37次元 化物の存在証明トハ
今日は、御久しぶりです!(定型文)
今回こそは短くなる要素しかないぞ!と書いたらまあまあ良い位の長さになりました。満足!
珍しく短いタイトルです。不穏な感じですが、割と喜怒哀楽の溢れる回になったかなと思っています。
タイトルの法則により今回は次元に行きません!何とセレとガルダのデート回なのです!
最近読んでいるある漫画に触発されました。あぁ、こんなデーと書きたい・・・と思ったら生まれました、御芽出とう。
元より書きたいなぁと思ってうずうずしていた回なので迚も満足しています。可也色々な伏線?が回収されたり、情報が精査されました。
此で今後もっと書き易くなる筈!設定が多いのって面倒だよね!
と言う事で今回は久し振りな説明回です。え?如何してデートが説明になるのかって?其は読んでの御楽しみ。
怪奇なり、怪奇なり
何処にも相容れぬ者、誰の子か
噫私は知らない、誰も知らない、御前の姿なんて
滑稽じゃあないか、化物が神の振りをするなんて
御前には無理だ、分かっている癖に往生際の悪い
でももう少し丈見てやろう、彼の芸は中々に滑稽故
・・・・・
「説教だ。」
「・・・ひぇえ、」
次元の迫間の店に戻り、セレが自室へ足を踏み入れた瞬間、
室内で丗闇が顕現して待っていた。
自分の部屋なのに全く安らげない・・・。
と言うより初めてかも知れない、声が出ない位吃驚したのは。
彼女が顕現するなんて激レアだ。もう其丈で分かる、物凄い説教させられるって。
テレパシー丈では飽き足らず、直接口で、かぁ。し、仕方ないな。
だって道連れにしたんだもんな。普通は死んだら終わりなのだから。未だ生き返った丈ましなんだ。
良し、甘んじて受けよう、頑張るぞ。
「何だ其の返事は。其処に座れ。」
「は、はい。」
直ぐ正座をする。此処からはキビキビ動かないと。
床に座ると一応納得したらしく、丗闇は椅子に腰掛けて見下していた。
様になってるなぁ・・・然うして居ると迚も心の優しい闇の神に見えない。
威厳たっぷりの、人間なんて塵芥に等しいとか思ってそうな神に完全になり切っている。
まぁそんな神様が、今から生き死にについての説教をする訳だけれども、風格はあるな。
「・・・如何して我が御前に説教をしないといけないのか、理由は分かってるな。」
「えっと舐めて掛かったから、あっさり死んでしまったからです・・・。」
「然うだ。我を宿して置き乍ら何て言う為体だ。本当に情けない。其の気になれば、龍質と交換したと同時に彼のレベルの奴等ならやれた筈だ。違うか?」
「いえ、全く其の通りです・・・。」
素直に首輪をされたのが一番の敗因だったな。彼で一気に逆転されたのだから。
まさに丗闇の言う通り、自分は手を抜いていた訳だ。一寸調子に乗っていた自覚はある。
でも其の御蔭で鏡界に行って色々知れたじゃないか。何て口が裂けても言えない・・・。
其は其、此は此である。
色々頑張る丗闇さんだから舐めると言う行為自体が著しく嫌いなのだろう。
「反論が無いと言う事は其丈弛んでいると言う事だ。鎮魂の卒塔婆を壊したからと良い気になるな。寧ろ気を引き締めないといけないだろう。今から敵も増えると言うのに御前と来たら・・・、」
何時もあんなに口数の少ない丗闇だが、今回に限り、本気で饒舌に語り尽くす様だ。
其丈彼女は本気と言う事だ。喜ばしい事なんだよ本当は。
「・・・返事は?」
「は、はいっ、」
と言う事で感謝はしているので早目に切り上げてくれないかな、と小さな希望を胸に、セレは完全なる堪えの体勢に入るのだった。
・・・・・
「なぁセレ、一寸良いか?」
軽いノック音と呼び声はセレにとって正に救済の音だっただろう。
扉を開けたガルダの目の前に仁王立ちした丗闇の後姿があり、思わず条件反射でガルダは扉を閉める所だった。
丗闇が出ていて碌な事が無いけれども、此は一体如何言う事態なのだろうか。
良く見ると丗闇の目の前でセレが土下座をしていた。
何だか最近の彼女は良く其のポーズをしている気がする。ベールのが移ったのだろうか。
状況が読めずに居ると物凄く不機嫌丸出しの顔で丗闇が振り返った。
何て恐ろしい顔だ・・・完全に皺になるであろう勢いで眉間が大変凄い事になっている。
全力で逃げようかと本能で思った位だ。不機嫌と言うより殺意に近い。
「何の用だ。此奴は今、己の愚鈍さを学ぶのに忙しい。急ぎじゃないなら去れ。」
分かりました、と元気良く逃げ帰りたい所だが、見るとセレが必死な顔でジェスチャーを送っている。
助けを・・・求めてるよなぁ如何見ても。恐らくセレが何かやらかして丗闇に怒られているんだろうけど。
丗闇の説教なんて失神しそうなワードだ。恐らく可也の精神ダメージを彼女は負っている事だろう。
彼女に助けを求められる数少ない機会だし、勿論助けてやりたい。
けれども相手は彼の丗闇である。何て恐ろしい相手なんだ。
一つ息を付き、意を決してガルダは丗闇の眼差しを真っ向から受けた。
・・・如何しよう、フォード達と戦った時より、俺は緊張しているのかも知れない。
「其が一寸問題あってさ・・・あの、先約があるんだよ。」
「先約・・・だと?」
噫恐いそんな睨まないでくれ・・・。
呑まれたら終わりだ。嘘は言って無いんだからはっきり言うんだ俺!
「然う然う、急だったからセレにも言えてないんだけどさ。出掛けなきゃいけないんだよ俺達。」
「・・・良いだろう。先に其を片付けろ。」
無言でセレが喜びを表現している。
心から嬉しそうで何よりです。
だが次の瞬間ギロリと丗闇に睨まれて元の正座に戻った。
蛇に睨まれた蛙の様に完全な沈黙だ。中々のポーカーフェイスである。
「先に、と言っただろう。帰り次第続きをやるから覚悟して置け。」
「ヒィ・・・。」
あっさりポーカーフェイスは崩れ、つい小さな悲鳴をセレは漏らした。
あんな青褪めた彼女は初めてだ。其丈で一体何程過酷な説教だったか良く分かる。
セレを睨んだ儘スッと丗闇は消えてしまった。
丗闇の姿が消えた事で明らかにセレは安心していた。
其にしても一体二柱に何があったんだろう。セレは帰るなり部屋に閉じ籠っていたけれど、まさか其から今迄ずっと丗闇に怒られていたのだろうか。
否まさかな・・・半日も怒るなんて体力持たないし、流石に違うか。
「助かったガルダ。御前は本当に何時でも私を助けてくれるな。」
「そんな大それた事してないけどまぁ良かったよ。」
中々セレは立たずに座った儘だ。手を出すと少し遠慮勝ちに掴んで来た。
「済まない、流石に半日も説教喰らうと足が固まってな。」
「本気で半日も顔付き合わせてたのか⁉」
うっそだろ!其で彼の顔って何丈丗闇を怒らせたんだ。
何とか立てたセレはふらふらとベッドに腰掛けた。
用事はあるけれど、セレの足が回復するのはもう少し掛かりそうだ。
自分も椅子に座って彼女を見遣った。
少し窶れている気がするな・・・今から医者の所行くけど、大丈夫かな。
「・・・何で説教なんて喰らってたか聞いても良い奴か?」
てっきりセレと丗闇は仲良しだと思っていたのに少し違っていたみたいだ。
俺よりきついの喰らってたし、半日も怒られるって嫌われてる粋だし・・・否仲が良いからあんなに怒って貰えたのか?・・・うーん。
「然うだな、前の次元で一寸色々あって其で・・・、」
懐い出し乍ら何とか掻い摘んでセレは一部始終を話した。
「・・・もっと丗闇に怒られた方が良いんじゃないか?」
「う゛、ガルダ迄そんな事を言うか。」
「俺だって一寸説教したくなったし、仕方ないだろ。」
流石に今回のは駄目だ。軽く死んじゃった、あ、然うかと流せる話じゃあない。
死は本来終わりなんだ。其こそ此方で死んでいたらそんなあっさり終わっていたと言う事だ。
其が単に不注意が原因と聞けば、怒るのも無理からん話だ。
加えてセレの事だから死も一つの手段として取りそうな気もする。
今の話だと一度死んだ事でセレは相手を負かす事が出来た。
となると、下手したらセレは其の死をリセット感覚で使う可能性があるのだ。
昔からずっと彼女を見て来たから分かる。彼女は然う言う存在だ。
倫理観が・・・一寸、否大分抜けている。隠すのが上手な筈の彼女でも隠し切れない程に。
まさか鏡界になんて行ってたなんて、知らない間に随分彼女は遠くに行ってしまった様である。
良かった・・・ちゃんと帰って来れて。
「ま、まさかガルダの説教が用事って事じゃないよな?」
もう大分堪えた様で青くなった彼女は慌てて手を振っていた。
彼女は自由奔放然うに見えて斯う言った教育には弱い。
屹度前世でも誰かに叱られた事とか殆ど無いから、如何したら良いか分からなくなるのだ。
「もう丗闇にたっぷり叱られたみたいだし、俺からは言わないよ。でも同じ位怒ってるって事は忘れないでくれよ。」
「・・・分かった。その、御免なさい。」
よしよし、ちゃんと謝れるのは良い子だ。
一寸項垂れていた彼女の頭を撫でると猶の事彼女はしゅんとしてしまうのだった。
「ま、ちゃんと話してくれて有難な。其で俺の用なんだけど、大丈夫かセレ。」
「噫、ガルダは私の恩神だ。何なりと申してくれ。其の願いは屹度叶えてみせよう。」
調子が戻った様で胸を反らしてセレは何とも元気そうだ。
「今更だけどそんな事言って良いのか?その・・・丗闇は中に居るんだろ?」
俺が小声で言った所で意味は無いけれど、一寸心配になって来た。此でセレの説教がもう一時間増えたりしたら其は少し可哀相だ。
「大丈夫だ。半日も喋って疲れたみたいで今はぐっすり眠っている。つまり今は何をしても赦されると言う事だ。」
噫御疲れ様です丗闇さん・・・。
確信した。丗闇はセレと仲良しだ。そんなになる迄頑張ってくれたなんて。そしてセレはもう一寸反省為可きだ。
「そ、然うか。じゃあ俺の用なんだけど、セレってさ。未だ自分の種族と言うか、仲間とか分かってないよな?」
「ん?まぁ然うだが、其が如何したんだ?」
「manjuに一寸前会ってさ。ある医者の神を紹介してくれたんだよ。今迄何柱も診て来た然うだから若しかしたらセレの事も分かるかもってさ。」
「manju?彼の社長か。成程、其は一寸面白そうだな。」
「噫、彼奴の紹介なら大丈夫そうだし、manju自身も世話になってるんだってさ。其なら腕は確かと思って。」
「確かにあんな妖怪染みた存在を調べられるなんて余っ程の名医だろうからな。」
矢っ張セレも然う思うんだ・・・だよな?気になるよな?
「じゃあガルダは今から其の医者の所へ私を連れて行ってくれるのか?」
「セレが嫌じゃなきゃだけど。如何かなってさ。」
昔剥製にされ掛けたとか言っていたし、然う言う事で彼女が医者嫌いなのは知ってる。
物扱いされた、対等な存在と見て貰えなかった。彼女の心を深く傷付けた其等の記憶に、縛られてしまうんだ。
如何仕様もなく自分と言う存在を自覚してしまう。如何言った物なのか。
其が彼女は堪らなく嫌なんだ。
「私が断る理由なんて無い。有難うガルダ、私も丁度気になっていた所なんだ。私は此処での伝は全く無いからな。手配してくれるなんて・・・助かるよ。」
「然うなら・・・良いんだけど。」
思ったより彼女は快諾してくれた。本の一瞬も表情を曇らせる事なく。
何だか一寸久し振りだった。そんな笑顔の彼女を見たのは。
鎮魂の卒塔婆の事があってから何となく彼女は気を張っている気がしたから、少し丈安心した。
「如何したガルダ。・・・噫前私が言った事を気にしているのか?だったら其は杞憂だ。他でもないガルダが紹介してくれたんだ。間違いなんて無い、大丈夫だ。」
「ん、ん。そ、然うか。じゃあ直ぐ行こうか。」
何だか然う真っ直ぐ言われると恥ずかしい・・・。
セレの足はもう治った様で一つ頷くとさっさと部屋を出て行った。
俺も直ぐ行かないと。彼女ばっかり先に行かせちゃあいけない。
隣を歩きたいんだ、一緒に。
・・・・・
「此処・・・なのか?」
「噫、そ、然うらしいけど、」
manjuに言われた通りに行くと何やら怪しい地下階段を見付けた。
荒野にポツンと、無骨な混凝土で出来た階段。薄暗がりの中閉ざされた扉は冷たさを感じる。
・・・あれ、此処病院、なんだよな?
