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次元龍屋  作者: -Sare-
忘れられた世界の追憶
61/140

41次元 翼亡き天使と溝壑の化物の次元

 今年も宜しく御願いします!(ズギャーン!!)

 当たり前の挨拶を交わしつつ今年初投稿です!何と言うかリアルが又厳しくなったのでさり気無く一日一頁ノルマがきつくなって来た此の頃です。其でも一度止めてしまえば立ち直れない気がするのでギリギリ足掻きますがね。

 然う言いつつも今回は挿絵を沢山描いてみたよ!頑張ってる!段々凝った容姿の化物が増えて来たので画力と戦い続ける日々ですが、まぁ描かないよりはマシ!精神で載せて行きますね、恥なんて言葉は存在しない。

 そんな今回はちびセレちゃんの物語・・・と思いきや、涙を呑んで普通の次元の御話です。(言う程普通じゃないけれど。)

 ちびセレの話は現在進行形で書いているのでもう暫し御待ちください、未だ割と先の投稿になりますが。

 此を書いている途中にも挿入ストーリーのアイディアが浮かんで来たので、どんどん遅れそうですね。非常にタ・ノ・シ・ミ・デ・ス・ネ。

 大体次元に行かす子達はランダムで決めているんですが、段々書き易い子が多く出るシステムになっているのでそろそろ帳尻を合わせたいですね。

 其ではどうぞ、一寸ビターチックな御話を御楽しみくださいませ!

地の底に降りてはならない

彼処は天使になり切れなかった憐れな化物が腹を空かせて待っているから

化物は私達を羨んでるの、だから翼から食べるそうよ

噫憐れなディロ、飛べなくなったなんて情けない

どんくさかったテームが昨日堕ちた(バカ)りなのに

私達は天使、気高き天使

飛べないなら貴方はもう仲間じゃないわ

   ・・・・・

「其じゃあ行って来ますね。セレを宜しくです。」

「噫何か悪いな、行って貰って。」

「むぅ・・・我も付いていたいのだが、仕事も大事なのだ。帰って来たら褒めて貰うのだ。」

「キュウキュ、」

ガルダの手の中のセレが嬉しそうに鳴いて尾を振った。

 (アレ)から何日か経ったけれども・・・未だセレが戻る様子がない。

 ずっと小さな獣の(ママ)だ。こんな彼女にも一寸(チョット)慣れて来た自分がいる。

 只セレが不調だからって仕事に何日も行かないと言うのは・・・元気になった彼女に怒られそうだ。

 其の為ロードやハリー達に今日は行って来て貰う事にしたんだ。

 ・・・まぁもっと大きな理由が他にあるんだけど。

「成る可く早く帰って来なきゃね。こんなチャンス然う然うないし。」

「焦り、駄目、仕事、ちゃんとする。」

飃はガルダの手の中のセレをちらと丈見遣った。

 其の視線に気付いてか一寸(チョット)丈セレが小さくなる。

 ・・・然う、問題は彼、飃だったのだ。

 実は昨日の(ヨル)、セレが彼に襲われてしまったのである。

 俺の部屋に侵入していたんだけれども、(スンデ)で起きて本当良かった。

 俺が起きるとケロッと飃は暗殺を諦めたけれども、もう少しタイミングがずれていたら・・・。

 と言う事で流石にもう放って置けなくなった。其処で仕事に(カコツ)けて店から暫く出す事にしたのだ。

 一応見張りと言うか、付き添いで三柱共行って貰う事にした。

 此でセレが襲われるリスクは一気に減る。

「フフ、御任せくださいガルダ。其じゃあ行って来ますね。」

一応事の顛末はロードに丈話している。ハリーとかだと咬み付き兼ねないからな・・・。

 セレが仲間と言っている手前、下手に出来ないし、仕方ない。

 暗殺が失敗してから随分と飃は大人しくしていた。仕留め切れなかった事を反省しているのかも知れない。

 だからまぁ苛立ちに任せて仲間を襲うなんて事はないと思うけれど、一応其を加味してロードを入れたのもある。

 ロード達は其の(ママ)扉を開けると次元へと旅立つのだった。

   ・・・・・

「さぁ今回はどんな次げ・・・キャァアアアッ!」

ロードの悲鳴が一面の蒼旻(アオゾラ)に吸い込まれる。

 どんなに手を伸ばした所で何も掴めない。雲華(クモ)すら一つも無いのだ。

 然う、ロード達は旻中(クウチュウ)へと投げ出されていたのである。

「おっと此は不味いね。」

「ぬをっ⁉危ないのだっ!」

飃は即座に(ツエ)(マタガ)り、ハリーは人身を解いた。鏡は元から飛んでいたので何ともない。

 問題は先陣を切ったロードだった。

「ぬぅ、早く我の尾に掴まるのだ!」

ハリーが尾を振り上げ、ロードへ向ける。

 此の(ママ)では彼女が助からない、死に戻りなんてさせたら、

 焦る気持を押さえてハリーは身をくねらせたが、何だかロードの様子はおかしかった。

 初めこそ悲鳴と共に落ちていたが、今は・・滞空している?

 所か少しずつ此方に向けて近付いてくる。と、飛んでいるのだろうか。

 翼なんて無いし、聖にそんな力は無い、一体如何やってるのだろう。

「御待たせ、行き成り落ちちゃうから吃驚したわ。」

「・・・?如何して、飛べる?此方一緒?」

ロードは足を動かしている丈だ。スキップする様にリズミカルに動かしているが、勿論そんな事しても飛べない筈だ。

「え?えっと・・・噫私別に飛んではないわよ。」

「でも浮いてるよ。中々面白い飛び方だし。」

「別に大した事してないわ。落ちちゃうから空気を蹴って無理矢理自分を浮かせている丈よ。」

・・・?

 一同の頭に疑問符が浮かぶ。今一彼女の説明が分からない。

「空気、蹴ったら、飛べる?」

「然うよ。一寸(チョット)コツがあるけれど、昔練習した事があったから役立って良かったわ。空気の塊を意識して一気に踏み抜くのがミソよ。」

「ぬ、ぬぅ?よ、良く分からないのだ。空気を蹴る等、出来る物なのか?」

「・・・あれ、確か御姉さんって怪力の持ち主だっけ。」

一柱丈何となく状況が分かって来た飃は薄ら冷汗を掻く。

 如何やら彼の本能が危険信号を告げているらしい。

 自分は偶然(ヨル)だったから助かったけれど、(アサ)だったら下手したら御姉さんに助けられていたのかも知れない・・・御姫様抱っこで。

「怪力って言っても・・・一寸(チョット)鍛えている丈よ。此の技も千年其処等で習得したわ。」

「千年・・・其処等。」

「・・・我がもう一頭生まれてしまうのだ。」

ロードは冷汗一つ掻かずそんな芸当、正しく神業を見せ付けて行く。

 其をずっと続けられる時点で凄いのレベルを超えているのだが、流石に此の(ママ)にもさせられない。

 明らかに運動エネルギーは自分達の比じゃない。折角だから乗せて置こう。

「凄い物が見れたのだ・・・只その、疲れてもいけないし、我の背も空いているから乗ると良いのだ。」

「あら・・・じゃあ折角だし乗せて貰おうかしら。」

最後にロードが空気を蹴り上げるとハリーの背に飛び乗った。

 一体此の細腕の何処にこんな力が。

 然う疑いつつもハリーは身をくねらせて其の考えを隅へ追いやった。

「ん・・・向こうに何かあるね。他に目ぼしい物ある?」

やっと落ち着いたので周りを見遣ると眼下に平原が見えた。

 木々の生えた一寸(チョット)した原っぱがずっと続いている。何か生物が居る様子は無さそうだ。

 だが飃が指差した先には確かに気になる物があった。

 其は巨大な渓谷だった。横真直ぐに亀裂が入っている。

 只少し丈覗けた渓谷の中は(アカ)や黄の色取り取りの何か布の様な物がはためいている様だった。

 水鏡(ツキ)の出ている(ヨル)とは言ってもそんなに辺りは薄暗くない、御蔭で鮮やかな其等が目に付いた。良い

「何だか旗みたいね。目印っぽいし、良いんじゃないかしら。」

「是、行ってみる。」

意見も(マト)まり、一同はそっと渓谷へと近付いた。

 心地良い薫風(カゼ)が吹いている、一見何とも平和そうな次元だ。

 此の次元で、一体セレは何をしてしまったのだろうか。

 近付いてみると渓谷は何と街の様だった。

 渓谷の底に向け、何重もの吊り橋が縦横無尽に張り巡らされている。

 其の橋の所々に木製の小さな家が建っていた。

 旗だと思っていた物は如何やら洗濯物の様で、薫風(カゼ)を受けて()の家の前も華やかだった。

 美しい街だった。まるで一つの芸術作品の様に、渓谷の中でひっそりと一つの街が其処にはあったのだ。

「綺麗、初めて見た。」

「然うね、不思議な街だわ。何処迄続いているのかしら。」

渓谷の深さは中々な物で、深過ぎて底が見えず、暗闇が広がっていた。

 只其の闇が街の華やかさをより引き立てている気がする。

「うーん、でも歓迎はされてないみたいだね。」

家々からは街人らしき者達が姿を現していた。

 誰もが(ソラ)に居る自分達に気付き、何とも怪訝そうな顔を浮かべていた。

 まさかこんな早く見付かるとは。ハリーは龍の(ママ)だし、不審に思うのも無理はない。

 其でも穏便に行かないと。

 ロード達は(メクバ)せを送ると(ユック)りと街の方へ降りて行った。

 行き成り襲われてもいけないし、成る可く街の端の方へと降り立つ。

「あ、あの・・・君達は一体、」

ロード達が降りたのを見計らって一人の青年が声を掛けて来た。

 此処の人達はパッと見た所、常人の様だった。

 魔力は余り感じず、(シロ)過ぎる程の肌と、皓髪(ハクハツ)である事が皆共通している。

 同じ常人の姿と言っても()うも特徴が違うと警戒はしてしまうだろう、此処は(ユック)り手を出そう。

「はい、今日は。私達は色んな所を旅している者でして、」

「旅人さん、か。あの・・・今飛んで来ましたよね?」

「—・・・、」

応えようとして無数の視線に気付く。

 見られている、じっと。

 街人達が自分達の一挙一動を逃すまいと見ていたのだ。

 興味があると言うより此は・・・威圧?

「・・・飛んでいたよな。」「仲間なのか?でも、」「我等丈では、」「姿は違うのに?」「翼も無いぞ、」

ひそひそ話がそっと一同を取り囲む。

 此は・・・思ったより不味い初まりかも知れない。

「いえ、実は飛べる訳ではなくて、少し浮ける丈なんですよ。術を使って、何とか此処迄やって来たんです。」

自分は(ソモソモ)初めから飛んでいた訳ではないけれども、他の皆は然うではない。

 今の街人達の様子からして自分達は何かを試されている気がする。此処は慎重に行かないと。

「浮ける・・・丈ですか?」

「然うだよ。僕達外套してるでしょ。其に薫風(カゼ)を入れて浮かせて貰ってるんだよ。」

「な、成程分かりました。色々訊ねてしまって済みません旅の方、どうぞどうぞ。」

青年は何処か安心したらしくほっと胸を撫で下ろした。

 周りの人々も急に視線を逸らして日常に戻ろうとする。

「・・・何とかなったみたいだね。」

「若しかして此の街で飛ぶはNGワードなのかしら。」

明らかに自分達を包む態度が変わった。

 先迄は敵意すらも窺えたので事無きを得て良かった。

「此処、飛ばない方、良い?」

「みたいね。鏡もなるべく地に足を付けてくれるかしら。」

「此の街初めて見た、面白いから歩きたい。」

「むぅ、我も人身になるチャンスを見誤ったのだ、むむ。」

「ハリーは其の(ママ)の方が良いんじゃないかしら。別に姿に驚いている風でもないし、逆に変身出来る方が怪しまれるわ。」

「同意だね。(ムシ)ろ其の姿じゃないと吊り橋から落っこちちゃうよ。ドラゴン先輩は其の(ママ)で良いんじゃないかな。」

「分かったのだ。じゃあ・・・、」

「背中、乗ってみたい。」

鏡はさっさとハリーの背に飛び乗ると(クビ)に掴まった。

 ハリーは一度鼻を鳴らしたが、其の(ママ)乗せてくれるらしい。

「一応大丈夫然うではあるけれども。」

街人の反応は其でも矢っ張り何処か余所余所しい。

 関わりたくないと言うか、受け入れてはくれていないみたいだ。

 此の次元について色々聞いてみたいのに、此の様子だと聞き込みも厳しそうだ。

「旅人さん、一寸(チョット)良いかい?」

出方を悩んでいると一人の青年が声を掛けて来た。

 背も低く、子供っぽい顔付の彼は何とも人当たり良さそうに(ワラ)って一同に軽く会釈する。

「何か困っているみたいだし、街の案内位なら出来るけれども、如何だい?」

「ぜ、是非御願いします!」

何とも有難い、此で一気に動き易くなった。

「あの、私はロード、順に飃、鏡、ハリーと申します。宜しく御願いしますね。」

「はい、僕はリース、えっと・・・他言無用で御願いしたいんですけれど、」

リースと名乗る青年はそっと一歩ロードに近付き、耳元に口を寄せた。

「皆さん、飛べるんですよね?先はほら・・・言い出し難い雰囲気だったろうけれど。」

「・・・其は、飛べるの基準次第かと。」

悪いけれども安易に信用出来ない。

 飛べるとあっさり言ってしまったら・・・一体如何する気なのだろう。

「ま、確かに御姉さんは飛んだとは言えないね。正しく浮いてると言うか、飛ばされていると言うか。」

「成程ね、まぁ此処は僕一人だから言える事だけれども、」

より声を(ヒソ)めてリースはもう一歩詰め寄った。

「皆、飛べる人が恐いんだ。秘密を暴かれてしまうかも知れないから。」

そっとロードから離れ、彼は大仰に手を振った。

「其じゃあ先ずは図書館迄御案内しようかね。」

「図書館、静かな所。」

「・・・街の事、知りたかったら付いて来てくださいよ。」

相変わらず隠れる様に呟くとリースは先陣を切って吊り橋を渡り始めた。

 断る理由なんて無い、其こそ私達が知りたい事だ。

 ロードは一同に(メクバ)せをすると彼の後に続いた。

 知りたい事は他にもある。

 此処には・・・次元の主導者(コマンダー)が居ない。

 一体何処に居るのだろうか、早目に接触したいのだけれども。

 飛ぶ事を恐れる住人達、彼等の抱える秘密と黔日夢の次元(ゼロ・ディメンション)は関係があるのか。

 知りたい事が、山済みだ。

   ・・・・・

 暫くリースを先頭に街を歩いた。

 彼が居てくれる御蔭か、街人からの視線は減った様に思う。

 街は常に渓谷を抜ける凱風(カゼ)が吹いていて、気を抜くと一気に押されそうだ。

 気を付けないと・・・落ちてしまったら助からないだろう。

「むぅ・・・む、案外下にも街はあるのだな。」

ハリーが其の長い首で吊り橋から身を乗り出して眼下を見遣った。

 底の見えない闇が広がる中、下る吊り橋が幾つもあり、街は存外上下に長いらしい。

「噫、下はもう(ホトン)ど棲んでいないですよ、皆上が好きだから。」

「其は何か(ソラ)への憧れかしら。」

例えば谷から出たいだとか・・・正直此の街は立地が良いとは思えない。

 リースは一寸(チョット)丈驚いた顔をしたが、直ぐ頭を掻いて笑った。

「憧れ、というよりは当然と言うか・・・はぁ、説明すればする程、滑稽な話ですけどねぇ。」

其の時一際大きな凱風(カゼ)が吹き、ロード達は蹌踉(ヨロメ)いてしまう。

 こんな揺れる吊り橋じゃあ矢っ張り不安だ。

「今、何か声、した。」

鏡がハリーの頭に()じ登って覗き込んだ。

 心配そうにそっとハリーが手を添えてやる。

「声って、下からかしら。」

「へぇ、旅人さんにも然う聞こえるんだなぁ。」

「獣の遠吠えみたい、悲しそう。」

「・・・何かあるのかな。」

ちらと飃も吊り橋の下を見たが聞こえるのは只の凱風(カゼ)の音だった。

「さて着きましたよ。外は危ないですし、中で話しましょう旅人さん。」

図書館は割と谷の下の方にあった。

 確かに谷を下れば下る程人は棲んでいないらしく、出歩く人も居なければ周りの家々は壊れ掛けていて廃屋だと直ぐに分かった。

 図書館丈は異様に綺麗で、使われているのが良く分かった。屹度此処等で唯一機能している施設なのだろう。

「ふーん、まるでゴーストタウンだね。下の方が凱風(カゼ)も弱いし、陽もそこそこ入るから良物件っぽいのに。」

「旅人さん達、若しかして普通じゃなかったりします?まるで探られてるみたいですね。」

「普通じゃなかったら如何するの?」

挑発的な飃の台詞にリースはより嬉しそうだった。

「私は大歓迎ですよ、然う言う非日常。」

リースは図書館の扉を開けると中へ入って行ってしまう。

 此処迄来て入らない訳にも行かない。

 此の街には何かある、其の確信丈を持って足を進めるのだった。

「誰も・・・居無いのね。」

図書館は外観とは違い、無人で少し埃っぽかった。

 筒状の・・・巻物だろうか、其が壁一面にある専用の棚に収められている。

「旅人さん達は知らないかも知れないけれど、此の街に旅人なんて滅多に来ないんだよ。」

リースは適当な机の埃を払うと椅子を並べ始めた。

「だからこんな所利用する人なんていないよ。此処の書物の内容は皆の頭の中に入ってるし。・・・さ、どうぞ座って。」

「じゃ遠慮なく。御話聞かせて貰おうかな。」

流れる様に座らされたけれども、罠の類だとかは無さそうだ。

 リースは・・・一寸(チョット)得体が知れないけれども、悪意を持っている風には見えない。

 何か考えがあって案内してくれている様に見えるけれども。

「あの、貴方が歓迎してくれて迚も嬉しいわ。でも如何して見ず知らずの私達に良くしてくれるのかしら。」

「別にそんな深い訳がある訳じゃあ・・・っと済みません、クッションも出しますね。」

ハリーが椅子と格闘しているのを見兼ねてリースは直ぐ様大きな座布団を持ち出した。

「うむ、此は何とも座り心地が良いのだ。」

人身になろうか一寸(チョット)悩んでいたので有難く座らせて貰った。

 皆と異なる姿と言うのは楽な半面、色々とやり難い所が如何しても出てしまう。

「えっと、実は・・・他の方には内緒ですよ?私前にも一度旅人さんを案内した事があるんですよ。」

其は内緒にしなきゃあいけない様な話なのだろうか、如何も先から彼は街人に聞かれたくない話を多くする。

「旅人さん、と言うには変わった小父さんだったけど、気付いたら街の中に居て、髪は小豆色、目は(アカ)いしで直ぐ外の人だって分かって、一寸(チョット)話をしたいんだって持ち掛けられたんですよ。」

