38次元 影に沈む瞳は玻璃の次元Ⅰ
御無沙汰しています!と書こうと思ったら思ったより御無沙汰していなかったでござる。
と言うより寧ろ更新ペース上がってますね、良い事だ。たった一月しか経っていないのに又七万越えである、ヤッタネ。
加えてもう次の話を書いていたりします。そこそこ書けているし、可也個人的には楽しい話になりそうなので筆が進む進む。
そんな今回は主人公?(人ではないけれども)クラスが軒並み御休みです。偶には他のメンバーを書きたいなぁと言う事で相当昔の超恥ずかしい自作ポエム的な物からヒントを得て書いてみました。
斯うして書いていると誰目線で書くのがストーリーを進めやすいのかが分かって来ますね。大体突っ込み役を置いた方が良いです、呆けは本当に話が進まなくなります。
今回書いていて特にベール君を主役にして書くのが本当に難しい事が分かってしまいました。不幸体質が此処迄も本領発揮。敢えて口調を固定していないのが仇になって迚も書き難いです。
と言う事で今回は学校編です。黔い物が沢山見られそうですね、どうぞ御楽しみください!
私には友達が居た
彼女は屹度友達だった
だって何時も一緒だったから
死んでも、一緒だったから
だから此からも一緒だよね?
もっとずっと友達で、永遠に一緒に居てくれる、然うだよね?
・・・・・
次元龍屋、店内にて軽快なベルの音が響く。
「何・・・此の音、」
不審に思ったドレミが自室を出てリビングにやって来た。
リビングの隅、其処には小さな機器があり、其処から音が流れている様だ。
「え、こ、此って確か電話だっけ・・・店にもあったんだ・・・。」
自分の言葉についおかしくなってドレミは一柱笑ってしまった。
ずっと住んでいたのに今迄知らなかったって言うのは何ともおかしな話だ。
でも然うだ、神様にはテレパシーなんて便利な物があるんだから普段は電話なんて要らないのか。
じゃあ一体誰からなんだろう、自分ですら電話番号知らなかったのに。
ギルド以来だから何処か懐かしいけれど、向こうは依頼用だったし、若しかして、
と言うよりこんなに鳴っているのに誰も出ない、何処行っちゃったんだろう。
然うちらと部屋を見渡すとテーブルの陰にスーが隠れていた。
電話の音に怯えている様で彼方を見てぶるぶる震えている。
一応店の受付係なんだから其じゃあ駄目だと思うけど。
「えっとスー君、電話は出た方が良いよ?」
「と、突然彼が鳴り出してっ‼ド、ドド、ドレミさんっ‼出るって、な、何が出るって・・・あわわっ、も、若しかして、ば、ばば爆弾っとか⁉」
あんな堂々と置かれた爆弾なんて見た事無いよ・・・。
如何やら彼にとって電話は未知の文明だった様だ。其なら恐れても仕方ない。
其なら其でガルダ達が教えてあげなきゃいけない筈だけど・・・ま、いっか。
じゃあ私が代わりに出てあげよう。えっと、何て名乗ろうかな。
「はいもしもし、次元龍屋のドレミです!」
初めての電話だから一寸ドキドキする。一体何だろう。
取り敢えず聞き漏らさない様しっかり受話器を持つ。
何処か受話器は異様に冷たく感じた。
「・・・ケ・・・テ、」
「え、あ、御免なさい。もう一回言ってくれますか?」
ノイズ音が酷い、何かが幽かに聞こえた気がするけど。
「・・・助ケテ・・・。」
「え・・・、」
其の一言がはっきり聞き取れた瞬間、ドレミの視界は暗転したのだった。
「え、えぇ⁉ドレミ、ドレミさん⁉、き、消えたっ!彼は静かになったけど・・・ど、どど如何しよ・・・な、何がっ・・・、」
見守るスーの目の前でドレミの姿は掻き消えてしまった。
そんな瞬間を見届けてしまったので瞬時にスーの触角は光り、全身鳥肌になってぶるぶる震え始めた。
「と、っ兎に角だ、・・・っだだ誰かに、言わないとっ!あ・・・あぅ、で、でもだ・・・、」
そして一柱ショートしてしまったスーは其の場で気絶してしまうのだった・・・。
後にそんな状態のスーを発見して敵襲と勘違いしたセレが暴れたり色々してしまうのだが、其は別の御話である。
・・・・・
「っ⁉ふぇえ‼こ、此処何処なのー‼」
ドレミの素頓狂な声が響き渡る。
一瞬、たった一瞬でドレミは見知らぬ地へと転移していたのだ。
視界一杯の夕焼け旻。昔は苦手だったけれども今なら只綺麗と思える。
見晴らしが随分良いけれども、此処は高台だろうか。
緩り周りを見て取り敢えず情報を集めないと。
此処は何かの建物の屋上の様だった。
タイル張りで、周りは落ちない様にか柵が申し訳程度にされている。
景色を見た限り、此処は普通の街並みの様だった。
眼下には家々が並び、ビルや公園、店らしき物が幾つか見える。
昔次元を行き来していた時にこんな所見た気がする。何とも平和そうな街だ。
でも如何して急にこんな所に・・・?電話を取って来たのなら何か関係はありそうだけど。
見た所恐らく此処は何処かの次元だ。仕事・・・って事なのかな?
―あ、あれ、此処何処?あっ、ドレミだ。―
聞き慣れた声に振り返るとローズが目を白黒させて立っていた。
「あっ!ロー君良かった、一柱は流石に心細かったから。」
そっと駆け寄って首元のモフモフにぎゅっと顔を埋める。
斯うしていると落ち着く・・・セレが病み付きになるのも、分からなくはないね。
―ドレミ、此処は何処なの?気付いたら部屋に居なかったから出て来たら突然こんな所に・・・此処は流石に店じゃあないよね?―
「あ、そっか、ロー君寝てたもんね。ドレミも未だ良く分かってないけど多分此処は・・・、」
「あれ、見知った顔だ。じゃあ此が如何言う事か説明してくれるのかな。」
突然の声に思わず見上げると枴に乗った飃が浮かんでいた。
「え!飃君も来たの⁉何だか珍しいね。」
「来たも何も僕は外をぶらついていた丈なんだけど・・・。」
飃はちらと夕暉を眺めて目を細めた。
「こんな絳い夕暉を見たのは・・・本当に久し振り。」
「そっか。今は霄の飃君なんだね。」
次元に因って霄の差があるだろうし、其で早目に出て来たのかな。
「血みたいで悪くない色だね。」
「う、其の表現は一寸・・・綺麗じゃないかな。」
「うわぁああぁあああぁっ‼」
話していると突然旻の彼方から誰かが降って来た。
そして其の儘建物の脇を落ちていく・・・。
「え⁉ちょっ誰⁉っ其より、」
急いで柵にしがみ付いたが届く訳もなく落ちてしまう。
すると飃は無言で枴を傾けて真っ逆様に急降下して行った。
そして落ちて来た彼の背を旻中でキャッチし、其の儘上迄帰還する。
「う・・・あ、い・・・生きてる・・・?」
ぎゅっと目を閉じて顔を覆っていた手をそろそろとどける。
背を掴まれているので宙ぶらりん状態なのだが、彼は不思議そうに両手を伸ばした。
開始数秒で死に掛けるなんて彼、ベールの不幸体質は健在の様だ。
「若しかして僕、浮遊霊になった・・・?」
「僕が此の儘手を放せば成れるだろうね。」
「え⁉あっ、飃、さん⁉若しかして飃さんも・・・?」
「あ、有難う飃君!緩り、緩り下ろしてあげてね!」
飃の目が静かに坐っていたので慌ててドレミが止めに入った。
此の儘じゃあポイッてベールが捨てられちゃう!次元に来た直後死に戻りするなんて余だ。
凄い瞬発力で助けてくれたから大丈夫だと思うけど・・・。
「・・・だって、君命拾いしたね。」
結局ベールはポイッと捨てられたが、ちゃんと屋上に投げて貰ったので命に別状はなかった。
「え、あ・・・え、い、一体何が・・・?」
未だベールは混乱している様だ。ローズが近付いて頬を舐めると目を白黒させた。
「えっとベール君は先迄何処に居たの?」
「確か・・・部屋を出たら穴が開いてて・・・其の儘落ちたら・・・?」
「うーん、其のタイミングで来ちゃったみたいだね。」
「ねぇ御姉さん一柱で納得しないでさ。ちゃんと状況説明してよ。」
「うん多分ドレミ達ね、次元に来ちゃったんだと思うんだよ。」
原因は・・・恐らく彼の電話。
軽く説明すると納得した様に飃は頷いた。
「成程ね。で、此の神選は何?其の悪戯電話に出たのは御姉さん丈でしょ?」
「えっと其は・・・此の次元に適している神が自動的に選ばれたとか・・・ないかな?干渉力とか然う言う難しいの、ドレミ良く分かんないけど。」
―然うかもね。近くに居た、次元に行っても良いって思っていた僕達も呼ばれたのかもね。―
ちらと飃はベールを見遣ったが気付かれる前に視線を戻した。
「其にしても酷い電話だね。未だ受けるも何も言ってなかったのに。」
「其丈大変だって事だったんじゃないかな・・・。だからドレミは此の儘仕事をするつもりだけど、皆は如何するの?」
―僕もするよ、丁度暇してたし。―
「まぁ僕も構わないけど。息抜きには良いだろうし。」
如何したら彼の化物を殺せるか改めて考えていたけれど一寸煮詰まっていた所だ。
ひょんな所からアドバイスが見付かるかも知れないし、悪くはない。
御姉さん一柱でさせるのも何だか寝覚めが悪いしね。
「僕もっ、命の恩神に付いて行きますっ。」
「あーそんな重いの良いから僕の邪魔丈はしないでね。」
「ぜ、善処します・・・。」
「そっか、皆手伝ってくれるんだね。有難う!所で此処って何処だと思う?」
「う・・・僕は余り知らない文明と言うか、特に心当たりは。」
「僕も同じだね。知らない建物許りだし、変わらないのは紅鏡位じゃないかな。」
「然うなんだね、取り敢えず降りたら良いのかな・・・。」
一応屋上にはポツンと一つ小部屋みたいな物があった。其処から降りられるとは思うけれど。
ちらと扉を見遣るとギィ、と重い音を立てて扉が開き始めた。
そして其処からニュッと首を伸ばして一頭の生物が屋上に現れた。
でも其の生物はドレミ達が見た事も無い生物で思わず固まってしまう。
全長2m程の言わば二足歩行する蜥蜴の様な生物だったのだ。
滑らかな皓い肌に二本の細長い触角が兎の耳の様に生えている。
顔と思しき所は大きな黔水精に覆われ、目なのか蒼い瞳が浮かんでいた。
首は蛇腹みたいで細長く、手は短い四本指で、しっかりとした足は鳥の物と良く似ていた。
尾は長くふさふさしており、絹の様な毛を絡めて伸ばしたかの様だった。
そんな生物の頸には絳いスカーフのネクタイがされ、二枚の黔い布を羽織っている。
布には刺繍がされ、薫風を受けて小さくはためいた。
見た事のない生物、大きいし、感情の読めない大きな目は何処か恐怖心を煽る。
生物は一瞬とも永遠とも思える時間、ドレミ達を見詰めていた。
何方かが一歩でも動いた瞬間、何かが始まってしまう。
知らず一同は固唾を呑んだ。
そして・・・、
「ッキャァアアァアアアア⁉ば、ばば、化物ぉお!‼」
先に声を上げたのは例の謎の生物だった。
見た目に反して随分と可愛らしく、甲高い声で半ば悲鳴の様でもある。
先に声を上げてくれたので寧ろ一同の方は少し丈冷静になる事が出来た。
取り敢えず恐がられているが意思疎通は取れそうだ。
其の反応からして如何やら彼等みたいな生物が此の次元で繁栄しているらしい。
彼みたいな恐ろし気な目や爪は無いが、其でも彼からしたら自分達は化物なのだろう。
見た事のない生物なら其の反応も頷ける。
向こうはすっかりドレミ達を恐れている様でカタカタ震えて扉を楯にし、動こうとしなかった。
恐らく動けないのだろう、じっと固まって遣り過ごそうとしている風にも思える。
けれどもそんなに恐がられると罪悪感を覚えずには居られない。
昔自分は全く同じ反応を・・・セレにしたのだ。
確かに昔酷い事をされた。言訳は出来る。其でも、彼の時彼女を傷付けたのは事実なんだ。
言われてはっきり分かった。其の言葉の理不尽さと、悲しみを。
私は・・・何て事を彼女に強いたのだろう。
「あ、あの驚かせて御免なさい。でもドレミ達変な集まりとかじゃなくて、」
「変でしょ、実際。」
「もう飃君はストップ!」
「は・・・話せる・・・んですか?」
隠れた儘、そろそろと窺い乍らも尋ねて来た。
此方が何もしなかったので向こうも少し丈冷静になってくれた様だ。
声の具合からして若しかしたら女性なのかも知れない。・・・性別があればだけれど。
「う、うん、何もしないから恐がらなくて大丈夫だよ。」
何て声を掛けて良いか分からず其となく伝えると向こうも理解はしてくれた様である。
コミュニケーションって偉大だ。話せるか如何かで可也状況が変わって来た。
「も、若しかして貴方達は・・・妖怪、だったりしますか・・・?」
「よ、妖怪⁉」
とんでもない質問が出て来た。
う・・・あ、何其、え・・・妖怪?
初めて言われたけれど然うか、向こうからしたら未知の生物だもんね。宇宙人みたいな感覚で言ったのかな。
な、何とかして繋がりを作らないと・・・だって彼女は次元の主導者なのだから。
こんな出会い方をした時点で確信していた。此処で逃がしてしまったら回収が難しくなる。
幸い先悲鳴を上げられたが周りは静かな儘だ。こんな誂えた舞台で失敗なんてしたら笑えない。
「えっと幽霊は妖怪に入りますっけ・・・。」
「まぁ入るんじゃないの。」
うーん、何方だろう、いや本当は私達違うんだけど、妖怪だって言った方が向こうも納得するのかな・・・。
優しい妖怪だよって言ったら・・・如何にかなる?