隣のセレの笑顔が一寸引き攣っている気がする、ポーカーフェイスが崩れているなんて余っ程恐がっているんだ。
そっと彼女の肩を叩き、俺は先に階段を下りた。
大丈夫、大丈夫だ。彼のmanjuが紹介してくれたんだから。
此は屹度彼だ。此処、何処にも属していない地だし、一応秘密の場所として隠しているんだよ。
僅かな電子音を立てて、扉が開かれる。
「・・・御邪魔します。」
外観を裏切らず、中は薄暗い。良く分からない機器や実験器具が並んでいて少しフォードの研究室を懐い出した。
・・・ってえ?実験器具?い、否病院の器具だよね、うん。
知らず一歩下がってガルダの背に隠れてしまう。
本能が告げているんだ、此の先へ行ってはいけないと。
否、駄目だ今丈は。折角ガルダが連れて来てくれたんだ。彼を信じているなら毅然としていないと。
背が薄ら寒いが身震いして何とか遣り過ごす。
大丈夫、大丈夫だよ。本能よりガルダを信じるから。・・・否でも先からする此の臭は、否気の所為だ!
「ん、噫御客さんですか済みませんねぇ気付かなくて。御早う今日は今晩は!ようこそ当院へ~。」
然う陽気に言って奥から出て来たのは一柱の神だった。
姿は・・・始祖鳥とでも言うのだろうか。
少し恐龍っぽくもある。細長い顔と手、足、胸元に丈毛は無く、代わりに鱗で覆われている。
腕や脚には立派な羽根が生え、蒼や絳と何とも鮮やかだ。
長い尾を緩り振り歩く姿は何処か優雅に見える。
綺麗だ、と溜息を付くのは簡単だろう。彼が全長4m程もあり、自分達を見下して舌舐りする様な怪物でなければ。
「お、御早う御座います・・・あの、此処がワクワク医院で間違いはないですか?」
何とか挨拶してガルダは一歩セレの前に立った。
当院と言う事は彼が医者なのだろうか・・・一寸そんな風には見えないけど。
「えぇえぇワクワク医院でもニコニコ病院でも好きに呼んでください。私は此処の医師です。まぁAとでも呼んでくださいな。名なんて大した物じゃないですからねぇ、大切なのは肉体の方ですよ。」
う、胡散臭い・・・。
病院名も去る事乍ら医者も医者だ。
大丈夫かな、五体満足で帰してくれるだろうか。尾も翼も残されるだろうか。
「其にしても今は晁でしたかぁ。いやぁ済みませんね、私解剖に熱中すると時間感覚分からなくなっちゃって。フフゥ~今回は実に活きが良くて特にねぇ、」
今はっきり解剖って言った・・・?
矢っ張り先からしていた臭は、此の濃厚なのは血の・・・うっ、
「セ、先生も冗談って言うんですね。」
何とか声を絞り出す。話すのを止めたら頭から行かれ然うだ。
「いやぁ分かっちゃいましたかぁ。時間があればいっつも解剖してるんだから時間感覚なんて無いだろ!何てね。さぁてと、御二柱は死にたがりな神様ですかな?私の新たな検体になりに来てくれたのですかな?」
然う舌舐りして医者は嗤った。
・・・此もう医者じゃなくて解剖医なのでは?
もう隠す気ないじゃん。流石にもう冗談だって言えない。冗談だとしたら絶望的にセンスもない。
大丈夫、いざって時はセレの手を引いて逃げれば良いんだ。出口は直ぐ背後だ。
「いやあの検体なんかじゃなくて・・・あの、manjuから連絡来てませんか?」
「manju!おやおや其方の方でしたかぁいやいや~此は失礼しました。と言う事は自分の種だとか生態を知りたいと言う事で・・・何て素晴らしい検体でしょうかぁ~。」
「・・・・・。」
セレがそっと俺の服の裾を掴む。
御免、そんな恐い懐いさせて。凄く恐いよね、俺も恐いもん。
「私の腕は確かですよぅ、麻酔なんて要りません。病み付きになりますよぅメスの感覚に!と言う事で早速奥へ参りましょう。今回御相手してくれるのはセレ神さん・・・でしたよねぇ。」
「・・・あ、噫、然う、だ。」
医者は鋭い牙の並ぶ口端をニヤッと持ち上げた。
そして奥へ招き入れる様にセレに其の大きな手を伸ばす。
思わずセレは唾を呑んだ。偽物の笑顔すら作れない。
無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理だからぁ・・・っ!
こ、此、付いて行ったら死ぬ奴だ。矢っ張り本能は正しかったんだ。
行きたくない、行きたくないです。此の儘ガルダと家に帰してください。
どんな化物になったって中身は幼く醜い無力な餓鬼だ。
駄目だ。一気に前世がフラッシュバックして・・・恐い。
恐い恐い、震えない様にするのが精一杯だ。
でも、此処で逃げたら・・・ガルダを信じていない事になる。
ガルダが信頼しているmanjuからの紹介なんだ。其を自分が断ったら、
そ、然うだ。簡単な話だ。ガルダへの信頼と本能の恐怖、何方が上かと言う丈だ。
だったら・・・だったら自分は、ガルダを信じたい、否信じている!
足が竦んでしまう前に自分はさっさと一歩踏み出した。
知らず掴んでいたガルダの服の裾を放す。
駄目だ。こんな所で直ぐ彼に頼るのは。
「じゃ、じゃあ行って来るなガルダ。」
心配ない、心配ないよ。だってガルダが連れて来てくれたんだ。間違いなんて無い。
此が今生の別れなんかにならないよ、だからそんなに目に焼き付けなくて良い。
「い、行くなセレッ‼」
目が合った瞬間、ガルダが両手でセレの腕を掴んだ。
「い、行かなくて良いから。俺、一寸間違えたみたいで、うん。此は何かの間違いだって、し、失礼しましたっ!」
其の儘ぐいっとガルダはセレの手を引っ張り、自分の元へ引き寄せた。
そして回れ右、出口へ真直ぐに。
セレは黙って俺に委ねていた。驚いた丈で、でも付いて来てくれた。
一歩、足を出して、
「一寸待ってくださいよぅ御二柱さん。もう少し緩りしても良いじゃないですかぁ。」
扉は・・・開かなかった。
気付けば医者が大きく一歩を出して先回りし、扉を押さえて出口を塞いでいたのだ。
そして舌舐りをして二柱を見下ろす。
小さな悲鳴を呑み込む。一歩下がった俺の服の裾をそっとセレが握った。
すっかりセレは恐がってしまっている様だ・・・本当に申し訳ない。
前世がフラッシュバックしてしまっているのだろう。何時もの気丈な彼女が見せない顔を浮かべてしまっている。
「んん、嘘偽りのない私を御見せしたんですが、何だか恐がられてるみたいですねぇ。おやおや其は申し訳ない。まさか検体がそんな繊細だとは思わなかった物で。」
然う言って頭を掻いて笑うが最早悪魔の笑みだった。
「さぁ先ずは問診から。御茶でも飲んでのんびりしてくださいよぉ。もう逃げちゃあ駄目ですよぅ。」
「わ、分かった。に、逃げないから、」
だからもう恐がらせないでくれ彼女を。
そっと彼女の肩を叩いて落ち着かせる。
恐らくもう大丈夫だ。第一印象が酷過ぎたけれど、此処で間違いない様だ。
椅子を勧められて二柱はちらと丈互いを見遣って腰掛けた。
医者は慣れた手付きで紅茶を淹れ、二柱に差し出した。
「さぁてと、何か誤解がありそうなんでぇ其処から話さないといけないですねぇ。口は面倒です。躯に聞けば早いのに全く。」
紅茶を先に一口啜り、医者はニヤッと笑みを浮かべる。
「改めて自己紹介を。私は此処えーっと何だっけ、ニコニコ病院?此処の医師、Aですぅ。どうぞよしなに、破壊神と其の守護神さん。」
「・・・噫、宜しく。」
可也警戒しつつも然う短くセレは返事をした。
・・・良かった、少しは落ち着いた様だ。
「フゥムム、とんでもない神が来るって事で此方も凄んでみたんですが、話が出来そうで、フフゥ、心配する事も無かったですねぇ。ちゃあんとmanjuから話は聞いているんで、しっかり調べさせて貰いますよぅ。」
「調べるって・・・具体的に如何するんだ。」
「然うですねぇ、先ずは御話をして検体の事を知りますよ。そして次に血とか皮膚片を一寸貰って、機器に掛けて調べましょうかねぇ。大体斯うして行ったら種族とかは分かって行くんでね。」
「・・・成程、分かった。」
言い方は彼だが、一応ちゃんとしている様だ。
やっと一寸落ち付いて来た・・・はぁ、先のは本当恐かった。
すっかりガルダに頼ってしまった、申し訳ない。
後は少しでも調子を取り戻さないと。主導権を取らないと自分は安心出来ないんだ。
「じゃあ今から一寸聞きますよぅ。」
「其の前に、一つ良いか。」
カルテを取って医者は小さく首を傾げた。
相変わらず躯は大きいので見下されている気分だ。
「此処で得た私の情報は必ず秘密にするんだな。」
「えぇ勿論、検体の信頼が無いと此方も満足に動けないんでねぇ。」
成程、彼はフォードとは別のマッドサイエンティストか。
己が知的欲求を満たす為なら手段は問わないタイプだ。
何でもするので早く解剖させてくださいみたいな、恐いけれど分かり易い。
自分みたいな化物に価値を見出せる神か・・・分かった。良く分かったよ。
自分をしっかり持て、話してくれる分、前世より幾らかましだろう?
