44次元 秘密の4次元 絳イ心象世界の果て
わー!又御会いしましたね!
と言う事で恐らく過去最速の投稿速度です。皆さん今日は!
そんな今回は少し久し振り?な番外編。
何時かは書きたいな、とずっと思っていた話です。転寝の時に見た夢で、結構印象に残っていたので急いで書き上げたメモから想起しました。
今回のメインは・・・例の彼の子。
何処か優しくて甘くて切ない話を書こうとした結果・・・まぁ後は御察しです。
個人的にはまま気に入った話になりました。此の位気楽に書いて行きたいですね。
何だか色々書くとネタバレ祭りになりそうなので、後書きで又御会いしましょう。
何かが潰れる音で、私は目を醒ました。
藩茄みたいな・・・水気のある柔らかい物が潰れた様な音。
私は慌てて足元を見たけれども、其処には何もなかった。
さて、此処は何処だろう。
生まれた許りの私はそろそろと足を出した。
床は皓い滑らかな金属板で、跣には冷たい。
壁も同様で、時折絳い曦の線が私を導く様に走って行く。
そっと曦の走る切れ込みに指をなぞらせた。
私は先迄入っていた玻璃ケースから足を踏み出した。
ケースは前方が砕けて開け放たれている。
玻璃片は近くに転がっていたけれども、蒸発するかの様に無くなって行った。
此で足を怪我する事も無い、安心して私は歩き始めた。
曦が私を急かす様に走って行く。
細長い通路だ。誘われる儘に付いて行ってみよう。
歩いていると、何だか楽しくなって来てつい鼻歌が漏れる。
吟なんて知らないから可也出鱈目だ。でも私しか聞いていないのだから関係ない。
詠っているともっと楽しくなって来ちゃった。若しかしたら私は、吟で誰かを笑顔にさせる事が出来るのかも知れない。
噫、咲わせるのなら、彼の子が良いな。
未だ見ぬ彼女の事を懐う。
逢った事無いけれど、話した事も無いけれど分かるよ、私は彼女の事が好きなんだ。
だから歩く。此の先に彼女が居るから。彼女に逢えるんだと思えば、吟位詠ってしまう。
走ろうかとも思ったけれども・・・其は良くない、順番はちゃんと守らないと。
何も知らない私は只歩く。
彼女の事以外、何も知らないから、其丈を信じて。
何も知らないのは不安にならないか?そんな事ないわ。
其丈、彼女の事に熱中出来るんですもの。
自分の事で頭を埋めるより、ずっと良いわ。幸せな事よ。
歩いていると、突然壁に丸い穴が開いて行った。
何も見えない冥い穴が続いている。
不思議に思いつつ足を進めていると、其の穴から絳い可愛らしい小鳥が出て来た。
「あら御姉さん御早う、頭の羽飾りがとってもチャーミングね。」
然う声を掛けると小鳥は一声囀って飛んで行ってしまった。
私より、ずっと綺麗な歌声だった。
彼の子は私より先に生まれたの、だから私の御姉さん。
御姉さんに続いて次々と小鳥達が穴から出て来て飛んで行く。
皆私より早い、あっと言う間に置いて行ってしまう。
小鳥達の群から逸れない様に私も足を少し早めた。
「貴方も、其のスカート、迚も可愛いわね。」
不図最後尾を飛んでいた小鳥が然う呟いた。
吃驚してしまって私の足は止まってしまう。
其の間に、小鳥達は居なくなってしまっていた。
でも遠くで一声、彼の小鳥達が囀る声が聞こえ、私は走るのを止めた。
大丈夫よ、緩り行きましょう。何も焦る事はないわ。
其の儘歩いて行くと小さな庭園みたいな所へ出た。
碧樹や嫩草が、金属の壁の隙間から生えているのだ。
