1次元 永劫のハジマリ
初めまして、-Sare-と申します。
先ずはタイトルをクリックしてくださった皆さんに感謝。
まさかあんなタイトルと粗筋で興味を持ってくださる方がいたとは驚きでした。貴方の時間を少し丈私に割いてくれるなんて有難う以外に何て言ったら良いか・・・本当有難う。
御覧の通り此の次元龍屋は超中二病なファンタジー物です。加えてグロいし人外物だし、誰得?な私のニッチな趣向が全開です。此を読んだ事によって精神と人格にあられもない何らかの悲劇元い喜劇が起きましても私は責任を負い兼ねますのでどうぞ御了承下さい。
ではでは前置きは此位にして、どうぞ御楽しみください。
何時の物語かは分からない
誰かが語り、誰かが聴いた物語
誰もが知り、そして忘れて行った物語
今、其が紡がれる
・・・・・
世界が壊れる音がした
歯車が軋む音がした
理が綻びる音がした
旻が崩れる音がした
地が割れる音がした
零星が砕ける音がした
そして、世界の音が全て失われた
・・・・・
目が覚めたと言うより、覚醒した。そんな感じだった。意識がはっきりして来た様だ。
でも、何も見えない。否、闇丈は、感じられた。
分からない。目が開いているのか、閉じているのか分からない。今が如何言う状態で、此処が何処かも分からない。名前も自分と言う存在も・・・全て、分からない。
何の気はなく、少し躯を動かしてみた。
ギシッ・・・
手を付く、躯が少し傾いて、手が沈んで行くのが分かった。
布・・・ベッドの上なのだろうか。如何やら自分は何処かに俯せで寝かされているらしい。
其処でやっと自分に手足があるのが分かった。・・・如何も、変な感じだ。自分の姿も知らないなんて、記憶喪失にも程がある。抑自分は記憶喪失なのか、自分は単なる無知ではないのか。今、其に気付いた丈で、無知と記憶喪失は違うのではないか。
・・・何が何だかさっぱりだ。
又、感覚も少し変だ。まるで今、初めて自分の躯を知るかの様な。躯の動かし方を知ったかの様な・・・。
此処迄来て自分の手足が如何だったかも分からない。目の位置・・・と思しき所に手を持って来るけれど・・・見えない。何だろう、其処迄此処は冥い所なのだろうか。自分も何も見えないなんて。
「・・・おっ、目覚めたか?」
何処からともなく男と思しき低い声がして思わず身構えてしまう。
思いの外、焦っているのかも知れない。何も分からない事に。冷静なつもりだったが、斯うも何も知らないのでは、致し方あるまい。
「いや、そんなに驚かれても・・・ほら、武器なんて何も持ってないぜ。」
何となく声の聞こえる方を見遣る。・・・でも矢張り何も見えない。向こうは自分が見えている様だが・・・。
見えない、分からない。
「ん、此方だよ此方。言葉、分かるんだろ?」
「此方と言われても・・・。何も・・・見えないのだが。」
声を掛けてみる。此も変な感じだ。慣れないと言うか、初めての事を・・・した感じ。
「見えない?・・・噫、若しかして御前、盲目か?」
噫、其で納得が行った。然うか、自分は盲目だったのか。自分の事は何も知らないから、盲点だったな其は。道理で何も見えない訳だ。闇しかない訳だ。
「・・・噫、屹度然うだと思う。」
「思う?自分の事なのに変な言い方するなぁ・・・ハハッ。」
快活に男は笑う。
「・・・何も分からない。憶えていないんだ。」
何も分からない自分は、只男に声を投げる丈。此の男が何であれ、自分に出来る術は其しかない。
「噫、記憶喪失ね、記憶喪失。初めて其になった人に会ったな。」
人・・・。如何やら自分は人らしい。如何やらって変だけれども、本当に其すら知らなかったのだから、こんな考え方になってしまう。鳥とか魚とか猫とか宇宙とか、自分が何なのか、皆目見当も付かなかったのだから。
・・・其にしても軽い、軽過ぎる。記憶喪失だってのにそんな当たり前みたいに言われても、挨拶に困るのだが。
「そっかぁ、記憶がない・・・ね。どっかで聞いた物語みたいだ。差詰め、ヒロインって所か。噫、成程、分かった分かった。其は大変だな。目も見えないし、うーん。如何しようかな。」
男は一気に然う言うと、一息付いた。
何か考えが浮かんだのだろうか。にしても・・・軽い、全然大変そうじゃない。
「じゃ先ずは目だな、目。其が見えないと俺の事、信用出来ないだろうし、不安になる許りだろ。えーっと・・・御前、魔術とかって分かる方?斯う焔とか雷とか釼とか出せる奴。知ってる?」
「魔術なら知ってる。魔力とか然う言うのなら。」
「OK。然う、其の魔力をさ、蝙蝠の超音波宜しく、放つのをイメージするんだ。噫、蝙蝠って分かるか?然うだな、パーッて斯う波紋みたいに。大事なのはイメージだ。」
蝙蝠は知ってる。彼を想像すれば良いのか。
イメージ、超音波や波紋を。感じる様に、感覚を覚える。
「出来たか?じゃあ其を目から出すイメージをするんだ。ビームとかみたいに、メデューサの瞳の様に。放つのは魔力だ。調整して感じられる最小限に。其が出来れば色とかも見えて来る筈さ。其を目でキャッチして、目で見る様にイメージすれば、感覚さえ分かれば、前後左右は御手の物、透視も出来るし、色もどんどんクリアになって来る。」
目に・・・波紋を目で感じる様に・・・。
「・・・あ、」
見えた。ちゃんと風景、景色が。小さな部屋、淡いブルーの壁、半開きの窓、窓の外、氷鏡の曦、小物入れ、木製のベッド、真新しい棚、背後の壁、そして・・・目の前に立っている男の姿。
男・・・と言うよりは青年か。彼はラフな服装で、短い茶髪。色皓く、瞳は何て言うか、沫雪や紅鏡、氷鏡の様に薄い皓だった。何だか吸い込まれそうな瞳・・・何処かで見た様な・・・。
其処でやっと自分の姿も見える事に気付いた。何だか此も変な感じだが、自分の姿を鏡で見た様な、そんな風に見える。長い金髪、闇の様な黔い瞳、襤褸のオーバーコート、そして肌が皓いのとは対照的に、黔くて歪な、獣の様な陶器の様な手足。捩じれた爪、牙、小さな羽根の様な耳に、大きな本当の翼。八翼の翼は蝙蝠の翼、鳥の翼、青刺と輝石の翼、闇の不完全な翼。そして長くうねった尾。
何で俯せで寝ていたのか分かる。翼が大きくて、仰向けに寝るには邪魔だったからだ。
でも・・・此が自分?青年は先、自分を人だと言っていた。でも此は、此の形は人か?此の青年の様に、人ってのは翼とか尾とか、こんな手足が無いのではないのか?
