31次元 来たる光ト在昔の闇の邂逅
こんにちは。思ったよりは時間掛ったけれど其でも何時もより早い邂逅です。今回の話は本当はもっともっと早くにしたかったんだけれど、“未だだ、今は其の時ではない。”とか言い続けたら此処迄来てしまいました。もう既に初代次元龍屋と可也歩みが変わってしまっているけれど大丈夫なのだろうか。
色々あるけれども未だ楽しく書けているのは僥倖ですね。此のテンポ、崩したくないなぁ。
余談なんですが今一番困っているのはパソコンの仕様の変更なのか如何か知りませんが、長い文章を打って一括変換をすると、アンダーラインが引かれて、単語毎に変換出来るようになりますよね。只最近其のアンダーラインが何の変化もなく只引かれる丈になったので一体今何の単語を変換しようとしているのかが分かり難くなったんですね。此、現在進行形で苦しめられています。モチベの為にも早く如何にかしないと。そして何時になったら飃君は名前としてWordに変換されるのでしょうか。何時迄も表とか票にされてそろそろ本気で可哀相になって来ました。一体彼の子が何をしたんだ。(大量殺人鬼です。)
そんなこんなは置いといて、今回は割かし好きな話です。書いててテンション結構上がりました。さぁ一体何のシーンか分かるかな?
招かれざる相手は誰なのか、少し見届けてみましょうか。
吾は光
世界の全てを照らす者なり
只終わらぬ世界は飽きる物だ
誰か此の世界に変化を、世界との決別を
吾を誘うのは誰だ、吾を起こすのは
其の声を、手を、吾は・・・知っていた筈なのに
・・・・・
「重畳そうノロネ。前言っていた仮説は上手く行き然うノロカ?」
「噫、感覚は可也掴めた。後は其々に個別の意思がある筈だから其を如何活かしてやるかだな。」
次元龍屋の傍の木立でセレとノロノロは談笑していた。
でも誰にでも聞かれて良い話ではないらしい。二柱の周りには目には見えないが魔力の線が張り巡らされていた。
そんな二柱の間を凱風が通り抜け、セレのオーバーコートのフードを揺らす。
其を苦笑してセレはそっと宥める様に撫でる。
「・・・可也、ノロノロ達に近付いているノロネ。いやもう此は近付き過ぎてもっと超自然的な者になりつつあるノロ。恐れ入るノロヨ。自覚は・・・ちゃんとあるノロカ?」
「あるよ。気を付けないと・・・消えてしまい然うだ。自分で自分を意識しないといけないだなんて変な気分だよ。でも未だ此じゃあ足りないな。未だ必要だ。未だ力が要る。」
「本当貪欲ノロネ〜。滅ぶか破滅するかは任せるノロケドネ。」
「然う言えば前私の加護が宿ったと言っていたな。もう少し詳しく教えて貰って良いか?もう少し私も其を扱える様にしたいんだ。出来れば仲間にも同等の物を付けたい。」
「成程ノロネ。只其は少し難しいノロヨ・・・。今の所分かっているのはノロノロ達が死ぬ程の攻撃を加えられた時じゃないと効果はないノロ。別に傷を癒したり、敵の攻撃を無力化したりはしなかったノロ。」
其を聞いてセレは少し考え込んだ。晒の下の瞳が窺う様に見詰める。
「此処からは推測になるノロケド、恐らくセレ神の加護は悪意にのみ反応しているノロ。相手が殺そうと思った其の悪意に反応し、直接相手を襲う物ノロ。呪いみたいな、中々珍しいタイプノロネ。加護なのに相手を殺すなんて、ノロノロ〜ン。」
「然う言う事か・・・。加護と言っても私の性質を引き継いでしまうんだな。確かに其は使い難いな、魔力が私の意を酌んで行動してくれているのと似た物か。」
「と言うより其其の物ノロネ。恐らく加護自体も魔力が勝手にやっている事ノロヨ。セレ神の仮説が正しいノロナラネ。セレ神は別に魔力を操りたい訳ではないノロヨネ。相知の関係を望むなら其の目論見は今の所上手く行っていると言えるノロケド、其の所為でイレギュラーな事が起き易い事も忘れちゃあいけないノロヨ。」
「然うか、分かった。気を付けよう。後は・・・、」
「あ、然うノロヨ。後加護の範囲は恐らくセレ神と契約をした者ノロヨ。契約が繋がりを意識するトリガーになるなら十分可能性はあるノロ。」
「中々厳しいな・・・。余り魔力に命令をしたくないのは事実だし、加護が思ったより強力過ぎるのか。まぁ契約の特典みたいな物として捉えたら良さそうだな。」
「其、僕との契約も含まれるのかな。」
突然の背後からの声にそっとセレは振り返った。
其処に居たのは枴を突いた飃だった。朏の様に笑う様は正に死神の笑みだ。
「ノロ?セ、セレ神ちゃっかり聞かれてるノロヨ!結界は如何したノロカ⁉」
ノロノロも気付き、慌てた様に大口を開けた。
彼の笑みが邪悪な其なのもあって其のギザギザな口を合わせて歯を鳴らした。
「問題ない。彼は私の仲間だ。聞かれても問題ないから通した迄だ。」
「そ、然うノロ?じゃあ良かったノロ。大妖精のノロノロさんノロ〜。セレ神と契約をしているノロ〜。」
「へぇ〜僕に其の正体を現すんだ。良い度胸してるね。僕は飃だよ、憐れな妖精さん。」
