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次元龍屋  作者: -Sare-
忘れられた世界の追憶
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32次元 月食に沈む瀛海の吟が誘う次元

 はい如何もです。最近暑い日が多いですね。完全にばててしまった筆者です。ガチで何もモチベーションが上がらない。取り敢えず体調は戻さないと。と言う事で皆さん本当に躯は大切です、しょっちゅう壊す筆者だから言います、躯が駄目だと何も出来ないよ!ホントだよ!

 だからか何だか最近望まない形での短編が多いですね。七万文字の壁に昔は苦しめられていたのに、何と情けない!

 まぁ終わらない霄は無いんだし、今は堪える丈だと頑張るしかないですね。某漫画の恐竜が言っていました、此の時代が終われば俺等の天下じゃね!?と、其位のモチベーションで頑張りたいですね。

 そんな今回は割と幻想的な御話。最近動物関連の話が多い気がしますが、人間がわちゃわちゃするより斯う言う話の方が書き易いんですよね。

 さぁ旻に浮かぶ彼の水鏡が、皆さんには一体何に見えますか?

水鏡(ツキ)が廻る

もう直ぐ()の御方が目醒める時だ

さぁ瞳を叩いて起こそうか

水鏡(ツキ)が廻る、水鏡(ツキ)が廻る

ほらもうあんな高くに

薫風(カゼ)の笛を吹け、時の詠を奏でよ

()の御方が優しく目醒める様に

噫何て美しい水鏡(ツキ)だろうか

   ・・・・・

「・・・本当だ。村なんてあったんだね。」

茂みから姿を現した飃は小さく口笛を吹く。

 彼の視線の先には小さな聚落(シュウラク)があった。

 人々が出歩いているが何処か忙しない。何かあるのだろうか。

「私の千里眼を舐めて貰っちゃあ困るな。」

「蝙蝠が千里眼ねぇ。」

同じく茂みから出たセレは言葉の割には余り楽しそうではなさそうだ。

 次元の主導者(コマンダー)の気を探っていたら、如何も此の聚落(シュウラク)の中心の様だったのだ。

 成可くく人と関わりたくないと言うより、(ワズラ)わしいと思っていたのだが仕方ない。

 今回こそは恐がられないと良いのだが。

 セレはフードを目深に被って先を行く飃に付いて行った。

 そっと服の上から腹を撫でる。

 ・・・一応怪我は治っている。別に違和感もない。

 あんな大怪我と治療法は然うなかったので完治したか如何かは実は自信が無い。

 内臓が勝手にくっ付くとか、未だに信じられない様な話だからな。

 かと言って此以上寝ていたら丗闇が倒れ然うだったし、自分が治る迄帰らないだとか訳分からない駄々捏ねるしで起きざるを得なくなったのだ。

 まぁ(ホトン)ど完治しているだろうし、戦争に飛び込む様な事をしなければ支障は無いだろう。

「何かもう起きているみたいだけど御姉さんは心当たりない訳?」

確かに皆慌ただしい。多くの荷物を持って村人が走り回っているが、若しかして大移動でもするのだろうか。

 村自体は簡素な物で、碧樹()や葉で家を作って其が集まって出来た様な具合だ。

 村人も自分が良く知る人に近い。鼻が丸く、背は低いが手足が異様に長い位で話が出来そうではある。

 服装は自分達と大きく違うが忙しさ故か余り気にされてはいない様で容易に村へ入る事は出来た。

「如何するの?行き成り皆殺しとかはしないんでしょ。」

「其やったら仕事所じゃなくなるからな。誰か適当に話を聞けたら良いんだが・・・、」

「ま、其が妥当だろうね。案外真っ当なやり方が好きなんだ。」

飃が適当にぶらつくと其に気付いた村人が寄って来た。

「見慣れない村の者だけど良う来なさったな。彼方(アッチ)は大変やったろう。」

彼方(アッチ)?うーん僕達適当に来ちゃったから余り地理に詳しくないんだけど、何か此の周りにあるの?」

其を聞き、村人は心底驚いた顔をした。手荷物を落としてしまう程の驚き様だ。

「ま、まさか北の地より来られたのか。こんな大変な時に、は、早う戻りなされ。此より先へ行ってはいかん。」

「具体的には何があるんだ?若し差し支えなければ教えて欲しいんだが。」

そっとセレが声を掛けると村人は目を丸くし乍らも何とか口を動かした。

「儂はもう荷造りも済んだし、少し位なら・・・。そ、然うだ良ければ其方達も村へ戻られたら話すと良い、手遅れになる前に。付いて来てくれるか、良い所があるのだ。」

村人は荷物を取ると足早に村の中心部へと向かう。

「随分親切な人に会えて良かったね。何だか祭りでもある様な雰囲気だし。」

ちらと飃は(ソラ)を仰いだ。

 (クロ)(ソラ)水鏡(ツキ)が一つある。先見た時は盈月(エイゲツ)だったのだが、気付けば少し欠けていた。

 ・・・此の世界の一日がどんなだが知らないけれど、此の(ママ)(アサ)にはなって欲しくない物だ。折角楽しそうな予感がするのだから。

「祭り・・・か。でも今更逃げようとしているみたいだけれども何が起きているんだろうな。」

黔日夢の次元(ゼロ・ディメンション)が起きているだとかがあるのだろうか。時間のずれは次元毎にあるって聞いた事があるけれど、自分が二柱現れる様な事があるのだろうか。