此の姿は・・・人って言うより・・・化物だ。
自分の考えに思わず身震いする。考えたくない、迚も、迚も嫌な言葉だ。
「・・・如何した?何か見えたか?」
気遣わし気な声。顔を上げた。自分は今、酷い顔をしているだろう。
見たい物は見えた。でも此は・・・。
「見える様になったけれど・・・。」
「けど?」
青年が首を傾ける。
今更だが、自分が怖くないのだろうか。
こんな姿をしているのに。其の気になれば、彼を八つ裂きに出来そうな手が、刃があるのに。其の気になれば彼を食い殺せそうな牙があるのに。
若しかして、自分が思った以上に此の姿って一般的なのだろうか。そんな淡い期待を持つ。
「何て言うか・・・私は・・・人、なのか?その・・・此の手とか足とか、正直人ならざる者って感じがするのだが・・・。」
声が小さくなる。変な事を言っているのだろうが、自分が何なのか一刻も早く知りたかった。先のイメージ然り、自分が何か分からないと自分の姿が此の手足の様に歪んでしまう、そんなイメージをしてしまう。其丈は避けたい。此以上、何に成るって言うんだ。
「あ、えーと・・・人じゃあないかな、俺の知る人では。」
息を呑む。然うか、然うか、じゃあ自分は・・・。
自分の目が沈むのを見て、慌てて青年は手を振り、口早になった。
「で、でも俺も一応人でなしだし・・・あ、別に悪い奴って訳じゃなくてな。でも一概に人じゃないって言えないんじゃないのか?まぁ一応今の称号って言うか、カテゴリーでは人でないにしても、其の姿、何処かの次元じゃ主流だったのかも知れないぜ。御前の言う人がどんな者なのか、俺には分かり兼ねるけれども、認識のズレは仕方ない。此処に来る奴は皆全然違う次元の者だからな。でも先の問いに言うならば、確かに人ならざる者だ、俺も御前も。でも此処に来た者ならば、俺達は同じ種族、同じ系統だ。其処は安心して良い。」
「ま、待ってくれ。話が行き過ぎる。次元とか種族とか、何なのか説明してくれないか?そして私は結局何なんだ。」
意味の分からない話は疲れる。付いて行けない。何か論理学的な話をされている感じだ。
其を聞くと青年はぽかんとした表情を浮かべた。酷く滑稽な、其でいて何処か浮世離れした物を見聞きしたかの様に。
「え、本当にマジで記憶が無いのか?」
呟いて青年は一度口を噤む。そして逡巡した後に緩りと口を開いた。先迄彼丈話していたのに、言葉を選ぶ様に。
「何って・・・神。God。神様って言うんだよ。俺達の種族は。」
「・・・・・。」
暫しの沈黙。此の静寂を裂くのは吝かではないが致し方ない。
良ーし、盛大にパニクるぞー。コミュニケーションの一環だ。此処で空気を温めるのも悪くはないだろう。トークだ、トーク。
「えーっと、神って言うのは彼か。全世界を創り出したと言う彼の伝説の・・・、」
「否、其はクリエーターだ。俺の言った神とは少し違う。」
・・・あれ、即答だった。此はトークとか、ギャグとかジョークではないのだろうか。
「じゃ、じゃあ人間を超越した威力を持つ、隠れた存在。人知を以て測る事の出来ない能力を持ち、人類に禍福を降すと考えられている威霊か。」
「最後迄一応聞いたけどそんな何処かの辞書的な神じゃない!」
「では人に危害を及ぼし、怖れられている霊、虎、狼、蛇等の・・・、」
「俺が蛇に見えるのかよ!若し然うなら御前の盲目治ってねえよ!」
「噫、紙か、紙。ペーパークラフト。実物大か。」
「盲目じゃねえかぁ!」
ストックが尽きました。さて、空気は温まったのだろうか。何かヒートアップ為過ぎた様な・・・。
「はぁ・・・分かった、分かった。一から十迄、ピンからキリ迄俺が説明してやる。俺の長い長い一柱語りをやってやる。合の手を頼むぜ御嬢さん。眠くならない様に山葵でも目に塗れよ。正座できちっと聴く様に。」
「あ、噫、宜しく頼む。」
山葵は無いが、正座はした。ベッドの上なので安定し難いが、誠意は伝わるだろう。
「さーて、先ずは・・・、」
青年は椅子を出すと、背凭れに手を置き、逆向きに座った。何とも気の抜けた教え方だ。
「先ずはもう基礎中の基礎、世界の構造から説明するぞ。多分御前の知識は何処かの次元の物だ。残念乍ら此処では其の半分も、否、一割も通用しない。常識も、モラルも、ルールも。まぁ俺の知識も大半は何処かの次元の物だから、御前には分かり難い所もあるだろうが、其処は直ぐ挙手してくれ。何とか伝わる様に頑張るから。」
「・・・噫、分かった。」
もう既に次元とかと又分からない言葉が出たが、まぁ目を瞑るとしよう。多分一々聞いていたら限がない。
青年はピン、と人差し指を立てると、空中に沢山の丸を描いて行った。其は曦の軌跡を残して、空中に留まった。
まるで自分と彼との間に目に見えない壁があるかの様。魔術の一環なのだろうが、思わず感嘆の息を付いた。
「良いか?先ず此が此の世界、全てを記した地図だ。そして此の沢山描いた丸が、俺が先言っていた次元、と呼ばれる所だ。」
青年は然う言い、空中の丸を指で突く。
「んで、次元ってのは一種のパラレルワールドと思えば良い。並行世界、其の一つ一つが全く異なる国や大陸や、文化や常識がある。一つは旧時代な次元、一つは宇宙大戦、一つは動物許りの次元、一つは滄溟許り、一つは平面な所、一つは零星すら無い次元。そんな感じでもう全然違う次元が無数に世界には在る。」
青年は溜息を付いた。如何やら可也言葉を選んでいる様だ。
「其でだ。今俺達が居るのは・・・、」
「其の次元の何処か・・・か?」
「話の腰を折るなよ。俺達が居るのは、此の丸の外。何も無い空間さ。」
「え?其処なのか?」
空中に描かれた地図を見る。まぁ丸しか描かれていないのだが、如何せん、信じ難い。
「然うだなぁ、例えるなら水だな、水。グラスに入った水を考えてくれ。」
彼は然う言い乍ら新たにグラスと水を描いた。そしてグラスの中に又丸を描いて行く。
「グラスは世界其の物だ。そして次元が泡だ。出来たり、消えたりする。そんで水が此処、通称次元の迫間・・・と、言われている。」
青年は最初描いた丸とグラス内の泡を矢印で結んだ。だが二、三個で良い物を全ての丸に矢印を付けて行くので何かもう水って言うより炭酸飲料の様を示していた。・・・見難い。
「次元の・・・迫間。」
迫間の割には結構広大な感じの所なのだが。ちらっと窓の外を見たのだが、放った波紋が返って来ない。一体何の位の広さなのだろうか。
「で、御前の知識とかは、此の何処かの次元の物だろうって先俺言っただろ。つまりはだ。此処に棲む者は粗皆、何処かの次元から来た者なのさ。此処に初めから棲んでいる奴も居るには居るが、今は其は割愛しよう。そして丗の理、丗の神の啓示、此は全ての次元に適応されるクリエーターが創った約束事なんだけど、其に因ると次元から迫間に行くには、次元に居る者が何らかの傷を抱え、不幸の中死んだ事に因り神に成らないと、迫間には行けないんだ。」
「・・・何か不幸の内に死なないと神に成れないと言うのは、何だ。変な話だな。記憶が、懐い出が後生を分ける訳か。でも如何して不幸丈なんだ?」
良く分からない。此は幸福だった者は又転生するとか言った話なのだろうか。抑幸か不幸かは誰が決めるのだろう。
「んー難しい所を突くなぁ。ま、其は追々、俺の知っている範囲で説明するよ。一応理があるからな。」
何はともあれ、不幸な者は神に成ると言う事だ。悪い宗教の様な文句になってしまったが、其が丗の理らしい。
「然うか。だから私と御前は同じ種族なのだな。全く異なる次元から来たが、全く血の繋がりは無いが、何処かの次元で不幸の中で死んだ事は同じだ、と言う事だな。」
今なら何故蝙蝠を知っているのかと聞いて来たり、認識や知識のズレを気にしていたのかが分かる。自分の常識と、彼の常識は違うんだ。確認しないと、ズレはどんどん大きくなってしまう。
「おぉ、呑み込みが実に早いな。優等生だな、君は。」
「そ、其程でも・・・。」
・・・褒められるのは何か慣れない。
「流石俺の教え子。良い教育だ。本当に。」
自分褒めかよ・・・。先の照れを返せ。
「ん・・・待ってくれ。じゃあ如何して他の次元の者同士なのに言葉が通じるんだ?」
次元毎に常識や文化が異なるのなら、言葉も違って然る可しだ。隣国って丈で違う物なのだから、下手したらコミュニケーションの取り方すら違って来るのかも知れない。テレパシーとか、絵とか、アイコンタクトとか・・・。
「良い所に目が行ったな。其処は神様の専売特許。神の能力の一つとして、知らず知らずの内に向こうの言葉として、言った傍からコンバート、変換されて行くのさ。神は皆の御願を聞かなきゃいけないからな。何て・・・な。」
何度か頷く。何とも都合の良い能力だ。・・・でも話すのは良いが、そろそろ此の空中黒板、消してくれないだろうか。波紋で見えるとしても相手の顔が矢印で前から全く見えないのは気になるのだが。
「とまぁ話を戻すとだ。一応確認するが・・・御前も知っていると良いのだが、神とはジーザスやゼウスとかではない。其方の神は何処かの次元に居る神だ。其奴等も此処には来られるだろうが、俺の言っている神とは少し違う。神は何処かの次元で不幸があって死んだら成る事が出来るんだ。だからと言って俺達は死者ではない。天国とか地獄とかは其々の次元に在るのであって、此処ではない。・・・此処迄良いか?」
つまりは死んで後生が神様と言うより、前居た次元から迫間にちょっとスペックが上がった状態で転送された・・・みたいな感じなのだろうか。生まれ変わったと言うより・・・進化したみたいな。
「噫、ジーザスもゼウスも、天国も地獄も、私は知っている。」
「へぇ、何だ俺と御前の居た次元。案外近いのかも知れないな。此は中々珍しい事だぜ。同じ次元の者でも時代とか生まれとかで常識が変わるからな。うん、良い幸先だ。じゃあ次は・・・何を知りたいんだ?」
青年が徒に指を振った。如何やら質問タイムらしい。
「然うだな・・・じゃあ神について詳しく教えてくれ。未だ良く分かってないからな。」
「そっか、じゃあ神には主に二つの能力がある。一つは次元を行き来出来る事。時間と言う概念も無いから好きな次元に好きなタイミングで行く事が出来る。そしてもう一つが干渉力だ。此の干渉力ってのも二つあってな。一つは先ず、世界全てはクリエーターの創造に因り、未来が全て決まっている。全てだ。何から何迄。・・・あ、先言い忘れたけどクリエーターってのは此の世界全ての創造主な。神とは又別の存在らしいぜ。姿とかも知らないんだけど、何か隠居したとかなんとか・・・。だから其々の次元で語られているクリエーターとは少し違ったりする訳だな。其の次元の創造主其の物を創造した存在だからな。おっと、話が逸れたか。」