紅鏡なんて無いのに、不思議と此処は曦が満ちている、だから皆此処に居るのね。
何だか温かくなって、又自然と私は鼻歌を詠う。
すると其の声に合わせて樹々が揺れ動き始めたのだ。
噫然うか、彼等も、私の兄弟なんだ。
姉か妹か兄か弟かとんと分からないけれど、私達同じなのね。
樹々が擦れて絳い葉を落とす。
蒲公英が揺れて絳い綿毛が飛ぶ。
色んな絳で溢れている、何て美しんだろう。
少し丈私は足を止めて彼等の踊りを眺めていた。
不図、私の吟に合いの手が加わっている事に気付いた。
不思議な、鈴の様な音、足元から聞こえた気がしてそっと屈んでみる。
鈴蘭だ。絳い鈴を付けた鈴蘭が薫風も無いのに踊っていたのだ。
そっと一輪撫でると、奥の鈴蘭からより大きな音が溢れる。
まるで誘っているみたい、少し丈、寄り道しようかしら。
奥の鈴蘭に近付くいて行くと、足元の瓊草が避けて道を作ってくれた。
私が跣だから、気を使ってくれたのかも知れない。
其の儘、誘われる様に奥へ奥へ。
「・・・何て綺麗なの。」
思わず、声に出してしまう。
鈴蘭達に誘われて最奥へ来てみると、其処には華畠が広がっていた。
樹々に囲まれて隠されていた不可侵の華園、御姉さん達が私を導いてくれたんだ。
そっと屈んで触れてみる。
私の大好きな絳の華。
朝の露みたいな瓊が乗っていて、静かに輝いていた。
どんな輝石よりも、華よりも美しいわ、私達の愛しい・・・、
「・・・一輪丈、貰って行くわね。」
私の手に擦り寄る一輪を摘み取った。
痛くない様緩りと。
私には鋭利な爪も牙も無いから、一寸心配だったけれども。
悲鳴も上げず、華は私の手の中に納まる。
何て愛らしいんだろう・・・然うだ。此の華、彼の子の所に持って行こう。
彼女も屹度喜んでくれる筈、フフ、楽しみが一つ増えちゃった。
「然うね、私が御姉さん達の代わりに彼の子に華を届けて来るわ。」
優しい薫風が華弁を乗せて私の頬を撫でて行く。
擽ったくてつい私は目を閉じた。
じゃあそろそろ行かないと。私独り華遊びしていてもつまらないわ。
私は来た道を戻って歩みを再開した。
見送る様に華々が揺れている。
其に応える様に私は今摘んだ華を、そっと頭に挿した。
フフ、彼女に逢う迄は挿して置こう、折角の絳なんですもの。
中庭を出て、私は又通路を一柱歩く。
段々、冥くなっている気がする。彼の中庭から離れたからだろうか。
未だ終わりの見えない道だ。此の儘進んだら闇に包まれてしまうだろうか。
・・・悩んでも仕方ない、行くしかないのだから。
でも、一つ丈不安になる。
私の道が冥い様に、彼女の道も冥くないかと。
望んで其の道を選んだのだと言うけれども、本当は選べなかった丈なんじゃないかって。
他の道が若しあったのなら屹度・・・私達は、
そっと自分の頬を抓る。
考えちゃいけないそんな事、私達は、考えてはいけない。
言われた事を只熟す丈よ、私は望む道へ進む為の手段、道具なのだから。
折角先迄あんな楽しかったのに、伏し目勝ちだった視線を上げる。
「・・・彼は、何かしら。」
前方に何か曦が見える。揺れている、不思議な光源。
其は私の方へと近付いて行っているみたいだった。
「キ、キキッ!」
私の目前迄やって来た其は短く高く鳴いた。
そっと手を出すとちょこんと乗ってくれる。
「あら、貴方は私の御姉さんかしら、妹かしら。」
「キィーキッ!」
「え、フフ、私達双子だったのね。」
其の曦は小さな角灯から発されていた。