「然うか。だったら私と一つ契約をしてくれないか?互いの安全の為に。」
「契約・・・フム、まるで精霊みたいな事を言いますねぇ、聞きましょう。」
「セ、セレ、余見境なくするのは如何かと思うぞ。」
「大丈夫だ。使い方次第では可也有効だからな。」
口約束は如何しても信用出来ない。事故もあるしな。
「精霊の契約と同じ様に取ってくれれば良い。御前が私の秘密を護る約束を護ってくれる内は私の加護が御前を護る。護れなければ其の命は貰う。」
「ちょっ、一寸セレ其はやり過ぎなんじゃあ、」
「良いですねぇ。其で手を打ちましょう。話さなきゃあ検体である貴方が私を護ってくれるんでしょう?悪い話じゃあないですねぇ。」
「え・・・え、そ、然うなのか・・・。」
ガルダ一柱が置いてきぼりを喰らったみたいにきょとんとしていた。
噫でも然うか。セレの事を此処で調べたって知られたら其の情報を狙う奴は必ず出て来るのか。
医者の方が護ろうとしても襲われたら其の限りじゃないし、其のセレに護って貰えたら然う悪い話じゃないのか。
其でも随分即決だなぁ。若しかしてmanjuは斯うなる事を予め予期していたから彼を勧めたのだろうか。
セレの出す条件位軽く呑める様な、そんな適任者を。
「私が黙る丈で護って貰えるんですよぉ、安い物ですねぇ。となれば私もしっかり調べてやらないといけませんし。」
「話が早くて助かる。えと名は・・・Aで、良いのか?」
「何でも構いませんよ、抑私に名は無いですしぃ、気軽に先生、って呼んでくださいよぉ。」
然う言う所が胡散臭さに拍車を掛けているんだが・・・。
まぁ良い。名前なんて只の建前だ。契約を分かり易くする為の。
「分かった。じゃあA、私の秘密を護る代わりに私が御前を護ろう。決して口外はしない様に。此は契約だ。」
然う呟いた途端、自分と彼の間に見えない鎖が繋がれた。
・・・良し、此で少しは安心出来るな。
「へぇ、契約ってそんな感じなんだな。俺初めて見たな。」
「噫、慣れれば中々便利だぞ。まぁガルダとは契約なんて要らないからな。」
「・・・そんな風に信じて貰えたら光栄だよ。」
「一応此は検体の事を書類に書く事自体はセーフですよねぇ?其を見られたり、持ち出されたらアウトって事で。」
「然うだな、此処の中丈なら見張れるだろうし。」
「成程成程~、そ・れ・で、もう始めちゃって良いですかなぁ問診、後本性もばっちり隠してますよねぇ、しっかり全部隅から隅迄見せてくださいねぇ?」
「あ、噫・・・分かった。」
分かっているけれども矢っ張り恐い・・・。ペロンって丸呑みにされ然うだ。
「セレ、大丈夫か?」
「大丈夫だガルダ、契約もしたんだし、二言はない。」
彼に心配丈はさせたくない。折角の信頼を傷付けたくないんだ。
此処は地下だし、陽の心配もない。晒を取り、尾も翼もしっかり出してしまう。
医者である彼が大きい御蔭で空間はある。広げても十分な広さだ。
「ほうほぅ、此は又何とも珍しい検体ですねぇ。」
顎に手を当て、興味深そうにAは呟いた。完全に獲物を狙う目である。
噫・・・見られている丈でゾクゾクするな・・・此は慣れない。
「あ、あの、検体って言うの、止めてくれませんか?」
其の目付きも嫌だった様で可也ガルダは喰って掛かっていた。
Aも落ち着く様に両手を出している。
「ガルダ、そんな言わなくても、別に、」
慣れている。然う言う扱いはもう十分。
「俺が嫌なんだよ。御前は一神として来た、其丈だろ?」
「おやおや、私なりの誠意だったんですが、気に喰わないなら変えましょう。えっと確か個体名は・・・セレ、・・・神さんとガルダ神さんですよね?」
個体名ってのが気に入らないけれど、先よりは未だましかな。
「其方で御願いします。」
「はいはい、分かりましたよぉ。いやぁ私問診って実は結構苦手で、良く注意されるんですよねぇ、フゥム。」
「まぁ・・・だろうな。」
誰にでもあんな態度だったら怒られるだろう。
少なくともあんなにガルダは怒っていたし・・・。彼の温厚なガルダがだぞ。
「此でも私カウンセリングも出来るんですよぉ?躯の中に直接聞くんですけどねぇ!っと、冗談は扨置き、一応御二柱に誤解の無い様言って置きますとぉ、私は誠意を持って此でも接してますからねぇ。嘘を吐かず、正直な儘で対応してますのでぇ、其の辺りはよしなに、御願いしますねぇ。」
「噫分かっている。ヘラヘラ嗤い乍らメスを入れる奴よりはましだ。」
「うんん、でもセレ、ましって丈で良いって訳じゃないだろ。」
「其でも、自分が都合の良い魅力的な検体である事は変わらないだろう。未だはっきり然う言ってくれた方が良いじゃないか。私は嘘が嫌いだからな。」
「・・・分かったけど、・・・うん。」
一寸納得行かない。
こんな扱い、セレには慣れて欲しくない。何時か此の事を懐い出して、噫彼の時は本当に酷かった、信じられない位って・・・然う言える様な日常をあげたいのに。
仕方ないって・・・そんな諦め方はさせたくないんだ。
俺が不満そうな顔をしているのに気付いたんだろう、セレが苦笑して俺の背を叩いてくれた。
何だか俺丈駄々を捏ねているみたいで、其自体がおかしいって言ってやりたいのに。
もうすっかりセレは調子を取り戻した様だ。と言うより昔の感覚を取り戻したのだろう。
何をされるか分からない先迄は前世の所為で猶の事恐かっただろうけど、種さえ分かってしまったらもう慣れた物だ。
「さ、私は何に答えれば良いんだ。しっかり姿も晒したぞ。」
「えぇえぇ私だってずっと御預け喰らってたんですよぅ其の未知なる肉体に!じゃあ先ずは日常の事からじっくり教えて貰いましょうかねぇ。」
彼の舌舐りに未だ悪寒を覚えつつも、緩りセレは頷いた。
・・・・・
「セレ、大丈夫かな・・・。」
一柱椅子に腰掛けた儘、ガルダは深い溜息を付いた。
相当な量の質問に何とかセレは堪え切った。
本当長かった・・・若しかしたら外はもう霄なんじゃあないだろうか。
初対面の印象其の儘で彼の医者は中々深い所迄聞いて来た。
俺こんなの聞いていて良いのかなってどぎまぎしちゃう様な事迄。
多分セレもずっと答え過ぎて一寸意識が散漫していたんじゃあないだろうか。最早感情を失った様に淡々と答えていたけれども。
そして長い尋問が終わった後、
「じゃ、解ぼ・・・オホン、身体検査しましょか~。」
突然医者は笑顔で然う切り出してセレの手を引いて奥へ行ってしまった。
一瞬の事だった。恐怖と言う感情丈取り戻したセレの顔が真っ青になり硬直した瞬間に攫われてしまった。
屹度猶予があれば悲鳴の一つ位上げていただろう。
「え、は、セッ、セレッ⁉」
「あぁ~此処からはプライベートな事なのでぇ御連れさんは待っててくださいねぇ~。」
急いで立った俺に奥からそんな声が漏れて俺は座らざるを得なかった。
奥は更に地下へと続いて行っており、真暗だ。
セレ・・・あんな所に独りで・・・。
行きたいのは山々だが確かに身体検査ともなると俺が同席しては不味いだろう。
ちゃんとセレと契約もしたし、流石に大丈夫だと思うけど。
解剖は・・・ジョークだよな?嫌だよ、セレ神さんの種は分かりましたが首丈になりました、とか言われたら。
地下からは何も聞こえない・・・段々心配になって来る。
別に過保護とかじゃなく、当たり前の心配だ。あんな医者じゃあ当然だ。
悲鳴の一つでも上がったら直ぐ降りて行くのに・・・うぅ。
もう何丈経ったのか分からない。其にしても結構待たされている気がするけど。
でも大変だなセレも。自分の事が分からないって、矢っ張り不安になるだろうし。
自分が何処から来た何なのか、知りたがるのは当然だ。
其を唯一知ってたかも知れないフォードはもう居ないし、斯う言う手段じゃないともう分かり様がないのは事実だ。
今回あんなに勇気を出してくれたんだし、無駄にならなきゃ良いけど・・・。
「御連れさ~ん、終わりましたよぅ御待たせしましたぁ。」
突然の声に思わずびくついてしまう。見ると奥から例の医者がにゅっと首を出していた。
「色々分かったのでぇ御話したいんですけど、一寸降りて来て貰っても良いですかねぇ。」
「え、あ、はい。」
降りるって・・・下で話すのか?
ま、まさか俺迄検査するつもりじゃあないよな・・・?
「セレは、大丈夫ですか?」
「ハハァ其がぁ、一寸立てなくなっちゃって、私がやるのも良くないでしょうし、御連れさんに上迄連れて行って欲しいんですよぅ。」
「立てなくなった・・・?」
嫌な予感がして急いで階段を降りる。
い、否まさかそんな首丈になりましたとかじゃないよな。足無くなったとか違うよな?
「セレ、如何だ大丈夫か⁉」
焦る気持を何とか抑えて扉を潜ると・・・部屋には誰も居なかった。
けれども俺はある物に釘付けになってしまう・・・知らずに躯が震えてしまうのだ。
う、嘘だそんなの・・・何でこんな物が、
そっと其に近付く。一つの瓶に。其の中身から目が逸らせずに。
瓶の中は薄緑の液で満たされており・・・入っていたのは女性の首の様だった。
首丈になった・・・セレが、其処にっ、
急激に眩暈がして吐きそうになる。膝が崩れて呼吸が止まる。
何の冗談だ、如何してこんな物が・・・。
「ガ、ガルダァ・・・。」
一瞬幻聴かと思った少し甘える様な声に耳が動く。
振り返ると奥の長く垂れ下がった窓掛に隠れる様にしてセレが座り込んでいた。
首もちゃんとある、五体満足で健康そうな彼女が。
信じられずに俺が近付くとひしっとセレは俺の足元に抱き付いて来た。
目元が潤んでいる気がする・・・彼女は本物だろうけれど、未だ気持がぐるぐるして良く分からない。
「あ、彼って一体・・・な、なぁセレ、」
「・・・彼は多分私の複製品、良く調べる為に創ったって・・・、」
そ、然うか・・・良かった、本当に良かった。
と言うより本当何て医者だ、悪趣味にも程がある。
今迄の神生で一番驚いたので金輪際こんな事は止めて欲しい。
複製品と聞いても見て良い物じゃないので必死に視界から逸らす。
まぁ神なんだし、あんな技術位あるだろうけれど、其でも・・・余だ。
否、其よりもセレだ。彼女をしっかり見ないと。
「セレ、頑張ったな。もう全部終わったから上へ戻ろうな。」
そっと頭を撫でると何度も彼女は頷いて俺の足に顔を埋めてしまった。
耳も下がっているし、一寸震えている・・・普通じゃない。
BDE‐01がおかしくなって甘え捲っていたセレと一寸似ているけれど、今の彼女は只々恐怖している丈だ。
翼も尾も縮こまってしまって随分小さく見える・・・こんなに彼女が弱っているのは前世でも粗見た事がない。
「・・・若しかして何か変な事されたか?」
医者はそんなセレに目もくれず、書類を集めると上へ行ってしまった。
俺の視線に気付いてか小さくセレは首を横に振る。
「ち、違う。私が・・・一寸動揺した丈で、は、初めてだったから・・・、こんなの、慣れてなかった丈だから、」
其は何方の意味なんだろう・・・。
本当に変な事されてないか?大丈夫なのか?
トラウマ、植え付けられていないと良いけど、其の返答は可也不安だ。
此は確かに立てそうもない、丗闇の説教よりも喰らってる。
だとしてもこんな恐がらせられたこんな部屋に此以上居たくないだろうし、一寸無理矢理だけど連れて行かないと。
・・・と言うよりこんな状態で彼女を放置する医者も医者だけど。
「御免セレ、一寸手回すよ。」
そっと抱き上げたけれども彼女は大人しい儘だ。
と言うよりぎゅうって俺にしがみ付いてる・・・見ていて居た堪れない位だ。
そっと頭を撫で乍ら緩り階段を上がる。
彼女は酷く軽いから斯う言う時は楽だけれども、軽ければ軽い程脆そうで心配になる。
「おやおやぁ随分しおらしくなっちゃって、此が彼の虐殺神とは思えませんなぁ。」
「・・・笑い事じゃないんですけど、一体何をしたんですか。」
「そんな睨まないでくださいよぅ。私だって恐かったんですよ、そんな神様と二柱限になるのは。・・・本当に只の身体検査ですよ。」
一つ舌舐りをして医者は資料をぱらぱらと捲った。
「ガ、ガルダ、大丈夫、大丈夫だから。本当に、一寸私が、ほら前世の事とか考えちゃって・・・緊張しちゃって、過剰に恐がった丈だから、もう、大丈夫、だから。」
はっとしてじたばたとセレが暴れ出した。
不穏な空気を感じ取ったのだろう、こんな時でも彼女は気を遣ってしまう。
そっと彼女を椅子に座らせて隣に腰掛ける。
「・・・有難うガルダ、御蔭で・・・落ち付いた。悪かったな。心配させて。」
冷静な振りをしている丈にも見える。こんな直ぐ平常を取り戻せるとは思えないけれど。
彼女が其を望むなら俺は見護る丈だ。
「・・・無理丈はするなよ。俺は此処に居るからな。」
セレはちらと此方を見遣ると嬉しそうに頷いた。
・・・うん、もう大丈夫そうだな。
「済まない、時間を取らせた。でもこんな直ぐ分かる物なのか?」
「フフゥ、時間は無限なんで良いですよぅ・・・面白い物も見られましたし。」
「・・・先のも契約の秘密に該当するからな。」
「おおっと、其じゃあシーッですね!えぇえぇ了解です!ま、でも私の腕を舐めて貰っちゃあ困りますねぇ。私の手に掛かれば種族は疎か何の次元の何時の生まれか迄はっきり分かりますからねぇ。」
其は凄い・・・まぁだからあんな色々調べたんだものな・・・。
「其じゃあ期待しても良いんだな。私が一体何の種なのか、ずっと謎で知りたかったんだ。」
「うーん、すっかり冷たくなっちゃいましたねぇ、先迄の方が可愛気が、」
無言でセレの目が据わったので慌てて医者は咳払いをした。
「良いでしょう、良いでしょうとも。じゃあ一番大事な所に関してはメインディッシュにさせてくださいねぇ、物事には順序があるでしょう?取り敢えず先に言って置きたい事があるんですよぅ。」
「先にって何なんだ?」
「貴方方が気になっていた性質の方ですよ。色々解明出来ましたし・・・役に立ちそうなので聞きたいでしょ?」
「まぁ然うだな。今は血の事が一番気になるが。」
正直謎だらけだ。色々可能性はありそうな丈に気にはなっている。
「血ですかぁ、まぁ全身を流れている物ですし、確かに気になりますよねぇ。だからか、確かに中々特徴的な血でしたよぅ。」
医者は皓衣の内側を弄って試験管を取り出した。
中には黔い液体が入っているが・・・恐らく自分の血だろう。
「先ず面白かったのが、血は黔いのに貴方の肌は赤みがあって何方かと言うと皓いですよねぇ、此、如何やら皮膚の方に其の色への擬態能力があるみたいなんですねぇ~。」
「擬態・・・。」
前アティスレイにカメレオンみたいな物だと言われたのを何処か懐い出した。
自分も似た事をしていたのか。でも如何してそんな事、
「貴方の前世の次元には皓肌の人間が居たんですよねぇ、其等に擬態する為だったかも知れませんねぇ。擬態して、如何するつもりだったか迄は分かりませんがねぇ。中々興味深いですなぁ。」
喉の奥で笑って医者は試験管を何度か振っていた。
・・・前結晶化しているから其の扱いは見ていて少し不安になるのだが。
「加えて此方の成分も中々良かったですよぅ。可也、籠められている魔力値が高いです。と言うより高過ぎますなぁ。殆ど魔力其の物です。まぁ含まれている他の物の事も考えると此は厳密には血と呼べる代物じゃありませんがねぇ。」
「其って一体、如何言う事なんだ?」
「然うですねぇ、んん、此は少し説明するのが難しいですなぁ、順番がね、何とも。一応其で最近起きたとか言う結晶化?も説明は付くんですが。」
凄い・・・何だ彼だ言って本当に凄い医者なんだ。
彼の検査で其処迄分かる物なのか。まぁ確かに拘束時間は長かったけれど・・・。
「まぁ良いでしょう。先に話しちゃいましょ。只、恐らく御二柱にとって可也ショッキングな話になるでしょうけど、話しちゃっても良いですよねぇ?覚悟は出来てますよねぇ。」
何だ其の振りは。
医者が何処か楽しそうに舌舐りしていると獲物として見られている気がしてならない。
何の道そんな言い方されちゃあ聞かなくても気になるじゃないか、嫌なやり方だ。
そんな保険掛けなくても、自分はそんな躯でずっと生きて行くしかないのだから。
・・・まさか明日死にますとか、然う言う話じゃあないんだろう?なら大丈夫だ。
「続けてくれ、別に構わない。」
「はい!然う言ってくれると思いましたよぅ!じ・つ・は、セレ神さんは単細胞生物ですなぁ。」
・・・え?
