40次元 秘密の3次元 飼イ主の苦労
今日は!・・・あれ、つい先週位に御会いした気が・・・?
と言う事で短編久し振りにやって来ました。まさかこんな早いとは思わなかった。
然も夢の1万一寸!1万切り迄後少し及ばず!
それでも短編は基本書きたい事丈を書くので割と苦にならずに書き終えますね、熱が凄いです。
タイトルから凡そ内容は御察しが付くかと思います。然う、今回はほんわかした御話です。
此を入力している現在進行形で途轍もなく眠いので、変なネタバレをしないか大変心配です。既に口調がおかしい気がします。
と言う事でどうぞ!今回は人外×青年です!フー!
「キャウ、キャウキャウ!」
「ん・・・あぁ・・・、セレ起きたのか。」
小さく欠伸を噛み殺す。
手の中でセレは一心にガルダを見詰めて尾を振っていた。
何て愛らしい目覚ましなんだろう、一寸撫でて英気を養おう。
小さな黔獣になってしまったセレだけれども、矢っ張り一日位じゃ元に戻らないらしい。
中々起きないしベッドで寝て潰しても恐かったので、セレを手に乗せた儘椅子で眠る事にしたのだ。
御蔭で熟睡出来ていないし、躯の彼方此方が痛いけれども、彼女が元気そうで良かった。
適当に撫で乍らそんな事を考えていたが、何だか一寸様子がおかしい様だ。
何だかもじもじしている・・・?手から降りたいのか、如何したんだろう。
「セレ、如何かしたのか?」
「クー・・・キャウ。」
うーん・・・獣語は流石に聞き取れないな・・・。
鳴き方からして何か困っている風ではあるけれど。
「あ、若しかして御中空いたとか?」
「キャウキャウ!」
如何やら正解らしい。
うーん、此完全にペット扱いだよな。何だか申し訳ない。
「じゃあ御飯でも作るか。えっと・・・、」
然う言えば今のセレは何を食べるのだろう。
元の姿と食性と言うか好みは一緒なのだろうか。
然う言えば聞いた事がある、確か狗とかって玉葱とか、チョコをあげたら死んじゃう事があるんだよな。
本来のセレは腐っていようが食べる、みたいな勢いがあったけれども、弱っている今は危険な気がする。
如何しよう、一番良いのは例の医者に聞く事なんだろうけれど、こんな状態のセレを連れて行ったら嬉々として解剖されそうだ・・・奴の知的好奇心の御飯になりたくはないので止めて置きたい。
となると後聞けるのは・・・余り乗る気じゃあないけれども丗闇だろうか。
丗闇だってセレのこんな姿を知らなかったのだから分からないかも知れないけれど、知識だって深いし、無駄では無いだろう。
大丈夫、決意さえしっかり持てば丗闇と位話せる。俺はビビりなんかじゃない。
一つ息を付くと早速ガルダはセレの部屋、現在丗闇の安地部屋へ向かった。
慎重にノックをする。何が彼女の琴線に触れるか分からないし。
でも丗闇は今一体何をしているんだろう。今セレがこんなだから実質自由な訳だけれども、多分セレが元に戻る迄此処に籠もっている気がする。
丗曦の事もあるし、今一上位神達の事は良く分からないな。
「・・・入れ。」
機械音声なんじゃないかと思ってしまう程の冷たい音に思わず背が伸びたが意を決して入る。
「お、御邪魔します・・・。」
そっと扉を開けると此又冷たい視線に射抜かれる。
こ、こんな所で畏縮したら猶の事丗闇に呆れられる、此処は堪えるんだ。
丗闇は特に何をしていたと言う風でもなく、手持無沙汰そうに椅子に腰掛けていた。
強いて言ったら・・・景色を見ていた、のかも知れない。
「あの、お、御早う丗闇。」
「挨拶は良い、何の様だ。」
此は手厳しい。一寸不機嫌そうだ。
「あのさ、一日経ったけどセレが小さい儘なんだ。」
「彼丈魔力を使えば当然だな。」
ちらと丈丗闇の視線が手に注がれる。
其の気配を察知したらしく、セレが手の端から顔を出した。
「キャウ!キュウウ!」
何とも嬉しそうに尾を振り、翼も可愛らしく小刻みに動いている。
飛んで行きたい位丗闇に懐いている様だ。まるで獲物を狩る様な目で見られていると言うのに物好きだ。
「言葉も交わせない程の愚かで浅ましい畜生になる等、生き恥にも程がある。誰かの手助が無ければ生きられない等。」
随分酷い言い様である。彼女の可愛さも、丗闇には通じないのか。
セレは行きたそうだけど・・・嫌がられている手前、一応何をされるか分からないし、此の儘距離を取って置こう。
