49次元 僊人と枯骨の樹の次元
今日は、御元気でしょうか?
何だ彼だで良い感じで書けていますね。順調そうで何より。
只今回は何時もの如く、いや何時も以上にわーって書いちゃったので少し反省していたり。
意図せぬ矛盾箇所があるかも知れません、其が何より恐ろしい・・・。
現在普通にリアルが忙しいので如何しても色々後手後手と言った具合です。気もそぞろになったり、其が原因ですね。
けれども書きたい!惰性でも書いていたい!みたいな熱情等より趣味の範囲で書き続けています、実際書いている時が一番楽しいですからね。
今回特に反省点はメンバー選びかなぁ?と、こんな事を書いていたら駄作と自分で宣伝するような物!自分の創作物は自分が一番のファン!
そんな精神でやって行きます。此の話自体は高校生?の時位に考えて、一寸丈温めていたものなので大事にしたいですね。
元ネタも滅茶苦茶有名な彼の話です。其では奉公の旅に行ってらっしゃい!
克て雷が丗を溶かし、再構築された。
世界は崩れた、再生の為に
溶けて固まった世界は滑らかで
丸くなった世界を見て、神は頷き、満足しました
此で、自分の役目は終わったのだ、と
・・・・・
「っおっしゃあぁあ!一番乗り!」
元気な声と共に皐牙が大ジャンプを極めて着地した。
だが地面は可也柔らかく、あっさり彼の両足を包み込んで衝撃を逃がしてくれる。
「っわっと!な、何だ此・・・?」
そっとグローブで地面に触れてみる。
地面は真皓で、綿毛の様に手触りが殆どなかった。
霧か何かかと思ったが、地面其の物が巨大な毛布みたいだ。
「はーこりゃ店主が来てたら天国だっただろうなぁ。」
因みに店主は今折檻中である。
何でも単身で彼のストーカー野郎をぶっ飛ばしに行っていたらしい。其で勝ちはしたものの、店主も大ダメージを受けたから滅茶苦茶家主に怒られていた。
其の様が正に針の筵だったから居た堪れなくなって何柱かで出て来たのだ。
ま、店主が勝ったんなら良いんじゃねーの、と個神的には思ったけれど、然う言う問題でもないんだろうな。
彼のストーカー野郎が死んだならオレが店に匿って貰う理由、無くなっちまうんだけど、ま、其も良いか。
何だ彼だで楽しいし、飽きる迄居れば良いんだ。
「皐牙、一番、凄い。」
「だろー、やる気も十分だゼ。」
旻から緩りと鏡が降りて来た。
当たり前みたいに飛んでるけれど、其、所に因っては面倒な事になるぞ・・・。
一応ぐるっと回りを見てみる。
一面皓い地面に覆われているが変な感じだ。妙に旻が近いと言うか。
地平線迄皓と蒼い旻で綺麗に区切られている。そんな旻には雲華一つ無かった。
誰も居ない・・・然う思った所で少し離れた所に視線が集まる。
居た、一人丈、此方に背を向け、椅子に座ってる爺が居た。
長くぼさぼさな皓髪に、ゆったりとした窓掛みたいなローブを着ている。
只座っているのかと思ったが、何やら棒を持っている様だった。
いや棒ってより彼は・・・、
「んー何か彼のじぃちゃんがターゲットっぽいなぁ、おーいじぃちゃー・・・、」
皐牙が手を上げると同時に、老人の目の前を何かが落ちて行った。
「うわぁああぁあああっ‼」
人型の様に見えた其はそんな叫び声を上げ、老人の目の前にぽっかり開いていた穴に落ちて行った。
「っぬを⁉何か掛かったぞ‼」
老人の持っていた棒が大きく撓り、慌てて老人は立ち上がった。
一所懸命に棒を握っている様だが、恐らく彼の棒は釣竿なのだろう。
「・・・・・。」
と言う事は・・・掛かっている獲物は・・・、
「うおぉおおおお‼じぃちゃん手伝うから其の竿貸せっ!」
ある答えに行き着いて慌てて皐牙は老人の元へ駆け寄った。
「んん?少年一体何処から、」
「良いから早く引っ張り上げっぞ!」
突然現れた皐牙に老人が驚いた隙に、引っ手繰る様に皐牙は釣竿を掴んだ。
「っぐぎぎぎぎぎぎっ!」
何て重さだ、じぃちゃん良くこんなの持てたなっ、
両足で踏ん張り、顔を真っ赤にして皐牙は釣竿を引っ張り上げた。
釣竿は大きく撓り、其の先が顕になる。
「う、うわぁあぁカーディさ~ん‼」
其の先に掛かっていたのはベールだった。
吊り上げられ、大きく宙へ投げ出されたベールは、皐牙の姿を認めて一気に泣き噦った。
だが二柱の視線が合ったのは一瞬で、其の儘彼はべシャリと地面に叩き付けられる。
けれども地面は柔らかなのでダメージにはならなかった様だ。
其の拍子に彼の服に掛かっていた釣針が外れた、服が千切れてしまった様だ。
「ほ、本当に、何なんだよ手前っ、」
肩で息を付き、皐牙は其の場に座り込んだ。
つ、疲れた、まさかとは思ったけれど、助けに行って良かった・・・。
今回次元に来たのは三柱だった筈、オレと、飛んでる奴と後は・・・と思った所で降って来たのだ。
ま、此のじぃちゃんの釣針に引っ掛かったのは唯一の幸運だろうけどな。
「あ・・・あぁ、有難う御座いましたカーディさん、いやかーディ様!」
ベールは起き上がる間もなく土下座になった。今一皐牙は其のポーズの意味を知らないが、まぁ感謝はしているらしい。
「ホント先が思いやられるゼ。・・・と、じぃちゃん悪かったな勝手に取って。」
釣竿を拾い、立ち呆けていた老人に手渡した。
ま、無理もねぇな、行き成り神が釣れちゃあな。
渡す序でにそっと穴を覗き込んでみた。助けはしたけれど、此の下如何なってるんだ?
「・・・・・。」
覗き込んで、思わず息が詰まった。
何も無い・・・と言うか無限の穴だ。
激しく吹き上げてくる凱風が顔を打つ。
穴、何処迄も続く穴、遥か眼下に辛うじて地面が見えた。
釣りをしていた様に見えたが、水は一滴も無い、眼下の世界は存外明るかった。
そして良く見ると其は穴ではあったが、自分達が今立っている地面と、遥か下に見える地面の間に、何も無かったのだ。
何だ此・・・一体じゃあオレ達の居る地面は如何やって支えられているんだ?
と言うか此、落ちたら洒落にならなかったな・・・。
流石に彼奴の力を借りても此処迄飛べないだろうし、第一無事では済まなかった。
でも見れば見る程不思議だ・・・何て言うか雲華の上に居るみたいな・・・。
雲華の上・・・?雲華の上⁉然うだ、此処は雲華の上だっ‼
一柱とんでもない事に気付いてしまったと、皐牙は穴を見詰めた儘固まってしまう。
いや然うじゃん、然うとしか考えられないじゃん。
見えていた下の地面が本物で、オレ達が居るのが雲華の上だとしたら、現状凄く納得するし、理解し易い!
ま、まぁでも別に突然穴が開くとか、空気が薄いとかなさそうだし・・・大丈夫、だよな?
いや考えて来たら段々息が苦しくなって来た気がする・・・も、もう分かんねぇよ・・・。
「お、おぉ、いや有難な少年、先のは大物だったから彼の儘だったら儂も危なかった、助かったぞ。・・・?如何したのだ少年。」
釣竿を受け取り、老人は首を傾げた。
取り敢えず老人に怪我は無いらしい。穴を見て固まってしまった皐牙の肩をそっと叩いた。
「え、あ、あ、ま、まぁな。オレに掛かればこんな物よ。」
余り見ていると竦み上がり然うだったので慌てて皐牙は視線を老人に移した。
「フム・・・。さて獲物は何処かな、随分な大物だった様だが。」
キョロキョロと身重そうに老人は辺りを見遣っていた。如何やらベールを釣り上げた事にすら気付いていなかった様だ。
ま、トロそうなじぃちゃんだし、仕方ないか。
「あーじぃちゃん先のは・・・、」
「随分な大物だったから喰い甲斐がありそうだったし、直ぐ絞めるとしようかの。」
言って傍に置いてあったバケツから大型の肉斬り包丁を取り出した。
「・・・っ、」
そっとベールを差していた指を引っ込める。
や、やべぇじぃちゃんかも知れない、何彼の武器、此処で直ぐ絞める気だったのかよ。
下手にベールを釣ったと言ったら何をされるか分からない、無言でベールと皐牙は視線を合わせた。
幸い、釣針は彼奴から取れているし、大丈夫だろう。
「えっとじぃちゃん悪いな、獲物は逃げちゃった様でさ、ほら。」
代わりに皐牙は何も掛かっていない釣針を指差した。
抑こんな旻の上で何が釣れるのだろうか・・・鳥、とか?