「そ、如何だね。ドレミ達は妖怪なんだよ!」
「達って・・・まぁ良いけど。」
静かに、とドレミにジェスチャーされ、飃は肩を竦めた。
「ほ、本物・・・なの?まぁでもこんな生物見た事無いし・・・へー・・・へー然うなんだ。」
何だか無理矢理納得しようとしている風に見える。
「此の学校にも居るんだ。何だかすっごいファンタジー・・・。」
「学校・・・?此処が然うなの?」
確か沢山の子供達が勉強する所だよね。ドレミ行った事無いけど。
じゃあ此の子は生徒か先生だったりするのかな・・・。
「おーい如何した!何かあったのか!」
ビクンと彼女の背が跳ね、慌てて一同に背を向ける。
・・・誰かやって来たのだろうか。如何しよう、そんな姿晒して良い物なのかな。先みたいに吃驚させちゃったら・・・、
「せっ、先生!あ、えっと何でも、無い・・・です。はい、心配掛けました。」
「いや先の悲鳴は只事じゃなかったぞ371(サナイ)、何か居るのか?」
「だ、だだ大丈夫で・・・っあ、」
暫くするとヌッと又別の生物が顔を覗かせた。
先のより一回り大きい・・・話の流れからして若しかして彼が先生だろうか。
ばっちり目が合ったと思ったが彼は首を傾げる丈で又引っ込んでしまった。
「ん?何も居ないじゃないか。一人で一体如何したんだ371。」
「え?・・・えっと・・・は、はは、な、何でも無いんですってば先生、ちょ、一寸屋上で叫びたくなったと言うか・・・。」
「然うかぁ・・・その、何か悩みがあるならちゃんと言うんだぞ。」
「わ、分かりました。気遣い有難う御座いますっ、」
そんな会話が交わされた後、又彼女が慌てた様子で顔を覗かせて来た。
「え・・・若しかして私以外に見えない・・・とか?」
「あ、然う言う事かもね!」
―何だかすっかりファンタジーだね。―
「単に次元の主導者に丈見えるんじゃないの。」
「じゃ、じゃあ本物の妖怪・・・す、凄いっ、」
何が凄いのか分からないが何だか信じてくれたみたいだ。
そして如何言う訳か本物の妖怪認定されてからの方が少し丈親近感を持ってくれている気がする。
未知の者から格上げされたと言う事だろうか。余り変化はない気もするけど。
「え、えっと・・・371ちゃん、って呼んだら良いのかな?」
「流石妖怪さん!其の通りです、何でも分かるんですね!」
先話してるの聞いていた丈だけどね。
371は恐がるより好奇心が勝った様で終に扉から出て少しずつ一同に近付いて来た。
まぁ打ち解けそうならもう妖怪で良いかな。
「よ、妖怪さん達の名前を・・・聞いても?」
「あ、うん。ドレミはドレミだよ!で、此方がローズのロー君で、飃君に、ベール君だよ。」
「僕妖怪認定された儘は嫌なんだけど。」
「う、あ、い、一所懸命に妖怪になります・・・。」
「だって・・・もう斯うなったら皆も此の次元を助けてくれるんでしょ?」
今更妖怪認定されて不快だから帰りますとは言わないだろう。屹度自分達が呼ばれたのは訳があるんだ。
電話の事もあるし、何時もより緊急性は高いのかも知れない。
「ふ、不思議な響きの名前・・・頑張って覚えますね。でも一体如何してこんな所に・・・、」
さて何て答えよう。寧ろ自分達は右も左も分からないので何とも言えないのだ。
其に自分以外は黙りだ・・・自分に全て押し付けようとしている気がする。
「そ、其はねっ!えっと371ちゃん何か悩みがあるでしょ!其を解決してあげようかなって斯う、ね!」
先先生が言ったのと同じ事しちゃった。
―うんうん、ドレミナイスだよ。―
もう、全部任せた癖に。
自棄になったドレミは適当な事を言ってしまったが、案外悪くない話だと思った。
学生なら悩みの一つ二つあるだろう。多感な御年頃と言う物だ。
妖怪が然う言う物を解決してくれる存在か知らないけれど、味方アピールが出来たら良いんじゃないだろうか。
「そ、そんな事も分かるなんて・・・確かに、妖怪さん達じゃないと無理かも知れないし・・・。」
「・・・良い感じじゃないの?流石先輩だね。」
「ま、まぁ此位朝飯前だよ。」
屹度自分とは違う存在と言う事も効いたのだろう、何処か非現実的な此の状況を楽しんでいると言うか、別の物として割り切っている風でもある。
と言う事は悩みも、其に類する物なのかも知れない・・・。
「うんうん、じゃあ良かったら聞かせてくれないかな?」
妖怪扱いは嫌だけど困っている人はほっとけないしね。
「は、はい、あの・・・実は私の影が一寸変わってて、」
怖ず怖ずと近付いて来た彼女は手を組んだり触ったりと何ともそわそわしていた。
見た目が違うって丈で極普通の女子高生、と言った風の様だ。
「影?其って今足元にある分のかな?」
ぱっと見た限り何も違和感がない。
紅鏡に因ってはっきりと自分達と彼女の影が出来ている。
「はい、普段は何ともないんです。でも時々私の意思とは違う動きをして、高い所から落ちそうになったら足を止めたり、その、車に轢かれそうになったら斯う・・・引き止めたり?とかして、」
「ふーん、じゃあ守護神みたいな事してくれるんだ、影が。」
確かに其は妖怪っぽい悩みだね。
でも無条件で護ってくれる存在って何処か怪しく思ってしまうな。
「護ってくれる・・・然うですね。此処最近は特に多くって、」
「成程、確かに其は変わった事だね。」
聞いている丈だと解決の糸口が見付からない、一体何なんだろう。
「其で・・・前此処から落ち掛けたから、又来たら何かあるかと思ったんです。然うしたらまさか妖怪さんに会えるなんて、」
「え⁉此処から⁉すっごく高いよ!何事もなくて良かったね。」
ちらと振り返ったけれども十分な高さだ。死んでもおかしくない。
「こ、此処から落ちたら本当に命は無いですよ。・・・よ、良かったですね。」
先実際落ちたベールだからだろう。只の同情よりずっと熱が籠もっていた。
「でも最近ってそんな不幸な事が立て続けに起こっている・・・とか?」
不幸に敏感な彼の事だ。其処が先になるのも無理はない。
「・・・然う、ですね。起こっている・・・かと。」
余り其処に自信は無い様だ。未だ自身でも呑み込めていないのかも知れない。
「影が護ってくれる、ねぇ。自分自身だから助けてくれるのか、其とも、」
影が次元の主導者を護ってくれるなら自分達は要らないんじゃないだろうか。
其とも今後影じゃあ対処出来ない事が起こるのか・・・何とも言えないね。
「うーん、影が動く様になった切っ掛けってあったりするのかな?其とも危なくなったから急に動き出したとか?」
「あ・・・一応あります。若しかしたら此の影、友達なんじゃないかって思うんです。」
―友・・・達?―
影は紅鏡に因って出来る自然現象。其に意思だとかがある様に思った事なんて一度もない。
そんな話をされれば、疲れているんだとつい言ってしまいそうになる。
でも次元に因ってはあるのかも知れない。未だ此の次元について良く知らないから慎重に聞かないと。
「あっ!えっと変な意味じゃなくって、私の友達・・・034(オミヨ)ちゃんがその・・・最近亡くなったんです。其から影が動く様になった気がするんです。」
「じゃあ影に其の子が憑いてるかもって事?」
其にしても不幸が続いている。
友人の死も立派な不幸だ。其から死ぬかも知れないような事故に何度も遭い掛けているのは普通じゃない。
だから友達の霊が護ってくれているって事?うーん、然う言う事もあるのかな。
「私は・・・然う、思っています。会った時に左手を挙げる癖が彼の子にはあったから、其と同じ事を良く、影はするんです。」
「ふーん、何とも奇妙な話だね。」
普通に聞いたら此の子が病んでいる気もするなぁ。
影に友達の居なくなった穴埋めを求めている様で、うじうじして自分は余り好きじゃあない。
本当か如何か、一寸試してみようかな。先不幸少年にしたみたいに枴で持ち上げて落としちゃえば・・・。
落として直ぐ回収すれば良いんだし、其位しても怒られないだろう。
そっと機会を窺ってそろそろと飃が371に近付いた時だった。
「っ⁉な、何っ‼」
突然彼女の影が伸び上がり、立ち上がったのだ。
そして飛んでいる飃よりも高く大きくなり、両手を挙げて飃に威嚇をしている様だった。
一瞬の事で思わず飃は枴を止めて低く停滞した。
すると其で満足したのか影は小さくなり、元の姿へと戻って行く。
371本人はすっかり腰が抜けてしまった様でへたり込んでしまった。
「な、何、も、若しかして今のが影⁉」
「そ、然うです。でもこんな大きくなったのは初めてで、」
「成程ね。話は本当だったって事だ。」
一柱納得した様子の飃をちらとドレミは見遣った。
「飃君一体何をしたの?」
「一寸其の子に悪戯しようとした丈だよ。如何やら僕の悪意に反応したっぽいし、護っているのは本当みたいだね。」
「そ、そんな、でも急には止めてください飃さん!吃驚して僕又落ちちゃう所でしたよ。」
「落ちても死なないんだから良いんじゃないの。」
「でも飃君、勝手は駄目だよ、危ないでしょ。」
「はぁ~い、以後気を付けます。」
大して反省した風ではなく、頭を掻いて飃は外方を向いてしまった。
「ご、御免ね371ちゃん、吃驚させちゃったね大丈夫?」
「あ、はい大丈夫です。信じて貰えたなら・・・良かったです。」
でも思ったより影は積極的だった。
彼処迄しないと影も此の子を護れないのかな。
「因みに友達は如何して死んじゃったの?」
「ちょっ、一寸飃君!そんな直球だよ!」
「影の事は信じたんだから今度は其処を調べないと駄目でしょ。」
うぅ、まぁ然うだけど、そんな傷を抉る様な事しなくても。
「・・・034ちゃんは・・・その、自殺、です。霄、屋上で・・・刺されて・・・其で、」
「・・・御免ね、辛い話させちゃったね。」
何度か言い淀み乍ら其丈言うと371は黙り込んでしまった。
懐い出したくはないのだろう、両手を結んで俯いてしまっている。
・・・余り、此の事は聞かない方が良いよね。
「ふーん、自殺した友達が霊になって・・・ねぇ。」
不躾にも飃は其処が引っ掛かっている様で穿り出そうとしている。
―僕もやったから分かるけどさ、自殺する時って自分の事しか考えてないんだよね。如何思ったら守護霊なんてなるか分からないな。―
ドレミに又怒られると思ったのだろう、そんなテレパシーが届いた。
そっか・・・飃君って其で神様になっちゃったんだっけ。
だから色々気になるし、引っ掛かるのかも知れない。
今生きている人間に彼是言われるのが嫌なのかも知れない。
「さ、刺されて・・・自殺なんて恐ろしい・・・そんな方法選ばなくても、」
想像でもしてしまったのかベールは早くも吐き然うだ。
落ちたり吐いたりと余りにも不憫なので一寸背中を擦ってあげる事にした。
「・・・妖怪さんもそんな風に思うんですね。」
「まぁ僕は餓死だから・・・その、自殺じゃないけど死ぬ時の辛さは分か・・・うぇえ・・・、」
「ベール君!無理しちゃ駄目だよ!此処で吐かない様にね、頑張って、」
「・・・何だか話を聞いて貰えて、一寸スッキリしました。私、もう寮へ行かないといけないので、又此処に来たら会えます・・・か?」
「あ、うん大丈夫だよ!でも一人で平気?良かったら一緒に行くよ?」
「はは、大丈夫ですよ、寮は直ぐ其処ですよ。じゃ、じゃあ皆さん有難う御座いました!」
具体的な解決法は全く浮かばなかったけれども、悩みを聞いて貰えた事で彼女は満足した様だ。
371は首を伸ばして頭を上げるとそそくさと屋上を出て行ってしまう。
結局彼以降、影が不審な動きをする事は無かった。
「ド、ドレミさん有難う御座います・・・も、もう大丈夫です。」
一つ息を付いたベールの顔色は大分良くなっていた。
良かった、彼の変な病気が発症したとかじゃなくて。
「・・・一応彼の子がターゲットなんだよね。」
「うん、次元の主導者ちゃんだったね。でも吃驚しちゃった、見た事無い生き物だったから。」
―でも中身は普通の女子高生って感じだったね。―
「此処は僕達の方が化物だなんてね。見えなくて良かったけど。」
「然うだね、折角だし学校見てみようかな。ドレミ行った事無いから良く分かってないし。」
透明人間になったのも初めてだ。一寸わくわくしてる。
「え、えぇ動くんです・・・?本当に僕達が皆に見えないか分からないし、中に先のがうじゃうじゃ居ると思ったら・・・、」
「うーん、でももう皆其の寮に行ったんじゃないかな。霄になって来たし・・・ほら、彼方なんじゃないかな。」
紅鏡はもう沈んでいる。もう直ぐ水鏡が出るんじゃないだろうか。
今一度屋上からざっと景色を一望すると、近くのある建物へ371と良く似た生き物が沢山入って行っている。
明かりもどんどん付いているし、彼処が寮なんだろう。
「う、うわ本当だ・・・あんなに居るんだ。」
「確かに一寸吃驚したけどそんな怯えなくても良いんじゃないかな。371ちゃん良い子然うだったし、着包み来た人間だって思えば大丈夫だよ!」
「そ、其は其で一寸不気味だけど。」
苦笑する位にはベールも落ち着いた様だ。
「で、入るんでしょ?流石に此処で野宿は嫌だし。」
「然うだね、一寸入ってみようよ校舎!」
飃の言う通りだ。此処で又371が来る迄待つなんて真っ平御免だし、中に入ってしまおう。
そっと扉を押すと簡単に開いた。
薄暗い階段が続いている・・・然うか、学校ってもう終わってるのかな、だから静かなんだ。
「うん行けそうだね。じゃあドレミ一番乗り!」
―一応気を付けてね。初めての所なんだし。―
「分かってるよ。何だかトレジャーハンターしていた時みたいで懐かしいね。」
―学校に宝は無いと思うけど、うん然うだね。―
階段を降りると長い廊下に出会した。
しんと静まり返っている・・・一寸恐いかも。
「何だか同じ部屋ばっかり・・・ふーん。」
「あれ、御姉さん知らないの?此処教室だよ。皆此処で勉強するんでしょ。」
「ドレミの所は無かったから何か珍しくて。・・・思ったより狭いし、何か大変そうだね勉強って。」
教室にはびっちりと机と椅子が並べられていた。
人一人通れるか位の隙間しかないし、此処に一日ずっと座るのだろうか。