「ノロ?な、何か変ノロ、如何言う事ノロカ?本当にセレ神の仲間ノロヨネ?」
彼の笑みに何を感じたのかノロノロはセレに隠れる様にそっと飃を見遣った。
「噫、妖精を殺す事を至上にしている死神だ。頼もしいだろう?」
「な、何言ってるノロ〜!じゃあセレ神も危ないノロヨ!其は仲間じゃなくて敵ノロ!」
自分達が遊ぶ所為で随分とノロノロが真っ当に応えてくれる・・・。大妖精様にこんな不敬を働いたら何の道怒られる様な気がする。
まぁ事実なんだし、仕方ないよな、うん。
「然うだよ。僕は其処のセレを殺す為に仲間になったんだ。霄こそこそ外へ行くからこっそり付いていたのにばれてたなんて一寸面白くないけどね。」
「じゃあ面白い話をすれば良い。先の質問、恐らく飃の契約も適応されるぞ。私が御前を殺すのは兎も角、御前が誰かから害を与えられた際は私の加護が発動する・・・かも知れないな。」
「セレ神、確かに契約をする程勁くなるとは言ったノロケド、見境が無さ過ぎるノロヨ・・・。何があって仇と契約するノロ。」
「契約はしてやられたって具合だけどね。僕は仲間に手を出さない。代わりにセレも僕に殺される迄逃げられない。まさか結んだ丈で勁くなっちゃうなんて聞いてなかったけど。」
「ノ、ノロ〜ン。神だからって死にたがりは程々にするノロヨ、セレ神の事、ノロノロ信じてるノロヨ。じゃあノロノロはそろそろ帰るノロ!」
「あれ、もう帰っちゃうの?僕と遊んでくれても良いのに。」
「一応言って置くがノロノロも私の仲間としてカウントされるぞ。下手な事はするなよ。」
ノロノロも何度か頷くと其の姿は掻き消えてしまう。
まぁ聞きたい事は十分聞けたし、大丈夫かな。ノロノロは特に戦えないし、飃みたいな戦闘狂に出会ってしまえば逃げる一択になるか。
「残念。とは言ってもあんな情報屋も雇ってるんだね。一寸は見直したよ。玉座でふんぞり返っていればもっとやり易いのに。」
嫌な笑みを浮かべているが、彼とは何かと話し易い。
秘密の一つ二つ位は漏らしても良い、と思ってしまう。
「寧ろ玉座から引き摺り下ろしたい奴が私にもいるんだよ。こんなんじゃあ届かない。御前も勁くなってくれたら私の手間が省けるからもっと頑張ってくれ。」
「へぇ、未だ殺したい奴いるんだ。じゃあ気が向いたら手伝ってあげるよ。」
霄じゃないと出歩けない自分と、霄でないと戦えない彼。確かに相性は良いな。
「本当か?じゃあ早速十柱位周りに居るのを掃除したいから手伝って欲しいんだが。」
「出迎え多くない?良くそんなんでやって行けてるよね此処。まぁ他の奴に君がやられてもつまんないし、やってあげるよ。」
「彼方の方角だぞ。同じチームだろうな。余り店の近くで騒がないでくれ、先手を仕掛けるぞ。」
「其位分かってるって。先鋒は任せなよ。」
言うや否や飃は枴に跨って飛んで行く。
「憖うは武、振るうは狂、応え・・・破壊の時だ。」
魔力に形を与えてやる。未だ練習途中だ。良い相手だろう。
「慈紲星座。」
蒼の零星が散る。
魔力が遊んでいる。零星を突いて楽しそうだ。
「drows「drows「drows」
繋いで紡いで数多の見えない釼を創る。
「さぁ遊ぼうか。今回は輪舞曲なんて如何だ?星空の元でダンスホールだ。」
魔力の笑い声が響く。気に入ってくれた様だ。
彼等は、多少臭くても言葉遊びを好む。飽く迄も此はゲーム、遊びなんだ。
宙に浮く無数の釼を引き連れ、セレも駆け出した。
・・・・・
「・・・ねぇ君達、其の程度の力で彼に挑みに来た訳?もう一寸頑張ってよ。」
「此奴、新手か、情報に無かったぞ。」
「陣形変えて!谺遣いよ!」
突然現れた飃に神の声が飛ぶ。
回る朏の凱風が地面に突き刺さる。
陰霖の様に降る其に逃げ遅れた一柱の神が細斬れになって行く。
「っ何て魔力だ。同じ谺だろうがっ!」
谺の膜を張るも易々と飃の凱風の刃に本神毎斬られる。
「彼の枴の所為か、偵察兵のみじゃあ厳しいぞ。」
「はぁ、無視だし手応えなし。神も人も一緒じゃん。」
此の儘だと朏の凱風丈で片が付き然うだ。
別に連携も取らないし、即席チームだろうか。
―ア、凱風ガアル。此処デ遊ボウヨ。―
―玩具一杯、好キニシテ良イッテ。―
―自由ニ遊ボウヨ。―
「・・・又此の声、もう何なの君達。」
彼の神の傍に居ると何時も聞こえて来る。
友達みたいな物だって言ってたけど、僕としては姿も見えない様な友達なんて願い下げだな。
姿の見えない声の主達は手に手に釼を持っている様だった。
彼の神が使っていた光る釼だ。此奴等に渡す事もあるのか。
釼は凱風に乗る様に舞って向こうへ斬り掛かる。
数がある丈一度に複数を相手にしているが、余り良い腕とは言えない。
釼の柄の先丈持って適当に振り回している様な、出鱈目で、遊んでいるみたい。
そんな物なのに奴等は苦戦している様だった。凱風を読めば動き位分かるのに、無関係な所を斬ったり、手一杯の様だ。
