯えてはいない様で良かった。
―・・・、有難う御座います、助けに来てくれて。今度は、ちゃんと其を使ってくれましたね。―
目の通り、穏やかで優しい声音がテレパシーとなって届いた。
少し丈首を持ち上げ、自分に寄せてくれる。
そんなセレの手にはL⊝ ▼▲/の鱗が握られていたのだ。
「噫、今度、と言う事は矢っ張り私達は初対面じゃないのか。」
此の鱗はALの家から拝借した物だ。皆が家を出た後に戻って取って来たのだ。
盗んだ形になるので今迄時空の穴に隠していたのだが、役に立って良かった。
ちゃんと説明しようとも思ったが、正直面倒が勝ってしまった。
だって・・・信じてくれないだろう、魔力が今日のラッキーアイテムは龍の鱗だって言ったんだもん。
流石に其は嘘だが、確かに魔力が言ったのだ、此を持って行くよう自分に言えと、自分が御願いしたと。
其の魔力は今はZ1-Θの中に居る訳だが、元々は此の鱗に宿っていたのだ。
そして出会い頭に然う告げられた。最初は半信半疑だったが今なら分かる。
自分達は・・・此処に、此の研究室に来た事があったのだ。
そしてL⊝ ▼▲/にも会っている、彼を一度助けていたのだ。
でも其処で・・・先の事が起こった、山羊の神が最後の一手と許りにした事。
恐らく先操作したのは・・・此の機械のスイッチ、時間を巻き戻す物だったのだ。
ALがずっと体験していた物、其を手動で動かしたのだろう。
そして其の所為で自分達は記憶も全て戻された。
ALと出会う前迄、そして此迄の事をなぞって来たのだろう。
だから屹度自分は戻される前に魔力に託したのだ。
繰り返さない様に、加えて山羊の神の口振りから、奴等は記憶を持った儘になるから。
躯を与えてしまっても仕方ないと踏んだのだ、然うでもしないと自分達は勝てないと。
魔力が時間の巻き戻しの影響を受けるかは分からない。でも魔力が予めALの持っていた例の鱗に宿っていれば話は別だ。
然うして再び来る自分を待っていたのだ。鱗を持って行って貰う様に。
成程な、良く分かった。全く実感は沸かないが其なら色々と説明出来るのだ。
山羊の神が色々と知って然うだったのも、自分達が来る事を知っていたからだ。
だから対策としてZ1-Θや魔力抑制剤を準備していた。
そして・・・範囲とか言ったか?だから恐らくは此処に居た奴等も、一部は時間の巻き戻しに遭っているんじゃないだろうか。
だったら反応の悪さも頷ける、中途半端に対応出来ていたのも其の差が生まれたのだ。
でももう此で、奴等は時間を操れない。時の龍は自由になったのだ。
―来てくれて本当に嬉しいです、有難う御座います。出ても・・・大丈夫でしょうか。―
「いや、もう少し丈待ってくれ、直ぐ片を付ける。」
―分かりました、引き続き御願いします。―
頭の角を小さく上下させるとL⊝ ▼▲/は自分の躯に刺さっているチューブを抜き始めた。
此で、もう奴等の手は封じた筈、一気に攻めるぞ。
機械上部へ飛び上がり、箱から出る。
外ではドレミの雷やハリーの幻で可也混乱状態となっていた。御蔭で此方は事が済んだのだ。
「さて切り札も封じたぞ。未だ抵抗するなら全滅以外道は無いが。」
ALの前だし、と言うのもあるが此処は次元なので正直殺しても余り意味がない。
だったらせめて情報が欲しいな、中々梃摺らせてくれた訳だしな。
翼を広げて研究員達の輪へ降りる。
直ぐに彼等は散って様子を窺う様に静かになる。
怯えているな、戦意はない。
彼の山羊の神丈は逃がさない、尾と翼でしっかりと退路を塞いだ。
「っぐぅ・・・こんな所で邪魔されるとは。」
「も、もう投降した方が良いですよ、もう此は・・・、」
「でも結局こんなの知られたら皆殺しじゃあ・・・、」
方々から研究員達の意見が飛び交う。
聞いている限り、もう此奴等は御手上げだろう、警備兵だとかも最初に片付けたしな。
「一寸!セレちゃんはそんな事しないよ!」
「こ、此はもう我々の勝ちって事で如何か・・・、」
攻撃の手が止んだ事でドレミ達が降りて来た。
もう安全ではあるだろう、時間停止なんて出来なければ脅威でも何でもない。
魔力抑制剤も銃も、此ではもう大した威力にならないだろう。
「セレちゃん、無事、なんだよね?良かったよ!消えちゃったのかと思ったんだよ!」