一つ咳払い。話を修正する為、青年は暫し逡巡した。
「・・・で、神は其のクリエーターの創った未来をある程度変えられるんだ。其の変える事も実は決まっていた運命だったりするのだが、其は扨措き、其々の次元に行く事で直接的に未来を変えたり出来る。其が一つ目の干渉力だ。もう一つは最初に言ったイメージだ。想像力、否、創造力とも言える。斯うだったらなーとか思えば、本当に然うなる訳だ。だが此は可也の制約を受ける。と言うのは斯うだったらなーって思う内容が、絶対然うだと、然うであって当たり前だと信じていないといけない、と言う事だ。どうせ違うけど・・・って思っていたら然うはならない。例えば自分が勁いと信じて疑わなければ、其奴は勁くなる。鳥と思えば鳥に成るし、金が有ると思えば金が出て来る。此は気付いていないと思うが、御前も知らず知らずの内に使ってるんだぜ?」
長い。迚も長い講義だ。良く一息で話せる物だ。何かマニュアルを聞いている様。早く理解しないと、どんどん置いてきぼりを喰らってしまう。
「ん・・・此の波紋って言うか目が見える様になった事か?」
「其方は何方かって言うと魔術だけど、例えば人が神に成る時、其奴は人の形である魄を捨て、精神丈の魂として神に成る。つまり、人ならざる者に成る訳だ。すると其奴の姿は変貌する。正に化物、魔物染みた姿に。其が神の真の姿だ。でも其奴はまさかそんな姿に成るとは終ぞ思っていない。死んだら神に成るとか知ってる奴は次元に然うは居ないからな。だから其の思い込み、人の姿の儘と言う思い込みが干渉力と成って働き、其奴は人の姿をした神に成る。然も然う年を取らない。行き成り老人に成るとか考えられないだろ?だから神とかが死に物狂いになれば、人の姿を捨てて化物になるが、一度成るともう元の姿には戻れない。」
長い。迚も長い講義だ。良く一息で・・・ん、長過ぎて思考がループしている気が・・・。
「・・・もう人としての姿を想像出来なくなるからか?」
「其の通り!」
青年は手を叩き、破顔した。
「いやー良く分かったな。本当は知ってるんじゃないかと疑いたくなるが、然う。もう人の姿を忘れるのさ。他に狗や猫とかの神も居るが、其奴等も、其の姿を忘れてしまう。何故なら化物の姿は神本来の姿。一番しっくり来る姿だからな。だから次元に居た時の自分を前世、神に成ってからは今世って言ったりもするんだ。」
「化物・・・話している所悪いが、余り言わないでくれないか。・・・嫌なんだ、其の言葉。」
自分の姿を見る。もう見る迄もなく感じてしまう。此は何処かの次元に居た時の姿なのだろうか。其とも神としての姿なのだろうか。
青年が僅かに首を傾ける。自分は俯き、左手の歪な所を同じく歪な右手で強く掴んだ。
「じゃあ私は如何なんだ。人の姿なのか、其とも・・・、」
「だから先言っただろ。御前も知らず知らずの内に使ってるって。だって化け・・・否、神の姿は、もうそりゃ全然違うもんだ。御前は別にあんな奴等じゃないさ。」
青年は椅子を動かし、空中黒板を通り抜け、近く迄移動した。
青年の顔が現になる。迚も優しそうな瞳だった。
「・・・でも・・・矢張り此の手足は・・・其に私の知識が私の居た次元の物なら、自分が普通の人とは違う姿だと認識している此の化物の様な姿は矛盾しているじゃないか。私の知っている人は・・・こんな醜い姿じゃない。」
「然うか?其の姿、結構綺麗だと俺は思ってたんだけどな。」
「え?」
俯き掛けていた顔を上げた。御世辞の様には聞こえなかったからだ。
「だって其の髪は紅鏡には金に、氷鏡には銀に映えるし、顔も人形さんみたいだ。翼とかも神秘的で、手足だって何か何処かの名刀とか彫像みたいで綺麗ってよりは美しい・・・なのかな。だから、そんな事は気にしなくて良いと俺は思うぜ。嫌がる事なんて・・・一つも無い。」
「え・・・あの・・・あ、有難う。」
そんな褒めの嵐が来るとは思わなかった。嬉しいと言うより此は・・・恥ずかしい。
「うぇ⁉ちょっ、まぁ其は置いといてだな・・・。」
青年は態と上の方を見、椅子をガタガタ言わせた。
「然うか、何か少し自信が付いたな。有難な、本当に。」
「置いとけぇ!其の話はもう終いだぁ‼」
青年が声を荒げた。心做し顔が絳くなっている。青年も其の事に気付いたのか、ガタガタと又椅子を動かし、空中黒板の後ろに行ってしまった。
自分は嬉しそうに其を見た。何だか痞が少し取れた感じだった。
「・・・そんなに嬉しかったのかよ。」
「噫。」
即答だった。
青年は頭を掻き、咳払いをした。如何やら落着きを取り戻したらしい。
「えーっと、話を戻すぞ。確か干渉力についての話だったよな。然うだな・・・此についてはもう一つ注意があるな。先思い込みが激しくなれば実現出来ると言ったが、此、次元では少し使い難くなるんだ。次元には次元のルール、干渉がある。魔術は使っちゃ駄目とか、旻は飛べないとか。だから其のルールに逆らったりするには、並大抵の干渉力じゃ無理だ。其処はまぁ頑張るしかない。・・・と、じゃあ次は・・・、」
「はい、次元の迫間は具体的にどんな所なんだ。」
一応挙手。はい、なんて普段は、記憶が無いので何とも言えないけれども、恐らく屹度使わないが、まぁ御愛敬と言う事で。
「然うだな。じゃあ黒板リセットリセット。」
青年が手を払うと、ごちゃごちゃしていた皓が全て掻き消えて行った。そして次に青年は円状に沿って又丸を、でも今度はランダムではなく規則正しく描いて行った。今度は綺麗な、すっきりとした図になり然うだ。
「十、十一、十二・・・と、此処の説明の前に少し魔術について説明するな。・・・多分知っているとは思うけど、ま、復習程度に聞いてくれ。魔術は基本的に全次元に共通する。名前とかは所に因って変わるけれども、世界を構成する元素としては大体同じだ。飽く迄基本的に、だけどな。そして此を十二法と言う訳だが、此は其の名の通り、十二個の属性が在る。具体的には光、闇、聖、雷、浪、涼、灯、翠、嵒、谺、飛、宙。其々の違いを説明すると、光は其の儘、紅鏡とかの陽光、闇は氷鏡とかの光陰、闇だ。聖は光と似てるが、光が攻撃に特化しているのに対し、聖は自己再生。回復型だ。清めの力がある。雷は文字通り電気。浪は水。滄江とか滄溟。涼は浪の親戚で、氷、氷柱だ。灯はファイヤー、情熱の絳。人類の道具、炬さ。翠は植物。碧樹や莽蒼、大きく言えば蕭森等の生命力。嵒は大地、地面。谺は攻撃的な鎌鼬とかの凱風だ。飛も似た様な物だが、此方は攻撃は出来ない。出来て精々自分を浮かせられる位だ。翼とかは不必要って所。最弱の属性とも言われている。最後に宙。此は・・・結構稀有な属性だな。自分の周りに一定の空間を創るんだけど、何が起こるのかはランダムだ。其奴の運次第だとも言える。周りに何らかの干渉を働き掛けるらしい。」
青年は先程書いた丸に光、闇・・・と書き込んで行った。
一息に言えてしまう辺り、何だかマニュアルを聞いている感が否めない。若しかして彼は先生か何かをしているのだろうか。其にしては少し説明が下手な気がする・・・分かり難いって言うか、まぁ宇宙人に自分の国を説明する様な物なのだから此処いらが限界なのかも知れない。
「で、話を戻すが、抑次元に棲む者は、大抵一つの属性の魔力を持っている。灯なら灯の魔力。灯以外に其の魔力は使えない。でも神は只の魔力、何の属性もOKだ。でもま、其処は先の干渉力宜しく、如何も自分は何かの属性だと言う認識が抜け切れないから少なからず、其の属性に近い魔力になる。だからま、其の属性を使うのが無難だな。其処でだ。次元の迫間についてだが、此処は地図も何も無い、接する次元の影響を受けて行くからどんどん形が変わる。」
「例えば?」
「地面の無い無限落下。」
「・・・例えば?」
「岩漿噴き出す灼熱地獄。」
「・・・た、例えば?」
「空気の無い真空状態。」
「・・・・・。」
外怖い。何だ、外の世界ってそんなバイオレンスなのか、サバイバルなのか。一生引き籠りになってしまいそうだ。
「えーと、其でだな、」
え、話し続けるのか。本当に外ってそんなのなのか。
「然うだ。でも其処も干渉力で、自分の家は此処って感じで決めてしまえば、其の家の場所とか内装は変わらない。其を利用して大半の神様は自分の属性に似た者が集った街みたいなのを彼方此方に形成している。」
でも地形は変えられない訳だ。外に行くのは常に命懸けなのだろうか。神なんだから死なないって思って置けば大丈夫とか、そんな冗談とも思えない冗談で生きて行くしかないのだろうか。
「そして其の街の中で・・・否国とも言う可き二大勢力、闇と光がある。此の二つは独特な属性だからな。何か其の力が何かを呼び込むのか、其の属性の奴自体はそんなに次元には多くない。寧ろ少数派なのに、殆どが神になってしまうが為に、迫間では光と闇の神が一杯いる。王様とかも居て、大きな国として機能している。因みに此の家がある所は何処の領地でもない所だ。・・・こんな所かな、此処の説明は。」
終に此の長い講義が終わりを迎えるらしい。御清聴有難う御座いました。
「然うか。成程、ある程度は分かった。」
何度か頷く。詰め込み過ぎた気がするが、大まかには分かったので良しとする。
気付けば自分の尾の先がクルクルしていた。考え事をしていると無意識になってしまう様だ。何となく尾を揺らして誤魔化した。何だか単純な感じに思われるのは嫌だし、心做し恥ずかしい。
「・・・・・。」
気の所為か?青年の目が何となく自分の尾を追っている様な・・・。
「クルクル。」
誤魔化せてなかった。誤魔化せてなかったよ。
「ん、クルクマって彼か。彼の熱帯にある大きな観葉植物の・・・。」
「クルクル。」
「え、噫、鳥の鳴き真似か。えーっとクルックークルクル。」
「クルクル。」
「・・・・・。」
しつこいなぁ。黙ってくれても良いじゃないか。此方は少し恥ずかしいのだから。もうレパートリーも尽きたよ。鳥なんて無理があると思ったから渾身の物真似をしたのに四文字で押し潰すなんて、非神道過ぎる。
然う思っていると面白い事に自分の尾も反応してさっと、まるで手の様に、青年の首に添えられていた。此を払えば一撃である。結構頑丈そうなので、刀か薙刀を添えられたのも同じだろう。・・・まぁ別にやる気はないのだが。此でも色々世話になっているのだ。恩の一つ二つ位は感じている。
「・・・・・。」
青年の顔が引き攣る。無理矢理だが悪巫山戯を止める事が出来た様だ。・・・此の儘では埒が明かないので尾を此方に戻して・・・。
「クルクル。」
止められなかった。止められなかったよ。でも戻し掛けていた尾は止まった。
「天誅!」
尾を振り降ろした。叩く程度の打撃なので勘弁して貰おう。