子供が行く所だからって思っていたけど、想像以上に過酷そうだ。
「僕も初めてだけど、まるで牢獄みたいな所だね・・・。」
「然う?普通って思うの僕丈なんだ。」
「・・・あの、」
「あっ、彼黒板だよね!へぇ一杯絵とか描けそうだね。」
「絵は描かないと思うけど。」
―何か不思議な文字が書いてるね・・・何て読むんだろ。―
「・・・あの・・・。」
「中・・・入れるかな、トラップとか無いと良いけど。」
「ト、トラップ・・・?何で又そんな。」
「黒板消しがセットされてるかもね。」
「・・・っあ、の!」
「え・・・ひぎゃぁあああぁあ‼」
ベールの悲鳴が廊下に響き渡る。
其の声自体に一同も驚いて反応してしまった。
「ベール君如何したの?」
「い、今首筋がヒヤッとして肩に手が・・・、」
すっかり腰が抜けてベールは座った儘青くなっていた。
そして背後を指差してぶるぶる震えている。
「そんな驚かなくても良いでしょうに。」
「え、あ、は、初めまして。」
気付けばドレミ達の背後に一体彳んでいる者がいた。
見た所371と良く似た生物で、彼女よりも一回り大きく、躯は薄灰色だった。
翻るマントの様な布は皓く、幽風も無いのに棚引いている。
けれどもドレミは何か違和感を覚えた。何だか少し丈輪郭が曖昧な様な。
何度か目を擦ったが変わらない様に思う。
「えぇ初めまして。ようこそ我が校へ。歓迎しますわ。」
次元の主導者以外見えないと思っていたのに、しっかりとドレミを見詰めた儘然う挨拶をされたのだった。
声からして優しそうな女性の様だ。と言っても彼等の生態が分からない以上性別が正しいのかも分からないが。
「まさか・・・こんなに近かったのに気配が分からなかったとはね。」
「え、えーっと其より如何しよう。」
見付からないと思っていたのにあっさりばれてしまった。
寧ろ先の先生が見えていなかったのがおかしかったのだろうか。
自分達は只の侵入者だ。面倒な事になってしまう。
「そんな怯えないでくださいな。・・・貴方ですね、先程電話を取ってくださったのは。御早い対応感謝しますわ。」
「で、電話って・・・あっ!若しかして!」
思い当たるのは此の次元へ引き摺り込んだ例の電話だ。
ドレミの反応に、彼女は首を伸ばして頭を上げた。
彼の仕草は彼等の挨拶なのかも知れない。
「私もまさかこんな可愛らしい御嬢様が受けてくださったとは思いもしませんでしたわ。私は此処の教師の677(ムナナ)と申します。どうぞ宜しく御願いしますね皆様。」
「あ、は、はい宜しく御願いしますっ!」
依頼主に会えたのは大きい。依頼・・・と呼べるかは微妙な所だったけど、事情が分かって貰えるのは大きい。
一体此の次元で何が起きているのか、其の辺りをざっと教えて貰おう。
「フフフ、良い御返事ですね。花丸をあげましょう。此処ではなんですし、皆さん教室へ入りましょう。」
677先生は近くの教室の扉を開けると一同を招き入れてくれた。
適当な椅子にでも座れば良いだろうか、数が多くて迷ったが取り敢えず先生の近くに腰掛ける。
そんなドレミの隣でローズは腹這いになって上目遣いに677先生を見遣った。
一同も順々に席に着くと677先生は嬉しそうに口元を抑えた。
「あらあら、何だか久し振りに授業をしているみたいで楽しいわね。」
「あ、じゃあ677先生、ドレミ達自己紹介するね。えっと左から・・・、」
ドレミが軽く自己紹介すると677先生は満足そうに拍手をしていた。
「良く出来ました!自己紹介もちゃんと出来て御利口さんですね!」
「あ、あの677先生、ドレミもう立派な大人だからね・・・?」
「あらあら私ったら御免なさい。教室に入ると教師癖が出ちゃうのよ。」
「・・・所でさ、先生は僕達を見ても驚かないんだね。先の子はあんなに驚いてくれたのにさ。」
「当然ですわ。既に周知しておりましたし、大切な生徒を助けて貰う方に失礼は出来ませんわ。」
「生徒を助ける・・・其が仕事なんだね。あの、出来れば此の学校の事とかもっと教えてくれないかな、ドレミ達来たばっかりだから良く分からなくて。」
「良い質問ですわ。えぇ地理でも歴史でも何でも教えましょう。私授業に関してはオールラウンドな先生なんですよ。」
何とも頼もしい先生だ。然う言う事情も分かってくれているのならやり易い。
此の次元、スタートが充実しているから仕事が捗りそうだね。
「えっとじゃあ・・・何から聞こうかな。」
「じゃあ僕が聞いてあげるよ。ねぇ、先生みたいな生物が此の次元には一杯居るのかな。」
「此の次元、と言いますと・・・?」
「噫そっか、分かり難いね。例えばさ、僕達みたいな人間とかって居ないのかなってさ。」
「然うですね、私も永いですが存じておりません。私達と話せる他の種がおられるなんて、実は未だ私自身、少し驚いているのですよ。」
成程、其じゃあ此の次元は彼女達の種族が繁栄している様だ。
人間は居ない・・・だったら彼の子の反応も頷けるね。
「そんな正体不明な生物に頼りたい程困ってる訳?良く電話なんて出来たね。」
「飃君そんなズカズカ言っちゃあ駄目だよ、失礼でしょ。」
「此が僕の依頼のスタイルなんだから兎や角言われたくないね。」
「ドレミにもドレミのスタイルがあるんだよ!」
「わ、私は気にしていないので大丈夫ですよドレミさん!」
677先生に止められた事でドレミは視線を戻した。
何方が先輩か知らないけれど、私は私のやり方があるの!
「其に正体不明と言ってもほら、私達似た存在じゃあないですか、然うでしょう?」
「え?似てる所って・・・ありますか?」
思い当たる所がなくて首を傾げてしまう。
「おや、私の思い過ごしでしょうか?だって皆さんは妖怪じゃないですか、だったら、」
「ま、待って其如何言う事⁉」
其以上話されるととんでもない事を言われ然うだ。
如何言う事?抑私妖怪じゃないよっ!
「如何って・・・私霊ですから。此の学校の先生の。」
「ヒェー‼ほ、本物の幽霊⁉」
―・・・ベールも同じだと思うけど。―
「成程、だから気配に気付けなかったんだね。腕が落ちたのかと思ったよ。」
安心したのは飃位な物で、他の一同は距離を取りたくて仕方なかった。
だって信じられない。確かに目の前に居るのに霊だなんて。
いやでも良く見れば何処か彼女の輪郭は曖昧だ。
本当・・・なんだ。言われて段々実感が湧いて来た・・・。
「ど、如何したんです皆さん⁉抑私は電話一本で助けてくれる素敵な妖怪さん達が居ると聞いて依頼したんですが・・・若しかして霊とかが苦手でしたか?」
いけない、依頼主を落ち込ませてしまった。
霊と言えども立派な依頼主だ。大丈夫、大丈夫だよ。一寸吃驚した丈だよ、ね?
「ち、ちち違うんです!えっとその、凄く自然体だったから気付かなくて、一寸、び、吃驚した丈なんです!」
「あら、フフ、皆さんも姿さえ違えば分からない位自然体で良いかと思いますよ。」
然うだ、別に霊と言っても害意がある訳じゃないんだ。そんな意識しなくても大丈夫だろう。
「でも本物の霊に迄知れ渡っているって彼の精霊の影響力も凄いねぇ。一体如何伝わったんだろ。」
「私は只、他の霊とかから聞いた丈なので何とも言えませんが、皆さん存じているかと思いますよ。」
「そ、然うなんだ。一寸照れる様な・・・。」
セレが精霊とか龍に宣伝を任せているらしいから変な偏りがあるのかも知れない。
其でも斯うやって依頼が来てくれる事は良い事だよね?
―・・・因みに677先生はどんな霊なのか聞いても?―
好奇心の強いローズだ。未知の相手に無邪気に目を輝かせていた。
「如何と言われても普通の霊ですよ私は。昔此処で勉強を見ていたんですが、階段で足を滑らせて打ち所が悪く・・・。其でも私は気付いていなくて斯うして化けて出てしまった物ですから可也皆さんを驚かせてしまったんですよ、御恥ずかしい。」
然う言って一寸顔を隠す仕草とかは確かに霊っぽくなかった。
然うなんだ、知らずに死んじゃって霊に・・・。一寸可哀相だけれども、今の彼女に影は余り見られなかった。
「でも霊になった御蔭でずっと生徒達の成長が見られて迚も楽しいです。私は別に大した力も無いので見る事しか出来ませんが、其でも子供達が成長する姿は見ている丈で勇気付けられますわ。」
「子供が好きなんだね、677先生は。」
「フフ、然うですね。其に皆さんから久し振りに先生と呼ばれて、凄く嬉しいです。私は学校が大好きなんです。」
然う言う彼女の目は迚も優しそうで。
噫、屹度凄く良い先生だったんだろうなと思った。
学校は行った事ないけど、こんな先生が色々教えてくれるなら一寸行ってみたいな。
―でも依頼をして来たって事は何か困ってるって事だよね。―
「えぇ然うなんです、ある生徒に問題が起きまして・・・とは言っても如何やら皆さん既に其の子と会われているみたいですね。流石です。」
「371ちゃんの事、だよね?」
「矢っ張り例の影の事・・・だよね。」
「其の通りです。此が私には手に負えなくて、皆さんの力を頼った次第なんです。」
677先生は何とも悔しそうに俯いた。
気付いても何も出来ないのは辛いだろう。
「彼の影が一体何なのか先生は知ってる訳?」
「え、あの、彼女は何か言っていませんでしたか?」
「最近亡くなった034ちゃんかもって言っていたけど、如何かなって思って。」
「如何も何も其しかありませんわ。友人だったので既に気付いていると許り思っていたのですが。」
「じゃ、じゃあ彼の影も霊が憑いているって事・・・?」
―だね。だからあんなにはっきり襲って来たんだ。―
「え⁉ま、まさか襲われたんですか?」
驚きの余りか先生の瞳孔が一気に開く。
尾も心做し毛羽立っている様に思えた。
「やられたのは僕だよ。一寸彼の子にちょっかい出そうとした丈なのに出て来ちゃうんだから余っ程過保護だねぇ。」
「うーん、でも飃君の一寸が一寸じゃない事もあるからじゃないかな・・・。」
何より原因を作ったのは彼自身である。
「まぁ何て事・・・っ、彼の子がそんな事するなんて、御迷惑御掛けしましたっ!怪我は・・・無いですか?」
「噫別に威嚇された丈だから何ともないよ。大変だね先生も。」
「抑先生も謝らなくて良いよ!誰も悪くないから、ね?」
表情に出ないので分かり難いが、仕草からして677先生が酷く困っているのは想像に難くなかった。
先生でもあり、保護者の様に思っているのかも知れない。
「其にしても誰かを襲うだなんて、そんな攻撃的な子じゃあなかったのに・・・。」
「677先生は034ちゃんの事良く知ってるの?出来れば一寸教えて欲しいんだけど。」
―然うだね。情報が無いと、僕達如何して良いか分からないよ。―
「然うですね・・・知っていると言っても一生徒の一人として、ですが、034さんは少し大人し目の、絵を描くのが上手な子でしたわ。友人も沢山いて、素行も良かったから先生からも好かれて。・・・此から楽しい事、一杯あった筈なのに。」
聞いた限りだと、普通の子、と言う事だろうか。先生の印象にも其処迄残らない、極普通の生徒・・・。
「其じゃあ如何して自殺しちゃう訳さ。今の話じゃあ理由が見えないけど?」
「じ、自殺⁉ど、何処で聞いたんですかそんな話‼」
突然ガバリと677先生が飃に襲い掛からん許りに詰め寄った。
可也の衝撃だったらしく、尾が毛羽立って息が荒かった。
「何処も何も先の生徒が言ったんだけど?」
飃の言葉に驚き、目をぱちくりさせつつも677先生は緩り教壇へ戻って行った。
大きく息を付き、何度か頭を振っている。
「だ、だ大丈夫ですか?気を確かに。」
気遣いつつもベールの顔は真っ青である。未だ如何しても彼は先生達の姿に慣れない様だ。
677先生もそんな彼の様子に気付いて慌てて咳払いをした。
「御恥ずかしい姿を、済みません。余りにも吃驚してしまったので。」
「先の、凄い悪霊っぽくて僕は好きだけどね。」
「うぅ、忘れてくださいませ。」
「677先生、そんな驚くって、若しかして本当は違ったり・・・するのかな?」
自殺自体はショッキングだが、そんな取り乱す程の事ではなかった。
悲しい事だけれども、其はもう終わった事なのだ。
「い、いえ御免なさい。実は私も知らなかったのです。てっきり私みたいに不幸な事故かと・・・まさか、自ら亡くなっていたなんて。」
ダメージが大きかった様で可也落ち込んでしまっている。
034が亡くなってから具体的に何日経ったか知らないけれど、未だ情報は届いていなかったのだろうか。
「先生知らなかったんだ。ずっと学校に居たのに?彼の子の言い方は此処で死んだっぽかったのに。」
「事件は霄起こっていたんです。私は普段生徒が帰ると眠っているんですよ。生徒達を見るのが楽しみなので、無人の校舎は余り出歩かないのです。だからまさかそんな事が起こっていたなんて、」
「そっか、然うだよね。今回はドレミ達が来るから待っていてくれたんだ。」
「えぇ、御茶も出せずに申し訳ありませんが、せめて出迎えようと思いまして。」
飃は何か疑っているみたいだけど、自分は先生、信じられるな。
誰も居ない校舎にずっと居たって仕方ないもんね。
「其じゃあ先生は、034ちゃんが自殺する様な子だとは思わなかったんだね。」
「えぇ全く。学校では楽しそうでしたし、苛めとかも無かったんです。あったとしたら・・・最近ポータブルフォンを買ったのか良く見ていましたね。余り学校に持って来てはいけないんですが。」
「えっと、ポータブルフォンって何なの?」
「噫然うですね、私達には一寸疎い物かも知れません。小型の電話ですよ。最近特に流行っているみたいで、メールも出来るし、写真も撮れて、インターネット?でしたっけ、何だか然う言う物が見られる便利な物なんですよ。」
若しかして前ロードが持っていたカメラみたいな物かな?ドレミが居た次元と可也文明が違うみたい・・・。
「成程、セルフォンみたいな物かな。小型の携帯電話機の。」
「あ、飃君の所はあったの?」
「僕は持っていなかったけど都会では流行ってたよ。今の特徴を聞いた限り一緒じゃないかな。」
「そんな物が・・・世界って広いんですね。」
異文化交流についつい花を咲かせてしまう。