相手を全部取られるのは面白くないな。腕を刺されている奴も居るし、センスが無さ過ぎる。
まるで目を瞑って戦っているみたいだ。・・・本当に見えてないのか?まさかね。
適当に凱風を回しているとやっとセレも追い付いた。
息も上がっていないし、態と緩り来た様だ。
「良い身分だね。本命の飼い主は遅れて登場か。」
「飼い主は止してくれ。其に皆遊びたがっていたし、良い練習になるだろう?」
「・・・其にしても酷い腕だけどね。」
近くの一柱を凱風で横一文字に引き裂く。
全く手応えなし、直ぐ終わりそうだ。
「其は認める。まぁでも仕方ないな。彼等にとっては全てが初めてなんだ。だから私がサポートしてやれば良い。」
然う言ってセレは持っていたナイフの零星を放った。
其は弧を描いて真直ぐ一柱の神の頸を掻っ斬った。
其の儘セレの手元にブーメラン宛ら戻って来る迄にもう三柱程の首も捥いでしまう。
只のナイフだと思っていたけれど、刃先を鉤爪の様に変えていたのかな。引っ掛ける様にして捥いだ具合だ。
「此で、サボりとは思われないだろう?」
「然う言うの、漁夫の利って言うんだよ。」
彼の見えない奴等で誘導していたのか。ナイフの一撃で葬れる様に。
相変わらず、厭らしいやり方だ。
散々嬲って、止めの一撃丈で沈めるのが好きだなんて。
・・・まぁ僕も余り他神の事言えないけど、でも僕は少なくともこんな遊び方で命を散らしたりはしないよ。
「又新手か・・・?いや待て彼奴は、」
残ったのは三柱。
零星の釼に囲まれて互いに背中合わせで立っていた。
「本命が先に来てしまった様ね。・・・何としても本部へ帰らないと。」
「・・・何だか君ばっかり有名でつまんないな。」
「霄の見回り手伝ってくれたら少しずつ有名にはなれると思うぞ。」
何とも不名誉な物だけれども、名誉は後から付いて来るんだ。自分が変わらないと其の不名誉は一生、否死んでも付いて来るな。
「嘘ばっかり。皆殺しちゃったら有名になれないじゃん。」
「やる気があるのは非常に良い事だな。プロの仕事に取り組む姿勢は見習いたい物だ。只殺す丈では駄目だ。ちゃんと聞く事は聞かないとな。」
セレは未だ零星の釼に梃摺る三柱に向き直った。
今回は話してくれるかな。情報が欲しい。膠着状態を打破出来る様な。
「・・・って御前達は6890:鐘楼か。じゃあ御話出来ないかな。」
見た事のある紋が一瞬見えた。
光の国は紋を持つ事を義務付けているのか判別し易い。
「何だかややこしい所だね。其神のギルドの一つなの?」
「光の国にある、国を支える塔の一つって聞いた事があるな。最近其処から許り来るな。」
彼処は余り旨味が無いな。兎に角皆口が堅い。
戦力は多い様だが謎の塔だな。
詳しくはガルダに聞けば分かるだろうけど、余り聞きたくないな、勘繰られそうだ。
でも誰に聞いても情報は得られないし、知っていても名前程度の物許りだからな。
「へぇ神って然う言う社会性あるんだ。何だか夢が無いね。まぁ分かり易いけど、僕としてはもっと斯う超常的な、説明も出来ない様な世界が広がっている物だと思ってたけど。」
「店を辞めれば然う言う所も見付けられるかもな。さて、そろそろ片付けるか。御前達別に話す気も無いんだろう?」
「・・・一柱は谺属性か、だったら、」
一言丈呟き、男は隣の女に眴せをした。
其の瞬間、男の姿が変貌する。
外套の所為で見えなかった面から尖った口が突き出し、外套が裂かれて行く。
両の腕の肘から先は黔いドリルの様に尖り、腹は肥大化して大きく前に出る。
足は丸く先に突起が付いた物が無数に並ぶ。宛ら芋虫の様だ。
鋼鉄の長い尾は大きく撓り、力強く地面を打った。
全身が岩と鉄で出来た様なそんな化物が二柱の前に立ち塞がった。
見上げる程の、正に山の様な化物だ。流石に飃は冷汗を掻いて数歩下がった。
「何此のイリュージョン。彼奴悪魔と契約でもしてた訳?精霊とでもこんな事にはならない筈だけど。」
彼の次元でも人が急に化物になる様な事は無かったらしい。
・・・そんな驚く物か?自分も然うだし、狼男とか聞いた事は無いのだろうか。
「彼は神の真の姿だ。御前も其の気になれば成れる筈だぞ。本気で、来るつもりだな。」
「・・・私も、相手して貰うわよ。」
隣の女も両手を地に付け、其の姿が大きく変わり始めた。
全長20mはありそうな土で出来た蛇の様だった。備わった嘴は土を掘れる様にか鋭く尖り、碧の瓊が乗っていた。
鬣の様に珊瑚型の突起が生え、棘も無数に突き出されている。
尾からは鎖が二方向に放たれ、其の先に鉤爪の様な金属製のフックが付いていた。
蒼の蛇は全身を鱗の代わりに罅を入れ、一つ鋭く鳴くと地中へと潜って行った。
「うわ、急に魔物退治になっちゃうなんて。若しかして君の其の姿も彼みたいな物なの?」
「いや私は未だなってないな。一度彼の姿になるともう次元だとかは行けないし、元の姿にも戻れない。実質神の切り札だな。」