だが青年は当たる寸前で椅子を半回転させ、其の流れに沿う様に逆立ちし、椅子の背に掴まる事で椅子の足の一つに重心を傾けた。自身は疎か椅子迄も自分の攻撃範囲外へ移動させたのだ。
御蔭で自分の尾は空振り。仕方ないので尾は適当に塒を巻かせた。
何だ此奴。思っていたより腕が立つのだろうか。
今更だが尾で攻撃した分、より単純そうに見えたのではないだろうか。何とも皮肉な事である。
「危ないなー全く、慣れない玩具は使わないのが得策だぜ?只でさえ此の部屋狭いんだから。」
青年は又椅子を戻し、先程と同じ様に座った。
「にしても御前、理解力あるなー。やっぱ其は彼か、背中の機械とかの影響か?」
「機械?」
波紋宜しく背中を確認してみる。確かに何か六角形の物が翼と翼の間に填っていた。・・・全く違和感が無かった。其より何でそんな自分も知らない事を彼は知っているのだろうか。
然う言えば目醒めたのが此処なのだから一体如何言った経緯で此処に自分が居るのかも分からない。まさかあられもない姿で倒れていたのを発見したのだろうか・・・無い無い。流石に其は無い筈だ・・・多分。
「ん、何だ。知らなかったのか?六角形の黔曜石みたいなのが填っていた変わった機械だったけど・・・まぁ触らないのが無難だろ。生命維持装置とかだったら洒落にならないし。」
背中に伸ばし掛けていた手を引っ込める。其にしても、良く詳しい所迄知っている。何か引っ掛かるのだが・・・まぁ他に知りたい事もあるし、今は棚上げだ。世の中には知らなくても良い事もある。
「・・・見た所御前、闇属性っぽいな。俺は光なんだけど。うーん、然うだな、序でだ。俺と一緒に闇の所、オンルイオ国、あ、闇の国の名前な。正式にはジュヴァディアルツ=オンルイオ国だけど、行ってみるか?何か懐い出すかも知れないぜ。御前、俺の家・・・あ、此処の事な。其の家の前で倒れてたから、どっから来たのか分からないんだよ。取り敢えず、無難な闇の国から行くのが良いと思うんだけど・・・如何だ?」
「如何だも何も、何故私が前から神だって前提で話しているんだ。何にも憶えていないのだ。神になり立ての可能性の方が高いと思うんだが。其とも神様は何処かの神殿とかで儀式をすれば生まれて来るのか?」
首を傾けて問うと、青年はばつが悪そうに頭を掻いた。良い答えが浮かばないらしい。仕方ない、先を促そう。何時迄も此処で喋くっている時間はない。
「然う言えば序でと言ったな。何か用事があるのなら其の闇の国か?其処に行って来ても良いぞ。私は私で如何にかする。適当にふらつけば何処かには行けるだろう。」
差し当たっては衣食住だろうか。服は此の儘で良いし・・・恐らく自分の服だし。住も適当に次元とかに行って旅でもすれば良いだろう。目的は無くても当分は何かを懐い出せないか、試してみるのは良いと思う。然う言えば干渉力があったな。上手く使えば何も食べなくてもやって行けるだろう。・・・何だ、案外やって行けるのではないのだろうか。
「えっとまぁ・・・何で神様前提で話してるんだって言われても御前が俺の家の前で倒れてた・・・ってもなぁ、理由にならないか。んー、まぁ何となくだ。何となく。でも適当にって・・・御前、使命とかって無いのかよ。」
しどろもどろ。何に慌ててか青年は然う言うと目を眇めた。
「使命?」
何だ其は。私が何処ぞの主を護る騎士にでも見えたのだろうか。主の命こそ我が使命、みたいな。何も憶えてないのだから騎士も何もあった物ではないのだが。
「え、知らない?使命。神様は須く有る物なんだけど。クリエーターからの思し召し。丗を正す為にも、何か斯うしなきゃなー、あぁしなきゃなーって思い、何か無いか?其をしなきゃいけない気に駆られないか?」
「・・・無いな。」
特にしたい事もない。
「ふーん?未だ目醒めた許りだからはっきりしないとか・・・かな。じゃ前世が何だったのかも?」
「分からないな。」
「ふーん、ふん。まぁ俺も分からないんだけど。大抵の奴は憶えているらしいぜ。使命とセットで。でもなー、闇の所へ用事っても大した事ないし・・・御前を放っとくってのもなぁ。」
「?何でだ。拾った物は最後迄面倒見ろって奴か?私は別にそんなの気にしないぞ。」
拾ってくれた事には感謝するが、迷惑なら拾ってくれない方が良い。気兼ねしなくて済む。
「然う言う訳に行くかよ。御前が良くても俺は嫌だ。・・・然うだなー、部屋も余ってるし、如何だ。当分、せめて何か懐い出す迄此処に居るか?俺も別にそんなの気にしないぜ。」
揚げ足を取ったかの様に彼は然う言った。見ず知らずの奴、家に置いて置くだろうか、普通。後で金を請求とか・・・失礼過ぎたな、此は。
「否、迷惑掛けるのもなんだ。色々教えて貰ったし、一柱でも大丈夫だろう。」
「女の子一柱ってのは・・・如何なんだよ。」
「気にしなくて良い。私は別に一柱でも・・・、」
―嫌だ、もう嫌だ。独りで居るのは疲れた。怖い、消される。消えるのは・・・嫌だ。―
「・・・・・。」
「ん?如何した?」
何だ・・・今の声は。自分のか?何か少し懐い出した様な・・・。前世とかだろうか、断定的過ぎるが。でも其の切なさは、悲しさは、寂しさは、辛さは、苦しさは・・・分かる。憶えている。震えてしまう程、自分は其を・・・憶えている。
「・・・迷惑にならないか?」
「は?」
良く意味が分からなかった様で青年は聞き返す。此処はちゃんと自分の言葉で言わないと。例え常識とかルールとか違っても、思いは伝えないと。
左手を押さえる。迚も冷たい手。少し寒くて・・・怖い。
「食べ物とかは余り要らないし、部屋も成る可く汚さない。だからその・・・迷惑でないなら・・・置いてくれたら嬉しいが・・・。」
何処かほっとした様に彼は破顔した。此方迄安心してしまう様な笑みだった。
「何だよ、最初から然う言えよ。OK、OK。大歓迎さ。えーっと・・・自己紹介・・・してなかったな。悪い悪い、俺ばっか喋っちゃって、御前呼ばわりして名前も聞いてなかったな。何て言うんだ?俺はガルダ、ガルダリューだ。宜しく。」
青年、ガルダは然う言い、右手を差し出した。
「私は・・・憶えていない。」
ガタンッ
ガルダは器用に椅子を盛大に倒し、転がった。狭い部屋で良く出来る。
「憶えてないって、え、記憶喪失って憶えてるもんじゃないのか?名前とか、最悪其の程度は。」
「憶えていないな。然う言えば御前の名前は何なんだ?そして此処は何処だ。」
「其は記憶喪失じゃない!物忘れが激しいって言うんだ!」
転がっていたガルダが起き上った。元気なツッコミだ。
「冗談だ。」
正座を崩す。もう別にちゃんとしなくても良いだろう。其に正座は為難い。足が足だから爪が邪魔なのだ。代わりに胡坐を掻くと、其なりに安定した。
「何だ冗談かよ。変な所で言うなよなぁ。じゃあ改めて、名前は?」
「だから知らない。」
「其処は冗談じゃなかったのかよ!」
活きが良い迄に元気だな。見ていて楽しい、飽きない。
「知らない物は知らない。仕方ないだろう。諦めろ。」
「何故に上から・・・。」
ガルダは椅子を直し、今度は正しく座った。そして気になって来たのか、旻中黒板元い属性早見表を消し去った。やっと消したか、可也其は邪魔になっていた。自分は消し方を知らないから彼が何時消してくれるか気になっていたのだ。
「弱ったなぁ。・・・何か斯う、気に入ったのないのか?」
「フレディ、レイラ、美雪、フレア、月下、レイラ、戌亥・・・。」
「お、お、おぉ?」
「全部嫌だな。」
「嫌なのかよ!今挙げた名前の奴に謝って来い!特にレイラさんに謝れ!」
ビシッと指を指すと同時に又盛大に転ぶガルダ。神を指差した罰だ。先の椅子芸、出来る奴だと思ったのだが気の所為だった様だ。頭をあんなに打ち捲くって大丈夫だろうか。まぁでも光属性だし・・・傷の治りは早いだろうが、頭の螺子迄は治らないだろう。
「よーし分かった!俺が名付け親だ!御前の命名権は俺の手にある!」
「好きにしてくれ。」
生憎名前には余り興味がない。さて、一体どんな名前を付けてくれるのか・・・。
「みぃちゃん、はぁちゃん・・・。」
「私がミーハーだと言いたいのか?」
「否々、冗談、冗談。然うだなぁ・・・アンチドート、嘯風弄月、ロゼット、畢んぬ、虎口の難、鰻・・・。」
「・・・一体何の羅列なんだ。」
共通点が一つもない。
「何って、御前からの連想ゲーム。」
「御前は私を何だと思ってるんだ!」
何故衣料品や服や魚を自分から連想する⁉何か碌な名前に成りそうにないのだが・・・。
「うーん・・・。」
ガルダは腕組みし、じっと自分を見た。全く逸らさず、結構真剣に考えている様だ。
・・・そんなに見られると、何か恥ずかしい。
「・・・然うだ。セレ、セレ・ハクリューだ。何か今ピーンとな。」
「セレ・ハクリュー・・・ふむ。」
何か思ったより普通だった。然も何か腑に落ちるのだから不思議だ。
「別に良いぞ、其で。何か気に入った。」
「本当か?ま、そんな事で、宜しく。」
彼が右手を差し出した。少し躊躇して自分も手を出す。彼のより、一回りは大きいと思われる、歪な手。握手の形にするのも一苦労だった。
中々、彼の手に収まる様な握手が出来ない。握れば自分の手に爪が刺さるし、かと言って握らないと彼に刃を向ける事になる。
自分が手を握ったり開いたりしているのを見兼ねてか、ガルダは自分の手首を掴んだ。突然の行動に自分は後退りしてしまう。・・・握った手が少し痛かった。
「ほら、此なら出来るだろ?」
ガルダは立ち上がり、掴んだ右手を軽く持ち上げた。手首が熱を帯びて行くのが分かった。
「な?」
噫、笑顔が眩しい。何故か安心する様な・・・懐かしい感じがする。でも其と同時に酷い罪悪感を覚えた。
痛イ・・・辛イ・・・恐イ・・・。
見てはいけない、其の笑顔を自分は見てはいけない。
ずっとずっと昔に魂に刻み付けた声がする。噫、憶えている事、一つ丈有るじゃないか。忘れてはいけない、彼の言葉を。
―私は・・・世界に嫌われている。―
気を抜けば消されてしまう位に。忘れ去られてしまう位に。存在が無かった事にされる位に。拒絶し、否定し、認めない。
だから・・・だから自分は・・・。
「セ、セレ、如何した?顔色が・・・悪いぞ。体調未だ優れないのか?」
「そんな事は・・・無い。考え事をしていた丈だ。」
はっとして顔を上げた。彼の言葉も全て奥へ奥へ、深い記憶の滄溟の底へ追い遣って。
自分は胡坐を解き、ベッドの端迄移動した。そして彼の手首を掴む。
堅くて、鋭くて、冷たい自分の手。でもガルダは眉根一つ動かさなかった。其が迚も嬉しくて・・・。
「此方こそ、宜しく。」
彼に笑顔で応える事が出来た。
「良し!じゃ先ずは俺の御手伝いをして貰おうか!」
「・・・・・。」
あれ・・・嵌められた?
