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次元龍屋  作者: -Sare-
忘れられた世界の追憶
48/140

33次元 堕ちた魂に呪いの吟捧げし次元

どうも皆さんこんにちは!やっと涼しくなって来ました。気温変化が激しので体調にはくれぐれも御気を付けを。

そんな今回はストーリーも温度差が激しいです。・・・物理的に。

リメイク話ですが、今回は割と思い入れが多いですね。終わったら語りたいと思います。

挿絵もちょいちょい入りましたが、何も中学の時のを其の儘持って来ました。可也雑だなぁと思い乍らも無いよりはマシだろ!と入れてみました。何時か屹度描き直したい。

タイトルはドロドロしていますが、中身は割と綺麗だったりします。さて呪われているのは誰なのか、少し覗いてみましょうか。

只もう一度会いたかった

声を聞きたかった、信じたかった、未だ君が居ると

だって此の世界は全て間違っている、正しさなんて無かった

手を伸ばしたのに、如何して僕は未だこんな所で

噫もう一度丈会えたなら

君を呪った醜い世界なんて僕が壊してみせたのに

   ・・・・・

 海鳥の声丈が響く海岸沿いの街。

 石で出来た家も道も全てが(シロ)くて翠の陽を反射して輝いていた。

 街は見渡せる程には大きく、それなりに栄えている様だった。

 只、住人の姿はない。聞こえるのは(サザナミ)の音、鳥の声、瓊草(クサ)の揺れる音のみだ。

 街が美しい分、其等の音は物悲しく聞こえた。

「折角凄く綺麗な所なのに勿体無いね。」

潮風を思い切り吸い込んでドレミは一つ溜息を付いた。

―何か、あったんかも知れんよ。一緒に動いた方が良いと思うわ。―

「もぅグリちゃん止めてよ脅かすの。ほら何だか観光出来そうな所もあるし、彼方(アッチ)行ったら誰か居るんじゃないかな。」

ドレミが指差す先には確かに一本丈目立つ塔があった。

 窓もなく無骨な造りだが、煙突にしては大き過ぎるし、一体何なのだろうか。

 他にも小高い丘の上には平たい神殿の様な物も見える。ドレミにとって初めて見る景色(バカ)りだった。

「此ならロー君連れて来る可きだったかな。瀛海(ウミ)入りたかっただろうし。」

今回ローズはハリーと用事があるって行ってしまった。

 彼に龍族の友達が出来たのは喜ばしい事だ。別行動は少し淋しいけれど、今迄そんな友達がいなかった分しっかり楽しんで欲しい。

「・・・いや、誰か居るぞ。瀛海(ウミ)の方ではあるな。早速行ってみるか。」

其迄黙っていたがセレは一つ耳を上げて少し(ソラ)の方を見遣る。

 其でも一人丈だ。一体他の村人は何処へ行ってしまったのだろう。

 此の次元の事は・・・(ホトン)ど記憶にない。黔日夢の次元(ゼロ・ディメンション)の後大きく変わったのかも知れないし、未だ情報が足りないな。

「良かったぁ、じゃあ其処から行ってみようよ。先ずは聞き込みから!」

(シロ)い街にドレミの声が小さく(コダマ)した。

   ・・・・・

「おや、奇遇ですね。まさか此の街で誰かに会えるなんて。」

見付かった人物は適当な家の前の階段で涼んでいた。

 青年の様だがペストマスクに似た布製の仮面をしており、素顔は見えない。

 手には竪琴があり、遊び程度に弾いていた様だ。

 何処か異様な出で立ちだが仮面の下の瞳は迚も優し気だった。

「え、あれ、何でこんな所に・・・?」

「如何したドレミ、知り合いか?」

まぁ確かに忘れられない風貌だけれども。いや顔は見えていないけれど忘れられないって何か変だな。

「あのセレちゃん、ドレミ達も此の人に会ったんだよ。羅魔蛇(ヒュドラ)君に会ったって言ったでしょ?其の時に。」

―あ、若しかしてうちも。うちは会ってないけど、ロード先輩が詠を聞かせて貰った言ってたけど如何やろ。―

「・・・成程、其の話は聞いたな。と言う訳だが吟遊詩人、だったか。」

一同のそんな話にも彼は只優しく(ワラ)う丈だった。

「然うですね。最近縁があるとは思っていたんです。此処で自己紹介と行きましょうか。私はThe world of the destiny companyの部下、琴城(キンジョウ)です。以後御見知り置きを。」

然う言って彼は立ち上がり、深々と頭を下げた。

「其って・・・T&T、だったか?」

何だか・・・構えていたのに拍子抜けな答えが帰って来た。てっきり此処で一悶着あると思ったのに。

 其に懐かしい名称だ。manjuが社長の神の大企業じゃないか。

 まぁ店が随分と世話になっている所だけれども、其処の社員だったのか・・・。

「えぇ、御存知でしたか、有難う御座います。貴方方は次元龍屋に属していると存じています。」

「え、確かガルダ君が好きな所だよね?な、何だ神様だったんだ。」

―うち等の部屋造ってくれたんやっけ、其の節は御世話になりました。―

あっと言う間に場が和んでしまった。流石T&T、肩書丈で此の威力か。

「挨拶が遅れてしまって済みませんでした。只、私は裏方役でして、()うして表立って動くつもりはなかったので良かれと思っていたのですが、ばれてしまいましたね。」

「裏方にしては随分派手な格好じゃないか?だからばれたんだろう。」

何よりペストマスクである。暑いだろうに其では一発でばれるに決まっている。

「噫此は外せないんですよ。申し訳ありませんが。人間は異形を恐れる物です。私が馴染むには仮面が必要になってしまうんですよ。此はmanjuが私の為に特別に下さった物なんです。」

「噫然うだったのか、済まないな、そんな事を聞いてしまって。」

自分の晒と同じだったのか。確かに其迄余り違和感が無かったがペストマスクの目の位置が明らかに常人の其と違う。若しかして本当に鳥の様な頭なのだろうか。

「いえ、御気遣い有難う御座います。私は詠う事しか出来ないので今回も其の仕事で来たんですよ。」

「仕事?吟遊詩人さんも仕事なの?」

「はい、私の使命は世界中の物語を紡ぐ事です。其の為manjuから次元龍屋の者に会った際は手を貸す様言い付かっていたのです。私の詠は次元や世界を表現する物なので。」

「其でドレミ達に詠ってくれたんだね。御蔭で凄く助かったよ!矢っ張り事前に情報があると違うね。」

「御役に立てましたか、其は良かったです。」

―うちも、昔話が分かったから直ぐ翼妖異(ハルピュイア)に会えたし、本当助かったわ。―

何て大きなスポンサーだろう。確かに事前に其の次元の情報が手に入るのは大きい。

「其じゃあ今此処に居ると言う事は手助けを御願い出来ると言う事か?」

「フフ、私に出来るのは只詠う丈ですよ。其で宜しければ一つ聞いて頂ければ。」

「又琴城さんの詠聞かせてくれるの?凄く聞きたい!本当に綺麗な詠だったもん!」

勢い込むドレミに優しく微笑むと琴城は竪琴を手に取った。

 そして幽かに聞こえる(サザナミ)の音に乗せる様に詠い始めた。

   ・・・・・

 昔此の村に優れた(メカンナギ)(オカンナギ)が居ました

 代々受け継がれた使命と力は人の身には余りにも大きかった

 でも(メカンナギ)零星(ホシ)を読み、瀛海(ウミ)を宥めて只平和と幸せの為丈に力を使いました

 そんな(メカンナギ)を護る為に(オカンナギ)は降り掛かる脅威全てを冷酷な迄に薙ぎ払った

 代々殺人鬼でもあった(オカンナギ)と、神に近付き過ぎた(メカンナギ)の絆は(ツヨ)く、全ての災厄から村を護っていた

 でもそんな村にも大きな災いがやって来る

 突如世界を襲った闇と呪い、其は此の村でも例外ではなかった

 村が滅びない様に自らを犠牲にすると決意する(メカンナギ)

 でも(オカンナギ)(ユル)さなかった

 君には止められない、独りで全て背負うのは間違っている

 (メカンナギ)を逃がそうとした(オカンナギ)は村人に捕らえられ、塔へ幽閉された

 其でも(オカンナギ)は詠い続けた、(メカンナギ)に此の声が届く様に

 (メカンナギ)は独り闇と対峙した

 呪いを其の身に受け、全ての闇を浄化しようと

 だが神に近付いたとはいえ人の身、全てを受け入れる事は出来なかった

 心優しき(メカンナギ)は初めて世界の醜さを知った

 其の事実は彼女の心を穢した

 そして闇は(メカンナギ)の命をも奪おうとした

 でも其を阻むのは(オカンナギ)の詠、最後迄彼丈が(メカンナギ)を想っていたのだ

 (メカンナギ)は助かった、だが闇は詠を伝って(オカンナギ)をも傷付けた

 世界の醜さを写した心と世界の一日分の不幸全てを背負う呪いを二人は受けた

 然うして全ての闇と呪いを閉じ込めて村は助かった

 其でも呪いは確実に二人を狂わせた

 (メカンナギ)は世界を呪った

 神殿に閉じ籠り、呪詛を吐いた

 其の呪いは災害として村を襲い始めたのだ

 連日の様に襲う津波に龍巻、大地震に大雨

 其は村人が居なくなる迄続いた然う

 人影絶えた村で、今でも(メカンナギ)(オカンナギ)は詠っている

 世界を呪う詠を、永遠に

   ・・・・・

 鈴の様な音は止まり、一気に現実へと引き戻される。

 琴城は竪琴をそっと仕舞うと悲しそうに(ワラ)った。

「淋しい話です。何より此が只の夢物語ではなく、事実だと言う事が。」

「でも、本当に美しい詠だったよ。まさかあんなありありと見えるなんて。」

詠を聞いていた丈なのに見えない筈の目は景色を捉えていた。

 在りし日の此の街を、確かに此処で人は生きていたのだ。

 でも自分は此の景色を知らない。黔日夢の次元(ゼロ・ディメンション)の時、自分は正確には此の次元へ来ていないのだ。

 只、別の近くの次元の影響が此処迄来た可能性はある。悪意が伝染する様に。

 今更、そんな物見せられてもさ・・・。

「噫見えましたか。時々いらっしゃるんですよ。私の詠を聞くと見知らぬ景色が見えると言う方が。済みません、でしたらもっと楽しい話を聞かせてあげられたら良かったのですが。」

「別に、知っているんだろう?此は私が作ってしまった物語だ。別に何も思わない。」

琴城は只静かに(ワラ)っていた。全てを見透かす様に。

「矢っ張り本当に凄く良い詠だったよ。でも然うだね、次は楽しい詠、ドレミも聞きたいな。」

―うちも、こんなの初めて聞いたわ・・・。本当良かった、有難な、本当。―

ソルは耳を真っ赤にして興奮気味だ。彼女は耳が良い然うだから猶美しく聞こえたのだろう。

「有難う御座います。此の話は此の村を去った近隣の村の者達から聞いた話です。何か御役に立てば良いのですが。暫く此の街には居ましたが、何か居る様です。御気を付けて、御仕事頑張って下さいね。」