ま、餌も良く見たら付いてねぇし、只の耄碌じじぃって所なのだろうか。
「何とっ!噫其は・・・惜しい事をしたなぁ・・・。」
老人はすっかり落ち込んでしまった様である。
はい残念でしたー、と去りたい所だが如何やら此の老人が次元の主導者らしい・・・。
じゃあ放って置く訳にも行かない。一つ息を付くと皐牙は老人の背を叩いた。
「ま、そんな事もあるって。一匹逃げた丈だし、又釣ったら良いだろ。」
「うむ、しかし助かったぞ少年、若し少年が居なかったら儂も落ちる所だった、礼を言わせてくれ。」
然う言って皐牙を見詰める老人の目は迚も澄んでいた。
黄玉に似た輝きを持つ瞳を見て皐牙は何処となくドレミを連想していた。
何となく似てる、齢の割に主張の激しい目だ。
其の目の所為で、老人は酷く蓄えた髭と皴に刻まれた顔だと言うのに、何処か年若く見えたのだ。
「ま、まぁ礼は良いけどさ。」
抑此奴の所為で寧ろじぃちゃんが危険な目に遭ったんだが。
ちらとベールを見遣ると、慌てて彼も起き上がった。
「む・・・む?又新たな少年が増えておるのぅ、おぉ、向こうからも来たか。」
今更乍らふわふわと飛び乍ら鏡もやって来た、随分のんびりとした物だ。
「一体少年達は何処から・・・いや、然うか、然うやって飛んで来たなら納得か。」
一体何に納得したのか分からないが、老人は一人で頷いて満足した様である。
助かった・・・。如何やって雲華の上に来たかなんて説明出来ねぇし、其処は彼奴に感謝しないといけないかも知れない。
「ま、オレ達暇してたしさ、何かしてるなら手伝うぜじぃちゃん、釣りとかオレ達の方が体力あるだろうし。」
先ずは何とか関係を作らないと、皐牙の其の提案に老人は目を輝かせた。
「然うか、然うか!其は有難いな。ほれ、見ての通り儂は一人でな・・・誰かに会うのも偉く久し振りで嬉しかったが、然うか、手伝ってくれるか。」
「おじぃちゃん、誰?」
降りて来た鏡が無遠慮に尋ねる。
でも老人は一切怒らず、ニコニコするのだった。
「おぉ、何と儂の孫にそっくりだなぁ・・・。うんうん、儂の名はスェズだ、歓迎するぞ。」
早速彼の幸運が働いている様である。
スェズは本当に慈しむ様に鏡を見詰めていた。
「じゃあオレ達も、俺はカーディナル、此方がベールで、此奴が鏡って言うんだ。」
「うむうむ、覚えたぞ。」
スェズは何度も頷くと包丁をバケツに戻し、釣竿を取り出した。
「では昼飯を作るのを手伝ってくれんかのぅ、儂は先ので少し腰を痛めてな・・・。家にもう一竿あるから、二人程は釣りをして欲しいのだ。」
「釣り、好き、やりたい。」
「うむうむ、じゃあ御願いするぞ。」
スェズから釣竿を渡され、鏡の目は輝いた。
「あ、じゃあ僕も釣りやります。腰痛めたのは多分僕の所為だし・・・。」
「ぬ?そうか。じゃあ此処で待ってくれ、直ぐ竿を持って来るからの。」
「で、でも釣るにしても餌とかは何を使うんですか?僕此処で釣るの初めてで・・・。」
元々港町で育ったので釣りの経験はあるが、此処は瀛海すら無い。
何が釣れるのかも未知数だ。
「ほっほっ、そんな身構えずとも、適当に地面を掘って、縷丈垂らせば何か掛かるよ。釣れたら取り敢えずバケツに入れたら良い。」
「未知の魚・・・楽しそう。」
随分とやる気を出してくれたみたいで鏡は釣竿を持つと何処かへと飛び去ってしまった。
・・・彼奴、ちゃんと理解、したんだよな?ま、サボったりはしないだろうけれど。
「えーっと、じゃあオレは?じぃちゃんの御守りか?」
「然うさな、出来れば料理を手伝ってくれるか?魚以外も作りたいからのぅ。」
「あーまぁ分かったゼ。」
何だか一番面倒そうなのを引いた気がする。
まぁ殺伐とした所よりマシかな。
店では家主に任せっ切りだけど、オレだって料理位出来る。昔孤児院とかで作ってたしさ。
・・・魚料理は、前世でも余り作ってないから良く分からねぇけど。
「其じゃあ一緒に行こうか。儂の家は向こうにあるからのぅ。」
「あ、じゃあ僕も釣竿貰いに行きます。」
「・・・折るなよ、御前、なーんかやりそうなんだよな。」
「ッヒィ!や、やりませんよそんな事!」
ベールが噛み付いて来たので皐牙はクツクツと喉の奥で笑っていた。
「で、家っつっても何処だ?何もねぇぞ?」
一面の雲華景色だ。まさか地平線の彼方にあるのだろうか。
「儂の家は地下にあるのだ。下界が見える様にのぅ。だからほれ、其処に目印があるじゃろう。」
スェズが指差すと、確かに少し離れた所に大きな雲華の塊があった。
言われたら目印と分かるレベルの物で、雲華だからか其の塊は常に少しずつ形を変えている。
迚も目印とは言い難いが、良いのだろうか。
「ふーん、ま、迷わないなら良いけどさ。」
つーか此のじぃちゃん、当たり前みたいに下界っつったな。
雲華の上に当たり前の顔して住んでるし、若しかして凄いじぃちゃんだったりするのだろうか。
皐牙が訝しみつつスェズを見ていると、彼の目の前でスェズは何度も躓いたりとよろよろ歩いていた。
・・・ま、只のじぃちゃんにしか見えないし、今は別に良いかな。
皐牙達は其の雲華の塊に向け、足を伸ばすのだった。
・・・・・
「ほぉー中々御洒落な感じになってんじゃん。」
スェズの家は外見からは可也分かり難い物になっていた。
本来は雲華に穴を開けて、まるで地下室みたいに造られていたのだが、其の上部に靄の様な物が立ち込めていて、一見では分からなかったのだ。
だがスェズが先行する事で何とか潜り抜け、皐牙とベールは地下へと降りて行った。
行った先は中々壮大な景色だった。
薄い雲華の地下だなんて、下手したら抜けるんじゃ、と思ったが存外雲華は頑丈だった。
降りた先は、逆向きに生えた茸の様な形をした部屋だった。
中心に太く大きい柱があり、其処から一面の絶景だったのだ。
そっと端に寄って見る、不思議と薫風はなかった。
窓も無い様に見えるが、何か術でも掛かってているのだろうか。
流石に落下が恐いので、ギリギリ迄は行かないが、何とか景色を視界一杯にする位は近付いてみる。
「うわーすげぇ、マジで雲華の上かよ・・・。」
薄ら冷や汗を掻く、本当に高い。
地平線は何処迄も続き、眼下には緑豊かな大地が広がっていた。
幾つもの蕭森と、彼の小さな鏡みたいなのは湖だろうか?村の様な物も幾つか見える。
正に下界って奴だ。まるで本物の神様になった気分。
恐ろしさも忘れてすっかり見入ってしまっていた。ベールもそろそろと近付いて来る。
「う、うわー良く恐くないですねカーディさん・・・ヒェエ・・・。」
「あー御前は近付くなよ、絶対落ちるから。あ、後柱にも触るなよ!絶対!」
危ない、釘をしっかり刺して置かないと。
此奴一柱が落ちるか、柱が折れて家毎オレ達も落ちるか、何方の未来も想像に難くない。
・・・絶対嫌だからな、こんな所から紐無しバンジージャンプとか。
其で彼奴、飛んでる幸運丈助かるんだろ?理不尽過ぎるから。
「わ、分かりました大人しくします・・・っ!」
「いや御前は釣りに行くんだからな?」
言うや否やスェズが釣り道具を持って来た。
・・・良かった、呆けてはなかったみたいで直ぐ持って来てくれた。
「ほれ、此じゃ、大物、期待しておるぞ。」
「任せてください!此でも僕は港街育ちですから!」
「苔が大好物だけどな。」
皐牙の冷ややかな視線を浴びつつもベールは元気良く外へ出て行った。
「うむ、元気なのは良い事じゃ。さて、皐牙君、だったな。君は火起こしを手伝って貰おうか。」
「おぅ其ならオレの得意分野だゼ。」
そっと窓辺から離れる。
外に気を取られて余り中を見ていなかったが、部屋はワンルームに全て閉じ込められている形だった。
円型の部屋なので、全て見渡す事が出来る。
一見ベッドだろう雲華の塊と、テーブルだろう雲華の塊と、椅子だろう雲華の塊と、棚だろう雲華の塊等が目に付く。
・・・うん!全部雲華だ!
何かもこもこした部屋だ。店主が入ったら即終わってしまっただろう。
雲華は少しずつ色が付いていたり、霧掛かっている様だったりと少しずつ種類は違ったが、まぁ同じ様な物である。
此処なら転んだりとかしても、怪我はしないだろうな。
一応棚には雲華以外の物が色々と入っていた。小瓶に入った・・・調味料とかだろうか?謎の岩とか、欠片が幾つも入っている。
「良い返事だな。では此処に・・・ぬ、火打石は何処だったかのぅ。」
「あーそんなの要らねぇよ。ほら、此処で良いのか?」
皐牙が近付くと机らしき雲華の中心が少し凹んでいる。
此処に収まる位か・・・火力、大分下げないとな。
一つ息を付いて集中すると、小さな火の玉が灯った。
火は大人しく、火種も無いのにゆらゆら燃えていた。・・・うん、安定している。
雲華は・・・別に燃えねぇよな、水みたいな物だし。
「おぉ、皐牙君は火の扱いが上手いのぅ・・・見ていて安心する火じゃ。」
「だろ、オレに掛かればこんな物だって。」
「昔、人間が初めて火を手にした時は何とも暴力的で激しい火だったが・・・うん、此は温かいのぅ。」
「ん・・・んん、そ、然うだろ?」
何か変な話をされた気がしたが無視した。多分例え話か何かだろう。
「ってかじぃちゃん此処碧樹とかねぇだろ、何時も如何やって火付けてんだ?」
棚を漁り始めたスェズに手持無沙汰に聞いてみる。
一応、安定しているかは見ないとな。
「其が・・・何時も苦労しているんじゃよ。碧樹は下界にしか無いし、何時もは火山を噴火さえて此処迄届かせるか、雷を落としているのぅ、ほらだから上に穴が開いているんじゃ。」
確かに机の上はぽっかりと小さく穴が開いていて明るい。
てっきり煙を逃がす為と思っていたけど・・・ってか今何て言った?
火山?雷?・・・からかっている丈か。全く、店主も此のじぃちゃんも、神をからかうのがそんな楽しいのか?
「さ、此処に鍋を置いて、済まぬが此を鍋の中へ搾ってくれんかのぅ?」
言って手渡されたのは小さな雲華の欠片だった。
何だ此、此で一体何を作るんだろうか。
搾れって言われたけれど、普通に握れば良いのか?
分からない儘に両手でぐっと握ってみた。
雲華丈あって感触が一切ない、握れたのかも怪しいが。
只然うしているとぽたぽたと指の間から水が染み出して来たのだ。
「お・・・おおっ!水が出て来たぞ⁉」
「そりゃあ雲華じゃからなぁ。」
スェズは気にせず棚を漁っている。
皐牙は興奮で一杯だ。其の間も指からどんどん水が出て来るのだ。
水の勢いはどんどん増し、段々と鍋は一杯になって行く。
「すげー、此、一体何時迄出て来るんだ?」
「む、そ、そろそろ十分だぞ。手を放してくれるかのぅ。」
少し慌てた様子のスェズに止められてしまった。確かに鍋はもう水で溢れん許りに一杯だ。
「おっと悪い悪い、初めてしたからさぁ。」
手を放すと、雲華は随分小さくなっていた。
でも先の様子だと未だ未だ水は出そうだな・・・。
携帯用水分としては迚も優秀だ。一寸欲しい位。
「ぬ、初めてじゃったか。若しや御主達は・・・随分と遠い地から来たのかのぅ。」
一瞬皐牙の喉が詰まった。何て答えようか少し逡巡する。
「ま、まぁ然うだな。色んな所を旅してんだ。」
「ほぅ其は其は、良い旅をしておるなぁ。」
途端スェズは破顔し、にっこりと皐牙に微笑み掛けた。
「だったらしっかり精の付く物を食べんとな。急ぐ旅でもないのならしっかり食べて行きなさい。」
「ん、噫有難なじぃちゃん。」
良い旅・・・か、まぁ確かに然うかもな。
「儂も若い頃は色々していたが・・・ふむ、おいたも随分したからのぅ。でも、何も良い懐い出よ。」
「ふーん、じぃちゃん結構やんちゃだったのか?」
スェズから瓶やら壺を受け取り、少しずつ皐牙は鍋に足して行った。
・・・香辛料の良い香りがする。一体何の粉末だろう。
「ほほっ、然うだな。御蔭で世界中に子供は一杯居たぞ。」
「やんちゃって其方のやんちゃかよ。」
呆れて返しつつも、スェズは懐かしんでか随分楽しそうだった。
自然鼻歌も流れて来る。
「然うさなぁ、沢山居るが・・・皆元気にしとるかのぅ。」
「・・・会ってねぇのか?」
「うむ、もう何百・・・いや千年以上は会うてないなぁ。」
「セ、千年っ⁉」
一瞬振り返ったが慌てて皐牙は鍋に向き合った。
オレ、絶対此のじぃちゃんにからかわれてるな・・・。
あ、でも此のじぃちゃんしれっと雲華の上に一人で住んでるよなぁ。
其って何か仙人っぽいって言うか、凄い事とかだったり・・・?