其の角灯の中に此又小さな蝙蝠が入っており、忙しなく羽搏いている。
其の蝙蝠が角灯毎飛び上がっていたのだろう。
彼の御蔭で随分と明るくなった。此なら安心して歩けそうだ。
「私が迷わない様に迎えに来てくれたのね、有難う。」
双子と言っても私より先へ行っていたのだし、姉さんと呼ぶ可きだろうか。
でも姉、と言うよりは兄の感覚だ。私達の性別だとかは完全に疑似的な物だし、此の辺りの判断が難しい。
彼の子の真似をしている丈だもの、仕方ないわ。
兄さんは私の手から離れると、誘う様に数歩先を照らしてくれた。
矢っ張り一柱より二柱の方が心強いわ、其丈で私は安心してしまっている。
「付いて行くわ兄さん。私を、彼女の所迄連れて行って。」
「キィイ!」
元気良く鳴くと蝙蝠は忙し気に羽搏いてフラフラと先を照らし出した。
明るくなって分かる、此処は壁も黔くなっているのだ。
そして脈打っている気がする、何か巨大な怪物の体内みたい。
・・・若しかして、巨大な御姉さんの躯の中だったりして・・・其ならもう少し安心出来るけれども。
猶も進んで行くと其迄一本道だった通路に複数の道が枝分かれして来た。
でも何の道も扉で塞がれてしまい、結局真っ直ぐしか進めない。
扉には小さな格子の入った窓が付いていた。
只兄さんに付いて行くのも何だし、少し覗いてみようかしら。
そして・・・私は見た事を直ぐ後悔した。
何の部屋も兄さんや姉さんが入っていた。
獣や魚、怪物、植物、鳥、蟲・・・色んな姿をした姉さん達。
彼女達は中で喰い合っていたのだ。時には一方的に、時には互角に。
音も無く、喉笛に咬み付いたり丸呑みしたり、四肢を裂いたり、生きた儘喰われたり、絞め殺されたり、溺死させられたり、押し潰されたり、他にも色々。
只々部屋は真絳だった。血の色丈は皆一緒だったのだ。
そして其の絳を、悲しい程に私は美しいと・・・思ってしまった。
止めたい気持、助けたい気持、見護りたい気持、混ざりたい気持。
全てが綯い交ぜになって・・・気持悪い。
自分の絳が溶け出してしまいそうで、恐い、駄目だ、此以上は、
私が私ではなくなってしまう、そんな気がする。
私の中にも屹度あるんだ。姉さん達と同じ残虐性。
でも嫌だ、其に染まりたくはない。
私は私、詠うのが好きで、スカートが似合う女の子、其が私なの。
影響されては駄目、流されては駄目、だって彼は他の姉さんの役目だわ。
私は私を見失わない様にして、彼の子に逢いに行かないと。
そっと自分は扉から離れた。
足が止まった私を心配してだろう、蝙蝠が戻って来てくれた。
「・・・兄さんも其が役目だものね。」
「キューキュ!」
私は又足を進めた、屹度もう直ぐ此の回廊も終わる、其迄。
少し進むと随分激しく震える扉の前に差し掛かった。
中で姉さんが暴れているのだろうか・・・耳障りな金属音が鳴り響く。
足早に通り過ぎようとした時だった。
「ギシャァアアァアア‼」
突然扉は開かれて中から怪物が飛び掛かって来た。
其の怪物は蛇に蜈蚣の足が生えた様な姿で、背からは鹿の角が無数に生えていた。
全身から血と粘液を垂れ流している。
屹度体当たりを繰り返しちゃったから全身傷だらけなんだ・・・。
「ギギ、ギシャァアア‼」
突然の事に動かなくなった私に向け、怪物は全身の鱗に隠されていた眼を開けて私を見た。
真絳に血走った目、私を獲物としてしか見ていない。
そして彼の扉にした様に体当たりを繰り出して来た。