「まぁ実際一回消えたけれどな。」
駆け寄って来てくれたドレミの頭をそっと撫でる。
「うむ、セレなのだ。良かったのだ。我もしっかり戦ったのだ!」
「うんうんハリー偉かったな。」
すっかり龍身になっている、怪我がなさそうで本当良かった。
「さて、此方はこんなにも戦力が残っているからな。約束をちゃんと守って、話す事話してくれたら五体満足で帰してやるさ。私がこんな譲歩する事は珍しいぞ。御買い得だと思うが。」
「約束・・・、言ってみろ。」
飽く迄強気な山羊の神だがまぁ良いだろう、もうすっかり形勢は逆転したからな。
「じゃあ簡単に。御前達6890:鐘楼の奴は此の次元から撤退する事、研究所も手放す事。其と・・・Z1-Θだったか、彼の研究資料も欲しいな。其と念の為、ALを襲ったりはしない事、一先ず其で手を打とうか。」
―セレ、結構要求するんやね。―
「ん、此なんて未だ少ない方だぞ。最低限な。」
約束、なんて口にしたからか、ざわざわとまるで蛇の様に自分の背後で魔力が蟠る気配がする。
此も、契約の内に入るのだろう、破ったら如何なるか見てみたい所だな。
「・・・っく、わ、分かった。資料なら其処にある、持って行け。」
「あ、此ですね、私一寸貰っときますよ。」
山羊の神が顎で指示すると透かさずALが目当ての水精を取って来た。
彼も興味はあった様で直ぐ読み始める。
「口約束だと思っているかも知れないが私は精霊だ。ちゃんと契約と見做すからな。破ったら・・・命の保証はしないから、其の辺りは宜しくな。」
此で一先ずは手を封じられるな、うん、悪くない。
後は情報だ。死に掛けたと言うか死んだので一杯欲しい。
「彼丈で契約だと。一方的過ぎはしないか。」
「然う思うなら破れば良い。首の一つでも飛べば信憑性は増すだろう。後は話してくれれば一先ず解放するから辛抱してくれ。」
ちらと辺りの研究員を見遣ると顔を青くさせて何度も頷いた。
蛇の様な舌を出してチロリと口元を舐める。
「問題は無さそうだな。じゃあ最初は其方の目的でも聞こうか。偉く丁寧な歓迎をしてくれたからな。」
蛇の一睨みが効いたのか辺りの研究員達がぽつぽつと話し始めた。
其を要約すると此処は本当に対自分用の研究所だったらしい、いやはや恐ろしい。
何でももっと時間の研究を進ませられれば動けなくした自分に思う存分光やら魔力抑制剤を撃てたとか。
Z1-Θも元々其用の機器だったらしい、最初は時の龍L⊝ ▼▲/を捕まえるのに使ったが、後は魔力抑制剤を放つタイプに造り替えていたんだとか。
・・・未だ出来ていなくて良かった。其、完全に自分終わってたよ。
時間操作と光に関しては本気で何も出来ない、今回だって運良く鏡界に行ったから助かったが、然うじゃなくなる可能性は十分あった。
本当良かったよ、こんな所で自分の物語が終わらなくて。
此の次元へ来たのは完全なる偶然だったが、結果来て良かったな。
動いていない様でしっかり光の国は動いていた訳だ。
6890:鐘楼は色々なサポートと言うか、一つを専門とする所ではないと聞いていたが、こんな事もするんだな。
随分先を行っていると言うか、目の付け所が良い。
・・・此は自分も、もっと対策と言うか色々向上させないとな。
さて、正直此処の奴等は皆殺しにして、此処自体更地にしたいが然うも行かないのがな・・・。
まぁ仕方ない、一応此奴等の目に自分は、何故か不思議な力で復活した様にしか写らない筈、うん。
其と加えて魔力抑制剤の予備を少し貰った。
一応貴重品らしく量産は出来ないんだとか、でもT&Tとかで売ってそうではあるな。
此はAに渡して色々調べて貰おう、何とか此の対策を見付けたい。
然うして諸々の話は終わり、自分達は一旦ALの家へ戻る事にした。
一度位彼の山羊の神をぶっ殺したかったがALに止められてしまった・・・奴の悔しそうな顔を見られたので其で我慢しろとの事だ。
奴の頭脳や胆力は侮れないんだが・・・次元の主導者に言われてしまっては仕方がない。
因みに解放された時の龍L⊝ ▼▲/は自分達に付いて来た。
久し振りに外に出られたらしく、長い躯を思い切り伸ばして喜んでいる。
加えて・・・自分に滅茶苦茶懐いてくれている!最高だ!