「で、態々其の無様な姿を我に見せに来たのか。」
「あ、いや一寸聞きたい事があってさ、今セレ御中空いてるみたいなんだけど、でも何を食べさせたら良いか分からないし。だから丗闇なら何か知ってるかなって。」
言っている内に丗闇の渋面が酷くなる・・・。
噫もう来なきゃ良かった。此の顔は絶対アドバイスをくれない奴だ。
・・・一応セレと仲良しみたいなんだし、もう一寸優しくしてくれても良いのに。
「そんな事、我が知る訳ないだろう。そんな姿の生物も知らない。そんな事に我の手を煩わせるな。適当に土でも食わせて置けば良いだろう。」
いや良くないです。
此は駄目だ。取り付く島もない。
「そ、そっか。あーえっと悪かったな、邪魔して。」
もう用は無いのでさっさと退散しよう、触らぬ丗闇に祟りなしだ。
そっとセレが落ちない様に持ち直すとさっさとガルダは部屋を飛び出した。
「クキュルル~・・・。」
セレが手に躯を擦り付けて心細そうに鳴く。
「御免な、御中空いちゃったな。」
流石にこんな幼子に土なんて食べさせられない。いやセレに食わせないって。
斯うなったら手当たり次第に料理を作って少しずつ食べさせてみよう。
となると、早速ハリーにも仕事が出来たな。セレの為なら屹度喜んで手伝ってくれるだろう。
「ハリー、今一寸良いか?」
「うむ!此方は準備万端なのだ!」
暖簾に声を掛けた瞬間大きな龍の頭が覗いて来たので驚いてしまった。
良かった、昨日の事で一寸凹んでいるのかと思ったけれど、彼を発条にしてやる気を出してくれた様だ。
「あの、セレの為に御飯作りたいんだけど、何食べさせたら良いか分からなくてさ。どうせ作り過ぎちゃうからハリーに食べて貰いたいんだけど。」
「うむうむ!残飯処理は任せるのだ。何よりガルダの作る御飯は美味しいのだ、喜んで其の任に就くのだ!」
おぉう、何とか誤魔化したのに自分から残飯処理と言ったか。
まぁ然うなんだけど、乗る気ならじゃあ御願いしよう。
「じゃあ此処でセレと待ってくれるか?一寸何品か作って来るからさ。」
「分かったのだ、楽しみに待っているのだ。」
そっとセレをテーブルに乗せる。
ちょこんと乗った彼女は椅子に何とか乗ろうと悪戦苦闘するハリーを鑑賞するのだった。
多分椅子に乗ってから人身になろうと言う算段だったんだろうけれど、今の儘じゃあ大き過ぎて其も難しいのだろう。
流石に一品作り終える迄に座れていると信じよう。
・・・・・
「はい、無難に野菜炒めっと。」
セレの大きさからして何の道そんな食べられないだろうし、最初から少な目だ。
「良い匂いがしていたのだ、もう食べなくても美味しいと分かるのだ。」
如何やらハリーはセレと遊んでくれていたらしい。
セレが嬉しそうにハリーの手に前足を乗せて上体を起こしている。
何だか仔狗を見ている様で微笑ましい。
そっと盛り付けた二枚の皿を置いてやる。
セレも御飯にあり付けて嬉しいのか伏せって大人しく待っている。
「如何かな、セレ此食べられるか?」
一枚の小さな葉を咥えて緩りセレは食べ始めた。
口も小さいし、多分歯も殆ど無いみたいだ。如何しても食べるのに時間が掛かってしまう。
まぁハリーも食べるのに苦労しているし、丁度良いんじゃないかな。
「クルル、キュゥウ!」
如何やら彼女の御気に召したらしい。一寸ずつ小皿の料理に手を付けてくれている。
良かった。まぁ他にも作って確かめてみよう。此の状態が何日続くか分からないし。
「なぁ何か良い匂すんだけど、」
部屋からのそりと出て来たのは皐牙だった。
「え、飯食ってんのか?此何飯なの?」
「一応朝御飯だけど、量あるし、良かったら食うか?」
何だ彼だで実は皐牙は早起きだ。
ちょくちょく外に走り込みとか行ってるみたいだし、コツコツと頑張るタイプなんだな。
「あーじゃあ作るのも大儀だし、一緒に食うゼ。」
さっさとハリーの隣に座ったので野菜炒めの残りを置いてやる。
・・・そろそろ他のも出来たかな。
「矢っ張此の匂は雑草炒めかよ。ま、味良いもんな。・・・?何だ此の小いの・・・っまさか此が例の店主かよ!」
「然うだけど余苛めてやんなよ。」
早速皐牙の餌食になってしまった。一所懸命に葉っぱを食べていたと言うのに軽く翼を摘ままれて宙吊りになってしまう。
「キュウ、キャウ!」
困った様に手足をばたつかせるけれど余りに無力である。