つらつらそんな事を考え乍ら鍋を掻き混ぜる。
火加減には気を付けて・・・余り考え事をしていられない。
「良し、じゃあ後は此を足して行くぞ。」
然う言ってじぃちゃんは笊一杯のマカロニを鍋へ入れて行った。
一気に鍋の質量が増す、御中に溜まりそうなレシピになったな。
「ってかこんな喰うのかじぃちゃん!大食漢だな!」
「フォッフォッフォッ!何、食い盛りが三人も来たんじゃ、此位な。」
「あ、オ、オレ達にってか?何か悪いな、こんな御馳走になっちゃって。」
「こんな風に過ごせたのは本当久方振りなんじゃ、遠慮なんてするでないよ。」
スェズの目元はすっかり緩んでいて、本当に嬉しそうだった。
・・・そ、そんな風に言われると、照れちまうだろ。
ついスッと顔を逸らしてしまう、何ともむず痒い。
「うむうむ、良い具合だな。其の儘頼むぞ。」
「お、おう、任せとけって。」
何か調子狂うけど、ま、偶にはこんなのもアリなのかな・・・。
少し惚けた頭で然う結論付けて皐牙は鍋の中へ視線を落とすのだった。
・・・・・
彼から半刻程経ち、一同はテレパシー等で連絡を取りつつ、スェズの家へ帰って来ていた。
「今、戻った。」
「僕も戻りましたー何か凄く良い匂しますね。御蔭で直ぐ分かりました!」
雲華に隠れていたとは言え、匂は隠せない。
加えて皐牙が上げた焔から出た煙も良い目印になってくれていた。
「お、結構短時間で釣ったんだな。」
二柱が持っていたバケツには結構魚が入っていた。
驚く可き事にベールは大漁だ。
・・・どうせ坊主で終わると思っていたのに、釣りの才能はあるのだろうか。
此丈あれば四人で食うには十分だが、じぃちゃん捌けるのかな。
「ってか此魚じゃねぇ⁉」
「魚、飛ばない、違う、当然。」
「え、あ、いや、そーかも知れねぇけどさ・・・。」
明らかに魚じゃないんだよなぁ。
バケツに当たり前の顔して入れていたから騙され掛けたけれども。
何て言うんだろう、此の・・・うーん。
二柱は其々別の物を釣って来ていた。
ベールの釣って来た方は・・・未だ魚っぽいけどな。
何方かと言うと熱帯魚、金魚に近い。
其奴にベールやら蕾みたいな物が付いているのだ。
何とも鮮やかで、でも御中はぷっくり膨らんでいて、丸々としていて美味しそうだ。
此方は分かる、でも・・・、
ちらと鏡のバケツを見遣る。
其方には一つ目の化物が入っていた。
変わった姿をしているので説明し難いが、何となく蜻蛉に似ている気がする。
長く平べったくて波打つ甲に覆われた尾、翅の様に広げられた、一見鋏にも見える甲。
大きな一つ目の側面には髭が生え、びくびくと激しく振られている。
「こ・・・此、喰うつもりなのか?」
バケツの中に四匹程入っていた其が元気良く尾を振る。
オレだったら此釣れても直ぐリリースするなぁ・・・。
「釣り、楽しかった、満足。」
「いや釣りって遊びじゃなくて飯確保だからな・・・?」
「此処、美味しそう、だから大丈夫。」
然う言って彼は化物の一匹を持ち上げ、黔っぽい長く伸びた背甲を指差した。
「まさか炭に見えるからって意味か⁉そんな理由で御前は此を四匹も釣ったのか⁉」
思わず噛み付かずにはいられない、折角オレが美味しそうな物を作っていたのに、下手物を差し入れされるなんて。
「お、おぉようこそ、さて釣りの成果は如何かな?」
スェズも奥から出て来て繁々と二柱のバケツを見遣った。
「如何ですか?一杯釣って来ましたよ!」
「う、うむベール君頑張ったな。だが此は・・・、」
何やらスェズの顔色が悪い、此の魚と余りに対照的な色だ。
「如何したんだじぃちゃん。」
「うむ・・・その、言い難いのだが、此の魚は毒を持っていてな。食べる事は出来ないんだよ。」
ガーンッ!
と効果音が聞こえそうな程口を開けてベールは固まってしまった。
成程、然う来たか・・・釣れても此じゃあな。
「で、でも安心するんじゃ。其奴からは薬が取れる。其奴の蕾は腹痛を治す薬になるんじゃ。だから有難うな。」
「く・・・薬、ですか。」
折角張り切ってくれたんだろうに、其が薬だなんて。
気を落とすのも無理も無いが、皐牙からすれば、見知らぬ魚を釣って、全員食中毒になる位の未来が見えていたので未だマシな気もした。
一応、役には立ってるんだし・・・な?
取り敢えずスェズが其の毒魚を受け取ると、今度は鏡が見せに来た。
良く先のやり取りを見てそんな自信満々に持って来れるな、明らかに此奴のが食えそうにないけど。
こりゃあ昼飯後も魚釣りかな、そんな風に考えているとスェズが感嘆の声を上げた。
「おぉ!何と此奴は・・・高級魚だ!儂も滅多に食べられん一級品じゃ!其が然も、こんなに沢山!」
滅茶苦茶喜んでいた。
如何見ても化物な此奴が高級魚らしい。もう何処から突っ込めば良いか分からなくなって来た。
「え・・・其、喰えんのか?」
「噫、塩茹でにすると旨いぞぉ!こりゃあ御馳走だな。」
凄い嬉しそうだ。若返る程に旨いらしい。
実は誰も気付いていないが、此の釣り上げた二匹は龍族であり、ベールが釣ったのはラフニカ、鏡が釣ったのは螯蜓(ゴウテイ)と呼ばれる種だった。
龍種に因っては他の生物同様今回の様に食用となる者もいる。
今回釣られてしまった者達は食べられてしまうだろうが、神族に会えたので今後は好きな次元に行く事が出来る様になるだろう。
「何と言うか、まぁそんな事もあるな。」
そっとベールの肩を叩いてやる事にした。運で此処迄差が付くのは悲しい。
「うむうむ、二人共頑張ってくれたな。さぁ昼御飯にしよう。カーディ君の手伝いの御蔭で良く出来ておるのでのぅ。」
余っ程嬉しかったのかうきうきとスェズは奥へ入って行った。
じぃちゃんに悪気は無いのだろうが・・・まぁ仕方ないな。
一同は部屋に入ってテーブルに其々着く事になった。
部屋ではもう良い匂が立ち込めている。皿を並べてスープを注いで行った。
「部屋、面白いっ!」
「あ、そっか御前初めてか。」
鏡の目がキラキラとし、時々眼鏡を外して辺りを見ていた。
「外も凄いゼ、絶景だったし。」
「外・・・高い景色、見慣れてる、良い。」
「ん?・・・えっと御前って確か神様だったっけ。」
「?皆神、違う?」
「あ、いやえーっと元々の次元って事で、」
ちらちらとスェズを見遣り乍ら聞いてみる。
神とか話してたらやばいからな。ま、じぃちゃん耳遠そうだけど。
「是、ずっと旻、住んでた。」
「ふーん、成程な。」
見慣れてるなら見たくはないか。
鏡にとってはそんな景色よりも、スェズの家の方が気になるみたいだった。
「ん、あれ、然う言えば部屋の色変わってる?何か・・・橙っぽい様な・・・?」
「ほっほっ、そりゃあ中で料理したからのぅ、匂や煙で色が付いたのだろう。」
「あ、然うだったのか。ずっと居たから気付かなかったな。」
言われて確かに部屋全体が暖色になっている気がする。
色付くって言うのだろうか、何だか面白い。
全員席に着き、各々スープに口を付けて行った。
「あー良い味してんな此、」
一回味見もしたんだが、其の時より煮詰まっているからか、味が濃くなっていて美味しい。
一見トマトスープの様な色合いだが、出汁のしっかり効いた肉煮込みスープの様な味だ。
マカロニとの相性も良い。直ぐ平らげて行ってしまう。
「おぉ、良い食べっぷりじゃな、どれ・・・うむ、良い味じゃ。」
スェズも満足そうだ。後の二柱の口にも合ったらしく、ガツガツと食べている。
「此、凄く美味、良い。」
「へぇー、炭以外でもそんな喜ぶのか。」
「苔よりも美味しいですね!」
「何だ此の下手物同好会は。」
何か余り褒められている気がしない。
だがスェズはそんな二柱の様子を嬉しそうに眺めていた。
「皆随分腹を空かせていたんだなぁ。さぁもっと御食べ。」
御代わりもどんどん注いでくれる。一杯作って置いて良かったな。
「でもじぃちゃん魚は如何するんだ?流石に此の後喰わんだろ。」
「うむ、魚は夕飯だな。いやぁ今日は御馳走許りだなぁ。」
何とも満足そうにスェズは微笑んでいた。今から楽しみらしい。
「そっか。霄彼喰うのか・・・。」
如何見ても魚ではない化物だけれど・・・喜ぶなら良いか。
「うむうむ、勿論皆も食べるだろう?腕に縒りを掛けるぞぉ、何せ儂の大好物だからな。」
「え、良いのか?まぁじゃあ御邪魔しようかな。」
何丈留まるか分からないけれど、提案は嬉しいかな。
「喜!炭、食べる!」
「多分彼は炭じゃねぇけどな。」
先の化物の甲の事だろう、彼を食べたいと言う心理がもう理解出来ないけれど。
「じゃ、じゃあ御世話になります。」
「良し良し、所で皆随分と遠い所から来たのかのぅ、魚も知らないし、儂も其方達の様な衣服を纏った者は見た事が無いが。」
「ま、然うだな。可也遠いいと思うゼ。」
「ふむ、然うだなぁ、そんな所もあるのだなぁ。」
沁み沁み考え乍らスェズはスープを啜っていた。
「スェズ、昔から此処、居る?」
「ん?いやぁ昔は色んな所、其こそ世界中を見て来たよ。・・・と思っていたのだが、未だ知らない事は多そうだなぁ。」
「世界中って、其で色々楽しんだ訳か?」
茶化す様に皐牙が言うと、スェズは大口開けて笑い出した。
「然うじゃ!懐かしいのぅ、儂も昔は元気だったのじゃよ。」
「でも、今も屹度一人暮らしですよね。自給自足だなんて凄いですよ。」
「ほっほ、別に食事も釣りも、趣味みたいな物だがなぁ。」
雑談しつつも皐牙は別段危機を感じなかった。
店主が此の次元で何をしたのか知らないが、此の次元の主導者が困っている様には見えない。
別に魚が釣れないからって次元が滅んだりはしないだろう。だとしたら・・・一体何があったのだろう。
じぃちゃんが老衰する迄見ろって訳じゃないだろうし、もう一寸様子見るか。
そんな風に頭で整理して、皐牙はスープを掻き込むのだった。
・・・・・
一同が食べ終わり、片付けも済ますと、スェズは手を叩いた。
相変わらず元気そうで終始ニコニコである。孫が来ている様な心地なのだろうか。
「さぁもう今日はやる事も済んだ、皆の御蔭じゃな。良かったら夕飯も御馳走しよう、如何かね?」
「彼の魚、食べたい!」
「おぉ、食い維持張ってんな。ま、オレも良いけどよ。」
「僕も、あんなのしか釣れませんでしたけれど・・・。」
家には先ベールが釣って来た毒魚達が干されている。十分乾いたら蕾から薬の成分になる花粉を取り出すそうだ。
「薬一杯、健康!」
「そ、然うですね。有難う御座います。」
「うむうむ、然うじゃぞ。在庫も丁度切らしていたしのぅ!」
数日前此の魚が大量に釣れて、在庫が売れる程ある事をスェズは笑って誤魔化した。
「其処でじゃ、時間もあるし、散歩序でに此処等の案内とかもしたいが、如何かな?」
「お、其なら行くゼ。オレも暇してたし。」
此はラッキーだな。何か手掛かりとかあるかも知れねぇし、丁度良い。
「是!色々見たい!」
誰も異論を言う筈も無く、一同は其の儘スェズに連れられて外へ出た。
陽が若干陰りつつある様だが、相変わらず旻は高く広い。
矢張り一面雲華しかない気もするが、何処を案内してくれるのだろうか。
「なぁじぃちゃん、此処って雲華以外何があるんだ?」
「んん、難しい事を聞くのぅ・・・雲華だから、雲華があるんじゃよ。」
「あ・・・然う言う事ね。」
何か分かってしまった。今からじぃちゃんが何処へ案内する気なのか。
ま、こんなの時間潰しだし、適当に付き合っとくか。
蒼と皓の境界に向け、一同は足を向けるのだった。
・・・・・
本当に雲華しかなかった。想像以上に雲華しかなかった。
「此処が雲華の蕭森じゃよ。」
「へぇー。」
「此処が雲華の塔じゃよ。」
「へぇー。」
「此処が雲華の洞窟じゃよ。」
「へぇー。」
本当に雲華しかなかった。
正直色んな形の雲華を見た丈である。
確かにオレの知る雲華とは少し違っていて、色が付いていたり、硬さがあったりしたけれども、雲華は雲華である。
途中で自分は見飽きてしまったが、鏡は興味津々と言った所でじっくり見入っていた。
大分歩いたが、ちゃんと家に帰れるのだろうか、そんな風に思い始めた矢先だった。
「お・・・おわーっ!」
ぼーっと旻を見ていると巨大な魚の様な物が泳いでいるのが見えた。
彼こそ魚だ、巨大な鯉みたい。
全身30m程で、獅子の様に鬣が首周りに生えている。背は漣の様に波打ち、一際大きい漣は皓い水鏡の様でもあった。
尾の鰭は華の様に複数が絡まり合い、対して手の鰭は薄く広いベールの様に伸ばされていた。
其の生き物は緩り弧を描く様に旻を自由に泳いでいた。
一見温厚そうだが如何だろうか。自分達より遥かに大きいが。
見付かっても不味い気がする、そっと皐牙はスェズの服の裾を引っ張った。
「オ、オイ何か飛んでっけど彼何か知ってるか?」
「んん?噫彼なら何時も飛んでいるよ。」
別段彼は驚いていない様だ。遅れて気付いた二柱も声を上げる。
「じゃ危なくないのか?」
「フォッフォッ、大きい丈じゃよ。先ず近付いて来ん、安心せい。」
「そ、然うなのか・・・。」
心做し、此方を見ている気がするけどな。
チラと見遣るとばっちり目が合った気がした。
そして緩りと泳いで全身で此方を見る。
「・・・・・。」
そして見詰め合う事数秒、突然其の魚は此方に向けて突進をして来たのだった。
「・・・っ⁉」
余りにも大きいので距離感が今一伝わらなかったが、確実に大きくなって来ている。
こ、此明らかに狙ってるよな、狙って来てるよなっ!