琴城は立ち上がるとさっと埃を払った。

「私は其の世界に因んだ物語しか残念乍ら語れません。ですから又別の次元で会えれば詠えるかと思いますよ。其迄御元気で。」

「噫此方こそ有難う。manjuにも宜しく伝えてくれ。」

「うん、又御願いね!」

静かに頷くと琴城はそっと街の路地を抜けて行った。其の(ママ)狭間へ帰るのだろう。

 ()う言った最早背景も分からなくなった次元では本当に助かる。

「不思議な吟遊詩人さんだと思っていたけどまさか神様だったなんて、世界は広いんだね。」

―本当綺麗やったわ・・・。今迄うちが聞いたどんな鳥の吟よりも良いかも知れん・・・。―

「塔と神殿・・・か。」

煙突みたいだと思った(アノ)の塔が然うだったのか。彼処(アソコ)(オカンナギ)は居るのだろうか。

 そして小高い丘の上にあるのが神殿だろうな。成程、何方(ドチラ)から攻めようか。

「矢っ張り会いに行くんだよね。でも先の話って多分凄く昔の事だよね?・・・うーん。」

―ゆ、幽霊や、おるんや、こんな所にも。ずっと昔から。―

「幽霊・・・か。完全に悪霊だろうな、災害なんて起こしちゃあ。当たるとしたら先に其方か。」

どんな聖人でも人であれば堕ちる物だ。自分は其を嫌と言う程知っている。

 昨日と今日と明日が、全て同じ者である保証はないのだから。

 聖人と言えば、エゴの塊の様な聖人面をした奴を一人知っている。

 なぁナレー、御前だって今如何なっているか分からない物な。本物の聖人になろうが、悪人になろうが今更自分は驚かない。

 然うか、と屹度一言で終わらせてしまうだろう。

「神殿の方へ行くんだよね。一寸(チョット)待ってねセレちゃん。」

ドレミは近くの蒼い華を何本か摘んで来た。何処か儚い様な、滄溟(ウミ)の色をした華だ。

「先の話聞いちゃったら、悪霊さんかも知れないけど、その、可哀相に思っちゃって。」

「良いんじゃないか、其位別に。只注意して行く事丈は忘れないでくれ。」

今の所は確かに何もないだろう。でも神殿に着く迄は、否着いてからはそんな事している余裕はないかも知れないからな。

   ・・・・・

 丘の上、神殿の前迄やって来た。

 然う言えば此処は一体何の神を祀っていたのだろうか、(メカンナギ)からして豊穣の神だとかだったのかも知れないが現状からしたら若しかしたら呪いを持ってしまった(メカンナギ)が神を喰ってしまったのかも知れないな。

 現状(メカンナギ)の根城と化しているのだろうし、神をも超えているとしたら厄介だな。

 相変わらず人影は無いし、(サザナミ)の音丈が村を満たしている。

 其でも良く見ると神殿は他の建物と比べて可也傷んでいる気がした。災害は此処から発生していたのかも知れない。周りの家々の風化も此処の方が酷い様だ。

「此処、だよね。」

入口は閉ざされている。ドレミはそっと其の前へ歩み出た。

「・・・っドレミ下がれ、何か来る。」

魔力が歪む。違和感が包んで、広がって行く様な。

 ドレミは直ぐ下がってセレに並んだ。すると目の前の空間が歪んで行くのが分かった。

「んあ?まさかこんなドンピシャに会うとは、まさか御前が呼んだのか?」

現れたのは吟叫だった。背に例のエレキギターを背負っている。

 待ち伏せって訳じゃないな。本当に今此の次元へ来たのか。

「御前が呼ばれた災害って所か?音の災害だと公害みたいだな。」

「何くっちゃべってんだよ。ま、任務があったが此方が優先だな。次は殺すって言っただろ。一柱だろうが関係ないぜ、やらせて貰う。」

「・・・ソルは鎮魂の卒塔婆(レクイエムストゥーバ)初めてだよな。耳が良い分きつい相手かも知れない。少し下がってくれ。」

「うぅ、()のギターだよね・・・。聞いていたら嫌な事懐い出しちゃうから気を付けて。」

―わ、分かったわ、音・・・出来る丈気を付けてみる。―

「ハッ気を付け様なんかねぇだろ、行くぜIt´s music!」

早速吟叫はエレキギターを弾き始めた。

 相変わらず出鱈目(デタラメ)な曲だ。先の琴城と偉く違う。

 行き成りの雑音につい膝を着き然うになる。

 分かっていても此か、噫懐い出してしまう。黔日夢の次元(ゼロ・ディメンション)と、前世と、そして・・・、

 本当、腹の立つ最低の曲だな、相変わらず。

「何も、此処じゃなくて良いのに、此だと(メカンナギ)さん怒っちゃうよ。」

ドレミは早くも膝を着いてしまった。何度も聞かされるからと言って慣れる物じゃあない。

「う、嘘、な、何や此・・・う、うちこんなの、」

聞き慣れない声につい違和感を覚えたが、如何やら其はソルの物らしかった。

 彼女も又、今現在ありもしない悲劇を見ているのだろうか。必死に耳を押さえているが、耳が良い分可也ダメージを負っている様だ。

「う、うちの所為や。何であんな事、約束も破って、いや破る気はなったんや本当に。で、でもうちの所為で、ご、御免なさい御免なさい、」

すっかり座り込んでしまった彼女は完全に呑まれた様だ。震えてすっかり本音を喋っている風だ。

 そんな彼女の背後から巨大な蜥蜴が這って来ていた。恐らく吟叫の召還した奴だろうがソルは全く動けない様だった。

 其処へ突然降った驚霆(カミナリ)が突き刺さり、蜥蜴を蹴散らしてしまう。

 そっとドレミは片耳を押さえ乍らもソルの背を(サス)った。

 後から来る蜈蚣や天牛(カミキリムシ)も彼女が発する驚霆(カミナリ)に近付けない様だ。

―出来る限り御前達は二柱を護ってくれ。残りは私に手を貸してくれ。―

―良イヨ、(ウルサ)()ノ音、止メチャオッカ。―

―君ハ?大丈夫ナノ?―

―噫、聞けば聞く程腹が立つ丈だ。もう絶対に逃がさない、此処で仕留める。―

一歩大きくセレは足を踏み出した。そんな彼女の周りで魔力が舞う。

(ネガ)うは武、振るうは狂、応え・・・破壊の時だ。」

蒼い(ヒカリ)、今回は満天の零星(ホシ)で迎えてやるさ。

慈紲星座(リキラツノマイ)。」

前呑んだ虚ノ心臓の効果は直ぐにでも出ていた。

 此迄の比じゃない量の零星(ホシ)だ。

 此なら大釼(タイケン)を大量に創れるか。

「dneediw」

両手に2m程の大釼(タイケン)を。残りは魔力にくれてやる。

 そして自分の周りで円を描く様配置する。

 其の(ママ)一気に吟叫の元迄駆ける。

 邪魔なんてさせない。皆斬り刻む丈だ。周りの大釼(タイケン)に触れれば直ぐ他の大釼(タイケン)が吸い寄せられたかの様に対象に刺さりに行く。

「な、何だ御前、此の音が聞こえねぇのかよ。」

真直ぐ近付くセレに流石に吟叫は僅かに後退(アトズサ)った。

 でも此処は街中だ。其にあんな大きな手下を呼んでちゃあ逃げ場なんてもうない。

「聞こえるから御前を殺しに行くんだろう。」

「っ、御前には懐い出す様な恐ろしい物もねぇのかよ。」

話す事しか出来ないか。如何やら彼は其の音楽丈が取り柄の様だ。

「其より、恐ろしい者になれば良い丈だ。然うだろう?」

吟叫は声にならない悲鳴を呑み込んで数歩下がった。

 見えない筈なのに、晒の下の瞳が見えた気がしたのだ。

 ()の睨む様な闇を。あろう事か自分を見詰める銀の世界を。

 幻の様な過去よりも、恐ろしい現実は存在する。

 彼を護る様に幾ら天牛(カミキリムシ)達が現れようと(タチマ)零星(ホシ)(ツルギ)にばらされてしまう。

 遊ぶ様に、躍る様に舞っているのに、()の目が自分を見詰めて離さない。

 俺の罪を曝す様にじっと。

 少し丈、フォードの言っていた事を理解した気がした。

 (アレ)は、紛れもなく化物だ。

 昔自分を(ナジ)った彼奴等を、俺を見殺しにした世界を、綺麗だった筈の(ソラ)を、踏み潰された蟷螂(カマキリ)を、俺毎全て噛み砕いて呑み込む化物だ。

 だって、そんな物信じられないじゃないか。信じられる訳ないじゃないか。

 こんな地獄を生み出す程の過去よりも恐ろしい物があるなんて。

 其を知ったら、俺は世界には絶望しか溢れていない事を再認識してしまうじゃないか。

 より深く、(クラ)く、俺を堕とそうと。

「流石に其のギターを壊せば此の音は止まるんだろう。」

化物の爪が迫る。もう直ぐ触れそうな程、(ツルギ)が、(キッサキ)が、

 駄目だ、こんな音楽じゃあ此の化物には響かない、届かないんだ。こんな音じゃあ、

 だったら・・・だったら、

 俺も化物になるしかないじゃないか。

「ジャァアァアアァアァア‼」

突如、吟叫の姿が大きく変貌した。

 明らかに人を越える外見に流石にセレは大きく後退した。

 吟叫は今では大きな蜥蜴の様な姿をしていた。

 全長5m程で、(クロ)黄蘗色(コウバクイロ)の体躯をし、(アカ)(ヒゲ)と若苗色の(ヒレ)の様な物を有していた。

挿絵(By みてみん)

「終に真の姿に成ったか。」

憐れだな、其の姿は御前のトラウマに近付いているじゃないか。

 まぁ良い、其も終わらせてやれば良いんだろう?