「うわー此が本当に彼の店主な訳か?仔狗じゃん。」
皐牙は下ろしてやる気は更々ないらしく、ニヤニヤとセレを眺めていた。
セレも揶揄われていると気付いたのだろう、小さな唸り声を発し始めた。
「ヘヘッ、怒った声も可愛んだから如何しようもねぇな。」
「ぬ、セレを離すのだ小童よ!」
ハリーが取り戻そうとするも彼の手先では不可能だ。
あっさりと躱されてセレを持つ手がゆらゆらと揺れる。
「ヴー・・・ギャウ!」
遂に怒ったセレが皐牙の指に咬み付いた。
「うぎゃっ⁉オイどんな躾してんだ噛み付いて来たぞ。」
「だから苛めるなって言っただろ。」
此方は料理を切り分けたり火の元を離れる訳には行かなかったので直ぐには動けなかったけれども。
皿を持って戻った時にはしっかりとセレが皐牙の指を咥えていた。
確かに怒っていても可愛いのは認めるけどな。
「なーんちゃって、此奴牙殆ど無いから些とも痛くないぜ。」
其にオレの手は鱗があるし。
笑い転げるのを必死で堪え乍らそっと皐牙はセレを下ろしてやった。
見ると確かにセレの方がダメージを負ってしまった様で口元を押さえて伏せってしまっている。
可哀相に、此は随分な仕打ちだ。
「セレ、大丈夫か?ほら先に御飯食べちまおうな。」
「ヴーッ。」
そっと背を撫でたが彼女は未だ御立腹の様だ。
毛を逆立てて猫の様に怒っている。
けれども其の姿が頑張って躯を大きくさせようとしている様に見えて結局可愛く写ってしまう。
其でも本獣は怒っている事に違いはないので治めてあげないと。
「ヴーッキャウ!」
セレが一つ吼えると突然彼女の周りを漂っていた瓊が光り始めた。
そして六つの瓊から曦が放たれ、一つになる。其の光線は皐牙の傍の机にぶち当たった。
「え、な・・・や、焼けてる?」
光線が当たった所が焦げてしまっている・・・なんて事だ、彼女も武器を持っていた様だ。
小さいとは言えレーザーである、焦げ跡を見て皐牙の喉が鳴った。
セレは一つ鼻を鳴らすと皐牙に向けて構えた。
威嚇射撃は終わりと言う事だろう、瓊が淡く輝き始める。
「ちょ、一寸悪かったって!もう苛めねぇからさ。」
「キュウ。」
両手を挙げた皐牙に満足したらしい。一声鳴くとセレは食事を再開した。
「まさかあんな能力があったなんてな。」
完全なる無力と言う訳では無いみたいだ。
「何だよ結局店主は店主なんじゃん・・・。」
皐牙は一寸不満そうだ。まぁ自業自得だろう。
「ほい、じゃあ次は此な。」
茹で卵とパンを千切って配膳する。
野菜は大丈夫っぽいけど、此方は如何かな。
口に運んでやるとハムハムと食べ始めた。
気に入ってくれているみたいで、尾の先が揺れている。
うーん、雑食性なのかな。何でも食べちゃうみたいだ。
「そんな甲斐甲斐しく世話しなきゃいけねぇ様な奴でもないだろ。」
先のレーザーが余程堪えたらしい。
一寸丈セレを睨むと皐牙もやっと御飯にあり付いた。
「ん⁉此美味ぇな!矢っ張家主の作る飯は絶品だゼ!」
「うむ、其には同意するのだ。」
「あぁまぁ有難な。っと、もうセレは御中一杯なのかな。」
ペタンと座り込んで満足そうに毛繕いをしている。
そっか、小っちゃい分可也の小食で済むんだな。結局味見丈で終わってしまった。
「良し、先ず食の面はクリアと。」
未だ分かっていない事は一杯ある。一つずつじっくり確かめないとな。
・・・・・
御中一杯御飯を食べて満足したらしく、セレは変わらずガルダの手の中で大人しくしていた。
一度部屋に戻って来た訳だけど、如何しようかな。
そっとベッドに乗せるとふかふかなのが楽しいのかぴょんぴょん飛び跳ね始めた。
「セレ、楽しいか?」
「キャウ!」
元気の良い返事だ。ずっと見ていられる。
伏せったりコロコロ転がったりしているのを暫し見守っているとノック音が響いた。
「あのぉ~御邪魔しますぅ。」
「ん、リーシャンか。」
珍しいな、俺の部屋に来るなんて。
「ガルダ!セレは何処に居ますか!」
更に意外な事にリーシャンはロードの肩に留まっていた。
如何やらリーシャンが嘴で優しくドアをノックしてくれたみたいだ。ロードだったら扉が吹っ飛ぶ。
「セレなら・・・其処に居るけど。」
指差した瞬間ロードの目が輝く。
「あっ!駄目ですよぅロードさん!緩り落ち着いて近付きましょう!」