笑顔が凍っているのが自分でも分かる。
おかしいな、此処はにこやかに終わる所ではないのか?先金を請求するのは失礼だと自分は思ったが、そんなに無礼ではなかったのかも知れない。
「・・・まぁ置いてくれるのだから仕方ないか。何なのだ、其の手伝いは。」
「世界を救ってくれないか?」
え・・・何その、御遣い行ってくれないか的なノリは。何処のRPGだ。自分は勇者にでもなったのか?外が怖い引き籠りな私は勇者は疎か、御遣いも出来そうもないのだが。出来て精々自宅警備員だ。自宅警備員の神様・・・守り神と言えば聞こえは良いが果たして・・・。
「守り神に出来ると思っているのか?」
「ま、守り神ぃ⁉」
何か引っ掛かったのかガルダは素頓狂な声を上げ、椅子をガタガタ言わせた。
其以上動いたら・・・思うのも束の間、案の定彼の椅子は大きく後ろへ仰け反った。
だが倒れるか如何かと言う所でガルダは躯を前方に移し、事無きを得た。
「はー吃驚したー。」
「何だ。私が守り神だと不満か?」
ジョークのつもりが変な方に流れている。何よりあんなに驚かれては気分も悪くなる。
「あー御免御免。はーん、でも守り神・・・ねぇ、ふーん・・・。でも何で然う否定的なんだよ。世界を守るから守り神だろ?」
「・・・・・。」
如何やら話が通じない様だ。何か規模が違うって言うか、スケールの問題か。
「えっと・・・守り神って言っても彼だぞ。自宅警備員の方の・・・。」
「お、良いじゃん良いじゃん。小さな所も余す事なく救うって訳か。」
小さな事からコツコツと。
其で世界を救えたら地獄の門番や世界樹の守護者や宝石のガーディアンにも引けを取らないだろう。だったら先守り神って言った時に彼の見せた反応は此のスケールの違いだったのかも知れない。守り神だから世界を救うと言う認識なら、先迄自分が神だと言う事すら知らなかった癖に何凄い神様気取りしてんの?みたいな感じに先の私は見えたのだろう。其にしても大袈裟な。彼は道祖神や守宮を知らないのだろうか。
良し、此の何か自分が世界を救わないといけなくなる危ない空気を変えるとしよう。いいえを押してもエンドレスで行け行け言われる強制イベントではないだろう。恍ける事でも道を開く事が出来る筈だ。自宅警備員の座に就く為にも頑張らねば。
「何だ、つまりは留守番か。然う言えば闇の国・・・だったか。用事があるみたいな事を言ってたな。全く、其なら然うと言ってくれれば良いのに。こんな回りくどい言い方をしなくても別に留守位守れる。そんな大袈裟な事、言わなくても良いぞ。此処はもう私の家でもあるのだからな。」
「いや、世界を救えよ。何ニート気取りしてんだ。」
え・・・何、其。世界救わなかったらニートなのか?抑世界を救うのは仕事なのか?
「でもな。私も先目醒めた許りだし、行き成りそんな事言われてもだな・・・。」
逃げるに越した事はない。何か危ない気がするし、自分は危ない橋は渡らない質だ。臆病と言われても結構。此の世は生きるが勝ちなのだ。
「大丈夫だって。俺だって行ってやるし、又一から説明してやるから。ってか拒否権は御前には無いぜ。拾った恩に報いる様に。」
ハハッと快活に笑うガルダ。
・・・確かに自分は何も言えない。言ったら追い出され兼ねないし、本当に追い出されたら洒落にならない。
「・・・分かった。世界を救おう。宿無しは嫌だからな。」
宿代としては御釣りが出る仕事な訳だが・・・ま、良いだろう。
「はぁ、やっと首を縦に振ったか。見掛け通り頑固だなぁ御前。」
「・・・・・。」
結構安請合いだと思うけど・・・。然も見掛け通りとは・・・。何か理不尽だなぁ。出身次元は近いかも知れないが、スケールの差が激し過ぎるぞ。
「良し、話が進んだ所で説明するぞ!説明、今日の講義は世界の救い方についてだ!」
「オー。」
パチパチ
気の無い拍手で盛り上げた。
世界中の人に聞かせたい講義だ・・・一寸見方を変えると何処かの宗教みたいだがな。
只二度目となると此の講義も少し要領が分かって来た。新しい事が分かるのは矢張り楽しい事だし、何だかんだで自分は此の講義が少し気に入って来ているのかも知れない。
「パタパタ。」
突然ガルダがある一点を見て然う良く分からない言葉を呟く。
な、何だ一体。何処を見ていると言うんだ。
ちらと視線、波紋を自分の横に送る。
何と言う事だろう、其処には漆黔に染まった禍々しく不気味な尾が狗か何かの様にパタパタとベッドを叩いているではないか。何となく可愛い様な仕草をしている此の尾の持ち主は誰であろう、自分である。
又やってしまった。こんな姿見られたくなかったのに、気を抜き過ぎていた様だ。取り敢えず此処は・・・如何する?
「ん、鱩って彼か。彼の口が大きくて鱗の無い魚の・・・。」
考えた末に自分がした事は誤魔化す事だった。反省出来ていない、又同じ過ちを繰り返すと言うのか。
「パタパタ。」
く、如何すれば良い。此処迄来たら遣り切るしかないじゃないか。
「え、噫、螇蚸な、飛蝗の事だったな。」
「パタパタ。」
「・・・・・。」
此奴、又天誅を喰らいたい様だな。もう一度、今度こそ確実に当ててやる。
セレの尾が緩りと持ち上がった所で、ガルダが口を開いた。
「さてと、救い方って言うからには世界は今、危機に瀕している訳だ。・・・って言いたい所だが、はっきりと危機に瀕しているとは言えないな。」
「そ・・・然うなのか。」
突然の方向変換に刹那付いて行けなかった。殺気を読まれたらしい。悔しい、此方は完璧に戦闘態勢だったのに、軽くあしらわれた気がして非常に遺憾だ。
其にしても、講義の始まりが何か拍子抜けだ。折角先拍手したのに。楽しみだとか思ってたのに。まぁ良い事かも知れないが・・・。多分其って余り危険な冒険やら旅にはならないって事だろう。・・・うん、良い事だ。目が醒めて行き成り世界が滅ぶとか、嫌過ぎる。
「何て言うか、ほら、自然とかでも何かの種が絶滅するのは其処への適応力とかを考えれば自然の摂理で詮無い事だ。でも其処へ人とか宇宙人がエゴでか何だかで手を加えて其の種を保護すると、逆に自然がめちゃくちゃになる事がある。・・・今は丁度此に似てて、手を加える可きか、一寸悩んじゃうんだよな。」
「・・・じゃあ其の危機っぽいのは何なんだ?大気汚染とか水質汚濁とかか?」
何かボランティアっぽい、庶民っ気の抜けない神様だ事で。
「掃除の神じゃないぞ、俺達は。何だよ其、近所の評判の良さそうな穏やかな神になってるじゃん。・・・まぁ場合に因っちゃあそんな事もする・・・かも知れない。」
・・・今一危機が何なのか分からない。何だろう、又スケールが違うのか?