硬直した儘動けない、一寸意味が分からない。
ついセレとガルダは示し合わせたかの様に顔を見合わせた。
・・・は?
え、意味が分からない、聞き間違いじゃないよね?うん、然う思う。
二柱は無口のアイコンタクトを交わして其でも首を傾げた。
「私が・・・単細胞だって。其って微生物とかの事じゃあないのか?」
「えぇまぁ其が多いですなぁ。」
あ、聞き間違いじゃないんだ・・・。
彼かな、自分達はそんな次元の知識が無いし、偏った考えしか出来ないからおかしいって思っているのかな。
「何方かと言うとナノマシンの方が近いですかねぇ、うーん。何とも面白い。・・・おや、如何されたんです御二柱共。噫若しかして聞いた事ないですか?」
「・・・然うだな、私達の知識と違うかも知れないからな。てっきり私は沢山の細胞で出来ている生物だと思ったんだが。・・・ほら、先取って行った爪の欠片とかみたいに。」
何だか自分で言っていて変な気分だ・・・結局何なんだ、私は。
「おやぁ~ちゃんと分かってるんじゃないですかぁもう神が悪いですねぇ然うですよ。今のセレ神さんは沢山の細胞で出来ているんですよぉ。」
自分達の反応が面白いのか興味深そうに医者は見詰めていた。
い、いやでも合っていたのか良かった・・・ん?今の?今って何だ?
「何だか混乱しているみたいなのではっきり言いましょうかねぇ。つまりセレ神さんは、たった一つの細胞丈で存在しているんですよ。そして今の貴方の姿は其の単細胞が集まって取っている姿なんですよぅ、フフゥ、珍しいですねぇ。」
「ん・・・ん?単細胞の集まり?」
其って結局単細胞生物じゃあないんじゃないか?皆と一緒なんじゃないのか?
「んー小魚が集まって群れて大きな魚の振りをしたりするの知りません?其と粗一緒って事ですよぅ。」
「魚の集まり・・?私がか?」
「セレ、な、一寸落ち付こう。深呼吸したら・・・分かるかも。」
余りにも自分が混乱していたからだろう、何度かガルダが肩を叩いてくれた。
そ、然うだな。勘違いしちゃあいけないし、良く考えよう。
「あぁーガルダ神さん、今貴方何百何千ものセレ神さんを殺しちゃったんですよぅ。叩き潰すなんて酷ですねぇ。」
「え、え⁉な、ど、如何言う事、なんだ、」
二柱しておろおろしてしまう。此じゃあ落ち着けない。
「ハハァ本当面白いですねぇ二柱共。私先セレ神さんは単細胞だって言ったじゃあないですか。だから肩をそんな風に叩いたら肩の表面の細胞は死んじゃうでしょ?いやぁ~中々やりますねぇ。」
「え、えっと御免セレ、俺・・・、」
「いや、別に痛くも何も無いし、御蔭で少し落ち着けたからそんな心配しないでくれ。」
本当嫌な言い方をする医者だな・・・。
ガルダに触れられると安心するし、こんな事で止めないで欲しい。
そんな事言ったらガルダの方がずっと死んでいるし、再生する丈で死んでいる事に変わりはない。
しゅんとしてしまったガルダの背に尾を回すと彼は苦笑して頷いてくれた。
「フムフム、本当面白い生態ですねぇ。一部でも生き残ったら勝ち、然う言う考え方で動いているのですねぇ。まぁ多少でも残れば分裂して増えれば良いんだし、然う言う事ですかぁ・・・。」
「えっと・・・一柱で納得しないでちゃんと其の辺りは教えてくれないか?」
行き成りが衝撃的過ぎる。まぁでも此処じゃなきゃあそんな事分からなかったし、此は良く聞かないと。
「噛み砕いて言うと、然うですねぇ。貴方の細胞を一つ取り出したとしますね。すると其が物凄く小さなミニセレ神さん、と言う事なんですよ。目も髪も内臓もちゃあんとあるんです。」
其、一寸気持悪い・・・じゃあ此の掌丈で一体何柱自分が居るって言うんだ。
「でも、其だと変じゃないか?私別に、手は手ってあるし、足に目があるなんてないし、躯としては・・・普通、と言うか・・・、」
いや普通ってのも何なんだ。言っていて自分でも良く分からなくなって来た。
「然うですね、其が又面白いんですよぅ!と言うのも、如何やらセレ神さんの細胞はたった一つでも生きて行けるんですよぅ、一寸採取して調べたんですがねぇ。只、細胞一つだとちゃんと捕食だとか危機察知能力、逃避行動も見られたんですよちゃんとねぇ、生きているんです。ま、細胞一つ分なので其の行動結果自体は微々たる物ですがねぇ。」
捕食・・・一体自分の一部に何を喰わせたんだ。
逃避もそりゃあ然うだろう。ミニサイズの自分からしたら彼は化物なのだから逃げようともする。
自分と言う仲間から切り離されてそんな実験に晒された其の一つの細胞に同情を禁じ得なかった。
心底可哀相だが、其の子は一体如何してしまったんだろう・・・。
「其処で試しにもう一つ細胞を取って近付けてみたんですよ。すると二つの細胞はしっかりくっ付いて、片方は思考や記憶だとかの脳に当たる機能を発達させ、もう一つはより行動が活発になったんですよ。まるで手足みたいに、ねぇ。凄いでしょ!」
凄い・・・凄い?未だ今一良く分からないのが本音だ。
と言うより又新たな犠牲者が増えている・・・此が実験動物の気持か。
「如何やらセレ神さんの細胞は集まれば集まる程、其々の部位を発達させて成長させる性質があるみたいなんですねぇ。脳になったり、翼になったり内臓になったりと役割分担がなされるんです。」
「一寸は分かって来たが・・・其が結局は如何なるんだ?」
「良い質問ですねぇ!例えば、ですけど、若しセレ神さんの内臓が一つ消えたとするでしょ、肺とか心臓とか、あ、心臓は無いんでした、じゃあ胃にしましょう。」
“じゃあ胃にしましょう“じゃないよ。何其の狂気の前提。
何が起きて突然胃が無くなるって言うんだ。
「胃が無くなると・・・勿論困りますよねぇ。其処で貴方の細胞は考えます、余っている細胞を充てれば良いのではないか。若しくは他の所を少しずつ削って仮の胃を作れば良いと・・・ね?此処迄来れば私の言わんとしている事は伝わるでしょう。」
医者が嫌な笑みを浮かべて喉の奥で笑っていた。
もう悪の科学者って言った方が納得出来る顔だ。
でも其の気持は分からんでもない、自分だって事の重大性に気付いたのだから。
笑うのも、無理はない。其程の発見だ。
「・・・本当にそんな事が私の躯の中で起こっているのか?」
「粗、間違いないでしょうなぁ。腕をぶちっと千斬って一ヶ月位観察したら確実に分かるんですが、まぁでも過去に覚えがあるのでは?」
前世の事を思えば・・・確かに当て嵌まるな。
目が潰れても治っていたし、尾や翼も生えて来た。時間が掛かっても再生能力はある、位に思っていたのだが。
其とは又別のメカニズムだったのか・・・確かに興味深い。
「自分で自分の躯に応急処置が為易いと言う事か。」
「変化し易い、とも取れますなぁ。細胞単位が考えて動くのだから、感情に反応して動く、と言う事もあるでしょう。」
「確かに・・・怒ったりしたら甲が伸びたりしたが然う言う事か・・・?」
「そ・れ・に、今貴方が自覚をした事でより扱い易くなったかも知れませんよぅ其の躯。手がもう一本欲しい!とか願えば足が一本手に変わるかも知れませんねぇ。より早く、柔軟に、ねぇ。」
「然うか、細胞の総量は一緒だから何に使うかが問題なのか。」
一寸試したい様な、恐い様な・・・。
足は二本欲しいのであんな事願う訳には行かないし、頭の片隅に置いて置こう。
でも其だと・・・何だかアメーバみたいだな、自分。柔軟になり過ぎたらなりそうで一寸恐いな。
「珍しい事に髪だとかの細胞も生きた物だったので使い様はありそうですねぇ。余剰分が髪になっている可能性はあります。」
嫌だな其・・・怪我すればする程禿げるって事?まぁ髪が腕になったりしてくれたら助かるけれど其処迄失いたくはないな。
「加えて、何とも良く動く単細胞生物なので、恐らく怪我とかで分離してもくっ付けとけば一つになりますよぅ?修復に多少時間は掛かるでしょうが。」
其は一回試した様な・・・?
丗曦にバッサリ一刀両断された時に黔い痂みたいな物で胴がくっ付いた筈。彼の事か?
「テロメアとか無いんですかねぇ制限・・・ムム、此は又一寸調べないと・・・、いやぁ良い躯してますよ本当。」
此の医者に褒められても恐怖しか沸かないが・・・腕は本物だったんだな・・・。
「・・・な、なぁ若しかして其ってもう一柱セレが創れたりとか・・・するのか?」
其迄黙って口をぽかんと開けていたガルダが突然口を挟んだ。
地下で見た、セレの生首が忘れられないのだ。
彼は若しかしたら・・・。
「成程、何でも作れる細胞なら分けて置けば何時かもう一柱の私が生まれるかも・・・?」
何て手軽なクローンだ。
・・・と言うより其が出来たら最強じゃないか?