 其か力の余波に苦しめられている次元なのか。()の道自分の所為で今此の村は大変な事になっていのだろうけれど。

 辿り着いたのは一つの石碑の前だった。

 何だか不思議な形だ。何か術が掛けられているのか石碑は動いていたのだ。

 大きな水精(スイショウ)の様な物が一つ浮かび、其の周りを石で出来た魚が一匹泳いでいる。

 下の台座には何やら文字が彫ってある様で、恐らく石碑についての歴史か何か書かれているのだろう。

「ふーん、此を護ったりしないといけないっぽいね。地震とかだと面倒だから止めて欲しいんだけど。」

然う、此の石碑は只の石碑じゃあない、次元の主導者(コマンダー)だ。

 と言う事は恐らく村人達は移動の準備をしているのだろう。何かが起きるから其の脅威から護らないといけない訳か。

 まぁ別に護る事が全てではないけれども、でも其の位のつもりでいた方が良さそうだ。

「此は・・・水鏡(ツキ)ノ鯨と呼ばれる石碑なのだが、大昔、古代人が戦争兵器として作った戦艦の事なのだ。そして中央の石が水鏡(ツキ)ノ鯨を動かす燃料、虚ノ心臓と呼ばれる石なのじゃ。」

村人はちらと石碑を見遣り、直ぐ視線を()らした。石碑ですら恐れる存在らしい。

水鏡(ツキ)ノ鯨は自らの意思と途轍もない力を持った戦艦だった。昔の文明が全て滅びたのも此奴の所為と言われておる。」

「若しかして其が目醒めちゃった・・・とか?」

「・・・うむ、ずっと眠りに付いていたんだが、水鏡(ツキ)ノ鯨は月食でなければ起動しないのだ。月食なんて何百年も無かったから我々も忘れ掛けていたのだが、最近連日の様に月食が起きてしまって、」

飃はもう一度(ソラ)を見た。

 ・・・確かに、先より水鏡(ツキ)が欠けている。

「目醒めた水鏡(ツキ)ノ鯨は周りの村を日々破壊し尽くしているのだ。儂等に勝ち目なんてないので只月食が終わるのを願って()うして村を出る準備をしている訳なんだが、」

「成程、然う言う事か。良く分かったよ、確かに此は気を付けないといけないな。直ぐ近くの村にも伝えないと。」

「うむ、是非然うして貰いたい。もう直水鏡(ツキ)ノ鯨が動き出すので儂は行くが、気を付けて下され。」

「御爺ちゃんも気を付けてね。」

村人は何度か頷くと荷物を持って何処かへと歩き去ってしまった。

「あんな優しい御爺ちゃんも居るのに此の精霊と来たら、だね。御爺ちゃんに嘘()いたでしょ。」

「優しい嘘を知らないのか?(アレ)を聞いて“有難う、じゃあ水鏡(ツキ)ノ鯨の所行って来るよ。”なんて言ったら()の御老人は卒倒してしまうだろう?時にはああ言う嘘も必要だ。」

そっと村外れ迄向かう。さて、今回はやる事が分かり易くて助かるけれども。

「早速行くか。鯨って言う程だし飛んで行けば直ぐ見付かるとは思うんだが。」

「賛成。ってか御姉さんが何かしてる筈でしょ?憶えてないの?」

「然うだな・・・余り憶えが無いな、今の所は。」

一応周りを確認してそっと翼を出して飛び立つ。

 其の直ぐ後を(ツエ)(マタガ)った飃が付いて来た。

「もうやる事大雑把なんだから。ほら虚ノ心臓とか御姉さんのじゃないの?心臓無いんでしょ?鯨にあげた憶えとか。」

「無いな・・・。()の時にそんな理性無かったし、」

心臓をあげたとか凄いな。やっても血を一滴零した位だし、無関係だろう。

 でも古代兵器の燃料か・・・凄い魔力を秘めているのなら回収はしてみたいな。

 其の(ママ)暫く飛んでいると少しずつ水鏡(ツキ)ノ鯨の足取りが分かって来た。

 破壊し尽くされた村の残骸がちらほらと姿を現し始めたのだ。

 火でも放たれたのか近くの蕭森(モリ)迄焼け焦げていたり、何か大きな物に踏み潰されたかの様に平らになってしまっている。

 只肝心の水鏡(ツキ)ノ鯨が見付からない。波紋にも写らないし、若しかして名前程大きくはないのだろうか。

「何だか同じ景色(バカ)りだね。場所としてはあってると思うけど。」

「然うだな、もう直ぐ月食にはなるが・・・噫、嫌な奴が代わりに居るな。」

セレが心底つまらなそうな顔をしたので飃は不思議そうに付いて行く。

 ()の精霊が会いたくないなんて、そんな顔させる奴が居たんだ。其は純粋に気になる。

「・・・御前が思ってる程愉快な奴じゃないぞ。屹度御前も手を組もうだとか思わなくなる様な奴だ。一応、挨拶はして置くけれど。」

飛び続けると飃も其の姿を捉える事が出来た。

 でも(アレ)は一体何だろう、飃は今迄の人生で一度として見た事のない其に困惑していた。

 視線の先には1m程の淡く光る(タマ)があり、其処から放たれた(ヒカリ)が複雑に絡まって幾何学的模様を作り出していた。其を見ている限りでは全長30m程の蛇の様に見えなくもない。

 生物か如何かも疑う様な存在だったが、向こうも此方に気付いたらしく近寄って来た。

「やぁ御久し振りって言って置く可きなのかな。君の方から会いに来てくれて嬉しいよ僕は。如何かな、君の所へ蒼の花束は届いたのかな。」

「フリューレンス、然うだな。前会ったのは城の時か・・・少し懐かしいな。」

骨の城だったな。自分の初契約だ。

 ()の時気付いた事がある、フリューレンスは力を持っている丈で他の龍と変わらないんだと。

 只力が厄介な丈で。でも其で嫌っちゃあ・・・結局私も同じだ。

 私を捨てた者と、嫌った者と・・・同じになってしまう。

 其は、良くないよな。其の痛みが分かる私こそ、同じ事を繰り返してはいけないんだ。

 だからもう少し丈、彼の事を受け入れようと思ったのは事実だ。

 直ぐには難しいけれども、少しでも。

「飃、紹介しよう。彼はフリューレンス、龍族だ。心を読む事が出来るから気を付けてくれ。」

「其の紹介は一寸(チョット)酷くないかな?フフ、事実だけどね。君は新神さん?良いなぁ彼女と一緒に居られて。」

「彼は飃だ。私を殺したがっているから恐らく心を読んでも(ロク)な事にならないぞ。」

雑ではあるが一応紹介出来たかな。でもフリューレンスと飃が手を組むと結構厄介だな・・・。

 恐らく暗殺の成功率が格段に上がるな。割と恐ろしい、対策もし難いし。

 とは言えフリューレンスは私の味方だろう・・・だよな?