けれども677先生はニコニコした儘皆の話を聞いていた。
「何だか本当の授業みたいで楽しいわね。」
「あ、あの御免なさい話逸らしちゃって。えっと034ちゃんは其のポータブルフォンを持っていたって所だよね。」
「フフ、総合の授業みたいで良いですよ。話し乍ら進めましょうか。とは言っても私も其の程度でしか034さんを知らないので何とも言えませんが。」
―うーん、此の様子だと其の子の死因が影になった事と関係があるかもね。―
「あの・・・出来れば其の死因も、教えて貰えますか?私、本当に知らなかった物で、」
「包丁で刺したっぽかったよ。中々痛そうなの選ぶよね。準備は楽だけどさ。」
「そんな恐ろしい物でっ!あぁ・・・可哀相に、一体何を思い詰めていたのか・・・。」
「でも良く考えたら包丁を何で態々学校に持って来たんですかね・・・別に学校には無いと思いますけど。」
「家庭科室じゃないの?其処なら一本二本あるでしょ。」
「あ、でも此の学校確かに家庭科室無いんですよ。寮にしかない筈なのに・・・学校で終わらせるなんて。」
677先生はすっかり悄気てしまっていた。
亡くなった生徒を考えると無理もない。
必要以上に自分を責めないと良いけれども。
「ふーん。じゃあ態々そんな面倒な方法にしたなら何かメッセージ性とかありそうだけど。」
「あ、あの、矢っ張り少し丈其の話題から外れま・・・うっ!」
「え、ちょ、一寸ベール君又顔色真っ青だよ無理しちゃ駄目だよ。」
屹度ベールは可也感受性が高いと言うか、考え過ぎてしまうのだろう。
斯う言う時ダイヤは如何してたっけ・・・結構酷い事言っていたけど、若しかして彼で考えを逸らせていたのかな。
「だ、だだ大丈夫です、ちょ、一寸僕御手洗いに行って来ます・・・あ、皆さんは話しててください。い、行って来ますっ、」
慌てて立ち上がるとベールはふらふらと教室を出てしまった・・・。
一柱にするのは恐いけど、一柱になりたかったのだろう。そっとしてあげよう。
「ベールさんは・・・大丈夫ですか?す、済みません私が色々言ったので考え込み過ぎたのかも知れませんわ。」
「彼位良いでしょ。必要な情報だし。其に先生、霄は有限なんだからもっと有意義な話しないと。こんなペースじゃあ本当に授業になっちゃうよ。」
「そ、然うね。えっとじゃあ・・・何から聞きたいのかしら飃さん。」
「然うだね、先ずは・・・、」
ちらと丈ドレミは飃を見遣った。
仕事をちゃんと真っ向から見てくれている彼の目は、真剣其の物で。
何とも言えない儘、ドレミはそっと静かに耳を立てていたローズの背を撫でるのだった。
・・・・・
「お、御待たせしましたー・・・。」
トボトボと廊下を一柱歩き、やっとベールは教室へ戻って来た。
半刻も抜けてしまったが、皆怒っていないだろうか。
いや怒っているに決まっている。ダイヤだったら半日は吊るし上げの刑に処されてしまう。
まさかこんなに遅くなるとは思っていなかったのだ。
其らしい部屋も見付からないし、見付けても異種族と言う丈あって全く別物のトイレだったのだ。
正しい使い方も分からず彼是していると何か作動したのか頭から水をぶっ掛けられたりして散々だ。
全身びしょ濡れになった所為で酔いこそ治ったものの、今度は風邪を引きそうである・・・。
そっと教室の扉を開ける。
せめて、誰か温かく出迎えてくれれば・・・。
そんな淡い希望は即断ち切られた。静寂丈が彼を迎え入れたのである。
「え、あれ、皆は・・・?」
教室を間違えたのだろうか。でも屋上への階段も近いし、此処の筈。
も、若しかして僕を驚かそうと隠れているのかも。
諦め悪く教卓の中や掃除用具入れの中を見てみたが、勿論誰も居なかった。
抑先生のサイズからして隠れるのは無理がある。
一柱意味もなく探し回る姿が何だか滑稽に思えて来た・・・。
噫・・・僕が遅過ぎたから皆先に何処か行っちゃったんだ、僕は要らない子だったんだ。
当然か、あんな足を引っ張っちゃあ邪魔になってしまう。迷惑がられたんだ。
矢っ張り僕にはダイヤしかいないんだ。其のダイヤにこんな風に捨てられたら其の儘僕みたいな存在は消えてしまうだろう。
・・・もう店、帰ろうかな。僕に此の仕事は重過ぎたんだ。
「あっ!良かったベール君こんな所に居た!」
名前を呼ばれて振り返ると、手を振るドレミが居た。
今迄廊下に居た様で、ガラガラと扉を開けて小走りで入って来る。
「トイレに行った筈なのに見付からなくて焦ったよ。入れ違いだったみたいだね。」
「ド、ドド、ドレミさぁん・・・。」
一気に淋しさが募って思わず半べそを掻き乍らドレミの足元で跪いた。
良かった、見捨てられていなくて。
「えぇっ⁉ちょ、一寸ベール君顔上げて!御免ね一柱にしちゃって。」
「良いんです、此が落ち付くので、有難う御座います・・・。」
「ドレミは全く落ち着かないから起きて!ね!」
「うぅ・・・ドレミさんは何て優しい神なんだ。あ、有難う御座います。」
何度も何度も顔を下げ乍らやっとベールは立ってくれた。
・・・一体ダイヤにどんな教育をされたんだろう。彼がもう少し顔を上げて生きられる様な世界になれば良いけれど。
「ドレミ達ね、先677先生に今日泊まる部屋を見せて貰っていたの。一応話も纏まったからベール君を呼びに行こうとしたんだけど、入れ違っちゃったんだね。」
「迷惑御掛けしました・・・。」
「迷惑なんかじゃないよ!屹度ベール君は思い遣りが凄いんだよ。だから034ちゃんの事を想って体調崩しちゃった丈なんだよ。」
「そ、然う、なんですか・・・?」
「うん、然うだよ。元気出してベール君。」
「わ、分かりました!有難う御座いますドレミさん!」
勢い込んでベールが立ってくれた。
一寸目がキラキラしている気がする。何はともあれ、元気になってくれたのなら良かった。
「じゃ一緒に部屋迄行こっか。」
ドレミに連れられて少し丈足取り軽くベールは教室を出たのだった。
・・・・・
「あ、やっと見付かったんだ。」
「うん何だか入れ違ってたみたいで。」
ある部屋に入ると既に飃達が寛いでいた。
先の教室と階層も位置も全く違う部屋だ。
草を編んだ様な敷物がされ、柱数分の布団が敷かれている。
其の上で飃は胡坐を掻き、ローズは腹這いになっていた。
先生は・・・如何やら居ない様だ。
「テレパシー使ったのに入れ違った訳?」
「あ、もう、然うだったね。すっかり忘れちゃってたよ・・・。」
「ふーん、御姉さん結構ドジだったりするの?先輩なんだからしっかりしてよ。」
「テレパシーに慣れてない丈だもん。仕事はちゃんと出来るよ!」
胸を反らすドレミを見遣って飃は思わず吹き出してしまった。
「な、何か凄い持て成されたんだね・・・。」
―今は殆ど使っていない宿直室って所なんだって。食べ物も先生が持って来てくれたよ。・・・如何入手したのかは敢えて聞かなかったけどね。―
ローズが鼻先を向けると丼等が乗っている盆が置いてあった。
「然うなんだ。何か申し訳ないけど・・・じゃあ先生は?」
「677先生、一寸疲れてるっぽかったから早目に帰って貰ったの。今頃学校の何処かで休んでいると思うよ。」
「だから先生の代わりに僕達が君に説明しようって訳。だからさっさと座ってよ。」
「え、あ、お、御願いします。」
いそいそとベールが空いている蒲団の上に座るとちらと飃はドレミを見遣った。
「じゃあ先の677先生の話、簡単にするね。」
静まり返る校舎の中で一同の声丈が響いて行く。
先生の話は大まかに現状の説明だった。
先ずは此の次元を知らないと話にならないからだ。
自分達の居る学校は>W<(デセル)学園と言うらしい。
全寮制で、全ての生徒は隣接する寮で寝泊まりをしているのだ。
生徒の年齢層は人間で言う所の中高生位。後は大体学校としての機能は想像通りとの事だった。
生徒は全員で千人程。割と有名校らしく、遠方から来ている生徒も多いそうだ。
そしてそんな中で起こった生徒の自殺。
本来なら可也ニュースになりそうな物だが、情報規制が厳重にされている様だ。
起きたのは五日前だが、若しかしたら生徒の中でも事件を知らない子がいるかも知れない、其位隠されてしまったのだ。
元々034は身寄りもおらず、校内でも控え目な生徒だった為、余り表沙汰にはならなかったのだ。
只情報源である677先生は校舎内でしか活動出来ないらしく、寮や先生達が別館で行う会議等は見られず、如何言う扱いに事件がなったのか迄は分からないのだろう。
そしてつい最近、校舎内で何やら異様な気配がしていたのだと言う。其の正体が371の影に憑いた034であり、手に負えないと思った677先生は次元龍屋に依頼をしたのだ。
因みにあんな恐ろし気な電話になったのは電波状態が良くなかったかららしい・・・恐がらせたくは無かったのだろうが、抑幽霊からの電話なので何とも言えなかった。
「手に負えないって・・・先生一体彼の影に何したんだ・・・。」
「あ、特に何かしたって訳じゃないんだよ、677先生も一寸恐かったみたいで、遠巻きに見ていた丈だって。」
「同じ霊なのに一体何を恐がるんだか。」
同じ霊でも自分は滅茶苦茶驚いたので何とも言えないベールだった。
「で、でも同じ人でも恐い人とかいるから・・・そんな具合じゃあないのかな・・・何て。」
「ふーん、ま、其も然うか。でも生徒にビビっちゃう先生ねぇ。」
「自殺しちゃったのに現世に残っちゃってるし、先生も其処が気になって恐かったんじゃないかな。」
目的も分からないんだ。只友達を助ける丈の霊なんて、一寸気になるだろう。
でも本当に何がしたいんだろう、只一緒に居たい丈なのかな。
「霊が居るのって、矢っ張何か理由があるんだって。何か悔やんでいるとか、然う言うの。」
「然う・・・だね。後悔とか悔いとか・・・未練とか。」
「あ、そっか。ベール君もなんだよね。じゃあ友達を護れなかった事を悔いてるって事?」
「護る・・・護る、うーん・・・。」
何か引っ掛かるみたいでベールは小さく唸って考え込んでしまった。
護るって言うのは・・・少し霊と違う様な。
昔から371が不幸体質で、其をずっと034が助けていた、とかなら未だ分かる。
其でも彼女が死に掛ける程の大事故に遭うのは此処最近と言っていた。
・・・034が事件を起こしているとか?いや、じゃあ助ける理由が分からない。
反対に昔371が助けてくれたから恩返しとかも考えたけど、死んで迄するのかな・・・。
自殺したのなら少なくとも前向きな話じゃあない。
何らかの嫌な事があって、現実を捨てたんだ。
其の嫌だった事が表に出て来ないのも気になる。
次元とかに因るんだろうけれども、霊になるのは中々精神力を使う物だ。
本当にずっと彼女の事を懐っていないと、消えてしまう様な存在だ。
最後の最後、本当に死ぬ直前に悍く懐っていないと。
・・・自分の経験からしたら、矢っ張り友達を護りたいと言う理由は少し弱い気がする・・・。
「何だか・・・矢っ張り一寸おかしい気が、何か、足りない気がする・・・。」
「其は仲間としての勘な訳?」
「動機が弱いと言うか、少なくとも僕はそんな願いじゃあ霊になって迄出て来れないかなって・・・思って。」
―うーん、護る以外の目的があるとか?―
「然うなら分かるけど、今考えても分からないし、明日371さんにちゃんと聞いた方が良い気がするね。その・・・彼女の事を。」
「流石だねベール君!じゃあ然うしよう、もっと034ちゃんの事が分かれば見えて来るかもね。」
ドレミに笑顔を向けられてベールは照れて俯いてしまった。
褒められるだなんて久しく無かった。何て反応したら良いのか分からないのだ。
―死んじゃった友達の事聞くのは申し訳ないけど、此ばっかりは仕方ないね。―
「う、そ、然う、だね。・・・考えた丈で一寸、」
「べ、ベール君しっかり休もうね!あ、然うだ御飯食べよう!然うしたら元気になるよ、屹度、」
又トイレに籠もられるのは可哀相だ。屹度余計な事迄考えてしまうんだろう、少し気を逸らせないと。
盆の上には柱数分の丼が置かれており、中は牛丼の様だ。
蓋を開けると何とも食欲をそそる良い匂がして来た。一気に御中が空いてしまう。
出来立てみたいに温かいし、有難いけれども一体677先生は此を如何やって・・・いや、其は考えるのは止めるんだ。
若しかしたら霊御用達の店があるのかも知れないし・・・うん。
皆に丼を配ると誰彼ともなく食前の挨拶をして食べ始めた。
―うんっ!凄く美味しいね。僕初めて食べたよ、こんな料理。―
丼なので食べ易い事もあり、すっかりローズは頭を突っ込んでがっつき始めた。
「・・・あの、皆さん堂々と居ますけど、此処使わないって言っても大丈夫・・・なのかな、警備とか。」
「余り此処の住人って危機感無いらしいよ。今は巡回もしてないってさ。事件があったから寮の方は見回りとかしてるらしいけど。」
「うん其にね、矢っ張りドレミ達他の人からは見えないみたいなの。妖怪として依頼されたから・・・かは分からないけど、677先生と、371ちゃん位しか見えないみたいだから大丈夫だよ。」
「凄く都合が良いけど、そんな物なのかな。」
「干渉力の影響とか・・・かも。」
詳しい事はガルダとかに聞かないと分からないけど、望まれたからそうなるって神様っぽいよね。
「あの・・・何だか僕が休んでる間に色々、その済みません。」
「もう気にし過ぎだよベール君!ほら、明日も頑張ろうね。」
彼が斯うもネガティブ体質なのは不幸の所為なのかダイヤの所為なのだろうか。
真面目で良い子だから何時か其の努力が報われて欲しい。
「ふーん、御姉さんって幽霊には優しいよね。」
又飃のからかいだろうか。此処は振り回されて許りじゃない事をはっきり見せ付けた方が良いだろうか。
「じゃあ飃君にはもっと優しくしたら良いのかな?」
丼に顔を突っ込んでいたローズが吃驚したのか顔を上げてドレミを見遣った。
飃も一瞬目を丸くしたが、直ぐに何時ものニヤニヤ顔に戻ってしまう。
「へぇ、優しくしてくれるんだ。じゃあ明日から楽しみだね。」
「うん覚悟しててね!」
ビッとドレミが指差すと堪らなくなってか飃は思わず吹き出してしまった。
内心ドレミは勝利のガッツポーズを決める。