自分がもう一柱居たらって言う願いを其の儘叶えられるじゃないか。
然も一柱じゃない、何十柱何百柱・・・其こそ八百万の神全て自分みたいな事も・・・。
わぁ凄い、夢が膨らむなぁ。
・・・とか、セレは思っているんじゃないだろうか。
少し苦い表情の儘、ちらとガルダはセレを見遣った。
ほらそんな顔してる、迚も楽しそうな嫌な笑みを浮かべてる・・・。
俺としては余りやって欲しくない手段なんだけど、彼女は嬉々として実行するよな。
そして命が無限になったと許りに滅茶苦茶無茶をするんだろう。
具体的に何をするか分からないけれど、確実に死に捲る気がする。
寧ろ店の場所を知られない為に店から出たセレは全て自死プログラムが組み込まれるかも知れない。
其は嫌だな・・・セレの死体で山が出来るなんて何て悪夢だ。
「んん、其はですねぇ・・・時間をしっかり掛けなきゃはっきり言えませんが、恐らく無理ですなぁ。いやね、良い所迄は行ってるんですよ。でも如何やら途中で細胞分裂が止まっちゃって、停滞するみたいなんですよねぇ。脳が出来切る前に、最低限生きられる構造を作って待機しちゃうんですなぁ。」
「然うか・・・其処迄上手くは行かないか。」
何故かガルダがほっとしている様だけれど・・・残念だ。色々面白そうだったのに。
「寧ろ二柱以上にならない様に出来ている様で、完全体である貴方一個体から、クローンが出来ないようにフェロモンだとかが出ていると思われます。意思の乱れ、同士打を防ぐ為かも知れませんねぇ。」
「然う言えばBDE‐01は一つしかないんだから抑無理だったのか、ううん、残念だ。」
―然うデスヨ、だからアイをもっと労ってクダサイ。―
―・・・頑張って二つに分裂したり出来ないか?―
―マスターは神じゃなくて鬼だったんデスネ。良いデスヨ、息をする丈で精一杯なクローンを大量に作れば良いんデス。―
―御免なさい、一柱で良いです、十分です。―
「まぁでもそんな悄気ないでくださいよぅ。手足にも意思が宿っていると分かれば、貴方は活用法を見出せるんじゃないですかぁ?フフゥ、是非私も聞きたいですねぇ。」
「意思・・・全身で思考している、か。何だか不思議だな。」
改めてまじまじと手を見遣るが何時もと変わらない。
別に無数の目や口がある訳でもない。でも此の一つ一つが生きて、存在している。
「さぁて、やっと話を戻せそうですねぇ。そ・れ・で、先の血の話になるんですがねぇ、大丈夫ですか?如何して貴方の血が結晶化しちゃったのか。」
「今の話と繋がるのか・・・?」
意思と血が・・・?頭がパンクして聞き漏らしそうだがちゃんと聞かないと。
「フフゥ、良いですねぇ。如何やら此の血、否、血の様に液体化した物はつまり、貴方の細胞なんですよ。敢えて他の細胞とくっ付かず、魔力を動力として全身を廻る様に出来ていましたぁ。自由に使える活発な細胞としてストックしているんでしょうなぁ。」
「ストック、予備が血なのか。」
ちらと未だ彼が振っている試験管を見遣る。
血は変わらず只の液体の様に振られている。
彼の狭い中に何百何千の自分が入っていると思うと少し可哀相になって来る・・・。
「確かに手足の甲は此の血が固まった物でした。指先を怪我していると言う事だったので其処から出ている血が固まって、手足を保護しているんでしょうなぁ。此の血丈は他の細胞と少し丈働きが違う様なんですねぇ。魔力を多分に含んでいるからか可也硬質化する事が出来る性質を持っていましたぁ。そして其のメカニズムが如何やら条件反射だとかの反応ではなく、意思により、自由に変えられる様なんですなぁ。」
「意思って、私が思えば血が固まるとでも言うのか?」
「ざっくり言うと然うですねぇ。最近成長なさったそうですし、其に因り細胞間の意思伝達が前よりスムーズになっているのかも知れません。だから手足以外も反応する様なったんですよぅ。例えば・・・外敵とかね。」
外敵・・・然うか、血が結晶になったのはBDE‐00や、前の次元の鮫男と戦っていた時だった。
彼等は敵だと、判断していたなら・・・然うか!
「私が然う思った様に、血も、敵と判断して攻撃として結晶になった・・・?」
「えぇ其の通りですぅ、細胞に意思があるなら血も然うなんですなぁ。いやはや、数の利とは恐ろしい物です。念の為調べてみましたが尾の甲は又別物でしたよ。手足丈、応急処置的な扱いで血に覆われてました。・・・血については以上で十分ですかな?」
「・・・噫、良く分かった。」
まさか然う言う事だったなんて。自分の意思・・・と言うより正しくは自分達の意思で反応している。
だからあんなに医者が試験管を揺らしても反応が無い訳だ。
其でも自分が彼を敵と判断すれば・・・其の限りじゃあないが。
「あ、一応・・・ほぅら、此が現物ですよぅ。綺麗に結晶化しましたなぁ。」
又皓衣を弄って医者は別の試験管を出した。
今度は血の代わりに黔曜石みたいな石が入っている。
「確かに・・・然うだな、此だ。私が言ったのは。」
良く良く見れば、矢っ張り手足の甲と似ている。本当に血だったんだな。
「俺も初めて見たけど・・・綺麗だな。」
「・・・元々私の血だぞ?」
「其でも宝石みたいで良いと俺は思うぜ。」
ガルダに然う言われると何処かむず痒い・・・。
「あれ、でも結晶になるのってセレが敵って判断した時じゃなかったっけ。」
途端又ガルダの目が坐った。
「矢っ張りセレに何かしたんじゃないですか、検査に託けて何したんですか。」
「ガ、ガルダそんな突っ掛からなくても、」
今回のガルダ、随分と目聡いな。
うん、恐らく何かはされていたと思う。血を採った後嗤い乍ら何かしていたから。
でも自分は其の時にはもう震え上がっていたから正視は出来ていない・・・。
「煮沸です。」
火炙り⁉
二柱の躯がビクンと同時に跳ねる。
酷い・・・何て事を、其拷問だよ。
流石に自分も火炙りはされた事無いな・・・焼き印はあるけど。
絶対苦しい奴だし、せめてもの抵抗が結晶化だったのか。
「炙ったりツンツンしたり凍らせたりしたら徐々に変わりましたよ。途中で攻撃されているって気付いたんですねぇ。不覚にも私も可愛いと思ってしまいましたよぅ。」
・・・何処が?
其、数多の拷問に必死に堪えた結果の細やかな抵抗だよ。
可哀相に・・・死ぬ位なら道連れにしようと思ったんだな。頑張ったよ御前達。
ガルダも何て答えたら良いか困った様で閉口していた。
血も又彼女自身なのだから酷い事をされたって言うのは間違いないけれども・・・うーん難しい。
そんな直ぐ認識は変えられないと言うか、思考が追い付いていないのが正直な気持だ。
と言うよりそんな事で怒っていたら調べる事も儘ならないからまぁ・・・仕方ない、のかな。
「後話せそうなのは・・・うーん牙に毒腺がありますよって事、位ですかねぇ。」
「え、毒・・・?セレ、そんな物持ってたのか?」
「みたいだな、私も前から気になってたんだ。」
然う試せる環境が無かったので憶測の域を出なかったが。
血が止まり難い解血毒があるのかも・・・?と言う事は前ソルドと争った時に見付けたが、其限だったな。
「只毒は・・・少々難解でしてねぇ、可也気化し易いので保存が難しいですし、幾つか効果もあるみたいなので完全に分かるには時間が掛かりますなぁ。其にはっきりと反応がある感じではなくてですねぇ、決め手に欠けると言いますか、そんなに強力じゃあないんです。」
「何だ。じゃあ致死毒とかじゃないのか。」
「セレはそんなの欲しいのか・・・?」
そんなの、本当に全身凶器になってしまう。
牙に毒って・・・何か斯う、思いもしない所で接触しないとも限らないし・・・。
「あって困る事は無いだろう。只気化し易いとなると・・・用法は限られてしまうな。」
「用法って何考えてたんだよ。」
又俺で試されちゃあ恐いし、ちゃんと聞いて置かないと。
「別に良くある奴だ。爪に塗ったり、零星に付ければ即席の暗器になるなぁっと思った迄だ。」
噫まぁ・・・然うか。
毒は・・・俺如何なんだろ、即死じゃないから治るかも知れないし、逆にじわじわダメージを受け続ける可能性もあるよな。
・・・別に気になったからって試そうとは思わないけど、其処で試しちゃうのがセレなんだよなぁ。
「うーん、別に其処迄便利な毒じゃあないですねぇ。軽く成分を見ますと、溶血毒がメインの様ですなぁ。其と、本の微量ですが神経毒も含まれますねぇ、少し珍しいタイプの。」
「神経毒って・・・如何なるんだ?」
「良くある分だと、動けなくなってしまいますなぁ。神経が麻痺しちゃってねぇ。只、今回の毒は其処迄勁くは無いんです。吸った所で、少し頭がぼーっとする、其の位でしょう。まぁ勿論、相手に因って毒の効果は大きく変わるので何とも言えませんが。然うなる事が多いって位で見てくださいねぇ。」
「・・・確かに其は何とも言えないな。」
思っていたよりもショボい・・・いっそ猛毒だったら良かったのに。
毒って如何にかして勁くなったりはするのだろうか?
「何だか、成分丈見ていると一寸した媚薬みたいでもありますがねぇ。此を部屋に捲いたら良いムードになるかも知れませんなぁ。」
「・・・あの、セレを然う言う目で見るのは止めてください。」
「おっと、こりゃ失礼しましたぁ。」
全く悪びれる様子もなく、医者はチロリと舌を出した。
・・・何処迄冗談なのか良く分からない。
「とまぁ調べて分かったのはこんな所ですかねぇ。」
試験管を戻し、医者はパラパラと紙の束やら機器をざっと見回した。
凄い、可也の成果だ。manjuが勧めた丈はある。
・・・もう一寸注意喚起、とかは欲しかったけれど。
「んー後の細々とした事は他の調査結果が出たら又改めて教えますよ。大事そうな事丈話して置きましょ。そして此処からは可也私の推論が入るので、一応話半分に聞いてくださいねぇ。」
「ん?あ、噫、」
然うか、今迄のは只のデータ、じゃあ其処から彼は一体何が分かったんだろう。
然う言う外からの意見は貴重だな。
「今のデータしかないので断定は全く出来ませんが、恐らく検た・・・おおっと、セレ神さんの躯は一寸ずつ精霊寄りに作り替わってますねぇ。一寸人間っぽい姿から少しずつ、昔からの変化が分かればもっとはっきり調べられるんですがねぇ。」
「精霊・・・ノロノロみたいにか。」
うーん、彼になるのは嫌だなぁ。
其でも一応殺しの精霊だーとかノロノロも言っていたし、然う言う物なのかな。
「魔力主体の躯になって行っていると言いますか。見ていて如何も中途半端なんですよ貴方の変化は。効率が精霊と比べて全く良くない。かと言って精霊じゃないかと思えば余分な物が多過ぎる。分かります?まるで進化の歴史の途中経過みたいなんですよぉ。」
「効率が悪いのか・・・何だか少し悲しいな。」
昔から不調が多いのは其の所為だったりするのだろうか。
成長痛だ、とか言って遣り過ごしていたけれども。
「元々魔力が余り要らない躯だったのが、必須になって行ってるって具合ですかねぇ。魔力の方が使い易いと思ったのでしょ。只、今は其の躯の作り替え中、みたいに私には見えましたねぇ。」
「成程・・・ん、でも魔力の方が使い易いって、そんな風に適応する物だったか?」
確か進化とかって、斯うなりたいと願ったら変化する物じゃない。色んな変化を持った個体が複数生まれて、其の中から偶然環境に適応した者丈生き残って繁栄して行く・・・。
然う・・・聞いた気がするな。彼は・・・ナレー・・・からだったか?