 フリューレンスは珍しそうに飃を見遣っていた。何だかちょっかいを掛けたがっている風に見える。

「へぇ、心を読むって其こそ神様みたいだね。龍族ってのも面白いね、魔物みたいなのにこんな風に話せるなんて。」

「僕も。まさか君みたいな異色を彼女が迎え入れるなんてね。思ってなかったよ。こんな事するからどんどん歪んじゃうってのにね。でも君には悪いけれど彼女は殺させないよ。勿体無いよ。」

「何で御姉さんってあんな事してるのに味方が多いの?普通世界は僕を味方する筈なんだけどなぁ。」

おや、殺人鬼がおかしな事を言い始めたぞ。まぁ彼を殺人鬼にしたのは自分だ、と言えば筋は通るかも知れないけれど。

「私も其は良く分からないな。でも助けてくれるのは嬉しいから私は一向に構わないぞ。だからって二柱で喧嘩丈はしないでくれ。」

「フフ、大丈夫だよ。君の心も面白いからね。彼女に会うのがもっと遅かったら君の手助けをしていたかも知れないし、君は削られて尖ったタイプだね。どんなに削られても芯は残って、(ムシ)ろ削れば削る程鋭くなっている。レアなタイプだよ。君の心、忘れないでね。」

「心の龍に褒められるなんて流石だな。私の目に狂いはなかったか。」

「如何考えても有能な死神を仲間にしている時点で狂い捲ってるし(チッ)とも褒められた気もしないし、僕は如何したら良いのさ。」

飃は少し(ツエ)の先を揺らして肩を(スク)めた。

 まぁ仲良く出来そうだし良い具合かな。

「然う言えば君、最近龍族と良く会ってるの?君と仲の良い子を良く見掛ける様になったんだけど。」

「リュウの所にも行ったからな、積極的に探してもいるし。」

龍は相変わらず好きだ。本当に皆良い子だと思う。

 ・・・彼等丈が知っている何かがあるのだろうか。本能みたいな。何時も無条件で好意的になってくれている気がする。

「うん良いね。其の調子で続けた方が良いよ。僕達が何時でも君の力になるからね。例えば・・・三大伝説龍だとか、古代の龍って知ってるかな。僕みたいな。」

三大伝説龍、確かハリーが然うだったか。其の三頭は其々特別な属性を持っている。

「知ってはいるが未だ(ホトン)ど出会っていないな。珍しいから伝説なんだろう?」

「うん、でも彼等を積極的に探す事を御勧めするよ。必ず君の必要な力になる。力、欲しいでしょ?」

満足そうに頷いてフリューレンスは棚引く(ヒゲ)を誘う様に振った。

「・・・ねぇ思ったんだけど、何で龍族って揃いも揃って御姉さんの事が好きになるの?君(ロク)な事してないでしょ。其とも龍族も人間の事嫌いだったりするのかな。」

「其は私も知りたい所だけれどな。何故だか皆付いて来てくれるんだ。」

「フフ、説明は難しいなぁ。此は感じる物だよ。其に僕は人間好きだよ。色んな心を持ってて、見ていて飽きないからね。でもそんな気持なんかよりも優先される可き事がある、其丈の事なんだよ。君達神の使命みたいな物でね。」

相変わらず言っている事は良く分からない。其は飃も同じだった様で其以上は追及しなかった。

「噫然う言えばもう一つ教えて置こうかな。フフ、そんな警戒しないで。別に今君達の心を奪う気はないから。只の御喋りだよ。・・・最近、傷を持つ龍達が集まりつつあるから気を付けて。何か良くない事を考えてるよ。見たくもない心(バカ)りだから僕も良くは知らないけど。」

「傷のある・・・?怪我をしていると言う事か?」

心の龍も嫌う心って、一体何だろう・・・。

「躯と言うより心の怪我、だねぇ。先の人間の話だよ。人間だとかに傷付けられた子が集まってる。嫌な予感しかしないでしょ。まぁ君は仲間みたいな物だし大丈夫だと思うけど、君の仲間は然うとは限らないでしょ。用心に越した事はないんじゃないかな。」