あんな巨体で突進なんてされたら避けられたとしても雲華に大穴が開いてしまうだろう。
呑まれるか、落ちるか、皐牙は咄嗟に雲華の洞窟へと飛び込んだ。
「ど、如何したんですカーディさん、そんな入りたかったんですか?」
「ちげーよ!バッカ上見ろ!やべぇ奴が来てるって!」
「え、う、うわぁあぁあ!」
ベールも見上げて気付いた様で足が震えてしまったのか大きく転けてしまった。
彼奴はもう駄目だ、後の二柱を助けよう。
「スェズ、危ない。緩り入る。」
鏡も先に察してくれた様でスェズの手を引いて洞窟へ入って来た。
「此方に来る事なんてなかったのにのぅ・・・ぬ、おぉベール君!」
腰が抜けて倒れた儘になっていたベールに気付き、スェズが手を伸ばした。
「危ねぇってじぃちゃん、先ずは此処に隠れて、」
旻からじゃあ丸見えだったろうが、洞窟内の方が未だマシだろう。
と言っても洞窟も雲華で出来ているのだからふわふわで、防御力なんて皆無だけれども。
いざと言う時はオレの焔で焼き魚にしてやるっ!
グッとグローブを強く握り、皐牙は洞窟の外を見遣った。
ベールも覚悟は決めた様でそっと迫り来る魚を見ている様だ。
少しずつ周りが冥くなって行く、彼の魚が来た証だ。
「くぅっ、ベール君を襲おう物なら儂が赦さんぞ!」
怒り顕にスェズの髪がざわざわと逆立って行く。
纏う気配もビリビリと雷を伴う様だ。
「オ、オイオイじぃちゃん無理はするなよ・・・?」
慌てて皐牙が止めに入った。何だか良くない気配がする。
じぃちゃんが魔術を使える、と言うのはまぁある事だろう。でも、
何と言うか暴走しそうな勢いだった、雷属性って皆斯うなのだろうか。
じぃちゃんからしていたバチッバチッと火花が散りそうな気配は止んだ。
如何にか、冷静にはなってくれたみたいだ。
「し、しかしベール君が、」
「オレがしっかり助けてやるって。」
先ずは相手の出方を見て、そして・・・。
息を呑んで身構えていると、遂に其の魚がやって来た。
だが其の儘突進はせず、急停止してベールの事を見ている様だった。
ベールも恐がっていた様だが何とか立ち上がった。
「え、えーっと・・・、」
そしてちらちらと此方を見遣る。一先ずは安全そうだ。
「大丈夫なのかよ。」
「何とか・・・何もして来ないですし、」
そっと洞窟から出てみた、すると視界一杯に彼の魚が写り込む。
ドキッとして息が詰まりそうだったが、何とか堪えた。
如何やら魚は只じっとベールを見ている様だった。
そして続いてやって来た皐牙にも視線を寄越す。
「オ、オイ何の用なんだよ魚野郎。」
皐牙の声にビビった訳ではないだろうが、魚はぴくっと上体を動かした。
「わぁ、矢っ張り本物デスネ!」
「へ、あ、しゃ喋ったのか・・・?」
魚の口が動き、コポコポと泡が出て来た。
そして其の泡が弾けると、そんな声が聞えて来たのだ。何処か無邪気さのある声で。
「ってか本物って何だ?何の話だ?」
ある考えに行き着いて皐牙はそっと時空の穴からスカウターを取り出した。
龍古来見聞録が見られる奴だ。正直斯う言うの余得意じゃないけど。
そっと掛けてみると・・・一つ該当があったみたいだ。
えーっと・・・なぷなす?変な名前だな、えっと・・・、
“飛属性、水鏡の浮かぶ瀛海を背負っている事から生ける神話等と呼ばれる事もある龍。又ある地方では瀧を上り切った鯉であるとも言われ、宙を泳ぐ様は優雅で、大胆さもある。物事に非常に敏感で、其が転じて噂好き。一部の個体は其の噂好きが高じてテレパシーと泡を組み合わせて話す術を得た者もいる。”
ふーん・・・要は大きな鯉って事か。何か心配して損した。
じゃあ此奴の言っている事って・・・、
「君達、次元龍屋の神様達デショ?スゴーイ!僕が一番乗りだ!何だか聞いていた話と似た神様達が来たから若しかしてって思ったんだケド、感激ダネ!」
「お、おう?」
まさか其方方面から来られるとは。
其にしても店知ってる奴居たんだなぁ、然う言われると一寸むず痒い気がする。
でも今其の話は不味い、じぃちゃんに変な目で見られてしまうだろう。
「あ・・・若しかして龍、だったんですか?」
ベールもぽかんと口を開けて見詰めた。だとしたら転び損である。
「ウン!なぷなすって言うの。次元龍屋って言う僕達を助けてくれる店があるって聞いて、会いたいなぁって思ってたんだぁ。かっこいいらしいって聞いてたカラ!」
「まぁ然う褒められちゃあな。如何にもオレ達が次元龍屋だゼ!」
つい元気良く返事してしまう。まぁ悪い奴じゃあなさそうだしな。
「ワァ!凄い凄い!」
対してなぷなすも持ち上げ続けるので、皐牙は満更でもなかった。
「と・・・取り敢えず良かった。」
二柱が談笑しているのを見てスェズ達が洞窟から出て来た。
気付けば鏡の手には炭が握られ、彼は黙々と其を齧っていた。
洞窟で見付けた宝なのだろうが、如何して雲華の上に炭があるのかはもう考えない様にした。
「大丈夫?二柱共。」
「噫、此奴なぷなすって言う龍だったゼ。オレ達の事も知ってるってさ。」
「ほぅほぅ、知っているとは如何言う事なのだ?君達は只の旅人じゃあないのか?」
「ア、然うなんだよ御爺さん!此の方達は神様で~、」
「オ、オイ余計な事言うなって!」
慌ててなぷなすの口元、出て来る泡を潰したが、寧ろ其処から音が出て来た。
「次元龍屋って言う凄い神様が一杯居る所に居るんだよ!」
「ほぅ!成程なぁ。」
「納得するのかよ!」
ついつい突っ込んでしまったが、とんでもない事になった。
い、いやでも流石に鯉の戯言だ。普通は信じないだろう。
もう良いじぃちゃんなんだから遊びに付き合う位はしそうだ。
「して其の次元龍屋と言うのは凄い所なのかな?」
じぃちゃんは悪ノリのつもりなのかなぷなすに詰め寄った。なぷなすも御喋りがしたいのだろう、じぃちゃんに向けて大きな口を開く。
「そりゃあ勿論!世界を壊した凄い神様と、僕達のハートを簡単に射止めちゃう凄い神様と、目が六つもあって、口からビームとか吐いちゃう破天荒な凄い神様が居るんだよ!」
其全部店主だ。
心の中でのみ皐牙は突っ込んだ。良し、何とか抑えたぞ。
でも此奴良く知ってるな。ってか喋り過ぎだ、如何してくれる。
思った以上になぷなすが情報を持っていたので内心焦る皐牙である。
只、対するスェズは眉一つ動かさずに聞いていた。流石じぃちゃんだ。
「ほぅ、其は凄いのぅ。」
「デショ?僕も生で会えてとっても嬉しいよ!ネ、ネ、今御仕事中ナノ?」
見た目の割に随分友好的ななぷなすはグイグイとやって来る。
つい皐牙達は一歩下がった。丸呑みされそうな程大きな口がパクパク開くのは恐ろしいのだ。
「仕事中、だから。邪魔、駄目。」
炭喰ってる奴には言われたくなかっただろうが、鏡がそっと去なしてくれた。
ま、こんな事で障害になっちゃあ困るもんな。
「仕事、と言うのは一体何なのじゃ?」
「ア、其はネー!」
其でもなぷなすはめげない。
話し相手が出来て嬉しいのか元気一杯だ。
「何でも屋ダヨ!だから僕達を助けてくれるし、御爺ちゃんも困ってる事あったら助けて貰いなヨ!」
「成程のぅ、だからこんなにも手際が良いんじゃな。天晴じゃ。」
「あ・・・あ、えーっと・・・、」
ベールが如何しようかとちらちら此方を見遣る。
確かになぷなすの事を止めたいけれども、下手に止めた方が怪しまれるだろうか。
其に何故かじぃちゃんは受け入れているのかしっかり話しているし・・・冗談に乗っている丈、にしては何かなぁ。
何とか適当に話を付けて終わらせたいけれど、如何した物か。
「色々教えてくれて有難うのぅ。」
「ウンウン!此方こそ会えて嬉しかったヨ!ヨーシ!皆に自慢しようっと!」
然う斯うしている内になぷなすは口早に話し終えるとサッサと飛び去ってしまった。
自由な物である。話す丈話して帰りやがった・・・。
まぁでもじぃちゃんは面白半分で聞いている感じだったし、大丈夫だよな。行き成り神様だとか言われて信じる奴はいねぇよな。
別に大して驚いた風でも無いし、うんうん。
何度も頷いて皐牙は自身を納得させていた。
「なな、じぃちゃん驚かせちまって悪い!大丈夫だったし、さっさと先行こうゼ。」
「ぬ、うむ・・・然うさなぁ。」
「然うですよ、えっと、僕他にも色々見てみたいですし。」
「・・・多分、全部雲華だけどな、見る物って。」
「雲華面白い、もっと見たい。」
「フォッフォッ!然うさな、うむ。じゃあ行こうか。」
スェズは何か少し考え込んでいた様だが、直ぐ顔を上げると又、歩き始めるのだった。
・・・・・
「ほ、本当に反省しているので赦してくださいぃ・・・。」
悲しい位情けない声を出してセレは土下座をしていた。
ベールが良くする奴であるが、自分の足では可也難しいポーズだ。
加えて今は片足が無いので猶の事である。安定も何もない。
下手なトレーニングより、躯に負荷を感じる・・・。
そんなセレの前では堂々と立つ丗闇とガルダ。
二柱は波紋で見るのも恐ろしい程の形相で自分を見詰めていた。
「御前は反省をしても後悔しない奴だからな。赦す赦さない以前の問題だ。」
「っぐ・・・、」
良く分かってらっしゃる・・・全く其の通りだよ丗闇。
ソルドとのバトル中は一切口を出さなかった癖に。しっかり見ていたんじゃないか。
帰って来るなり此だもんな・・・恐らくガルダが待ち構えていたから丗闇が事前にテレパシーで伝えていたんだろう。
其からは寝ずの大反省会である。全然解放してくれないのだ。
「分かったかセレ、もう次こんな無茶しないって言えるか?」
「誓える!誓えます!誓わせてください!」
「嘘だな。おい未だ逃がすなよ。」
「まぁ・・・だろうなぁ。」
苦笑いをするガルダ、残酷過ぎる。
分かってやってるだろ此奴等、絶対何言っても此の反応だっただろう。
「・・・正直、怒られる位流石に此奴も分かっていただろう。だったら・・・其方が趣味か。」
「いや、其はないから。」
ソルドに大怪我負わされて克帰ったら説教で二度美味しいとか終わっているだろう。
むっと睨んでいると何とも挑発的な目を丗闇から返された。
「然う思われたくないのなら少しは自分の身を弁えろ。」
「ぐぅう・・・。」
駄目だ、此処で歯向かったら丗闇の思う壺だ。
堪える様に歯噛みしつつ唸るセレにガルダは一つ溜息を付いた。
まぁ此でちゃんと反省したらこんなにセレは手間が掛からないんだけれどな。
とは言っても自由にさせる訳には行かないのでもう暫くは此の儘だろう。
「・・・取り敢えず此奴の足が治る迄は此の儘だな。」
「え、嘘、足再生する迄正座なのか⁉」
流石のセレも顔が青くなった。でも丗闇は何処吹く風だ。
ちらちらと今更乍ら足を確認していたが、流石に大分先だろう。ばっさり無くなってるからな。
「治る迄絶対安静なのだから当然だろう。」