懐かしむ様にリースは組んだ手をじっと見ていた。

「そして話したら存外面白くて、私は街から出た事が無かったから外の話は刺激的だったし、他の街人と違ってね。変な気とか使わなくて済むから迚も気が楽なんですよ。だから私は貴方達と関わっている丈ですよ。」

「面白い話ってのが君の欲しい対価なのか。」

「然う言う事ですね。街の事、他の皆が話せない事を他言無用にしてくれるなら幾らでも話しますよ。だから旅の話とか聞かせてくれませんか?僕は楽しめるし、皆さんは旅の話の種になって、悪くない話でしょう。」

「えぇ、勿論よ。如何かしら、先に街の事を聞いても良いのかしら。」

旅の話・・・異次元の話になるけれどもした所で問題は無いだろう。

 彼が楽しみたい丈というなら、面白半分と言うか、暇潰しの感覚で聞いてくれるのだろう。

 只此の次元の外が如何なっているか全く分からないから何処迄話して良いか判断が難しいけれども・・・。

「良いですよ、街の事を話すって言うのも新鮮な感じがして。・・・何処から話しましょうか。希望があれば歴史から、若しくは()の街人の反応と言うか閉塞感、何方(ドチラ)でも何でも良いですよ。」

「歴史から聞いてみたいわ。如何してこんな街になったのか、良く知りたいもの。」

「此は此は、話甲斐がありますね。」

席を立つとリースは棚を漁り始めた。

 そして何巻かの巻物を持って来て机に広げて行く。

「何だか此読むの久し振りだなぁ・・・えっと、事の始まりは五百年程前に遡るんですけど、」

広げられた巻物には人の背に翼が生えた様な者達が描かれていた。

「此は、私達の御先祖天使様。昔は群で旅をしていたんですけれども、此の谷の底である化物を見付けたんです。」

「へぇ、君達天使の末裔なんだ。良いね、かっこいいじゃん。」

「先祖が偉大だからって子が偉いとは限らないですけどね。」

「化物とは何なのだ?まさか先の声は、」

鏡が聞いた谷底からの声、(アレ)が風鳴りなんかじゃなかったら、

「然うかも知れませんね。私は実物を見た事が無いけれども大きくて(クロ)くて天使なんて一呑みにしてしまう化物らしいですよ。飛ぶ事も出来ない卑しい化物だって聞かされたけれども。」

「・・・何だか一寸(チョット)()の化物っぽくない?」

そっと飃がロードに耳打ちをした。

 ()の化物・・・彼が然う指すのはセレの事だろうか。

 まぁでも確かに一概に違うとは言えない。黔日夢の次元(ゼロ・ディメンション)の影響が其処に残っているかも知れないのだ。

「何か興味を持って貰えましたか?で、勇敢な天使達は其の化物が谷から出ない様見張る為に其処に棲み始めたんです。」

「見張る?見えなかったのに?」

「だから言ったでしょう、私も見た事が無いって。」

「あんなに谷底から離れたら見える物も見えないだろうね。」

所か街は上へ上へと伸びている様だった。廃墟と化した下の街へ行けば、其の化物が見えるのかも知れないけれども。

「然う、此処迄が昔話。如何です?面白かったですか?」

「えぇ、迚も興味深かったわ。でも其と先の飛べるか如何かについては如何関係があるのかしら。」

「然うですね、じゃあ旅人さん達、貴方達は最初私達を見て如何思いましたか?昔の様な立派な天使に見えましたか?」

両手を広げてリースはまるでスポットライトを浴びたかの様にポーズを取った。

「見えなかったでしょう。だって翼が無いんだもの、昔はあった翼がね。」

「じゃあ今、飛べない?」

鏡の一言にそっとリースは静かに、とジェスチャーを送った。

「其は此の街では禁句ですよ。皆自分達には透明な翼があるって信じてるんだから。」

「成程ね。言いたい事は分かったよ。皆翼が退化して無くなっちゃったのに、誰も其を信じてないんだ。未だ飛べるって、信じてるんでしょ。」

「然う言う事、まぁ私も皆に聞いた訳じゃないから本心は知らないけれど、幼い頃は然う教えられましたよ。私達にとって飛べない事は化物と同じと言う屈辱なんです。だから皆飛ぶ事に関しては敏感なんです。」

「見栄を張り続けるのも大変なのに良くするわね。」

皆が互いに飛べない事を隠して見栄を張り続けると言うのは傍から見たら何とも滑稽だ。

「そ、だから私は息が詰まっちゃって、()うして旅人さんと話す事で息をしているんですよ。見栄を張らなくて良いのは本当に気が楽なんです。」

「ふーん、天使も大変なんだね。水面下の抗争と言うか。」

「然うですね。だから一応忠告ですが、街の中では飛んだりだとかは控えた方が良いですよ。・・・羨んだ末に何かされるかも知れないので。」

(ソラ)、じゃない。翼、憧れてる・・・変。」

苦笑してリースは巻物を棚に戻して行った。

 此の街は自尊心と虚栄心で出来ている。其なら息も詰まるだろう。

「実は私は近々、街を出ようと思っているんですよ。自由になりたい、こんな街に閉じ込められるなんて懲り懲りなんです。もう直ぐ谷の上迄街が完成するので、然うしたら飛べない私でも出られるんです。」

「然うね、やりたい事があるのは素敵な事だわ。」

「と、言う事でっ、」

ドシッと椅子に腰掛けるとリースはニコニコと満面の笑みを浮かべた。

「街の歴史はこんな物で良いでしょう。今度は旅人さん達が話してくれる番ですよ。」

「むむ、旅の話が聞きたい、と言う事だったな。」

「はい、今後の旅の参考にもなりますし、あ、皆さんは飛べるのでずっと遠くの街とかも見ているだろうし、然う言う話でも大歓迎ですよ!」

旅・・・次元の外の話にはなるのだが。

 話しても良いのだが、旅の参考にされるのは如何なんだろう、此の街には存在しない街(バカ)りかも知れないのだ。

 (ソモソモ)此の街の外に果たして他の街があるのかも分からない。曠野(コウヤ)しか自分達は見ていないのだ。

「因みに前来ていた旅人はどんな所の話をしたのかしら?出来れば其処と違う話が聞きたいでしょうし。」

「ははぁ、前の方は小父さんでしたが中々ユーモアがありましたよ。私が世間知らずもあるでしょうけど、船が(ソラ)を飛んだり、海底に国があったり、宇宙で生きてる人達とか・・・到底信じられない所(バカ)りで。でも楽しかったですよ、まるで本当に見て来たかの様に話してましたし。」

其は確かに信じられない話である。

 此の街の様子を見た限りでも先の話が全て空想であろうとは分かる。

 いやでも・・・若し其の話が嘘でないとしたら?

 其の旅人は若しかして・・・いやまぁ今其の話は良いだろう。

 そんな話でも彼は喜んでくれたと言う事は、矢張り彼にとって大事なのは暇潰し、此の街の外との関わりだ。

 一応自分は長年次元を見ているのだし、話の種は尽きない。

 そんな此の世界からしたら荒唐無稽な話でも楽しんでくれるなら互いにやり易いだろう。

「然うね、分かったわ。じゃあもっと遠くの街の話になるけれども・・・、」

大神の宮処に居た時を懐い出す。

 (アレ)も大切な、私にとっての永い旅なのだ。

   ・・・・・

「ほうほう・・・いやー皆さん素晴しい旅人さんですね!今回は本当に面白い話が聞けました。」

小一時間程経った頃だろうか、其迄も興味津々に私達の話を聞いていたリースが手を叩いた。

 彼は本当に()う言う話が好きらしく、すっかり頬が紅潮してしまっている。

 其でも興奮冷めやらぬと言った様子で目がキラキラと輝いていた。

「如何かしら、話丈でも満足して貰えたかしら。」

色んな次元の事を当たり障りなく話したつもりではある。

 彼からすれば信じられない様な話(バカ)りなのに迚も真剣に聞いてくれた。

 若しかしたらハリーの存在が大きかったかも知れない、聞いた所彼はハリーの様な獣を見た事が無いと言っていたのだ。

 そんな未知が目の前にあるのだから説得力はそれなりにあったのかも知れない。

「はい十分ですよ、本当に有難う御座います。迚も有意義な時間でしたよ。」

リースは席を立つと落ち着きなく辺りを歩き始めた。

「噫矢っ張り旅に出たいな・・・こんな街に居たって何にもならない、私は外に出たいです。」

「そ、そんな直ぐに⁉あの、しっかり準備は必要よ。旅は危ない物なんだから。」

自分達の話が引き金になって彼が野垂れ死んだりしたら寝覚めが悪い。

 実際此の街の外にそんな世界が広がっている保証はないのだから。

「実は準備自体は既にしているんですよ。谷も一寸(チョット)登れば外だし・・・良し、」

「ふーん、でもそんな思い付きで行動するのは御勧めしないよ。」

「旅人さん達は御気になさらず。大変なのも重々分ってますよ。若しかしたら一つ目の街にも行けずに終わるかも知れません。其でも此の街で退屈な(ママ)終わるのは嫌なんですよ。」

「決意、固い、良い事。」

「然うね、其処迄の覚悟があるなら止めないわ。道は別々だけれども頑張りましょうね。」

「はいっ!其じゃあもう良いでしょう。此処を出ましょうか。」

リースに促され、図書館を後にする。

 結局、自分達が滞在中に訪問者は来なかった。誰も利用していないのは本当の様だ。

「さてと、旅人さん達は如何します?(アンマリ)無いですけど観光だとかしますか?」

「えぇ、然うね。じゃあ、」

ロードが足を進めようとした時、一つ丈目に付く物があった。

 此処、街の下層には自分達以外誰も居ないと思っていたが、三人の少女が近くの吊り橋で話していたのだ。

 だが其の様子が何処かおかしい。何となくロードの視線が其処へ注がれた。

「闇が恐いだとか天使失格でしょ。」

「で、でもだって、先も声がっ・・・、」

「ねぇ私達の使命、忘れちゃった訳?化物を見張ってるんだから声位聞こえて当然でしょ。」

何だか険悪な雰囲気だ・・・二人が一人を追い詰めている様である。

 実際言い負かされている一人は吊り橋のギリギリ端に心細そうに立っていた。

「そんなビビりな奴なんて願い下げよ。あ、若しかしたらアンタ飛べないんじゃないの?」

「あーだから闇が恐いんだ。うわ、飛べないとかマジ無いわ。」

「そ、そんな事・・・っ、と、飛べるよ、ちゃんと。」

「如何だか、アンタ直ぐ嘘()くもん。」

「う、嘘なんかじゃっ!」

「じゃあさ、()うしようよ。アンタが飛べたら先言った事も信じてあげる。化物が不気味な詠詠ってたってさ。」

「ちゃんと街長さんにも言っとくよ。じゃないと嘘だったら私達も恥掻くもん。」

「う・・・あ・・・、と、飛べたら、信じるの?」

「ほら何愚図ってんだよ。飛ーべ、飛ーべ、飛ーべ、」

一寸(チョット)羽搏(ハバタ)きゃ良いんだから楽でしょ。飛ーべ、飛ーべっ!」

二人が飛べ飛べとコールをして手を叩く。

 (ハヤ)し立てられた方は青くなって谷底を見詰めていた。

一寸(チョット)(アレ)、止めさせた方が良いんじゃないかしら。」

「ま、確かに良い雰囲気じゃないね。」

「っ、一寸(チョット)貴方達、」

ロードが一歩踏み出した時だった。

 少女が・・・吊り橋から落ちたのだ。

 正確には飛び降りた。

 そして・・・リースの言葉を信じるならば、其の(ママ)翼亡き少女は谷底の闇へと吸い込まれてしまった。

「うわ、マジで飛べなかったじゃん彼奴。」

「自分から化物の仲間入りとか無いわー。」

一寸(チョット)何て事してるのよ貴方達‼」

慌ててロードが駆け寄ったが勿論間に合う訳がない。

一寸(チョット)何、此の人・・・。」

「っ、未だ助けられるかも知れないわ、一寸(チョット)降りて来るわ。」

然う言うとひらりとロードは躊躇いも無しに吊り橋から落ちて行った。

「うわー御姉さん大胆だね。何が居るかも分からないのにさ。ま、僕も行ってあげようかな。」

「うむ、化物が本当に居るかも知れないのだ。我も助けるのだ。」

「多分ロード、心配要らない、でも一寸(チョット)心配。」

「え、え?た、旅人さん⁉」

リースの目の前で次々に一同は吊り橋から落ちて行った。

 残された少女達とリースはぽかんと口を開けて見ている事しか出来ない。

「飛べるからって・・・無事だと良いけれども。」

   ・・・・・

「っふぅ、予想通り可也深いわね。」

谷底迄一気に降りたロードは地面擦れ擦れで空を殴り、無事着地した。

 (ヒカリ)(ホトン)ど届かない所為で闇が続いている。

 草木一本も無い、荒廃とした地だった。

「むむ、良かったのだ。無事に見付かったのだ。」

身をうねらせ乍らハリーが一番にロードに追い付いた。

 其の後から飃、鏡と一同が集まる。

一寸(チョット)御姉さん、団体行動ってのしっかり意識してくれないと困るよ。」

「行き成り落ちて、吃驚した。」

「迷惑掛けて御免なさい、つい居ても立っても居られなくて・・・。」

「でも()の子は飛べないんでしょ。流石に御姉さんじゃあないんだから落ちたらもう無事じゃないでしょ。」

「うむ・・・其に此処は恐ろしい化物が居ると言っていたのだ。上へ戻った方が良いと思うのだ。」

「然うね・・・もう駄目だろうけれどでも一応捜させて頂戴、せめて遺体丈でも、あんな終わりってないもの・・・。」

「折角落ちた、其位、良いと思う。」

まさかあんな目の前で行き成り飛ぶだなんて思わなかった。

 一体どんな気持で飛んだんだろうか、自棄なのか、本当に飛べると信じていたのか・・・。

 ()の道、先リースが言った通り、肥え過ぎた自尊心が生んでしまった悲しい事故である。

「・・・む、何か聞こえるのだ。誰か来るのだ。」

「え、若しかして、」

ハリーが低空し、じっと暗闇を見詰める。

 闇の中から足音・・・靴だろうか、硬質な音が近付いてくる。

 鬼が出るか蛇が出るか・・・一同が構えていると確かにロード達にもはっきりと音が聞こえて来た。

「っ聖眩。」

小さくロードが唱えると、彼女を中心に地面が(ヒカリ)を発し始めた。

 其の(ヒカリ)に照らされて、近付いていた者も顕になる。

 其は先程迄、ロードが追い掛けていた背中と似ていた。

 落ちた所為か所々裂けて血が滲み、痛々しくはあったが、見覚えがあったのだ。

 だがそんな少女の足は宙に浮いていた。

 投げ出された足からは血が滴り落ちる。

「あ・・・あ、あ、貴方、は、」

何とか声を絞り出したが、其が限界だった。

 先迄追い掛けていた少女は確かに居た。

 だがまさか、化物に頭を喰われた(ママ)で対面する事になるなんて、露とも思っていなかったのだ。

 現れた化物は見えている限り全長8m程。

 全体的に(クロ)く、細長い口で少女を(クワ)えていた。

 頭に目は無く、両前足は刃の様に鋭く大きくて地面を(エグ)り乍ら歩いている。

 背には大きな棘と触手が無数に生え、尾は皮が剥けた様に生々しい肉が盛り上がっていた。

挿絵(By みてみん)