「妥当に復讐とか考えて然うだね。死神もターゲットにされるかな。」

「然うなら未だ良いんだけどね。只心を殺す丈なら僕は悲しいなぁ。変化する様が良いのに動きを止めたら其迄だよ。」

「分かった。色々有難う。」

矢張り彼も龍族なのか。普通に接すればこんなにも友好的だ。

 今迄少し避け過ぎていたのかも知れない。心の龍と警戒はしないといけないだろうが、其を除けば貴重な情報屋だ。

 フリューレンスも嬉しそうに頷いている。中央の(タマ)が淡く温かく光った。

「・・・所で御前はこんな所で何をしているんだ?御前の御気に召す心でも見付かったのか?」

「僕が一番好きなのは君の心だよ。でも確かに此処へは心を探しに来たんだよ。呼び声がずっとしていたからね。辛い、苦しいって。」

其は近くの村の者だったりするのだろうか。彼は陰りつつある水鏡(ツキ)を見上げた。

「もう直ぐ彼が来る。君も彼に会いに来たのかな。君の(ソラ)薫風(カゼ)の様な声なら彼に届くかもね。」

「来る?来るって・・・誰なんだ?」

 此処は変わらず(ソラ)だ。近くの村も全て破壊し尽くされている。こんな辺鄙な所に誰が来るんだ。

「おや、君達も其目当てで来たんだと思ったんだけどなぁ。水鏡(ツキ)ノ鯨だよ。月食になるとやって来る龍だよ。」

「あれ、水鏡(ツキ)ノ鯨って龍だったんだ。燃料とか言われたから古代兵器だと思ってたのに。」

「フフ、古代兵器(サナガ)らな龍は多いよ。彼女だって似た様な物だよ。天災クラスだしね。」

「・・・否定し難い所を突くな。」

「血も涙も無いし、確かに然うだね。」

あっさり飃も納得してしまった。然うか、自分の事古代兵器だと思ってたのか。

「然うだな。水鏡(ツキ)ノ鯨は私達も捜していた物だ。然うか、龍族だったのか。だったら壊す以外の方法を考えないとな。御前は如何するつもりなんだ?」

此方は宥めようとしているんだから暴走とかは勘弁してくれよ。別に人間の村が幾ら滅びようと勝手だけれども次元の主導者(コマンダー)は今回人工物なのだから。

 (アレ)丈残してくれたら良いよって訳には行かないしな。

「僕?フフ、僕は知っての通り心の龍だよ。彼のしたい事を理解して導いてあげるのが役目だよ。」

つまり暴走の可能性は十分あると。前進するのは何方(ドチラ)にしろ良い事だろうが、其は不味いな。

「結局、如何したいの?君としては。」

心の龍、と言われてもピンと来ないのだろう。飃が直球で尋ねたがフリューレンスは微笑して布の様な鰭を振った。

「彼次第だけど然うだね、具体的に言えば彼が眠りたければ寝床を作ってあげるし、怒っていたら暴れさせてあげる。そんな所だよ。」

「私達は水鏡(ツキ)ノ鯨を止めに来たんだ。だから余り邪魔して欲しくないんだが。」

フリューレンスの能力は本気で厄介だ。()う言う時不確定要素が入るのは不味い。

「あれ然うなの?君の心を見ている限りだと水鏡(ツキ)ノ鯨と一緒にやりたいんじゃないかなって思ってたのに。」

心底驚いたと言わん(バカ)りだ。()の道其の答えも本心とは違うと思うんだが。

 自分は・・・本来なら気にしたくない筈だ。知らなくて良かった。人間なんて勝手に滅べば良い、其丈だ。

 まぁ其の細かい修正は別に良いかな。飃が黙って聞いているのも気になるし。

 ・・・此だから此の龍は苦手なんだ。自分の内を勝手にべらべら喋ってしまうんだから。

 普通に接しようとして此なんだから本当難しいな。

「・・・仕事なんだ。暴れられたら困るんだよ。」

「然うやって心を閉じ込めて壊れない様にね。ほら、もう彼が来るよ。」

見上げると確かに水鏡(ツキ)はもう可也欠けていた。でも未だ完全な月食迄時間がある様に思う。

 でも然う思ったが束の間、残った水鏡(ツキ)はゆるゆると回転をし始めたのだ。

 惑星としては有り得ない動きの筈だ。まるで残って見える水鏡(ツキ)の部分しか本当に無いみたいに。

 本来の水鏡(ツキ)の中心部分から(イト)で繋がれた様に、水鏡(ツキ)(ユック)りと回転していたのだ。

 まるで揺り籠みたいに、幻想的な景色だった。

 其の(ママ)水鏡(ツキ)は欠けた(ママ)大きくなった。段々と視界を覆って行く。

 回転し乍ら、少しずつ、

「ねぇ、水鏡(ツキ)ノ鯨ってどんなのか知ってるの?何か懐い出した訳?」

「懐い出した訳ではないけれど、然う言う名前の龍族は確かにいるな。水鏡(ツキ)ノ鯨なんて別称だし、少し自分が知っている特徴と違うから中々思い出せなかったが。」

読んでいたのと少し違う。だけれども今起きている現象からして奴で間違いないだろう。

「飛属性の超大型龍族だ。(ナメ)らかで(シナ)やかな金属に似た表皮に覆われている。異星の金属と呼ばれる程強靭だ。レーザーを全身から放ったり、其の巨体と硬度を活かして突進を繰り出す事が出来る。」

「成程ね。まぁ大きいのなら小回り効かないだろうし、付け入る隙はありそうだけど。」

「だが彼奴は村では戦艦と呼ばれていたが、航空母艦の方が近いだろうな。敵は一頭じゃない。彼奴は其の巨体の中に数多くの共生している生物がいる筈。水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)零星(ホシ)の方舟と呼ばれる所以だ。」

水鏡(ツキ)が迫る。波紋の自分には分かる。有り得ない速度で水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)が此方に迫っている。

 ()()()水鏡(ツキ)はもう(ソラ)に無い。完全なる月食だ。

 そして目前迄迫った水鏡(ツキ)は目を開けた。正確には目に当たる所で銀の蛇の様な生物が廻り始めたのだ。

 其の瞬間水鏡(ツキ)の全身に模様の様な(ヒビ)が入り、輝き出す。

「・・・まさか、此が今回の相手な訳?」

流石に飃は臆したのか少し丈高度を下げた。

 水鏡(ツキ)はもう回転を止め、帆先を此方に向ける。

「然うだ。此の水鏡(ツキ)こそが、水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)だ。」

正直、全身が分からない程大きい。流石に水鏡(ツキ)程でないにしても、鯨よりは遥かに大きいのだ。

 幽風(カゼ)の流れが変わり、水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の全身に水流が象られたかの様な鰭が生え、しぶきを散らす。しぶきは次第に燕の様な形となり、無数の群となって水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の全身を駆け巡る。

 銀の蛇の瞳は大きく開かれ、(ユック)りと水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)は動き始めた。

 動く(タビ)に全身の(ヒビ)から飛魚の様な生物が現れる。気付けばマンタの様な生物が並走していた。

 現れた生物達は皆闇霄(ヤミヨ)に発光し、泳ぐ様は美しかった。

挿絵(By みてみん)

「成程、(アレ)が母艦って訳ね。」

「皆水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)から生まれるんだ。只無尽蔵に出て来るからな。後は、フリューレンス、如何思う?」