「ま、事が起こったのは少し前の事さ。・・・若しかしたら此を話すと何か懐い出すかも知れないな。・・・懐い出さない方が吉だろうけど。ある奴・・・多分神様の一柱なんだろうけど、其奴が次元を打っ毀した。」
「毀した・・・次元をか?」
其は一体・・・如何言う意味なのだろうか。嫌な予感がする。警鐘が鳴り響いて頭痛がする程に。・・・此は嫌な話だ、絶対に。
「其奴はたった一柱で、色んな次元に赴き、気の向く儘に、冷酷に、無慈悲に、無感情に、殺戮をした。天変地異を起こし、全てを打ち滅ぼした。光も闇も、善も悪も、生も死も。でも其が巻き起こしたのは虚無ではなく、混沌だった。後に此の事件は『黔日夢の次元』と、言われる様なった。」
殺戮・・・天変地異・・・。其は一体何程の力で、どんな惨事だったのだろうか。
自然、ベッドのシーツを掴む手に力が入った。・・・少し裂けたかも知れない。
尾も知らぬ間に自分に巻き付けていた。縮こまったと言う可きか。迚も、迚も恐い話だった。
「其に因って世界のバランスが崩れた。実際に次元が幾つか消えた。此が切っ掛けで迚も酷い次元になった所も出た。戦争や飢饉が酷くなってな。此処も被害が大きかった。迫間の変化に付いて行けず、多くの神も死んだ。でも逆に八百万宜しく不幸に引き寄せられ神が凄く増えたり・・・した。」
「・・・っ!」
ガルダが懐い出すかも知れないと言ったのは、此の事だったのか。神は不幸の中で死ぬと成る事が出来ると言う。自分が若し神に成り立てなら、時期的に其の事件に巻き込まれている可能性が高い。・・・じゃあ自分は懐い出さない方が良いのかも知れない。忘れている方が・・・幸せなのかも知れない。此の警鐘も、悪感も屹度・・・。
然うだ、彼の断片的に懐い出した言葉も、其処に起因しているのかも知れないじゃないか。無理に懐い出す可きじゃない。危ない橋は渡らない・・・だ。
・・・本当ニ?御前ハ然ウ本心カラ思ッテルノカ?其ハ単ニコジ付ケデ、言イ訳ダロ?
・・・煩い、そんな事、嫌でも分かってるんだ。
「・・・で、此の儘の状態を放って置くと、次元はどんどん崩れ、壊れ、其に引き摺られて狭間も無くなってしまう。つまりは世界の崩壊・・・に、なるのかも知れない。」
片目を眇めてガルダは続けた。煮え切らない様な、納得の行かない話をしている様に。
「逆に此が良いスパイスになって、完璧な次元が新たに生まれ、完全秩序な世界になるのかも知れない。先人達は尊い犠牲か、破滅の前兆かって事さ。何方に転ぶかは分からない。・・・此はある奴の受け売りだけどな。でも俺は、次元の歪みとも言える今回の傷跡を消す為に立ち上がろうって訳さ。御理解頂けたかな?」
「噫・・・理解は出来た。じゃあ彼なんだな。其の事件を起こした神様だとか何かは斃したりして死んだのか?若し未だ生きていたらもう世界は滅茶苦茶になっているだろうしな。」
と言うより、実の所怖い。だって其奴は自分を殺した殺人鬼かも知れないじゃないか。
「んー否、其奴は今、行方不明なんだ。でもま、闇の所から今の所問題無しって伝達が来てるし、若し仮に生きていたとしても、迚も俺達の敵う相手じゃないぜ。眼力丈で死んでしまうだろうな。否、言霊丈でも駄目だろうな。出会わない事を祈るしかない。」
先程から闇の所を結構推しているが、彼は光であり乍ら闇の国だかに良く行っているのだろうか。其処の所は未だ良く分からないから触れないけれど。
「だ・・・大丈夫なのか?其で。」
つまりはとんでもない殺人鬼が今も何処かに居るって事だろう?外も恐いけど、此処に居ても恐いのに変わりはないのかも知れない。
「仕方ない。成る様に成るさ。」
相変わらず軽いなぁ・・・。神様だから肝が据わっているのだろうか。
「でも・・・然うか、然うだな。如何仕様もないしな。納得・・・するしかないか。」
何か嫌だなぁ・・・其のもやっとした感じ。
「・・・で、具体的に何をするんだ?私にも出来る事なのか?」
「出来る出来る。余裕だね。御茶の子さいさい、赤子の手を捩じる様な物だ。」
「何と・・・。」
世界って広いと思っていたんだけれど、案外狭いのだろうか。否でも先の次元の説明を聞く辺り無量大数軽くある気がしたんだけど・・・。
「で、遣り方なんだけど、俺としては取り敢えず此処の崩壊って言うか、狂いは止めたいんだ。一応故郷だし・・・。其処で、此処は其々の次元の影響を受けて出来てんだから、次元を一つ一つ正して行けば此処も安泰って訳。一石二鳥っぽいだろ?」
「ぽいけど・・・。」
其の次元一つ戻すのに何丈労力が要るんだろう・・・。町内芥拾い位なら出来るけれど・・・。
「そして次元の正し方なんだけど、次元には軸がある。其が良くなるか悪くなるかで次元が変わって行くんだ。つまり俺達は此の軸を戻して行けば良い訳。有る可き姿にな。ま、此もあるマッドサイエンティストの受け売りなんだけど。・・・な、此の言い方なら簡単然うだろ?」
「ん・・・まぁな。」
然りげなくマッドサイエンティストと言ったか?先の講義とかも其奴の受け売りだったのかも知れない。ガルダの知り合いか何かだろうか?
「言い換えると軸を正す為に戦争を止めたり、大陸を沈めたり、蕭森を焼き尽したり、滄溟を蒸発させたり、ビックバンを起こせば良い訳。有る可き姿にな。・・・な、此の言い方なら凄く難し然うだろ?」
「何故其を言う?」
凄く大変じゃん。神なら出来るってか?でも個神的に自分はそんな勁い感じがしないから凄い不安だ・・・。干渉力が大切なのかも知れない。然も先の例、殆ど自然破壊だし。何だよ有る可き姿って。何も残らないじゃん。其、世界滅ぶんじゃないのか?
「・・・で、軸を正すって、軸って見えるのか?柱みたいな物なのか?其とも棒みたいなものか?他に・・・針か縷とか、そんな感じか?」
「例えが太さの違いしか分からないんだけど。でもま、御前が然う言うんならそんなのも有ると俺は思うぜ。其こそ千差万別さ。人だったり碧樹だったり動物だったり魚だったりモニュメントだったりもする。其等を纏めて俺達は『次元の主導者』って呼んでる。要は其等を何か良い方へ導くんだ。護衛したりとかしてな。」
「成程・・・な。護衛か、其ならしっくり来るな。つまり其奴が非行に走るもんなら更生して、枯れそうなら水や肥料をやって、死にそうなら餌付けをして、水が汚かったらミネラルを投下して、苔むしたりしていたら綺麗に掃除してやれば良いのだな。」
「スゲー奉仕だな。ボランティアか。実に庶民的な神様だな。でもま、其で良いだろう。認識は其でOKだ。」
ガルダが両手で大きな丸を作ってくれた。何かやっと話に付いて行ける様になったので、一寸嬉しい。
「でも一番大変なのは其奴を見付ける事だろうな。まさか其奴一人丈が黄金に輝いているとかはないのだろう?」
「其、まるで其奴が神みたいだな。ないよ、多分そんな事は。若し居ても話し掛けたくねぇ・・・ま、其処は気にしなくても良いよ。言ったろ?神の力は干渉力だぜ?世界救うぞーって気持で次元に行けば、自然足は軸の方へ向かうし、見た瞬間、あ、此奴何かオーラ違うって気付くさ。其も問題ない。全て上手く、都合良く行くさ。」
本当便利で何でも有りな力だな。此が神の力か。何か思っていたのと違うな。・・・記憶喪失の自分が思うのもなんだけれど。
「あったな、そんな設定も。」
「設定言うな。」
「えっと、じゃあ付録?」
「そんな豪華な付録の付く雑誌なんか知らないよ。」
「然うだな。じゃあオプションだオプション。尾鰭か?只今此の機能を付けて神が何と五円で貴方の家に・・・。早速御賽銭へGOー。」
「パタパタ止めてから言えよ。」
言われて尾を見ると、確かにパタパタしていた。
御巫山戯モードの時はパタパタするのか・・・。軽い尾だなぁ、何か悲しくなって来た。
「おっ、撓垂れた。」
ガルダが興味津々と言った感じに尾を見ている。
分かり易過ぎるだろう。何此の意思伝達道具。ポーカーフェイスが出来ても此じゃ台無しだ。
「まぁ、内容は分かった。悪い事なら兎も角、善意での事なら喜んで手伝わせて貰おう。然う言えば其って他の神もやっているのか?世界を救うだなんて、二柱じゃ無理だろう?」
他の神も此処に棲んでいる訳だし、結構大規模に皆世界を救おうと頑張っているのかも知れない。
「二柱丈だと思うけど。」
「え・・・。」
しょぼい活動だなぁ。噫でも勇者とかって少人数で世界救っているなぁ・・・。然うか、こんな感じなのか。緊々と無力感が募って行く。此を抱えて勇者は旅に出るのか。凄いなぁ勇者って。
「でも自分が棲んでいる所が無くなるんだぞ。他の神は何をしているんだ?」
未だ記憶が無いから何とも言えないけれど、加えてビギナー神様の自分が言うのもなんだけれど、危機感が無さ過ぎる気がする。
「んー自分の使命を達成してるんじゃないかな?屹度世界を救う使命を持った神が何かしてくれるから大丈夫だろうって思ってるんじゃないか?」
た、他神任せだ・・・。そんな事するから責任問題とか出て来るんだよ。
「じゃあガルダの使命は世界を救う事なのか?何だか凄いな、小説とかの主人公みたいだな。」
「否、違うんだけど・・・。俺の使命は如何でも良いだろ、只彼だよ・・・他の神がしないのは使命もあるけど、だってほら、何か面倒じゃん。世界を救うとかさ、今迄一般神だった俺達に出来るかって話だ。だから皆何かが起こる迄当面はフリーなのさ。自己満足の世界だし。したい奴がすれば良いんだって思ってるんだよ、皆。」
忙しなく彼方此方を見てガルダは然う締め括る。・・・少し悲しそうにしている気がした。
「でも、無理だと思っていても、少なくともしようとしている所は、凄い所だと私は思うぞ。何もしないよりはずっと。」
「・・・別に俺は、したいとかじゃ・・・。」
小声で何かを言い掛けて口を噤む。励まそうと思ったのに、寧ろ辛い物を見る目だ。
・・・如何してそんな目をするんだろう。何かあったのだろうか。自分は其処に触れる可きではないのかも知れない。
「あ、えっと、でもうん、無理じゃないさ。大丈夫だ。たかが神、されど神だろ?勇者は一人でも頑張るんだ。神が二柱で頑張らない理由が無いだろ?」
思い出した様に笑って彼が手を振る。先の事は忘れて欲しいそうだ。
其にしても思考回路が同じだ。でもこんなに着地点が異なるのか、彼のポジティブさは見習わなくてはならない物がある。
「然うだな。何だ、てっきり大きな組織があって其処からの命令か何かだと思ったぞ。何か迚も詳しかったし。でも、屹度大丈夫だな、頑張れば。」
初め彼は御手伝いをして欲しいと言っていたし、と言う事はガルダは前から此の活動をしていると言う事だろう。其なら詳しくて当たり前だ。一柱でやって来れたのなら二柱ならもっと出来るのが道理だろう。
「うぇ・・・?う、うん、まぁ個神だ。個神。然うだ、うん。俺達丈の仕事さ。」
ガルダは然う言い部屋をうろうろする。
目で追わなくても波紋で見える様になった事は実感するのだが、自分の尾が彼の動きに合わせて揺れているの迄は見たくなかった。
「でも組織かぁ、うん。良いな其。グッドアイディアだ。早速採用させて貰おう。」
「ん?何だ。何をするんだ?」
ガルダは旻中に皓い線を描いて行く。鼻唄交じりで何か楽しそうだ。
・・・此の図は・・・設計図?家か?