 分かる、名乗らなくても、彼こそが・・・化物だ。

 一気に緊張が一同に走る。

 今動けば、何かが起こってしまう。其の前に如何す可きか考えないと。

 化物は一同を見遣り少し丈首を傾げると其の(ママ)少女をあっさりと呑み込んだ。

 大きく膨らんだ喉が、嚥下と同時に腹へと移動する。

 もう少女は只の肉塊の様だった。

 ピクリとも動かず、声も上げずに其の(ママ)大人しく化物の腹に収まる。

「えっとォ・・・よゥコそ?こんな暗闇迄、(ヒカリ)なんて、何時振り、かなァ。」

舌舐りを一つして化物は然う切り出した。

 口の形状からして少し話し難そうだったが、リース達と同じ言葉で化物は話したのだ。

 茶化しているのかとも思ったが、向こうも少し手を組んだりと落ち着きが無い様だった。

「こんな一杯、落ちるなンて久し振り・・・あ、若シかして先ノ子、助ケニ来た?でも御免、()の子は動かなかったカラ、食べちゃった。」

「君は一体何なのさ。まさか本当に谷底に化物が居るなんてね。」

そっと飃が一同の前に立ち、(ツエ)を構える。

 恐らく、化物が言った事は本当なのだろう。ロードが助けに飛び降りた所で少女を助ける術は無かったのだ。

 頭から落ちて即死、と言った所だろう。頭から喰われたから分からないが、屹度頭は潰れていた筈だ。

 こんな所で死ぬ気じゃあなかったんだろうけれど、苦しまずに死ねたのは未だ救いかも知れない。

「アレ、僕の事知ラない?・・・ア、然うか。君達欲見タラ天使ジャないね。無傷だから、飛べるんでショ?」

随分と御話し好きな化物らしい。目の前で少女を喰った癖に友好的だ。

 餌と話す趣味でもあるのか。其とも・・・、

「僕ハ、ずっと此処に棲んデル化物、だよ。飛べない、愚かな化物サ。滅茶苦茶な躯の所為で何も出来ない鈍間さ。」

「何だか・・・上で聞いていた話と違うわ。此処には貴方しか居ないの?」

リースの話だと天使を喰う狂暴な化物だから谷から出ない様見張ると言っていた気がするが。

 こんな話の出来る存在とは思わなかった。もっと純粋な獣だと思っていたのに。

「今此処には僕と君達丈ダヨ。・・・噫一寸(チョット)御話、スル?」

「・・・えぇ、出来る事なら。」

少女を喰ったと嫌悪するのは簡単だが、其では仕事が進まない。

 何故なら・・・彼こそが次元の主導者(コマンダー)だったからだ。

 まさかこんな下層に居るなんて誰が思うだろうか。

「ヘェ、話すのなんだか久し振りデ、一寸(チョット)苦手だし、此処は天使が堕ちて来て危ないから・・・向コウ、行こう。」

化物は一同に背を向け、のそのそと歩き始めた。

 確かに少し不自由なのか足取りは可也遅い。

 本当に友好的だ。下手したら上の天使達より人当たりが良いかも知れない。

―・・・如何するの、御姉さん方。此処から彼奴の首、狙っても良いけど。―

背を向けるだなんて完全に油断している。(ミカヅキ)凱風(カゼ)なら一撃で沈められそうだけど。

 死んでいたとは言え、人間を喰う様な化物だ。別に命を奪ったって構わないじゃないか。

―未だ待って頂戴。彼は次元の主導者(コマンダー)でもあるわ。安直な行動は危険よ。―

―そ、何かあってからじゃあ遅いから其丈気を付けてよね。―

如何してもあんな化物を見ていると血が騒ぐ。

 狩りたいと言うか、()の化物の影がちらつくからか、(イラ)付くんだ。

 楓夏も謎の焔の化物に殺され、其の原因を作ったのは店主だとかとほざくし、化物に(ロク)な奴なんていないんだ。

 彼奴もどうせそんな化物の一体だろうけど。

 ま、今回僕が仕事に出されたのは店主暗殺がばれたからだろう。

 (アレ)は完全に自分の落ち度だ。()の家主の力を甘く見ていた。

 だから此の処罰も納得している。今回は流石に大人しくしないと後から色々揉めそうだし、余計な手は出さないで置こうか。

「ウン、此処なら大丈夫。どうぞ、座って。」

化物に案内されて着いたのは崖下に出来た虚だった。

 丸く()()かれた丈の物で、我楽多(ガラクタ)が落ちていたりと何処か生活感がある。

 一応、全員が入れる丈の大きさはありそうだ。先に化物が奥に入ってドカッと腰を下ろしたので、一同も続いた。

 此処なら出るのも簡単だし、話位は出来るだろう。

「此処は・・・貴方の家なのかしら。」

「ウン、ずっと此処で寝たり、起きたり、休んだり、シテル。」

前足が大きい割に後ろ脚が小さいからか、伏せっては座らず、化物は皆と同じ様に二足で座っていた。

 (アレ)なら直ぐ立つ事も出来ないだろう。向こうは安心し切っている所がある様だ。

 先、彼は自分の事を飛べない、鈍間な化物と言っていたが・・・天使達の事情も多少は知っている様な口振りだった。

 じゃあ一体如何して、こんな所で何をしているんだろう。

「招待、有難う。此の街、初めてだから、色々発見あって、楽しい。」

「ヘェ、じゃあ遠くから来たんだ!凄イなぁ、どんな所なのか、僕は(チッ)とも知らないカラ。」

「じゃ五百年以上前からずーっと此処で天使喰って生きて来た訳?」

「五百年・・・ウーン、時間の数え方、良く分からナイ。でも、上の街が出来る前から此処ニ居るよ。」

「其じゃあ五百年以上だね。随分長生きしてるけど、ずっと此処で何してんのさ。」

「むぅ、一寸(チョット)ずけずけと聞き過ぎなのではないか?」

ハリーが半目になって飃を見遣ると慌てて化物が仲裁に入った。

「ダイジョブ、大丈夫、話すの、本当久し振り、ダカラ楽しい、大丈夫。」

「其方が然う言うのなら良いのだが、」

目が無いので分かり難いが、化物はハリーを見遣って小さく笑った様だった。

「別に何カしている訳じゃないヨ。此処に居るから、其の(ママ)居る丈。」

「ま、居る丈で上から勝手に餌が降って来るもんね。」

「餌・・・?ソんなのは要らないヨ。けど、食べる約束しタから食べてる。」

「約束?何の事?」

確かに此処には何にも無い。

 落ちて来た天使を喰らう以外にする事は無さそうだ。

 彼の近くに置かれている我楽多(ガラクタ)も、恐らく上から落ちて来た物なのだろう。

「ずーっと昔に天使達とした約束ダヨ?上で聞かなかった?僕の事。」

「御免なさい、上は余り長い事居なかったのよ。」

只の、(クロ)い化物だとしか聞いていない、とは言えなかった。

 此処迄話した丈でも分かる。天使達の話と彼の話は屹度、大きなずれがある。

「そっかぁ、其は残念。昔ネ、此処に天使達が遊びに来たんだヨ。色んな所、旅してるって言ってタ。でネ、ネロンって子が、僕の友達になってくれタンダ。」

幾らか声を弾ませて化物は何とも懐かしそうだった。

 少し丈鼻息も荒くなり、身振りも加わって行く。

「僕と居タイって、言ってくれたけど、他の天使は僕の事、一寸(チョット)恐がってた。デモ、此処棲み易いんダって、言ってた。凱風(カゼ)があって飛び易いって。だから、上ニ棲み始めたの。」

何だか唐突な話の様だが、恐らく此は五百年前の話なのだろう。

 天使達、本物の天使達が、翼を使って此処迄来た時の。

 然うか、翼がある時だったなら、此処は棲み易かったのかも知れない。

 凱風(カゼ)の御蔭で飛び易く、上下に街を創れば、飛んで直ぐ移動出来る。

「僕は飛べないカラ、ずっと此処に居たけど、ネロンは良く遊びに来てクレたよ。楽しかったナァ、街が出来て行くのを見るのも楽しくてね、幸セだったんだ。」

「其が約束と如何繋がるの?」

「ア、然うだね、えっと・・・。ウン、其の後一寸(チョット)悲しい事アッテネ、天使が一人、堕ちて来ちゃったの。飛ぶの失敗して、動かなくなっちゃった。如何したら良いか分からなかっタカラ、ネロンに聞いてみたんだ。」

動かなくなったと言うのは、恐らく最初に落ちて亡くなってしまった天使、と言う事なのだろう。

 翼があったとしても、然う言う事は起きてしまうだろうな。

「ネロンも困ってタ。連れて上がれないし、他の天使達も困ってた。でも、放って置いたら何だか変な臭しちゃって、もっと皆困ったの。ダッタラ、無くなっちゃえば良イノカナって思って、僕食べてみたんだ。そしたら臭無くなった。」

食べたくて食べた訳ではなく、腐敗臭を消す為・・・?

 凄い発想だ。彼は若しかしたら然う言う感覚が少し違うのかも知れない。

 何と言うか、生や死に(ウト)いと言うか、感情が幼いと言うか。

「ネロンも、吃驚してたケド、助かったって言ってタ。ダカラ、次からモ食べてあげる事にしたの。動かなくなっちゃった子丈、食べるって約束シタノ。」

「・・・其方は何も食わなくても永い事大丈夫なのか?」

「大丈夫って何ガ?僕は()の時初めて食べたんダ。不思議ナ感覚ダったよ。」

食べなくても生きて行ける種はそれなりにいるけれども、彼も其のタイプなのだろうか。

 只、其処に居る丈、谷から出ずに居るなんて、精神的に苦痛を受けそうだけれども。

「へぇ凄い、益々化物だ。不死とかだったりするのかな。」

「其の呼び方、良くない。もっと、優しく!」

「あ、然うね。名乗りもせずに御免なさい。私はロード、隣から鏡、ハリー、飃って言うの。貴方は一体何て御名前なのかしら。」

「名前、覚えたよ。でも僕、名前無い。」

「あら・・・其のネロンって子は名前とかくれなかったのかしら。」

「ウン、僕と、()の子しか此処に居なかったから、別に名前、要らなかった。」

確かに然うか。基本一体で居るのなら名前なんて要らないのかも知れない。

 でも化物とは呼び難いのも事実なので、便宜上貴方と呼んで置こう。

「何だか懐カシいなぁ。昔ネロンと()うして良く話してたよ。元気にしてるかなぁ、ズーっと会ってないや。」

「え・・・あ、そ、然うね。」

街が出来たのが五百年前なのだからもうネロンは居ない筈。

 リースの話からも代替わりはしている筈だ。でないと此の谷は天使で一杯になってしまう。

 でも、然うだ。彼は何百年も此処に居た。自身が不死なら其が彼にとっての当たり前になってしまうだろう。

 そして何時しか時が経ち、ネロンも老いて亡くなってしまい・・・彼は又独りになってしまったのではないだろうか。

 誰も来ずに、天使と化物でばらばらな(ママ)・・・そして何時しか上と下でこんなにも物語が歪んでしまった。

 悲しい・・・悲しい話だ。天使達は自尊心に押し潰されそうになり、化物は孤独になっている事も、皆に忘れられ、恐れられている事も知らずにいる。

 ・・・此の次元は放って置いたら其処から自壊してしまうのではないだろうか。

 じゃあ自分達に出来る事って、一体何だろうか。一体何が彼等の助けになるのだろうか。

 谷は正直、天使も化物にとっても最早棲み良いとは言えないだろう。

 だったら共に谷の外へ出るか?幸い自分達は飛べるのだから。

 ・・・いや、余りにも其は非現実的過ぎる。そんな事、天使達が認めないだろう。

 あんなに自尊心が育ってしまったんだ、其を止めるのなんて・・・。

 屹度直ぐには無理だ。如何しても時間が掛かる。一体如何すれば、

「御姉さんももう色々考えちゃってる感じ?」

「え、えぇ然うね。大体の事情は分かった気がするけれども。」

「うむ、今回は一寸(チョット)その・・・難しい気がするのだ。」

「?皆、何の話、してるの?」

「然うね・・・何だか上と下で随分と環境が違うから、何とかしたいな、なんて思ってたのよ。」

「何とかって?」

何とも無邪気に訊ねて来る。純粋に御喋りを楽しんでいる様だ。

 其なら猶の事、此処に独り法師は寂しいんじゃないだろうか。

 気付いていない丈かも知れない、だって。彼が今でも好いている其の子が、もう居ないと分かったら・・・。

 彼は一体、どんな顔をするんだろう。

「例えば・・・然うね。谷の外に行ってみたいとか、思った事無いかしら?」

「谷の外?谷って何の事?此処じゃない?」

成程、其処からなのか。

 彼の出自が今一分からない。此処で生まれて、此処でずっと過ごして来た。

 本当に其丈なのだろうか。

「谷の外、此の壁の向こう。」

鏡がコンコンと土壁を叩く。

 化物は何とも不思議そうに首を傾げた。

「壁って、ズーッとあるんじゃないの?エ、向こうは、如何なってるの?」

何て伝えたら一体彼に伝わるのだろうか。

 井の中の蛙大海を知らずと言うか、見た事が無い物を伝えるのは難しい。

「草原、一杯、碧樹()とか、蕭森(モリ)も。(ソラ)も、ずっと広い。」

「え、何、何ナノ其・・・ア、然うだ。昔ネロンも言ってタ、凄く広い滄溟(ウミ)を越えて来たって、其も?」

「是、他にも色々、ある。」

彼が外の事を一切知らないと分かり、何だか鏡がやる気を出した様である。

 世界を見る事が彼の生きる目的ならば、必死になるのは当然なのかも知れない。

「ヘェ~、其は一寸(チョット)見てみたいカモ、知らなかった、そんな事。」

「うむ、興味を持つのは良い事なのだ。だが、問題は如何するかなのだ。」

「私が吹っ飛ばしたら・・・、」

「多分其の(ママ)昇天するから御勧めはしないね。僕の(ツエ)でも勿論無理だよ。」

鏡も飛属性だが、恐らく無理だろう。飛属性は基本的に自分しか飛べない。

「むぅ、若しかしたら我が幻覚で巨大化すれば、其方を乗せて行けるかも知れないのだ。」

「随分と大胆だね。そんな事出来ちゃうんだ。」

「流石ねハリー、三大伝説龍の名は伊達ではないわね。」

「うむ、其位、何でもないのだ。只、後は天使達を驚かせなければ大丈夫なのだ。」

褒められて可也機嫌を良くしたらしいハリーは大きく胸を反らした。

 幻術とは言え、何でも創れると言うのは可也大きい。

 天使達に此の化物は安全だと伝えるのは少々大変かも知れないが、若し分かってくれれば彼等も谷に居座る必要はなくなり、出て行くかも知れない。

 ・・・良し、此の次元で為可き事の大まかな流れは決まっただろうか。

「エ、え?アノ、ほ、本当に出られるの?大丈夫?」

「えぇ大丈夫よ。貴方さえ良ければ一緒に出てみないかしら。」

ロードが手を出すと、化物は何度も頷いて(ユック)りと手を出し、ロードのに重ねた。

 彼は次元の主導者(コマンダー)だ。若しかしたら・・・次元の要として只生かされて来たのかも知れない。

 そんな彼だって好きに生きる権利位ある筈だ。

 此処を出て、如何するのかは彼次第だ。

「ん・・・アレ、何か上、騒がしい・・・?」

化物は(ユック)り腰を上げるとそっと虚から外を見上げた。

「何か、聞こえる?」

「ウン、何だろう此の音・・・何カ、燃えてる音?」

そんな音なんて、自分達には一切届かない。如何やら彼は可也耳が良い様だ。

「燃えてるって、若しかして火事かしら。」

「っ危ない、皆、出て来チャ駄目、」

化物は一寸(チョット)慌てた様に上と一同を見比べた。

 危ない・・・?何か落ちて来るのだろうか。

「ア・・・あ、何、何が、起こってるノ?」

譫言(ウワゴト)の様に呟いて彼は突っ立った(ママ)だった。如何やら余程の事が起きているらしい。

一寸(チョット)丈見せてよ、何があったのさ。」

飃が化物の影からそっと外を窺った。すると・・・、

「天使が・・・天使が沢山、堕ちて来る。」

折り重なった無数の死体が、無造作に落ちて来たのだ。

 其も一度や二度ではなく、定期的、断続的にだ。直ぐ様谷底は死体で一杯になる。

「な、何なの此は、上で一体何が起きてるの。」

「危ないヨ、当たったら怪我しちゃう、其の(ママ)、此処居テ、」

「然うも言ってられないでしょ。」

化物の手を擦り抜けて、飃は近くの死体にそっと近付いた。

 見た所、死体は焼かれている様だった。可也炭化している。此が原因で死に、街から落ちて来たのだろうか。

 未だ落ちて来る死体も同じ様な状態だ。只皆見る間に炭になって行ってしまう。

「此・・・っまさかっ!」

血相を変え、直ぐ様飃は(ツエ)に乗って一気に(ソラ)へと昇って行ってしまった。

一寸(チョット)飃⁉もう、急に如何したのかしら。」

団体行動を注意したのは彼なのに随分勝手である。

 只、異常事態である事も確かだ。何か分かって、直ぐ原因を止めに行ったのかも知れない。

 未だ死体は降ってくる。確かに危ないが、只見ているのも、

「私も街の事が心配だわ。一寸(チョット)上がってみるわね。」

「むむ⁉では我も行くのだ。何か助けが出来るかも知れぬ。」

「是、一緒行く。」

「えぇ、皆御願いね!」

言うや否やロードが地面を()ると凄まじい砂埃が舞い上がった。

 余りの量と軽い地響きに、一同が目を閉じるともうロードの姿は無かった。

「早い・・・お、落ちるより早かったのだ・・・。」

「直ぐ行く、感心してる、場合じゃない。」

「う、うむ然うなのだ!」

「あ・・・あ、み、皆気ヲ付けてね!」

一体残された化物は心配そうに一同の背を見送るのだった。

   ・・・・・

「っやっと追い付いた。もう飃、突然如何したのよ!」

「・・・はぁ⁉何で御姉さんがこんな所にっ⁉」

必死に(ツエ)に齧り付いて飛んでいた飃の隣に堂々と手ぶらのロードが並んだ。

 良く見ると彼女は空気を蹴って加速しつつ飛んでいるみたいだ。

「・・・御姉さんも中々化物染みてるね。」

余りにも驚いて顔をひくつかせる中、ロードは彼に詰め寄った。

「答えになってないわよ。何か分かったんでしょう、一柱で解決しようとしないで頂戴。」

「あーまぁ分かったって言うか個神的(コジンテキ)な話なんだけど。」

黙ってやろうかと思ったけれど、御姉さんを振り切るのは恐らく無理だ。

 其でも化物支持派っぽい御姉さんには薬になるかも知れないし、一寸(チョット)丈話すかな。

「多分今、化物が此の次元に来てるんだよ。昔、僕を襲った奴がね。」

「化物?其って・・・、」

「僕の見立てだと奴は可也(ツヨ)いよ。こんな街、あっさり消し炭になるだろうね。本当にさ。」

化物ばっかり強い世界なんて理不尽だ。

 一体位、僕に(タオ)させてくれたって良いじゃないか。

「貴方の話だと其の化物ってのは別の次元から来たって事かしら。私達みたいに移動して来たと。」

次元移動をする化物・・・一つ、思い当たる物がある。

 其に先の死体も・・・気掛かりな物がある。

「そ、突然現れて消える様な奴だったし、其位出来ても今更驚かないね。」

「其処迄分かってるからって一柱で突っ込んで良い様な相手じゃあないわ。こんな時こそ協力しないと。相手は(ツヨ)いんでしょ。」

「・・・然うだね、分かったよ。」

少し、頭に血が上っていたらしい。飃は一つ息を付いて頭を振った。

 又、逃げる訳には行かない。今度こそ仕留めないと。

「っ、何て事なの。」

終に昇り切り、二柱は街の惨状を目にする事となる。

 街は真紅の焔に包まれていた。

 吊り橋は焼けて家々は独立してしまい、焔に捲かれた人々が家から出ては落ちてしまう。

 家は(ドレ)黔煙(コクエン)を上げて燃え盛り、離れていても熱気が伝わった。

 谷を吹く凱風(カゼ)ですら熱を含み、灰を巻き上げて行く。

 先迄美しかった()の街は今や、地獄絵図と化していた。

 ・・・まるで黔日夢の次元(ゼロ・ディメンション)を見ている様だ。

「っ矢っ張り彼奴の仕業で間違いないね。」

軽い眩暈をロードが覚える中、飃がそっと視線を上げた。

 すると水鏡(ツキ)を背にして、巨大な影が悠々と街を眺めていたのだった。

 其の影は(クロ)い龍の様だった。

 巨大な蜥蜴の背に翼の様な形をした焔を(マト)う尾が巻かれ、龍の全体を(アカ)い刺青が走り、煌々と輝く。

挿絵(By みてみん)