「へぇ御姉さんってば未だ変身残してるんだ。僕も如何なるか気になるけど、戻れないんじゃあ試せないね。」
そっと枴を構えて飃は一つ息を付いた。如何やら少し不満そうだ。
「其にしても二柱共嵒属性とは恐れ入ったね。僕の苦手なタイプだ。凱風を止められるのは痛いね。」
「意外だな。前地面も抉っていたし、其の凱風何でも斬れると思ってたのに。」
見えない凱風の刃は自分の零星のナイフと何処か似ている。着眼点は同じだろう。
「出来るけど、何時もより力を使うから面倒なんだよ。スパッと斬れないし、龍巻でドリルの様に削るしかないし。」
「面白いじゃないか。ドリル対決、私は興味あるぞ。」
「じゃあ蛇の方は宜しく。御望み通りやってあげるよ。」
相手も最初から飃狙いだった様だ。大きく腕を振るい、ドリルが高速回転をする。
動作が大きい分躱し易い。易々と飃は枴に乗って躱し、一瞥した。
「狙うならやっぱがら空きの腹だよねぇ。随分中身がありそうだし。」
枴の先を傾け、小さな龍巻を作った飃は宣言通り其を化物の大きな腹へ叩き込んだ。
竜巻は抉る様に腹を中心に回転を続け、効いているのか化物は一つ唸り声を上げた。
削られた表皮が弾け飛ぶが、如何やら中身も岩の様だ。飛び散る礫を面倒そうに飃はウェザーオールを被って防いだ。
「此は骨が折れるね。中迄硬いとは。後何発必要になるのかな。」
「流石プロ、苦手と言い乍らもちゃんと戦えてるじゃないか。」
「ねぇ見てる丈なら動いてよ。君の御客さんでしょ。」
「向こうが動いたら動くよ。」
自分だって地中の蛇が得意な訳では無い。
波紋で見えないのだから此方だって厄介だ。
でも今の自分には魔力がある。足りないのなら補えば良い。
地面が揺れ、突然目の前に大きな鉤爪が現れる。
其は此方を捕らえると言うより引き裂く様な具合だった。
「やっと御出ましか。一つ実験に付き合って貰うぞ。」
蛇の化物が尾丈出して振り回しているのだろう。
避けるのは簡単だ。でも其じゃあ意味がない。
セレは足を止めた。思い切り鉤爪の掛かる真ん中で。
此の儘じゃあ腕の一つでは済まないだろうな。
背筋が震える。本能が逃げる様言う。でも、未だだ。
構え丈を取り、只鉤爪を見詰めるセレの前に零星の釼が舞い込んだ。
でも釼の構えが甘い。数はあるが抑え切れるか?
釼と鉤爪が搗ち合い、火花が散る。
だが釼は簡単に鉤爪に押され、地を転がる。鉤爪は軌道を少し逸らされた程度だ。
「っぐぅ、」
爪が肩に突き刺さる。避け切れない。
捕まる前にとステップで避けたが、其でも大きく肩を裂かれてしまった。
漆黔の血が溢れる。地に掛かり、鉤爪にもしっかりと跡を付けて。
血の色合いで目立たないとは言え、オーバーコートに穴が開いてしまった。又彼処に直して貰わないと。
当分右腕は使えない。全く、練習だと言うのにこんな代償を支払わないといけないとは。
何より痛くて牙が疼く。久し振りの痛みだ。声は殺せたが失血が多い。
「・・・何してんの。寝惚けてるなら首狩ってあげようか?」
「いっそ其の方が楽になるかもな。問題ない、二撃目は無い。」
今回は失敗だ。飃がうんざりした様な目で見るが仕方ない。
鉤爪はもう地中へ帰ってしまった。話すなら今しかないか。
―私の血で楽しむのは勝手だが、余りへまするなよ。私の血は有限なんだ。―
―御免ネ、ソンナツモリハ無カッタンダヨ。―
―此使イ難イ。―
―デモ綺麗デショ?―
沢山の声が一度に入って来る。
大分慣れた御蔭かはっきりとは聞き取れる様にはなった。
でも皆てんでばらばらだ。答えに何時も窮してしまう。何だか学校の先生になった気分だ。
―綺麗でも痛いものは痛い。嫌な事を繰り返せば嫌われるぞ。私は未だ死にたくはないんだよ。―
―御免ネ、次ハ頑張ルカラ嫌ワナイデ。―
―死ッテ何?如何言ウ事?―
―もう二度と会えなくなる事だ。だから次はしっかり護ってくれよ。―
基本しているのは魔力の戦闘訓練だ。
魔力が武器でなく、魔力其の物が戦える様に。
其こそ相知の様に、共に背中合わせで戦える様になれば上出来だ。
其の為には彼等にも勁くなって貰わないと。
今迄は只力として使われていた彼等だ。自ら戦うなんて初めての事だし、感覚も然う直ぐには掴めないだろう。
でも上手く行けばある時はパートナーとして、又はサポーターとして柔軟に戦える筈。
只問題も沢山出ているから厄介なんだが。
魔力自体が戦闘センスを獲得した場合、自分を超える可能性がある事だ。
存在が違う者同士、未知な部分は多い。
彼等は然も力の源、より原始的な存在だ。感覚の類は恐らく向こうの方が敏感だ。
そして其の時が来たら・・・自分は彼等に喰われるかも知れない。
彼等の傀儡に成り下がるの丈は防がないと。
だから斯うして、例え超えられても良い様に、相知でいられる様にコミュニケーションを図っている。
自分は、打算でしか関係を結べない様だ。
でも正直彼等だって何を考えているのか分からないんだ。