「此処を拠点にしてしまえば良いんだ。店って事にしてな。何でも屋だ。うん、そしたら依頼も来るし、向こうから来てくれた方が好都合だ。何をすれば良いかはっきりするしな。」
「店・・・か。でも其は良いけれど二柱しかいないし、此処は迫間だろう?其の次元の主導者は来られないんじゃないのか?閑古鳥すら無く気配がしない店になりそうだぞ?」
「開店前なのに酷い事を言うなぁ・・・。大丈夫だよ。干渉力を使えば主導者も来れる様に出来るし、俺達が居ない間、客が来ない様に時を調節すればOKだ。」
「す・・・凄いな。」
流石神様、言う事が違う。然うか、スケールの違いは神の年季の差なのかも知れない。
「良し、家を少し改築して、玄関入ったらロビーで、其の隣が俺の部屋で・・・然うだ。ロビーの隣、俺とセレ、御前の部屋造ろうぜ。うん、良い感じだ。此を彼奴に送ってやれば・・・、」
凄く楽しそう・・・。ガルダは斯う言うイベント的なのが好きなのだろうか。設計図もどんどん描き込まれて・・・って、
「わっ、私の部屋を作るのか⁉其の為に態々改築するって・・・良い、其処迄しなくても、ロビーと言ったな。其処にファーの一つでもあれば・・・否、ブランケット一枚あれば私は大丈夫だから・・・。」
個室なんてとんでもない。其処迄して貰ったら寧ろ気分が悪くなる。如何したら其の恩に報いる事が出来るか、其許り考える様になってしまう・・・。
「何だよ其、尾もわたわたおどおどしてるし・・・。今日から住むんだから部屋は要るって。其に此処は言わば神様の国だぜ?結構自由なんだ。家族が増えるのも減るのも当たり前だ。好きな物を奪うのは日常だ。俺は御前が気に入った。だから此処に居て貰う、其丈だ。金とかも気にしなくて良いぜ。俺は結構給料貰ってるからな。彼奴なら只同然でしてくれるし、一瞬で済ましてくれる。」
彼が凄く気を遣っているのが分かった。でも・・・給料?其に・・・、
「・・・減るのも当たり前?」
「え、あ、その・・・こ、言葉の綾だ。気にすんな!だから部屋の事とかも気にすんな。もっと我儘になっても良いんだぜ。御前は自分の事を考えていれば良いんだ。自分の事でも手一杯なんだからさ。」
「う・・・ん。然うか、でも。」
「ええい!もう依頼したんだ手遅れだ!設計図も彼奴に送った!」
「え⁉早!何時の間に⁉」
確かに旻中にあった設計図はもう跡形も無く消えているけど!
「フッ、此ぞテレパシーの力!御前も使える筈だぜ。此で業者とも俺とも簡単に連絡が取れる。干渉力の応用さ。」
業者?・・・神様の業者?そんな所に依頼したのだろうか。
―テレパシー・・・そんな事が本当に?―
「今御前が使ってる奴だよ。・・・後其、余り面白くない。」
―え⁉な、成程此が・・・良し、使い方は分かったぞ。―
「素かよ・・・然う言えば店名って如何する?早くしないと業者が来ちまう。看板も作って貰うからな。セレ、御前の名付けは俺がしちゃったし、良し。店の命名権は御前にやる。センス良いのを頼むぜ。」
グッと親指を此方に向ける。や、止めてくれ、そんな大役押し付けるな。
「で、でもそんな直ぐには・・・少し考えさせてくれ。」
安直なのは避けたい。語呂が良くて覚え易いのを考えなくては・・・。
「まぁ・・・良いけど。じゃあ先に次元行ってみるか?ちゃっちゃと仕事覚えようぜ。俺の講義を忘れない内に。・・・そっか、俺の長い講義、やっと終わったのか。噫眠かった。躯動かさないと本当に寝そうだ。」
ガルダは何度か躯を捻って伸びをした。其のぎこちなさを見る限り、彼は余り躯が柔らかくはない様だ。
「然うだな。私もすっかり寝てしまった。」
「えぇ!御前の為の講義なのに寝たの⁉補習中に寝るなんて落第生だな、君は。」
「嘘だ。少し丈だ。」
「御前此の手の遣り取り大好きだな!結局寝たんだろ!何時だ!何時寝やがった!」
椅子はガタガタ、尾はパタパタ。全く忙しい遣り取りだ。自分は静かな方が好みなのだが・・・。まぁ此も一種の余裕が出て来たと言う事なのだろう。決して自分がボケや弄りが好きな訳ではない。彼の反応を楽しんでいる訳ではない。
「・・・然う言えば此処は何処で私は誰だ。御前も姿を現せ、何も見えないじゃないか。」
「今迄のは全て寝言だったのかよ!御前、ループネタも好きなんだな!ってかこんな事してたら話進まないぞ。」
「大丈夫だ。つまりは嘘だ。だから気にするな。」
大丈夫だ=嘘だ=気にするな、と符号が使えない変な三段論法になってしまったが、大丈夫だ=気にするな、は別段違和感が無いのだから不思議である。
「はぁ、ま、御前記憶力良さそうだもんな。こんなのは只の与太話だよな。良かった良かった。話進ませても大丈夫そうだな。どうせ彼だろ、御前講義内容全部覚えてるんだろ?暗記しちゃってるんだろ?」
安心した様でガルダは椅子に深く座り直す。講義が終わっても先生は大変だ。
「え、あ、う、うん、そ・・・然うだな。噫、だだだ大丈夫・・・。」
「何故其処で酷く不安気なんだ・・・。」
「じゃないな。全部は無理だ。悪かったな、貴重な時間を割いてくれたのに。まぁでもどうせ神様は不死なんだし、此位良いだろう?」
「そして覚えてなかったー。加えて何故か上からだし。ま、まぁ其でも全部じゃないって事は殆どは覚えてるんだよな・・・。よ、よーし、話を進めるぞー。」
「・・・何故御前の方が不安気なんだ?」
「御前の所為だよ。」
フーッ。と溜息を付き、ガルダは椅子を揺らす。・・・じっとは出来ないのだろうか。自分は尾以外微動だにしていないと言うのに。
「・・・真面目な話。セレ、御前、少し姿変えられないか?牙は・・・隠せるんだろうけど・・・。」
「姿?・・・変身って事か?」
ガルダの少し気まずそうな顔と、其の言葉から納得が行った。多分次元には自分や、恐らくガルダも思っているであろう『人の姿』が普通の可能性が高い。つまりは・・・翼や尾、手足や目、耳を隠せるか・・・と言う事だ。確かに次元の主導者に合う時に斯うも武器を出しっぱだと、警戒されてしまう。
目を閉じる。干渉力・・・だったか。イメージすれば其等の無い姿になれるかも知れない。
「お・・・おぉ。」
ガルダが感嘆の声を洩らす。・・・成功したか?
でも自分は目を瞑っていても分かる。こんな姿を想像したんじゃない。こんな凸凹な、異質な姿は・・・。
「翼と尾は消えたな。・・・あ、耳もか。」
目を開ける。少し困った顔をした彼の顔が映った。
「手足と・・・瞳は無理か。」
「・・・済まない。」
此じゃあ駄目だ。此では彼と一緒に次元には行けない。本当に自宅警備員になってしまう。足手纏いにはなりたくないのに。
「あ、謝んなよ!頼んだのは俺だ。御免な、こんな事頼んで。・・・良し、じゃあセレ、御前の門出を祝って此をプレゼント!」
ガルダは然う言うと勢い良く立ち上がり、何処からか迚も長い晒を取り出した。少し変わっている・・・何か魔力を感じるし、何より色が黔い。黔い晒ってあり得るのだろうか?