 其の龍を見た途端、ロードの中で嫌悪感が一気に芽生えた。

 (アレ)は此処に居てはいけない物、存在してはいけない、恐る可き存在。

 昔ガイを偶々見掛けた時も似た感情を抱いた物だけれども、其とは違う。

 (アレ)は・・・コロシの一族だ。

 黔日夢の次元(ゼロ・ディメンション)から現れた謎の存在。只目の前の物を壊す為丈に行動している。

 自分も大神の宮処に居た時何度か見掛けたが、其の時はもっと小さかった覚えがある。

 若しかしたら彼等は成長しているのかも知れない。()の道、未知の存在だ。

「前はあんな立派な翼なんて無かった筈だけど・・・奴だろうね、間違いないよ。」

「じゃあ戦い方も変わってるかも知れないわ、前と同じ相手とは思わない事よ。」

「ま、(ヨル)に来てくれたのは好都合だよ。此処でぶった斬ってやる。」

二柱が臨戦態勢になる中、龍は(ソラ)に向けて焔を一気に吐き出した。

 (ソラ)が燃えて一気に息苦しくなる。

 すると焔に捲かれて何かが(ソラ)から幾つも落ちて来た。

(アレ)は・・・っ、不味いわ。悪いけど飃、私達は一寸(チョット)隠れるわよ。」

「何だよ勝負に水を差す訳?」

「今は良くないのよ。此の次元に来たのは奴丈じゃないわ、周りを見て。」

龍に気を取られていて気付かなかったが、既に奴は別の者達と戦っている様だった。

 (ソラ)を縦横無尽に駆ける者達、天使ではなく、彼等は、

「クルスティード尖塔の奴等よ。私達に気付いたら三つ巴の戦いになってしまうわ。向こうは数も多いし、一度様子を見た方が良いわ。」

彼等が龍を連れて来たのか、将又(ハタマタ)出会(デクワ)したのか、分からないが状況は良くない。

 二つの戦力が此方に牙を剥けてもいけない。狙いも分からない以上迂闊に近付けない。

「見す見す彼奴を見逃せって訳?御姉さん。」

飃の(ツエ)を持つ手に力が籠もる。

 でも、手出しは出来ない。此処で邪魔だと御姉さんを襲ったら()の化物の加護が発動してしまう。

 今あんな身形なんだし、加護が発生した所で大した事にはならないかも知れないが、下手に自分が大ダメージを負うと奴と戦う事も(ママ)ならなくなる。

 早く()のクルスティード尖塔の連中が出て行ってくれれば良いのだが・・・。

 あんな奴等に獲物を盗られるのは癪だし、納得が行かない。

 店の敵ならば、言わば自分と同士な訳だが、其と此とは話が違って来る。

 如何にか此方で引き受けるから撤退しろ、みたいに交渉出来れば良いんだけど。

「さ、飃、一度此処に隠れるわよ。」

ロードは近くの未だ燃えていない家の影に降り立った。渋々飃も其に倣う。

 若しかしたら一目で店の者とはばれない可能性もあるが、救助活動だとかをすれば目立ってしまうだろう。

 正直自分達が来た時には少し手遅れだった様だ。

 街は可也燃え上がって断末魔や悲鳴は上の兵達の物しかない。

 こんなあっさり、先迄居た街を破壊されてしまうなんて。

 悔やんだ所で如何しようもない、今は只耐えないと。

「此じゃあ動けないわね・・・如何したら、」

「居た、此、何起きてる?」

「むぅ、嫌な臭なのだ・・・如何してこんな事になったのだ。」

ハリーと鏡が(ホボ)同時に昇って来た。

 二柱が隠れている事を察して彼等もそっと近くに降り立つ。

「恐らく彼奴が原因ね。私達が来た時からああだから状況は良く分からないけれど。」

そっと龍を指差す。

 龍は変わらず火焔を撒き散らし、吼え猛っている様だった。

「天使?飛んでる?」

「彼等は光の国のクルスティード尖塔よ。見付かって戦闘になってはいけないから隠れていたの。」

谷底に落ちていた死体が天使達と明らかに違う種族だったから気にはなっていたのだ。

 クルスティード尖塔から、と言う事で彼等は恐らく其処の兵達なのだろう。

 見た所、クルスティード尖塔は可也劣勢の様だ。

 一方的にやられている様に見える。攻撃はしているが全て奴の焔の前に燃やし尽くされている様だ。

 コロシの一族は大体皆不思議な力を使うが、彼の場合は()の何でも燃やせる焔らしい。

 魔術ですら焼かれている様だ。一度燃えれば即黔焦(クロコ)げになって行くし、厄介な焔だ。

 こんな所で隠れていては(イズ)れ龍が全てを燃やして勝利するだろう。

 そんな形でクルスティード尖塔が全滅するのを見るのは心苦しいが・・・。

「・・・御姉さん、隠れている場合じゃあないかもよ。多分、気付かれた。」

「っ不味いわね。」

確かにクルスティード尖塔の一柱が此方に向け、一気に迫って来たのだ。

「・・・ぬ、彼奴は、」

ハリーが少し上体を伸ばす。すると兵は急停止し、大きく頭を下げた。

 そして直ぐ様兜を取ると、何とも見覚えのある顔が其処にあった。

 鮫の様に尖った鼻先にギザギザの歯。兎の様に長く垂れた耳に正義に燃える真紅の瞳。

 手にしている鑓も、(シロ)驚霆(カミナリ)の様で印象的だ。

「貴方まさか楪さん⁉」

「矢張り君達か⁉如何してこんな次元に!」

やって来たのは楪だったのだ。

 恐らくハリーの姿を見て急いでやって来たのだろう。其にしてもまさかこんな所で会うなんて。

「む、我等は只仕事をしていた丈なのだ。其処へ其方達が突然やって来たのだ。」

―何、御姉さん達の知り合い?―

―えぇ、クルスティード尖塔で唯一話が出来る相手よ。楪さんって言うの。―

―ふーん、何処の世界でも裏切者っているんだね。―

裏切者と言われると悲しいが、確かに彼女のしている事は然うなのだろう。

 今だって仲間が向こうで戦っていると言うのに彼女は此方に来てしまった。余り良い事とは言えない。

「仕事・・・噫然うか。其は済まない事をした、私達が此方へ来た(バカ)りに、」

悔しそうに彼女は歯噛みすると兜を被り直した。

「如何して此処、来た?」

「偶々私達が調査していた次元に奴が現れたんだ。逃げたんだがしつこく追い掛け回されてな・・・。何個も次元を渡ったのに付いて来るなんて、」

「成程ね。然うやって被害を増やしちゃったんだ。」

「・・・本当に面目ない。矢張り私達は全滅してでも戦う可きだったか。君達も見付かったら不味い、巻き込んで済まないが早く逃げた方が良い。」

「ねぇ、彼奴何か言ってなかった?名前とかさ。」

「え・・・えっと確か・・・スガタコロシ、と言っていたか・・・?」

途端飃の口端が上がり、目がぎらついた。

 其の変化をロードは見逃さなかった。

「ねぇ御姉さん。まさか逃げるなんて言わないよね?彼奴は皆をぶっ殺す酷い化物なんだからさぁ。」

「ま、まさか戦う気か⁉いや止めた方が良い、奴は本当に、」

「ぬぅ、確かに前奴の仲間と会った時は大変だったのだ・・・。」

オモヒコロシ、と言っていたか。龍達と協力して如何にかなった物の、奴は恐ろしい力を持っていた。

「然うね。只、引く気は無いのでしょう?」

「当然、例え僕一柱でも相手するよ。」

飃の(マト)凱風(カゼ)が少し鋭さを増している。本気で遣り合う気なのだろう。

 ・・・ガルダから彼の事は聞いている、前日に()の獣の無力なセレを襲った事。

 勿論彼の動機も分かっている、だから其を責めるつもりはない。

 かと言って自分が其の場面に出会(デクワ)したら屹度、セレを助けるだろう。

 未だ彼女を見ていたいから、何を為すのか、其の先を。

 だから飃が一柱で戦うと言うのは、好都合だったりする。

 そんな生易しい相手じゃあない、飃一柱が勝つ確率は低いだろう。

 だったら今一番に取る可き手段は・・・、

「・・・分かったわ。私達が相手しましょう。」

「ヒュウ、さっすが御姉さん、話が分かるね。」

「ほ、本気なのか、あんな奴に、」

「戦う力、無い。でも出来る事、頑張る。」

「分かったのだ。我も出来る事をしてみるのだ。」

一柱不安そうな面持ちの楪にそっとロードは笑みを返した。

「私達が相手するなら貴方達の部隊も逃げ切れるんじゃないかしら。」

「然うだが・・・済まない、そんな危険な役を任せて。」

「別に楪さんが責任を負う事じゃあないわ。此は貸しにもならない。私達の利害と一致する丈よ。」

クルスティード尖塔の兵を生かし、飃と共闘してコロシの一族と戦うなんて、セレからしたらマイナスだろう。

 其でも(ムシ)ろ彼女の事なら、自分と同じ手を打つ気がする。飃を店に招いたのは彼女自身なのだ。

 つまり其は私達に手を出すなと言う意思表示、やるなら自分の力でするだろう。

 楪の事も、一応セレには言ってある。そんな数奇な出会いは大切にした方が良いと言っていた。

 一見危ない橋を渡り乍らも、最大の見返りを求めるのが彼女なのだろう。

「・・・分かった恩に着る。君達の事は伏せて皆に話して置こう。もう私達は撤退するしか手が無いからな。」

「じゃあさっさと行っちゃいなよ。火付け役はやってあげるんだからさ。」

(ミカヅキ)凱風(カゼ)が彼を取り囲む。

 やる気はもう十分だ。近付く丈で斬られてしまうかも知れない。

 楪は大きく頷くと急いで仲間達の所へ戻って行った。

「・・・じゃあ行くよ。」

飃が手を放ると其に乗って凱風(カゼ)が一気に吹き抜ける。

 凱風(カゼ)の刃はスガタコロシの鼻先に命中し、クルスティード尖塔しか見えていなかった彼は鼻先を押さえて苦しそうに唸った。

―知らない力、新しい力、一体何処からだ。―

「良し、皆今の内だ!」

楪の声を合図に兵達の姿が掻き消えて行く。

 目眩ましの為か楪は愛鑓フォディータルを振るい、(シロ)驚霆(カミナリ)を一面に落として行った。

―チッ、彼奴等逃げたな。ちょこまかと・・・さっさと焼かれろ!・・・ん、―

苛立(イラダ)ちの(ママ)にスガタコロシは口から焔を零していたが、何に気付いてかそっと鼻先から手を退()けた。

―此の力・・・俺知ってる、知ってるぞ!―

「そ、覚えて貰っていて光栄だね糞蜥蜴。」

(ツエ)に乗った飃が一気にスガタコロシの前へ姿を現した。

 そして(マト)っていた凱風(カゼ)の刃を一気に叩き込む。

―見付けた、見付けたぞ!―

スガタコロシは飃に向けて一気に火焔の塊を吐いた。

 焔と凱風(カゼ)がぶつかり、一瞬大きく燃え上がる。

 だが焔が止まったのは其の一瞬で、其の(ママ)凱風(カゼ)を呑み込んで飃に襲い掛かって来た。

「矢っ張り其方が勝っちゃうか。」

予想が出来ていたのであっさりと火球を彼は(カワ)して行く。

 昔喰らった通りだ。(アレ)の焔は普通じゃない。

 術を上書きするかの様に燃やし、焼き尽くしてしまう。

 ・・・少し丈、()の化物を思い出す戦い方だ。僕の凱風(カゼ)の刃を咬み砕いた魔力の蛇達。

 (アレ)にも一切手出し出来なかったけれど。

―御前は、覚えてるぞ。女を置いて、逃げた奴だ。御前の所為で俺は怒られる。(ユル)さないぞ!―

「・・・然うだよ。御前に楓夏を殺されたんだよ。」

ああ見れば見る程腹が立つ。

 矢っ張り此奴は化物だ。()の最低最悪な。

「・・・()のコロシ、何だか他のと違う気がするけど、気の所為かしら。」

「うむ、我も二度程会ったのだが、何と言うか奴は・・・感情的、なのだ。」

前会ったオモヒコロシやトキコロシはもっと機械的だったと言うか。

 感情が無い様だった。でも此奴はちゃんと飃を認識し、怒っている。

「然うね。若しかしたら今回は色々話が聞けるかも知れないわ。」

見た所短気然うだし、上手く追い込めれば。

―今度は()の腹立つ神共を逃がしちまった・・・でも此処で御前を燃やせれば御相子だ。大人しく焼かれろ!―

スガタコロシが一声吼えると翼が絳々(アカアカ)と燃え上がり、火の粉が散って降り掛かる。

「おっと、皆当たんないでよね。多分此に触れちゃっても燃えちゃうよ。」

「是、頑張る、避ける。」

「じゃあ一気に吹き飛ばすわよっ!」

ロードが正拳突きを繰り出すと余りの拳圧に火の粉が一気に散らされる。

 其の勢いはスガタコロシに迄届いた様で、彼は大きく躯をくの字に曲げた。

―グエッ⁉な、何だ今の、彼奴等か、ぐぅ・・・。―

「今迄(ロク)に攻撃喰らった事無いんでしょ。今回はたっぷり御見舞いしてあげるよ。」

自分の凱風(カゼ)は壊せたのに御姉さんのは壊せなかった・・・?

 然う・・・か。奴は魔術は壊せるけれど、見えない拳と化した純粋な御姉さんの攻撃に対応出来なかったんだ。

 攻撃しようにも御姉さんは遠くにいる。若しかしたら此は奴の手詰まりじゃあないのか?

―御姉さんの攻撃は効くみたいだね。其、続けて貰って良い?―

―分かったわ。只一寸(チョット)気になる事があるの。少し話をしてみても良いかしら?―

―・・・まぁ、良いよ。程々にね。―

ロードは一つ頷くと又正拳突きを繰り出した。

―をわっ⁉オイオイ止めろ!幾ら何でも一方的にやり過ぎだろ、俺が何をしたって言うんだ!―

「一体、()の口がそんな事ほざくんだか。」

凱風(カゼ)の塊を創り出し、又叩き込む。

 今圧倒的打点を持っているのは御姉さんだ。

 だったら援護でもして、此奴の悔しがる顔をじっくり観察してやる。

―じゃあ質問に答えてくれたら其の間は手を止めてあげるわ。―

―え、質問?俺何かと話したいってか?物好きだなぁ・・・。―

「答える、答えない何方(ドッチ)な訳?」

―痛テテ・・・分かったって!答えてやるから一時休戦にしようぜ!―

ロードに注目していた様で飃の凱風(カゼ)を諸に受けたスガタコロシはそっと頬を拭っていた。

 斬れてしまった様で(クロ)い液体が流れ出ている。

「そ、じゃあ其の(ママ)動かず答えてよね。其の間は何もしないであげるからさ。」

御姉さんが居る丈でこんな勝敗に差が付くのか。

 得手不得手があるだろうけれど、あっさりし過ぎている。

 だからって油断はしないけどね。何か妙な事をしたら頸を斬ってやる。

―其じゃあ良いかしら?・・・貴方は一体何なのかしら。如何してこんな殺戮を繰り返してるの?―

距離が離れている所為で如何してもテレパシーになってしまう。

 皆にもちゃんと聞こえる様に意識しないと。

―そんな事か?アーえっと・・・答え難いなぁ。―

「・・・其の無駄に長い尻尾、落としても良いんだよ?」

―違えって!御前達に分かる様に伝えるのが難しいっつってんだよ!―

牙を見せてスガタコロシは吼えた。

 短気だが、でも話してくれる余地はあるみたいだ。

 オモヒコロシと似ていると言うか・・・秘密主義ではないらしい。

―あ!順序が逆だから難しんだって!(ソモソモ)俺は殺戮なんてしてねぇぜ!見てただろ⁉―

「如何見ても、殺してる・・・。」

「然うね、其をしてないと言うのは無理があるわ。」

「・・・此は邪魔をしても良い頃合いなのか?」

突如一つの影がロード達の傍に降り立った。

「あら・・・楪さん?如何してこんな所に未だ居るのかしら。」

其は一度次元の迫間(ディローデン)へ戻った筈の楪だった。

 彼女はきょろきょろと辺りを見渡して少し怯えた様子でスガタコロシを見ていた。

「仲間には戻って貰ったが、流石に君達丈に全て任すのは気が引ける。応援に来たつもりなんだが、此は一体・・・、」

「今奴を尋問している所なのだ。如何やら奴はロードに打つ手がないみたいだからチャンスなのだ。」

「何と⁉本当に御(ツヨ)いのだな!恐れ入ったぞ。」

仲間を置いて戻って来た・・・か。相変わらず危ない事をする。

 如何しても彼女の危うさが拭えないロードだった。

「楪さん、御気持は嬉しいけれども戻った方が良いわ。余り私達と居るのはその・・・、」

「心配しないで欲しい。何が正しいのかは自分で決めるんだ。其にコロシの一族の事が気掛かりなのも事実なんだ。私も此の席に混ぜてくれないか?」

「・・・分かったわ。其処迄言うなら。」

ロードからの許可を貰い、楪はじっとスガタコロシを見遣った。

 彼は如何此の事態を切り抜ける可きか考えているらしく、小さな唸り声が漏れていた。

「先、少し丈声が聞こえて来たが、奴は殺戮なんてしていないと、然う言ったのか?」

「えぇ、信じられない話でしょうけど。」

「何て偸閑(アカラサマ)な嘘を!冗談にしても全く笑えない。此奴は確かに私達の目の前で一つの次元を滅ぼしたんだ。華咲く美しい次元だったのに、人も動物も関係なく焼き殺していたっ!」

―違えって!俺は只壊してた丈だ!全てを燃やして、跡形もなく燃やし尽くして壊す事!其が俺の存在理由で、其の為に生まれて来たんだ!―

「埒が明かないね。要は何?壊してたら死んじゃったって丈で、(ワザ)とじゃないんだから悪くないって言ってるの?そんな筋通らないでしょ。名前にだってしっかり刻まれてるんだしさ、コロシって。」

―ウゥ・・・何だよ其の何処がいけない事なんだよ!俺は壊すんだ!壊し続けるんだ!其の邪魔を御前達なんかにはさせねぇぞ!―

口の端から焔が漏れてスガタコロシは小さく吼えた。

 如何やら、彼の常識は自分達とは大きく異なる様だ。

 其を責める事は出来ない、多数決が正しいとは限らないのだ。

 其に原因は彼自身ではなく、彼の主にある筈だ。

 こんな風に殺しを殺しと教えず、野放しにした危険な主が一番の問題だ。

 誰かを殺した時、裁かれるのは相手であって、銃ではない様に。彼は只利用されていたに過ぎないのなら。

 未だ、話す余地はあるだろう。

―・・・分かったわ。じゃあ貴方に然う命じたのは誰なの?貴方を只壊す為丈の存在として創ったのは。―

オモヒコロシは答えられなかった。名も無き主だからと。

 彼より、スガタコロシの方が話が出来そうではある。如何にか其の糸口が掴めれば。

 誰かが彼等の背後にいるんだ。こんな存在を創れる途轍もない力を持っていて、こんな目的の分からない命を下した、誰かが。

―主の事・・・聞いてんのか?―

「然うだよ。末端丈潰しても意味無いんだよ。大本をやらないとね。」

―主は・・・凄い方なんだぜ。―

途端スガタコロシの目が輝いた気がした。

―俺達を創ってくれたし、こんな凄い命もくれたし、最近は・・・会えてないけど、優しい方だから会えたら屹度一杯褒めて貰えるんだ!―

何だか、子供の自慢話を聞かされている気分だった。

 でも優しい主がこんな殺戮をするとは思えないけれど・・・。

―だからもっと一杯一杯壊さないと、他の奴に負けるつもりはないぜ。俺は(ツヨ)いからな!―

「そんな事を競っているのね・・・。」

―最近は他の奴等も頑張ってるし、遅れを取る訳には行かねぇんだよ。なぁもう話も良いだろ⁉―

―未だよ。ねぇ貴方、褒めて貰いたいなら主に会いに行けば良いじゃない。こんな事は何時でも出来るんだから今止めても。―

―今は駄目。今会いに行ったら屹度殺される。主は忙しいからな、邪魔しちゃいけねぇ。俺達に時間を使わせちゃあな・・・。―

淡々と然うスガタコロシは告げた。

 先の話と一転して、全く違う話を。

「殺しちゃう様な奴が主なら僕達もとっても優しいけど?同じやられるなら何方(ドチラ)でも良いじゃん。」

―いや、主でないと駄目だ!其の為に俺達は創られ、生かされたんだ!だから其に報いる為に俺達は壊し続けないと!―

此じゃあ堂々巡りだ。何とも話し難いと言うか、噛み合わない。

 屹度コロシ達は然う言う風に創られたんだろう。だからこんな歪んだ愛を主に持っている。

 全てを主の為に、そんな狂った忠誠心。

 龍でも神でも精霊でもない彼等、此の様子では話して私達の枠に収めようとするのは誤りみたいだ。

 一体どんな力を使って生み出したのかは知らないが、然う言う物と受け入れるしかない。

―何もない苦しみを、主は一番知っている。だから俺達も応えるんだ!無から創ってくれた感謝を!主の為に満たしてやるんだ!じゃないと主が不憫だ!俺達も・・・然う、なってしまうなら、―