流石元教員だったな、あんな嫌っていたのに教え丈はちゃんと埋め込まれている・・・複雑な気持だ。
「あぁ~セレ神さん御存知で?然うですなぁ、そんな次元が多いです。じゃないと滅茶苦茶に進化しちゃいますからねぇ。次元からの管理が出来なくなっちゃうんでしょ。でもねぇ、昔私、ある例外を診た事があるんですよぅ。」
診たって其・・・解剖じゃないだろうな・・・。
でも例外、進化の例外って何だろう。
「“俺は只のフィロソフニア族じゃない!一族を超えた存在だ!”なんて本気で信じて暴れ回った化物がいたんですよ。いやぁ懐かしい、もう何百年前かなぁ。確かに彼は一族から大きく逸脱していた。私も目を疑いましたよぅ。」
「其の話、もっと詳しく教えてくれないか?」
医者は口端を上げて何とも満足そうだった。
割と、御喋りな口らしい。
「えぇ良いでしょ。彼は只のしがないフィロソフニア族の男でした。個体名は・・・ソルニア・ソルレオ、だったかな?でも自分は皆と一緒じゃないって痛い位に信じてましてねぇ、種族丈で判断するな、俺自身を見ろって其はもう元気一杯で・・・、」
「あの、済まない、抑フィロソフニア族って何なんだ?」
ちらとガルダを見遣ると彼も一寸考え込んでいた。
「うーん・・・聞いた事はある気がするけど、何だったっけ・・・。」
「おおっと其は失礼!フィロソフニア族はある次元に棲む者の呼称ですぅ。何でも、其の次元の神に反発した所為で力の全てを奪われた一族で、だから力も、頭脳も、存在も全て最弱と言われている一族ですよぅ。半殺しと言いますかぁ、生き乍らに死んでいると言うか。」
「あ、其だ。確か生き乍らに罪を背負った者、だっけ。」
「おやおや、裁く側っぽい言い方するじゃないですか。宗教観でも御持ちで?」
途端ガルダの目が坐った。・・・可也不服らしい。
・・・何だかガルダの然う言う顔、滅多に見られないから不思議な気分だな。
「別に、然う聞いた事があるって丈で。」
「然うですかぁ然うですかぁ。まぁ言い得て妙ですねぇ~。ま、其処の男が此処に来たんですよ。自分の事を見て欲しいって。どうせ並みより一寸優れている丈で、凡神だと思っていたんですがねぇ。」
ふーん、然う言う一族なんていたのか。
何と言うか不憫だな・・・余り他者の事言えないかも知れないけれど、自分は見た目が化物って丈だし、陽に丈気を付けていれば生活は出来るんだし・・・な。
「調べてみたらもう滅茶苦茶で、何丈躯が千斬れても再生するし、魔力は尽きないし、一応灯属性だったのに何の術も高等レベルで使えるし、色々規格外で面白かったですねぇ。」
「其は中々、骨がありそうだな。」
再生し続ける奴って如何相手すれば良いんだろう。一寸気になるな。
「フフゥ、然うですねぇ。セレ神さんと良い勝負が出来そうですねぇ。ま、別に私は戦闘知識なんてからきしなので彼がどんな風に戦うのか知らなかったですがねぇ。其に結局はフィロソフニア族です。どんなに優れていても本質は変わらない。一族の弱点である、心臓が一瞬でも止まれば死んでしまう呪いは彼も例外じゃあなさそうでしたがねぇ。」
「其処は私と逆なんだな。」
逆と言うか、まぁ自分は無い丈なんだけれど。
「良いですねぇ、興味出ましたかぁ?ま、結局彼は光の国に突っ込んであっさり捕まっちゃったんですがねぇ。只暴れたい丈だったのか何なのか、若気の至りって奴ですかねぇ。ま、可也暴れ回っていたみたいですけど、其の後の事は知りませんねぇ。拷問か実験でもされたか・・・勿体無いですねぇ、私ももう一回解剖したかったのに。」
あ、一回したんですね解剖・・・。
良かった自分はされなくて・・・ガルダの脅しが効いたのかな。
「光の国へ・・・?そんな事あったんだな。」
「まぁテロ位考えている奴は山程いるんじゃないか?」
ガルダは苦笑してそっと自分の頭を撫でた。
「然うかも知れないけど凄い勇気だと思うぜ。俺やろうとも思わないし。」
・・・?何だろう、一寸丈其の言い方は違和感があった。
ガルダらしくないと言うか・・・ふーん。
「おや、何処から此の話になったんですかな?噫然うでした。セレ神さんと彼、共通点があったんですよぅ。だから懐い出したんでした。いやぁ御喋りはいけませんなぁ。」
「共通?余り今の話からだと想像出来ないが。」
「あるんですよ。こ・れ・が!如何して二柱共そんな変な進化、特異体質を会得したのか、其は恐らく其の並々外れた干渉力にあると睨んでいるんですよ、私は。」
「確かにセレの干渉力、高いもんな。」
「そんなにか?でも願えば何でも出来る、其が神の干渉力だろう?」
昔・・・目醒めた時に然うガルダが話してくれたんだ。
「そんな何もかも思い通りじゃあ無いですよぅ!可也世界からの制約を受けますぅ。其でも我を通せるのは可也の勁さなんですよ。」
「う゛、セレ御免、俺の話一寸曖昧だったな。彼の時は分かり易くしようと思ってあんな例出したけどさ。」
ふーん、然うなのか。
干渉力って思い込みパワーみたいな物でしょ?
其が高いのって、便利なんだろうけれど・・・うーん。
「でも干渉力が高いと如何して其が進化と繋がるんだ?」
「簡単ですよぅ。普通進化とは望んで得られない物です。遺伝子だとか環境変化の産物です。でも其を自由に出来たら・・・?自分が都合が良い様に進化しますよねぇ?」
「自分を自分で進化させると言う事・・・か?」
「自分の願いを自分で叶える、とも言いますなぁ。ハハァ何て神さんだ。我儘にも程がありますねぇ。其処で、最後に持って行こうと思いましたがセレさんの種もネタばらししちゃいましょうか。」
「そ、其分かったのか⁉」
メインにするって言っていた奴だ。其が一番気になっていたから是非聞きたい。
「んーそんな期待されても困っちゃいますけどねぇ。はっきり言っちゃうと・・・セレ神さん、貴方と同じ種は存在しません。けれども、類似種は沢山見受けられました。」
「え、本命はいないけれど類似が・・・?もう少し詳しく話してくれ。」
如何言う事だ?個体差が激しいとか然う言う事か?
「えぇ、良いでしょ。セレ神さん、貴方と全く同じ種は私存じて無いんですよ。ま、未だ知らない種である可能性もありますが。けれども其の身体的特徴の一つ一つは色んな種族に共通しています。」
ちらと医者はセレの全身を眺めて舌舐りした。
・・・うぅ、未だ悪寒がする目だ。
「其の手足の形状は鳥龍種バジサシムスと良く似ていますし、血が宝石になるセイレナ族もいます。目はムツメウサギとそっくりですし、二又の尾は猫又のと似た骨格でした。翼はエイサムの民と牙飛族のが合わさった様ですし。だから何処を取っても既視感しかなく、オリジナルティが無いんですよ。」
「何だ其は・・・じゃあ私は其奴等のキメラ、と言う事か?」
「フゥム、然うとも言えますなぁ。只、キメラと言うよりは私は斯う考えたんです。先言った彼、フィロソフニア族の彼は、一族が反発した神に強く憧れていると、気付けば神其の物になっていた然うです。同程度の干渉力を若しセレ神さんが御持ちなら・・・一つ思い当たる事象がありませんでしたか?」
「事象?何かあったかそんな事。」
ちらとガルダを見遣ったが彼も首を傾げるのみだった。
・・・思い当たる所なんてあるか?
「貴方は世界中の種族を見た大旅行をしたじゃないですか。忘れたとは言わせませんよぉ。」
「旅行って・・・然うか黔日夢の次元か⁉」
いや不謹慎過ぎるから。
でも然うか・・・黔日夢の次元で自分は数多の次元を見、知識を蓄えている筈、其の知見を活かせるのなら、
「然う、貴方は迚も有意義な旅行をしました。次元を見て、優れた生物を沢山見た筈です。其の上で斯うは思いませんでしたか?噫、彼の手足が欲しい、目も便利然うだ、もっと斯うあったら・・・と。ま、貴方自身が然う思ったのか無意識かは分かりませんがねぇ。」
「・・・つまりは願ったから干渉力で姿が変わって行った、と言う事だな。」
「えぇ!だったら色々説明が出来ます。もう変わり過ぎたから、貴方の種族は分かり様も無いんですよ。ある種キメラ、ある種新種、とも言えますなぁ。」
「成程な、良く分かった。」
「ん、あれ、でもセレは前世でもこんな翼や手足だったのに、其って変じゃないか?黔日夢の次元以前もセレはセレだったぞ?」
「噫確かに然うだな。其の時は私も干渉力とか神の事とか知らなかったし。」
「おや?然うですかぁ・・・当たってると思ったんですけれどねぇ。ま、此は只の私の推測なので、一寸又考えて置きますかねぇ。」
「其でも、今からでも十分変化する余地はあると言う事だな、先迄の話なら。」
「えぇ、十分に可能性がありますよぅ。試しに今度良さそうな躯があったら願ってみては如何ですか?自覚した上ならより分かり易く変化するでしょうし。」
「・・・まぁ考えて置く。」
可也其は使えるな・・・其でも良く良く気を付けないと。下手したら取り返しが付かなそうだし。
「でもセレ、余り無理するなよ。只でさえ不安定なんだから何か起きたら、」
「噫然うだな。私もそんな変わりたくないし、知って置く位にするよ。」
―然うデスヨ、アイの負担が又増えそうなので程々にしてクダサイネ、マスター。―
―死ぬよりはマシなんだから使う時は使うぞ。―
―何で鳩サンとアイで返答が違うんデスカ。―
そりゃあ自分が可愛い丈の子に対しては冷たくもなるよ。
「だから、でしょうかねぇ。其でも決して良い事許りじゃないんですよ其の進化って。躯の都合なんて考えずに自分が良いなと思った方へどんどん進化しちゃうでしょ?だから歪が出来てしまうんですよぅ。」
「歪、一寸・・・思い当たる様な。」
具体的に躯がそんな風に進化する様になったのは何時か分からないが、前世で成長痛だって思っていた痛みや、構造的に無理がある所と言うのは幾つか思い当たる所がある。
其も又歪の一部なのだろう。BDE‐01が必要なのも、若しかしたら其の辺りも関係しているかも知れない。
此が無いと生きられないのは其丈無茶な進化を繰り返しているから、其なら納得出来る。
「分かっているなら良いです。そんな事で自滅なんてしたら勿体無いですからねぇ。だから今からは其の歪を直す事も念頭に入れたら良いと思いますよぅ。然うすれば確実に貴方は最強に近付ける。」
「最強って、何だか随分チープな表現だな。」
「でも分かり易いでしょ?全ての生態系の頂点に立てれば・・・フフゥ、其処からの景色は嘸素晴らしいでしょうなぁ。楽しみにしてますよぅ。」
チープだが、まぁ憧れる所だな。
最強かぁ、言う程簡単で単純な物ではないと思うけれど。
若し手が届くなら・・・一寸頑張ってはみたいな。
「さぁてと、如何ですかねぇ。現状話せるのは此の位だと思いますぅ~。後は今回採取した物を時間を掛けて調べれば又幾つか分るでしょうなぁ。変化のメカニズムも解明されれば、本来の種も判明するかも知れませんねぇ。ま、分かった所で恐らくもう欠片も似てないでしょうが。」
手に持っていた資料をパンと叩いて医者は満足そうに頷いた。
何とも満足気だ。此からの実験に心躍らせているのかも知れない。
・・・済まない、自分の一部達・・・実験の為に全力で頑張ってくれ。
其にしても凄い進展だ。思っていた以上の収穫はあった。
正直、医者を見縊っていた。どうせ分からないだろうなぁと一寸諦めていた所だから。
契約をして置いて良かった・・・此処の情報は可也貴重だ。何に利用されるか分からない、レベルの高い情報許りだった。
「分かった。・・・有難う、可也今回ので分かった。引き続き宜しく頼む。」
「此方こそ御贔屓に~。未だ未だ調べたい事はあるので時間がある時は何時でも来してくださいね。」
「う゛、あ、わ、分かった。」
未だ未だあるのか、まさか彼が本の挨拶とでも言わないだろうな。
・・・若しかしたら甲のサイズ一枚一枚とか、再生スピードだとか色々恐ろしいデータを取る気なのかも知れない・・・。
「セレ、行く時は俺も一緒だからな。その・・・無理丈は本当駄目だからな、変な気とか使うなよ。」
「噫然うする、有難うガルダ。」
「ウゥムム・・・そんなに私信用無いですかぁ?ま、セレ神さんが快く実験に協力してくれるなら何でも良いですけどね。」
え・・・次は実験するの?だったら来ないよ、二度とこんな所来て堪るか。
「・・・所で、ガルダ神さんはしてみませんかぁ身体検査、とおっても楽しくて充実した時間を過ごせますよ。何だか貴方も一寸変わった神っぽいですし、一寸其の辺り興味が、」
「有難う御座いました失礼しますっ!」
慌ててガルダはセレの手を取ると一目散にニコニコ病院から飛び出した。
「残念です、其じゃあ又今度~。」
背後から陽気な医者の声がして扉は閉まる。
こ、今度は出られた・・・。止められなかった、彼の医者も満足したんだ。
「お、終わった、のか。」
力が抜けたのかへなへなとセレが地面に座り込んだ。
矢っ張り未だ本調子じゃあなかったんだ。あっさり何の抵抗も無しにセレは俺に引っ張られたし、力が入らないのだろう。
「然うだな。・・・何か思っていたのと随分違っちゃったけど、大丈夫かセレ。」
「大丈・・・あ、いや、ガルダの前で意地張るのもな・・・。一寸堪えたみたいだ。」
然う言って苦笑する彼女は余り見られない顔をしていた。
そんな風に彼女が弱音を吐くのは、一寸珍しい。
まぁもう出来れば二度としたくない体験をしたんだし、当然だな。
「だよな、俺も何か色々疲れちゃって・・・帰ったら暫く緩りしようぜ。色々凄い事も分かったしさ。」