確かに水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)は現れた。だが未だ目的は分からない。

 フリューレンスは困った様に笑って、鏡の瞳を目一杯開いて水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)を見ていた。

「任せてって言いたい所だったけれど、今回は駄目だなぁ。此は、()の子の本心じゃないよ。彼は何も壊したくない。何かに操られているんだ。だから()の子はずっと()いていたんだね。」

「然うか。矢張り龍古来見聞録(カリグローズ)が正しかったのか。」

本来水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)は大人しい龍族だ。戦闘能力はあっても、其は自身の命が脅かされた時のみ発揮される。

 月食の闇に現れて旅人を村迄導いた、と言う伝説を数多く残して来た龍族なのだ。

 操られている・・・か。古代兵器だなんて呼ばれていたし、人間に何かされてしまったのだろうか。

 ()う言う時は矢張りフリューレンスの能力は役に立つ。相手が何を望んでいるのか分かるのは可也のアドバンテージだ。

 操られている丈なら未だ簡単だ。此で人間を怨んでいるから襲うんだ、なんて言われたら如何説得するか迷う所だった。

「此処は君がいるんだし、任せようかな。()の子を助けてあげて。僕に出来るのは心に触れる丈だから。・・・御免ね。」

フリューレンスは悲しそうに水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)を見遣った。

 彼にも、出来ない事があるのか。心が読めるなんて唯一無二な力を持っているのに。

「御前の御蔭で何となくやる事は分かったし、助かった。如何にか止めてみよう。」

「・・・有難う。歪んでいても君は君だね。鉱石の夢を君も見られます様に。次は屹度君の力になるから。又ね。」

フリューレンスは髭を手の代わりに振ると次元を去ってしまった。

「ふーん、あっさり帰しちゃったけど良いの?操られてるって分かってても何をすれば良いのかは分からないよ。」

「然うだな。只怪しい所はある。先村で虚ノ心臓が燃料だと言っていただろう?でも本来水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)にはそんなアイテムはない。恐らく其にヒントがある筈だ。心臓って言うんだから石炭とか何か形がありそうだが。」

「あー成程、其で操ってるかもって事ね。じゃあ手分けして探す?異物なら全身隈なく見て行けば見付かるんじゃないかな。」

「其から試してみるのが良さそうだな。私の波紋でも全身迄は見えないし、時間は掛かるだろうが。」

話していると突然水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の全身が激しく光り始めた。

 そして轟音を響かせ乍ら全身の(ヒビ)からレーザーを放った。シアン色のレーザーはまるで水鏡(ツキ)の様に周りを照らし、目が潰れる程だった。

 咄嗟(トッサ)に二柱は別々の方向へ飛び去る。其処へレーザーが駆け抜けた。

 見遣ると近くの蕭森(モリ)は其の一撃で壊滅した様だ。焼け焦げた蕭森(モリ)はもう息をしていない様に見える。

 別に自分達を狙った一撃ではない様だが如何(イカン)せん巨体過ぎてダメージ範囲が半端ない。でも(アレ)を食らうと一撃で昇天しそうな気がする。一瞬で焼かれてしまう。

「・・・今回の仕事が終わったら酒位出して貰わないと割に合わないね。」

「互いに生きて帰れたら考えて置こう。」

飃は一つ頷くと果敢にも水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)に向けて飛んで行った。

 (アレ)を見て逃げ出さないなんて本当プロ気質だ。

 自分の方が索敵範囲が広いんだし、積極的に行かないと。

 もう人は居ないだろうと言う事で尾も晒も取っている。此の姿なら先みたいなレーザーを近距離で撃たれても対応出来るだろう。

 飃が()う言った姿に偏見を持たないのは本当に助かる。

 目を皆に見せるのは如何も・・・抵抗があるのだ。

 常に睨んだ様に見える四つの瞳は、まるで自分の本心の様で、うっかり認めそうなのが嫌なんだ。

 見えない目も心を写す物なのだろうか。

 取り敢えず一気に羽搏(ハバタ)いて水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の近く迄寄ってみる。

 船の先端部分、水鏡(ツキ)の欠けた先の大きく反った所が顔に当たる部分の筈。

 目の代わりに銀の蛇の様な生物が(トグロ)を巻いている。彼はそんな身体機能すら彼等と共生しているのだ。

 蛇は可也警戒している。近付けば直ぐ攻撃が飛んで来そうだ。かと言って目を潰せば今迄以上に暴れられるだろうし、見付からない様にしないと。

 見付かっていなくても彼の周りを常に多くの共生生物が泳いでいる。其から攻撃は如何しても受けてしまうだろう。其なら目には入らなくても存在に気付かせる程度が良いのかも知れない。

水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)、私の声が聞こえるか!私はセレ、御前を助けに来た!」

何か一言、彼を揺り動かせればと声を掛けてみる。

 自分が助けるなんて、とは思うが一番シンプルで伝わり易い言葉の筈。

 目の蛇には気を付けて慎重に様子を窺う。

「コォォオォオォオォゥウゥウウウ‼」

水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)は僅かに口を開けた。其処から低音と高音が何度も混ざる様にうねる声が放たれた。

 凄まじい轟音だ。空気が震えて思わず耳を塞いだが、余りの音に落ち掛けた翼を上げる。

 其に合わせて彼を取り巻く数多の生物も、まるで(アブク)の様な声を一斉に上げた。

 水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の声の余韻も合わさり、まるで静かな海底に居る様な錯覚に陥る。空気の重さに息苦しさを覚えた。

 そして其の静寂の中、開けた(ママ)だった水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の口から巨大なレーザーが(ソラ)に向けて放たれた。