「・・・・・。」

今一、スガタコロシの話が呑み込めない。前提が、根底が彼と私達は違い過ぎているんだ。

 只、矢っ張り主の事が気に掛かる。主は一体どんな存在なのか、主も又、彼等みたいに奇っ怪な存在なのではないだろうか。

 幸いスガタコロシは主に関する話は積極的にしてくれている様子がある。

 オモヒコロシだとかと違って、手を止めて話す位の余裕があるのなら、此の機は逃したくない。

―じゃあ此で最後にしてあげるわ。貴方の主は誰なの?一体何処で何をしているのかしら。どんな名前で、姿で、何なのか、教えて頂戴。―

―主・・・主に名前は無いから知らない。姿も、ちゃんと見えなかったから知らない。何処で何をしているのかも、俺達は知らない。只俺達は壊す事丈命じられたから従ってる丈だ。―

「何も知らないなんて君達役立たずじゃん。其に、其なら如何やって主の所へ帰る気なのさ。」

―大丈夫、主は偉大だから、時が来たら俺達を呼ぶ筈、導いてくれるんだ。今も昔も、―

―成程ね。如何やら私達みたいなのに()うして聞かれるのは織り込み済みみたいね。此処迄対策されちゃあ何も分からないわ。―

見た所、嘘を()いている風もない。本当に彼等は知らないのだ。

 こんな、まるで使い捨ての駒の様な扱いなのに、其で彼等は満足している。

 何て残酷な生物を創り出してしまったのかしら。

「何なのだ先の話は。まさか其奴に主等と呼ばれる存在がいたなんて。」

「あら、てっきり光の国でも掴んでる情報かと思ったけれども、然うだったのね。」

「何とっ⁉終末の化も・・・っ、いや、黔日夢の次元(ゼロ・ディメンション)丈でも手を焼いているのに。別に其の様な存在がいるのか。」

終末の化物・・・確かライネス国ではセレの事を然う呼んでいたっけ・・・。

 セレ・・・いや、其の線は流石に無いか。セレがコロシの一族を創ったなんてそんな事。

 然う信じたくないから、とかではなく、純粋に無理な筈だ。セレにそんな力は無かったのだから。

 セレが黔日夢の次元(ゼロ・ディメンション)を起こした時の力は本物だった。彼丈(アレダケ)の力があれば或いは・・・と、考えなかった訳ではない。

 其でも、コロシの一族の力は自分達神の其とは全く別系統の力だったのだ。

 魔力で出来た様な魔導生物でもない、何処かの次元だとかで出来た化学兵器の産物でもない。

 (アレ)は・・・何方(ドチラ)かと言うとガイに近い力を持っている気がする・・・。

 例えどんな強大な力を持っていても、一介の神に過ぎないセレには無理だ。

 其に仮にセレだったとしても(ソモソモ)の仮説がおかしいのだ。

 外部の者が一度セレを疑うのはおかしくない、でも私みたいに内部に触れた者は知っている。

 セレが黔日夢の次元(ゼロ・ディメンション)を起こしたのは・・・ガルダを捜す為だったんだ。

 別に何て事はない。(ムシ)ろそんな人間味のある理由だなんて、と初めて聞いた時私は驚いた物だ。

 只、彼女の持つ力が大き過ぎた丈だったんだ。

 でもコロシの一族は違う。彼等は只主の為と言って破壊を繰り返している。

 若し本当にセレが彼等を創ったなら、彼等の使命は、ガルダを捜す事になっていた筈だ。

 黔日夢の次元(ゼロ・ディメンション)とは全く関係が無い。

 只時期が偶々・・・いや、本当に偶々か?

 コロシの一族を創った者が()えて()のタイミングを狙ったのだとしたら・・・、

 セレは、無実の罪迄、背負わされようとしていないか?

「・・・若しかしたら(ワザ)とセレの所為にしようとしているのかも、」

「何⁉あ、でも・・・然うか、確かに其の可能性はあるのか。」

「むむ、如何言う事なのだ?」

「コロシを創った誰かが、コロシのして来た事を全てセレの所為にしようとしているのかも知れないのよ。」

「ぬぅ⁉何て奴なのだ!卑怯ではないか!」

「嘘良くない、悪い事。」

「然うだな。同じ悪でも隠す方が余程酷いだろう。」

考えていなかったが其の可能性はなくはない。

 世界にこんな連続で災厄が起きている事自体が異常なのだ。

 此で知らずに全てセレの所為にされて、其が暗黙の了解となってしまっていたら・・・。

 セレが余りにも不利だ。どんなに店をしたって、龍達みたいな仲間を作ったって世界の重みに潰されてしまう。

「・・・此は思った以上に、コロシ達を放って置けなくなったわね・・・。」

―ねー御姉さんもうやっちゃって良いのー?―

完全に頭から抜けていた。

 慌ててロードが(ソラ)を見遣ると存外スガタコロシは大人しくした(ママ)だった。

 飃の事を何とも怨めしそうに睨んでいる。前殺しそびれた事を根に持っているのだろうか。

―御免なさい。然うね、もう聞く事は無いわ。其奴を如何にかしましょう。―

―如何にかって言うか、(タオ)すんでしょ。―

「其じゃあ尋問終わり、御疲れ様。」

―お、やっとかよ。待ちく・・・、―

「じゃ永遠に御休み。」

飃の(ツエ)が一気に凱風(カゼ)(マト)い、暴風を巻き起こして行く。

 そして瞬きの後には(ツエ)の先から巨大な凱風(カゼ)の鎌の様な刃が生えていた。

 其の(ツエ)を大きく振り被る。

 其の(ママ)(マト)凱風(カゼ)を足場にして飃は一気にスガタコロシへと斬り掛かった。

「ッ⁉ギャァアアァアアアァ‼」

そんな飃の特攻は彼にとって不意打ちだった様だ。

 のんびりと構えていたのだろう、飃の刃は思い切りスガタコロシの顔に命中し、斬り裂いて行く。

 其はスガタコロシの口を引き裂いて上顎と下顎に分け、更に一気に頭、胸元を通過して行く。

 然うして上半身が真っ二つに分かれたスガタコロシは絶叫し乍ら血の噴水を巻き上げていた。

「っ⁉な、何て力なの。」

セレが敵だと言うのに仲間に招き入れた訳も分かる。

 たった一撃であんなにも手を焼いたコロシにあんな深手を負わせた。

 其の戦闘センス、技術は大した物だ。

 危険過ぎる程だ・・・彼を一介の次元の者と(アナド)ってはいけない。

「信じられない。()の焔が恐くないのかっ。」

「焔は口からしか吐かないし、翼に当たらなきゃ只の巨大な蜥蜴でしょあんなの。」

凱風(カゼ)を蹴って飃は一同の隠れていた近くの家の屋根に着地した。

 (ツエ)に刃を付けた事で乗って飛べなくなってしまったのだろう。

 然うやって構えているとまるで巨大な首斬り鎌の様である。

暴れ狂う凱風(カゼ)を彼処迄凝縮して扱うなんて可也の技術だ。

 でも矢張り彼自身も可也体力を使う様で薄ら汗が滲んでいた。

「ま、面白い話聞けたし、此奴殺したら其の飼い主もぶっ殺してやるんでしょ?躾がなってないんだから仕方ないよねぇ?」

「野放しには出来ないでしょうね・・・。」

殺す殺さないの前に真実を確かめないといけないだろう。

「ど、如何なのだ。一応彼奴は倒せたのか?」

「・・・さぁね。未だ油断する気は無いよ。」

頭を引き裂いたが奴は未だ飛んでいる。もう一度先のを御見舞いしても良いが。

 散々痛みを与えてから殺してやりたい所だけれども、奴は未知の化物だ。

 油断出来ないとなると・・・さっさと殺すしかない。

―ア・・・ガ・・・何て・・・奴っ、だよ。ま、真正面か・・・ら、来た奴ハ、初・・・めて・・・だ、―

「・・・未だ喋る丈の余裕はあるみたいね。」

「じゃあもう一回やってあげるよ。御姉さんは念の為又先の御願いして良い?」

「無茶丈はしちゃ駄目よ。」

「はーい。」

地を蹴って凱風(カゼ)を掴む。

 今使っている技は、正直可也しんどい。

 長時間は絶対無理だし、消耗が激し過ぎる。

 肉体的にも精神的にも然う長くは持たない。

 ロードが拳を突き出したので其に合わせて凱風(カゼ)を蹴る。

 其の(ママ)、スガタコロシの前迄戻って来た。

 本来飃は谺属性であり、飛属性ではないのでこんな風に飛ぶ事は出来ない。

 何時も飛んでいるのは此の(ツエ)の御蔭だ。魔力も、此の(ツエ)の御蔭で操り易くなっている。

 じゃあ何故、今自分はこんな風に飛んでいるのか、飛んでいる奴の所迄来れるのか。

 其はある意味、御姉さんのと似た方法だ。

「っ・・・、」

足を踏み外して一気に上体が傾ぐ。

 其の隙に足が何ヶ所かブーツ毎斬れて血が滴る。

 痛みに呻いている暇はない、直ぐ立たないと。

 足に力を籠め、より高くへ。

 集中し続けないといけないので息が切れる。

 自分が飛んでいるのは、谺を蹴っているからなのだ。

 突風を小さな輪を描く様に足場とする所へ発生させ、其を踏み付けて飛ばして貰っているのだ。

 だが谺は飛属性程生易しい物ではない。

 谺は傷付ける凱風(カゼ)だ。そんな物を踏み付けて無傷な筈がない。

 だから足は先からぼろぼろだ。余り続けていると足の感覚が無くなって失血死してしまう。

 ホバリングもする事が出来ない、だから此は(ツエ)を使えない時の奥の手なのだ。

 (ツエ)の魔力を維持しつつ飛んでいるので直ぐに眩暈がしてしまう。

 でもだからって諦める訳には行かない・・・無茶しない訳には行かないんだ。

 だって目の前に、楓夏の仇が居るのだから。

 奴を殺す為に自分は神なんかになってしまったと言っても過言ではない。

 化物は殺す。御前も、()の死神も、理不尽しか押し付けない御前達を、僕は、

 スガタコロシの目前迄飛び、(ツエ)を振り被る。

 大丈夫、奴は焔を吐けない。口はあらぬ方を向き、痛みと血の噴水に気を取られて此方に気付いていない。

 やれる、確実な殺意を持って。

 振り下ろした(ツエ)(マト)凱風(カゼ)が一際大きくなる。

 自分が飛ばされない様に足場を怠るな。

 死神の鎌の様に、鋭く咬み付かんとする(ミカヅキ)の刃を、スガタコロシに叩き込んだ。

「ッギャァアアァアアァアアアッ‼」

受身等も取れずに、スガタコロシの下顎は止めの一撃で完全に引き裂かれてしまった。

 肉毎ごっそりと(エグ)り取られたスガタコロシの下顎は眼下の谷底へと落ちて行く。

 加えて飃の凱風(カゼ)の威力が勁過(ツヨス)ぎて、触れていた尾も一方が切断されてしまっていた。

 焔の代わりに血を噴出して翼が片翼失われる。

 明らかな致命傷にスガタコロシは理解が追い付かなかったのだろう。

 翼が無くなった事で彼は自身を支える事が出来なくなり、墜落して焼け落ちた家の残骸へと激突した。

 打ち所も悪く、焼け残った柱等に全身傷付けられ、見るも無残な有様である。

―ウ・・・ぐ・・・っあ、な・・・っ、―

もう意味不明なノイズを吐く丈で、緩慢に手足を動かす事しか出来ない。

 全身を走っていた(アカ)の刺青も薄まり、只の(クロ)い蜥蜴の様だった。

「如何するの?もう終わり?」

足場の凱風(カゼ)を解いて飃も直ぐ様彼の後を追った。

 地面に付いてしまえば(ツエ)凱風(カゼ)は維持し易い。

 念の為構えた(ママ)そっと飃はスガタコロシの様子を窺った。

「し、信じられん。ほ、本当にたった一柱でこんな、」

「流石、と言った所ね。決して油断しないのが屹度彼の強みなのよ。」

「然うだね。逆に此奴は僕達を舐めていたし。」

恐らくスガタコロシは今迄一度も()うして攻撃を喰らった事が無かったのだろう。

 近付けば燃やせば良い、離れていても術毎燃やしてやる。

 そんな単純な戦術しか取っていなかった所に、ロードと言う異物がやって来た。

 自分の焔じゃあ燃やせない存在、其の力に、如何対処して良いか分からなかったのだ。

 其処に隙が生まれた、自分の付け入る隙が。

 後は御姉さんの事で頭が一杯な奴に一撃を御見舞いすれば良い丈。

 特別なのは焔丈、躯は只の蜥蜴の其だ。

 攻撃された事が無い分、自分の一撃を貰ってからも痛みを訴える事しか出来なかった。一番取る可き逃げると言う手段を、此奴は選べなかったのだ。

 其が敗因、此の圧倒的有利からの転落。

 何て憐れな・・・此奴にぴったりの最期だ。

「じゃあね。大好きな主に会えない(ママ)独り死んだら良いよ。」

―未ダ・・・未だだっ‼―

突然スガタコロシはかっと目を見開くと首を(モタ)げた。

 其の瞳は何とも(アカ)く煌々と燃えていた。

 下顎が無い所為でダラダラと血が垂れているのを気にしてはいない様だった。

「っ・・・、」

何かやる気にさせてしまったらしい。手を出される前に刈ってやる。

 (ツエ)を振り上げ、一気に薙ぎ払った時だった。

―未だ・・・終われねぇんだよぉ‼―

突然血の代わりに例の焔がスガタコロシの全身から放たれた。

 全身では流石に分が悪い、歯噛みしつつ飃は大きく後退した。

 てっきり最期の抵抗かと思ったが、如何やら様子が違うらしい。

 全身を震わせ乍らスガタコロシは起き上がると、勢い良く焔を上げていた頭と尾を(ソラ)へと向けた。

―御姉さん、もうやっちゃって良いよ。―

―分かったわ。飃は少し離れてて頂戴。―

ロードは一つ息を付くと目にも止まらぬ早さで突きを繰り出した。

 拳圧でスガタコロシの焔が散って行く。でも消滅迄は至らない様だ。

―間に・・・合ったぜっ‼―

吼え声を上げてスガタコロシが立ち上がると其の姿は徐々に変わって行った。

 裂かれた下顎からは焔に包まれた頭がもう一つ生え、千斬れた尾からも焔の尾が、翼と共に生えて来る。

 全身から上がった焔は結晶化し、全身に棘の様に生えて行った。

挿絵(By みてみん)

「っ、嘘でしょ。あんな怪我が治るなんて。」

―何の為に、俺がちんたら御前達の話に付き合ってやってると思ったんだよ!―

もう一方の頭が歓喜の雄叫びを上げる中、スガタコロシは意地悪く嗤った。

―俺達はな、壊せば壊す程力が増して行くんだぜ?そろそろ、姿が変わる頃だと思ってたんだよ。何だかむずむずしていたからな。―

「でも()の時は別に壊してなんか、」

―先態々(ワザワザ)俺の翼を千斬りやがったじゃねぇか。ま、谷底に何があったか知らねぇけど、良い火種になってくれて助かったぜ。―

「谷底ってまさか・・・、」

一柱位、待機させた方が良かっただろうか。

 今更底を見たって何も見えない。

 若しも・・・彼が何も知らずに燃やされてしまったら・・・此の次元は、

 ロードは静かに首を振った。

 いや、仮に然うでも次元が終わる迄未だ猶予がある筈。其の間に彼奴丈でも、

―さぁ今度こそ皆燃えちまえ!―

頭が二つになった事で火の勢いと範囲が増し、飃は(ツエ)(マタガ)って急いで離れた。

「ああもう、此だから化物って嫌いなんだよっ!」

先迄死に掛けていた癖にパワーアップして返り咲くなんて。

―オラァ‼逃げんじゃねぇぞ、散々俺の事虚仮(コケ)にしやがって!―

全身に生えた(アカ)い棘が焔の燃える様の様に激しく輝く。

 スガタコロシの爪からも焔が吹き出し、飃を捕えようと伸ばされる。

「っ一筋縄じゃ行かないか。」

(マト)っている凱風(カゼ)を強めて手を遠ざけようにも其の凱風(カゼ)其の物を燃やされて無力化されてしまう。

 余り奴に近付くと(ツエ)の魔力迄燃やされそうだ。飛べなくなったら其こそ終わりだ。

 魔力・・・魔力ねぇ、然う言えば()の化物は魔力を(ハベ)らせていたけれども彼奴だったら如何するだろうか。

 魔力は誰もが使う便利な力だ。其の利を奪われたなら、

「っ飃、伏せなさいっ!」

瞬きの後に肌を斬る様な突風が駆け抜ける。

「おっと、相変わらず容赦のない一撃だね。」

魔力が無くなれば圧倒的に御姉さんの独壇場だな。

 資本が違い過ぎる、拳一つで此なんでしょ?