 もう手下の蜥蜴(トカゲ)達は居ない。一対一の方がずっとやり易い。

「ジャジャジャッ!!ガガ、ガグギィイ゛ィ゛イィギィイィイィ!!」

不意に吟叫は金属を引っ掻く様な不快な叫び声に似た鳴き声を上げた。

 長く尾を引く其の声に、セレは気付いてしまう。

 ()のギターの音に似ている事に。否其以上に不快な音だと。

「っ!な、何こ、っ嫌、嫌!止めてこんなのっ!!」

先に声を上げたのはドレミだった。

 先迄は何とか音に耐えて応戦したのに完全に膝を着いてしまっている。

 ソルも既に気絶してしまったのかドレミの傍で横になってしまっていた。

 自分も・・・波紋が乱れ捲る。もう(ホトン)ど見えない。

―ド・・・シタ、ノ。―

―顔イ・・・ワ・・ヨ?―

魔力の声すら(ロク)に聞こえないか・・・、此は不味い。

 何より音、()の鳴き声だ。ギターの比じゃない。

 ギターの音は、過去のトラウマを懐い出させる物だった。でも此奴の鳴き声は恐らく、強制的に負の感情を沸き起こす物だ。

 ()きたくて堪らない。叫びたくなる気持が際限なく起こる。音を聞いた丈でどんどん酷くなる。

 此じゃあ戦闘所じゃない、立つのがやっとだ。

 突然近くの家々が粉々に砕け飛んだ。

 見ると吟叫の突き出た(ヒレ)が震えている・・・?次は道に(ヒビ)が入った。

 まさか、此は、

 気付いた瞬間脇腹が突然大きく裂かれた。

 何も触れていない、突然、ひとりでに怪我を負った。

 血が大量に零れ落ちる。(シロ)(イシダタミ)真黔(マックロ)な染みが広がる。

 視線を上げると真直ぐ吟叫が此方を見ている様だ。

 又、(ヒレ)が震えている・・・呻く暇もくれないか。

 大きく地を蹴って近くの家の屋根へ飛び乗る。

 途端先迄居た(イシダタミ)は大きく(ヒビ)割れた。今の内に晒を捲きたいが・・・。

 先動いたのが精一杯だった。彼奴の鳴き声の所為で躯が思う様に動かない。

 恐らく彼奴は()の姿に成った事で二つの能力を得た様だ。

 ()のエレキギターを強化した鳴き声と・・・超音波、か?見えない衝撃波みたいなのが(ヒレ)から発されている様だ。波紋の御蔭で空気が震えるのが分かるから未だ見える方だが、鳴き声と相まって厄介だな。

 波紋もどんどん使い物にならなくなるし、長引くとじり貧だ。

 取り敢えず動けない二柱から注意を逸らさないと。未だ自分の方が多少は、

 又、来る。

 瞬時にセレは隣の家の屋根へ移ると先迄居た家は粉々に砕けた。

 でも、自分も避けるのが精一杯だ。せめて此の声が止めば。

 彼奴の鳴き声は(ホトン)ど区切りがない。息継ぎを狙うのも難し然うだ。

 然う()うしている間に頭痛がして来る。知らず()きそうになるのを必死で(コラ)える。

 如何してこんな事を、如何して私(バカ)りが。こんな未来、望んでいなかった。早く楽になりたかった。消えたい、消されたくない。でも独りはもう嫌だ。如何して此処は何時も誰も居ない。如何して指を差す、離れる、誰も見えない。(ヒカリ)なんて無い。闇も無い、虚無丈。私は透明だ。何も無い、そんなの居ないと同じなのに。感情丈、感覚丈残っている。こんな姿望んでいないのに。だったら壊せ、噫壊せ。壊してしまえ、消えてしまえ。全部全部、もう何もかも。

 一気に流れ込む感情に大きく一つ息を付く。

 (ウルサ)い、(ウルサ)(ウルサ)(ウルサ)(ウルサ)(ウルサ)(ウルサ)(ウルサ)(ウルサ)(ウルサ)い。

 其は私の本心じゃない。勝手な事を喋るな。

 噫もう黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れっ!

「破闇。」

小さくセレは自分に術を唱えた。

 次の瞬間、両耳から血が噴き出た。

 真黔(マックロ)な血が止め処なく溢れて来る。

―っ、何をしている、自傷なんて、―

「此で、もう聞こえないな。」

自分の声も聞こえないなんて不思議な気分だ。

 話せているのかも不安になる。テレパシーの方が良いな。

 痛い程の無音だ。まるで世界には自分しかいない様な。妙な心地良さが、其処にはあった。

―簡単な方法だったんだ。此でもうあんな音を聞かなくて済む。―

―・・・っ。―

名案だと思ったのに丗闇は黙った(ママ)だ。

 まぁ良い、此で一気に戦況は変わったな。ドレミ達も辛そうだし、此の程度の代償なら何でもない。さっさと終わらせよう。

 波紋をより綿密に。何時もと違って音に因る情報はもう一切入らない。平衡感覚を失いそうになるので気を付けないと。

 魔力は・・・未だ付いて来てるな。彼等が音に因る影響を受けないのは有難い。

 大釼(タイケン)を構え、屋根伝いにセレは駆け出した。

 先迄と違い、しっかりとした足取りである彼女に吟叫は目を張った。

 幾ら声を張っても足は止まらない。此だと衝撃波は当たらない。何処に当たるか自分の(ヒレ)を見て判断されている様だ。

 衝撃波で飛礫(ツブテ)が飛ぶ中其の影に隠れてセレは脇腹に晒も巻き終えていた。

 そして土煙の中から横合いに突然現れ、軽々と大釼(タイケン)を振り上げる。

 淡々と音もなく現れた彼女に、はっきりと吟叫は恐怖を感じた。

 まるで死神だ。生きる為に淡々と他者の命を貪り喰らう様な化物。

 如何して、俺の音が聞こえないのか。

 俺の声が、御前には届かないのか!

「ギャァァアァアァア‼」

其迄の鳴き声とは打って変わって悲鳴が吟叫の喉から発された。

 セレの大釼(タイケン)が真直ぐ吟叫の体躯を真っ二つに両断したのだ。

 零星(ホシ)(ツルギ)の斬れ味は鋭過ぎた。易々と巨体の肉を斬り裂いた。

 其に別に吟叫は戦闘向けな神じゃあなかった。接近されれば成す術もなかったのだ。

 セレに付いて来ていた魔力の大釼(タイケン)も同様に吟叫を斬り刻む。

 此の一撃で確実に沈められる様に。もう此奴に散々嫌な思いをさせられたんだ。もう好い加減死んでくれ。

「化物・・・って、そ、・・・然う言う事、か・・・よ。」

吐き捨てる様に呟いたが、もうセレに其の言葉は届かなかった。

 其の(ママ)吟叫の頭は地に着き、瞳は(ヒカリ)を失う。

 直ぐ様其の躯は塵の様になって消えてしまった。

 残ったのは自分を真絳(マッカ)に染めてしまった彼奴の血だが・・・随分と獣臭くなってしまったな。

―随分綺麗ニ染マッタネ。―

(アカ)ノ神殺シダー悪イ奴ダネ!―

―何だか今然う言われると御前達アティスレイみたいだな。―

―おい御前止めろ其の名を紡ぐのは。呼び水になったら如何する。―

う、目聡いな丗闇さん・・・。耳が聞こえないからテレパシーに頼らざるを得ない訳だけれども此は中々慣れないかも知れないな。

 まぁ丗闇が彼奴を警戒するのは当然か。何時も丗闇に迄迷惑掛けてしまっているものな。厄介事を嫌う彼女にとって怨敵なんだろう。

 兎も角ドレミ達だ。別に勝利の余韻に浸る気分でもないし、具合を見ないと。

 ドレミとソルは何とか立てる位には回復した様だ。顔色は未だ悪そうだが、自分の姿を認めてか微笑んではいる。余裕が出て来た様なら良かった。

 早速二柱の所に来たが、ドレミが何やら不思議な事をしている。

 何で口をパクパクさせているんだ?酸欠の金魚の真似か?パントマイムの一種か?・・・あ、然うだった今自分耳潰しているんだった。()うやってみると凄い違和感がある。

 何気に耳が聞こえないのは初めてだ。前世でもこんな事する奴はいなかったな。何とか上手く行って良かった。

 (アレ)で変な所迄壊しでもしたら最悪死んでいたしな・・・。

 う・・・又平衡感覚が、無音ってこんな酔う物だったのか。

 何はともあれ、彼女達にちゃんと説明しないとな。

―あの、済まないドレミ。今私は耳が聞こえないんだ。テレパシーで話してくれると助かるんだけれど。―

―え、ど、如何したんや。ま、まさか()の音聞き過ぎて、うち又何も出来んかった・・・。セレに謝っても謝り切れんわ・・・。―

流石ソル。何時もテレパシーを使っている丈あって反応が早かったが随分落ち込んでいる様だ。そんなに気負って欲しくはないのに。

―気にするな。相手が悪かったんだ。其より具合は大丈夫か?初めてにしてはきつい相手だったからな。―

ソルは何度か頷いてくれた。・・・うん、別に過去に囚われたりはしていないな。後遺症が一番恐かったし・・・。

―ドレミも御免ね、全部任せちゃって。えと・・・テレパシーって此で良いよね?でも耳って大丈夫?前は其処迄ならなかったけど、若しかして本気の時の声聞いちゃったから・・・かな。一番近かったから。―

―いや、彼奴の所為じゃない。只余りにも(ウルサ)かったから自分で耳を潰したんだ。上手く行って良かったよ。―

其を聞くと二柱はがばっと近寄って来た。

 な、何だ何だ此、一寸(チョット)吃驚したじゃないか。

 無音だから余計予備動作も気付けなくて慣れない・・・。

―耳⁉え、自分で⁉何してるのセレちゃん!其全然大丈夫じゃないよ!良くないよ!―

―何で無事なんやろって思ってたけどまさかそんな・・・、み、耳なんて・・・う、―

―でも然うしないと流石に私も動けないぞ?()の音は其丈凄かったからな。別に次元の迫間(ディローデン)に帰れば治るし、問題無いだろう。―

―う、うーもうセレちゃん然う言う所良くないよ!じゃ、じゃあ帰ろうよ!聞こえなきゃ良いって物じゃないでしょ!―

―いや仕事中だし未だ本題に入ってないんだから流石に帰らないって。―

何か凄い食い付くなぁ・・・。ドレミとは結構感覚のずれがある事は分かっていたけれど、余り()うグイグイ来ると一寸(チョット)面倒だ。

 とは言え、悪い事をしている訳じゃあなんだし、何も口出しはしないけれども。

 だって他の方法なんてなかったし・・・然うだろう?

―ご、御免なさい。うちが気絶なんてしてる内に、まさかこんな事なるなんて。―

―セレちゃん本当意地っ張りなんだから・・・。じゃあせめて気を付けてね。護ってくれたのは嬉しいけど、もうそんな痛い事しないでね。―

痛い事・・・脇の怪我の事じゃないよな。そんないけない事か、自傷行為って。別に好きでした訳でもないのに。

 ・・・まぁ良いだろう。気を付ければ良いんだろう。

―分かった。然うする。ソルももう謝らないでくれ。別に誰が悪かったとかは無いんだし、何事も相性があるだろう。―

何とか二柱共落ち着いた様だ・・・。

 鎮魂の卒塔婆(レクイエムストゥーバ)の奴を一柱片付けられたし、重畳だな。

 後は(メカンナギ)(オカンナギ)の方なんだが。(ムシ)ろ其方が本題だ。

 ドレミは何か言い掛けたが直ぐ口を噤んだ。

―えとセレちゃん、ドレミ一寸(チョット)華供えて来るね。其の後如何するかは又考えなきゃいけないけど。―

―噫、神殿が無事だったのは幸いだったな。―

然う言えば然うか。テレパシー丈のやり取りだとドレミからしたら無言集団みたいな物か。確かに其はやり難いな。

 ドレミは時空の穴(バニティー)にでも入れていたのだろうか。華を持ってさっさと神殿の方へ向かう。

「此処で良いかは分からないけど。」

そっとドレミは神殿の入口付近に華を軽く束ねて置いた。

 すると・・・音も無く神殿の扉が開き始めたのだ。まぁ自分が聞こえなかった丈かも知れないが。

 石で造られた大きな門なのにひとりでに。

 ・・・少しアティスレイとした御茶会を思い出して苦い味が口中に広がる。

 此は招かれていると言う事か。

 中は波紋を広げても見えない。

 波紋はもう正常なのに何か膜が張られている様だ。

 結界、みたいな。中に何か閉じ込められてる?