「えぇ分かってるわ。『恋愛&変態 十三巻〜君の心にディープイン〜』でメタモーフォシスが言っていたもの。“女は変化に聡い生物だ。だから慎重過ぎる位が丁度良い距離を保つ。”って。」
おぉ、此は何て言う友情だろう。
リーシャンが手綱を握る事でロードの余りある力を制御している。
素晴しい、何時の間にこんなコンビネーションが生まれていたんだろう。
「ダイヤはどんな意地悪をするか分からなかったのでぇ、そっとぉ抜けて来ましたぁ。」
「そっか。ま、まぁ緩りして行けよ。」
確かに今此の店でセレにとっての危険神物はダイヤと飃だ。
二柱には成る可く会わせない様にしないと、何されるか全く分からない。
・・・一応ロードも危険神物の一柱だったんだけれど。
「あの、何か二柱で居るの一寸珍しいな。」
「キャァアアァアア‼ま、まさか此の子がセ、セレなの‼」
「優しくっ!優しくですよぅロードさぁあん‼」
鋭く牽制するとリーシャンは少し羽搏いてガルダの近くで滞空した。
「実はぁ少し前ダイヤが面白半分にロードを占ったんですよぅ。すると“蒼い鳥に逃げられる、若しくは握り潰してしまう。”って出ちゃったらしくて、同じ鳥の私にぃ・・・鳥を捕まえるアドバイスが欲しいと来たんですぅ。」
「・・・もう一寸何処から突っ込んで良いか分からないけど、話は分かった。」
色々間違えちゃってる・・・ダイヤがしたのは比喩の話だし、リーシャンは龍であって鳥じゃないし、もう意味が分からない。
其でもリーシャンのアドバイス自体は的確だったみたいで現にロードは何も壊していない、凄い進歩だ。
まさかこんなタッグが生まれるとは。
ロードはリーシャンの忠告通りそっとセレを手に乗せた。
セレも嬉しそうに尾を振っている。そんな姿がロードの心を射抜くのは想像に難くなかった。
「な、なんて姿に、こ、こんなの卑怯よ。っ、勁い丈じゃなくてこんなっ、」
分かる、其の言葉にならない感情分かるよ。
「今の私よりも小っちゃいですねぇ、因みに御話とかはぁ出来るんですかぁ?」
「うーん、其なんだよな。多分多少言葉は理解出来てるとは思うんだけど、話せないっぽくてさ。」
意思疎通が取れないのは単純にきつい。
「然うだ、折角だし其の辺りもテストしてみようかな。話が出来ればもっと色々分かるし。」
「えぇえぇ!賛成よ!私も手伝うわ!一杯御喋りしたいもの!」
「其じゃあ先ずは此方の言葉がちゃんと分かるか聞いてみるか。」
多分分かってるとは思うけど、雰囲気丈で応えている可能性もあるからな。
「フフッ、そんな事なら御安い御用ですわ!さぁセレ、私は誰か分かりますか?」
「キャウ!キーキュウ。」
「流石セレですね、御名答です!」
「いや其答えた事にならないからな・・・。」
一柱芝居が凄い。其、セレが鳴こうが尾を振ろうが同じ反応をしただろう。
「多分セレはテレパシーとか使えないからもっと答えられそうな事を聞いてくれるか?」
此自体は俺一柱でも出来るんだけれども、彼女が酷くやりた然うだし、一寸御願いよう。
下手に取り上げたりしたら例の万力で何をされるか分からないし。
・・・此処は次元の迫間だし、万が一を恐れるのは仕方ない事だ。
「分かりました!じゃあセレ、御手!」
そっと出したロードの手にセレも片前足を乗せる。
「凄い!ちゃんと出来たわ!」
う、うーん、大事なのは其処じゃないけど、まぁ良いか。
「私も一寸話したいですぅ!」
又リーシャンはロードの肩に留まると小さく囀った。
其の声に反応してセレは顔を上げる。
「じゃあ・・・御代わりぃ!」
スッとセレが反対の手を上げた。
「伏せぇ、ジャンプゥ。」
何でも無いかの様にセレは御題をクリアして行く。
でも此・・・完全にペットの扱いなんだけど。
「じゃあ彼も見たいわ、三回回ってワン!」
「キャン!」
「凄い!何て賢いの!ちゃんと出来るなんて偉いわセレ!じゃあ次は・・・、」
「ス、ストップ!もう十分だから有難なロード、リーシャン。」
何だか此以上セレが玩具にされるのが堪らなくなってつい止めてしまった。
うん然うだよ。見た目がこんなでも中身はセレなんだよ。こんなペットみたいな事させられない。
そっとセレをロードの手から奪還した。
・・・正直、彼の馬鹿力を見ているのでロードに預けて置くのは一寸恐い。
セレはちゃんと出来た事を誇っているみたいで何だか胸を反らしていた。