「然うだな、考える事が一杯だ。でも連れて来てくれて有難うガルダ。御蔭で本当に色々な事が分かった。」
「んーまさかあんな医者だとは思ってなかったから申し訳なさで一杯なんだけど、セレが然う言ってくれるなら、一応良かったかな。」
話してはいるけれど、中々セレは立てそうになかった。
余り病院の前に居るのも良くないし、又一寸やろうかな。
「じゃ、早く店に戻ろっか。」
然う呟くなりガルダはセレに背を向けて屈んだ。
「・・・ん?如何したんだガルダ、何をしているんだ?」
「歩けないだろ、店迄負ぶって行くからさ。」
「っ⁉い、いやそんな、其処迄して貰わなくても、」
「いや歩けないんだから此しかないだろ、頑張ったんだし、一寸位甘えても誰も怒らないって。」
暫くセレは困った様に慌てた様にバタバタしていた。
其でも矢っ張り立てない様で彼女の中で可也葛藤している様だ。
「・・・・・。」
只じっと辛抱して待っていると怖ず怖ずセレは手を肩に置いて来た。
お、意外に乗る気だ。あんな非日常を経験したから流石に甘えたくなったのかな。
「んじゃ、しっかり持ってろよ。」
セレは可也軽いのであっさり立つ事が出来る。
本当に羽根の様に軽い。背中の冷たさで彼女の存在を確認しないと分からない程に。
「・・・ガルダは何時も温かいな。」
背中にしっかり掴まってセレは一つ息を付き、頬を寄せた。
凄く温かい・・・気を緩めたら直ぐ寝てしまいそうだ。
「セレは冷たいから暑い時は良いよな。」
「気温が高くても私は大概寒いから嬉しくはないな。」
「然うだな、一杯毛布とか買っといた方が良いかもな。余冷やしちゃ躯に悪いだろ。」
「一杯の毛布か・・・一寸夢があるな。」
「んー何か安い夢じゃないかセレ。ま、今日頑張ったし、其の夢叶えても良いけど。」
「頑張ったって、私がしたくてした事だし、私自身はそんな何もしてないよ。知りたい事も知れたし。」
「斯う言う時は素直に甘えた方が良いぞ。折角俺が買う気なんだしさ。」
「ん・・・んん、ま、まぁ然う、かも知れないけれど。」
そんな風に甘え切れないのはセレの昔からの癖だ。
別に遠慮なんて要らないのに、直ぐ彼女は負い目を感じてしまうんだから。
まぁ良いや、勝手に買って部屋に入れて置こう。モフモフ過ぎて彼女がベッドから出られなくなる様になるのを買おう。
「其にしても・・・まさか私が単細胞生物だったなんてな。」
「本当な。言われた時は本当吃驚したけど、何か・・・不思議な感じだよな。」
「噫、益々自分が分からなくなってしまったな・・・別に自覚したから如何斯うって事は無いが、其でも一寸は気になってしまうな。」
「若しかしたらもっと沢山食べて栄養付けたら細胞が増えて成長するんじゃないか?」
「かも、な。此以上何処が成長するんだって具合だが。気付いたら又尾が増えたりするかもな。」
「ハハッ、ケルディと良い勝負だな。一寸今晩も手を加えたの作るかな。」
「・・・本当ガルダには世話になりっ放しだな。今回の事丈じゃなくて、本当色々と。」
「ま、俺が好きでしてるんだし。セレも好きな事してんだろ?じゃあ其で良いんじゃないか?」
「好きに・・・ククッ、如何だろうな。でも何時もガルダは其を赦してくれるな。・・・有難う。」
「感謝してるならもっと俺に楽させてくれよ。」
「ククッ、其は約束出来兼ねるな。」
背中で小さくセレは笑う。
何だか一寸穏やかな空気だ。顔が見えないからか今のセレは一寸素直な気がした。
背中にぴったり付いているし、BDE‐01が壊れた時も然うだったけど、セレは結構甘えん坊だ。
中々表に出さない丈で、彼女は昔から・・・然うだったんだ。
一寸丈足を緩める。
もう少し丈、此の時間を。
二柱丈の曠野で笑い声丈が谺していた。
・・・・・
「さ、流石にもう下ろしてくれるかガルダ、店には一寸、」
「ん?あ、噫然うだな、もう立てるか?」
店が近付いてくるとセレは身じろぎし始めた。
確かに此で店内は一寸恥ずかしいかも。ロードとかに凄い絡まれそうだ。
一応店の中では少し丈セレは見栄を張ろうとしてる様子がある。微笑ましいから何も言わないけどさ。
屹度セレにとっても良い刺激なんだろう、ドレミ達との出会いは。
セレはずっと俺と二柱限だったから、こんな狭い所に繋ぎ止めたい訳じゃない。
・・・前、セレが前世を懐い出した時に俺に言い放った言葉を懐い出した。
然うだ、俺も一緒だ。俺も同じ事をセレに願ってる。
分かっていても、でも屹度此は、繰り返してしまう物なんだろうな。
そっとセレを下ろすと彼女はもう問題無く歩ける様だった。
もう大丈夫だろう、医者の事も可也割り切れたみたいだ。
此からの事、又色々考えなきゃいけないから早く気持を切り替えないとな。
「あの・・・今日は本当に有難うガルダ。御蔭で又頑張れそうだ。皆にも色々話して置かないとな。」
「噫セレも御疲れさん。又行く時は声掛けてくれよ。一柱で行っちゃあ駄目だからな。」
「ククッ、分かってる。私の秘密は全てガルダと共有なんだな。」
照れ笑いをするセレは一寸珍しかった。
ふっと口元を和ませ、セレはさっさと店へ入って行った。
「今帰ったぞ。」
「え、あ、お、お・・・、」
ソファーが喋った、と思ったら光る触覚が出て来た。
一応隠れたつもりのスーが居る様だ。まぁ波紋で丸見えなので隠れても無意味なんだが。
スー以外はリビングに居ない様だ。誰か適当に誘って次元に行こうか。
・・・そんな事を考えているとそっとスーが出て来た。相変わらずの下がり目で怯え顔だけれど。
「お、御帰りなさいっ!」
「あ、噫、只今。」
此は珍しい、彼から挨拶されるとは。
勇気を出したと言うか頑張ったな。晒は為直したと言っても翼とか出していたのに。
何だか挨拶が出来て満足したのかスーは其の場から動かない。・・・普段余りコミュニケーション取っていないし、少し位話そうかな。
「只今ーお、スー御留守番御苦労様。」
「あ!ガルダも、御帰りです!」
触角がピコピコ揺れている・・・うーん、こんなの見ていたら捕まえたくなるな・・・。
ガルダも自分とスーが一緒に居る事が珍しく映ったのだろう、一寸首を傾げてしまう。
え、えっと、何を話そうかな。
「先一寸病院に行って来たんだ。色々調べて貰ったら面白い事が一杯分かってな。」
「え、びょ、だ、大丈夫です・・・?ど、どどっ、何処か悪いとか、だ、大丈、」
「なぬ⁉セレよ其は真なのかっ‼」
「ヒィッ‼」
折角スーが一所懸命に話してくれていたのに暖簾を勢い良く潜り抜けてハリーが飛び出して来たので、彼は飛び上がって又ソファーに隠れてしまった・・・。
まぁハリーは龍の姿だし、そりゃあ吃驚するな。其の姿ならそんなに俊敏になれるのか、久しく忘れていたよ。
「噫折角ならハリーも聞いてくれるか?只その・・・一寸人の姿になってくれるか?」
「うむ、御安い御用なのだ。」
主人を迎える狗みたいに頭を摺り寄せて来る・・・可愛い奴め。
一寸撫でていると忽ちハリーの姿は小さくなった。ソファーを勧めたが案の定上手く座れない様だ・・・。
スーはそんなハリーの姿をソファー裏に隠れ乍ら見守っていた。
多分謎の儀式とかだと思われている、椅子を崇める宗教とか聞いた事無いけれど、そんな風に見えなくもない。
「さぁセレよ!何でも話すのだ!」
「いやちゃんと座ったら話すから。」
未だ一柱でわたわたしている・・・うん、座ってから人型になる様言ったら良かったな。
「ハ、ハリーしゃんは・・・椅子に座れない呪いでも、う、受けているんですか・・・?」
「否只不器用な丈だから温かく見守ってくれ。」
然う言うとスーは何処か哀れんだ目でハリーを見ていた。
ま、まぁ間違っていないんだが、うーん。
「えっと、手伝おうかハリー、」
「む、手助けは不要なのだ!我は・・・っ!出来たのだ!」
一体ガルダは如何出助けするつもりだったのか定かではないが、ハリーがガルダの方を向いた拍子にストンと着席出来た。
素晴しい、自己ベスト更新だ。一分一寸なら可也早い。
ハリーも座れた事が嬉しいのか胸を反らしている。何かの弾みで立たないと良いのだが。
「頑張ったなハリー、其で・・・話、と言うよりは私は先迄ガルダと病院に行っていたんだ。」
病院と言うより研究所だったけれど。
「うむ・・・でも病院とは何なのだ?」
「然うだな、病気を治してくれたり躯について調べたりしてくれる所だ。」
「ほぅ、其の様な所があるのだな!」
「其で・・・その、病気とかはだ、だだ大丈夫だったんで・・・?」
「噫別に何処か悪いとかじゃないんだ。自分の躯の事を余り知らなかったから調べて貰った丈で。」
「自分の躯の事・・・で、ですか?」
何だかスーが随分食い付いて来る。
好奇心が勝ったのか余り自分を恐がらずに話してくれる様だ。
「私は自分の種族とかも知らないし、仲間も居なかったからな。でも其だといざと言う時困るし、丁度良いタイミングでガルダが神の医者を紹介してくれたからな。」
医者と言うより解剖医だったけれど。
「へぇ!な、何か良いです、ね。ぼ・・・僕もし、知らないし、一寸、気になる・・・かも。」
「あ、でも今回私が行った所には行くなよ。御勧めはしないからな。」
「だな、スーだと解剖され兼ねないし。」
何も言えずに固まっていたら“同意って事ですよねぇ!”って言われて彼の地下へ連れて行かれてしまうだろう。
「ひぇ・・・か、解剖⁉セ、セレさんま、まままま、まさかっ⁉」
「・・・別に私はされていないからな?」
「むむ、解剖とは何なのだ?」
「えっと御中を開いて・・・内臓とか調べる事かな。」
「な、何と言う事を・・・っ⁉セレは、セレは其で無事だったのか⁉」
話進まねぇ・・・。
話し相手に此の二柱を選んだのはミスチョイスだっただろうか。
「大丈夫だ。私はそんな事されていない。其以外の方法で調べたからな。」
「よ、良かったのだ。でも流石セレなのだ!一体何が分かったのだ?」
一体何の辺りが流石なのか分からないが、もう突っ込むのは止めよう。本当に話が進まなくなる。
「然うだな、えっと先ずは・・・、」
単細胞の辺りとか全然伝えられる自信が無いけれども、一寸頑張ってみようかな。
・・・・・
案の定何とか説明しようと頑張ったけれども力及ばず、時間許りが過ぎて行った。
其の所為で次々ギャラリー丈が増え、何とか一通り話し終えた頃には粗全員がリビングに集まっていた。
何気に今日は全員フリーだったんだな。後居ないのはベールとケルディだけれど、多分部屋だろうな。
「セレちゃん凄いね、まさかそんな事になってるなんて思わなかったよ。」
「噫、私も全く予想外だったから驚きが多くてな。未だ呑み込めてはいないんだ。」
「ふーん然うなんだ。でも良い情報有難う死神さん。取り敢えず斬り捲ったら危ないって事が分かったよ。」
う、うーん、飃に迄実の所知られたくは無かったんだがな・・・。絶対何か対策考えそうだし。
まぁ一体どんな手を考え付くのか気になるけれども。
個神的には可也面倒な生態をしているぞ、と思ったんだが彼はそんな困った風でもない。
諦めないのは良い事だ。其処は素直に褒めたい。
「何か・・・オレ的にはショックなんだけど、店主って本当はすっげぇ小さいって事だろ?」
「みたいだな、集合体だ。余り自覚は無いけれども。」
「えーオレとしてはでっかい怪獣の方が・・・。」
「あら、意外ね。カーディはナノマシンとか好きだと思ったのに怪獣の方が良いのかしら。」
「え、ナノ・・・マシン?其って何なんだよ?」
「然うね、物凄い小さい高性能ロボットよ。未知のテクノロジーとかって夢があるでしょう?」
「ス、スゲー!じゃあ店主はロボットだったのかよ!かっけぇ!」
―相変わらず単純やねカーディは。―
何だか自分の目の前で随分話が盛り上がっている。
そして少しずつ真実とずれて行っている気がする・・・。既に自分はロボットなんかじゃない。ロボは何方かと言うとBDE‐01だ。
―でも血が然う固まるのは不思議だね。黔い石みたいで・・・うん。―
ローズがトコトコやって来て腕の匂を嗅ぎ始めた。
無防備な姿に思わず自分は抱き付いてしまう。可愛過ぎる。
モフモフモフモフ・・・っん?いや、違うモフモフが紛れているぞっ⁉
違和感に気付いてローズの背に手を突っ込むとひょんと黔い尾が出て来た。
「完璧だと思ってたのに見付かっちゃった!」
ぴょこんと出て来たのはケルディだった。
可愛過ぎたので即刻誘拐する。
「此が血濡れの手だなんて思えないね。」
セレの手の中でフミフミされ乍らケルディも匂を嗅いでいた。
「ふーん、モフモフ愛は健在なんだ。」
っは!しまった、飃の前なのについ、
「っ然うだ、如何して私は今迄気付かなかったんだ。なぁガルダ、私早速一つ進化したい物が出来たぞ!」
「モフモフは一寸御勧めしないかな・・・。」
「な、何故分かったのだガルダッ!」
即反対されたが悪くないじゃないか。こんな風にふわふわになれたら・・・ゴクリ。
「・・・セレってモフモフの事になると単純思考になっちゃうよな。・・・単細胞生物だから・・・とか?」
「酷い屈辱を受けた気がするぞガルダ。」
「えっと御免セレ。でもセレがモフモフになったら多分・・・晁起きれなくなるぞ。」
「へぇ、良いじゃん。何時でも首が刈れるなら名案じゃないの?」
「・・・確かに。」
自分は単細胞でした。
目先の幸せしか見えていなかった。危ない危ない。
モフモフした物が目の前にあればもう何度寝だって出来てしまうだろう。ぐうたら化が目に見える。
悔しいけれども此は廃案だ。矢っ張りモフモフは自分で狩ってこそだな!