「正座は安静じゃないよ!」
「煩い安静にしろ、黙れ。」
「っぐぐ・・・、」
自由奔放が売りのセレでも丗闇には勝てない。加えて冗談が効かない彼女だ。マジなんだと気付いたのだろう。
セレの長い隔離生活が始まるのだった。
・・・・・
「なぁじぃちゃん、今度は何処向かってんだ?」
相変わらず雲華しかない景色の中、鏡を除く一同は歩き続けていた。
鏡は既に飛んでしまっている、黙って歩く事が苦手な様だ。
そして何故入手出来たのか分からない炭を齧っている。先の洞窟内に滅茶苦茶落ちていたらしい、未だ食べている。
ガジガジと齧って零れた黔い粉が点々と道標の様に残されていた。
「うむ。・・・然うなのだが、」
何とも歯切れ悪そうにスェズは言う。
おかしい、先迄意気揚々と案内していた癖に。
「じぃちゃんまさか道に迷ったとかじゃねぇよな?」
「ぬ、い、いや違うんじゃ。只その・・・うむ、主達に一つ頼みたい事があるんじゃ。」
「?何ですか改まっちゃって。」
「其は・・・、」
「!大きい炭、発見!独り占め、出来る!」
突然鏡が大きな歓声を上げ、両手を上げて喜んだかと思うと一気にスピードを上げた。
そして前方へ向け、素っ飛んで行く。
「大きな炭・・・?ぬ、いかん!鏡君待つのじゃ!其は炭じゃないぞ!」
慌ててスェズが大声を出すと辛うじて聞こえた様でぴたりと鏡の動きが止まった。
でも行きたくて堪らない様でうずうずしている。眼鏡の奥の瞳も輝いていた。
安心しろ、例え炭だったとしても誰も取らない。元より御前の独り占めだ。
スェズが少し足を速めたので続くと、確かに遥か先に黔い樹の様な物が僅かに見えて来た。
確かに一見樹が其の儘炭になった様にも見えるが・・・一体何だろうか。
「炭違う?彼何?」
何とかスェズが追い付くと鏡は首を一つ傾げた。
けれども流石に今の速足は老体に堪えた様で、大きくスェズは息を付く。
「う、うむ、彼は、何か良くない物なのじゃ。或る日天から堕ちて来てのぅ、零星の欠片が堕ちて来る事はままあったが、彼は何やら少し違う様なのじゃ。」
「零星の欠片って、流れ星の事ですかね?」
ベールの問いにスェズは小さく頷く。
・・・何か嫌な予感がして来たな。
「然うじゃ。最初は儂も余り気にしておらなんだったが、次第に大きくなってのぅ・・・初めは彼でも小指の爪位のサイズじゃったのじゃ。」
「成長、してるってか?」
石が育つなんて聞いた事がない。じゃあ彼は生物か何かなのだろうか。
黔い零星・・・何となく店主を連想させるんだよなぁ。
「でも良くない物って具体的に如何言う事なんだよ。」
「其が、彼に近付くと襲われてしまうんじゃよ。非常に狂暴じゃ。雲華を斬り離しても良いんじゃが、彼が地上に堕ちると、其こそ不味い気もしてな。困っておったんじゃ。」
「襲って来るって、益々生き物っぽいよな。」
多分此って・・・店主の何かって事だよな?
もう何て言うか其しか考えられない、黔くて狂暴ってのがもう。
念の為龍じゃないかそっとスカウターを掛けてみたが、違う様だ。該当が無い。
でも彼、店主の何なんだろうな・・・。
「儂の知らん地から来た其方達なら或いは・・・と思っていたが、其方達でも知らんか。」
「うーん・・・一寸待ってろよじぃちゃん。」
そっとベールの肩を叩いた。少し相談だ。
「・・・なぁ、彼だよな。屹度やばいのって。」
「う、だ、だと思うけど・・・。」
「彼、炭じゃなかった。彼何?」
「其な。店主の術か、何かだと思うけど。」
甲とか・・・爪とかかなぁ。抜けても成長するとか知らないけど。
「壊した方が・・・良いんですよね?」
「お、良いじゃん其の意気じゃん。ぶっ壊しゃあ良いんだろ!」
元気な皐牙の声に思わずスェズの背が少し伸びた。
「まさか皐牙君、彼を壊す気なのか?」
「おおよ。だってじぃちゃん困ってるんだろ?じゃあさっさと壊しちまおうゼ。彼以上大きくなったら其こそ手に負えなくなるだろ。」
「然うじゃが・・・しかし気を付けよ。彼は本当に危険じゃぞ。危ないと思ったら直ぐ戻らんと。」
「分かってるって。まぁ見てなって。」
そりゃあこんな足がとろいじぃちゃんにとっては危険だろうが、オレ達は神だゼ?
一発殴ってバコーンだって。壊しちゃえば良いなら楽な話だ。
「んじゃオレが行くゼ!」
「皐牙、頑張る。」
「い、一気にやっちゃってください!」
二柱に応援される中皐牙の右腕が激しく燃え上がった。
偶には全力で殴り合ってみたいし、オーバーフローでやってやる!
焔に包まれた腕は何倍も大きく燃え上がり、じりじりと熱が肌を焼く。
そんな中、皐牙は右手のグローブを外した。こんな焔の中だ。蜥蜴の腕なんて見えやしねぇ。
焔の下で甲が黔く煌めき、輝きが増した様にも見える。
此の焔が好きだ。只燃える丈じゃなくて、咬み付こうって気概を感じる焔がっ!
「おぉー、皐牙かっこいい。」
「だろ、野郎に惚れられても御免だがな。」
「炭みたい、手、かっこいい。」
「其方かよ・・・。」
一瞬気持が萎え掛けたが関係ない、大きく腕を振り上げた。
「よっしゃ行くゼェェエエ‼」
地を蹴り、一直線に駆け出す。
何かされる前に潰せば良い、・・・と言うか樹に目とかあるのか分かんねぇけど。
樹の目前迄駆け寄り、渾身の焔を叩き込む。
「っだりゃあぁあ‼」
堅い甲から繰り出される拳は樹を砕き、表面を罅割れさせた。
幾らか抉れて削がれたが、思ったより堅い。樹じゃねぇみたいだな・・・。
焔で燃える事も無いみたいだが、でもダメージは与えられているんだ。此で攻めれば良いだろう。
もう一度腕を振り上げた時、樹の内側がもぞもぞと動いた気がした。
何か嫌な予感がする、生理的悪寒に手が止まってしまう。
其の一瞬の隙を突いて、其は現れた。
罅から続々と、蟹の様な鋏を持った甲虫が出て来たのだ。
全体的に黔っぽく、尾の先には鋭い棘がある。手にしている鋏も左側丈が異様に長く尖っており、まるで釼の様でもあった。
一匹一匹は5cm位のサイズだが、中々堅牢そうだ。
「う・・・うぇえぇえ‼」
余りの気持悪さに大きく引いてしまう。樹の表面にみっちりと其奴等は出て来たのだ。
「む、皐牙君危ない!離れるんじゃ、襲われるぞ!」
「狂暴なのって此奴等かよ!」
焼いてやろうかと思ったが、流石に気持悪かったので其の儘一旦下がる事にする。
虫達も威嚇のつもりなのかジャージャー鳴いているし、賢明だろう。
「な、何だよ彼!」
「じゃから儂も困っているんじゃ。あんな虫見た事ないしのぅ。」
「石と一緒に来たって事は・・・宇宙人、とか?」
「宇宙虫か?んーまぁなくはないだろうけど。」
魔術の類じゃない、生きている。
でも何処から来たんだろうな・・・店主の甲か何かに文字通り悪い虫が付いたって感じなのだろうか。
皐牙が離れると、出て来た虫達は口から泡の様な物を吐き、地面、雲華へと降りて行った。
そして雲華を齧って千斬ると、其の欠片を樹に付けて行く。
上から泡を掛けて固定している様だ。樹の隙間にも入れている辺り、修復させている様にも見える。
「彼の樹みたいなの、奴等の住処なのか?」
「成程のぅ、だから壊れたら怒るのか。」
「何処から来た、分かれば、連れて行ける?」
「戦わずにってか?其は一寸難しくねぇか?」
抑害虫みたいな物だし、潰せば良い気もするけど。
ま、奴等も好きで此処に来た訳じゃねぇかも知れねぇし、其もありか?
「一寸、聞いてみる。」
「あ、オイ一柱で行くなよ!」
ふわふわと鏡が虫達に近付いて行くので自分も続く。
ベールはじぃちゃんを護ってくれるみてぇだけど、御前だと一寸不安なんだよな・・・。
「君達、何処来た?話せる?」
早速ベールは虫に声を掛けてみる。
・・・龍族じゃなさそうだけど、如何なんだろうか。
「ギ・・・外、カラ来た。」
「外?此処、外、違う?」
「モット外、欠片ニ付いて来た。」
「いや話せるのかよ・・・。」
虫の何匹かが鏡に気付き、鋏を振り上げて答えた。
「でも外って言うと次元外って事じゃねぇの?」
「次元外?・・・仲間!」
こんな蟹とも虫とも知れねぇ奴・・・一体何なんだ?
神・・・いや、流石に神じゃねぇよな?虫神ってのがいるか知らないけど。
でも神でも龍でもなくてそんな次元渡れる奴っていたっけ。
何て言うか、一寸嫌な予感がすると言うか。
「君達ハ、何?」
じっと虫が此方を見て聞いて来た。
言葉を覚えたてで話すみたいなたどたどしさ。けれども視線は鋭くて。
敵意を感じない筈なのに、何だか不思議な気分だ。近付いちゃいけない警告と言うか。
「何って・・・えっとオレ達は、」
何とも答え難い。うーん、答える側になるとこんな難しい質問になるのか此。
「神、だけど、神族って分かるのか御前等。」
一応スェズには聞こえない筈、それなりに距離もあるし、念の為な。
「神、知ってる。神、家、壊すのガ好きナノ?」
「あ、えっと、悪かったって行き成り壊して。」
出会い頭にやっちゃったもんな。此の樹が彼等の家って事なのだろう。
でもじぃちゃんも狂暴だって言ってたからな、まさか話せる奴とは思わなかった。
「神、壊すノ好きナノ?」
でも虫は同じ事を聞いて来た。何か突かれるの嫌だなぁ・・・。
「好きって訳じゃねぇよ、別に。」
樹に泡を詰めていた虫達の動きが止まった。
皆、オレを見ているみたいで・・・一寸恐い。
「好きじゃない?好きじゃないノ?」
「何で、如何シテ?」
「仲間ジャナイ、違うって。」
「如何してナノ?そんな事言えちゃうノ?」
虫達の声が一瞬、止んだ。
「壊さなキャ、愛シテ貰えないのに。」
途端一斉に彼等は背の甲を震わせた。
すると其処から鈴の様な音が流れて来る。
初めはばらばらだった其の音が、次第に一つへと重なり合って行く。
其の音へ鋏の打ち鳴らす音を、尾の棘を叩き付ける音を。混ぜて行く、一つの曲の様に。
綺麗とも取れる音の繋がりだったが、何処か無機質さもあり、聞いている丈で緊張感が走る様だった。
「此奴等・・・一体何なんだ。」
何か絶対やばい気がする、此奴等、普通じゃない。
「僕達ハホウマツ、ウタカタの夢を紡ぐ者。」
「僕等ハ出来損ない、上手に出来なかった、創れなかった。」
「殺せないナラ、壊すしかない。」
「壊すしかない、壊すしかない、其丈ガ唯一ノ、」
「僕等ノ意味だ。」
此奴等は・・・敵だ。
本能が然う警告した瞬間、ホウマツ、と名乗った其の虫達は突然皐牙達へと飛び掛かった。
「ぬぅ!皐牙君、鏡君、下がるんじゃ!」
同時に上には雲華も無い筈なのに光り、雷が降り注がれた。
其は飛び掛かったホウマツ達に命中し、四散する。
「え、えっと今のは・・・、」
「早く下がるんじゃ。言ったであろう、奴等は狂暴なのじゃ。」
「わ、悪いじぃちゃん助かった。」
今の、じぃちゃんの雷か?・・・何で雷遣いって皆勁いんだ?