初めは只言葉をなぞる丈だったが、直ぐ其に知性は芽生えた。
魔力の構造が如何なっているのかは詳しくは知らないが、其でも感情、知能の類は間違いなく存在する。
彼等は一貫して未だ幼さの残る話し方をする。
でも其は何の為か、未だ感情が未成熟だからの必然性か、其とも其の方がコミュニケーションを取り易いと向こうも思っているからなのか。
分からない、未だ此の関係の先に何が待っているのか。
―次ハ、如何スル?―
―如何スレバ彼壊セルノ?―
―然うだな、じゃあ・・・、―
又現れた鉤爪を躱す。地面が大きく揺れる分反応し易い。
飃は・・・もう終わりそうだな。じゃあ此方もけりを付けるか。
其にしても彼は凄いな。本気の神一柱相手に戦えるか。
流石死神、か。的確に相手の腹許り狙っている。
相手はもう可也岩が抉れて態勢すら危うい様だ。
ドリルを振り回して抵抗しているが、明らかに劣勢だな。
―良し、じゃあ次は私が釼を使おう。御前達は其に手を添えてくれないか?―
ナイフを崩し、隣の奴から釼を返して貰う。
直ぐに其処へ魔力の重みを感じた。
―一緒、楽シソウ!ヤッテミタイ!―
―添エル方ガ得意、考エナクテ良イモノ。―
―大キクシヨウ、モット暴レヨウヨ。―
奴は未だ地面に潜んだ儘だ。どうせあんなに躯が大きかったんだ。自分の足元に彼奴の躯の一部位あるだろう。
―其じゃあ・・・行くぞ!―
釼を真上へ振り上げ、一気に足元へ叩き込む。
地面を割る様に、其の瞬間釼は今迄になく発光し、此が零星の釼である事になぞらえれば、零星が爆発したかの様に輝いた。
本物の釼を振るっているかの様に熱い魔力が象って行く。
そんな釼が地面に触れた瞬間。
地面が割れ、光り輝いた。
まるで曦の間歇泉の様に、数10mにも及んで縦に斬られる地面。
深さは計り知れない、波紋の具合で100mは優に超えてしまった様だ。
暫く曦の柱は出続け、其が収まる頃には釼も元の零星へ戻っていた。
当然酷い地響きと轟音もしたので飃や化物も思わず振り返る。
自分も余りの衝撃にふらつく足を何とか宥めた。途端、
「ギィヤァアアァアァアアア‼」
凄まじい悲鳴が地の底から響き渡った。
如何やら彼の一撃が当たったらしい。声の具合からして声の主は死んだのだろう。
曦を追う限り、地中を寸々に斬り裂いていた。耕される様に土毎細切れになってしまったのかも知れない。
「幾ら何でもやり過ぎじゃない?一番騒がしいの自分だよ。」
「済まない、まさかこんな威力があるとは思ってなくてな。」
暫し放心状態になってしまっていた。一番驚いたのは自分だ。
まさか・・・あんな事になるなんて、
―何だ今のは。又候魔力でも暴走させたか。―
―いや、違う、私は只釼を振るった丈だ。まさか彼処迄魔力達が協力するなんて。―
驚きの余り丗闇迄出してしまった様だ。寝ていた所を起こしたのかも知れない。其だと申し訳ないな。
―周りの魔力を使った丈なのか・・・。全く御前は零を十にする事しか知らないのか。やる事が極端過ぎるのだ一々。―
―・・・反省した。流石に此は不味いな。―
本当に遣り過ぎた。下手したら飃迄巻き込んでいたし、加減が出来ないと意味がない。
―凄イ凄イ!綺麗ダッタ!―
―大成功!ネェ僕達凄イデショ!―
魔力達は大燥ぎだ。自分が彼等を斯うも嗾けたのがいけなかったな。
―確かに凄かったな。でも加減してくれないと私の躯が弾け飛ぶから次は勘弁してくれ。―
―エェー躯ガアルッテ大変ナノネ。―
―ジャア次ハ私ガ躯ヲ護ッテアゲル!―
―成程、然う言う事も出来るのか・・・。―
魔力を纏ってアーマーにする訳か。其は中々使えるかも知れない。
然うか、術と同等の事が出来るのだから彼等をトラップだとかにも利用出来るのか。
先の事も、相手の魔力を暴走させるトラップとして使えば、自爆を引き起こす事も可能だろう。
唯一問題があるとすれば彼等は術と非常に反応しやすい所か。
元々の存在の性質上仕方のない事だが、彼等は術を感知すると何らかの現象が起きてしまう。
内容は術によりけりなので一概に如何とは言えないが、其でも自分の頼んだ事が遂行出来なくなる事が多々あった。
矢張り言葉より、術の方が直接彼等に作用してしまうのだろう、彼等の意思とは無関係で。
まぁでも其は問題無い。其の時は自分が別の術で上書きしてやれば良い丈だ。
寧ろ魔力の自我が肥大し過ぎて術が発動しなくなる方が不味い。其こそ手が付けられなくなってしまう。
下手したら世界を魔力が滅ぼすかも、なんて話になり兼ねない。
事を大きくし過ぎだろうか?でも、災害の一つになる可能性は十分ある様に思う。
然うなると・・・其の切っ掛けを作った自分は又大罪を背負う事になるだろうか。今更罪の一つ二つ増えた所で、とは思うがこんな次々問題を起こしてしまうと世界の方からうんざりと思われそうだ。
―ネェ後一柱ハ逃ガシチャウノ?―
―噫然うだった回収しないとな。―