「ハイハイ僕の負けですよ。っと、じゃあ一寸其の辺見て来るから先輩達は休んでよ。」
「え?今から行っちゃうの?」
もうすっかり霄である。休める内は休んだ方が良いけど。
「だって僕霄しか起きれないし、一寸散歩する丈だよ。」
「あ、そっか。じゃあ気を付けてね。」
「ゆ、幽霊とかに気を付けてくださいっ。」
「あー寧ろ会いたい位だけど、じゃ行って来るね。」
ひらひらと手を振ると飃はさっさと部屋を出てしまった。
彼にとって霄が活動時間なら出歩きたいのも無理も無いだろう。
でも躯は一つなんだし、大丈夫かな、晁体調を崩さないと良いけど。
霄の校舎・・・うーん、見たい様な見たくない様な。
だってもう677先生や034に会っているのだから確実に他にも居るじゃないか。
多分此方を襲う様な野蛮なのは流石に居ないと思うけど。
居たら飃が嬉々として襲ってしまう。幾ら姿が見えないからって校舎を壊したら絶対先生に怒られてしまう。
―・・・何ともないと良いね。―
「もうロー君不安になっちゃうでしょ。」
大丈夫だよ屹度、其位彼も弁えてるよ。
「ま、考えても仕方ないね。ね、ベール君、折角一緒に仕事に来たんだし、ドレミと御話してくれないかな?中々一緒になる事なかったし。」
「ぼ、僕なんかと話してくれる・・・なんて、」
「そ、そんな卑屈にならないでね。普通に、普通に色んな話しようよ!」
下手したら涕き崩れそうな程弱々しい姿だった。
矢っ張りほっとけない・・・せめて店に居る時や、皆と一緒の時はもっとリラックスさせないと。
何だかダイヤに依存している所があるし、少しでも負担は減らしてあげたいのだ。
彼自身気付いていない丈で良い所も一杯あるし、少しずつ其を見付けて行って欲しい。
取り敢えずは他愛のない話でもしようかな、一寸でも打ち解ける様に。
「じゃあベール君、好きな食べ物って何?」
「えーと・・・最期に食べた塔の中に生えていた苔が思ったより瑞々しくて一寸塩味がして、凄く美味しかったな。」
目を瞑って馳せるのはそんな灰色の懐い出だった。
「え、こ・・・苔?」
―其、本当に美味しいの?―
「凄く美味しかったよ!斯う・・・角の所を刮いで取ったら一口文位取れて・・・。」
小さく溜息を付いているが、決してそんな良い物では無いだろう。
絶対今食べた牛丼の方が美味しいよ、苔って付け合わせにしかならないんじゃないだろうか。
恐らく空腹がスパイスになっていたんだろう、何を食べても最高に美味しい状態だったんだ。
態々彼が壁で実演してくれたが、其を活かす時も、食す時も無いと思う。
「ね、ねぇ其よりほら、此方の方が美味しくはなかったの?」
苔から話題が広がる気もしなかったので適当に振ってみる事にする。
ローズも大いに同意するらしく、激しく首を上下に振っていた。
「あ、此も初めて食べたけど、美味しかったよ、うん。只霊になっちゃったからか抑余御中が空かないから・・・。」
―じゃあ今苔食べても屹度美味しくはないね。―
「うーん、もう二度と食べられないと思うと、矢っ張り彼が一番か
な・・・。」
「そ、然うなんだ。まぁ好みは色々あって良いと思うよ。」
彼に染み付いた不幸は中々根深い様だ。
彼が苔について語り切る前に話変えなきゃ。
ドレミの努力も空しく、ベールは過去類を見ない位嬉々として苔について語り出すのだった・・・。
・・・・・
翌日、晁陽と共に一同は起き上がった。
清々しい晁だ。未だ学校が始まってないからか静かな物である。
「皆さん御早う御座います。」
「あ、飃君御早う、晁早いけど躯は大丈夫なの?」
霄の飃君の散歩は随分遅かった筈。
自分は先に寝ちゃったから飃の寝ている所を見ていないのだ。
晁の飃は随分晴れやかで、晁の日差しに負けていない優しい笑顔を浮かべていた。
「はは、心配してくれて有難う御座います。確かに一寸躯が重いですが大した事無いですよ。」
「無理しなくても大丈夫だよ。直ぐ仕事って訳じゃないんだし、もう少し寝てても良いよ?」
ローズなんて何時の間にか自分の布団に入って来て甘える様に丸まって熟睡している。
371と話すにしたって時間が取れるのは又放課後だろう。焦る事はない。
「其でも僕は僕の時間を大切にしたいので起きていますよ。然うしたら彼も少しおいたを止めるでしょうし。」
彼は小さく息を付いて苦笑を漏らした。何とも苦労の尽きない彼である。
「も、若しかして飃君昨日の霄何かしたの?」
「何かをした訳じゃあないですが、彼は一柱で解決しようとする癖があるので。昔の事でも引き摺っているんでしょうが、良い事ではないので。」
「然うだね。其は頼ってくれないと。教えてくれて有難ね飃君。」
「いえ僕こそ、いざと言う時は止められないので宜しく御願いします。」
本当に昼の飃は只々好青年と言うか、良い子過ぎるね。
助かるけど、霄の彼の事許り気に掛けて自分自身が疎かにならないか心配だ。
「ね、折角だし飃君何かしたい事ない?見てみたい所とか、無いかな。」
「有難う御座いますドレミさん。然うですね・・・僕余り学校と言う所に馴染みが無いので一通り見てみたいですね。」
「そ、そんなので良いの?まぁドレミも見てみたいけど。」
何と言うか欲の無い神だ。
常に浮かべている笑顔も何処か大人びていて消えてしまいそうである。
「良いですよ、僕は其で。希望を聞いて貰えた丈で嬉しいです。今日も一日宜しく御願いしますね。」
「うん、一緒に頑張ろうね。」
もっと・・・自由になっても良いのに。
セレ達から聞いたけれども、晁の飃は可也の高齢の神で、鏡界・・・だっけ?そんな変な所にずっと居た所為で自我とかも弱いそうだ。
此からもっと色んな物を見て、一寸我儘な位になってくれたら良いな。然うなれる様私も精一杯手伝いたい。
―んん・・・御早、ドレミ。―
「ロー君御早う。一緒に寝るのは良いけど一寸暑苦しいよ。」
―あ、御免ね。次は冰の鎧で寝るから。―
一つ伸びをして尾を振り乍らローズが頭を摺り寄せて来た。
セレなら一撃で終わってしまう位の破壊力を秘めている挨拶だ。
「んー・・・其だと冷た過ぎるから切り替え乍らの方が良いかな。」
―其だと僕眠れないよ。―
「あ゛ぁ゛~ダイヤァ、もう食べられ・・・うぇ、」
突然上がった声に一同が振り返るとベールは未だ眠っていた。
可也はっきりとした寝言である。彼は夢の中でも彼女に苦しめられている様だ。
苦しそうに手を伸ばしているが何も掴めそうもない。
起こす可きか悩むが少し夢の内容も気になる所だ。
全員思う事が一致した様でついじっと見守ってしまう。
そんな嬉しくもない期待に応える様に彼の寝言は続く。
「も、もう泥団子は一寸・・・あぁでもダイヤ僕の為に・・・わぁ、砂の御握りも・・・あ、有難う。」
土食べさせられてる・・・。
一気に同情の視線が注がれるも彼は中々起きない。
流石に此は起こした方が良いだろうか。
ダイヤが恋しくて夢を見ているのかも知れないが、此の扱いに喜びはしないだろう。
起こそうかとそろそろドレミが近付いた時だった。
「皆さーん、御早う御座います!」
「ッギャァアアァアアァアア‼」
勢い良く扉を開けて677先生がやって来た。
彼女の元気な声に思わずベールは飛び起きてしまう。
何と言うか・・・御免ね、そんな驚かせようとは思ってなかったんだよ。
ベールは現状を理解出来ていない様で何度も忙しく辺りを見渡していた。
「あ、あら御免なさい御休みの所を起こしてしまったかしら。」
「別に良いんじゃないかな。何か魘されちゃってた丈だから。」
「え、あ、え・・・?こ、此処は、」
―学校だよ、仕事中。・・・大丈夫?―
大分混乱している様だったが、大きく溜息を付いて何とか彼は平常を取り戻せた様だ。
「あ、じゃ、じゃあ夢・・・か?ふ、ふぅ良かった・・・。」
―ねぇ何であんな悲鳴が出たの、どんな夢か教えてよ。―
「えっと・・・ダイヤから“そんなに土が好きなら生き埋めにしてあげる”ってトラックに乗って来て・・・。」
懐い出して来たのかぶるぶると彼は震え始めた。可也の悪夢だったのだろう。
彼の場合特に其が起こり得ると思っていたから猶の事だ。
「霊なのに生き埋めにされたんですか・・・。」
―中も外も土って気分は最悪だね。―
「で、でもダイヤが最後迄手解きしてくれるなら・・・。」
如何してか彼は一寸穏やかな表情を浮かべていた。
・・・駄目だ、もう手遅れの様だ。
「あ、あのー・・・。」
「あっ!677先生御免なさい!御早う御座います!」
「フフ、えぇドレミさん御早う御座います。」
入って来た677先生の手には又盆が置かれ、朝餉か何個かの御握りが乗っていた。
「き、昨日は急に居なくなって済みませんでした。部屋も、有難う御座います。」
少し頭が回って来た様でペコペコと何度もベールは頭を下げて慌てて布団を畳み始めた。
「いえ、御元気そうで良かったですわ。此方朝御飯です。どうぞ御食べになってくださいね。」
そっと677先生が盆を中央に置くと深々と飃が頭を下げた。
「宿丈でなく御料理迄、本当に有難う御座います。」
「あら、如何かしたのかしら飃さん、そんな畏まらなくても。」
「説明が遅れて済みません。実は僕は晁と霄で神格が入れ替わってしまうんですよ。記憶は受け継がれているので御仕事に関しては御心配なく。」
正確には魂が入れ替わっているのだが、神格と言った方が伝わり易いと彼は判断した様だ。
其でも意味が変わって来るので事情を知っている身としては複雑な気持だ。
本当は晁の飃は別の名前で呼んであげたいんだけど。
変わらず晴れやかな笑みを浮かべている彼を見ていると、何処か切なく感じてしまうドレミだった。
「然うでしたの、其は何とも大変ですわね。学校に通っていた間はじゃあ貴方だったのかしら。」
「僕は最近出て来た神格なので、基本ずっと御会いした彼の方ですよ。学生時代の時も然うだったかと。」
終始ニコニコな飃である。
営業スマイルが張り付いている様でもあるが、矢っ張り其の笑顔は何処か少し冥い気がした。
「成程ね、フフ、皆さんと授業したら迚も楽しそうね。」
盆の御握りを手渡し乍らはたと677先生は手を止めた。
「因みに皆さん今から如何されるのです?今日は六限の日なので学校が終わるのは又夕方頃ですが。」
「うん、だから其迄若し良かったら学校を見て回ろうかと思うの。ドレミ、良く学校って知らないし、何か分かるかなって。」
途端677先生の目が輝いた。大きい分迚も分かり易く語ってくれる目だ。
「あら、其でしたら是非、是非私に案内を任せて下さらないかしら!誰よりも学校について詳しいと自負していますわ。」
「677先生さえ良ければ御願いしようかな、ね、皆。」
―うん、僕も良いと思うよ。―
「僕も、行った事無い所だし。」
ベールは中々御握りに口を付けなかった。・・・まぁ先土の御握り食べさせられていたもんね。
「フフッ、嬉しいわ。まさか御客さんを我が校に招けるだなんて。では後程伺いますので其迄御緩りしてて下さいね。」
首を伸ばして頭を上げると、うきうきと明らかに嬉しそうな色も隠さず677先生は部屋を出て行った。
―此で、今日は退屈しなさそうだね。―
「もうロー君、ドレミ達仕事で来てるんだよ。寝起きだからってもっとしゃっきりしないと。」
―言ってドレミも一寸楽しそうだよ。―
尾をパタパタ振ってローズは口の中で小さく笑った。
一寸生意気だ。文句でも言ってやろうと思ったが、彼はいそいそと出された御握りを頬張り始めるのだった。
「でも僕も楽しみですよ。僕自身も余り学校と言うのは馴染みが無いので。」
「じゃあ学校に行った事があるのって霄の飃君丈なんだね。」
分からない事だらけなので今回の案内は有り難い。
別に学校が分かったからって371や034の事が分かる訳じゃあないけど、何かのヒント位にはなるかも知れない。
先生の彼の様子だと多分直ぐ来ちゃうし、私も御飯食べないと。
今からの予定に少し期待しつつ、ドレミも又御握りを頬張るのだった。
・・・・・
再度現れた677先生に驚いて、やっと食べ始めたと言うのにベールが御握りを落としてしまうと言う不幸に見舞われつつも、一同は学校案内に身を乗り出した。
677先生も随分嬉しそうである。誰にも見られない分、自由に学校を見て回れるのだ。
学校では既に一限目が始まっている。
廊下は実に静かな物だ。
先迄生徒達が歩き回っていて、本当に自分達は彼等に見えないのだろうかと少し不安だったけれども。
斯うして677先生を先頭に連れ立って歩いていても何も言われない・・・本当に見えていないんだ。因みに声も聞こえていないらしい。
371みたいに服か布を被った例の生物で溢れていたが、其の光景は自分達からすると少し異様と言うか、非日常的な光景だったのだ。
ベールは未だ少し恐がっている様だったが、其の気持も分かる。
当然の事乍ら677先生は何でもないかの様に生徒達の間を割って入って行ったけれども、自分達も其を真似する気にはなれなかった。
抑妖怪扱いされているとは言え、物に触れられるのだ。透ける訳ではない。
若し生徒に触れてしまうと驚かれるか、下手したら見付かってしまうだろう。
騒ぎは起こしたくないので、其処は特に気を付けないと。
まぁ純粋に此の透明人間みたいな感覚に慣れていないのもある。
だって実際に成れるなんて、普通は思わないんじゃないだろうか。
こんな都合が良い位に見えたり見えなかったりするなんて。
悩むドレミを尻目に677先生は御構い無しに生徒達を擦り抜けて行ってしまう。
正真正銘の霊だ、若しかしたら霊になってからの方が長いのかも知れない。
自分達が普段気付いていない丈であんな風に霊が出たり入ったりしていたりして。
「ん・・・おや、見慣れない部屋ですが此方は?」
飃がある部屋の前で立ち止まった。
中は他の教室と違ってパソコンが所狭しと並んでいる。
生徒一人一人に一台ずつ宛がわれている様だ。
「あぁ、此処はパソコンルームですよ。丁度授業中ですし、少し入ってみましょうか。」
あっさりと677先生は扉を擦り抜けて入って行ったが、自分達が扉を開ける訳には行かない。