兎も角下がらないと、相変わらずふわふわ飛んでる丈の鏡の服の裾を掴んだ。
「オイ行くぞ。」
「是、悲しい。でも、仕方ない。」
鏡は少ししょんぼりした様子で下がって行った。
其の間もわらわらとホウマツ達は樹から出て来る。・・・一体何丈居たんだ。
じぃちゃんの雷が命中した奴は其の儘絶命したみたいで、より黔くなって焦げ臭い臭丈発して固まってしまった。
只絶命しても泡は吐くみたいで、じぶじぶと泡丈が溜まって行く。
そんな仲間の死体には目も暮れず、ホウマツ達は威嚇を始めた。
「じぃちゃんも何時も斯うなのか?」
「うむ・・・只儂は抑話した事がなかったからのぅ、其でも余り意味はなかったか・・・。」
「そっか、うーん、斯うなったら全滅させるしかないか。」
「害虫駆除って事ですか・・・。」
「そ、然うだけど何かえげつない言い方するなぁ。」
駆除って、まぁ実際然うなんだけど、そんなはっきり言われたくない。
「え、あ、然うです?僕何時もダイヤにされてますけど・・・?」
「そ、そっか。」
闇を聞いた気がする。此はいけない奴だ。
「兎に角、戦わないと、駄目。」
「うむ、然うさな。良かったら手を貸してくれるかのぅ、先の焔も良かったぞ。」
「ん、噫良いゼ。」
狂暴だけどそんな勁い虫って訳じゃなさそうだし。
此処で全滅させて・・・そしたらじぃちゃんも安心出来るかな。
ホウマツは泡を吐き続けるが、下がる気は無いらしい。
「じゃオレ又一番槍で行くゼ!」
焔を纏った儘だ。此で片っ端から殴ってやる。
一寸可哀相な気もするけど仕方ねぇだろ、此処に来た御前達が悪いんだ。
飛べる丈の奴と不幸の申し子とじぃちゃんパーティだし、オレがやらないと。
「だりゃあぁ‼」
拳をしっかり握って殴り掛かる。
一匹一匹は小さいし、気を付けてやれば問題ない筈だ。
焔が躍り、虫を黔焦げにして行く。
此奴等固てぇな、潰せないけれど、でも焼けば十分だろ。
一匹ずつ処理していると行き成り雷が降って来た。
突然の事についビクッとしてしまうがじぃちゃんの力らしい。
一撃で結構な数やってんな・・・威力が半端ない。
「ってかじぃちゃん加減しろよ、そんな撃って大丈夫な物なのか?」
「ぬぅ、実は狙うのが儂は苦手でな・・・皐牙君に当たらないか心配で・・・、」
じぃちゃんは疲れてはいない様だったが、苦心はしている様だった。
勿論オレに当てて欲しくはねぇけど、問題は其方じゃなくてさ。
「其もだけど魔力は大丈夫かよ、無理すんなよ。」
「其方は大丈夫じゃよ。嵐でも何でも起こせるぞ!」
まーた出たよじぃちゃんの法螺吹き。
・・・ま、冗談言えるなら元気だよな。もぅ良い、聞く丈無駄だ。
「じゃ御前はじぃちゃんを護ってろよ。あ、でも術は使うなよ!躯で護れよ!」
「え!何でですか!僕だって力はありますよ!」
やる気はある様だがベールの其は危険である。
宙属性だなんて如何にも運が左右しそうな奴だしな。
・・・まぁでも只護れってのも酷かな。
「んーじゃあ術使う時はじぃちゃんの外でしろよ、其なら良いゼ。」
「分かりました、頑張ります!」
目をキラキラさせて意気込むベール、任されて嬉しい様だ。
目出度い奴と言うか、ま、良いけどさ。
「皐牙、チャンス。」
「ん、おぉ、何やったら斯うなるんだ・・・。」
鏡が指差した所で、気付けばホウマツ達が団子状に絡まってしまっていた。
鋏ががっちり噛み合ってしまった様で、全く動けない様だ。
「追い掛けられて、逃げたら、気付いたらなってた。」
「流石強運。」
逃げてる丈で敵を一網打尽である。
焔の拳を其の塊へと叩き込む。
しっかりと命中した拳は虫達を焼き切り、一気に片付いた。
其でも未だ虫は樹から出て来る。正直限がない。
「ったく何時迄出て来るんだよ!」
「あ、じゃあ僕行きますっ!」
集中する為かベールが両手を前に出して集中する。
「おぉ・・・何か大きな魔力を感じるぞ。」
「じぃちゃん一応離れとけよ。彼奴色々とやべーからな。」
魔力は確かにすげーよ、大魔術だろうって気がする。
でも術者が此奴だからな、うん。
「行きますよ!・・・え、」
発動して直ぐ、其は起こった。
虫の死骸がカタカタと動いている。・・・いや、生きてる奴の動きも変な気が。
そしてズルズルと、ベールに近付いている気がする。こ、此は・・・、
「ヒ、ヒィイィイイ‼」
そして突如虫達はふわりと浮かび、ベールに向かって飛び掛かって行った。
飛び掛かると言うより此の動きは・・・引き寄せられている?
「ど、如何して皆僕の所にぃ!」
「其が御前の術なんだろ。」
如何やらベールを中心に周囲の物が引き寄せられる効果の宙が発動した様だ。
ベールに容赦なく虫の雨が降る。
「いだっちょっ!い、いやグロい!気持悪い~!」
其はもう見るに堪えない惨状だった。
宙は範囲内に何かを起こす術であり、大抵其はドーム状に形成される。
ベールのも例外ではなく、ギュッとドーム状に虫が密集する形になった。
密集と言うより最早圧縮である。
余りにも酷い事態に見守る事しか出来なかったが、はっと皐牙は我に返った。
流石に放って置けない、でも此如何すれば良いの?
焔ぶつけたら奴毎焼いちゃうだろうし、もう普通に術を解いて貰うしかない。
と言うかオレも触りたくないし・・・自力で頑張って欲しい。
集められてしまったホウマツは何も泡を吐いているので一見大きな泡の塊の様でもあった。
しっかり虫を集めてしまったのでベールの姿が一切見えないが、正直言って地獄だな。
想像すると気持悪くなりそうなので無理矢理無視する。
「オイ術を解け!そしたら自由になれんだからよ!」
一応言ってみたけど変わらねぇ・・・聞えてないのか?
一部の生きている奴がうごうごしている丈だ。正直見たくもない。
此・・・下手したら奴もうやられたのか?彼の鋏で。
此のホウマツって虫、鋏しか武器なさそうだし、其を自ら引き寄せたらな・・・。
・・・その・・・何て言うか、悪い、流石に其は助けられなかった。
「ぬぅう!ベール君待ってなさい、今儂が、」
心の中で然う区切りを付けた皐牙とは違い、スェズは怒りも顕わに近付いて行った。
近付いた所で如何にかなる物でもない、無謀だ。其丈は止めないと。
「オイじぃちゃんは下がってなって、雷じゃあ無理だって!」
「其でも・・・何とかして助けないとっ!」
「いや然うだけどさ、でも、」
「・・・浮いてる?」
鏡の不思議な言葉につい振り返る。
浮いてるって、一体何の事だ?
見た瞬間、其と分かった。先の虫の塊が、恐らくベール毎、宙に浮かんでいたのだ。
全体を泡に包まれてぷかぷかと・・・別に何かの術の様には感じないが。
そして浮かんだ其からぼろぼろとホウマツ達が落ちて行く。
ベールは術を解いていたみたいだ。重力に従い、死骸が落ちて行っているのだ。
然うして遂にベールが姿を現した。固まっていた虫達は離れ、だらりと両手両足を投げ出して泡の中浮かんでいたのだ。
怪我はなさそうだが、気絶している様ではある。
残った虫達は泡の中を泳いで行き来している様だった。
「い、生きてるのか?」
分からない、分からないけど、彼の泡を壊せば助けられそうだな。
虫に取り込まれたとか悲劇以外の何物でもないし、さっさと起こしてやるか。
拳を振り上げて飛び掛かる。多少火傷しても文句ねぇよな!
だが既の所で躱されてしまう。続けて放った一発も。
此奴、只の泡の癖にっ、
怒っても仕方ないので何とか宥める。其にしても彼の動き、まるで生きているみたいだな。
見て躱されたと言うか、動き、見てるのか?