本来の姿となった二柱の神は囮だ。最後の一柱は混乱に乗じて逃げていた。
でも残念乍ら波紋の前に其の作戦は無意味だ。ずっと見えてしまっている。
時間稼ぎにもならなかった訳だ。可哀相に完全に二柱は無駄死にだ。
所か、自分に殺された事で糧となってしまったな。此方は構わないが如何も不憫に思えてしまう。
まぁでも殺すんだが。
別に情で見逃すなんて事はない。精々自分の為に死んで貰おう。
飃は・・・もう少し掛かるだろう、相手はもう殴られる一方で、彼方も彼方で可哀相な事になっているが、抑の相性が良くないのだ。
中々死ねないのも酷い話だな。
じゃあ其の間に残る一柱をやってしまおう。
大丈夫、未だそんなに離れていない。彼奴には釼を一つ付けている。
今も楽しそうに魔力が其を振るう事で余り逃げられずにいる様だ。撒く事も倒す事も出来ない見えない敵となると中々恐ろしく映る事だろう。
―其じゃあ皆付いて来るか?―
薫風が揺れて頬を撫でる。其丈で同意と直ぐ分かる様になった。
一気に地を蹴り軽く飛び上がる。
薄ら翼を広げて、銀の水鏡を背に受けて。
そして目標の元へと真直ぐ飛び降りた。
「っもう追い付いたのか!」
相手は年端も行かない少年だった。随分と銃身の長い銃を構えているが、まさかライフルか?
一体彼にどんな役割が与えられていたのか定かではないが、残った一柱がする装備ではないな。
道理で釼一本に怯んでいた訳だ。其の得物じゃあ余りにも不利だ。
抑他の武器か何かはないのか、なんて考えたら限がない位小言が出るが、其を言ってやる必要は無いだろう。もう二度と使われる事のない助言になるんだし。
―ア、玩具ガアルヨ!遊ンデ良イ?―
―モット見タイカラヤッテヨ!―
―綺麗ナ物、モット見セテ、僕達ニ無イ色。―
続々と自分の後を追って魔力達が付いて来る。
皆手に手に釼を持っているので曦の行進みたいで中々綺麗だ。
「っ未だこんなに、な、何だ其奴等は、あ、悪魔なのか!」
如何やら彼にはそんな恐ろしい光景に見えるらしい。
でも悪魔だなんて失礼な。御前だって良く彼等を使うだろう?
―悪魔ダッテ、其貴方ノ所為ネ。―
―酷いな御前達も。私は友達だと思ったのに。―
―友達、友達。―
―悪魔デモ、分カッテクレタ。嬉シイネ。―
会話のレベルが上がっている気がする・・・?外部の刺激に触れたからだろうか。
茶化しだとか、認証欲求の様な物は今迄無かった気がするが。
まぁ今は良い。此奴を先に片付けよう。
「じゃあ御前は上司に悪魔だって報告するのか?そんなの、結局首になる丈だろう。」
一気に懐に飛び込んで近くの釼を思い切り頸に突き刺す。
もう爪でやってしまっても良かったんだが、此の方が彼等の練習にもなるだろう。
利き腕が残っていて良かった。簡単に事が済む。
深々と刺さった釼を抜くと一気に血が噴き出した。
少年は信じられないと許りに目を見開き、声も発さずに膝を折る。
噫頸を斬ったんだから話せる訳がないか、断末魔すら上げられないのは酷な物だな。
其の儘倒れて少年は動かなくなる。
何とも呆気ない物になってしまったな。同じ少年の神ならフォードの方が余っ程恐ろしい。
魔力達が楽しそうに声を上げている。
死や生の概念が存在しない彼等にとって死体すら玩具なのだろう。
だが然う時間も経たない内に死体は消えてしまった。
「さ、遊びは終わりだ。続きは又今度だな。」
零星を解き、全て魔力へ戻してやる。
暫く不満そうな声が上がったが、大人しくはしてくれる様だ。
さて、後は飃だが・・・。
波紋で見ている限り彼の神はサンドバック状態だった。
可哀相な事に一撃も彼に入れられなかったのだろう。
ちらと見遣るのと地響きは粗同時だった。
やっと決着が着いたのだろう。そっと戻ると飃は一度額を拭った。
彼の前に大きな瓦礫の山が出来ていた。恐らく此が先迄の神だった物なのだろう。
もう生気は感じられない。此の瓦礫が跡形も無くなるのも時間の問題だろう。
魔力達が面白がって瓦礫の方へ行くのでそっと見守る丈にした。此方もやる事がある。
「御疲れ様、助かったよ。御蔭で早く済んだ。」
其の一言で彼は何時もの嫌な笑みを浮かべた。未だ余裕はある様だ。
「嘘ばっかり。僕の獲物横取りしたでしょ。何しれっと帰って来てるのさ。」
気付いていたのか。別に横取りをしたかった訳じゃないんだが、まぁ良いか。
「誘っといてあんな大掛かりな力見せてさ。君性格本当悪いよね。良く言われない?」
「良く分かったな。自覚はないが確かに良く言われるな。一体私の何を見ているんだか。」
―・・・・・。―
無言で丗闇に睨まれている気がする。嫌だなぁ、自分が何をしたと言うんだ。
「其に彼の技は未だ未完なんだ。あんな事になるとは思ってなかったんだよ。」
「未完?じゃあ未だ威力が上がる訳?もっと気にする可き所あると思うけど。」
「いや抑えたいんだよ。彼じゃあ目立ち過ぎる。其処でだ、飃一つ確認したい事があるんだが。」
「何?実験体になるのなら御免蒙るけど。」