少し騒がしいとは言え、ひとりでに扉が開けば流石に気付くだろう。
―あ、此方の窓空いてるよ。此処からなら入れると思うよ。―
ヒョイとジャンプして軽々とローズは教室の中へと入ってしまう。
まぁ確かに入れなくはない。変な感じだけれど、折角だし一寸入ってみよう。
「何だか済みません、僕が面倒な事聞いてしまって。」
「ドレミも気になるし、窓から入るなんて訳ないよ。気にしなくて良いよ飃君。」
ドレミも窓から入って行ったので皆も其に倣った。
先に入っていた677先生は一寸丈不思議そうに一同の行動を見守っていた。
「皆さん中々その・・・個性的な入り方をされるのですね。」
「ドレミ達677先生みたいに擦り抜けられないから。」
「あら然うでしたの、済みません配慮が足りなくて。」
―でもそんな風に何処でも入れたら便利だね。―
「其でも私は学校を離れる事は出来ないので何とも言えませんが。」
034の事を懐い出したのか677先生は一寸丈視線を下げた。
若しかしたら寮では予感があったのかも知れない。其に何一つ気付けなかったのだから。
「此処は如何言った事を勉強する部屋なんですか?」
全員何とか教室に入り切り、邪魔にならない様成る可く後ろに固まった。
生徒達はパソコンの画面を指でタッチしたり、何やら画面に話し掛けている様だった。
「パソコンルームなので、文字通りパソコンの使い方について学ぶ部屋ですわ。今は何処も彼処も情報社会ですから、此位扱えないといけないのです。」
「成程、何だか一寸難しそうですね・・・。」
余り馴染みの無い飃達には何をしているのかさっぱりだ。
次々切り替わる画面を見ると小難しそうに見える。
「フフ、今は寧ろ生徒の方が上手に使えるかと思いますよ。ポータブルフォンもある事ですし、子供達の適応力は素晴しいですから。」
「ポータブルフォン・・・確か昨日も仰ってましたね。何だか・・・文明の差を感じますね。」
―鎮魂の卒塔婆も似た物あったけどね。―
「噫彼の塔ですか、其じゃあ此は中々優れた文明なんですね。」
興味深そうに飃は何度も頷いていた。
「実は私も少し此方は苦手な授業ですけれども、皆楽しそうですわね。」
「677先生にも苦手な授業あるんだね。」
「えぇ勿論ですわ。特にパソコンと言いますか、インターネット、其方の事件が多いですから如何しても・・・。」
「インターネットって・・・何の事なんです?」
自分達は此の手の文明に疎いので中々話が進めない。677先生には説明役を押し付けて申し訳ない。
「んん・・・一から説明は難しいですわね。色んな情報が載っている新聞みたいな物と言いましょうか。」
「皆さん新聞を読むなんて良い子許りですね。」
「えぇ本当に。只新聞と言っても恐い事や危険な事も色々自由に載っているので。然う言うのを見るのは危ないんですよ。」
「ふーん、あんな板の中にそんな物が入ってるなんて。」
―まるで魔術だね。―
分かった様な分からない様な。
何かと便利な箱ってイメージで良いのかな、如何しても機械類は馴染みが無いので何とも言えない。
斯う言うのに詳しいのって誰なんだろう、ロードかなぁ。
「だからそんな危険な目に遭わない様に斯うして授業で教えているんですが、ほら早速あんな物を・・・。」
677先生は困った様に小さく溜息を付いた。
そしてそっとある生徒のパソコンを指差すが、此処からでは色んな色に光る画面が見える丈だ。
好奇心が勝ってそろそろと生徒に近付く。触れない様横からパソコンの画面を見てみた。
「・・・>W<学園裏サイト、ですか。」
見た事の無い文字だけれども意味は分かる。
少し冥めの画面だが、此が危ないと言うのは如何言う事だろう。
「学園についての事、調べてるみたいだけど此の何が危ないの?」
「・・・此のページは、生徒達が独自で作った物なんです。私も存在を知ったのは霊になってからで・・・此処は主に普段学校で言えない事、大半が誰かの悪口等が書かれているんです。」
「う・・・其は何とも、見ていて気持の良い物じゃないですね。」
「態々悪口を見ちゃうの?」
「えぇ、其が面白いと思う子も、残念乍ら居るのです。ほら、此の位の年頃は情報が好きなんです。だから悪口すらも探して見付けてしまう。」
677先生は何とか生徒が其以上見るのを止めさせたかった様だが、何も出来そうになかった。
斯う言う時、霊である身が煩わしいのだろう。見ている丈だなんて。
「でもそんな悪口って誰が書くんですか?」
「・・・同じ生徒でしょう。此処に書いて、其を見た他の生徒が面白く思って便乗する、然うやって成り立っているんです。」
表情は読み取れなくても、677先生の付く溜息が全てを物語っていた。
如何やら楽しい事丈が学校じゃあない様だ。
私達の声なんて知る由もない生徒は其の儘静かにインターネットを見続けるのだった。
・・・・・
其の後も677先生に連れられて学校を色々と見学させて貰った。
最初の授業で少し冥い面を見てしまったが、其以外は何とも楽しそうな所だった。
思いっ切り走り回れる体育館に、良い匂の漂う食堂、怪し気な機器が幾つもあった化学室。
学校自体が初めてのドレミ達にとって其等の教室は不思議で変わった部屋許りだった。
「何だか楽しかった!本当に色んな事を勉強するんだね学校って。」
「興味深かったです。此処を卒業する頃には立派な大人になれそうですね。」
「でも大変そうで、僕だったらちゃんと卒業出来るか如何か・・・。」
「フフ、皆さんも良い子許りなので大丈夫ですよ。楽しんで貰えて良かったですわ。」
時刻はもう夕暮れ時、371が来てくれるかも知れないので一同は屋上へ向かっていた。
―教科書だっけ。一寸見たけど面白かったよ。僕は歴史を知りたいな。―
「うーん、店に戻ったらガルダ君達に聞いてみる?若しかしたら持ってるかも知れないよ。」
ローズは歴史が大好きだし、良く勉強するだろう。
「あら、若し良かったら一冊御渡ししますよ。余っている分なのでどうぞ。」
―え、やった!有難う、後で読もう。―
677先生が翻る布の内側から一冊の本を取り出した。
一体如何入っていたのか謎だがローズは嬉しそうに其の本を銜えた。
―ね、ドレミ、此彼処に入れてくれる?ドレミも出来る様になったんでしょ?―
「うーん時空の穴の事だよね、未だ慣れてないけど一寸やってみるね。」
出した指先に集中し、空間に穴の開くイメージを創る。
暫く念じていると徐々に出来て来た。此の宙に浮かぶ奇妙な穴が時空の穴だ。
―うんうん、ドレミも出来る様になったね。じゃあ入れさせて貰うね。―
いそいそとローズが本を仕舞うと穴は消えて行った。
ふぅ、未だ慣れてはいないんだけど、上手く行って良かった。
「ドレミさん凄いですね、時空の穴なんて使えるんですか。」
「う、うん一応ね、練習したから。」
実際使えると便利だし、もっと活用したい所だ。
「然うなんですね、頑張られましたね。僕ももう少し術の練習位はしないといけませんね。」
「僕も・・・宙だからか如何も苦手で、」
「うーん、ベール君はダイちゃんに荷物運びとか頼まれそうだし特に出来る様になった方が良いかもね。」
「確かにっ、ま、又今度教えてください。」
しゅんと小さくなるとベールは何度も頭を下げるのだった。
「さぁもう直ぐ着きますよ。」
緩り677先生が屋上へ続く扉を開ける。
すると先客が其処には居た。
一人夕暉を眺めていたのは371だったのだ。
「あ、やっと来てくれた。妖怪さん達って結構校舎内歩き回ってるんですね。」
昨日より現実を受け入れられた様で振り返った371は微笑して一同へ首を伸ばした。
其も然うだろう、実は授業中、一目様子を見ようと一同は371の教室も訪れていたのである。
ドレミ達に気付いた371は一瞬ギョッとしたが、直ぐに気付いて手を小さく振ってくれたのだ。
一応授業中の彼女の様子は普通然うだった。皆と一緒に授業を受けて、時々近くの席の子と話している姿は見られた。
影、034も一度も出て来る事も無かったのだ。
「御免ね371ちゃん、待たせちゃったかな。其に吃驚させちゃったね。」
「いえ、何だか授業参観みたいで一寸面白かったです。気にしないでください。」
昨日より幾分楽しそうに話す371を少し離れた所で677先生は見守っていた。
如何やら、677先生の事丈は彼女に見えていない様なのだ。
其処が本物の霊との差なのかも知れないが、彼女は微笑した儘階段近くで待機する様だ。
「あの、出来れば今日も一寸御話ししたいと思ったので、如何かな、と。」
―うん良いよ。時間ならあるし。―
「其に僕達の方も聞きたい事、あるし、あの、」
「っ危ないっ‼」
そっと371に近付いていたベールの頭を思い切り飃は床へと叩き付けた。
ゴンッと激しく痛い音がして其の儘ベールは倒れてしまう。そんな彼の頭上を何かが通過した。
「え⁉ちょ飃く、っわっ‼」
近付こうとしたドレミも強風に煽られて蹌踉いてしまう。
「ッキャァアアア⁉」
上旻から悲鳴がしたかと思うと、突然現れた何かに371は捕まってしまっていたのだった。
「・・・しくじったね。彼方を助けた方が良かったか。」
小さく舌打ちをして飃はベールを解放したが、彼は其の儘伸びてしまった様だった。
「な、何て事なの!早く彼の子を助けないとっ!」
「677先生危ないよ!大丈夫、ドレミ達が助けるから、」
扉から出ようとした677先生をそっとドレミは制止した。此以上一般人を巻き込めない。
―うーん、此処は美味しそうな霊が一杯居るなぁ。―
371を掴んだ儘其はテレパシーで独り言ちた。
―・・・如何やら、僕の同族みたいだね。―
ローズが威嚇の声を上げて睨め付けた。
体格差はあるが、怯む訳には行かない。
現れたのは一頭の鳥の様な怪物だった。
全体的に蒼銀色で全長は5mもある。
鮫の様な頭に、371を掴んでいる足の爪は太く鋭くて、攻撃的である。
翼の羽根に当たる所は独特で、幾つもの蛇の様な頭が無数に生えていた。
其等がまるで生きている様に動き、恐ろし気な高く伸びる声を上げ続けている。
羽搏く度に声を上げるのですっかり怯えてしまった371は只々小さくなって固まっていた。
「・・・然うだね、龍さんっぽいし、一寸調べるよ。」
そっとドレミは時空の穴からスカウターを取り出して掛けた。
該当があった様で文字列が並んで行く。
「『魂凱漂えば(タマカゼタダヨエバ)』・・・って言うのかな、一寸変わってるね。えっと・・・え、れ、霊を食べちゃうの⁉」
主食が霊であり、翼にある頭は今迄喰らった霊の残滓らしい・・・。
だから翼の大きく逞しい個体は其丈勁さの証明になるとか。
じゃ、じゃあ彼が371を捕まえたのは、
「一寸急いだ方が良さそうだねぇ。」
さっと枴に跨ると飃は其の儘急発進して魂凱漂えばにぶつかった。
枴の鋭利な先をぶつけ、去り際に引き連れた朏の凱風もぶつける。
―一寸ぉ食事の邪魔しないでよ。―
真面に飃の攻撃を喰らって魂凱漂えばは大きく蹌踉き、つい371を放してしまった。
「良し、此で一丁上がりっと。」
両手で371を受け止め、枴から落ちない様に慎重に飃は彼女を床に下ろした。
「あ、あぁ・・・あ、有難う御座います飃さん。」
暫し放心状態だったが地に足が付いて一安心した様だ。371は何度も飃に向け首を伸ばしていた。
「もう此の次元で二柱も命を救ってる僕って凄くない?」
「うん流石飃君だね、有難う!」
何時の間にか霄の飃に入れ替わっていた様だ。
其でも彼の御蔭で助かった、371にもしもの事があったら最悪終わっていただろう。
「あの、生徒を助けて貰って有難う御座いますっ、」
「あー先生は其処から出ないでよね。食べられたくはないでしょ。君も彼方行って来なよ。」
371の背を叩き、階段を指差すといそいそと彼女も先生の居る所迄下がって行った。
護り乍ら戦うとか大の苦手なので早々に退場して貰って良かった。
「じゃあロー君、二人の事護ってくれる?」
―ES=15T―
一つ頷くとローズは聖の鎧を纏って下がった。
全身皓っぽくなり、胸元に旻色の輝石が埋め込まれた金属板みたいな物が備わり、長い螺旋の一本角が額に生え、フサフサだった鬣が滑らかな布の様に変化する。
大きく姿が変わったので二人は少し丈戸惑った様だが、ストンとローズが近くに座ったので落ち着きはした様だ。
彼にはサポートを御願いして此方も全力で挑もう。
「ほら君も、一体何回僕に助けられたら気が済む訳?死ぬの?」
「ま、未だ生きてます!そ、その何度も済みません・・・。」
やっとベールも気が付いた様で何度か土下座を飃に披露していた。
「そんな変な踊り良いから手伝ってよ。君本当は勁いんでしょ?聞いてるよ。」
「え、えぇ⁉そ、そんな事無いです!宙が一寸使える丈で其以外は何も、」
「飃君、ベール君はその、ある条件にならないと変わらないの。だから今は一寸無理かな。」
グログロgrotesque中毒発作症候群だっけ・・・血とか見ないと覚醒出来ないって事は既に誰かが怪我をしないといけないから成る可くあって欲しくはないよね。
「え、なぁんだ然うなの。折角手伝ってくれるかと思ったのに。」
上手く行けば彼の化物を殺す手伝いしてくれないかな、とか思っていたけど、面倒な手順があるなら却下だ。企てている内に化物にばれてしまう。
「て、手伝えなくても出来る事は・・・ありますっ!」
勢い込むとベールは突然魂凱漂えばに両手を振った。
「371さんを食べる位なら僕を食べてくださいっ!」
―んー君不味そうだから良いや。―
「あ、そ、然うですか・・・。」
あっさりと終わってしまった。
まるで困った子狗の様な目を飃に向ける為、思わず彼は溜息を付いた。
「分かったよ、もう期待しないから隠れときなよ。」
「す、済みません。」
「まぁ飃君、ドレミが手伝うから、ね?」
うーん、御姉さん絶対化物派なんだけど・・・ま、良っか。
「うぅ。ドレミさん済みません僕の代わりに、」
「ベール君の所為じゃないよ。でも自分を囮にするのは危ないから次からやっちゃ駄目だよ。自分を大切にね。」
「あ、有難う御座いますっ。」
頭を下げるといそいそとベールも階段へと向かった。
此で一先ずは大丈夫、かな?