聞いてみると、まさか誰かに助けて貰えるとは全く思っていなかったそうだ。
別に今迄自由に生きていたので誰かと深く関わる事も無かったらしい、寧ろ今回みたいに捕まりそうになる事が多かったので、然う言う交流は避けていた然うだ。
だから実は、もう記憶にはないが一度目彼を助けた時、彼は心底驚いたらしい。
もう真面に喋れない位吃驚してしまい、手間取ったから時間が又戻ってしまったんだと謝って来た。
成行きとは言え、助かったのなら良かった、罪の無い龍達は助けてあげたい。
モフモフだと言う事を抜きにして、此は事実だ。
と言う事で大手を上げて自分達は正面から外へ出る事が出来た。
控え目にL⊝ ▼▲/も付いて来てくれたが、彼は可也大きい。
全身に日光を浴びられて本当に嬉しそうに彼は身をくねらせた。
―噫、本当に皆さん有難う御座います。もう半ば諦めていたので、未だに信じられない位です。―
「うん良かったねフェル君、でも本当に付いて来るの?折角自由になったのに。」
―はい、皆さんの仕事に感銘を受けました。私も出来る事があるならしてみたいのです。―
やる気は十分の様である、付いて来ると言っても其処迄本気だったとは。
次元の迫間に帰ったらリュウの所へ連れて行こうと思っていたのに、何とも有難い申し出だ。
L⊝ ▼▲/は、すっかり小さくなって元の姿に戻ったケルディを鼻先に乗せていた。
見ていて微笑ましいが、如何せん大き過ぎるな・・・。
「只其の大きさだと家に入れないな・・・良しハリー、何とか幻術で小さく出来るか?」
リーシャンの時みたくして欲しいが如何だろうか。
「うむ!そんなの御茶の子さいさいなのだ!我の秘術を篤と見るのだ。」
人身に戻ったハリーは不思議な踊りと構えでじりじりとL⊝ ▼▲/に近付いた。
L⊝ ▼▲/は少し冷や汗を掻いて下がり掛けたが何とか留まる。すると見る間に彼は小さくなって行った。
然うして1m位の一見蛇の様な姿迄縮んでしまう、何とも愛らしい。
―不思議な視界・・・すっかり小さくなってしまいました。―
―流石ハリー先輩や!完璧やな!―
「うむ、リーシャンの時と同じ様、其方が願えば元の姿に戻れる様にして置くのだ。」
胸を反らせたいのだろうが何とも不可思議なポーズをするハリーである。
良く分からない儘にソルも真似てみている。・・・其しても幻術は身に付かないぞ。
「・・・っ!然うだL⊝ ▼▲/、良かったら私の頸に巻き付いてくれ!」
「え、セレちゃん首締まっちゃうよ!」
「いや斯う・・・龍マフラーをしたい!頼む、御前が恩を感じていると言うなら其で御釣りが出るから!」
両手を広げて彼を受け入れる。
L⊝ ▼▲/は暫し如何しようか悩んでいる様だったが、そっと首元に巻き付いてくれた。
―あ、あの此で大丈夫ですか?締まらないか凄く恐いですが・・・。―
「す、凄い此が・・・っ!感激だ、モフモフだ!幸せ過ぎる!」
完璧なサイズ感でしっかり彼は自分の頸にフィットした。
L⊝ ▼▲/自身温かい、加えて背の鬣が触れて・・・最高だ!