「ギャウゥウウ‼」

突風はスガタコロシの伸ばされた腕に命中し、大きく弾かれる。

 スガタコロシが(ヒル)んだ隙に飃は一気に(ソラ)へと逃れた。

―く、そっ、矢っ張り彼奴邪魔だなぁ!―

スガタコロシに生えた二つ目の首が不自然に曲がり、逆さになる。

 然うして猛り狂うもう一方の首の下へと噛み合う様に重なる。

 すると二つで一つの頭となる様に、丁度顎門(アギト)を開けた様に重なって、二つの首が嗤った。

「・・・何か、不味い予感がするね。」

(ソラ)へ逃げたが未だ油断出来ない、奴は進化したのだ。

 重なったスガタコロシの頭に(ヒカリ)を激しく散らす球体が形成されて行く。

 そして球体からブレスが一気に放たれた。

挿絵(By みてみん)

 全てを焼き尽くす焔の塊だ。其が目にも止まらぬ早さで一同に飛び掛かる。

「ッキャァアアアアア‼」

「ぬ、グォオオォオ‼」

余りの不意打ちにロード達は一瞬で焔に包まれてしまった。

「・・・っ、おいおい嘘でしょ。」

形は刹那に崩れて、残るは只の焔だ。

 たった一撃、たった一撃で皆焼き殺されてしまったのか。

 冷汗が止まらない。

 まるで・・・楓夏の最期を見ている気分だった。

 容易に想像出来る、彼女の終わり。こんなあっけなく終わって良い物じゃなかったのに。

 化物なんかに理不尽に消されて良い様な命なんかじゃなかったのに。

 ・・・矢っ張り、多少乍らも無茶は(ユル)して貰おう。

 じゃないと此の嵐を、僕は鎮められないよ。

「多少なりとも縁があったんだし・・・仇位は取ってあげるよ。」

羽搏(ハバタ)き始めたスガタコロシに合わせて飃は(ツエ)凱風(カゼ)を掛け直した。

 飛ぶ為でなく、斬る為に。

 三つ首になんてさせないよ、其の前に全身刻んでやる。

 鱗の一枚、火の粉すら残してやる物か。

 (ツエ)の先に(ミカヅキ)の刃が備わる。

 (ツエ)から降りて、足場を意識する。

 スガタコロシも先の一撃を恐れてだろう、じっと飃の出方を窺っていた。

 分は悪い、が、そんな事言ってられない。

 駆け出した飃に向け、スガタコロシは火焔を二つの首から吐き出した。

 単純に火力が二倍だ。範囲も広く、(カワ)すのは生易しい物じゃない。

 避けていると其丈で(マト)凱風(カゼ)が削られる。決めるは矢っ張り一撃じゃないと。

 一つ息を付き、飃は足の凱風(カゼ)を解いて一気に急降下した。

 そしてスガタコロシの焔を掻い潜り、真下から急激に飛び上がる。

―翼も無ぇのに良くやるぜ。―

急接近されているのにスガタコロシは涼しい顔だ。

 でも死角とは言わない迄も此処迄来れば、

 然う飃が思った刹那、スガタコロシの翼が激しく燃え上がった。

「っ、此は流石に、」

そして無数の火の粉が窓掛(カーテン)の様に舞い落ちて来たのだ。

 此を(カワ)すのは今の凱風(カゼ)じゃあ無理だ。

 撤退・・・でも逃げた所で、

「上が御留守になってるわよっ!」

「⁉ガァアアアァア‼」

突然スガタコロシが絶叫を上げて体勢を崩し、落ちて来た。

 御蔭で火の粉は途切れ、隙間から飃も離脱する。

―っ待て此の野郎!―

落ち乍らも手を伸ばすスガタコロシの腕を(ミカヅキ)凱風(カゼ)で斬り付ける。

「ッグァアアア!」

裂かれて腕から血を垂らし乍らスガタコロシは又焼け残った家へと激突した。

 全身の鱗が頑丈な様で、落下自体は大したダメージになっていなかったが、頭を何度も振って忌々しそうに唸っていた。

 何とか意表を突けたが、先のは・・・、

 ちらと飃が(ソラ)を見上げると見慣れた影が其処にはあった。

「ねぇ僕足痛いから一寸(チョット)乗せて欲しいんだけど。」

「うむ、もう一柱なら・・・乗れなくもないのだ。」

(ソラ)に居たのは燃えた筈の一同の姿だった。

 飛んでいるハリーの背にロードが乗り、鏡と楪は其の近くで浮いていた。

 怪我もなく、皆無事な様である。

 飃はさっさと凱風(カゼ)を解いてハリーの背に飛び乗った。

 其の足から血が滴っているのを見て直ぐ様ロードが術を掛ける。

「で、何で無事な訳?」

何だか一柱で戦っていたのが馬鹿みたいだ。少し気に入らない。

 スガタコロシも未だ状況が良く分かっていない様なのでチャンスだろう。

「我の力を舐めて貰っては困るのだ!(アラカジ)め、幻覚を彼処に置いて、我々は早々に離脱していた丈なのだ。」

「素晴らしい力だな!まさか彼奴に一本取れるなんて、ハリー殿は本当に御(ツヨ)いのだな。」

楪に褒められてすっかり上機嫌なハリーである。

 尾を振り、胸を反らすので飃は溜息を一つ付いた。

「成程ね、僕丈知らされてなかったって訳だ。便利な能力だね。」

幻覚か・・・化物の仲間の力を借りるのは癪だけど、然うも言ってられないか。

―ね、其で一寸(チョット)御願いしたい事あるんだけど。―

「む、何なのだ?」

スガタコロシに隠れる様にそっと移動するハリーに頼んでみる。

 途端、少し苦そうな顔を彼は浮かべるのだった。

「・・・まぁ、出来なくはないと思うのだ。我も頑張るのだ。」

「然う来なくっちゃね。」

「フフ、私達がやられたと思って如何するのかと思ったけれども、ちゃんと戦ってくれるのね。」

「別に僕の仇って事は初めから変わらないでしょ。」

少し()ねた様に飃が外方を向いたので思わずロードは忍び笑いを漏らした。

 別にそんな意味じゃあない、冷静さを失わずに戦えた事を評価したのだ。

 不意打ちの為に彼処で手を出したが、恐らくそんなのが無くても彼は()の危機を一柱で脱しただろう。

 感情に流されず戦えるのは彼の強みだ。最初の心配は杞憂だった様だ。

「兎に角、其方の姉さんも手伝って貰うよ。何ボケッとしてんのさ。」

「え?わ、私にも出来る事があるのか?」

楪はすっかり一同の活躍に目を奪われ、手を出せなくなっていた。

 其なのに・・・そんな自分に何が出来るだろう。

「何、まさか観戦するつもりだったの?僕達を巻き込んだのは其方なんだからしっかり巻き込まれてよね。」

「も、勿論私に出来る事があるなら手伝わせてくれないか。只、私はそんなに・・・戦力にならないから。」

正直チート級能力の幻覚蛇と筋肉天使じゃあ比べる事すら間違いだろう。

 一応此処迄奴の攻撃から逃れているんだし、立ち向かう勇気があるのなら使わない手は無い。

「攻撃は良いよ。只先みたいに驚霆(カミナリ)を落としてよ。其を合図にするからさ。」

―何ごちゃごちゃ話してんだよ!くそぅ、燃やしたと思ったのに何で居るんだ!―

スガタコロシが上旻(ジョウクウ)に居た一同に気付いて声を荒げた。

 如何やら奴は未だ此方の絡繰に気付いていないらしい。だったら此処で一気に圧倒出来る。

「何度燃やしても出て来るわよ。諦める気にはならないかしら。」

―だったら世界毎燃やして消滅させる丈だぁ!―

又スガタコロシの首が一つになり、火焔の塊が吐き出される。

 先既に喰らったんだ、何度も同じ手は通用しない。

 さっさと一同は(ソラ)に散り、命中しなかった事でスガタコロシは(イキ)り立った。

「じゃ、やっちゃってよ姉さん。」

「良し、行くぞフォディータル!」

楪が高々と鑓を掲げると同時にロードと飃はハリーの背から飛び降りた。

 そして刹那、視界が(シロ)一色に染め上がる。

 激しい爆音と相俟って全ての情報がリセットされる。

 流石にこんな中飛び立つ勇気もなく、スガタコロシは一歩も動けない(ママ)時を数えた。

 楪の目眩ましである驚霆(カミナリ)を燃やしてしまうと言う判断が、咄嗟に彼は出せなかったのだ。

 ―ん・・・んん⁉な、何だぁ此はぁ!―

視界が開けた瞬間、思わずそんな声を漏らしてしまう。

 口を開けずにはいられない、信じられない光景が彼の前で繰り広げられていたのだ。

其は視界一杯に存在するハリー達だった。

 ハリーもロードも飃も鏡も楪も、皆が皆分身したかの様に何十柱も飛び回っていたのだ。

「ほーら、何度も出るっつったろ。」

―っ皆、燃やしちまえば何て事無いだろ!―

闇雲にスガタコロシは焔を吐き、何柱かの飃達を消し去ったが、其では余り変化が無い様だった。

 勿論出ている分身は全てハリー御手製の幻だ。

 御願いはしたけれどもまさかこんなに出せるとは思わなかった。頼んだ側としても圧倒される量なのだ。

 だが流石に此丈の数を同時に操るのは一筋縄ではない。其の為本物のハリー丈は早々に崖の上へ避難して休みつつ応戦して貰っている。

 ロードの拳圧に因る飛行術等、見慣れていない物を作った為、少々動きに(ムラ)や雑さがあるが、此のレベルなら奴も見分けが付かないだろう。

 実際は幻なので(ソモソモ)スガタコロシの焔でも消えない筈なのだが・・・流石コロシの一族と言った所か、幻自体を焼き尽くしてしまっている様だ。

 だから追加で幻を作って行かないといけないが、此ではハリーの消耗が半端ない。

 何とか短期決戦で行かないと、余裕ある様に見せて危ないのは此方なんだ。

「其じゃあ行っちゃうよ。覚悟は良いんでしょ?」

正面から何柱もの飃が飛び掛かって来る。

 焔の前では無力だが、今なら、

―っ舐めやがってぇ・・・っ!―

息を吸い、巨大な火焔をスガタコロシは両の口から吐き出した。

 其と同時に何柱ものロードがスガタコロシへ拳を叩き込む。

 数が多くなった分、手数が段違いに増えたのだ。

 本来なら幻覚、実体と使い分けて相手を翻弄するのが得意なのだが、どうせ幻覚でも燃えてしまうのなら最初から全て実体で問題無いだろう。

 無数の連撃にスガタコロシの焔も弱まる。殴られる所為で息が思う様に出来ないのだろう。

「ほーら少しずつ刻んであげるよ。」

飃が(ツエ)を振り回して(ミカヅキ)凱風(カゼ)をスガタコロシへと浴びせて行く。

 此丈数があれば多少燃えた所で問題無い、押し切れる。

 凱風(カゼ)に因ってスガタコロシの腕や胴は少しずつ傷付いて行った。

 何より彼自身の精神的ダメージが大きいだろう。

―くそっ!彼奴丈でも燃やせれば、―

スガタコロシがロードに狙いを付けていると鏡がフラフラと彼の前を横切った。

 誘う様に飛んで行くので気になって仕方がない、苛立ってスガタコロシは標的を鏡へと変えた。

―小蠅がぁ!さっさと燃えろ!―

だが飛行技術と幸運で彼の右に出る者はいない。

 涼しい顔で鏡は次々と焔を(カワ)し、スガタコロシ(バカ)りが消耗して行った。

 此なら十分スガタコロシを追い詰めている、疲れて隙でも見せれば後は・・・、

―あぁもう!面倒だ一気にやってやるっ!―

スガタコロシは(ソラ)へと大きく吼えた。

 すると彼の鱗の一枚一枚が焔を(マト)い、内側から爆ぜた。

 其の(ママ)スガタコロシは飛び上がり、翼を広げて何体もの幻に体当たりをする。

 可也スピードも出ているので轢かれる様に次々と幻覚が消されてしまう。

 スガタコロシは幻術と言う事も良く分かってはいない様だったので我武者羅に只影を見付けては飛び掛かった。

 姿が変化した事で得た技だろうか、(アレ)では近付けない。

―面倒な暴れ方をするね、落ち着く迄手は出せないかもよ。―

―然うね、ハリーは大丈夫かしら・・・。―

ちらとロードが見遣ったが、少し彼にはきつい様で崖上でじっとしていた。

 消された傍から幻覚を創っているのだろう。個々の動きも付けないといけないので負荷が大きい。

 スガタコロシの技も単純な丈に対策が難しい。あんなに早いとロードの拳も当たらないだろう。

 未だ疲れている様子も無いし、此の(ママ)じゃあじり貧だ。

 如何する・・・如何すれば良い。

「っ⁉何此・・・天使達ハ、」

突然の声に振り返ると、何と()の谷底に居た化物がこんな所迄やって来ていたのだ。

 彼の背には鉱物で出来た様な翼が生えている。

 恐らく其は彼の背中の棘が伸びた物なのだろう。其処から(クロ)い焔か凱風(カゼ)が吹き出され、飛んでいる様だった。

挿絵(By みてみん)

「ど、如何して貴方がこんな所に、」

「な、あ、()の怪物は一体何なんだ、何処から、」

「此の谷底ずっと棲んでる。友達。」

「と、友・・・君達は本当に色んな種と直ぐ交流出来るのだな。」

初対面だった楪は化物に酷く驚いた様でそっと鑓を構えていた。

 化物はまるで迷子になった子供の様にきょろきょろと辺りを見渡している。

 初めて見た街の姿が、まさかこんな焼け崩れた物になるなんて・・・、

「あ・・・あ、天使、一杯動かなくなってる・・・家も、下のより、ボロボロ・・・。」

ショックが大きかった様で化物は呆然と街の抜け殻を見ていた。

 静かだ。此処も、何度も谷底に迄届いていた音達が一つも無い。

 スガタコロシは意外にも突然出て来た化物を警戒してか、黙って焔を(マト)った(ママ)化物を見詰めていた。

「ね、君翼なんて無かったよね?何で飛んでる訳?」

「ア・・・皆は居たんだ・・・良かった。皆が上、行った後、沢山燃えた天使、落ちて来たの。だから色々燃えちゃって・・・僕ちゃんと皆を食べて行ったんだ。そしたら、生えて来た。」

「そ、そんな翼って急に生えて来る物かしら・・・。」

「でも僕、皆の事気になってたから、丁度良かったよ。でも・・・此は何、何が起きてるの?」

「うむ・・・其処に居る奴が街を燃やしてしまったのだ。・・・我等が来た時には既に、」

「然ウ・・・そんな事があったの・・・。」

幻覚のハリーが近付き、そっと状況を話すと、化物は項垂れてじっと話を聞いていた。

「分かった、分かったよ、有難う。皆を助けようとしてくれたんだね。僕其の気持、凄く嬉しいよ。」

「済まない、私達が此の次元に来た(バカ)りに、」

「ウウン、皆は何も悪くないよ。悪いのは・・・、」

ちらと化物はスガタコロシを見遣った。

 目は無いが、視線が確かに合わさる。

「悪いのは・・・彼奴だ。」

途端目にも止まらぬ早さで化物はスガタコロシへと飛び掛かった。

 突然の事に反応が遅れたスガタコロシに向け、其の鋭利な爪を振るう。

―っ⁉ガァア!何しやがるっ、―

化物の爪は易々とスガタコロシの鱗を傷付け、血が流れ出た。

 吼えるスガタコロシに構わず化物は又爪を振るう。

―っ痛ってぇなぁ此の野郎!―

目元を傷付けられ血が入ってしまい、スガタコロシは片目を閉じた(ママ)焔を吐いた。

 見えない事で距離を掴めなかったのだろう、あっさりと化物に(カワ)され明後日の方向へ行ってしまう。

「ガァアアァアア‼」

其の隙に化物はスガタコロシにタックルを仕掛け、余りの威力に大きくスガタコロシは吹き飛んで壁に激突した。

 すっかり巨獣の戦争の様な有り様になってしまい、呆然とする一同だったが、此の(ママ)彼に任せる訳にも行かないだろう。

 今の所不意打ちと其の巨体で圧倒しているが、焔が危険な事に変わりはなかった。

 そして正直の所、彼が街の現状に怒り、こんな攻撃を仕掛けるとは誰も予想していなかったのだ。

 彼にとって、其丈天使と関わりがあったと言う事だろう。

 初めて友達が出来て、街が出来るのをずっと見守って、約束を守って天使を喰らっていた。

 此の街の人達はそんな化物の事、すっかり忘れて歪んだ物語にしてしまっていたのに。

 そんな街の為に、彼は戦ってくれたのだ。

「少し、距離を取った方が良いわ。奴の焔は迚も危険なのよ。」

スガタコロシを吹っ飛ばした御蔭で距離が出来たので、そっとロードは化物の傍に行った。

 兎にも角にも良かった。此で未だ此の次元には希望がある事が分かったのだから。

 彼丈は、絶対に壊させる訳には行かないのだ。

「で、でも彼奴が皆を!ネロンも、皆・・・動かなくしたんだっ!」

死、と言う概念は分からない物と思っていたが、彼にも思う所はあった様だ。

 スガタコロシのしていた事を悪と判断したのだ。

―何でキレてんか知らねぇけど、酷いだろ此の仕打ちは。―

喉の奥で唸り乍らスガタコロシは苛立(イラダ)ちの(ママ)に焔を漏らしていた。

「何が酷いだ。街を、こんなにするなんてっ、」

―其は此方の台詞だろうがぁ!―

咆哮と共に巨大な火球をスガタコロシは(ソラ)へと放った。

―手前ぇ、何か勘違いしてねぇか?何だ其、ごっこ遊びか?そんな直ぐ壊しちまう奴と仲良くしてよぉ!―

「だ、だって友達だもん。先出来た友達、友達は助けないと、」

―友達ぃ⁉オイオイ頭でもいかれてんのかぁ⁉―

・・・何か、嫌な予感がする。

 化物も其を察してか心許なさそうに少し後退(アトズサ)った。

 聞いてはいけない気がする。奴の話を此以上は、

「っもう黙れよ!僕は御前を(ユル)さないんだっ!」

化物が不安に駆られる様にスガタコロシに向けて飛び掛かった。

 同時に、スガタコロシの口元が歪む。

―何で手前が居乍ら何も壊してねぇんだよ、()()()()()!―

「っ⁉」

ピタ、と化物の動きが止まった。

「え・・・皆殺し?」

皆殺しは名詞だが、如何してそんな・・・()()()()()の様に言うんだ。

 其だとまるで・・・化物が、コロシの一族みたいじゃないか。

―オイオイ何て面してやがる。冗談だろ?随分久し振りだけどちゃんと俺は分かったぜ!だのに御前は忘れちまったのか?・・・まぁ俺凄い成長したし、パッと見分かんねぇかも知れねぇけどさ。―