「単に御話だよ。御前、私の傍に居ると変な声が聞こえないか?」
「君の見えない友達の事?今は彼の化物の死骸に集まってるみたいだね。」
「其処迄はっきり見えているのか。声は?私との会話は聞こえるのか?」
何だろう此の質問攻め、適当に答えようかと思ったけど、晒の下の彼女の目が、其を赦さなかった。
「聞こえるけど、其が何?釼持っている時も随分楽しそうに燥いでいたけど。」
「凄いな、勘が良過ぎると言うか。今迄誰も聞こえる者はいなかったのに。」
初めて彼に会った時も、魔力の声に反応している節があった。
気にはなっていたが、まさか彼処迄とは。本当に恐れ入った。なんて油断ならない仲間なんだ。
「然うなの?・・・噫じゃあ若しかして姿も全く見えていない感じなの?やけに奴等、彼の釼避けるの下手だったんだよ。」
「噫釼も殆ど見えなかった筈だ。でも御前には見えていたのか。其は・・・魔力の構造を読むのがずば抜けて得意なのか、興味深いな。」
然うか、見える奴もいるのか。創り手にしか分からないと高を括っていたが、上には上がいるな。
もっと別のパターンも考えないといけないな、見えない事が売りだったのに。
「ふーん然う言う物なの?ま、僕はそんな友達の力なんて借りずに自分の手でするけどね。そんな子供騙し、僕には通用しないから。」
「子供騙し、か。今は否定出来ないな。良し、じゃあ当面の目標は御前だな。又見せ付けるから其の時は宜しくな。」
「だから僕は実験体にはなりたくないんだけど。・・・でもまぁ霄の掃除は手伝ってあげる。しっかり見せ付けて御覧よ。僕は其すら超えて行くから。」
「ククッ、頼もしいな。じゃあ次も頼もう。」
此は良い、見せてやるさ。目標がこんな具体的ならやる気が出るに決まってる。
魔力達も此なら快く手伝ってくれるだろう。
「然うだ。良かったら次の次元、一緒に行かないか?御前とだと楽しそうだ。」
「へぇ、良いよ。僕は構わないけど。じゃあ後で。」
水鏡を背に二柱は嗤い合うと店へと戻るのだった。
・・・・・
「ん、此処・・・は、」
何処も彼処も皓く輝いている。其なのに不思議と眩しさは感じない。
上下も分からず、宙に浮かんでいる具合だ。翼も出していないのに浮いている。
俺・・・まさか・・・死んだ?
真白な空間の中只一柱ガルダは困惑していた。
そんな唐突な事が頭に浮かぶ位、訳が分からない状況だったのだ。
焦りと共にガルダの意識は覚醒して行く。
動く事は出来る。泳ぐ様に前へ進めるけれども同じ景色が続く丈で出られる気配がない。
段々進めているかも怪しくなって来た・・・俺は何をしているんだ。
考えろ、何があったのか。俺がこんな訳分からない所へ飛ばされる前に。
確か・・・次元から戻って、店に入った筈。然うだ、俺は部屋のベッドで普段通り寝た筈だ。
寝てた筈・・・じゃあ此処は夢の中か?
いやこんなリアルな夢がある物か?
まさか本当に寝てる間に敵襲があったとか・・・そして其の儘俺は、
・・・如何しよう凄く其の可能性が高い。と言うか其しか考えられなくなって来た。
っ焦るな焦るな、未だ然う判断するのは早い。屹度、何か糸口がある筈だ。
例えば、敵襲は本当だとして、俺は其奴の術で閉じ込められているとか。
ほら、此の方が現実的だ。だとしたら早く出ないと、セレや皆の安否が気になる。
見た所光魔術っぽいけど如何だろう。同じ光が効くかな。
「光牙!」
やってみるしかない。取り敢えず目の前の空間に向けて術を放ってみる。
・・・当然と言うか、分かっていたと言う可きか変化は無さそうだ。
何もない空間に閃光が走る、たった其丈。
でも、術は普段通り放てるのか。何だか現実味が増して来たな。
出来る事をしてみよう、何か当たりが見付かるかも知れない。多分死後の世界と言う線は可也薄れた筈。
まぁ神が消えたら如何なるかなんて所迄は知らないけどさ。じゃあ次はもっと魔力を込めて、
「何暴れてんだ手前。」
突然声を掛けられて思わず飛び上がる。
急いで振り返った。そして眼前の彼を見遣る。
「て・・・え、誰ってか・・・え?」
其処に居たのは何処か既視感のある青年だった。初対面の筈なのに。
背は自分より少し高い。皓髪は肩より少し長い位で、鋭く睨む瞳も又皓く、不機嫌そうだ。
何より驚く可きなのは彼の両腕、両足共に皓い獣の其だった。そして背には八翼の翼、鳥の翼、長布を束ねた様な翼、刺青丈で象られた翼、巨大な先の霞んでいる不完全な翼で構成されており、長く撓る尾が伸ばされていた。
然う、其の姿は正に・・・俺だった。俺に良く似てたんだ。
「まさか・・・お・・・に、」
言い掛けて直ぐ口を噤む。何を口走ってんだ、そんな訳ないだろ。
「しっかし此が吾かぁ?ま、然うなんだろうな。信じたくねぇけど仕方ねぇか。」
「な、何だよ御前は。御前がこんな事をしたのか。」
そっと構える。でも威圧する様な魔力が肌に刺さる。
俺は此奴に・・・勝てるのか?