此、良い!ずっと斯うしていたい!常にモフれる!
「セ、セレさんって妙な趣味を持っているんですねぇ。」
―彼が極上の御褒美だから・・・そっとして置いてあげてね。―
「あ、だから御仲間もモフモフが多いのでしょうか・・・。」
顎に手を置き、何とも不思議そうにALはセレを見遣るのだった。
「でも確かに首締まりそうだね。・・・試しに一寸してみたら?」
―え、えぇ⁉で、でも・・・、―
ケルディから悪魔的な提案が入る、L⊝ ▼▲/は困りつつももう少し丈巻き付いてみた。
「・・・っ!あ・・・が、く・・・くる、で、でも良い!もっと!モフモフが!良い!」
―今苦しいって言いましたよね⁉―
慌ててL⊝ ▼▲/は少し緩めてしまう、実際苦しかった様でセレは荒々しく息をしていた。
「な、何か此、セレちゃんが本格的に変なのに目覚めそうだから程々にしようね。」
何だか癖になったら危なそうだ、こんな事で窒息したら悪いジョークだ。
「未知の体験だった・・・有難うL⊝ ▼▲/、暫く此の儘で御願いして良いか?」
―ま、まぁ・・・此で良ければ。―
L⊝ ▼▲/が留まってくれたので存分に首元をモフモフする。何て幸せな事だ、温かいし最高だ!
「・・・じゃっもう中入りましょうか!」
気を取り直し、ALが扉を開けてさっさと中へ入って行った。
「いやぁでも皆さん本当に有難う御座いました!私一人じゃ迚も解決出来ませんでしたから。」
「ん、然うだ此を返さないと、済まないなAL、勝手に持ち出して。」
時空の穴からL⊝ ▼▲/の鱗を取り出した。相変わらず綺麗だな。
L⊝ ▼▲/も自分の物と気付いたのか頻りに匂を嗅いでいた。
「あ!然うですよもう、手癖が悪いんだから!でも御蔭で助かりました。別に盗む訳じゃあなかったんでしょ?」
鱗を受け取るとALは何度か陽光に照らして見ていた。
「いやぁ嬉しいですなぁ!すっごい久し振りに霄になるんですよ、何だかワクワクして来ました。当分生活習慣が滅茶苦茶でしょうね。」
不図ALは床を物珍しそうに歩いているZ1-Θを見遣った。
恐ろしい兵器だと向こうで知ったが斯うして見ると少し可愛い気がする。
「向こうから貰った資料、未だあるんで何か分かったら又御知らせしますね!」
「噫頼む、急に壊れでもしたら大変だからな。」
―然ウダネ!宜シクネ!―
「えぇ!何とも変わった創り方してましたけどね、調べてみますね。」
此処の資料、水精はALにしか読めない。機械の扱いも分からないし、彼に御願いしよう。
「って言う事は二柱も新しく増えるの?凄いよセレちゃん!此で又賑やかになるね。」
―後輩って事やね、う、うん頑張る!―
「うむ、我も同族の仲間が出来て嬉しいのだ。」
キャッキャと皆無邪気に喜んでいる、頑張った甲斐があったな。
「あ、然うだ早速ZNに連絡しましょう!素敵な方達を送ってくれて有難うって。」
「え、ZNって確か・・・、」
セレのポケットに入っていたケルディがちらと顔を出す。
忘れていた、其奴って確か・・・、
連絡なんてされたら自分達が実は違うとばれてしまう。上手く行ったと言っても其は、
―セレ、此は・・・そっと帰った方が良かったりするんやない?―
「然うだな、面倒は嫌だし、切り上げるか。」
「皆さんほら!今電話しか無いので申し訳ないですけど、」
回れ右した所でALに肩を掴まれた。
然も一本ではなく四本の腕で掴まれてしまう。
い、何時の間に、此奴はアサシンか!