噫、私は屹度為す術なく潰されて、
私の中も、真絳なのでしょう、内臓を打ちまけて、綺麗で、
然うして貪り喰われる、私達は一つになる。
そんな未来が、しっかりと私の瞳に写った。
其の未来を受け入れようと目を閉じると、突然蝙蝠が怪物の頭へとぶつかって来た。
其の所為で怪物は私の隣の壁に激突してしまう、蝙蝠も反動で床へ打つかってしまった。
「兄さん・・・っ!罅が、」
慌てて拾い上げると角灯には罅が入り、蝙蝠は翼を痛めたのか蹲ってしまっていた。
「兄さん、御免なさい。有難う・・・。」
そっと抱き締めて怪物と対峙する。
先へ行かないと、こんな所で終わってはいけない。
何とか、何とかしないと、
震える足を然う叱責していると、開かれた扉に一つ影が差した。
「悪いね、生まれるのが一寸遅くなった。」
そして影から触手が何本も撓る鞭の様に現れ、怪物を刺し貫いた。
怪物はもう断末魔を上げる事無く項垂れてしまう。
其の儘ずるずると、影の中へと引き擦り込まれてしまった。
「あ、あの、有難う、貴方。とっても勁いのね。」
開け放たれた扉に近付いてみたけれど、其処は一面の闇だった。
扉から一歩先は、もう何も見えない闇で。
兄さんの角灯でも此は照らせない。
先迄は只の個室だったのだから、此の闇其の物が彼なのだ。
「フフ、然うかい?褒められちゃった。じゃあ道中気を付けてね。」
闇の中からはっきりと声丈が聞こえ、手の様に触手が振られた。
飛び散った怪物の血を拭き取ると、触手は扉を閉めて中に閉じ籠ってしまった。
今のは屹度私の弟なのだろう、そして彼の怪物は・・・姉さん。
可哀相に・・・屹度心が壊れてしまったんだわ。でないと姉妹を襲う様な真似、しないもの。
私の命は兄さん達に助けられた・・・私も、しっかりしないと。
弟みたいに戦う力は無いけれど、逃げる事位は、屹度出来るわ。
「キ、キュイ・・・。」
「あ、兄さんは其の儘休んで頂戴、今度は私が連れて行くわ。」
蝙蝠が角灯の中で起き上がった。
飛ぶ事は・・・恐らくもう出来ないだろう、私達には時間が無い。
近くの扉が又激しく金属音を響かせる。
・・・又襲われてもいけない、早く此処を出てしまおう。
私は今一度角灯をしっかり抱き締めると走り出した。
跣の足に漆黔の床は酷く冷たい。
まるで死んだ命を踏み締めている様、そんな予感が骨に響いて来るの。
でも出口も近いみたい、ずっと闇だと思っていたけれども如何やら一つ扉が前にある様だ。
「噫、御疲れ様。」
何とか扉の前迄辿り着き、ドアノブに手を伸ばすとそんな声が聞こえた。
良く見るとドアの中心に鳥の嘴の様な物が生えている。
然うか、此の扉も、姉さんなんだ。
「有難う姉さん。此処、通して貰っても良いかしら。」
「えぇ、只一寸待って頂戴。」
扉が言い終わらない内に小さな鼠が床を駆け回っていた。
「悪いね妹さん、此奴、私じゃないと扉開けさせてくれないのよ。」
するすると扉に上った鼠はドアノブを其の小さな両手で押して、何とか動かした。
「ほい、どうぞ。」
「有難う姉さん達。」
扉を潜ると其処は小高い丘だった。
噫分かる、屹度もう直ぐ私は・・・、
嫩草を踏む感触は心地良かった。
少しちくちくして・・・でも私が此処に居ると言う証で。
旻は絳くて何処迄も広く、高かった。
「綺麗でしょう、私、此の眺めが好きだから扉を閉めちゃうの。」
扉の反対側には玻璃の瓊が何個か装飾されていた。