 ・・・十中八九(メカンナギ)関連だろうな。封印されているとは聞いていないけれども、拠点にはしていそうだ。

―あ、えっと、中、入ってみる?セレちゃん。―

―噫、呉々(クレグレ)も気を付けて行くぞ。―

慎重に神殿の中へと足を踏み入れる。

 結界の様な膜の中へ。

・・・とは言え、直ぐ見える様になる訳ではなさそうだ。

 未だぼやけている。水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の内部みたいな、魔力が淀んでいて見難い。

 不味いな、聴力を縛られているのに視力迄信用出来ないとなると。

 でも全く見えない訳ではない。誰か居るのは分かる。

 一人と・・・一頭、か?

 気付いた所で入って来た扉が勝手に閉まってしまう。

 一気に暗闇に包まれた様で二柱も良く見えない様だ。固まって動いた方が良さそうだ。

 暫くすると足元から冷気が這い上る気配がした。

 其の冷気は何処か(ヒカリ)を放っている様で薄ぼんやりと内部の様子を照らしてくれる。

 其と同時に籠もっていた魔力も軽く晴れ、自分も相手の姿を認める事が出来た。

其処に居たのは一人の女性と一羽の巨鳥で、身を寄せ合う様にして此方を見ていたのだ。

 正女は菫色の短い髪に、尾花色の瞳を有し、澄んだ瞳は(ツヨ)い決意の表れの様でもあった。

 絹で出来た至極色の法衣に、霄色(ヨルイロ)のローブを羽織り、何やらローブの隙間から(クロ)い靄の様な物が漏れ出ている様だった。

 (アレ)は何だろう、偉く濃いいし、触れたら毒になりそうな位毒々しい色と重みを持っているけれども。

 そして隣の巨鳥に、セレは見覚えがあった。

 全長8m程で全体的に今様色をし、胸毛は緋色、水精の様に透き通る嘴には牙があり、後頭部にも小さな翼を有していた。

 胆礬色(タンバンイロ)の模様が所々に刻まれ、胸元には大きな水精が輝いていた。

 根摺色へと先が変わって行く翼には鉤爪を有し、足は獣の其の様だ。

 尾は黄櫨色(コロウイロ)の物と先が霞みの様に棚引く物で構成されており、そっと正女を包む様に巻かれていた。

 鈍色の瞳は知性を感じさせる。じっと此方を観察する様に見詰めていた。

挿絵(By みてみん)

 ()の姿、然う見た事がある。龍古来見聞録(カリグローズ)で。

―三大伝説龍の一頭、リーシャンか。―

―其って・・・若しかしてハリー君の仲間?―

噂は矢っ張り呼び寄せるな。フリューレンスと話して直ぐ此か。

 リーシャンは此の世で唯一の晶属性、可也特殊な能力を持っている。

 此処は閉鎖空間だし、戦闘となると面倒だな。

「・・・貴方達かしら。華を供えてくれたのは。」

「え、あド、ドレミだけど・・・、」

ちらと丈ドレミはセレを見遣り、一歩前へ出た。

「そう、一応礼を言って置くわ。私、蒼や紫、好きなのよ。何だか高貴な色で。」

正女は小さく笑うが、何処か影がある様に見える。

 何だか油断出来ない気配。正女の皮を被った何か(・・)と思えてならないのだ。

「なら良かったのかな。えと、御姉さんが(メカンナギ)さんなの?」

「然う呼ばれるの、本当久しいわね。何時振りかしら。」

「・・・・・。」

不味い、此は非常に不味い。此処に来て大問題に自分は直面している。

 二柱が口パクをしている様にしか見えない。読唇術なんて習得していないし。

 全く話に付いて行けないんだけど大丈夫か此?

 自分何時迄真剣な顔をして置かないといけないんだろう。若し雑談とかに知らずなっていても自分反応出来ないんだけれど。

 一柱内心冷汗を掻くセレ。()うなるなんて考えてもいなかったのだ。

 突発的に耳を壊したが、そりゃあ然うだ。自分達は(メカンナギ)に会いに来たんだ。話さない訳がない。口があるんだから、其を使わない訳がない。

―・・・我が仲介をしてやろうか。―

―御願いします、御手数御掛けして済みません。―

―御前の御手数は今に始まった事では全くないがな。―

余りに悩む姿が憐れに見えたのだろう、素直に丗闇が助け舟を出してくれた。

 此は本当に助かる。話している内容をテレパシーで教えて貰おう。

 何も彼女に言い返せないし、素直にならざるを得ない。

「華は嬉しいわ。でも私そんな物じゃあ全然晴れないのよ。分かってくれるわよね?折角久し振りに来た御客さんなんだし、一寸(チョット)付き合って頂けないかしら。」

途端三柱を隔てる様に氷柱が地中から一本姿を現した。

―っ皆散れ!―

大きく後退し、串刺しは逃れる。氷柱は天井迄達する程成長した。

 二柱共無事なのを確認した瞬間、一気に氷柱が次々と地面から生えて来た。

 でも今度はランダムに近い形で(ホトン)ど動かなくても済んだ。だが此の形は・・・、

 氷柱が出る(タビ)地面が大きく揺れたので大人しくしていたが、其が止む頃には三柱は其々氷柱の檻に閉じ込められてしまった。

 見事な氷柱だ。(メカンナギ)は涼属性の様だが(メカンナギ)丈あって力が(ツヨ)いな。

「え、皆大丈夫?何此、閉じ込められちゃったの?」

「大丈夫よ、心配しないで。折角なんだし貴方達には私の呪いの一部をあげるわ。魂迄呪われて皆一つになるのよ。素敵でしょう?」

(メカンナギ)は微笑した(ママ)リーシャンの肩、翼に乗った。

「ヒュゥウゥウゥウゥ!!」

翼を大きく広げてリーシャンのブリザードの様な鳴き声が響く。

 来るか、奴の攻撃だ。

「っえ、ちょっ何此、」

ドレミの背後に(クロ)(タマ)が現れる。

 其は宙に浮いている様だったが何処か現実感が無かった。

 実体が朧げな様にも見える其の(タマ)(ユック)りと回転をしている様だった。

「こ、此何か吸ってる⁉本当何なの此、」

確かに(タマ)に向かって引き寄せられている気がする。(シカ)も其の力が段々(ツヨ)くなっている様な。

「別に抵抗する事ないわ。其に吸われたらぺしゃんこに潰れて皆一つになれるのよ。」

「そんな力業で一つになんてなりたくないよ!若しかして此、ブラックホールとかって言うんじゃなかったっけ。」

見た事はないけれど聞いた事はある。零星(ホシ)とか吸い込んじゃうんじゃなったっけ。じゃあ此災害所じゃないよ!村が滅亡する所じゃ済まない!