此じゃあ振り解く事も出来ない。楽しそうにALは電話と言った小さな機器を手にした。
「あ!ZN!いやぁ少し前振りですね!えぇはい!」
そして早くも繋がったらしく何やら楽し気に話し始めた。
セレ以外の一同がそろそろと出口へ向かってしまう・・・汚いぞ皆!
犠牲になってしまったセレは何とか頭の中をフル回転させて考えていた。
如何する、何か手はないか?声丈なんだし上手い事出来ないか、
「ん、噫今居ますよぅ、ほらセレ、ZNが話したい然うなんでほら!」
考える間もなくそっと電話を手渡されてしまう。
・・・えぇい儘よ!適当に話を合わせるしかない!特大の愛想笑いで迎えてやろう!
勢い丈は良く電話を耳に当ててみる。
「も、もしもし・・・、」
「あ、はいはいもしもし~、いやぁ華麗な仕事っぷりだったみたいで流石ですね。一体何処から情報を得たのか、いやはや御見逸れしましたよ。」
「あ、噫、まぁその・・・有難う。」
快活そうな低音の声だ。勿論聞いた事は無い。
・・・如何しよう、知らない人との電話って緊張する、何か褒めてはくれているが。
気持ALから距離を取ってしまう、聞かれたら終わるからな。
「あれ、何か元気ありませんが?もしもしセレ神さんー。」
「ッ⁉何で私の名前を、」
言い掛けて直ぐ声を潜める、あ、危ない明らかにALに怪しまれてしまう。
「然うでした名乗っていませんでしたね。僕はZN、T&Tの商品開発部のZNですよ、初めまして。・・・若しかして其の反応、何も知らなかったりしますか?」
「T&T・・・manjuの所か、じゃあ御前も神族だったのか。」
何と・・・此は全く予想していなかった、こんな所にも潜んでいたんだな。
と言うより此の次元、偉く神と癒着しているな・・・一体何があるんだ。
「おや、本当に知らないみたいだ。此は幸運と言う可きか何なのか・・・いえあの、実は僕、貴方方に依頼をしようとしていたんですよ。依頼と言うより情報です。其の次元で何やら恐ろしい研究をしていますよと。其がまさか先に行かれているとは。」
「然うだったのか、完全な偶然だったが・・・確かに恐ろしい研究だったな。」
まさかZNが言っていた助っ人は本当に初めから自分達だったらしい。何て事だ。
入れ違いだったみたいだが本当に来ていて良かった。無駄にはなったが素晴しい情報だったんだな。
manjuの手引きだろうが助かる、でないと気付けもしなかっただろう。
「いやいや見事です、先に解決されるとは。其の次元、技術力が優れていて中々ユニークな種が多いいんですよ。ALとは昔から仲良くさせて貰ってましてね。困っていたので序でに助けて貰おうと思ったんですが、有難う御座いました。」
「あ、いや此方こそ有難う、まぁその・・・又何かあったら頼む。」
ユニーク、確かに然うだな。まさかT&Tにも技術提供しているとは。
商品開発、と言っていたし、若しかしたら向こうも盗作していたりしてな・・・まぁ気にしないで置こう。
「えぇ此方こそ。次は直接御会いしたいですね。では今後も御贔屓に。」
然う言うと電話は切れてしまった。・・・まぁ事無きを得たな。
御贔屓にって自分達何もしていないが良いのだろうか、何か悪いな。
まぁでも此でALも研究やらに集中出来るだろうし、良いか。
「ね、今の電話の相手って、」
ケルディが鼻先をポケットから出す。
「噫、如何やら此方側の奴だったみたいだ。」
小声で返すとケルディは大袈裟に目を丸くする。
「報告は終わりですかな?いやでも・・・一時は如何なる事かと思いましたが、プロは違いますね!又何かあったら宜しく御願いしますね。」
「うん、上手く行って良かったよ本当、」
道中心配が尽きなかったのはドレミも同じで、ニコニコと迚も嬉しそうだった。
―其じゃあ新人・・・えっと人やないけど、色々話もあるやろうし、うち等はそろそろ御暇するん?―
「うむ、部屋も欲しいのだ。彼処での龍の心構えは我に任せるのだ。」
―はい宜しく御願いしますね。―
―ウン、ボクモ一緒、行クノ!―
分かる、もう此の次元は大丈夫だ。皆の足が自然と出口へ向かう。
「其じゃあAL、御疲れ様、又何かあったらZNに連絡をしてやってくれ。」
「はい!皆さん其じゃあ御元気で~!」
元気良く数多の手を出してALは皆を見送ってくれた。
其の後ろ姿も見えなくなり、出していた手を組み直す。
「聞いていた通り滅茶苦茶だけど面白い人達でしたねぇ、さ!時間は有限、私も頑張りましょか!」
鮮やかに変わりつつある旻の色を確と其の目に焼き付けて、ALは地下の研究室へ降りて行くのだった。
・・・・・
止まった時は動き出す
世の理を外れた砂時計は戻り始める
何度零しても戻る砂は何処にも無い
流れ、何れは其の色も見えなくなろうが、
今此の手を潜り抜けるのも、目を通り過ぎるのも、
同じ時と、今は只告げるのだ
如何だったでしょうか!