屹度彼が彼女にとっての目なのだ。
「そして一々私の仕事を増やすんだ。」
扉の向こうからくぐもった鼠の声がする。
一緒に漏れた溜息に少し吹き出してしまう。
「でも、本当に綺麗だわ。私の世界がこんな美しくて良かったわ。」
私は扉に手を振って又歩き出した。
丘の上に何かある、彼処迄。
「兄さん、屹度もう直ぐ着くわ。」
蝙蝠はぐったりした儘動かない。一寸心配になってしまう。
でも角灯の中に居るので手が届かない。せめて少しでも刺激を与えない様慎重に持った。
「・・・着いたわ。」
薫風に長い前髪を遊ばれ乍ら辿り着いた丘の上。
其処には何やら小難しそうな模様が描かれた丸く平べったい石が中心にあった。
石は僅かに光っている・・・彼に乗れと言う事なのだろう。
そしてそんな石の周りを回っている者達が居た。
沢山の歩く華・・・姉さん達だ。
姉さん達は石には乗らず、只延々と俯き乍ら歩いていた。
向日葵の頭に蜈蚣の躯が付いた者、紫陽花の躯に蜘蛛の足が生えた者、蔦の足を持つ蛇、枝垂れ桜を伸ばして飛ぶ甲虫。
誰も一言も発しない所為で、只草葉の擦れる音丈が響いていた。
中へ通して貰わないと。
そっと輪の中へ足を踏み入れる。
「おや、こんな所迄良く来たね。」
頭上から声が振り、振り向くと大きな向日葵が咲いていた。
「えぇ、有難う。奥へ行っても良いかしら。」
「勿論だ。君の為の席なんだから・・・おや、」
向日葵は蜈蚣の躯を一気に折り曲げ、繁々と私の事を眺めた。
否、正確には手の中を。
「・・・此の子はもう役目を終えているね。」
「あっ・・・、」
言うや否や向日葵は中心が大きく裂けた。
中は絳く、内臓の様に蠢いている。私なんて一呑みに出来そうな位大きな口。
でも向日葵が狙っていたのは私ではなかった。私の手の中の角灯だったのだ。
気が付いた時には向日葵は角灯を銜えており、一気に噛み砕いて呑み込んでしまった。
「兄さんっ、」
角灯が割れて玻璃が飛び散る。
飛び散った鋒に思わず身を引いたが、私は逃げる事丈はしなかった。
「そんな、如何して兄さんをっ、」
向日葵の細い胴体の何処を流れているのか分からない。
でもこんな、あっさり奪われるなんて。もっと一緒に回りたかった、ちゃんと二柱で此処に来たかったのに。
「そんな恐い顔で見ないでくれよ。彼の子は、君を導くのが役目、其が今終わったんだ。」
「役目、役目。」
「終わったら消える。」
「壊れる前に壊さなきゃ。」
向日葵を抜きに華達は又回り始めた。
譫言の様に声が谺する。
「然う・・・だったの。」
役目が終わってしまったのなら仕方ない、私も終われば消える身だから。
兄さん達を責める事も出来ない、だって此が彼等の役目だから。
私達の・・・選定をするんだ。彼女に逢う資格があるか。
私はそっと足元に散らばった玻璃の中で一番大きいのを拾った。
せめて此を、最後に兄さんと一緒に。
「さぁ御行き、君は君の役目を果たすんだ。皆が然うである様に。」
そっと頷いて私は華達の輪の中へ入れて貰う。
中心の石の上へ・・・緩り呼吸を数える。
「役目を、役目を。」
「果たさなければ、」
「存在の意味を問え。」
然う、役目は果たさないといけない。
だって私達は、アティスレイだから。
此処は、私が生まれる迄の世界。
マザーが私に与えてくれた世界。
此処を出て、私は彼女に逢わないといけないの。
其の為に私は、存在するのだから。
「ねぇマザー、私は彼の子に何をしたら良いの。」