一応労いの意味で撫でるけれども、斯う言うのは矢っ張りもうしたくないな。
「済ませぇん。何だか一寸遊び過ぎちゃったですぅ。」
「あ、いや此方こそ、まぁその、有難な。一応此方の話は理解してるって分かったし。」
「フフ、セレもガルダの傍が安心するんですね。一寸嫉妬しそうです。」
ロードから嫉妬されると一体何をされるのか考える丈でも恐ろしい。
穏便に済みそうもないので知らずセレを隠す様に手で包んでしまう。
本神に悪気が無いのは分かっているけれども・・・一応な。
「然う言えばリーシャンは今のセレが何て言ってるかは分かるのか?」
「いえー只の鳴き声ですねぇ。」
まぁ然うか。同種じゃないと何て鳴いてるか迄は分からないよな。同種がいるのかも分からないけれど。
「良い物が見られましたわ。でも矢っ張り私としては元のセレの方が二柱の絡みが色々と・・・なので少し離れますね、御邪魔しました!」
何か意味深な事を呟くとあっさりとロードはリーシャンを肩に乗せた儘部屋を出てしまった。
何だか意外だ、もう一寸見て行くと思ったのに、何か用事でもあったんだろうか。
兎も角、又一つ分かったんだ。順調ではあるな。
「クゥ・・・、キューキュー。」
セレが俺の手の端ギリギリ迄来て一心に俺を見詰めていた。
前足が上がって一寸二足歩行っぽく立つ。尾が随分激しく振られていた。
「う、うーん・・・如何したんだセレ。」
四足だから余りジェスチャーも期待出来ない、何かを伝えようとしているのは分かるけれど。
「キャウ!キュキュウ!」
すると今度は二足で立ち上がったり手の中で飛び跳ねたりと中々大きく動き始めた。
見ている分は何とも可愛らしいが、一体如何言う意図なんだろう。
「・・・若しかして、遊びたい、とか?」
「キュウ!」
正解らしい。
何て事だ、まさかセレの方からペット扱いを望むなんて。
こんな姿なんだ、遊ぶ内容がショッピングや映画鑑賞等ではないだろう。
多分望んでいるのはごっこ遊びだ。
うーん・・・何か良い物あったかな。
時空の穴を出して適当に中を弄ってみる。
「ん・・・あ、此は、」
手応えがあって取り出すと、其は石竹色の小さなゴムボールだった。
何だっけ此、凄く懐かしい感じがするけれど、まぁ良いや、使っちゃおう。
「ほらセレ、こんなのは如何だ?」
セレの前に置いてやると頻りに匂を嗅いで突き始めた。
押すと弾力があって小さく跳ねる。其の動きが面白いらしく、上に乗ったり転がしたりと遊び始めた。
「キュウ、キュウゥ!」
すると俺の足元迄転がして来た。何か期待するかの様に見詰めて来る。
ボール遊びって言うと・・・矢っ張り彼なのかなぁ。
そっとボールを取って軽く転がして奥にやる。
「キュウ!キュキュ!」
そして其を追い掛ける小さなセレの背中。
ボールはセレが咥えるには大き過ぎるので、前足を掛けて転がしている。
覚束無い足取りで、何とかセレはボールを俺の足元迄持って来た。
「此、楽しいかセレ。」
「キュウ!キュウウ!キュ!」
迚も楽しいらしい、催促のつもりなのか執拗にボールを突いて来る。
余り彼女にこんな扱いしたくないんだけれど、構ってあげないのも可哀相だよな。
暫し悩んだ後にガルダは又ボールを放った。其の後を直ぐ様セレも追い、転がして戻って来る。
「うん、偉いなセレ、もう一寸続けようか。」
「キュウ!」
尾を振って随分御機嫌だ。
取り敢えずは気の済む迄付き合ってあげようか。此も、彼女の休息だと思って。
軽く一撫でして又ボールを放る。
其を飽きもせずに追い掛ける彼女、今回は一寸棚の方へ入り込んでしまった様だ。
何とか潜り込んでボールを見付けた時だった。
「プハッ!わぁ、懐かしい匂がすると思ったら此のボールだったんだ!」
「キュゥウ⁉」
すると突然棚の引き出しが開いて中からケルディが出て来た。
行き成りの登場に驚いてセレは小さく飛び上がり毛を逆立てる。
「ケ、ケルディ?本当色んな所に入り込むな。」
「ヘヘッ、ねぇガルダ、未だ此のボール取ってたんだね。」
「ん、あ、然うか、其ケルディが小さい時に遊んでた奴か。」
やっと懐い出した。初めてケルディをアーリーから託された時に一緒に貰っていたんだ。
もっとケルディが小さかった時、良く此で遊んでたな、懐かしい。
「然うだよ!何だか此で又遊んで貰ってるのを見ると弟が出来た気分だよ。」
「キュ、キュキュ!」