―ドレミ、此方に来い!―

「降り注げ、驟来光!」

瞬時にドレミが唱えると天井を伝って驚霆(カミナリ)が氷柱に突き刺さった。

 激しい轟音を響かせ、派手に氷柱の檻は砕け散る。

「っセレちゃん!」

―良し、もう少し此方だ。―

ブラックホールは今では激しく回転し乍ら全てを呑み込んでいた。

 砕けた氷柱も驚霆(カミナリ)も音も(ヒカリ)も全て。

 物理法則も何もあってない様だ。・・・まぁ自分の知っている法則と此の次元は又別物なのだから仕方がないが。

 其にしてもまさかブラックホールを呼ぶなんて明らかにリーシャンの晶の力だ。完全に殺す気で来ているな。

―防風みたいな壁は創れるか?其とも御前達も吸われてしまうのか?―

―壁ハ創レルケレド僕達モ吸ワレチャウヨ。―

―吸われる位なら・・・いっそ爆発でも起こすか。―

(アレ)モ壊シチャウノ?何ダカ楽シソウ!―

取り敢えずドレミに手を伸ばすと彼女は躊躇なく手を掴んでくれた。

 そっと引っ張り上げるとドレミは一つ息を付いた。

「有難セレちゃん、あれ此処余り吸われないね。」

―・・・ん、噫今魔力達が壁を創っているんだ。此方からも仕掛けるぞ。―

ソルは・・・完全に檻に護られて無事そうだな。彼女も植物を翠の術で生やして支えにしている様だ。

 さっさとブラックホールを如何にかした方が良さそうだな。幸い(メカンナギ)(モガ)いている自分達を見るのが御好きなのか手を出して来ないし。

(ネガ)うは武、振るうは狂、応え・・・破壊の時だ。」

魔力が集うのを感じる。皆何だ()だ言って破壊が好きなんだ。

慈紲星座(リキラツノマイ)。」

蒼い零星(ホシ)が自分を包む。零星(ホシ)に包まれてドレミは一つ息を付いた。

―・・・綺麗だからって触れるなよ。怪我したくなかったらな。―

今は別に星座を作らない。此の(ママ)吸わせてしまえば良い。

 幾らかの零星(ホシ)が自分の元を離れてブラックホールへ吸われて行く。

 そして完全に呑み込まれる直前で一気に爆発させた。

 星座は作っていない乍らも爆発は連鎖する。

 辺り一面が蒼い(ヒカリ)で包まれる。

「ヒュゥゥウゥ!!ヒュ、フィイィ!」

リーシャンの声が響き渡る。声の具合からして焦っている様だ。目眩ましが効いた様だな。

 今の様子だとブラックホールも消えたな。リーシャンが焦っているなら力も安定していないだろうし、其に、

 蒼の(ヒカリ)も段々と輝きを失い、神殿内は又暗闇に包まれる。

 だが其処には一点明かりがあった。ソルを護っていた草華の蕾が(アカ)く灯っているのだ。

―カーディが灯属性だからってうちが扱えん訳でもないで。―

零星(ホシ)の爆発はソルの氷柱の檻をも壊していた。

 彼女を包む蕾は一斉に火の玉をリーシャンに向けて吐き出した。

「フィフィフィイイィ!」

即座にリーシャンは羽搏(ハバタ)き、今度は自分達との間に大きな瀧を作り出す。

 何処からともなく天井から流れ落ちる水はすっかり彼等の姿を隠してしまう。

 火の玉はあっさりと鎮火され、激しく水蒸気を上げていた。

「踊れ、散雷華!」

其の瀧へ向けて驚霆(カミナリ)が刺さり、弾け飛ぶ。

 先から随分と激しいな・・・リーシャンの能力からして仕方のない事だが此の神殿、持つのだろうか。

 途端照明でも落ちたかの様にやけに神殿内が暗くなった。

 恐らく、此もリーシャンだな。意図的にしている。盲目の筈の自分ですら多少暗くなったのを感じる。

 成程、直接干渉は出来なくても雰囲気自体に干渉は可能なのか。

―此は・・・一緒におった方が良さそうやね。―

ソルが此方迄駆けて来て自分達の周りを植物で囲う。

 (メカンナギ)の涼を警戒してか又焔を蓄えた華の様だ。まぁ先みたいに水で攻めればドレミとも連携が取れるし、都合は良いな。

―・・・何も音がしない。向こうも様子見てる所かもね。―

―ねぇセレちゃん、先の鳥さんの能力とかって分かるの?先から何だか凄い事が起きてるけど。―

―噫、リーシャンは晶属性だ。一定の空間内を自由に操れる能力の筈。恐らく神殿内位なら操れるな。―

―え、何其のとんでも能力。自由って、何処迄自由なの?―

―先の氷柱以外は全てリーシャンの仕業だな。此の暗闇もだ。私の波紋も上手く通らないからな。―

―晶なんて初めて聞いたけど、何て言うか・・・色々能力として酷くないん?―

二柱が納得しないのも最もだろう。でも三大伝説龍は割と皆とんでも能力(バカ)りだ。

 余り気にしていない様だけれどもハリーだって幻を実現させたりも出来るんだから似た様な物だ。

―まぁ分かり易く言えば宙魔術の内容が指定出来るバージョンだと思えば分かり易いかもな。―

―噫()のランダム属性やね。()の道一寸(チョット)珍しい属性やからうち(アンマリ)知らないんやけど。―

―うーん、宙ってドレミも如何戦ったら良いのか分からないね。運が相当絡むし、(シカ)も今回の相手は其の運も操れるんでしょ?―

―其でもちゃんと弱点はある。非常に分かり易いのがな。―

龍古来見聞録(カリグローズ)の内容、覚えていて良かった。

 自分が万全じゃない分、早くけりを付けようか。

―二柱共、成る可く手数を増やして(ヒタスラ)攻撃してくれないか?隙を見て私が動く。―

―分かったよ、でもセレちゃん怪我してるんだから無理しないでね。―

「・・・何時迄然うしているつもりかしら。」

何処からか響く正女の声。途端に暗闇が一気に晴れる。

 別にリーシャン達は移動をしていなかった様だ。只、狭い建物内なのに多少無理をしてか軽く羽搏(ハバタ)いて浮いていた。

 此は・・・来るな。

―黔漣。―

自分の放つ波紋に乗せる様に術を掛ける。

 足元から一気に可視化された波紋が広がった。

 其と同時に神殿内の壁や床から小さな氷柱が一面に生え始めた。其が波紋とぶつかり、相殺されて行く。

 氷柱が砕かれては作られ、欠片が飛び散り(ヒカリ)が舞う。

―っ然う言う事やね。―

一歩遅れたがソルは火の玉を吐く華を大量に生み出した。そして所構わず火焔を吐き続ける。

―もう一つ、一気に抑えるよ。―

更に足の踏み場もない様な氷柱の床から芽が出始め、忽ち氷柱を包み込んで行った。

 蒼い其の瓊草(クサ)(シロ)く小さな華を付けて広がって行く。

―冷気を吸う子や。此で足止めは出来る思うんやけど。―

―十分だ。其の(ママ)続けてくれ。―

セレは可能な限り身を低くし、そっと瓊草(クサ)に紛れ乍らリーシャンに近付いた。

 こんな大規模な術を掛けて来たんだ。次は何をするのか分からない。

 其にこんなに止めているのに(メカンナギ)は未だ余裕然うだ。

―じゃあ次、ドレミが行くね!セレちゃん宜しくね。―

足場が少しずつ広がった様でドレミはローブから小瓶を幾つか出した。

「我武者羅!」

小瓶を宙へ放るのと同時に小さな電流が流れて小瓶を割ってしまう。

 小瓶の中から出たのは小さな(クロ)(タマ)だった。複数入っていた其は電気を帯びて一気に飛び散った。

 然うして神殿内の四方に散った其は互いに電気を帯びて激しく光り輝き明滅し、轟音を響かせた。

 更に(タマ)同士を驚霆(カミナリ)が幾つも行き交い、走り回る。まるで花火やゲリラ雷雨を一気に詰め込んだみたいな騒ぎだった。

 ()(クロ)(タマ)は砂鉄やら金属を混ぜ合わせた物だったのかも知れない。磁力、電力が滅茶苦茶に狂い、反応して駆け巡る。

 流石に此には一同の足が止まる。一瞬で視覚、聴覚の全てを奪われてしまうのだから。

 其の間に自分はそっとリーシャンの真下に迄移動した。其処でオーバーコートの下に隠していた零星(ホシ)を取り出す。

 此処なら流石に狙える。一気に片を付けられる。

―raeps―

零星(ホシ)の鑓を創り、リーシャン目掛けて瞬時に伸ばす。

 貫く勢いで、首元を狙って一撃で。

「ヒュゥウゥ!」

だが直前でリーシャンも気付いた様で彼の四方にブラックホールが展開される。

 零星(ホシ)が吸われて鑓が歪になる、形を保っていられなくなる。でももう王手だ。

 瞬時、零星(ホシ)は一気に爆発した。

 上も下も爆発しているのだ、流石にリーシャンは体勢を保っていられなくなり、地に落ちて倒れ込んでしまう。

「リー?大丈夫なの?」

(メカンナギ)は直ぐ様氷柱を引っ込め、リーシャンの肩から降りた。

 見ると如何やら首元にあった水精(スイショウ)(ヒビ)が入ってしまった様だ。リーシャンは何処か気落ちした様に見詰めていた。

「何て事なの、貴方良くも私の御気に入りを壊してくれたわね。」

晶属性は、水精(スイショウ)を壊してしまえば何も出来ない。出来ないのだが、隣の(メカンナギ)が不味そうだ。

 彼女のローブから漏れていた(クロ)い靄が彼女を包む。床を包み込む程に靄が溢れ返る。

「貴方、(ユル)しはしないわよ。一体如何してくれるのかしら。」

彼女の瞳が真直ぐ自分を捉えて離さない。

 何だ此、空気が変わった・・・?何だか重苦しくて息がし難い。何かが(マト)わり付く様な。

 何より空気が凍える程冷たい。息が急激に(シロ)くなる。

 次の瞬間、セレの体躯は凍り付いて固まってしまった。オーバーコートに霜が付き、瞬く間に凍らせてしまう。

 足も地にしっかり縫い付けられて動かない。

 此、不味いのでは、やばくないか、可也。

 何て魔力だ。たった一瞬でこんな凍り付くなんて。

「決めたわ。貴方を人形にしてあげる。そして毎日愛でてあげるわ。手足を引き裂いて()いで遊んであげる。しっかり()かせてあげるわ。貴方も呪われれば良いのよ、内臓が腐る様な呪いを、煮え(タギ)った泥を呑まされる様な悪夢を、夢でも現実でも与えてやるわ。」

―・・・色々語ってはいるが取り敢えず御前に滅茶苦茶怒っていると訳して置こう。―

―然うか。怒っているのか。じゃあつまり今此の状態は私を凍らせて()水精(スイショウ)の代わりとして据えてやるって魂胆か。余り良い趣味とは言えないな。―

―そんな発想をする御前に言われたくはないと思うが。―

そんな話をしていたら本格的に冷たくなって来た。もう直ぐ完全に動けなくなる。

 本気で此の(メカンナギ)、自分を凍り付けにする気か、凍死は・・・嫌だなぁ。前世で割と近い所を経験しているし。

 ドレミが何か言っているが肉声では聞き取れない。恐らく自分の現状に気付いてくれたんだろうけれど、手段が無いんだろうな。驚霆(カミナリ)を降らされたら堪った物じゃない。

 ソルも似た様な物だろう。自分で、如何にかしないと。

 とは思いつつももう・・・指すら・・・動か、考えも、(マト)ま、

 其の(ママ)セレの躯は凍り付いてしまった。

 布一枚動かない。完璧に固まってしまっている。

「う、あ、セ、セレちゃん、嘘でしょこんな、」

何とかドレミもセレの元迄辿り着いたがもう手遅れの様だった。

 触れたら壊れそうだ。まさかこんな簡単にやられるなんて。

―ド、ドレミ先輩大丈夫やって!迫間に帰ったらセレ店主は無事な筈、うち等もやられないよう気を付けんと。―

すっかり青くなってしまったドレミを励まそうとソルは声を掛け、何とかドレミは頷いた。

―セレ店主の仇、取らせて貰うから覚悟してや。―

ソルを包んでいた植物達が一斉に火の玉を吐き出した。

 其をリーシャンは翼を広げて何とか去なす。

「何よ、悪いのは其奴よ。私の物を壊すのがいけないんだわ。大丈夫よ、私は優しいから直ぐ貴方達も同じ所へ送ってあげるわ。」

一気に冷気が渦巻き、吹き荒れる。

 手が(カジカ)んで動きが鈍くなる。

―う・・・ぐ、何て魔力や、此じゃあ皆やられてしまう。―

火の玉を足元に放っても直ぐ冷気に消されてしまう。もう植物達も枯れ始めてしまっている。(ソモソモ)の属性の相性が良くないのだ。

「さぁさぁ早く凍りなさいな。今更足掻くだなんてみっともないわ。大人しく・・・?何で未だ凍らないのかしら。」

リーシャンも不思議そうに彼女を見遣る。

 十分寒いのだが如何やら其でも未だ控え目の様だ。

 然うは言ってもソルは本来寒い所が大の苦手だった。此迄の術も空しく枯れ、急速に寒さが込み上げる。此では本来の実力すら満足に発揮出来ない。

「グリちゃんしっかりして!何だか・・・一寸(チョット)ずつ温かくなってる気がするの。」

(クズオ)れ掛けていたソルをドレミはそっと支えた。

 気の所為じゃない。少しずつ・・・何故か温かくなってる気がする。

 すると突然セレの氷に(ヒビ)が入った。そして表面が融けて来たのか氷に光沢が生まれる。

「う、嘘でしょ何でこんな、私の術より、呪いより(ツヨ)いって言うの、」

(メカンナギ)も事態を理解したらしく、僅かに後退した。

 何かがおかしい、如何して()の二柱は凍らないのか。別に灯属性でもない。先だって付け焼刃な焔だったのに。

「あ、あれセレちゃんの氷、と、融けてる・・・?」

ドレミはそっとセレの肩に触れた。

 未だ未だ冷たいけれども、矢っ張り氷が薄くなってる気がする。

 ・・・でも今更融けたって多分駄目だよね、一度()うなっちゃったら。

 融けたら消えちゃうのかな。狭間に帰ってしまうのかも知れない。

 然う()うしている内に可也氷は融けて来た。上半身は完全に融け切り、固まっていた髪が肌に張り付いた。

 そして・・・腕が動いたのだ。

「え・・・セ、セレちゃん⁉い、生きてるの⁉」

思いっ切り触れようかと思ったがぱきっと折れてしまっても恐い。

 そっとドレミが見守っているとついにセレは頭を一つ振ってドレミを見遣った。

―ド、ドレミ・・・?う・・・わ、私は一体、―

「信じられないわ・・・。如何して生きてるの、(アレ)を食らって平気な顔出来ない筈よ。」

―・・・あ、そっか。ねぇセレちゃん、先セレちゃん氷漬けにされてたんだよ。其から如何してか段々温かくなって、融けたみたいなの。―

―本当に大丈夫なん・・・?まさか未だ無事やったなんて。―

二柱は凄く心配しているし、(メカンナギ)は可也驚いた顔をしている。

 記憶も一寸(チョット)抜けている気がするし・・・若しかして自分は完璧に凍ってしまっていたのだろうか。氷漬けって本当に氷漬けだったのか。(メカンナギ)も恐い事するなぁ。

 あ、でも確かに未だ足は動かない。冷た過ぎて嫌だ、何だ此、凄く痛い様な何も感じない様な。

―噫然うか、(アレ)の御蔭で助かったのか。ドレミ、一寸(チョット)危ないから少し離れた方が良いぞ。―

言うや否やセレの全身を(クロ)い焔が包んだ。

 激しく燃え盛る焔は直ぐ様氷を融かし、其の(ママ)セレを中心に燃え続ける。

 氷が完全に融けるとセレは少しふら付いた。でも未だ苦しいのか息は辛そうだ。

―な、何なの此セレちゃん大丈夫?あれ、でも何か此の焔・・・ドレミ知ってる?―

何だか恐い焔だ。嫌な気配を感じてついドレミは後退した。

 何処かで此と同じ物を見た気がする・・・?