「・・・随分と盛り上がっているけれども其の病院って信用出来るのかしら。どうせ貴方が利用したのって闇医者でしょう。」
「元の情報源が確かだから大丈夫だ。只闇医者なのは認める。」
闇医者と言うより自身の知的欲求を満たす為の医者だった。治したい訳ではないのだ。
「然う。精々情報が売られない様に気を付ける事ね。貴方の事だから高く売れそうだわ。」
「確かにぃ、情報は高いですよぅ。」
「其処は一応大丈夫かな。対策はしたつもりだ。だからまぁ皆も少し気を付けてくれ。」
「そっか。彼のストーカー野郎の事もあるし、然うだよな。足元気を付けねぇと。」
ストーカー野郎・・・噫彼奴か。
然うだな、確かに今一番の問題は彼奴だ。
一つ溜息を付いたセレにテレパシーが届いた。
何だか慌てている様だが、ノロノロからか。
―セレ神!不味いノロ!彼奴が・・・ソルドが病院に来てるノロ!如何するノロカ?―
―早いな・・・分かった。手は打っているから嫌だろうが彼奴の言う事を聞いて置いてくれ。どうせ手は出せないだろう。―
其にしても面倒な・・・勘が良いとでも言うのか。
偶然か如何か知らないが、頭が切れるから腹が立つ。
彼の時さっさと殺して置けば良かった。早く消さないと絶対に枷になる。
自分が陽に弱い事は知られているから其の辺りから調べてやろうとでも思っているんだろうな。
もう一度丈溜息を付いてセレは口端を上げた。
噫、本当に、
「——————。」
・・・・・
「一寸失礼しますよ。」
「おやぁ~随分遅かったじゃないですかぁ。」
ニコニコ病院に新たな来客が訪れ、医者はチロリと舌を出して迎えた。
やって来たのは一柱の青年と珍しい事に大精霊のノロノロだった。
噫、解剖したくて堪らない・・・。
じっと絡み付く様な視線にノロノロは一寸尻込みしてソルドの後ろに隠れてしまった。
「え~ようこそニコニコ病院へ!私は此処の医者でまぁAとか適当に呼んでください~。」
「下らない紹介は結構です。其より一つ教えて欲しい事があるんですが。」
青年の目は笑っておらず、只々じっと医者を見詰めていた。
嫌な空気だ・・・大昔実験体に誤って殺され掛けた時もそんな目を向けられたっけ。
・・・死ぬには未だ一寸丈、惜しいんですがねぇ。
まぁ別に後ろめたい事も無いですし、のらりくらりと応えましょうかねぇ。
「ハイハイ何でしょ、私基本ずっと此処に籠もってるのでそんな大した事知らないですよぅ?」
ノロノロが少し困った顔を浮かべている。
フゥム、一筋縄には行かないと言う事ですか。
対する男は何とも神の悪い笑みを浮かべている。他神の事は言えないが、見ていて余り良い笑みじゃあない。
小馬鹿にされた様で何とか鼻を明かしてやりたくなる。
「心配には及びませんよ。迚も簡単な質問です。名前を呼ぶのも舌が腐りそうで不快ですが、セレ、と言う神が此処に来ましたね?」
「えぇえぇ!其の神なら存じてますよぅ!」
早いなぁ、まぁこんな輩が来る事は覚悟してましたがねぇ。
でもそんなリスクを負ってでも黔日夢の次元を起こした神を見てみたかったのだ。そして実りは十分だった。
未だ未だ調べたい事もありますし、一寸頑張りましょうか。
コミュニケーションは苦手なんですけどねぇ、静かな内臓達の方が雄弁に語りますし。
「其じゃあ話が早い。其の神の情報を全て寄越しなさい。」
「いやー行き成り然う言われましても、神にもプライバシーと言う物があるんですよ。其に、抑何方様で?せめて名乗って貰いませんと、ねぇ。」
「面倒ですねぇ。私の肩書を聞けば素直に話しますか?私はソルド、虚器惟神の楼閣の長ですよ。態々そんな私自らが出向いたのだから素直に従うのが筋ですよ。」
「おやおや其は其は大物が良くぞこんな寂れた所迄!いやでも残念ですなぁ、此処はオンルイオ国じゃあないんですよ、其の肩書は使えませんなぁ。」
「全く間怠っこいですねぇ。じゃあ言い方を変えましょうか。・・・殺されたくなかったらさっさと情報を渡せ、鳥擬きが。」
ソルドの物言いに医者はチロッと舌を出した。
見下せる位小さい神なのに、殺意は大した物だ。
もう彼の種は分かりますが、此方も解剖したいですねぇ。
「おやおや残念ですねぇ。其では私は何の道殺されちゃう訳ですか。貴方かセレ神さんに。何方の方が痛くないですかねぇ。」
「其は一体如何言う意味ですかねぇ。」
ソルドの目が坐る。
おぉ恐い恐い。私何か間違った事言いましたかねぇ。
「私ねぇ、セレ神さんに脅されているんですよ。彼の神の情報を漏らせば其の情報諸共消されてしまいます。然う言う契約なんですよ。だから私の命に免じて見逃してくれませんかねぇ。」
「契約・・・又面倒な物を。」
吐き捨てる様に言う彼の後ろでノロノロが笑っている気がした。
フム、セレ神もノロノロの話をしていましたし、彼は彼女側なのかも知れませんねぇ。
「確認しますが漏らされた情報も消える事で間違いありませんか?」
「えぇ、情報其の物を縛られているので聞いてしまったら貴方も無事では済まないでしょうねぇ。頭が吹っ飛ぶかも知れません。ちなみに私に危害を加えても彼の恐ーい神さんが来るので気を付けてくださいねぇ。」
「そんな滅茶苦茶な契約があるかっ!」
「ノ、ノロノロ~嘘ではないと思うノロ、精霊なら同意さえあればそんな事は出来るノロ。契約でノロノロ達は強くなるから下手に手を出さない方が良いノロ。向こうが有利な状況になるノロヨ。」
「・・・っ、全く、神なんだか精霊なんだが・・・半端者の癖に。」
ソルドは歯噛みしたが、ノロノロの意見を聞き入れる丈の余裕があった様だ。
抑、彼も予想は付いていたのだろう。然う簡単には行かないと。対策の一つ位あるだろうと。其でも此処迄念入りに入れられると腹が立つ。
「御前の契約で上書きは出来ますか?」
「ム、無理ノロ!精霊としての関係が違うノロ、ノロノロの力じゃあ及ばないノロ。」
「本当使えませんねぇ。彼の神の元に下った丈はありますか・・・。」
其の物言いにノロノロはむっとした様だが黙って下がった。
「・・・良いでしょう。今回は此の儘帰ります。此処を利用している事が分かった丈でも十分でしょう。引き上げますよ。」
「おやぁもう御帰りで?少し緩りして行きませんか?何なら貴方も調べてあげますよ!」
「あんな化物の通う店と同じ所だなんて死んでも御断わりですねぇ。其以外に殊更興味も無いので帰ります。」
「ふーん然うですかぁ、ま、御疲れ様です~。」
暢気に手を振る医者をキッとソルドは睨んだが、其の儘回れ右をして出て行ってしまった。
「・・・良かったノロ。あの、此からもセレ神を宜しくノロ。」
「ん、噫ハイハイ宜しくですぅ~。貴方は如何です?一寸躯を・・・、」
「し、失礼しましたノロ!」
元気良く断ってドタバタとノロノロは出口へ駆け出して行ってしまった。
「ふぅ~ん。矢っ張りコミュニケーションって難しいですなぁ。」
医者は独り言ちて黔血の入った試験管をそっと取り出すのだった。
・・・・・
「・・・何をしていたんです。」
「一応ノロノロの力が使えないか試した丈ノロヨ。」
大して期待していなかったのか話半分に聞いてソルドは一つ息を付いた。
此の儘では王に何て言われるか。
とんだ置き土産だ。早く始末しないと、此以上引っ掻き回される前に。
「全く、本当に・・・、」
ちらとニコニコ医院を見遣り、ソルドは口を引き抓んだ。
「「邪魔な奴だな。」」
・・・・・
無から生まれた化物は存在を求める
命に慟哭し、証に猛り、森羅万象を憎む
存在を喰らい、己が物とする様に
其は只の破壊と知り乍ら賤しくも、愚かしくも
誰にも見て貰えない化物よ、今更一を知った所で何になる
十も存在し得ない御前が行き着くのは只の虚だ
噫、見下せば良いさ、指を差せば良いさ
何れ其の化物に御前達は目を刳り貫かれ、指を喰い千斬られるのだから
私が存在しないと言うのなら、御前達も同じ、そんな無価値な存在を無くせば良い
たった其丈だ
はい、デート回でした。嘘は言ってないゼ。
けれども割とセレは負ぶられたり撫でられたりしているので扱いとしては愛玩動物に近い様な・・・?
何だかああ言った怯えた小動物見るの好きなんですよね・・・。特殊性癖ですね、自覚しています。
セレが地下に連行された時は本当に書いていて楽しかったです。生態の解明もずっと温めていた物なのでやっと出せてほっとしています。
筆者自身は悲しい事に学生時代にある事情で生物を勉強出来ず、泣く泣く物理を選択したので其の辺りの説明は可也ぼかしています。おかしいだろ!と言う所はあると思いますが、其処はファンタジーで受け入れてください。
出来れば今からでも生物と倫理丈勉強したいんですが。斯う言う時、やっぱ知識が無いと話が書けないんだなぁと痛感しました。
個人的には他にも医療の勉強もしたいんです。怪我が多いので、具体的に此は如何なんだろうとかずっと悩んでしまっているので。
兎にも角にも其の辺りはファンタジーと言う事にしようと現在は落ち着いています。うん、全て理論武装しなくて良いんだよ、頑張ろう。
と言う事で今回は此処迄!現在熱中症気味なので早々に切り上げて御休みしないと何だかいけない気がする・・・。
次回は可也昔に温めていた御話の可也改変版です!色々新しい挑戦があるので又御縁があれば御会いしましょう!
皆さんもくれぐれも熱中症には気を付けて!アディオス!