セレは何とかボールを動かすとコロコロとガルダの所迄持って行った。
其の様子をうずうずと何処か羨む様な目でケルディが見ている・・・。
「ねぇねぇガルダ!ボクも一緒に遊びたいな。」
「一緒にか?良いけど、御前今のセレより速いだろ。」
ボールを全部取っちゃあセレが可哀相だ。平等に出来る遊びにしないと。
今の所、黔獣になってしまったセレに長所らしい長所は見付からない。
レーザーが出るって事は分かったけれども、其以外は何ともか弱いのだ。
走りも体格差も洞察力も全て劣ってちゃあ楽しくないだろう。
「んーじゃあ昔みたいにボール当てごっこしたら良いんじゃない?ボクが其のボール持って何処か隠れるからさ。」
ボール当てごっこ、何とも懐かしい。
ボールを隠して、匂で捜して貰うと言うシンプルなゲームだ。確かに其ならセレの嗅覚の度合いも分かるし、良いかも知れない。
そっとボールを嗅いでみる・・・うん、昔匂付けで華の香りを付けたんだけど、未だ残ってるな。
「然うだな。其でやってみるか。良しじゃあセレ、此の匂を良く覚えてくれるか?」
ボールを近付けると興味津々と許りにセレは匂を嗅ぎ始めた。
暫くするとそっとケルディがボールを自分へと引き寄せた。
「じゃあ今からボクが此を隠すね。ちゃんと見付けられたらセレの勝ちだよ。」
「キャウ!」
やる気十分らしい。セレが元気良く鳴いて両前足を上げるとケルディはさっさとボールを咥えて引き出しの中へ入ってしまった。
そして器用にも中から引き出しを閉めてしまう。
さて、ケルディは隠れる天才だけれども、セレはちゃんと見付けられるかな。
「さ、セレもう捜しても良いぞ。」
「キュキュウ!」
尾を一つ振ると元気良くセレが駆け出した。
向かうのは先ケルディが入って行った引き出しだ。
動かせるか一寸心配だったが、何とかセレは引き出しの取っ手を咥えると一段丈動かした。
そして中に潜り込むと頻りに匂を嗅いでいた。
「セレ、ケルディは見付かったか?」
「キュウゥ?」
声を掛けるとヒョコッと引き出しから出て来た。
でも如何やら見付けられなかったらしく、首を傾げている。
うん、ちゃんと言葉も理解出来ているし、先ケルディが入った引き出しから捜したと言う事は其丈の知能もあると言う事だ。
斯う言う遊び、セレにさせるのは一寸気が引けたけれども、彼女の現状を知るには非常に有効なのかも知れないな。
セレはケルディが引き出しに居ないと分かるとヒョコヒョコと部屋の中を捜し始めた。
色んな所を匂を嗅ぎ乍らごそごそ探られている・・・何だか彼女にされていると思うと変な気持だ。
「キュ、キュキュッ!」
セレがベッドの足に前足を掛けて立ち上がった。
ベッドの上に上がりたいのだろうか、そっと彼女を両手に乗せてベッドの上に置いてやる。
「キュウゥ、キュ。」
御礼のつもりなのか俺の指を一舐めするとトコトコとセレはベッドの端から捜索を開始する。
可也此の遊びに夢中になってくれているみたいだ。もう少し見守っていよう。
「キュウ!キュ!」
突然セレは姿勢を低くすると布団の端に体当たりした。
「わーい当たりだよー!」
そしてセレがぶつかる寸前、布団からボールを持ったケルディが飛び出した。
「キュ⁉キュゥウ・・・。」
突然ケルディが出て来たのでセレは酷く驚いてしまった様だ。
思わず飛び上がって大きく後転してしまう。確かにケルディの方が二回り程大きい、一寸恐いよな。
「キュウ、キュウゥ。」
いそいそとセレはガルダの傍迄走ると手に一所懸命躯を擦り付けて来た。
其の仕草が余りにも愛しいので落ち着く様に存分に撫でてやる。
恐かったな、恐かったよな。大丈夫、俺が居るからな。
「エヘヘ御免ね。隠れる側も面白くてついやり過ぎちゃった。ねね、もう一回しようよ。」
「キュキュ!」
此の儘では彼女のプライドが許さないらしい。受けて立つと言わん許りにガルダの手から飛び出して来た。
「うん其の意気だよ。じゃあスタート!」
ケルディはボールを咥えると布団の中へ潜り込む。
其の後を直ぐセレも追い掛けたが、もう姿は無い様だ。
ケルディの得意な狐火の転移焔なんだけど、今のセレには絡繰なんて分からないよな。
其の後もセレは何度もケルディに驚かせられ乍らもボール当てごっこにすっかり夢中になるのだった。
・・・・・
「ふー久し振りにこんなに遊んだよ。」