「ってか何処から出したんだ其!凄く長いじゃないか!マジックか?マジックなのか⁉」
「ん・・・?」
ガルダは楽しそうに其の晒の端を持って回転したりしていた。
其の間も伸びる伸びる・・・。巻き数が増えて行く辺り、矢張り彼は長くなっている?
「だって未だ長くなっているし・・・何だ其。そんなプレゼントは要らないぞ。」
「噫、此もプレゼントとして教えとくか。此は凄く特殊な魔術なのさ。属性が無い。魔力Onlyで出来る。時空に穴を作る事で、どんな物でも出し入れ出来る空間を創るんだ。此処に物をどんどん入れて置けば、時間も何も無視して何処からでも取り出せる様になる。な、便利だろ?一応俺達は『時空の穴』って呼んでる。安直な方がイメージし易いからな。名前や呪文も然う。安直でイメージ為易い物の方が効力は上がる。相手もイメージ出来るかが大事なんだよな。・・・ほら、御前もしてみろよ。」
「あ、噫・・・。」
タネが分かってほっとしたが、本当便利だな、神様って。
少し集中してみる。時空の穴って言っていたし、穴をイメージすれば良いのだろうか・・・。
「出来・・・た?」
余り魔力を使った気もせず、目の前に想像通りの穴が出来た。
「うん、上出来だ。後で此の晒もあげるから其処に入れとけよ。結構此も便利だから。」
ガルダが満足気に頷き、穴に手を入れたり出したりしている。此処で此の穴を消したら彼の手は如何なるのか・・・と言う邪な考えが少し浮かんだ。光魔術使えるんだし、大丈夫・・・とは行かないか、流石に。
「・・・で、何なんだ其の晒は。」
「んー此は少し特殊な魔術を掛けてるんだ。此で巻かれた物は相手の目に少し入り難くなる。晒さない晒だ。此で御前の手足や目元を隠せば、少しは違和感なく見える様になる筈だ。後、傷の治りを良くする魔術も掛けているから、繃帯代わりに使ってくれ。幾らでもあるから。」
「凄いな。まるで私の為のマジックアイテムだな。有り難く使わせて貰うぞ。」
良かった。此で一応足手纏いにはならずに済む。でも何か都合が良過ぎる様な・・・。まるで決まったシナリオの上を歩いているみたいだ。神様が便利過ぎて然う感じてしまうのだろうか。
「うん。若しかして彼奴、此を見越して晒をくれたって訳じゃないよな・・・。」
「ん?彼奴?」
業者さんの事だろうか。其方も彼奴とか何とか言っていたし。・・・あ、店名、考えないといけないなぁ・・・。
「いや、何でもない。ほら、早速巻けるかやってみようぜ。」
「そ、然うだな。」
晒を受け取り、先ずは左右に巻いてみた。迚も大きい靴を脱ぐ。靴底に爪の跡が大きく残っていた。一見、何かのファッションみたいだ。力んだ時に付いた物だろうけれど、次から気を付けないと軽く貫通してしまう。破けたら如何しよう、干渉力で頑張れば繕えるだろうか。
「ん・・・上手だな。結構器用じゃん。爪の突起に晒を引っ掛けて引っ張る辺りが特に。」
両足に巻いたのを見てガルダは頷く。
「本当だ。・・・少し歪じゃない様に見える・・・。矯正したみたいだ。」
「然うだな。結構珍しい品だから其の分効果が高いのかもな。・・・あ、然うだ。巻いても気付き難いと思うけど、其は一応封魔の術も施してある。・・・と言っても其の御蔭で、巻いた物の魔力を薄める事で、周りの魔力に馴染ませる事で、違和感がない様にしているんだけど。兎に角、本気で闘う時は外した方が良い。其処、注意しとけな。」
本気で闘う・・・そんな事が無い様に祈るしかないが、然うも言っていられないのだろうな。
「うん、分かった。」
然う斯う話している内に両手にも巻けた。晒を上手く巻けるスキルか・・・一体自分は何処で此を身に付けたのだろうか。巻くのが上手な神様なんか居たっけ。縛りが・・・考えるのは止そう。何か誤解を招き兼ねない。一部のコアなファンがいる神様に成りそうだ。はぁ、危ない危ない。
「最後は・・・瞳だな。」
「然うだな。さ、ちゃっちゃと巻いて・・・。」
「思ったんだが、目に此巻いたら其こそ変じゃないか?何で前見えてんの、的な感じに思われると思うんだが・・・。」
「うーん、其処は長年の勘って奴で誤魔化すしかないだろ。一寸其の目は・・・見せられないだろ。」
瞳孔も何も関係なく、漆黔の闇を放つ瞳。自分で思うのもなんだが、死の瞳・・・だと思う。
「矢張り此の目は恐いか?」
左目を少し隠してみる。隠せば隠す程、中に潜む闇は鋭くなって行く。
「確かに凄い魔力だけど、魔法具と言える程に。・・・でも先も言ったぜ。俺、其の瞳が好きなんだ。綺麗だよ。最初御前を連れて帰ろうと思ったのも其の目を見て決めたんだ。」
「・・・私は皓目で倒れていた・・・と、言う事か?」
自分だと逆に引くなぁ・・・。其、倒れているんじゃなくて気絶だよ。屹度記憶飛ばす位トラウマになってしまった事が其奴に起こったんだよ。
「え、あ、う、い、否、然うじゃない・・・けど。」
ガルダは晒を取ると、自分の方へ少し近付いた。
「さてと。こんな感じかなー。」
突然晒を目元に当てられた。
「っ⁉」
条件反射・・・って言うのだろうか。驚き過ぎた自分は殆ど無意識に身を引き、跳躍して壁に四肢を掛けた。そして今度は慎重に緩りとベッドに手を置き、着地した。
彼との間に少し距離が出来る。一瞬本気でやられると思ってしまった。・・・手負いの獣かよ、自分は。
「す、済まない。態とじゃなくて・・・その・・・。」
「・・・戦闘は、出来るみたいだな。」
ガルダは安心した様に頷く。良かった・・・思っていた程、気分を害してはいない様だ。
・・・でも、
「如何なんだろうね。其の反射は御前の前世に因る物なのか。其とも・・・。」
でも、彼の目が少し冷たくなった様・・・な。
「いや、今其は良いか。大丈夫か?御免な。行き成り触ったりして。驚かせちゃったかな。」
「私こそ・・・御免。」
少し前へ移動。巻き易い様に少し頭を下げた。自分で出来ると思うけれど、其の好意を先潰した自分が言える事ではない。素直に巻いて貰う事にする。
「じゃあ再挑戦・・・っと。」
ガルダがもう一度晒を自分の目元に当てる。背筋がぞくぞくする。思わず目を瞑る。怖い。悪寒が止まない。手を握られた時は大丈夫だったのに。顔は急所な気がして、触れられるのが堪らなく怖い。
「良し・・・と、出来た出来た。・・・んー。俺じゃ下手だなぁ。何か御免な。難しかったら調整して良いから。」
ガルダが手を離し、肩をポンと叩いた。釣られて背が伸びる。一安心と同時に目元の晒の温かさが伝わって来た。
「温かい・・・。」
一寸耳の辺りを押さえる。
そっか、少し寒かったんだ。震えない様にするのに必死で、忘れていたけれど。
「然う言えばセレって冷え症なのか?ひんやりしてるし、夏は良いな。」
ガルダは然う言って破顔する。自分も目の険が薄れて行くのが分かる。
「此で大丈夫だ。早速行こうぜ。店名は帰って来る迄に考えとけよ。其迄干渉力で良い具合に調整するから。」
「分かった。」
立ち上がる。足を曲げたり伸ばしたりしてみた。・・・うん、問題無さそうだ。
「じゃあサラバ!俺のワンルームホーム!行くぞ、セレ。手離すなよ。逸れたくなかったらな。」
彼が自分の手首を掴んだ。
噫、何だ。こんなにも温かいじゃないか。ならもう悩む事はない。
彼に付いて、否、二柱で一緒に行けば良いじゃないか。
不安も期待も巻き添えにして、自分は歩き出す。
大丈夫。怖くない。もう自分は前を向いているのだから。
・・・・・
音の消えた世界で語られる物語があった
景色の消えた世界で開かれた物語があった
語る者の居ない世界には物語は無かった
でも紡いで行けば何時か届く筈
零星に思いを馳せて、地と共に讃歌を浴びて、旻の彼方へ廻らせて、理の頂に手を伸ばして、歯車の奏でを聴いて、世界を辿れば・・・
物語は・・・終わらない
・・・まさか此処迄来てしまいましたか。いや、本当に有難う御座います。もう其しかありません。
御覧になって貰った通り今回は世界観の説明及び序章、と言った内容でした。
恐らく可也大儀で読み難くて分かり難かったと思います。其処は本当に済みません。
誤字あったよ!とか、此処適当過ぎない?、既に矛盾あるとか(笑)等色々思う所もあると思います。若しコメント等、足跡を残して下さればきっちりと改善して行きたいと思いますので若しもう少し丈時間を下さるのなら宜しく御願いいたします。
只私、可也趣味の塊で書いている者なので可也不定期になると思います。時間があれば書いて行きたいけれど・・・うーん・・・。
まぁ取り敢えず、今回は御試しと言う事で。次からは色々裏設定とか書けたらなぁと思います。うん、次頑張ろう。
ではでは長くなりましたが、貴方との縁が又ありますように。