まさかのセレの母さん現る!
自分の中でも可也意外性があるんじゃないかなぁと思ったり。あ、此の子って然う言う存在居るんだぁって感じですね。
何となく悲劇系?復讐劇系?主人公って斯う言う肉親が余り出て来ない気がするんですよね。大抵亡くなっていたりするだろうし。
天涯孤独って方が書き易いですしね、でも彼女って居るんですよ。
案外不幸じゃないじゃん、此奴さては我儘だな!と言うのが書きたいんですな、比の打ち所の無い悪者が大好きです。
自分も斯う言う存在を書くのは実は初めてだったのでドキドキしました。
母親って何だろう、慈しみってどんな形なの?と言う事でずっと頭がグルグル、幼少期の記憶を頑張って引っ張り出しました。
作者自身は可也恵まれた環境だったのでね、屹度斯う言ってくれるだろうなぁと言うのはポンポン浮かぶのですが、何分気恥ずかしさが出たり、其処はセレさんと一緒ですね。
けれども書いていて楽しかったです、偶には斯う言うほっこり書きたいね!其の方が絶望が深まるからね!
後はまぁ・・・仲間が沢山増えた訳ですが、時の龍の名前難しいですね、他の作品に居るのでしょうか、こんなルビ振り難い奴。
居たら尊敬します、滅茶苦茶書き難いじゃねぇか!(作者)
一応と言うか勿論彼の名前にも意味がある訳ですが、そんなに難しくないです、何方かと言うとイメージの問題ですね。
けれども解読した所で大した意味も無いのでそんなもんだと思ってください。ああ言う表現が好きな丈なんです。
此で三大伝説龍が揃った訳ですが、別に揃ったからって願いとか叶いません。単にセレのコレクションセットですね。
まぁ全くの無意味じゃあないんですが・・・其の辺りの話はもう伝説にしても良いかもと思ってしまっているので、明かされるかは其処は時の運ですね。
其では久し振りに誤字祭りでもしましょうか、今回は一寸深夜テンションで笑っちゃいましたので御裾分けです。
じゃあ一発目!
尾で叩き付けようとした所でZ1-Θから皓いレーザーが出て来た。
「牛ゥ!」
化物化したセレとZ1-Θのバトルです。凄い誤字変換、ぱっと見の衝撃が凄い。
正確にはセレの鳴き声なので「ギュウゥ!」です。まぁ・・・然うなっちゃいますよね。
然うしていると突然四方に市電が走った。
思わずびくつくがドレミの物だろう、的確に機器を狙い打っているらしく、黔煙が上がり始める。
ドレミ何してんの⁉ってシーンです。皆でフェル君助けるぞぉ!って所だったのですが、ある熟語の所為でとんでもない事故になっています。
正確には『紫電』ですね。此もそっかぁと思っちゃう誤字ですが、此は此で結構好きです。
とまぁ今回はこんな感じです!
次回は・・・又一寸長くなるかも?けれども相当大事な御話になりました。
ずっと温めていた話の一つなのでサクサクっと行きたいですね、其では今後の御縁を願って、又御会いしましょう!