「何だか御前の方が楽しんでいた様に見えるよな。」
「ヘヘッ、すっかり楽しませて貰っちゃった。もう眠そうだし、今回は此処迄だね。」
セレはすっかり遊び疲れてしまった様で舟を漕ぎ始めている。
今ベッドに置いたら其の儘丸まって寝そうだ。
「まぁでも有難なケルディ、セレも楽しんでいたし、充実してたんじゃないかな。」
「アーリーと三柱で遊んでいたのを懐い出すね。ボクの鼻の訓練だって言ってたけど、此の遊びが一番好きだったよ。」
「噫・・・でもアーリーのやり方はきつかっただろ、訓練場の何処かにボールを埋めるなんて、あんな徒広い所に。」
「其でもボクが余りにも見付けるのが早かったからアーリーがむきになって陰霖を降らせたんだよね、フフッ。」
ついケルディが吹き出してしまうのも分かる。俺も懐い出し笑いが漏れた。
「然う然う、でも其の所為でボールが出て来ちゃって、最速記録だったよな。」
本当に懐かしい、此処に彼女が居たら何て言っていただろう。
“彼は目の訓練だったのよ!”なんて、むきになって怒っていたかも知れない。
「今のセレだったら何丈掛かるかな・・・ってえ、あれ、セレ?」
足元でうつらうつらしていると思っていたのに姿がない。
「あれ?本当だ、何処行ったんだろうね。隠れているのかな。」
二柱はきょろきょろと部屋の中を捜索し始めるのだった。
・・・・・
「キュー。」
静かな部屋に小さな鳴き声丈が響く。
セレが睡魔と戦い乍らやって来たのは自分の部屋、現在丗闇の部屋だった。
扉が本の少し開いていたんで入り込んでしまったらしい。
丗闇はじっと椅子に座って瞑想でもしていたのか目を閉じていたが、思わず其の声に目を開けた。
そして視線を少し丈彷徨わせてセレの姿を認めると慌てて目を閉じた。
「キュウゥ・・・キュウ。」
覚束無い足取りでそっと丗闇の座る椅子に近付く。其でも丗闇は無視を決め込んだ。
だがセレが彼女の足に躯を何度も擦り付けて来るので、流石に気になったらしく目を開いた。
「・・・彼奴は一日位此奴の面倒を見切れないのか。」
「キュウゥ。」
「我に懐くな。彼奴の所へ戻れ。」
冷たく言い放ったが離れる気は無いらしい。其の場に蹲って眠たそうな目の儘丗闇を見上げていた。
「・・・・・。」
大仰に溜息を付く丗闇の眉間の皺が酷くなる。
そしてそっと手を伸ばし、くしゃりと一度丈セレの頭を撫でた。
「ほら、もう十分だろう。さっさと戻、」
「セレ!こんな所にっ、」
突然扉が開け放たれ、ガルダが現れた。
「キャウ!」
其の音に大いに驚き乍らも、セレは前足を一度上げると直ぐ様ガルダの傍へ向かった。
「よ、良かった直ぐ見付かって。本当何処行ったのかと。」
セレを両手で掬って持ち上げると、此の世の物とは思えない冷たさが背を駆け上った。
少し視線を上げるとばっちりと丗闇のと搗ち合い、慌てて下を向く。
な、何だ今の目は、見た丈で心臓に槍を刺されたかの様に痛むっ、
何でそんな殺す勢いの目で見てるんだ。セレよりずっと殺し屋の目をしているじゃないか。
まさかセレが来た事が気に入らないのだろうか・・・こんな可愛いんだから少し位の苦労なんて苦にならないのに。
今迄見た中で一番恐ろしい目だ、彼女は会う度に其の記録を更新している気がする。
でもそんな視線で射抜かれて猶、セレは丗闇にも尾を振っているみたいだった。
噫、今のセレには危機管理能力と言うか、危険察知が働かないんだ、俺が見てないと。
「全くもう少しタイミングを・・・いや、抑目を離すなんて以ての外だ。我が若し枴を持った彼奴だったら即首を刎ねている所だ。」
「は、はい済みません・・・。」
枴は・・・恐らく飃の事だな。
確かに此処が彼の部屋だったら・・・うん、容易に想像出来る。
嬉しそうにセレを谺の刃で斬り裂くだろう、考えたくもない位ありありと目に浮かぶ。
今のセレって屹度生命力が高いと言う訳でもないだろう、抑の魔力が無いんだし。
其は確かに反省点だ。家だからって安心出来なくしたのはセレ自身なのだから。
「別に我はそんな姿になった其奴を助ける義理も無いし、然うしようとも思わない。もう少し守護者としての自覚を持たないと自他共に溺れるぞ。」
「か、返す言葉もありません。」
頓平謝りしか出来ずにいると、終に丗闇の視線が逸れた。
・・・帰って良いと言う事なのだろうか。いや然うに違いない!