―噫ドレミは憶えていたのか。完全に凍る直前に()の焔の核を呑んでみたんだが・・・上手く行ったか?―

―焔・・・焔の核?って若しかして!()の何でも燃やしちゃう焔食べちゃったの⁉だ、駄目だよセレちゃん危な過ぎるよ!―

―御前、何かしたと思ったがまさかそんな事をしたのか。正しい選択とは言えないぞ。そんな何でも見境なく喰って、―

―元は自分の魔力なんだし、大丈夫だって、言ってやりたかったけれども。―

氷は融け切った。でも焔は止まる事なくじりじりと肌を焼いて行く。

 焼くと言うより一瞬で炭化して散る様な、此の(ママ)だと結局自分が粉々になりそうだ。

―矢っ張り此の(ホノオ)、色々混ざり過ぎて扱い難いな。無理矢理一寸(チョット)延命した様な物か。まぁでも其の一寸(チョット)でけりが付くなら重畳だな。―

屹度自分だって呪われている。殺した者の怨念だとかの所為で此の焔は言う事を聞かないんだろう。

 魔力達みたいに話が出来そうも無いし、随分な暴れ馬の様だ。

―う、そ、ね、ねぇセレちゃん矢っ張り燃えてるよ!躯が、―

ドレミは口を戦慄(ワナナ)かせるも近付けない様だった。燃えてしまっても困るので其の位距離を取ってくれた方が助かる。

 ソルも困った様に顔を下げて余り此方を見ない。何となく此の焔が何なのか察したのかも知れない。

 只此の焔・・・今回は瞬時に時空の穴(バニティー)から直接呑んだから間に合ったけれども、本当に賭けだったな。若し氷が解けるのがもう少し遅かったから普通に凍死していただろうし、生命力が高過ぎるのは()う言う所で活きるな・・・。

「何なの其の焔は・・・私の呪いより強力だって言うの・・・。」

―・・・ん、噫然うだな。其の呪いの元凶だしな。此の焔は・・・何でも燃やすぞ。御前のこびり付いた呪いも燃やしてくれるかもな。―

現在自分が燃やされている所為で余り身動きが取れない。下手に動いて躯が無くなっても困るし、慎重に歩くとしよう。

 ・・・と言うより普通に痛い、声に出さない迄も普段の数割しか力は出せないだろう。相変わらず耳も聞こえないし、凄い違和感しかない。まるで悪夢を彷徨(サマヨ)っている様だ。

 此方の不利には変わりないが、もうリーシャンは晶の術を使えない筈だし、涼属性は此の焔で如何とでもなる。多分、上手く行く筈。

 まさか此処迄焔が(ツヨ)いとは思わなかったけれども。ガルダ達は良く封じられたな。

 一歩歩く度に躯の感覚が遠くなる。()の堅い手足ですら欠けて行くのが分かる。

 進行は緩やかだが絶対逃がさないと言った感じか。別に構わない。其処迄持つのなら。

 氷柱が幾つも生えて来るが自分に届く前に全て融けてしまう。

 幾つも幾つも。(メカンナギ)の抵抗だろうが、すればする程虚しくなって行く。

 然うしている内にもう目前迄セレはやって来た。

 リーシャンが警戒する様に前に出る。翼でしっかりと(メカンナギ)を護っていた。

 対する(メカンナギ)も実に不満そうな顔で此方を見ていた。

 未だ完璧に諦めた訳ではないらしい。其の反骨精神は嫌いじゃない。

「・・・此で勝ったつもりかしら。私を慰める為に来てくれたのだと思いきや、(タオ)そうとするなんて。」

―・・・まぁ私達も別に遊びに来た訳じゃないからな。仕事だ。―

次元の主導者(コマンダー)は未だ見付かっていない。気配からして滅んでしまっている可能性もある。

 其でも此の(メカンナギ)が危険なのは分かる。間違いなく此の次元を滅ぼすのは彼女だ。

 だから(タオ)さないといけないのだけれども・・・。

「仕事?何、ゴーストバスターでもしているのかしら。確かに私は悪霊よ。でも、英霊でもあるのよ。そう簡単には行かないわよ。」

―英霊なのか。仕事は別に色んな世界を護ったり救ったりしている。今回は其の一環だな。―

―・・・何を話している。通訳する此方の身にもなれ。けりを付けるならさっさとしろ。―

―・・・もう少し丈だから済まない丗闇。―

(メカンナギ)はずっと口で話している訳だし、霊とは言え、実体がある様だ。

 丗闇には本当に申し訳ないけれどももう少し丈甘えさせて貰おう。会話に違和感がないから可也本格的に訳してくれている様だし。

「貴方が世界を護ってる?笑えない冗談ね。私より呪われている癖に。良い?然う言うの偽善って言うのよ。」

―其で結構、私は然う言う奴だ。・・・で、私は其の偽善の為に御前を(タオ)さないといけない。けれども其は少し惜しいとも思っているんだ。―

「・・・言いたい事があるならはっきり言いなさいよ。」

―じゃあ率直に。私達の仲間になってみないか?其が嫌なら此処で昇天して貰う。―

英霊は神霊に通ずるって聞いた事がある。多分もう彼女は神みたいな物だと思うけれど。

―セ、セレちゃん大胆だね・・・。その、可哀相とは思うけど。―

そっとドレミが傍に寄って来た。・・・焔を可也心配してくれている様だ。

 確かに結構痛いと言うより感覚が消えて行ってる気がする・・・。

 先に燃え尽きても恐いし、一寸(チョット)抑えてみようか。恐らくもう(メカンナギ)も戦意喪失しているっぽいし、リーシャンも気にはしている様だが動くつもりは無さそうだ。

 落ち着いた今なら、少しは焔を抑えられるかも知れない。と言うより抑えられないと狭間でも死ぬよな、此。確かに軽率だった。

「冗談じゃないわ。今更私に世界を護れって言うの?嫌よ、御断わり。良い?どうせ世界を護ったって誰も感謝しないし、直ぐ次の新しい悪が生まれるのよ。私、無駄な事はしない主義なの。」

うーん、如何しよう凄く真っ当な意見が出て来た。

 同意しちゃう、呑まれるなぁ。全く以って其の通りです。(カツ)て村を護っていた(メカンナギ)丈に中々重みがある。

 ・・・如何しよう、此だと何で自分、店してるんだろ問題に発展するじゃないか。償いは飽く迄も自分への言い訳だ。彼女に其をするメリットは確かに無いな。

「そんな悲しい事言っちゃ駄目だよ!色々あって(ヒガ)むのも分かるけど、其で何もしなかったら結局何にもならないんだよ。止まっていたら澱むか腐るかしちゃって(ロク)な事にならないんだよ!」

「ちょっ何よ其、私が腐ってるって言いたいのかしら!」

「こんな所で閉じ籠っていたら然うなっちゃうのも当たり前だよ!こんな遊びに来た人を(イジ)める様な事をしてるなんて、外に出てもっと楽しい事探した方が良いよ!こんなの全然楽しくないんだから。」

お、良いぞードレミ、其の調子だ。怒って自分より前に出ているけれど、(メカンナギ)が何かしたら直ぐ護れる様見て置かないと。

 ()う言う説得は圧倒的に彼女が上手だ。従うしかない。

 今の内に焔も消して置こう、自由に扱える様になるのは大分先だろうけれど、抑える丈なら出来る筈。

―・・・我は何時迄御前に言伝をしないと行けないのだ。―

―御免丗闇今良い所だからもう一寸(チョット)丈、な?―

―・・・・・。―

安請け合いするんじゃなかったって思ってるんだろうなぁ。

 正直丗闇の口からドレミの正の言葉が溢れ出るのが楽し過ぎて止めたくない。

 もう丗闇も心に決めた様で其の(ママ)直訳みたいに話してくれている。楽しさ抜きで本当助かっているので是非とも其の(ママ)頑張って頂きたい。

 最初は戦闘中なのもあってか二時の方向から如何()うって一々言ってくれていたからな。分かり易かったけれども慣れるのも大変だった。

 今の只話す丈だったら互いに楽だろう。

 只飽く迄も自分は今非常に困っているアピールを丗闇にして置かないと。何時見切りを付けられるか分からないからな。

―・・・うちも、外、出てみるのは良い事やと思う。其にうち、助けて貰った事は忘れんで。だから今は一緒に居るんやし、助けるからこそその・・助けの輪と言うか然う言うの広がる思うし。―

怖ず怖ずではあるがソルも参加して来た。

 二柱とも戦ったとは言え、(メカンナギ)の事が気になっていたのも事実なんだ。

 ・・・良し、可也焔は抑えられそうだ。少なくとも躯が燃える事はもうない。

 芯の部分と言うか、躯の奥底が燃えている感覚はあるが、気分丈なら如何とでもなる。

 自分は説得なんて苦手だし、彼女達に任せてみよう。

「何よ貴方達、随分勝手言ってくれるじゃない。別に今更如何でも良いわ。私はリーと居られれば其で良いのよ。」

「リーちゃんって鳥さんの事だよね?でも鳥さん随分大きいけれどこんな狭い所で良いの?(ソラ)、飛びたいんじゃないかな。」

其処で(メカンナギ)は可也苦い顔をした。

 そして上目遣いにリーシャンを見遣る。物呼ばわりをした気もするが、其でも大切な者に変わりはなさそうだ。

「・・・私もぉ、外に出るのは賛成でぇす。閉じ籠って(バカ)りはぁ矢っ張り良くないかとぉ思いますぅ。」

「え、あ、喋れるんだ・・・。でもうん、然うだよね!外に出るの良い事だよね!」

器用に動かしてリーシャンは嘴を鳴らした。同意、と言う事だろうか。

 でもリーシャンが話せるの、自分も初めて知ったな。龍古来見聞録(カリグローズ)にはテレパシーを使うとあった気がするが。

「・・・リー、私以外の人と喋るのは止めなさい。何よ貴方私の味方はしない訳?」

「味方だから話すんですよぉ、折角言葉も教えて貰ったしぃ、勿体無いですよぉ、折角の機会ですぅ。」

「・・・暇だから教えた丈で、そんな事の為に使う物じゃないわ。」

言い乍らも(メカンナギ)の目は何処か泳いでいる様だった。リーシャンが少し身を屈め、そんな彼女を見遣る。

―別に此の子、リーシャンを此処に閉じ込めたいゆぅ訳やないんよね?―

「・・・噫もう分かったわよ!出れば良いんでしょ、私をそんな引き籠りみたいに扱わないで頂戴。此処より楽しくて楽な生活させてくれるなら考えなくもないわ。リーを残して私、消えたくないもの。」