―むむ、君達神様だよね。僕の邪魔、しないで欲しいんだけど。―
「でも食べられたら困る人達だから、他を当たって欲しいんだけど。」
セレ程上手くはないとしても何とか交渉しないと。
034、677先生を食べられちゃったら終わってしまう。
―んー、でも美味しそうなんだよね。―
魂凱漂えばが舌舐りをした物だから隠れていた三柱は小さな悲鳴を上げた。
行き成りこんなのに襲われたら堪った物じゃない。絶対に遠ざけないと。
「ねぇ御姉さん彼は魔物なんだし、狩っても良いでしょ?」
「だ、駄目だよ飃君、龍さんだから成る可く傷付けたくないんだけど。」
「先に仕掛けたのは向こうなのに面倒だね。」
―此は、僕と戦おうって空気?―
「君がひもじい思いを我慢出来たら穏便に終わるんだけど。」
―其は御免だね!―
足の爪を大きく広げて魂凱漂えばが飃へと飛び掛かった。
其を枴を構える事で何とか飃は受け止める。
只力が可也勁い様で少し押されてしまう。
「ねぇ流石にもう話し合いは無理でしょ。」
「う、うん、でもやり過ぎないでね。」
吃驚させて怯んでくれれば良いけど、然う上手く行ってくれるかな。
「花火!」
ローブから小瓶を幾つか取り出して宙へ放る。
そして小さな電気を流して瓶を割り、一気に爆発させた。
―ウギャッ⁉撃たれたのかと思ったよ。―
「足元、御留守だよ魔物さん。」
魂凱漂えば意識が逸れた瞬間飃は枴を無理矢理振るって凱風を生み出した。
其は徒に魂凱漂えばの足を傷付け、慌てて彼は又飛び上がった。
―いてて・・・何すんだよもう。一寸調子乗ってるんじゃない?―
「調子乗ってるのは何方だよ。先に僕達の邪魔した癖にね。」
近付けない様枴を振るって凱風を生み出す。
飛んでいる相手ならやり易い。何だって凱風は僕の味方だ。
飛べなくすれば流石に諦めてくれるでしょ。
次々襲い来る凱風に魂凱漂えばはむっとした様に口を尖らせた。
―もう、嫌だ其。皆食べてやるっ!―
魂凱漂えばが旻に向けて吼えると翼がざわざわと蠢きだした。
羽根の様に生えている顔が奇声を発して伸び始める。
そして瞬きの後に其等が一気に伸び上がって飃達に襲い掛かった。
「っ何此、気色悪いね。」
凱風を纏った枴を振り下ろして一刀両断する。
一応斬ってしまえば消えるみたいだ。けれども数が多くて動けない。
―ほらほら行くよっ!―
其の隙に大きく翼を広げて魂凱漂えばは一同に接近した。
狙うのは変わらず371の様で階段近く迄一気に急降下する。
―させないよ、聖だからって舐めないでよね。―
ローズの近くに氷柱の様に曦の柱が立ち昇る。
其に貫かれて次々と羽根は散って行く。其でも近付く奴は直接ローズが咬み付いた。
うーん、僕もロードみたいにマッチョになれば皆一撃で粉砕出来るのに。矢っ張り圧倒的なパワーって欲しいよね。
聖なのに戦えるって言うのはかっこいい、憧れちゃうよ。
「キシャアァアアァア‼」
羽根の霊を掻き分けて突然魂凱漂えばがローズに襲い掛かった。
―っもう此処迄来たのっ!―
何とか角で去なして進路を逸らす。其の瞬間に驚霆が彼に降り注がれた。
「ギャウゥ‼」
―痛い痛いっ!な、何⁉―
頭を一つ振って堪らず魂凱漂えばは大きく後退した。
「大丈夫ロー君⁉」
―うん、危なかったよ。助かったよドレミ。―
ローズが尾を一つ振り上げるとドレミは息を付いた。
「良かったぁ、流石に一寸御仕置きしないとね。」
突然降った驚霆に未だ魂凱漂えばは戸惑っている様だった。
恐らく先見掛け丈の火花を見ていたから油断していたのだろう。直接浴びせられるだなんて。
「咲いて輪廻電!」
今の内に一気に畳み掛けたい。ドレミが一つ唱えると魂凱漂えばを中心に驚霆の渦が発生した。
絶妙に魂凱漂えば自身を狙わず、近付こうとした羽根の霊丈触れて散らされてしまう。
龍古来見聞録に載っていた彼の攻撃は主に其の翼の霊だ。此で一気に相殺出来る筈。
―ちょ、一寸~!此じゃあ動けないし翼がボロボロになっちゃうよー!―
「じゃあ此処の霊達を食べないって約束してくれるかな?」
―しますー!しますから助けて~!―
口約束だけれども、もう勝てない事は十分に分かってくれただろう。
此で懲りずに襲って来たら・・・もう赦さないんだから。
「約束破ったらきつい御仕置きをしないといけないくなるから気を付けてね。じゃあ、はい。」
ドレミの合図と共に驚霆は消え失せた。
一安心したのか魂凱漂えばはそっと羽搏いて屋上の柵に留まった。
そしてぼさぼさになってしまった翼をペロペロ舐めて毛繕いを開始した。
随分驚霆に触れてしまったのでぼろぼろだ。彼にとって自慢の翼だったんだろうし、一寸可哀相だけど此で大人しくしてくれるかな。
「流石御姉さん。惚れ惚れする手際だったよ。」
口笛を吹いて飃が小さく拍手した。
真直ぐ褒められて何だか照れ臭い。
「え、えへへ、有難う飃君。でも最初に飃君が371ちゃんを助けてくれたから動けたんだよ。皆の御蔭だよ。」
「いや、真面目に雷遣いで彼は凄いよ。見た所補助具も無いし、彼の化物が目を付けた丈はあるね。」
「・・・うーん、化物じゃなくてセレちゃんって呼んであげて欲しいんだけど。」
「冗談、別に本神も嫌がってないんだし、良いでしょ。」
うぅ・・・本当は嫌だと思うけど、昔私が言った時、凄く傷付いていたし。
最近は、気にしてない振りをするのが上手くなった丈。前世を懐い出してから明らかに変わっちゃったし、屹度昔沢山言われちゃったんだよ。
でもセレも言っていたんだ。何を言っても飃を責めないでって。彼も色々、失ってしまったから。
然うだとしても、私はセレを信じたいんだよ。彼女の頑張りを見て来たから。
過去よりも今を、見てあげたいんだよ。
「・・・ま、多少は善処してあげるよ。」
無言で目を伏せた彼女を見遣り、小さく飃は溜息を付いた。
矢っ張り彼女は化物派みたいだけど、別に其で彼女を責める気はない。
自分が勝手にする復讐って丈なんだから。
其にしても先の術は本当に凄かった。
次元が、生まれが違うのは勿論分かっているけれど、僕が見て来た誰よりも間違いなく術の扱いが上手い。
基礎が迚もしっかりしている。容姿で油断していたらやられちゃうかもね。
―皆怪我は無い?今なら直ぐ治せるよ。―
ローズが階段傍からトコトコとやって来た。
聖の姿の彼は一寸大人びて見えてしまうので少し吃驚してしまう。
其に長い角が生えちゃってるからうっかり何時も通り頭を撫でようとすると危なかったりする。
「ドレミは大丈夫だよ!飃君は?」
「自分の身位は自分で護れるよ。」
―治せるのなら此方を治して欲しいよ~。―
ぼろぼろになった翼をバタバタと羽搏かせて一寸魂凱漂えばは面白くなさ然うだった。
―でも其は自業自得でしょ?―
―まぁね。畜生、喧嘩は勁い自信があったんだけどなぁ。―
もうすっかり戦意は無い様だ。大人しくしている。
「も、もう大丈夫、かしら。」
「うん、677先生も371ちゃんも大丈夫だよ!」
未だ本龍が居るので当然直ぐには出ないが二人共安心はした様だ。
―うー矢っ張美味しそうだけど、負けは負けだし、諦めるか。―
「な、何でこんな所に来たんですか。」
ベールもそそくさと階段から出て来た様だ。
彼は不味そうって言われたし、まぁ大丈夫だろう。
―えー霊の癖に知らないの?人が集まる所って上質な霊が集まり易いんだよ。あ、僕にとっての上質って自我とか記憶がちゃんとある奴の事ね。―
「然う言う物なんだ。」
じゃあ真っ先に371を襲ったのは034狙いって事だよね。
未だに美味しそうって言ってるし、034はそんなにはっきり自我を持ってるんだ。
別に371を助ける時しか出ないからコミュニケーションは取れてないけど。
「ね、若しかしたら君だったら034ちゃんと話せたりするのかな?」
―034?誰其。―
毛繕いをしつつ魂凱漂えばはちらとドレミを見遣って首を傾げた。
直ぐ飛んで行かないのは話を聞く気があるって意思表示なんだろうけど、何だか随分あっけからんとしている龍だ。
人懐こいと言うか、もう狩りは終わりって事なのかな。
「先君が食べようとした其処の黔い子だよ。彼の子に憑いてる霊食べようとしたんでしょ。其の霊と話せるのかなって聞いてるんだよ。」
―いや食べ物と話そうなんて思わないでしょ。食べた奴が斯うやって翼に付くけどさ、何言ってるか分からないし。―
一度彼が羽搏くと彼の例の悲痛な声が響く。
確かに叫ぶ許りで何を言っているのかは分からない。
―ま、霊からしたら天敵の僕から助けてくれたんだし、礼の一つ位言ってくれるんじゃないの。其位の自我はあるよ、間違いなく。―
「そっか、うん。色々教えてくれて有難ね。」
―別に、大した事言ってないし。ま、此方も迷惑掛けて悪かったね。あ、でも僕も一つ気になる事あるかも。―
然う言うとじっと魂凱漂えばはベールの事を見詰めた。
其の目は明らかに獲物を狙う眼差しである・・・。
「な、何・・・ですか?」
―いやー良く見たら君神じゃん。だったら次元で死んでも甦るよねぇ?じゃあ食べて甦ってを繰り返したら、―
「駄目ー!そんな事したら又驚霆落としちゃうからね!」
随分恐ろしい事を言われた所為でベールが固まってしまった、蛇に睨まれた蛙である。
彼の事だから不幸体質と相俟って永久機関が完成してしまう。不憫過ぎて昇天も出来ないよ!