 (ソラ)彼方(カナタ)迄飛んで行き、眩しく光っている。

一寸(チョット)、僕迄殺す気?死ぬなら一柱でしてよ。―

―少し話せるか気になった丈だからもう大丈夫だ。注目は集めたから引き続き頼むぞ。―

矢っ張り飃に怒られてしまった。まぁ仕方ないな。

 其に大した反応も無かったし、フリューレンスが撤退したのも対話は出来ないと踏んだからだろうな。

 水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)が反応した事で何か変わるかも、とは思ったがレーザーを吐いた丈だし、効果無しか。

 でも見付かっていない丈で注意は引けたし、一応ありだろう。此方を重点的に探してくれた方が飃の探索も(ハカド)るだろう。

 慎重に水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の反らされた下方へ向かう。

 途端彼の周りに居た燕の様な生物に見付かってしまう。まぁそんな絨毯の様に居られちゃあばれるのは当たり前だな。

 只其の程度なら本体に迄はばれていないし、大丈夫だろう。

 燕が一気に集まって自分を取り囲む様に飛び始めた。

 彼等は偵察が主な役割の筈。一番数も多くて非常に素早い。

 試しに少しスピードを上げてみたがぴったり付いて来ている。

「ピュイ、ピルルルル!」

突然数羽の燕が甲高く鳴き始めた。

 仲間、呼ばれているんだろうな。何とか避け乍ら探さないと。

 警戒し乍ら飛んでいると水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の躯の(ヒビ)から飛魚の様な生物が複数出て来た。

 そして燕の鳴き声に真直ぐ突っ込んで来る。

―壁、創ってくれるか?―

―良イヨ、任セテ!―

応えた魔力が目の前に不可視の壁を形成する。

 (カワ)せはするだろうがう言う時は成る可く頼ってあげたい所だ。

 飛魚は其の(ママ)魔力の壁にぶつかった。そして小規模乍らも爆発をした。

「っ、(アレ)は魚雷だったのか。成程、確かに此は戦艦だな。」

爆風に煽られて飛行ルートと大きく逸れる。

 小規模とは言っても当たればそれなりのダメージがあるな。護ってくれて良かった。

「コォオォオオオオ‼コォオオウゥ‼」

突然地を揺るがす程の轟音がした。

 そして水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)(ユック)りと旋回する。

 ・・・あれ、此方を見ていないか?銀の蛇が威嚇している様な、

 次の瞬間又全方向レーザーが水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の躯中の(ヒビ)から放たれた。

 其を(カワ)そうと身を捩ると銀の蛇の口から細い乍らも的確に自分を狙ったレーザーが放たれた。

 先の飛魚、ダメージと言うより水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)に敵の居場所を伝えるのが目的だったのか。

「黔壁」

流石に此を全て魔力に止めて貰うのは難しいだろう。自分の術と作用して一緒に少しでも壁を創ってくれる事を願おう。

 レーザーが壁に刺さる。其の(ママ)レーザーは乱反射を起こして眩しく輝く。

 銀の蛇には可也眩しく見えた様で一時レーザーが止まった。

 其の間に近くの燕を蹴落として置く。レーザーで大半が居なくなっていたし、衝撃には弱い様で直ぐ散って行く。

 然うして目を減らした所でそっと又水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の下腹部辺り迄移動した。

 水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)と共存している生物は、厳密には生物ではない。生物と無機物の中間の様な存在なのだ。

 (ソモソモ)彼等は水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の中央部にあるコアのエネルギーから無尽蔵に生まれて来る。決められた仕事を(コナ)せる様にシンプルな構造で作られるのだ。

 生産的な事は何も出来ない。食事や休憩も取らず、壊れてしまったら其の(ママ)落ちてしまう。

 水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の免疫機能の一つとして見る方が正しいかも知れない。

 自分が逃げ込んで来た所からも(ヒビ)から彼等は続々と現れた。

 もう此方に気付いている様子だ。確かに此だと戦艦と変わらないな。

 普通に強敵だ。こんなに手数が多いと相殺する事も(ママ)ならないだろう。

 自分も魔力達が居なければ術を上書きし続けないといけなかったから相当面倒だったろう。

 他にも随分と針が鋭利な針千本(モド)きや空気砲を放つ小鳥の様な生物も居る。全ての生物が一気に目覚めた様で騒がしくなって来た。

 多くの無感情な殺意が渦巻いている。・・・矢張り、此はおかしい。普段の水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)からは考えられない。