「な、何の話、してる・・・?知らない、僕君知らないっ!」

明らかに化物は狼狽していた。

 化物には谷底に居た記憶しか無いのだ。でも若し・・・其の前から自分が居たのなら、

 此は屹度良くない話だ。聞いてはいけない、なのに躯が・・・動かない。

―御前はミナゴロシだ、然うだろ?俺達の先輩だったじゃねぇか。只目に付いた物を一つ残らず壊す、其が主からの命だっただろ?―

「・・・・・。」

スガタコロシの話は・・・本当なのだろうか。

 でも今の所奴は嘘を()く様な性格に見えなかった。愚直に短気と言うか、そんなややこしい手は使わない。

 だとして本当に化物はミナゴロシだなんて、恐ろしい存在なのだろうか。

 ・・・恐らく、然うなのだろう。彼が然うなのだとしても姿としては違和感がない。

 虫も殺さない様な性格に気を許した丈で・・・彼も此の次元にとって異物なのだから。

 唯一、何故彼から次元の主導者(コマンダー)の気配がするのか、其丈謎なのだが。

「ね、此、状況として不味いんじゃないの?」

「然うね、でも止めるにしたって・・・、」

自分達だって分からない状況だ。如何手を出せば、

―・・・まさか、全部忘れちまったのか?俺達の事も?命の事も?主の事も?だから未だこんな所で燻ってるのか?未だそんな中途半端な姿の(ママ)なのか?―

「・・・分からない、何も分からないよ。」

畳み掛けるスガタコロシに化物は只首を振る事しか出来ない。

 でも若し彼に翼が生えたのは・・・コロシの一族だからじゃあないだろうか。

 スガタコロシは言っていた、壊せば壊す程成長すると。

 落ちた天使を喰らう事で彼が壊していたのだとしたら・・・先大量に落ちて来た天使を全て喰らったのだとしたら、

 其で成長して翼が生えたと言われれば納得、出来てしまう。

―ハ・・・ハハッ、何て奴だ。まさかこんな所で主の恩も忘れてサボっている奴がいたなんて驚きだぜ。そんで他の奴と仲良し小好しなんかしちゃって・・・此の裏切者がぁ‼―

吼え声と共に一気にスガタコロシは二つの頭から焔を吐き出した。

 心が揺れ動いていた化物は諸に其を喰らうが大したダメージにはなっていない様だ。

 熱さに怯んだ隙に、今度はスガタコロシが化物へと飛び掛かったのだ。

―手前なんてもう仲間じゃねぇ!俺が喰い殺して其の力奪ってやる!―

二つの首を一つにしてスガタコロシは化物の頸に咬み付いた。

「然うはさせんぞ、フォディータル!」

楪が鑓を掲げると(シロ)い稲妻がスガタコロシの背に突き刺さる。

「ガァアアァア‼」

大したダメージではなくても突然の事に激痛を受けて思わず首の片方が牙を放す。

「っ、流石に一筋縄とは行かないか。」

其の隙に飃が刃を(マト)って近付いていたのだが、(スンデ)の所で其の首が焔を(マト)った。

 鱗の隙間から焔を出している様だが、向こうも学習をした様だ。

 焔を(マト)っていては近付けない。今の所、化物に燃え移る事は無さそうだが、耐性でもあるのだろうか。

 と言う事は矢張り・・・と考えなくもないが、其よりも問題はスガタコロシだ。

―ヘヘッ、此なら手が出せな、グエッ⁉―

笑みを浮かべた途端にスガタコロシは化物から引き剥がされて大きく吹き飛んだ。

「大丈夫かしら、怪我は無い?」

「ア・・・ウン、有難う、大丈夫だよ。」

そっとロードが近付いたが、咬まれた所も分からない程軽傷の様だ。

―畜生、手前の攻撃丈は反則だろ。くっそぉ!俺の邪魔ばっかりしやがって!―

焔を(マト)った所でロードの拳圧には成す術もない。

「一体で彼奴と戦うのは危険よ、私達も戦うから協力しましょう。」

「協力・・・ウ、ウン!初めてだけど頑張る、何だか、急に怒っちゃって御免ね。」

「怒って当然よ。・・・街をこんなにされちゃったんだから。」

「ウン・・・ウン、怒ったのも初めてだけど、凄く嫌な気分なんだ。」

―何だよ、壊したくないってか?本当に手前は変わっちまったな!―

「だから、僕は君の事なんて知らないよ!」

化物が然う吼えるとスガタコロシは唸り声を上げてじっと彼を見詰めていた。

 恐らく、今のスガタコロシにとっての優先度は化物だ。

 本来なら仕留めやすいロード達を狙えば良いのに、執拗に化物を狙っている。

 彼の耐性や力は未知の筈なのに、だ。

 だったら多少囮にする事で先の様に攻撃を加える事も容易になったかも知れない。

 幸い性格が戦闘向きじゃない、此処で畳み掛けたい所だ。

―貴方には奴の焔が効かないのかしら。―

「え?うん、一寸(チョット)熱いけど、大した事は無いよ。」

―じゃ囮やってくれない?其の間に此方も彼奴を攻撃出来るしさ。―

「分かったよ!任せて!」

―何ごちゃごちゃ話してんだよっ!―

スガタコロシが焔を吐きつつ化物に飛び掛かって来た。

 ・・・正直、スガタコロシと化物を戦わせるのは余り乗る気じゃあない。若し化物が本当に彼の言うミナゴロシと呼ばれる化物なら、ひょんな事で記憶が戻る可能性もある。

 彼迄敵に回ったら・・・恐らく勝ち目は無いだろう。

 でも今の彼はスガタコロシを(タオ)す事に乗る気だ。街の事もある、黙って見ていろとは迚も言えなかった。

 飛び掛かる丈のスガタコロシより、化物の方が幾分冷静な様で、焔を軽々と(カワ)してはスガタコロシに咬み付いた。

―痛ってー‼くそっ、本当に俺と遣り合うってかよ!―

スガタコロシの一つの頭に咬み付いているので、彼は咬み返す事が出来ない様だった。

 進化した(バカ)りなので未だ躯に慣れていないのかも知れない。じたばたと暴れては焔を吐くが、余り効いている様には思えなかった。

―くそっ、燃えろよ燃えろ‼―

翼の尾を化物に巻き付けたが、其でも化物は離さなかった。

 翼を止めた事でスガタコロシは体勢を保てなくなり、危うい。

―もう良いわよ!―

ロードの声に一つ頷くと化物はスガタコロシを壁に向けて投げ付けた。

 余りの衝撃にスガタコロシの尾が緩む。

 其が又羽搏(ハバタ)く前に上旻(ジョウクウ)からロードが正拳突きを何度も繰り出した。

―っぐ、うをお⁉―

支えを失ってスガタコロシが崖から落下する。

 追い打ちで飃が嵐を彼に叩き込んだ。凱風(カゼ)が乱れて翼はもう意味を為さない。

―お、落ちるっ!ガァア!―

先みたく焔を(マト)えば嵐なんて消えるのに今のスガタコロシは飛ぶ事に必死で只翼を動かそうとしていた。

 其の間も連撃は繰り出され、終にスガタコロシは崖下へと落下して行く。

「此でっ、終わらせる‼」

(ソラ)高くから楪が鑓を構えて落ちて来る。

 其の躯其の物が(シロ)驚霆(カミナリ)に包まれた。

「ガァアアァアアァアア‼」

驚霆(カミナリ)は無防備なスガタコロシの腹に命中し、深々とフォディータルが刺さっていた。

 鑓は其の(ママ)驚霆(カミナリ)を放ち続け、内側を(エグ)って行く。

 其の上から更に(ミカヅキ)凱風(カゼ)が叩き込まれる。

「落ちろ、糞蜥蜴。」

怒りに燃えるスガタコロシの眼を真正面から受け、飃は冷ややかな視線を返した。

 其に吼える前に、スガタコロシは谷底へ堕ちて行く。

 (クロ)の躯は直ぐ闇に溶け、(アカ)い焔丈が小さく残され、其すらも直闇に呑まれる。

 絶叫も共に吸い込まれ、谷は静寂に包まれた。

「・・・・・。」

スガタコロシが上がって来る様子はない。

 一同は互いに頷き合うと慎重に谷底へ降りて行った。

 降りる最中、一同は改めて谷の惨状を目にする事となった。

 本当に、生き残った住人は居ない様だ。

 家々は一つ残らず燃やされ、吊り橋も全て焼き尽くされている。

つい少し前迄滞在していた図書館も、自分達が最後の客となってしまっていた。

 最早街の輪郭も分からない、そんな有様だったのだ。

 そんな変わり果てた街を見乍ら、化物は静かに(ウツム)いた。

 彼が此の(ママ)、スガタコロシの言葉に囚われなければ良いが・・・。

 然うして終に最下層。

 一同が地に足を付けると、スガタコロシは其処に居た。

 フォディータルが深く刺さった事により、地面にしっかりと縫い付けられてしまっている。

 嵐や驚霆(カミナリ)に因って全身鱗が剥され、ボロボロになっていた。

 片腕が千斬れ、尾も片方が無くなっている。翼も焔が消えてしまい、只の尾となっている。

 此は可也の致命傷だ。スガタコロシは上体を震わせて小さく息をしている丈だった。

「流石にもう壊せないから進化も出来ないでしょ。」

「まさか此処迄彼等を追い詰めるだなんて・・・本当に凄いんだな君達は。」

スガタコロシに刺さっていたフォディータルが楪の手元に戻る。もう此が無くても彼は飛び立てないだろう。

「ねぇ、最後は僕にさせてくれない?もう良いでしょ?」

「えぇ、任せるわ。」

ロードの許しも得て飃は(ツエ)を構え直した。

 やっとだ・・・やっと君の仇が取れるよ楓夏。

―う・・・あ・・・い、嫌、だ。お、御願い、主、助けて・・・ぼ、僕は未だ、―

「もう諦めなよ。こん丈暴れたら十分でしょ。」

―あ・・・主、主、主、僕は未だ何も、助けて・・・う、うぅ、―

何て、弱々しい姿だろうか。

 一皮剥けばこんな物か。

 一思いにやっても良いけど、此の憐れな化物の為に果たして優しい主は来てくれるのだろうか。

 ・・・なんて、待ってやる必要もないか。

 スガタコロシを一刀両断しようと(ミカヅキ)凱風(カゼ)(マト)った(ツエ)を振り下ろした時だった。

 (ツエ)とスガタコロシの間の空間が、確かに歪んで行くのを飃は感じ取ったのだ。

 此は・・・明らかに不味い奴だ。

 慌てて飃が大きく後退すると、突然空間に(ヒビ)が入って行った。

 まるで見えない玻璃(ハリ)の壁でもあるかの様に、其を叩き割った様に(ヒビ)が広がって行く。

 嫌悪感に全身の毛が総毛立つ様だ。いけない、(アレ)は此の世界に存在してはいけない物。

「飃、様子が変よ。此処は様子を見た方が良いわ!」

「分かってるよ。・・・逃がすつもりはないけど。」

(ヒビ)はどんどん広がり、終に割れて大きな穴が開いてしまった。

 見ている丈で吐き気がして来る・・・此を受け入れてはいけないと本能が告げている。

 (ヒビ)・・・(ヒビ)、何か引っ掛かる様な、覚えのある言葉。

 考えていると(ヒビ)から(クロ)い枯れ木の様な物が何本も這い出て来た。

 良く見ると其の表面は鱗の様にささくれ立っており、ざわざわと蠢いている。

 手を出しあぐねていると、突然其等の枝の節目から大量の瞳が開かれ、一同を見詰めた。

挿絵(By みてみん)

 そして姿を認めるや否や何処からか甲高い悲鳴を一斉に上げ始めたのだ。

「っぐぁ、な、何だよ此の音っ、」

「うぅ、初めて聞いた、頭に響くよ・・・。」

「此・・・は、」

―あ・・・主、有難う、あ、有難う、助けてくれて・・・矢っ張り主は、や・・・優しい方なんだ、―

スガタコロシは愛おしむ様に(ヒビ)に頭を擦り付けた。

 其の(ママ)、彼の姿はどんどん霞んで行く。

「っ⁉こんな所で逃がす訳ないでしょ!」

慌てて飃が(ツエ)に乗って飛び立つと樹も其に反応して伸び上がった。

「邪魔するなよっ!」

感情の(ママ)に暴風が吹き荒れたが、樹は枝が何本か折れた丈で変わらず伸びて行く。

 折れた枝もまるで手の様に凱風(カゼ)に乗って飃に掴まった。途端力が抜けた様に(ツエ)の浮力が失われる。

「何、此、魔力が吸われてるっ⁉」

只でさえ妙な声の所為で頭の回転は鈍っているのに。

 でも此の(ママ)じゃあ奴に逃げられる。

 (ツエ)を乗り捨てて飃が飛び上がると其を狙ったかの様に樹の枝の先が全て飃に向けられた。

 貫くつもりか、其だったら相打ち覚悟でっ!

「飃っ!駄目よ!」

鋭い静止の声が掛かり、飃の躯は真横に吹き飛んだ。

 突然の事に受身も取れずに地面に突っ伏してしまう。

 其の(ママ)飃の目の前でスガタコロシの姿は完全に掻き消えてしまった。

 無言で地面を(ツヨ)く殴り付ける飃を樹は暫し見詰めていたが、(ヤガ)て目を細めると(ヒビ)の中へ戻って行った。

 (ヒビ)も閉じられ、()の奇声も聞こえなくなり、只静寂丈が遺される。

「・・・止めてしまって御免なさい飃。でも貴方、自滅覚悟で行っていたでしょう。」

「・・・御姉さんが謝る事無いよ。()の枝は僕の魔力を吸ってた。()(ママ)行っていたら今頃僕は死んでいただろうね。」

ちらと丈飃はロードを見遣って外方を向いた。

 分かってる・・・分かっているけれども、此の胸の嵐は当分収まりそうもない。

 彼処迄追い詰めたのに・・・悔しい。此の様じゃあ()の化物だって僕は狩れないじゃないか。

「・・・先の変な樹、彼奴は主って言ってたけれど、御姉さんは何か心当たりある?」

暫くロードは考え込んでいたが(ヤガ)(ユック)り首を左右に振った。

「分からないわ。生物としても術としても見た事が無いわ。あんな存在がいたなんて・・・。」

(ヒビ)・・・然うだ、ガルダが言っていた気がする。前世のセレが(ヒビ)を操る不思議な力を使っていたって。

 セレ自身、自分の出生が分からないと言っていたし・・・若しかして何か繋がりがあるのだろうか。

 如何してもコロシの一族とセレが影で繋がる気がする。

 確証も何も無いけれども、何処か似ている気がするのだ。

 ・・・若しかしてセレもコロシの一族とか?・・・なんて、流石に突飛な話か。

 でも、セレの出生の謎だとかを探れば、或いは何らかのヒント位には、なるのかも知れない。

「あーあ、逃げられちゃった。でも十分痛め付けたし、又会ったら同じ目に遭わせてやれば良っか。」

一つ息を付き、ちらと飃は視線を下げた。

 何とか、冷静になろうとしているのだろう。落胆した所で仕方ない、次の事を考えないと。

「・・・彼奴居なくなっちゃった。でも、此で安全?」

「然うだな。此の次元は又しても君達に護られた。本当に感謝するよ。」

「完璧とは言えない出来栄えだから何とも言えないけれどね。」

「街も無くなった、もう誰も居ない。」

「・・・僕がモット早く飛べる様になっていれば、良かったかな。先の焔、初めてだったけど一寸(チョット)痛かった。ネロンも何処にも居なかった・・・痛かっただろうな。」

「あの、気休めにしかならないだろうけれど、良いかしら。」

本当は黙っていようかと思ったが、此の(ママ)じゃあ化物が余りにも不憫だ。

 突然全て失った彼に、少しでも何かを持たせてあげたいと思うのはエゴかも知れないけれど。

「貴方が先も話してくれた其の子は・・・恐らくずっと昔にもう動かなくなってしまっているわ。天使も、そんな長生きは出来ないのよ。数十年生きたら・・・もう終わりなのよ。」

「え・・・?然うなの?堕ちなくても動かなくなっちゃうの?」

「然うよ。貴方が食べた天使の中に、皺だらけになった方は居なかったかしら、其なら屹度其の方は、老衰・・・えっと、長く生きたから、動かなくなったのよ。」

「あ、居たよ!凄く腰が曲がった天使とか、皺々(シワシワ)なのも・・・あ、」

如何したら彼に伝わるか心配だったが、心当たりはあった様だ。

 そして何か思い当たったのかピタリと化物の動きが止まる。

 其の時、化物の脳内で一つの情景が流れていた。

   ・・・・・

「皆有難うね。翼が駄目になってから、ずっと来れなくて・・・。」

「アレ、初めまして。こんな所に天使、来るなんて珍しいね。」

(アレ)はもうずっとずっと昔の事。

 何時もの様に散歩をしていたら三人の天使が街から降りて来たのだ。

 未だ動いている天使が来るなんて、ネロンが来なくなって以来初だ。

 二人の天使に脇を抱えられて、偉く小さな(シワ)だらけの天使。

 翼がボロボロで、一人では飛べそうもない。一体こんな所へ何の用なのだろう。

 化物が無邪気に近付いて来たので小さな天使は可笑しそうに口元を押さえた。

 傍の二人は恐れてか少し離れたが、化物は気にしなかった。

 其より誰かが笑っている顔なんて久し振りに見た。何だか一寸(チョット)、和むなぁ。

「私はネロンよ。然うね、もう何十年も経ってるもの・・・中々来れなくて御免なさいね。」

「わぁ!()の子と同じ名前なんだ、良い名前だね!」

其を聞いて小さな天使は一瞬驚いた様な顔をしたが、直ぐ笑顔に戻った。

 何か納得したかの様に頷いていたが、久し振りに誰かと話せて浮かれていた化物は気にもしなかった。

「・・・然うね。えぇ・・・ねぇ、今日は一つ、貴方に御願いがあって此処迄来たのよ。聞いて下さるかしら?」

「ウン、なぁに?僕に出来る事なら。」

天使は嬉しそうに目を細めて、じっと化物を見詰めていた。

 何処か温かくなる様な不思議な視線だ。

「私ね、屹度もう直ぐ此処へ堕ちて来てしまうのよ。だから其の時は・・・ちゃんと食べて頂戴ね?」

「そんな事、勿論良いよ!」

「然う、有難うね。」

然う天使に言われると凄く嬉しくって、化物は何度も何度も頷いた。

「其じゃあ此は御礼よ。私がずっとしていた大切な物なの。貴方にあげるわ。」

然う言って天使は自分の頸に掛けていたネックレスを取り外した。

 其はこんな谷底でも輝く銀色の水精(スイショウ)を繋いだネックレスだった。

 不思議と温かい(ヒカリ)(ヒカリ)なんて此処には無いのに如何してこんな懐かしく思うのだろう。

「あ、此・・・()の子がしていたのと凄く似てる!わぁ、懐かしいな、元気にしているかなぁ。」

「フフ、気に入ってくれたかしら。」

そっと天使は化物の手に其を託した。

 化物の手には余りにも小さい其を、壊さない様慎重に。

「エ、本当にくれるの?すっごく綺麗だね、有難う、大切にするよ。」

「良かったわ。此でもう心残りは無いわ。」

後ろの天使が何事か小声でそっと小さな天使に声を掛けた。

 途端其迄笑顔だった彼女の表情が少し沈んだ。

「もう・・・せっかちな方達ね。でも仕方ないわ。じゃあね、私は失礼するわ。貴方に会えて、本当良かったわ。」

「ぼ、僕も!来てくれて有難うね。ア、アノ・・・只えっと、一つ僕からも御願いしても良いかな。」

「あら、貴方から珍しいわね。何かしら?」

「あのね、街に君と同じ名前の天使の女の子が居るんだ。若し其の子に会えたら、僕が宜しくって言ってたって伝えて欲しいんだ。」

「フフ、分かったわ。其の子の事、私良く知ってるから・・・必ず伝えるわね。貴方の事が大好きだって、()の子良く言っていたから。」

「ほ、本当⁉わぁ、本当に有難う、凄く嬉しいよ。・・・じゃあ気を付けて帰ってね。」

「えぇ・・・左様なら、元気でね。」

「うん、バイバイ!」

手を振る化物ににっこりと微笑むと他の天使に連れられて彼女は街へ戻って行ってしまった。

 其から数日後、言われた通りに彼女は堕ちて来た。

眠る様に穏やかだった彼女をそっと口に運んだのだ。

 ちゃんと約束守ったからね。

 満足そうに化物は独り頷いたのだった。

 ・・・・・

「・・・そっか、()の時僕が食べたのは・・・ネロンだったんだ・・・。」

だから、動かなくなる前に、会いに来てくれたんだ。

 一寸(チョット)しか経っていないと思っていたから、あんなに姿が変わってて吃驚したけれど。

 だのに・・・僕は気付けなかった。一番の友達だったのに。もっと言いたい事、話したい事、一杯あったのに。

 又君が来たら話そうって色んな事、此処ずっと考えたり思ったり、していたのにな。

「・・・思い当たる事があったのね。」

「ウン、今迄気付けなかったけれど、然うだったんだね。やっと()の御別れの意味が分かったよ。」

「然う、じゃあ貴方の一番の友人は苦しんでは亡くならなかったのね。だからせめて、其の事丈は良かったわ。貴方は助けられなかった訳じゃあなかったのよ。・・・其位しか言えないけれども。」