「じゃあその、失礼しましたっ!」
頭を下げるとそそくさと部屋を飛び出して自室へ引き上げた。
後ろ手でドアが閉まったのを見遣って、丗闇は大きな溜息を一つ付くのだった。
・・・・・
「っはぁ、こ、恐かった・・・。」
恐いと言うより恐ろしい、もう生きた心地がしなかった。
もっと慎重に部屋に入る可きだったのかも知れない、セレが扉の隙間から見えてつい飛び込んじゃったんだよな・・・。
何だか一瞬丗闇がセレを撫でている様に見えたけれど、流石に気の所為だろう。
あんな鬼の様な形相で撫でる奴がいるかっ!若しかしたら頸を絞めようとしていたのかも知れない、彼女が無事で本当良かった。
セレは命の危機に瀕していたとは露知らず、手の中で丸くなっていた。
護れるのは俺丈・・・俺が、セレの守護者なんだ。
先の丗闇の言葉を反芻する。
彼女の言っている事は正しい。俺が彼女に怒るのは筋違いだ。
丗闇は俺の為に言ってくれたんだ。自覚が足りないと叱る為に。
だったら俺は其にちゃんと応えないといけない。彼女を斯うしてしまったのは他でもない俺なのだから。
そっとセレを抱いた儘ベッドに腰掛ける。
彼女許りが変わって行く。俺を置いて何処かへ行こうとしているみたいで。
然うだ、斯うしてしっかりと両手で持っていないと。此を離してしまったら俺は・・・、
「キュウ・・・。」
寝言なのか小さく彼女は鳴くと手に躯を擦り付けて又丸くなる。
其の背をそっと撫でる。背が上下するのに合わせて緩りと。
縋るには彼女は小さ過ぎる。こんな小さな彼女一柱に全て預けるのは矢っ張り間違いだ。
俺の願いが彼女の隣に立つ事なら、俺の為可き事は、
先ずは此の地に、足を付ける事なんだろう。
「起きたら又御飯作ってやって、其と寝床の準備と・・・、」
段取りを口に出し乍ら、彼の口元は穏やかな儘だった。
如何だったでしょうか。しっかり眠気を追い払ってから続きを書く事にしました。
今回は本当に只温かい丈の御話でした。こんな話も書けるんですね。
実は物凄い偶然と言うか、此の話を書き始めた時に丁度子猫を二匹飼う事になりました。
其の時の育児の大変さを活か・・・せていないですが、何だか運命だなぁと柄にもなく思ったり。
でも御蔭で此の話を見る度に、此の時彼の猫達はやって来たのかと日記みたいに感慨に耽る事が出来る、ある意味懐い出の御話となりました。
化物の様に勁い片があんなに一気に弱り切る話が大好物なのでちょくちょく出したいですね。流石に一度こんな目に遭ってしまったのでセレも警戒するとは思いますが・・・。
何気に前回位からやっと真面目に話のプロット?粗筋みたいなのを予め書く様にしました。完全に今更ですね。
此迄は、噫、こんな展開にしたら良さそう、此の台詞入れたいな。みたいなのを思い付きでずっと書いていました。だから矛盾がないか探すのが厄介だったり・・・。
でも此処最近粗筋をきちっと書くと話が凄く書き易い事を発見したので此の習慣を続けたいですね。
と言う事で今回は此処迄!次回はまぁ普通に次元の話です。只個人的には珍しい試みをしてみたり・・・?
ではでは又御縁がありましたら!