もう一度殴ろうと構えた所で、ふわりと大きく後退されてしまった。
明らかに意識して動いている、此奴は何なんだ。只の虫じゃないのか。
身構えていると泡の形状は少しずつ変わっている様だった。
只の泡だと思っていたのに先の虫と似た形をしているのだ。一つ一つの泡が甲の様になって、端から見ると虫の様に見える。
「何か変だな・・・オイ皆気を付けろよ。」
「壊サナキャ、愛されない。」
「愛されないから壊サナキャ、」
「一緒ニ壊れよう、ウタカタニ。」
泡で出来た虫は然う鳴くと皐牙に向けて飛び掛かって来た。
「っ、こ、此奴自体が動けんのかよ!」
動きが、先迄の小さい虫と訳が違う。
正に其の儘大きくなった具合なので素早いのだ。御負けに軽いからか身の熟しが軽やかだ。
右へ左へと漂って鋏を振り下ろして来る。
「く、そ、其の為の泡かよっ!」
泡で出来た鋏と言っても、其の鋏部分に虫が集中しているので威力はある。
泡は割れる事なく雲華に突き刺さり、大穴を開けた。
「皐牙、下がる。其処危ない。」
「ってもうわっ、未だ此奴等出てんのか。」
気付けば足元に居た虫が鋏でブーツを斬り付けて来た。
足を斬られて血が滲む、小さな鋏で助かった。
上丈見てもやられるってか、面倒だな。
何とか皐牙も虫達から距離を取る。然う簡単にはやられてくれないみたいだ。
「何なんだよ此奴等、じぃちゃん確かに此奴は危険だゼ。」
「僕ハウタカタ。」
泡が然う口を開く。
「最期ニ夢ヲ、壊れる前ニ、ウタカタハ一刹那ノ夢ヲ。」
「ウタカタ?なーんかややこしい奴だな・・・。」
自己紹介して欲しい訳でもないし。
其にしても何とか止めないとな、怒らせたのは自分だろうが、確かに残して置くには此奴は危険過ぎる。
此の儘大きくなったら洒落にならないだろうし、ってか彼奴返してくれてないし。
彼の儘だと下手したら奴の核的な扱いされてしまう、何とかしないと。
「名前は良いから其奴返して貰うゼ。」
拳だと避けられるので、口から火炎を吐いてみる。
横凪ぎに払う様に一気に吐くと、其に合わせてウタカタは両の鋏から泡を吐き出した。
中にいる虫が泡を吐いているのか、本体に届く前に消されてしまう。
「ああもう面倒だな此奴。」
「ぬぅ、儂に任せなさい!皐牙君は下がるんじゃ。」
其の声と同時にウタカタへ雷が降り注いだ。
「う、うおぉ、凄げぇけど、彼奴避けてんぞ!」
何重にも雷は降り注ぎ、雲華に次々と穴が開いたりと中々の威力だった。
だがウタカタは見てから躱せるのか悉く命中しない。
「っ・・・く・・・、本当に厄介な虫じゃ。」
「全然当たらねぇのは腹立つな。」
泡なんだから一撃入れれば勝てそうなのに、其の一回が入らない。
「斯うなったら、本体を叩くゼ。」
此奴相手にしても埒が明かない、先に住居を壊した方が良さそうだ。
皐牙が黔い樹に向け、拳を振り上げる。
虫は未だ出ているが、此の程度なら捌ける、何より動かない樹だ。
殴り付けようとした所でウタカタが直ぐやって来た。そして泡を大量に吐いて焔を弱めてしまう。
「もう本当鬱陶しいな御前等!」
「此方、全然来ない。」
鏡が挑発のつもりで辺りを飛ぶが、一向に無視されてしまっている。
攻撃するのがオレかじぃちゃんだってバレてるのか、妙に考えがあって嫌だな。
其でも少しずつ焔は掛かって樹の表面は欠けて行っている。
面倒だけど此の儘行けば何とかなるかもな。
「・・・っ、」
其処で不図、取り込まれて黙だったベールの目が開いた。
そして慌てた様に辺りを見渡している。
・・・恐らく見渡した丈では現状如何なっているか分からないだろう。
正直混沌だ。目覚めたら虫の創った泡の中に閉じ込められているなんて。
其処等で虫が泳いでいるし、恐らく又気絶するんだろうなぁ。
そんな風に思った矢先だった。
スッと彼の眼の曦が苛烈に輝いた気がした。
そして何時もの、彼のぼーっとした様な気配は消え、凍える水の様な冷たさを覚える。
其の儘彼は横凪ぎに手を払うと、突然ウタカタの躯が弾け飛んだ。
と言っても泡で出来た躯だった訳だが、一気に泡が割れ、躯が半壊する。
不自然に胴の所が大きく抉れた事で彼の上体は仰け反り、泡を吐き続けた。
そんな泡の薄くなった所に向け、ベールは泳ぐ様に泡を移動し、膜を突き破った。
「お、おー一柱で脱出しやがった。」
受け身を取って着地し、彼は何事もなく立ち上がった。
良く見ると其の手にはナイフが一本握られていた。彼で泡を裂いたのだろう。
「グログロgrotesque中毒発作症候群・・・発症。」
「あ、其でか。」
何か良い感じに自力脱出したなぁと思ったが、例の発作の御蔭らしい。
一応話には聞いてる。何か血とか内臓とか、グロテスクな物見たら色々殺したくなるんだろ?確かにヤベー奴だ。
ま、でも此方と敵の区別位付くんだろ?何か良いな、勁くなれる病気って。
其の副作用が彼の不幸ってならオレは勘弁だけどな。
「・・・ってか虫見ても発症するんだな。」
何と言うか多様性のある病気だな。
先の一撃が大分効いたみたいでウタカタの機動力は大分落ちたみたいだ。
此は良い、一気にやり易くなった。折角だから此の儘片付けて貰おう。
今回は散々助けたんだし、な。其位はあっても良い。
「じゃ、後は宜しくな。」
ポンと肩を叩いたが、無反応だった。じっとウタカタの動きを見ている様だ。
性格も随分変わるんだな。軽く無視されたけれど、やってくれるなら何でも良い。
「ベール君、無事で良かったのだ。只・・・何か雰囲気が変わったのぅ。」
「噫じぃちゃんもう大丈夫だって。今の彼奴スゲー勁いからさ。もう樹も全部やってくれるって。」
「ほぅ、荒ぶる戦神と言った所なのかのぅ。」
驚き、目を瞬くスェズに並んで鏡もやって来た。
「ベール、変わった。何か凄そう。」
「オレ達もう見てる丈で良いんだから楽な物だゼ。」
「・・・動いてない、大丈夫?」
・・・え?
チラと振り返って見てやると確かにベールは固まった儘だった。
観察するのは大事だろうが、其にしても固まり過ぎだ。
言わん事も無く、ベールの周りにはホウマツが集まりつつある。飛び掛かられたら十分やられる距離だ。
ん、何か聞いていた話と違うな。何か斯う、凄く身軽になって情け容赦もなくバッサバッサやる奴だって聞いたのに。
「おーいそろそろ動かねぇとやられるぞ。何してんだよ。」
声を掛けてみると、ギギギ、と音がしそうな程緩りと此方へ首丈振り返って来た。
其の目から先の曦が失われつつある気がする。
「・・・無理。」
「は?」
「・・・虫、無理。」
「・・・はぁ⁉」
とんでもない言葉に目を剥く。
何都会の萌やしっ子みてぇな事言ってんだよ!
でも実際ベールは動けないらしく、もう見たくも無いのか視線を逸らしてしまっている。
えっと確か聞いた話だと、発症して直ぐ鬼神の様に戦う筈、其が出来ねぇって事はマジなのか?
い、いやいやそんな、天下の暗殺者が虫如きでさぁ。
「とか言ってやってくれるんだろ、華を持たせてやるから気にせずやれって。」
「無理、絶対無理、帰る。」
「帰るんじゃねぇ!」
真っ青になって終に躯毎此方に向き直ったので慌てて肩を持って無理矢理振り返らせる。
だが又虫を見た瞬間、小声でうわぁ・・・と言ってしまったのでマジで無理な様だ。
何だよ折角楽出来ると思ったのに。
ってかじゃあ何で出て来たんだよ!何の為の発症だよ!
まぁ好きでなってんじゃねぇだろうけど、拍子抜けにも程がある。
「無理強い駄目。」
「わ、分かってるって。」
っても然うも言ってられないけどな。
結局オレが戦わないといけないのか、面倒だなぁ。
其でも一応ウタカタにはダメージが通ったみたいで動きは鈍くなっていた。
相変わらず泡を吐き続けているが、未だ足りないらしい。今なら当たるか?
大きく息を吸い、火焔の渦を吐く。近くのホウマツ位は狩れるが・・・。
ウタカタも避けられないと思ったのか大量の泡を吐き始めた。
其の泡が特殊なのか焔と相打ちになってしまう。一進一退の攻防に段々皐牙は苛付いて来ていた。
「ったくよぉー!全然当たんねぇじゃねぇか!」
怒りに任せて口端から焔が零れる。所々でスェズの雷も降ってはいるが、中々命中しなかった。
其処へウタカタは鋏を振り上げて襲って来たので慌てて下がる。
振り下ろされた鋏は其の儘雲華を千斬ってしまう。
本当に面倒な奴だ。此の儘じゃあじり貧だし、如何しようか。
火力は、上げようと思えば上げられる。でも・・・、
つい視線を下げてしまう。出来るのにやらねぇってのは、オレも変わらねぇのかもな。
其でも・・・あぁもう面倒臭ぇ!
「ぬぅ、皐牙君よ。今回は下がろう、此以上は消耗する丈だぞ。」
「然うも言ってられねぇだろ。確かに此奴等、やばい気がするゼ。此処で潰した方が良いって。」
意地ではなく、今でははっきり分かる。
此奴等が、此の次元を壊すんだ。
「でも相手、勁い。皐牙、何する?」
「・・・一応手はあっからよ。只その、皆一寸下がってくれよな。」
やりたくない、やりたくないけど、然うも言ってられないだろ。
一つ息を吐いて、集中する。
何時もみたいに魔力ではなく、もっと其の奥の焔を。
命を燃やすみたいに焔を呼ぶ。でも実際には燃やしてはいけない、燃やすのは、
「・・・・・。」
集中、集中、力に罪はないだろ、使い方次第なんだろ。
オレが使いたいって思った時に使えば良いだろ。其は間違いなんかじゃない筈だ。
突如皐牙の全身が焔に包まれた。
皓い焔だ。雲華しかない此の天上では陽炎の様にも見える。
其の焔は随分と大きくなり、見様に因っては旻に吼える獣の様だった。
「オラ!こっから本番だ!」
皐牙の声に合わせて焔の獣が叫ぶ。
彼が駆け出すのと同時に獣も飛び掛かった。
皐牙が爪を振るえば其に合わせて焔が躍る、一振り毎に一丈程の巨大な焔が上がった。
焔は可也の高温らしく、上旻の影がぼやける程だ。
だからそんな物を喰らい、無事である筈もない。
ホウマツ達は次々と焔に呑まれて丸焦げになった。
余りの火力に溜まらずウタカタも下がって行く。
「・・・?何だ此奴等、燃やしても手応えねぇな。」
「皐牙凄い、圧勝。」
「ん、んんまぁ然うだけどよ・・・。」
変な感じだ。此奴等、生きてないのか?
命を燃やした時の彼の感覚がねぇ、本当に何なんだ此奴等。
まぁ良い、考えるのは後だ。今は此奴の相手しねぇと。
其に焔もちゃんと見ねぇと、オレ丈の焔じゃねぇから何するか分からねぇんだよな。
「オイじぃちゃん!此奴はオレが見とくから、其方の樹、頼めねぇか?」
「うむ分かった、無理丈はせぬ様にな。」
「虫、集める。」
スェズは樹へ雷を落とし始めた。其の衝撃で樹は少しずつ欠けて行っている。
其の横で鏡が飛び回り、ホウマツ達の注目を集めていた。
「壊ス、壊す壊す壊すノ、壊すなら、壊して?」
修復し切れないのかウタカタは不自然な飛び方を続けていた。
樹の方へ戻ろうとしたのか焔で牽制する。
「オイ手前は此方だって。」
「・・・壊す、壊すノ?焔、綺麗ネ、友達、みたいで。」
焔に魅入られたかの様にウタカタは視線を逸らさなかった。
只じっと焔を見て、何か呟いている。
「っ手前はホント、何なんだよっ。」
聞いていると何故か胸の奥を締め付けられる様。
何で此の焔をそんな目で見るんだよ。
此はそんな綺麗な物でも、良い物でも何でもない。
こんな物に、魅入られちゃあいけないんだ。
オレはこんな焔なんて、大っ嫌いなんだからよ。
焔を纏った拳を今一度振り上げる。
皓い火の粉が散って六花の様、でも其は只々残酷で。
触れる物を全て燃やし尽くす、そんな焔だ。
「私達はホウマツ、ウタカタ、壊れた世界ノ欠片ヲ食む。」
「壊さなけれバ、存在出来ない。」
「抑存在しない者。」
「あってはイケナイ、理を乱して行く。」
「でも私達ハ不完全だから。」
「不完全ノ夢だから。」
「何モ残さず消える泡の様に。」
「噫其ノ焔に燃やされるなら、」
ウタカタの躯中を巡る虫達は囁き続ける。
初めは応える様に、でも次第に自ら紡いで行く。
そんな声を聞き乍ら、皐牙は何処か引っ掛かる物を覚えていた。
何かこんな奴等が居るって何処かで聞いた気がする・・・。
確か・・・然う、コロシの一族だ。何かそんな訳分かんない奴等が居るって店で話題になってたな。
其奴の特徴と此奴等、一寸似ている気もするんだよな。
っても名前も違うし、何か皆殺しにしようと迄はして来ない感じだし、はっきりしねぇけどな。
若し本当にコロシの一族なんなら滅茶苦茶勁いから逃げろ、とは店で言われたけど・・・。
でも逃げる程の脅威でもない気もする。ま、一柱伸びてるのは計算外だったけどな。
其にしても何だか此奴等、少し動きが遅くなっている様な。
一応避ける素振りはするが、完全ではない。まさか本当に焔に魅入られているのか?
だったら・・・面倒だから全部一気に燃やしてやる。
全身丈でなく、皐牙の口からも皓い火焔が吐き出された。
其は一気に大きく膨れ上がり、瞬く間にウタカタを取り囲む。
「私ヨリ完成された焔ヨ、貴方と一つになれるなら、悪くないカモ知れない。」
然う呟いたかと思うとウタカタは自ら焔に向け、突っ込んだ。
そして一瞬、本の一瞬だった。
パチンと小さく泡の弾ける音がして、其限。
ウタカタの姿は掻き消えてしまった。
「え・・・な、何なんだよ。」
焔は一気に萎えて静かになって行く。
でももう何処にも彼の泡は無かった。
残っていた虫達はもう皐牙達に目も暮れる事なく皆樹の方へと歩き出した。
もう彼等から敵意はない、只樹の傍へ集まる丈だ。
「おぉ皐牙君無事かね。」
スェズが虫達に注意しつつも近付いて来た。
「オウ、でも何と言うか急に呆気なく終わっちまったから。」
拍子抜けと言うか変な気分だ。
彼は完全に自殺だった。自ら焔に突進した。
未だ十分戦えそうだったのに、如何してあんな所で自死を選んだのか。
本当に此の焔に魅入られたのか?