 こんな狂暴な龍族なんかでは決してない筈だ。早く原因を見付けないとエネルギーが尽きる可能性もある。

―ねー御姉さん順調?―

突然テレパシーが飛んで来た。彼は神になったと自覚してから日は浅いのに()う言う機能は随分使い(コナ)している。

 使える物は全て使う、と言う所なのだろうか。其の姿勢は嫌いじゃない。

―一応未だ生きている。けれど其方も大丈夫か?―

―結構爆発するから面倒だけどね。吹き飛ばせば問題無いよ。―

成程其の手があったか。近付けなければ(ソモソモ)攻撃もされない。

―虚ノ心臓だっけ?どんなのかすら知らないから可也面倒だよ此。如何するの豆粒みたいなサイズだったらさ。―

然う言えば虚ノ心臓は燃料だって言ってたか。と言う事は可也の魔力を有しているのか・・・。

 でも然う言った反応は見られない。此の目なら分かる筈なのに。

―ねぇ心臓だったらさ、中にあるんじゃないの?(ヒビ)大きいのもあるし、若しかしたら入れるかも知れないけど。―

―中、確かに其の可能性は高いな。分かった、試してみよう。―

―此方も行ってみるよ。御姉さんの加護が護ってくれるんだっけ。其じゃあ全然恐くないし。―

其限テレパシーは途切れる。

 (ヒビ)の中・・・何とも思い切った意見だ。眼中に無かったな。

 確かに中に入れそうではある。でも中から発光しているし、何より敵が湧き出している所だ。普通は入ろうなんて思わない。

 虎穴に入らずんば虎子を得ず、か。じゃあ入ってやろうじゃないか。

―皆、しっかり付いて来てくれ。何があるか分からないからな。―

―何ガアルノカ楽シミネ。―

―綺麗ダト良イナァ。―

相変わらず警戒心が無い。まぁ魔力なんて存在なんだし、仕方ないか。

 一つ息を付き、生物が出なくなった時を見計らってセレは(ヒビ)の中へ足を踏み入れた。

 波紋で中は見える。だが此処は何故だか見難い。

 薄暗い中を中心部の(ヒカリ)が照らしている。

 生暖かい様な空気、息が粘り付く様な。

 魔力が、停滞しているんだ。其が絡み付いて良く見えない。

 自分の波紋は魔力を放つ事で物を見ている。だから周りが高密度な魔力に包まれると精度が下がるのだ。

 多少なら未だ分かり易いのだが、此処迄濃いと魔力酔いしそうだ。

 一つ息を付く。

 こんな所で彼等に爆発攻撃なんてされたら皆仲良く心中だ。

 此処は魔力達の活躍を願おう。魔力の壁で姿も誤魔化せる筈。

 奴等が如何動くか、だな。内部だからこそ全力で来るかも知れないし、(ムシ)ろ大人しくなるかも知れないし。

 ・・・()の道ばれないのが一番だな。

 彼等の後を追えば多少目が見えなくてもコアに辿り着くだろう。其の辺りから調べてみるか。

―何ダカ遺跡ミタイ。―

瀛海(ウミ)ノ底デ見タノト似テル。―

暫く歩いていたが確かに水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)の内部は建物の様だった。

 黔曜石(コクヨウセキ)で出来た神殿の様、とでも言えば良いのか。()の魚の様な生物達も泳いでいるので確かに海底神殿の様にも見える。

 今の所襲撃はされていない。コアから生み出された者は直ぐ外へ向かおうとする様だ。

「やっと此処迄来たか。」

―御疲レ様ー。―

辿り着いたのはコアだった。蒼皓(アオジロ)く輝くコアは涙型で見上げる程大きい。

 コアの表面が波紋の様に揺らいで新たな生物が吐き出された。彼等は()うして産み落とされたのだ。

 其にしても・・・矢張り生まれ過ぎな気がする。エネルギーが枯渇しそうだ。

「あ、御姉さんも着いたんだ。墜落してると(バカ)り思ってたのに。」

「御前が彼等の餌にならなくて良かったよ。」

今も凱風(カゼ)マトっている様で周りの生物が煽られて流されて行く。

「ん・・・噫若しかして此か?」

コアを見ていると確かに異物を見付けた。

 紅玉を埋め込まれたチップの様な物だ。少し自分の背中のBDE‐01と似ている気がする。

―いえ、アイの方がもっと複雑且つ繊細デス。だからもっと労って下サイ。―

―あ、此処に迄入って来るのか・・・。―

プライバシーも何もあった物じゃないな。

 兎も角此が虚ノ心臓なのではないだろうか。水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)にこんな物があるなんて聞いた事が無い。

 其に此の魔力酔いしそうな中でもしっかりと存在感を持っている。可也の魔力が込められている様だ。

「此っぽいね。・・・ん、御姉さん一寸(チョット)顔色悪いよ?何かあったの?」

嬉しそうだなぁ。にやにやが止まらないって顔してる。神が苦しんでるのを見て笑えるだなんて君才能あるよ。

「心配してくれて有難う。此処は魔力が濃いからな。私みたいに波紋を使っていると軽い魔力酔いを起こすんだ。如何だ?何か楽しい事でも思い付いたか?」

「ふーん、魔力が濃いい、ね。本当敏感だね。此の位の変化で酔っちゃうんだ。って言っても魔力は御姉さんの味方でしょ。其で攻めるのは賭けになっちゃうね。」

魔力の全部が全部相知って訳ではないんだが、まぁ然う警戒するのは良い事だと思う。

 何方(ドチラ)かと言うと・・・魔力が枯渇した空間の方が辛くなって来るかも知れないな。頼り過ぎも注意と言う事だ。

「じゃあそろそろ此、外してみるぞ。念の為警戒していてくれ。」

「大爆発、期待してるよ。」

軽口を叩いて彼は数歩下がった。

 面白い冗談だ。自分は死んでも御前は自分の加護で助かると言う事か。全く笑い所が無い。

 そっと紅玉のチップに触れる。其の(ママ)掴むと案外あっさり外れた。

 途端魔力酔いも治まる。コアは輝いた(ママ)だが其の(ヒカリ)は穏やかに見えた。

 成功した・・・のだろうか。そっと手の中のチップを見遣る。

 紅玉、此が虚ノ心臓なのだろうか。此から凄い魔力を感じる。

―其、凄ク良イ物ダヨ!―

―地ノ底ノ仲間ガ沢山閉ジ込メラレテル、解放シテアゲテ。―

―開放って、割るのか?―

其は少し勿体無い。貴重な物なら保管したい所だけれど。

―貴方本当壊ス事シカ考エナイノネ、其モ素敵ダケレド。―

―食ベレバ良インダヨ、取リ込ンデ、一ツニナッテ。―

―僕達ニ近付ク、一緒ニナル。―

―喰エ、喰エ、喰エ。―

「・・・・・。」

セレは暫し目を閉じた。そして、

「何だか上手く行ったっぽいね。何だか拍子抜けだけど。」

隣に並んだ飃の前でセレはチップを呑み込んだ。小さかったので噛む事もなく呑み込めた。

「・・・・・。」

飃が黙って彼女の顔を見る。少し引いている様に見えるのは気の所為だろうか。

「いや、魔力が食べた方が良いって教えてくれたから。」

言った所で大きな魔力のうねりを感じた。自分の内側から暴れる様な。

 少し丈ついふら付いたが、飃は一つ溜息を付いた丈だった。

―な、何て馬鹿な事をしたんデスカ!此だから馬鹿の面倒は見たくないって。急に魔力が増えたら其を管理するアイの負担が増えるんデスヨ!馬鹿デスネ、馬鹿デスヨネ!一度位本気で腐って死ねば良いんデスヨ!―