「ウン・・・ウン、有難うね。大切な事、教えてくれて。」

化物はちらちらと背中の棘を何度か見遣って其の内の一つを手で掻いていた。

 すると棘が(ユック)りと動き、まるで華の様に開かれる。

 其処からある物を取り出してそっと掌に乗せた。

「む・・・其は何なのだ?」

()の子が最後にくれた物だよ。とっても大切な物なんだって言ってたの。ウン・・・僕も大事に残してて良かったよ。」

愛おしそうに化物はネックレスを見詰めていた。

 ネックレスの水精(スイショウ)其の物が発光しているのか、ぼんやりと辺りが明るくなる。

「あれ・・・不思議な感じ、する?」

「成程ね、(アレ)次元の主導者(コマンダー)だったのよ。彼が持っていたから分からなかったのね。」

となると其のネックレスは天使達の宝だったりするのだろうか、若しかしたらネロンと呼ばれていた天使は、それなりの地位を持っていたのかも知れない。

 其にしても、化物が次元の主導者(コマンダー)でないと分かれば益々スガタコロシの言葉が現実味を帯びて来る。

 ・・・其の辺りは一体如何解決したら良いのだろう。

 化物はそっとネックレスを又棘の中へと隠した。彼処なら気を付ける様言わなくても彼なら大切にしてくれるだろう。

「あの・・・後は先の化物に言われた事、余り気にしない方が良いわ。彼奴はああやっていろんな所を破壊しているの。思う事はあるでしょうけど、近付かないのが一番だわ。」

「ウン・・・街をこんなにした事は(ユル)せないけど、然うだね。此以上被害が増えない様願ってるよ。」

正直、彼を此の次元に残して行くのは少し心配だ。

 スガタコロシの言葉が・・・如何にも引っ掛かる。

 彼が記憶を失った丈のミナゴロシと言う恐ろしい存在だったら?

 今は良くても、(イズ)れ記憶を取り戻したら?

 彼が如何なってしまうのか、想像も出来ない。此の選択を正しいとは言い切れないのだ。

 彼なら大丈夫と信じたいが、如何も彼等の主の力が未知数だ。

他のコロシ達があんなに慕っているんだ。若しかしたら何らかの魅了の印を掛けられているかも知れない。

 其が発動してしまえば、心で如何思おうとも屹度、抗えないだろう。

「此から如何する?飛べる、自由。」

「ウーン・・・僕も谷の外、出てみようかな。此処、誰も居なくなっちゃったから、独りは・・・淋しい。」

「うむ、色々な所を見て回るのは良い事だぞ。屹度素晴らしい旅になるのだ。」

―・・・其の魔獣の類を、君達は其の(ママ)にするのだな。―

ハリー達が化物の旅立ちに同意する中、楪は何だか複雑な面持ちだった。

 彼女も屹度、化物がミナゴロシなのだと確信しているのだろう。

―然うね、今の彼は何も悪くないわ。其にずっと此処に閉じ込められて寂しい思いをして来た彼に私は・・・手を下す可きではないと思ってるの。―

彼なら或いは・・・受け入れてくれるかも知れないけれど。

 天使との懐い出をあんな愛おしむ様に語る彼に言いたくはなかった。

―然うか。其が君達の判断なら私も従おう。又もや、助けられてしまったからな。上にも、彼の事は黙って置こう。―

―其処迄して大丈夫なの?ライネス国は貴方が思っているよりも厳しい所よ。―

―まるで・・・見て来たかの様な口振りだな。―

兜で見えなかったが、彼女は苦笑している様に思えた。

―大丈夫だ。屹度皆分かってくれる。私達は正義の使徒

「では私も失礼しよう。本当に世話になった。君達の旅路に幸あらん事を。」

一つ深々と頭を下げると楪の姿は掻き消えた。

 そんな折り目正しい彼女の様子を見て、少しロードは溜息を付くのだった。

「ではもう直ぐ行くのか?」

「ウン、もうこんな街は見たくないよ。早速、行ってみる。」

化物は翼を出すと何度か羽搏(ハバタ)いた。

「外には、もっと天使がいるかも知れないから。街の事とか、話せるかも。」

「仲間が居るかも知れない、希望一杯。」

「ウンウン、悲しむ丈じゃ、駄目だよね。有難う。」

彼の決意も可也固まった様だ。もう此の次元で自分達が出来る事は無いだろう。

「じゃあ私達は行かなきゃいけない所があるから御別れになるけれども、又会えたら良いわね。」

少し複雑な心地だけれども、純粋に然う思う。

 世界を廻った後の彼がどんな事を話すのか、聞いてみたい。

 街も・・・片付けるにしても出来る事は無いだろう、全て燃えてしまったし、此の(ママ)自然に任せるしかない。

「ソッカ、じゃあせめて上迄一緒に行こう、僕飛ぶのは慣れてないから。」

「然うね、一緒に行きましょうか。」

話も(マト)まった、ロードは黙った(ママ)で居る飃の肩をそっと叩いた。

 色々思う事はあるだろうが然うも言ってられない。続きは店に帰ってからする可きだ。

「分かってるよ御姉さん、一寸(チョット)考え込んでた丈。」

小さく溜息を付きつつも苦笑する彼は可也吹っ切れて来たみたいだ。

 其の辺りはプロ意識と言うか、若しかしたら彼の中では次の算段が出来上がったのかも知れない。

―でも、今は口を出さないけどさ、其の化物が何か仕出かしたら僕は真っ先に首を刈るから、其のつもりでね。―

―えぇ、私も其のつもりよ。でないと只の甘えになってしまうわ。―

ロードの言葉に納得した様で飃は直ぐ様(ツエ)(マタガ)った。

「では早速谷から出るのだ。」

ハリーが身をくねらせ乍ら天へ昇るのを化物は一寸(チョット)と見惚れた様に見ていた。

「如何やって飛んでるんだろう・・・僕も行くよ。」

追い掛ける化物の傍から鏡や飃と次々に飛び立って行く。

 ロードは今一度、何も残されてはいない谷底を見遣ると、地面を大きく蹴って跳び上がるのだった。

 暫く飛び続けて、終に化物は水鏡(ツキ)の元へと其の全身を晒した。

 水鏡(ツキ)が下がっている様子は無い、谷全体が薄暗さに包まれていた。

 飛んでいる間は誰も、一言も発さなかった。死の街に掛ける言葉が見付からなかったのだ。

「噫・・・凄い、此が外なの?」

先迄はスガタコロシに気を取られて見えていなかったのだろう。

 きょろきょろと谷の周りや(ソラ)を見て化物の声が弾んだ。

「凄い!何て広いんだろう、世界がこんな平らだったなんて知らなかったよ!」

「待って。何か彼処、有る。」

感動を抑え切れない化物の肩を、そっと鏡が(ツツ)いた。

 彼が指を差すのは谷の外、確かに其処に一つ明かりがある様だった。

 でも其の明かりはまるで・・・焔の様で、

「っ何か燃えてるね。奴の焔の残りとかかな。」

「でも直ぐ燃え尽きない様なのだ。・・・一寸(チョット)近付いてみるのだ。」

()の道放って置けない、先迄は無かった筈なのだ。

 禍根を残してもいけないと、そっと一同が近付くと其は一つの(タイマツ)だった。

 そして其を持っていたのは、

「っ⁉貴方は若しかして、」

見慣れた背に思わず声を掛けると、其の人物は何事かと振り返った。

「え、も、若しかして旅人さん達じゃあないですかっ!」

何と其処に居たのは街を案内してくれた天使のリースだった。

 幾らか荷物を背負い、装いも少し重い物に変わっていたので直ぐには気付けなかったが、其の声は間違いない。

「此は此は・・・失礼ですがまさか皆さん御無事だったなんて、」

驚きの余り口が開いた(ママ)になってしまっている。幽霊でも見てしまったかの様に彼は冷汗を掻いた。

「此方こそ、()の焔の中無事だったのね。又会えるなんて、」

「助かって良かった。嬉しい。」

「へぇ、何だか逃げる準備万端だったんだ。随分手際が良いね。」

生きていた事は良しとしても、まるで災厄が来るのを分かっていたかの様な段取りだ。

 飃の値踏みをする様な目にリースは頭を掻いて苦笑した。

 如何やら彼自身も思う所があった様だ。

「実は私自身も何が何やらって具合で・・・。旅人さん達が谷に降りちゃった後、待っても帰って来ないなと思って一回家に帰ったんですよ。で、もう旅の話とか色々思い出して如何しても行きたくなっちゃって、荷造りはしてるって言ったじゃあないですか。だから其の(ママ)勢いで出てみたんですよ。」

「凄いタイミング、でも、御蔭で助かった。」

「みたいですね・・・。別に好きだった訳じゃあなくても、こんな形で故郷を失うなんて思わなかったですけど、正直、未だ信じられないんですよ。」

其でも生き残りが居たと言うのは喜ばしい事だ。ショックは大きいだろうが、彼には頑張って貰いたい。

「其にしても驚きましたよ。谷を登っていたら突然変な化物が襲って来て・・・谷なんかじゃなくて、私達は(ソラ)を見張る可きだったんですねぇ・・・。」

其処ではたとリースは化物を見遣った。そして不思議そうに首を傾げる。

「えっと・・・其方の方は・・・?初対面、ですよね?」

一瞬正直に話す可きか悩んだが・・・まぁ彼なら大丈夫だろう。彼は天使の中でも少し特異なのだし。

「実は、彼が谷底に居た化物なの。でも迚も話し易くて良い子よ。先一寸(チョット)飛べる様になって、初めて谷を出て来たのよ。」

「エ、エット初めまして、未だ天使、生きてて良かった・・・。」

「な、何とっ!昔話は本当だったんですか、へぇ凄い!でも谷から出られるなら()の道、私達の役目は終わりですね。」

随分あっさりと受け入れてくれた、矢っ張り彼に話して正解だった様だ。

 彼の好奇心は可也の物らしく、恐がりもせずに化物に近付くとそっと握手を求めた。

「此方こそ初めまして、えっと・・・ずっと上の谷に棲んでたリースって言います、名前を伺っても?」

「名前は無いけど、宜しくね。アノ、君も旅をするの?」

「え、あ、はい然うですよ。右も左も分からないけど。」

握手を交わすと化物は興味津々と(バカ)りにリースに詰め寄った。

「アノ、良かったら僕も一緒に行って良い?僕も独りだと一寸(チョット)心配で・・・。」

突然の提案にリースは固まってしまう。

 屹度彼は、化物が居るなんて信じてなかったのだろう。

 けれども現実に()うして存在したとなると、昔話も現実味を帯びる訳で。

 天使を喰らう化物として、彼の目には映ってしまうだろう。

 其は事実だけれども少し丈違う、しっかり其処を説明してあげれば或いは、

 彼の提案は中々素敵だとロードは思ったのだ、だから出来れば・・・叶えてあげたい。

「あのリース、」

「面白いですね!良いですよ一緒に行きましょう!」

ロードの心配等他所にリースは何とも安請け合いをしたのだった。

 心()し目が輝いている気がする。彼に恐怖と言う言葉は無いのだろうか。

「い、良いの?やったぁ有難う、此から宜しくね。」

「はいはい此方こそ。」

「へぇ、随分あっさりOK出すんだね。」

「勿論ですとも。前に言った通り、私は此の旅で何も得られなくても良いんですよ。やらない後悔よりも、やった後悔です。だから早速旅に出て良かったと思える事が起きたんだから乗らない手は無いですよ。」

何とも大仰に手振りを加える彼である。本来は()う言う気質だったのかも知れない、街の中では何時でも仲間の目があったから。

 彼は、薄情だと思われ兼ねないが、街が燃えた事は其処迄気に病んでいないのかも知れない。

「まさか伝説が本当だったなんて、谷に居たら分からなかった事ですよ。其に此からももっともっと色々知れる訳だし、楽しく無い筈ないでしょう。化物と天使、非常に面白いコンビじゃないですか!」

「・・・然うね。私も、良い事だと思うわ。」

もう彼等なら大丈夫だろう、此の次元で出来る事は終わったのだ。

「ではそろそろ、我等も行かないといけないのだ。旅の無事を祈っているのだ。」

「ア、然うだったね。有難う皆。色々あったけれど、モウ大丈夫、僕頑張ってみるよ。」

「私からも、有難う御座いました。旅人さん達は謂わば私の命の恩人です。若し又会えたら、今度は私の旅の話も聞いてください。」

「えぇ、楽しみにしているわ。呉々(クレグレ)も気を付けて、元気でね。」

「応援してる、仲良くね。」

其々挨拶を交わすと、ロード達は飛び去る事で次元から出て行った。

 遥か彼方へ消えて行く一同を、化物と天使はじっと見遣っていた。

「いやぁ・・・凄い旅人さん達だったなぁ・・・。」

「然うだね。僕も友達が出来て嬉しかったよ。」

リースは化物を見遣ると一寸(チョット)考え込み始めた。

「・・・化物、なんて呼びたくないですし、君と呼ぶのも余所余所しいです。便宜的に名前を付けても良いですか?基本ずっと一緒に居る事になるでしょうし。」

「名前?名前を僕にくれるの?」

「くれるも何も何か好きな物とか名乗りたいのって無いんですか?」

「んー・・・。」

口元に手を当てて化物は固まってしまう。

 此は中々難しそうだ。

「じゃあ行き乍らでも考えましょうか。」

「ウン分かった!」

リースが歩き出すと化物もヒョコヒョコと後を付いて行く。

 だが矢張り彼は歩き難い様で、体格差があると言うのにどんどん化物は遅れてしまう。

「然う言えば、飛べるんですよね?若しかして私を乗せて飛べますか?」

「ウン!多分大丈夫だと思うよ。」

見兼ねてリースが声を掛けると元気良く化物は返事をした。

「じゃあ絶対其方の方が良いじゃないですか!じゃあ飛んで行っちゃいましょう!」

「誰か乗せるのは初めてだけど、やってみるね。」

そっと化物が両手を出すと、ちょこんとリースは其処に腰掛けた。

「其じゃあ出発ー!」

俄然元気になった彼の声に合わせて化物が翼を動かすと、あっと言う間に一人と一頭は(ソラ)高くへと昇って行った。

「うわぁ・・・凄いっ!此が御先祖様達が見ていた景色だなんて、」

溜息を付いてリースは化物を見遣った。

「喜んで貰えて良かったよ。此の(ママ)行くね。」 

「はいはい然うしてください!いやぁ・・・本当凄いなぁ、ば・・・ううん、あーえっと、」

何度か言いあぐねて苦笑してリースは化物の横顔を眺めた。

「矢っ張り、名前、直ぐ決めないと不便だなぁ。」

「ウン、楽しみに待ってるね。」

飛び去って行く一人と一頭の背後で、谷は次第に霞み、終には見えなくなって行くのだった。

   ・・・・・

(ソラ)からは色んな物が堕ちて来る

誰かの落とし物や壊れた物、動かなくなった天使達

でも誰も迎えに来てくれないの、堕ちたら其の(ママ)なの

だから僕が全部食べてあげるんだ、其以上壊れてしまう前に

今日も天使が堕ちて来る、飛べなくなった天使は捨てられるんだって

僕はずっと此処に居る、若しかしたら僕は待っているのかも知れない

()の子が迎えに来てくれる事を、今もずっと・・・






「・・・なぁ楪、先一緒に居た奴等って誰なんだ?」


 さぁ如何だったでしょうか?いきなり後書きから見られる方がいらっしゃれば超ド級のネタバレを噛ましてしまいますが、あっさりと街が燃えて大量に死人が出る御話でしたね★

 結構残酷かも、と思いつつも、本来は此位危機感のあるストーリーの筈なので今迄が甘々だったのです。此からも罪の無い者達がどんどんやられると思います、弱いから仕方がないね。

 今回は初めて・・・?の試みで、可也イヤーな引きにしてみました。漫画とかで良くある奴です。後の展開は御察しと言う事で・・・。

 そんな今回は寒さに震えて入力しているからかまま誤字が発掘されました。斯う言う時はドドーンと公開しちゃいましょう。と言う事でNG集です。


ハリーは人心を説いた。


 一つ目、割と今回は最初の方に集中してますね。此は次元に来て直ぐのハリー君です。斯う言う誤字なのに違和感のない組み合わせが奇跡的に出来た文章が大好きですね。

 正しくは『人身を解いた』なのですが、現実で考えたら確かに誤字の方が変換候補としては多いですね。其でも間違いじゃない此の文章が好きです、大好きです。


「然うぢゃお。僕達該当してるでしょ。其に薫風を入れて浮かせて貰ってるんだよ。」


 しょうもない一発ネタですが、急に老けちゃった飃君です。まぁ・・・無くはない誤入力かも知れません。

 何となくぱっと見の雰囲気が好きなので選ばせて貰いました。まぁ後半シリアスばっかりだからね、少し位明るくしないと。


 と言う事で、今回は此処迄です。次回は又もや新しい試みをしてみようと思います、ある意味、プロットはちゃんと練られていた話のリメイク?です。

 小説家になろう様のガイドライン的には問題ない筈、楽しみでもあったり、まぁまったり書いて行きますね。

 其では皆さん、又御縁がありましたら御会いしましょう!

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