“完成された焔”
嫌な言葉だ。何でそんな事言うんだよ。
最悪だ、一気に気分が冷めちまった。
皓い焔はもう欠片も残っていなかった。使わなきゃ良かったと言う後悔が先に立つ。
「ま、後は彼の樹、ぶっ壊す丈か。」
グッと拳を握ると何時もの絳い焔が立ち昇った。
うん、此方の方が良い。此方の方がずっと落ち着くな。
「ほぅ、皐牙君は面白い種族の出なのだな。ドラゴンだとかの血筋かね?」
「ド、ドラゴン?何で、あ、」
言われてグローブの事を思い出した。
すっかり忘れていた、しっかり腕の事を見られてしまっている。
で、でもドラゴンか・・・違うけど使えるか?
「っ然うだゼ、だからオレは勁えんだ!」
「うむうむ、成程のう!いやしかし見事だった、素晴しい働きだったぞ皐牙君!」
「オウ!だから任せとけっつったろ。」
まさかの全受け入れじぃちゃんである。其で良いのかよ。
何て言うか、じぃちゃんだからこその器なのだろうか。其にしても広過ぎる。
逆に此方が戸惑いそうだけど、もう良いだろう。乗ってくれるなら其の儘にしよう。
其にドラゴンの子孫って、一寸かっこいいしな。
と、其の前に先から黙の彼奴の様子でも見るか。
チラと振り返ると、意気揚々と出て来てから静かになったベールが居た。
如何やら鏡に介抱して貰っている様だ。・・・此奴何かしたっけ。
「何、御前伸びてたのか?」
「ベール、先、起きた。」
「うぅ、何か凄い悪い夢を見ていた気がして・・・何か此の虫に近付きたくないんです。」
頭を押さえてベールは立ち上がった。如何やら先迄倒れていたらしい。
つまりは虫に取り込まれて一回気絶し、覚醒してからも虫見て気絶したのか。
そして其の儘フィーバータイム終了と、本当何してんだ此奴。
まさか虫が苦手だったとは・・・虫相手だと無能になる事、店主に報告しとってあげよう。
「あ、其にしても若しかして皐牙さん、彼の虫全部やっつけたんですか!凄いです!」
「まぁな、っても生き残りは樹の所にいるけどな。」
顎で軽く樹の方を示すと又ベールは固まってしまった。
駄目だ此奴、完璧に虫がトラウマ化してんじゃねぇか。
ま、然うは言っても実の所此奴の御蔭で泡の奴に致命傷を与えられたんだけどな。内部からの一撃は良く効いていたし。
でも然う言えば元はと言えば此奴の所為で彼奴生まれたのかな、変に集めちゃったから泡が増えて・・・。
其だったら感謝も何もねぇな、全く。
「皐牙頑張った、後少し。」
「だな、まぁ見てなって。」
樹に近付いたが、虫達はもう何もして来なかった。
諦めているのだろうか、否此の感じは・・・。
せめて最期は樹の傍に、何かそんな感じの思いが伝わって来る気がした。
逃げないのなら、オレは其の儘殴る丈だ。
樹諸共一緒に、燃やしちまう。
絳い焔が大きく燃え上がり、オレは精一杯拳を振り上げた。
そして全力で樹に叩き込む。
躊躇の無い一撃は流石に効いたみたいで、一気に罅が入って行った。
ま、事前にじぃちゃんの雷を浴びていたんだし、可也脆くなっていたみたいだ。
其か若しかしたら此の樹、中に虫が居たから今迄堅かったのかも知れない。
只の樹になってしまえば、泡で付けた丈なのだから脆いのだ。
何度も拳を振り上げて殴り付ける。少しずつ焔が、樹を蝕んで行く。
「破壊の焔よ、貴方に敬意を。」
そんな声が聞えたかと思えば、もうホウマツは一匹も居なかった。
全て焼け焦げ、ピクリとも動かない。
一匹残らず焼け死んで・・・。
其処迄思考が追い付いた所で不意に吐き気に襲われた。
何でオレ丈が立っているのか、何故皆焼死したのか。
死体の中心にオレが居て、オレ丈が生きてて。
まるでオレが全員焼き殺したみたいに・・・。
違う、違う、オレじゃない、オレがしたんじゃない。
そんなのオレは知らな—
「皐牙、しっかり!」
「っ、」
揺らされて顔を上げると鏡に肩を小突かれていた。
「え、あ、・・・お、おう、」
頭を何度か振る。意識が少し飛んでいた。
オレは・・・今は違う、考えるなこんな事、もう関係ないんだし。
「疲れた?休む?」
「いや疲れてねぇよ。只・・・あぁもう、色々あった丈。」
「皐牙勁かった、でも嬉しくなさそう。」
「あーオレ余此の皓い焔、好きじゃねぇんだよ。其丈だって。」
「好きじゃない・・・?」
ふわふわ浮かんだ儘鏡は首を傾げる。
そんな話す気もねぇけど、中途半端に喋っちまったのも自分だしな。
「痛い?使う、良くない事、起こる?」
「いやオレ彼奴みてぇに不幸体質じゃねぇし、痛いって言うか反動も特にねぇけど。」
「じゃあ良かった、悪い力、違う。皆護った、凄い事。」
「・・・護ったか、まぁな。役に立ったなら良かったけどよ。」
「・・・・・。」
じっと鏡はオレの顔を見詰めて来た。
・・・何だよ、変な奴。
然う思った矢先、行き成り其奴はオレの口に炭を突っ込んだ。
・・・え、何で炭⁉
「ん、むぅぐぐんぅ!(何しやがる!)」
「炭、食べる、元気出る。」
「ッペ!普通に不味いわ巫山戯んな!」
味以前に食べ物ではないと躯が反応し、反射的に地面へ吐き出した。
少し大き目のを突っ込まれたので口が真黔である。乱暴に袖で拭う。
「あーもう、さっさと終わらせるぞ。」
元気出るか、一応此奴なりのやり方なんだろうが、此は只の迷惑だ。
此以上変な事されない様に直ぐ取り掛かろう、考えるのは止めだ。
樹は今の間に大分壊れて来たのか可也小さくなっていた。
最早樹とは呼べない、小さな欠片が残っている丈だ。
其の中でも一際大きいのを手に取る。
もう虫よりも小さい其の欠片は・・・甲の様に見えた。
然う、丁度店主の尾とかの甲、そっくりだった。
オレの奴よりずっと棘が多くて曦を良く反射している。
こんな物を護る為に、彼の虫達は居たのだろうか。
初めはこんな小さかったのに、どんどん雲華とか付けて黔く大きく育って。
本の、たった一つの甲落とした丈で、次元が壊せる物なのか。
何だかなぁ、規模がでかいと言うか何と言うか、オレ達と次元が違うんだよなぁ。
「・・・・・。」
・・・何か、違和感があると言うか。
店主って何か探し物?する為に色々暴れてたんだろ?
彼の樹で如何やって探すんだろ・・・根とかかなぁ。
ま、虫は何処からか付いて来た丈だろうし、別件か。
甲をしっかりと握ってみた。確かに堅いが、古くなっていた為だろうか、割れそうだ。
其の儘握って・・・一思いに一気に砕く。
もう一度手を開いたが、もう何も無かった。此じゃあ炭と変わらねぇな。
「っと、じぃちゃん如何だ。一応片付いたと思うけど。」
「うむ、本当に良くやってくれたのぅ。儂一人では迚も無理じゃったろうて、有難うのぅ。」
「ま、此位如何って事ねぇよ。」
一寸格好付けてしまう。でも其位良いだろう、間違いなく一番頑張ったのは自分だ。
飛んでる奴はまぁ囮になったりとか多少頑張ってたけど、もう一柱は完全に足引っ張ってたし。
虫集めて化物化させて気絶するとか完璧だ。完全に敵の動きだ。
「じゃーさっさと帰ろうゼ。まさかじぃちゃん他にも樹があるとか言わねぇだろ。」
「うむ、大丈夫じゃ。疲れたじゃろう、霄は儂が腕に縒りを掛けて頑張るからのぅ。」
快活に笑い乍らスェズは背を向け歩き始めた。
怪我は、してなさそうだな。雷で躯壊さなくて良かったゼ。
「さぁ此処は陰霖を降らせて流すとしよう。皆行くぞ。」
「おー、魚、炭、食べる!」
「・・・・・。」
皐牙の背後で突然雷が一つ降り、次いで土砂降りの大雨になった。
本の数秒の事である。大雨は直ぐ様樹の欠片を、虫達を押し流して行った。
ぎりぎり皐牙に陰霖は一切掛かっていない。完璧な境界だ。
陰霖・・・陰霖って浪属性なら降らせられる物だったっけ・・・。
「うむ?皐牙君如何したんじゃ、早く行かないと魚がなくなるぞ!」
「オレ、彼の下手物に興味はねぇけどな。」
皐牙が歩き出すと其の分陰霖も移動する。
じぃちゃん・・・とんでもない魔術師だな。雷も陰霖も降らせられるなんて。
別々の属性なのにこんなに使い熟している、一見まるで天候を操っているみたいだ。
だったらこんな所でも一人で住んでて平気なのかな、自分で何でも出来ちゃあなぁ。
「魚も今頃良い具合に凍っておる筈じゃ。皐牙君の焔もあるし、楽しみじゃのう。」
「氷?彼の家冷蔵庫なんてあったのか。」
一体じぃちゃんがどんな調理をするのか不明だが、意外にハイテクだ。
オレには只部屋に吊るした丈に見えたけど。
「冷蔵庫?はて、其は一体どんな代物なのじゃ?」
「どんなって、其使ったんじゃねーのかよ。物を冷やせる箱みたいな奴だって。」
「炭、入れる。臭い消える、凄い。」
「ほぅ、そんな面白い物があるのか。知らなんだなぁ。儂は只、六花を降らせて凍らせておる丈じゃよ。」
涼属性も御手の物らしい、何て恐ろしいじぃちゃんだ。
こんな天候を操れるなんて本物の神みてぇだけど、そっかぁ魔術次第なんだなぁ。
とは言ってもじぃちゃんはじぃちゃんだ。無理はさせられない、オレがしっかりサポートしないと。
もう脅威は去った。飯食って帰る丈だ。後する事と言ったら其の下拵えの手伝い位だろう。
「皆頑張った、御疲れ様パーティ。」
「うむうむ、正に其の通りじゃ。さぁキリキリ帰ろうぞ。」
スェズに連れられて一同はしっかり凍えてしまった彼の家へ帰る事になった。
其処で皐牙は神生を変える程の出会いをする、スェズの手製の魚の活け造りだ。
“彼の苔より美味しいかも知れない!”何てベールの一言で冷めてしまいはしたが、彼は一生、此の味を忘れないだろう。
後に例の魚が龍と知り、店で彼が乱獲を始めるのは又別の御話。
・・・・・
丸くなった世界へ根を張る黔き樹
樹に付く蟲は世界を喰らい、樹の糧へ
神の子では防げぬだろう、再び世界を崩すのか
だが蟲も樹も神の火に巻かれる
泡の様に消え、初めから無かったかの様に振舞って
然うして、世界に溶けて行くのだろう
神の眼ある此の世界へ
と言う事で御疲れ様でした。とてもシンプルな御話でしたね。
正直此の後の御爺ちゃんの家での話をもう少し膨らませていたのですが、全部カットしちゃいました、完全に蛇足だったので。
今回の話は龍族も食べちゃうんだぞ!と言う所とホウマツ達がキーでしょうか。某大手のモンスターゲームでも食用だのなんだの話になった時は色々問題ありましたもんね。
個人的には寧ろ然う言った話があった方が世界観がイメージし易くて良いんじゃないかと思ったりします。綺麗毎丈で異世界生きて行けると思うなよ、みたいな。
一応龍が大好きなセレも出されたらガツガツ食べちゃうと思います。自分からは捕らないだろうけれども、生きてるんだよ!とか言って暴れないと思います。
まぁ彼の方は其丈の事しているからね・・・そんな偽善言う方が想像出来ませんね。
さて、そんな次回は結構大事なストーリーです。可也元ストーリーも改変しました。
モチベーションは高目にリセットされたので頑張ります!其では又御縁がありましたら!