―・・・話は(マト)まったかな。―

「若しかして貴方が大将かしら。如何して此の子達の方が性格が良くて貴方が呪われてるのよ。」

―え、嘘、丗闇適当な事言わないでくれ。―

―・・・我は嘘はかないぞ。―

・・・左様ですか。

 でも自分は兎も角二柱の性格が良い、ね。然う映ると言う事は(メカンナギ)は完全には呪いに負けていないと見る可きなのかな。

―さぁ其は入ってみての御楽しみだな。別に気に入らなかったら抜ければ良い。もうこんな事をしないって言うなら其以上は私も言わない。―

「良いわ、呑んであげる。付いて行くわよ。精々私の呪いに翻弄されるが良いわ。」

「うん、屹度楽しいと思うよ、色んな所へ行ける仕事だから!じゃあ自己紹介だね。ドレミって言うの、宜しく。」

―うちはソルナート・覇皇・イルヴァレン=グリアレスや。グリスでもソルでも好きに呼んでくれたら良いから。―

―最後は私か。セレ・ハクリューだ。店で仕事をしているから行けば他にも沢山居るぞ。―

「然う、気が向いたら覚えてあげるわ。私はダイヤよ。後此の子はリーシャンだけれども、如何してか知って然うね。」

―噫、リーシャンは三大伝説龍と言う迚も貴重な龍だからな。有名な龍だし、仲間にも居るからな。―

「そ、然う言われるとぉ何だか照れますねぇ。恐縮ですぅ。」

「成程、そんな知っているから真っ先にリーの水精(スイショウ)を壊したのね、本当酷い事するわ。」

―其は謝るしかないな。弁償もするが如何だ?―

「気にしなくて良いですよぉ、此の水精(スイショウ)は私の一部ですぅ。其の内傷も直りますからぁ。」

良かった・・・此処で禍根を残せばモフモフさせてくれないかも知れないとひやひやしていた所だ。

 水精(スイショウ)なんて幾らでもくれてやる。其よりモフモフだ。

「三大伝説龍だなんて名前は仰々しいですけどォ、私他の方に会った事ないんですよぉ、一寸(チョット)気になりますぅ。」

「幻遣いのハリー君がいるよ!友達になれると良いね。」

其を聞くとリーシャンは毛を膨らませた。随分と彼は行く気になって来た様だ。

―然う言えば二柱は何で此処におったん?リーシャンは他の所から来たん?―

神殿は大きいと言っても飽く迄も人サイズからしたらだ。リーシャンからすれば翼も満足に広げられないだろう。

「其はぁ、(タマタマ)私が此の次元へ来た時にぃ嵐に遭ってしまってぇ、此処で休ませて貰ってたんですよぉ、其の時から一緒に居ますぅ。」

「・・・別に一緒に居たいって頼んだ覚えはないわよ。」

其を聞いてリーシャンはそっと頭をダイヤに擦り付けた。何処か嬉しそうな声を上げている。

「でも御蔭で上手に話せる様になりましたぁ。テレパシーよりぃ話せる方が楽しいでぇすぅ。」

「結局嘴から何だか息が漏れるのは変わらなかったけれど・・・まぁリーにしては上出来なんじゃないかしら。」

うーん・・・二柱の話し方からして割と仲良しさんの様だ。

 ダイヤは自分を未だ(ユル)してなさそうだし、何時リーシャンをモフモフさせて貰えるんだろう。

 店に帰ったらタイミングを見ないとな。

―じゃあそろそろ店に行ってみるか。話は其からだ。―

恐らく彼女を呪ってしまったのは自分だ。其を・・・話さないといけない。

 其で呆れられて去ってしまっても仕方ないだろう。其は彼女達の自由だ。

「あの・・・一寸(チョット)待ってくれないかしら、私行く前にその、会いたい人が、」

「ダイヤ!!助けに来たよ!」

其の時突然神殿の扉が大きく開かれた。

 勢い良く開かれて、一気に陽光が差し込み、神殿内が少し明るくなる。

 思わずセレは後退し、少しドレミの後ろへ移動した。

 現れたのは一人の青年だった。

 長い透ける様な旻色(ソライロ)の髪を伸ばし、煤竹色の瞳の奥に何処か苛烈な(ヒカリ)が見える。

 出で立ちはダイヤと良く似ている。可也色皓(イロジロ)でひ弱そうな印象を受けた。

 一般人・・・の様にも見えるが姿からして恐らく・・・、

「ベール⁉あ、貴方何てタイミングで来たのよ!ほ、本当何時も何時も・・・、」

ダイヤは心底驚いた顔をしたが其の声は直ぐ渋った。

「へ・・・え?な、何此の状況、ダ、ダイヤ友達、居たんだぁ・・・。」

(ウルサ)いわね、貴方が来るのが(アンマリ)にも遅いから私、此の人達に付いて行く事になっちゃったんじゃない。」

一気に不機嫌になった彼女はもうベールを見ようともしなかった。リーシャンの翼を借りて隠れてしまう。

 リーシャンもそんな彼女を如何すれば良いのか分からず、戸惑っている様だった。

 対するベールは一切警戒心もなくそっと彼女に近付いた。

「ダ、ダイヤ御免って、でもやっと塔の封印が解けたんだよ。だから真っ先に君の所へ来たんだ。」

何だか懇願する様が余りにも可哀相だ。

 一瞬で土下座モードに入ったし。いや此土下座って言うんだっけ。何だか両手を挙げているし、御祈りみたいだ。イアイアーとか言って然う。

 其にしてもやり慣れていると言うか、様になってるな・・・流れる様にされたから全く違和感が無かった。

「真っ先って何よ。貴方にはもう私しかいないから当然でしょう。其の程度で(ユル)して貰おうと思ってる様が不快だわ。」

うわぁ可哀相に。此は酷い。自分だって其処迄鬼じゃない。

 青年はより深く頭を下げて、(ユル)してだの、自分は芥だの言い出した。何だか見ちゃいけない物を見ている気がして来た。

「はぁ・・・もう良いわ。貴方の其、見てても不快になる丈だしさっさと本題に入りましょう。」

―・・・因みに誰か伺っても?―

「そんな人を見るなり土下座する様な芥の名前を聞くなんて貴方案外優しいのね。ほら自分の名前位自分で言いなさい。」

「は、はいっ!ぼ、僕はベール・スペードです、(オカンナギ)をしています。あの、僕みたいな芥の名前を聞いて下さり有難う御座います。」

「・・・・・。」

此がマインドコントロールと言う物か。下僕気質が凄過ぎる。完全に成り下がっているじゃないか。

―・・・おい、ちゃんと訳して伝えているんだから返事をしたら如何だ。―

―いやぁ聞いて置いて(アレ)だけれど、何て答えようかなって。―

(アンマリ)()う言うタイプ、御目に掛かれないからな。一寸(チョット)スーに似ているかも知れないけれど彼奴も基本隠れているし。

 ドレミ達も言葉を失っている様だ。(オカンナギ)だろうな、とは思っていただろうが、琴城の物語とのギャップに付いて行けないのだろう。

 ()の話を聞けば、(メカンナギ)(オカンナギ)の関係は幼馴染か恋人か、そんな印象を受けるものな。

 ・・・其がこんな主従関係だなんて、普通は思わない。

「良いわ。ちゃんと言えたから私も教えてあげる。此の人達は何やら世界を護る仕事をしている然うよ。だから私、退治されそうになったのよ。貴方が余りにも、余りにも迎えに来るのが遅いから。まぁ元々期待もしていなかったけれども。其で、付いて行かないと殺すぞって脅されてから一緒に行く事にしたの。」

・・・酷い言い様だけれど(オオムネ)合っているんだから困ってしまう。

「な、何だって!そ、そんな事させないぞ!来い、僕が相手だ!」

「人の話を聞けと何度言ったら貴方の其の愚鈍な脳は覚えるのかしら。だからもう終わったの。貴方が遅過ぎたから。全て手遅れになったのよ。もう私はこんな所、出て行くから。」

如何して此の(メカンナギ)は悪役みたいな事を言うんだ。

 其の台詞は自分が言う奴じゃないか。攫われる側の言葉じゃないな。

 (シカ)も其の怒涛の責め苦は彼に刺さったらしく、折角勢い込んでいたのに直ぐ項垂れてしまった。

「ね、ねぇダイちゃん、もう一寸(チョット)優しく言ってあげようよ。頑張って来てくれたんだよ?」

「フン、甘いわね。結果が全てよ。間に合わなかった事実に変わりないわ。其とも貴方、待ち合わせに寝坊したけれども全速力で走って来たら遅れても(ユル)す訳?其と此は違うでしょ。」

「う、ううん・・・でも、」

「・・・あの、ダイヤを本当に連れて行ってしまうんですか?」

遠慮勝ちに此方に聞いて来たな。まぁ本人には悪いがダイヤの言う事も正しい。

 結果が残せなければ結局、無駄になってしまうのだ。

―噫、連れて行く。でないと此処で(タオ)さないといけなくなるからな。―

「ベール、例え戦おうとしても無駄よ。貴方なんかより此方の方が(ツヨ)いし。貴方はその・・・戦えるタイミングってのがあるし。」

「・・・分かった、分かったよダイヤ。あの、僕も連れて行ってくれませんか?出来る事はしますので。」

まぁ・・・然うなるか。一応彼も(オカンナギ)なんだし、英霊なんだろうし、連れて行くのは全く問題ないが。

 ・・・自分も一寸(チョット)遊びたくなって来た。

―何でもって口では簡単だが、具体的に何が出来るんだ?―

「え、あ、あの、雑巾掛けは得意です!芥拾いも、何時間でも出来ます!ガム取りとかも、得意中の得意です!」

―そ、掃除の神なのか。―

此は驚いたなぁ。

「ちょっベール、他に言う事あるでしょ!貴方其でも(オカンナギ)なの!一応私のパートナーでしょ。」

「で、でも僕、芥みたいな物だし、出来る事って・・・、」

うーん此の子、可也此の現状に慣れているなぁ。自分はもっと活きの良いのが矢っ張り欲しいな。

「噫もう、貴方一応殺人鬼の血が入っているでしょ。其処はまぁ其処其処上手いんだから言いなさいよ。アサシンにはなれるんだから。」

―・・・随分パートナーには優しいな。―

「う、(ウルサ)いわよ。呪われてる癖に。」

其は一緒じゃないか?