滅茶苦茶辛辣に怒られた。一寸(チョット)凹むレベルで馬鹿って言われた。

―狗じゃないんだからもう少し考えて行動しろ。未だ狗の方が考える丈マシだな。又我の力を解放せざるを得なくなるぞ。―

結局皆から怒られた・・・。魔力が増えたから良いじゃないか、とは言えなかった。

―仲間増エタ、ヤッタネ、良カッタネ。―

―一緒、助カッテ良カッタネ。―

―ウ・・・ア、ン?―

魔力丈だよ喜んでくれるのは。まぁ結果オーライかな。新しい子も増えたみたいだし、一応上手く行ったんだ。

「こんな野生児が店主とかありえないんだけど。」

「そんなにか?何時も雑草料理食べさせて貰っているのに。」

「・・・もう良いよ。さっさと外出よう。仕事終わったんでしょ、多分。」

例の生物達の生成速度は幾分収まっている。恐らくもう外に出ても襲われる事は無いだろう。

 暫く歩いて(ヒビ)から外へ出ると水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)は穏やかに泳いでいた。

 特に何かをする訳でもなく、レーザーも止まった様だ。

 辺りを飛ぶ共生生物達も泳いで彼に付いて行く丈だ。

「矢張り先のチップで暴走させられていたんだな。古代人が兵器として利用する為に付けていたのか?」

可哀相な話だ。だったら此の次元が滅ぶのも一種の自業自得な気もするが、まぁ水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)が助かって良かった。

「其の暴走の元を何も考えずに君呑んじゃったけどね。止めてよ急に暴れるの。」

「分かったって。大丈夫だ。ちゃんと必要な所丈取ったから。」

―全く、アイの苦労も知らないで良く堂々と言えマスネ。―

悪かったって本当、一言言えば良かったって反省しているよ。

 ・・・多分言えば呑ませてくれなかったんだろうけれど。

「コォォウ!コォゥウゥ・・・。」

水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)が此方に気付いた様で進路を変えて寄って来た。

 抑え気味の声は何処か親し気だ。燕達が自分達を取り囲む様に飛び回り、去って行く。

 水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)は照らす様に穏やかに発光していた。水鏡(ツキ)もない今、彼の(ヒカリ)は全てを照らし、世界を(クロ)(アオ)へ染めていた。

「・・・大丈夫そうだな。若し良ければリュウの所へ行ってみてくれ。何か他に異常があってもいけないからな。」

「コォォウゥ・・・コォォゥ、コォオォオォォゥゥウウ。」

一声長く低く響く声を発する。

 すると周りを飛んでいた燕達が皆水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)(ヒビ)の中へと戻って行った。

 そして(ユック)りと水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)は回転を始める。水鏡(ツキ)から現れた時の様に(ユック)りと。

 回り乍ら其の躯は(ソラ)高く昇り、小さくなって行く。終には水鏡(ツキ)になり、月食は終わっていた。

 細くなった水鏡(ツキ)を見上げる。まるで何事もなかったかの様に静寂に包まれていた。

「終わったって事で、良いよね?」

「然うだな。もう次元の主導者(コマンダー)も大丈夫だろう。水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)がもう一頭居るとも思えないし。」

―歪、消エタ。此ノ次元、普通ニナッタ。―

―モウ楽シミ終ワリ?何モ無イ。―

魔力の声だ。然うか、彼等は存在からして其の類の感覚に鋭くてもおかしくはないか。

 歪が黔日夢の次元(ゼロ・ディメンション)の事で(ホボ)間違いはないだろうし。

 セレが一柱頷いていると飃は何だか不満そうな顔をしていた。

「本当にそんな得体の知れない物信じる訳?ま、僕の知った事じゃないけど変な失敗して此方迄迷惑掛けないでよね。」

―失礼シチャウ、私達ガ居ナイト何モ出来ナイ癖ニ。―

―無視シナヨ、ドウセ僕達トハ話シテクレナインダ。―

―折角話セルノニネ。―

・・・矢張り魔力達の会話スキルが上がっている気がする。此で皆哲学者だとかになったら自分は如何すれば良いんだろう。

「飃、余り彼等の事を悪く言わないでくれ。でも忠告は受けよう、兎にも角にも彼等の御蔭で今回の仕事も出来たし、皆御疲れ様って事で。酒位出してやるから。」

其で納得してくれたのか飃の姿は次第に霞んで行き、遂には消えてしまった。

 自分も今一度丈周りを見遣る。

 只々静かな蕭森(モリ)だ。変異も何も起きそうもない。

「良し、じゃあ私達も帰ろうか。」

セレの姿が消えると共に渦巻く様な薫風(カゼ)が吹き抜けた。

 そんな彼等を、只蒼い水鏡(ツキ)が見送っていた。

   ・・・・・

水鏡(ツキ)が廻る

新たな船出に祝いの笛を

進路を見据え、さぁ吟え

噫我らは水鏡(ツキ)より出づる者、水鏡(ツキ)へ帰る者

瞬きの世界をさぁ、渡ろうか

 神VS戦艦、完!昔から水鏡ノ鯨(ルフノーム・イスルム)って龍族は考えていたんですが、ずっと出せず仕舞いだったのでやっと出せて満足しています。設定が結構気に入ってる龍族です。因みに彼の亜種が実はいます。水鏡って結構沢山あるんだなぁ。

 割と今回の様な二柱のコンビが書き易くて好きですね。ダークなキャラは使い易いです。何方もチートキャラの所為でバトルがあってない様な物になってしまうけれどもね、仕方ないね。

 そろそろと言うか今更ですが、広げ過ぎていた風呂敷を畳む時が近付いて来ています。何だか前も似た事を言っていた気がしますが、流石にもうセレさんも動かないと袋小路に閉じ込められてしまうので重い腰を動かす筈です。筈です、活躍に期待しましょう。

 其では又近々?御会い出来るかと。良い御縁があります様に。

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