華達は示し合わせた様に足を止めた。
そして私に向け、華を咲かす。まるで一面の華畠みたいに。
「御前の役目は、彼女を殺す事だ。」
華達は一斉に然う告げた。
心臓が止まる様だと言うのは、正にこんな具合なんだろうと思った。
信じられない、でも紛れもない事実で、私は其を受け入れないといけなくて。
如何して、と言い掛けて私は口を噤む。
アティスレイは考えてはいけない、只命じられた事を熟さないといけない。
屹度マザーなりの考えなのだろう、私には一切の戦闘能力なんて無いのにそんな事を命令されるなんて。
じゃあ最初から彼の怪物の姉さんみたいに戦える私にして欲しかった。こんな感情、要らなかったのに。
恐らく、戦えない筈の私が彼女と戦う事で、彼女の反応が見たいんだ。
噫、彼女はどんな顔をするだろうか、躊躇なく殺してくれるのか、憐れむか、怒るのか。
只、何にしても彼女に対してそんな事をしないといけないなんて・・・、
・・・マザー、貴方は狂っているわ。
屹度忘れられたのが辛かったのね、だからこんな事をするのね。
でもこんなの無意味よ、私には分かるわ、徒にこんな事をした所で・・・。
程なく、私は彼女に逢うのだろう、いや、逢ってしまうのだろう。
命令に背く事は出来ない、でも、いや、だったら、
知らず零れそうになっていた涙をぎゅっと堪える。
そして出来る限りの笑顔を、華達に返した。
「御免なさいマザー、私、其の期待には応えられないわ。」
そっと玻璃片を首元に添える。
もう迷わずに私は自分の頸を思い切り掻っ斬った。
視界が回る、自分の中から信じられない位の絳が零れ出す。
御免なさい御姉さん達、折角華を貰ったのに。
御免なさい兄さん、折角此処迄導いてくれたのに。
スカートを褒めてくれたのに、怪物から私を護ってくれたのに、御話してくれたのに。
全て、無駄になる。私の絳の世界は終わる。
噫せめて・・・一目彼女には逢いたかったけれども。
手を伸ばした所で何も掴めない。華達がじっと私の事を見ている。
視界が徐々に絳一色に染まって行って・・・、
最後に藩茄が潰れた様な音丈が響いた。
はい、真絳な彼の子の話でした。
スレイちゃんは結構切ない存在です。其の一片でも表現出来たらなぁと思っています。
感覚としては不思議の国のアリスでしょうか?あんな世界観大好きなので色々ハチャメチャに書いてみました。
御蔭で可也読み難かったかも知れません、御免よ、でも狂った甘い世界ってあんなもんでしょ?
兎に角パワーワードが盛り込まれていましたね。何でも姉さんって呼ぶ所為でもう自由ですね。
碧樹も鳥も蟲も華も化物も蝙蝠も扉も闇も全部ぜーんぶ兄弟!誰に対しても姉さんと声を掛ける彼女は中々狂気だったと思います。
ちょいちょいスレイちゃんが割と死んでると口にしていたので其の裏側を書きたかったんですよね。うん、良い悲劇が出来上がりました。
割と書いていて楽しかったので、又何時か別パターンで書いても良いかも知れませんね、名付けて『スレイちゃんの怪奇世界譚』みたいな。
絶対悪趣味マックスなので『吟遊詩人の忘れ語り』みたいな胸糞祭りだと思いますがね・・・忘れなければ検討してみます。
と言う事で今回は此処迄!そして次回の話は未だ殆ど書けていません!(素直)
恐らく一ヶ月後位には御目見え出来るかも・・・?そんな未来を目指して又ちまちま書いて行きます。
其では又御縁がありましたら御会いしましょう!