「ふーんん、ダイヤにも友達、居たんですねぇ。まぁ良かったですぅ。ボスさん、良ければぁ彼も連れて行って下さいませんかぁ?」

成程、リーシャンも初対面だったのか。まぁずっと閉じ込められていたんだし、仕方ないか。

―大丈夫だ。元より其のつもりだ。神手不足(ヒトデブソク)なんだし、皆連れて行く。―

「よ、良かった、然うだよね。セレちゃんが見逃す筈ないもんね。」

―流石セレ店主!太っ腹や!―

「フン、何よ。其位分かっていたわ。其じゃあさっさと連れて行きなさい。」

―じゃあ全員(マト)めて次元の迫間(ディローデン)へ御招待だ。―

同意もある。恐らく自分の意識と干渉力がちゃんと導いてくれる筈だ。

 店・・・帰る所、ちゃんと意識して・・・、

 一度波紋を閉じる。然うして完全な無の状態へ。

「・・・あら、何とも小さな小屋なのね。」

無音の筈なのに悪口丈聞こえた。

 と、言う事は・・・。

 波紋を広げると丁度店の真正面に全員居た。

 其の(ママ)動かずテレポーテーションした具合だ。

 ・・・良かった。全員連れて来れたみたいだ。其に何より、耳が治っている!

―丗闇、如何も御疲れ様。もう大丈夫そうだ。―

薫風(カゼ)の音、瓊草(クサ)の揺れる音、其の全てが聞こえる。

 やっと一寸(チョット)した眩暈みたいな感覚も無くなった。矢っ張り聞こえなくなっていたのは可也の障害だったのだ。

―・・・やっとか、無駄な手間を取らせてくれたな。―

―本当に有難う。御蔭で助かった、次は気を付ける。―

丗闇がいなかったら三柱も店に連れ込めなかっただろう。大収穫だ。

「其じゃあ此処が私達の店、次元龍屋だ。ようこそ、歓迎するよ。」

「あら貴方そんな声だったの。先迄頭に直接話し掛けていたのに変な人ね。」

「噫先迄耳をやられていたからな。治ったからちゃんと話すよ。先のは例外だ。」

脇腹も治ったし躯が軽い。此は神の良い所だな。

 でもダイヤ、テレパシーの事、随分素直に受け止めていたんだな・・・。普通に接するな、とは思っていたけれど何て言うか・・・順応が高い、のか?

 まぁ元々リーシャンもテレパシーで会話していたんだろうし、慣れていたのかも知れないな。

「あ、そっか。セレちゃん耳治ったんだね。良かったぁ、ドレミテレパシー丈は如何しても苦手だったから。」

「すっかり心配かけてしまったな。もう大丈夫だ。さ、立ち話も難だ。中へ入ろうか。」

言った所ではたと気付く。リーシャンだ。

 ・・・如何考えても扉を潜れない。窓から嘴を出すのが精一杯なサイズだ。

 でも一柱外と言うのは無いだろうし、多分ダイヤが(ユル)さない。

 リーシャンも気付いた様で首を少し捻っている。そんな目で自分を見ないでくれ、何て(ツブ)らな瞳なんだ。

 取り敢えず扉を開けると目の前にハリーが居た。

 此は・・・さては扉を開けられなかったな。未だ未だ精進が必要そうだ。

「ぬ!セレ良くぞ帰ったのだ。所で何か不思議な匂がするのだ。外に出てみたいのだ。」

髪の先が揺れている。何だか嬉しそうだ。

 匂ってリーシャンの事か?三大伝説龍なんだし、惹かれる物があるのかも知れない。

 ハリーは外へ出ると直ぐ様リーシャンの所へ向かった。

 とは言っても走るなんて彼にとって高度なテクニックなので不思議な踊りをし乍ら近付いている様に見える。

 ダイヤはさっさとリーシャンの翼の下へ入ってしまった。

一寸(チョット)何よ此の不審者。此方来ないでくれるかしら。」

「む、其方に用は無いのだ。我が気になるのは其方の龍なのだ。」

「・・・確かにぃ、何だか懐かしい匂がしますぅ?」

リーシャンは不思議そうに嘴を伸ばしてそっとハリーの匂を嗅いでいた。

 ・・・良くハリー無事だな。あんな大きな嘴、恐くないのだろうか。突然頭に振り下ろされても避けられないのに。

「リーシャン、紹介しよう。先言った三大伝説龍の一頭、ハリーだ。ハリー、良かったら幻を解いてくれないか?」

ハリーは一つ頷いて直ぐ様幻を解いた。

 忽ち全長10m以上の巨大な(ハナダ)の龍が姿を現す。

 余りの大きさにダイヤは思わずより翼の中へ潜り込んでしまう。

―あ、何か久し振りやわ。矢っ張りかっこいいわぁ先輩。―

何だか凄く嬉しそうにソルも駆けて行きハリーの足元迄寄って来たので、そっとハリーは腰を下ろしてソルを背中に乗せてやった。

 ・・・何とも微笑ましい光景である。

「ま、まさかぁ先のが仮の姿だなんてぇ、御見逸れしましたぁ。」

「うむ、我は幻を扱えるのでな。其方は何なのだ?」

「私はぁリーシャンって申しますぅ、晶と言う、此の水精(スイショウ)に写る物を自由に操れる力ですぅ。」

「うむ、何とも面白い力なのだ。其方が我の同志と言う事なのだな。歓迎するのだ。」

何だか上手く行っているな。ハリーはずっと塔に居た割にはコミュニケーション力が高い。

 ()う言った交流は非常に大切だろう。良い事でもあるし、応援したいな。

「然うだハリー、若し出来ればリーシャンを幻で小さくしたりは出来るか?店に入れてあげたいんだが。」

「うむ、其位何でもないのだ。同意があれば直接相手にも幻は掛けられるのだ。我と同じ人の身は修羅の道、其の(ママ)小さくしてみるのだ。」

直ぐ様ハリーはリーシャンに幻を掛けた。するとリーシャンは肩に留まれる程の小鳥サイズに変化した。

―か、可愛い!凄い、あんな事も出来るんやな。此で大丈夫や。―

「うむ、此の程度で(ハシャ)いではいけないのだ。我にとって此位序の口なのだ。」

ハリーは得意そうに片手を挙げている。此の姿だと本当に器用だ。

「た、確かに可愛らしくはあるかも知れないけれど・・・所詮幻なのでしょう?結果は変わらないわ。」

「我の幻を舐めて貰っては困るのだ。幻とは言え、我は其を実現させる力もあるのだ。だから幻を解かない限り彼奴は()の大きさなのだ。」

「何だか雛の時より小さくなって不思議な気分ですぅ。でも有難う御座いますぅ。」

リーシャンはパタパタと小さな翼を羽搏(ハバタ)かせて扉を潜って行った。

 確かに迚も可愛らしいが、(アレ)だとモフモフを堪能出来ないな。(シカ)る可き時には解いて貰おう。

「流石だハリー、助かる。でもハリー、何時もの姿が大変ならハリーも先みたいに少し小さくなれば良いんじゃないか?本来器用なんだし、無理に私達に合わせなくて良いんだぞ?」

「む、無理等していないのだ!我は其方と一緒に色んな次元に行ったり、色んな事がしたいのだ。だから人の姿でないといけないのだ。」

ハリーは慌ててソルを背中から降ろすと自身に幻を掛けて人身に戻った。

 何だか彼なりのプライドだとかがある様だ。まぁ彼が然う言うなら良いのだろう。自分は応援する丈にしないと。

 取り敢えず可愛い事を言ってくれたのでそっと彼の頭を撫でてやる。自分にとってはハリーが一番可愛いぞ、モフモフでなくても可愛いからな。

「其じゃあ中に入ろうか。御前達の部屋もあるし、しっかり話をしないとな。」

「えぇ、望む所よ。」

然う言いつつも先行してしまったリーシャンが気になるらしく、さっさと店に入ってしまった。・・・後は、

「・・・生きているのか?」

英霊への質問としては(イササ)か不謹慎かも知れないが、ベールが完璧に固まっていた。

 口を開けて店を凝視している。目の前で手を振ってみたが反応なしだ。

 先からずっと固まっているなとは思っていたが、可也重症だな。ドレミも心配だったらしくてそっと様子を窺っている。

 然うしているとダイヤも気付いたらしく、少し丈顔を覗かせた。

「ベール!貴方御守も出来ないのかしら。そんなの足手纏(アシデマト)いだからさっさと帰ってくれないかしら。」

「っ!ご、御免ダイヤ、す、直ぐ行くよ!」

突然スイッチが入ったかの様に元気になった。其の(ママ)慌ただしく店内へ入って行く。

「・・・何だかもっと賑やかになりそうだねセレちゃん。」

「噫、中々癖のありそうな賑わい方だが。」

・・・駒は揃っただろうか。

 自分は進まないといけない。全てを利用して、全てを壊してでも。

 彼奴の部下を手に掛けたんだ。もう時間は無い。

 内で荒れ狂う焔を感じ乍ら、セレは一つ微笑した。

   ・・・・・

全てを諦めていた

会う事も、(ヒカリ)を見る事も、信じる事も全て

永遠に此処に居乍ら朽ち果てると思っていた

けれども呪いは放たれた、自由を得る

呪いは世界を包むだろう、全て壊す迄

其迄精々足の無い幽霊らしく楽しく生きようか

はい、終わりましたね。いやぁ懐かしい!

今回の話、本当に色々あったんです。

需要あるのか分かりませんが、リメイク前だと実は此が琴城さん初登場です。そして其を読んでくれた友人が“絶対此の吟遊詩人怪しい!”と語ってたんですね。其の一言でレギュラー入りしました。其迄は本当に此の話限りの吟遊詩人だったんです。今では可也重要な子になりましたがね・・・。

もう一つ言うと吟叫との戦いは丗闇がやってくれます。滅茶苦茶勁いので瞬殺です。只話の流れからしてもう然う言う展開は有り得ないのでセレがさっくりやってくれました。

後は仲間が滅茶苦茶増えましたね。リーシャンとか本当に能力が可也酷いです。唯一の救いは彼が戦闘を好まない事でしょうか。其の為ブラックホールなんて大技を出してびびってセレ達帰ってくれないかなぁと秘かに思ってました。

一応裏話だと最近仲間が増え巻くっているのはセレの干渉力の所為です。最近セレは次元を救うより、仲間集めに重点を最近置いていたので斯う言う結果になっています。悪友っぽいのが増えたのも滅んだ次元が出て来るのも然う言う訳です。仕様です。決してイベント配分を間違ったとかではありません。本当だよ。

最後にちょくちょく久し振りに誤字が出て来たので其丈曝します。次回もリメイク話ですがリメイクと言っても骨組みしか残っていない様な物なので個人的に如何なって行くのか楽しみです。其では又良ければ御会いしましょう。




 其は村人が居なくなる迄続いた然う

 人影絶えた村で、今でも(メカンナギ)(オカンナギ)は詠っている

 世界を呪う詠を、イエイエイエ!



琴城さんの歌のラストです。正しくは永遠に、だったのですがとんでもないミスになりました。此、嘘だと思うでしょ。マジなんです。

最後の最後で琴城さんがポップに歌い上げてくれました。




―じゃあ率直に。私達の仲間になってみないか?其が嫌なら此処で昇天して貰う。―

英霊は神霊に通ずるって聞いた事がある。多分もう彼女は神みたいな物だと思うけれど。

―セ、セレちゃん抱いたんだね・・・。その、可哀相とは思うけど。―



ダイヤを勧誘している所です。何故かドレミの誤変換が多いですね。

正しくは大胆、だったんですが何だかエロい流れが来ました。化物と口悪巫のGL本って需要ありますか?

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