「う・・・あ・・・ぼ、僕未だ死にたくは、」
「多分永久に死に続けたいって人は然ういないと思うよ。」
今度はガタガタ震え始めたので何とか宥める。
発狂して発病したり、又飛び降りたりでもしたら大変だ。
―あの、神って存在が独特だから多分食べても直ぐ消えちゃって、御中一杯にはならないと思うよ?―
―え、然うなのか・・・じゃ良いや。僕御中空いてるからもう向こう行って良い?―
「良いんじゃない?帰って来たら飛べなくしてやるから。」
魂凱漂えばは嫌な笑みを一つ残してさっさと飛び去ってしまった。
翼がボロボロになっても飛行能力は変わらないらしく、直ぐ様見えなくなってしまう。
―ま、食べられなかったけど、結果オーライかなー。―
適当に飛び乍ら魂凱漂えばは独り言ちた。
―何だか胸焼けしそうな霊だったし、あんな碌でもないの護って、一体如何する気なんだか。そんなの僕の知った事じゃないし、良いけどね。―
何がおかしくてか小さく笑うと其の儘魂凱漂えばは次元から飛び去るのだった。
「あ、あぁ、有難う御座いました皆さんっ‼」
出て来た371が何度も首を伸ばす。心做し其の目は潤んでいる気がした。
「此方こそ御免ね、屋上に来なかったらこんな目に遭わなかったのに。」
「そんな事、私良く屋上に来るので皆さんが居なかったら寧ろ・・・助かりました。」
「そ、まぁ流石に彼奴ももう来ないでしょ。幾ら食料があるからって口が無くなったら襲わないでしょ。」
「でも妖怪さん達とっても御勁いんですね!嵐が来たり驚霆が降ったり、まるで天変地異でした・・・。」
今度は心做し目がキラキラしている気がする・・・命を助けられて憧れとかしちゃったのだろうか。
「うん、驚霆はね。本当に凄いと僕も思うよ。」
「もう飃君、煽てても何も出ないからね。」
からかっているのなら直ぐ止めて欲しい、こんなの独学なんだから。
「んー僕からしたら羨ましい許りだからそんな謙遜されてもねぇ。」
珍しく飃は少し丈困った様に笑っていた。
「其にしても先のは一体何だったんですか?あんな生物見た事無くて、」
―然うだね、まぁ僕みたいな仲間だよ。只向こうは霊を食べちゃうから一寸喧嘩しちゃったけどね。―
「霊・・・あ、其方が目的だったんですか?」
「うん、だから371ちゃんの影を狙っていたんだね。あ、そっか、371ちゃん、ドレミ達ね、今日一日調べて分かったんだけど、其の影は矢っ張り、」
「034・・・ですか?」
俯いた儘、彼女は続けた。大きな目も、じっと下を向いて。
「何となく、分かっていたんです。でも信じられなくて、でも・・・然うなんですよね。」
影は只其処にある丈だ。今は動きもせず、じっとしている。
「じゃあ如何して034ちゃんが371ちゃんを護ってくれるのかって分かったりするかな。仲の良い友達だったとか。」
「其が分からないから私も困ってるんです!」
突然371が声を荒げたのでドレミは一歩下がってしまった。
「困るって別に良いじゃん。助けてくれるなら甘えれば良いんじゃないの?」
「でも理由も分からず只護られるのは気になるの、かも。」
「然うだとしても友達だよ?理由なんて要らないんじゃないかな。」
「多分そんな風に言えるの、御人好しな御姉さん位だけどね。」
微笑して飃は肩を竦めた。ドレミが首を傾げるのを見て又笑う。
「友達、でしたけど・・・。」
371は然う呟いたっきりじっと影を見詰めていた。
すると371の影が突然伸び上がり、実体を持ち出した。気付けば真っ黔な371が立ち尽くしていた。
「え、あ・・・えっと、034・・・ちゃん?」
思わず一同は一歩下がって様子を見たが、別段彼女が何かする様子は無かった。
只声を掛けたドレミに向けて首を伸ばし、上を見上げていた。
其の仕草は恐らく、御礼、の意味に思う。
371を助けた事への礼、なのだろうか。
「・・・あ、貴方は如何して、」
腰が抜けて371はペタンと其の場に座り込んだ。
震える声で呟く彼女に向け、影は一つ頷いた。
―ツ・・・キ、出レ・・・バ、―
そして風鳴りの様な呟き。でも其の音をしっかりと371は聞き取っていた。
「ツキ?・・・若しかして水鏡?水鏡が出れば、分かるの?」
影は小さく頷くと緩りと溶けて元に戻ってしまった。
371が立つと同じ様に影も其を真似する。
「371ちゃん大丈夫?何ともなかった?」
「は、はい、でも、初めて喋った・・・。」
371は何処か上の空でじっと影を見ていた。
「水鏡って・・・然う言えば今日も出ないねぇ。」
陽は可也沈んだが、旻は冥くなる許りだ。
―確か此の次元は周期があるんだよね、水鏡の出る。―
ローズは今日の授業で見た事を復讐する、科学の授業で丁度やっていたのだ。
―明日・・・っ然うだよ!明日水鏡が出るんだよ!―
「じゃあ明日の霄になれば、034ちゃんが色々話してくれるかも知れないね。」
如何して水鏡が要るのか良く分からないけれど、霊とかって何かあったりするのかな。
「・・・一体今更何の用が、」
「あれ、友達と話せたのに余嬉しく無いんだ?」
「手放しじゃあ喜べないですよ。私なんかの影に閉じ込められて、一体如何してそんな事になったのか考えたら、」
「成程、確かにね。」
僕も楓夏が神に成ってしまっていたら問い質すだろう。
後悔で生かされる霊なんて彼女には似合わない。
「・・・その、今日、本当は話したい事あったんですけど、何だか疲れたので明日にしても良いですか?」
「噫うん然うだよね、大変だったね、緩り休んだ方が良いと思うよ。」
一歩間違えたら落ちていたんだ。話す気力も無くなってしまっただろう。
「明日は学校が休みなので何時もより長く居られる筈なので然うしますね。あ、あの皆さん本当に今日は有難う御座いました。」
思い出して又371は何度も首を伸ばした。慌ててドレミが手を振ると上目遣いに彼女は見遣った。
「あ、最後に一個丈良いかな371ちゃん、今日は大丈夫だった?その、危ない事とか、034ちゃんが出なきゃいけない事って無かったかな?」
一応確認して置かないと。034の事許り気に掛けている様だけれども、此方も此方で問題なのだ。
彼女が危険な目に遭い続けていると言うのも、釈然としないと言うか、良く分からない。
「え?危ない事、ですか?」
一瞬キョトンとした表情を浮かべる371、頬を少し掻いて彼女は一つ頷いた。
「ハハ、怪物に襲われる以上の事は起きてないですよ。心配してくれて有難う御座います。」
然う言って小さく笑うと彼女は階段を下りて行ってしまった。
「皆さんに御願いして本当に良かったです。私からも有難う御座いました。」
代わって677先生が屋上へとやって来た。
何だか斯うして代わる代わる礼を言われると少し歯痒い。
別に彼の龍が来ても本当はそんなに影響が無かったんじゃないかと思うんだ。別に黔日夢の次元でやって来たって訳じゃなかったんだろうし。
然う思うと・・・彼の子より厄介な何かが待ち受けているんだよね、其も嫌だけど。
―其より先生達が無事で良かったよ。ま、彼位なら僕達何でもないよ。―
「フフ、御勁いんですね。迚も心強かったですわ。」
「然う言えばねぇ君の力って何なの一体。先聖の技使ってたよね?」
飃も気になっていた様でローズの傍で膝を折った。
―僕は何の属性にも成れる龍なんだよ。だからサポートは任せてよ。―
「へぇ、其は珍しいね。本当彼の化物一体何処からこんな戦力見付けるんだか。」
「えぇ⁉何でも成れるんですか⁉じゃあ宙も?」
―うん、余使わないけど一応成れるよ。―
「然うだね、ドレミもずっと見てないかも・・・。」
―SM=16Q―
そっとローズが唱えると其の姿は一気に変貌した。
全身が皓っぽくなり、一回り小さくなる。
四肢の先は絳く、羽耳は翠に。鬣は紫になり、霧の様に先が不完全になる。
水玉の欠片が廻りに漂い、開かれた瞳は半透明に七色に輝いた。
「ほ、ほぉ~・・・凄いなぁローズさん、こんなに姿が変わるなんて。」
―うーん、すっごく視点低くなっちゃった。―
「然うだね。子供の時のロー君みたい。」
其でもとってもカラフルだ。ピエロみたいで、宙のイメージとぴったり合う。
「本当に不思議な力を沢山持っているのね。」
―でも僕、此の力の正しい使い方分からないから難しいね。―
「然うなんです、宙は本当扱い難いから、」
頭を掻いて苦笑するベールにローズは何度も頷いた。
理解者が出来て彼も嬉しそうだ。
「あの、677先生、明日は学校が休みみたいだけど、休みの日って学校は如何なるの?」
「然うですね、生徒達は外に買い物に出ても良いし、学校で自主勉をしても良いですわ。先生も余り居ないから自由なの。」
「本当に自由な学校だね、鍵位したら良いのに。」
「・・・034さんの件以外は此の学園、事件なんて無かった物ですから。今後は変わるかも知れませんが。」
「そっか。じゃあ今日も一日泊まっても大丈夫かな?明日一体034ちゃんが何を話してくれるか気になるし。」
「えぇ、元より其のつもりですわ。もしもの事があってもいけませんし、又宜しく御願いしますね。」
然う言い残すと677先生は準備の為か先に階段を下りて行った。
「ふぅ、今日は皆良く頑張ったね。屹度明日が本番だろうけど此なら大丈夫そうだね。」
「今思うと若しかしたら先の龍はキープ位した方が良かったかもね。」
後を追う形で一同もバラバラと階下を目指す。
もう校舎には誰も居ない。此なら大っぴらに話せる。
「え、其って如何言う事?霊が襲って来るとか?」
然う言えば然うだ。034や677先生以外の霊が居てもおかしくはない。
其が彼女を襲う可能性もあるんだ。此処数日彼女を狙っていたのも若しかしたら、
「其の可能性も、まぁ否定はしないけどさ。」
何とも歯切れ悪そうに言った限、飃は黙ってしまった。
何か考えているみたいだけれど、一柱で勝手に彼是しないか心配だ。
―其にしても先の龍、中々好戦的だったね。―
「恐ろしい技も使ってたし、」
「うん、御中空いてたんだろうね。優しい龍さんばっかりじゃないから仕方ないよ。」
其でも最後はちゃんと話を聞いてくれたんだから未だ良い子だろう。
「優しいのがいるって言うのが僕の感覚だと有り得ないけどね。僕は未だ魔物との区別が付かないよ。」
―僕も魔物に見えるの?―
トコトコとローズは隣を歩いたが飃は軽く鼻を鳴らした。
「思いっ切り魔物じゃん。話せるのなんて高位の証だから気が抜けないね。」
―へぇ、僕勁いんだ!―
一寸誇らしそうに胸を反らすローズだった。
如何も最近のローズはセレやロードとかの勁い神達に会って影響を受けたのか、勁さに憧れがある様だ。
実際ローズは賢いし、色んな技も使えるから勁いと私も思うんだけど。
「飃君は魔物狩りとかしてたの?」
「ま、依頼があればね。大体金払い良かったし。やり応えもあるしね。」
懐かしいのか飃は少し目を細めて笑っていた。
何時もより幾分穏やかな笑みだ。
「そんな仕事が・・・ドレミさんの所もですか?」
「うーんドレミ色んな所行ってるから難しいけど、ギルドでは確かにあったよそんな依頼。でもドレミの所はロー君みたいに友達になれる魔物もいたよ!」
「パートナーみたいな物かな。確かに其も良いかも。」
「ベール君は?然う言うの無かったのかな。」
次元に行った時は滅んだ街だったし、魔物は疎か人も居なかった。
リーシャンが居たからまるっきり居なかった訳じゃあないと思うけど。
「山奥に魔物は居たけれども、ダイヤの加護が勁過ぎて街迄は来なかったなぁ。だからダイヤがリーシャンと一緒に居るの吃驚したけど。」
「え⁉ダイちゃんそんな勁かったの⁉」
祈りで魔物を遠ざけるなんて余っ程だ。其で街を護るだなんて。
「あれ、ダイヤって彼の毒舌御嬢さんでしょ?人助けなんてしそうにないけど。」
「ダイヤは今も昔もとっても優しいんですよ!巫としての力は世界一とも言われていたし、無償で何時も頑張ってたんです!」
「あ、そっか。ダイちゃん昔は巫だったんだよね。」
黔日夢の次元で変わっちゃったんだっけ。変わる前の彼女も、会ってみたかったな。
「ふーん、彼の神がねぇ。僕より意地悪そうだったのに。昔は良い人だったんだ。」
「い・ま・も!良い神です!時々きついのは僕がドジな丈で、彼女自身は、変わってないです!」
どんどん彼がヒートアップしていく・・・可也彼女に心酔している事丈は分かった。
でも今も昔も、変わってもずっと傍に居てくれるなんて、ダイヤは幸せ者だね。
互いにちゃんと気付き合えたら良いけど。
そんな話を続けていたら例の部屋迄やって来た。宿直室だ。
「ふぅ、今日も色々あったけど矢っ張り次元に行くのって新しい事が多くて良いね。」
―然うだね。ね、ドレミ彼の本出してよ!一寸読みたいからさ。―
「え、もう此処で読んじゃうの?」
余っ程楽しみにしていたみたいだ。急いで時空の穴から例の教科書を出すと、ローズは嬉しそうに腹這いになった。
早速目次の頁から食い入る様に見ているけど面白いのかな。
―ふーん、初めて見る歴史だ!次元に因って此処迄違うの、面白いよね。―
「へぇ、ローズさんは勉強熱心なんだね。」
―好きなのが勉強って丈だよ。あーぁ、今迄行った所もこんな教科書、貰えば良かったなぁ。―
然う独り言ちてローズは本の世界へと飛び込んだ。
「皆さん御待たせしました。夕餉を・・・あら、ローズさんもう読んでいるのね、嬉しいわ。」
扉を開けて677先生が入って来た。又其の手には盆があるけれども、今晩は何だろう。
「何時も有難う677先生。御飯凄く美味しいから嬉しいな。」
「又御世話になります、こんな温かい御飯迄。」
ベールが早くも土下座モードになろうとしている。昨日、土食べさせられてたもんね・・・。
「フフ、当然の事ですわ。ローズさん、何か分からない事とかあったら何時でも聞いて下さいね。」
―うん有難う。明日の晁に色々聞くかも知れないけど。―
ローズの答えに嬉しそうに先生は頷くのだった。
「あ、ねぇ先生。後で良いからさ。一寸僕を連れてって欲しい所があるんだけど。」
「えぇ、構いませんよ。」
「飃君、一柱で勝手に彼是しちゃ駄目だからね。」
「分かってるって。だって僕丈学校見学してないの、不公平でしょ?」
確かに其も然うだ。でも霄の学校を見て楽しいのかな。
「うん、じゃあ何かあったら直ぐテレパシーでドレミ達を呼んでね。」
「分かってるって。御姉さん僕の事赤子だって思ってるでしょ。」
然う笑うが、未だ安心出来ないドレミだった。
此処は先輩として、しっかり皆を護らないとね。
「其じゃあ又後程伺いますわ。皆さんは我が校のヒーローです。しっかり御休みくださいね。」
一度首を伸ばすと677先生はそっと部屋を出て行くのだった。
明日、明日で屹度色々分かる筈。
今日も一つの依頼並みに戦ったし、明日も頑張らないと。
然う意気込んでドレミは晩御飯に手を付けるのだった。
・・・・・
前半戦終了‼と言うより粗残すはフィナーレのみです。
でないと何か区切れが悪かったんですよ、矢っ張りバトルの一つもないとね!
前書きに他のメンバーが出ると書きましたが、何だかもうドレミと飃は鉄板ですね、迚も好きですし、書き易いです。
新しい龍達は如何だったでしょうか、今回出た子の名前は個人的には気に入っています。
ああ言う独特なネームと言うか、新しい物に挑戦したいんですよね。御蔭でWordも滅茶苦茶入力し難くて可也苦戦しました。
文節からしておかしい文章が出捲くりでしたからね、投稿前の本文は誤字だらけで真赤に添削されています。
さてそんな中で続くは後半戦です、もう既に4分の3が終わった位なので一気に駆け抜けたいですね。