男は酷く面倒そうに顔を顰めた。然うして一つ溜息を付く。
「吾とやろうなんざ考えねぇ方が良いぞ。感じないのか此の力の差を。魔力で空間なんて手前には出来ねぇだろうが。」
「っ、そんな大物が俺に何の用だよ。」
矢張り勁い、でも空間を創るなんて何て高等魔術なんだ。
確か丗闇も似た事をセレにしていた気がする・・・じゃあ闇の神と同程度か其以上って事なのか?
「此ばっかりは吾から言わねぇといけねぇのか。面倒だな・・・。一度しか言わねぇから良く聞けよ。吾は、未来の手前だ。吾は、未来から来たんだ。」
「み、未来?」
何だよそんなSFみたいな話、幾ら魔術でも時間を遡るなんて不可能だ。
其に、何て言った?未来の・・・俺?
「っはぁ⁉俺⁉俺こんな不良みたいになるのか⁉」
「あ゛ぁ゛?不良とか巫山戯てんのか手前、くそ、手前が吾じゃなかったら殺してやるのに。」
嘘だ!こんなの嘘だ!
似てるのは姿丈じゃないか、何が如何なったら俺こんな奴になるんだよ。
此じゃあ店も仕事も出来ないじゃないか。抑セレと、と言うか皆と折り合い付かないだろ。
「・・・信じられねぇのは吾も同じだろ。まさかこんなひよっ子だったとはな。此処迄戻るとか・・・っつてももうあんな事出来ねぇし、仕方ねぇか。」
「抑時間旅行とか空想上の話だろ、出鱈目言うなよ。」
「だから其が出来たんだっつってんだろ。手前弱い丈じゃなくて要領も悪いのかよ。ほんと救えねぇな。」
好き放題言ってくれる。そんなの信じられる訳ないじゃないか。
若しかしたら此は夢なのかも知れない。
可也リアリティのある悪い夢だ。
「っても未来から来るとか理由は一つしかねぇだろ。過去の改編だ。吾は今の未来を変えたい、其の為に来た。」
「未来って、如何なってるんだよ。若しかしてセレに、店に何か・・・あるのか?」
聞くのは恐かった。
未来なんて、知りたくない。だって其は十中八九、辛い物だから。
今丈なんだろ、此の奇妙な日々は。足掻いてる丈だもんな。
其を聞くと男は目を眇めて頭を掻いた。
「何もねぇよ。気付いたら吾は其処に居て、只々ずっと眠っていた。其丈だ。」
「何もない・・・?店は、無くなっちまったのか?」
「店なんて知らねぇよ。只吾は独りで居た。もう何億年だか如何かは忘れちまったがな。」
「お、億⁉」
如何やら彼は自分の想像を遥かに超える未来から来た様だ。
・・・其じゃあ此奴が未来から本当に来たのか確証が取り難いじゃないか。
「でも、過去に来て良く分かったが如何やら吾は永い間に随分と変わっちまったらしいな。同じ吾か如何か疑っちまう位だ。吾はてっきり曦になって世界中を漂い続けていたと思ったのにこんな所で呑気に寝ているとはな。」
「なぁじゃあせめて皆が如何なったとか、店が如何して無いのかとかは知らないのか?其が分からないと変えようなんてないだろ。」
未来の俺は・・・独りになってる。そんなの嫌だ。ちゃんと理由がないと認めたくない。
もう独りになんて、なりたくない。なる位なら俺は・・・死にたいって心から思う。
でも、未来の俺は生き続けた。如何して、そんな事が出来る。
独りで生き続けるのがどんなに辛いか、もう俺は嫌って程知ってる筈なのに。
「だから知らねぇっつってんだろ。吾は何も憶えてねぇ。吾は昔から一柱だった。然う言う物だと思ってたのに。こんな過去から何があったのか、吾は其を知る為に来たんだ。」
「知らないのか、結局。何か・・・歯痒いな。」
分かったのは、未来で迚も不幸な事が起こると言う事丈だ。
何より酷いのは未来の俺自身が一番其の不幸に気付けていない事だ。
だって、ずっと独りだと言う事は、屹度セレ達の事を全て忘れてしまったと言う事だ。此の日々の全てを、折角懐い出した前世ですら忘れたんだ。
だから生きて行ける。何も失っていないから。俺ならどんな訳でも、又独りになる位なら死ぬ自信がある。其なのにこんな飄々と生きているなんて然うとしか思えない。
でも全部全部忘れたのかとはっきり聞くのは恐かった。其が一番信じたくない未来だったから。
つまり其は・・・彼女との約束を、忘れてしまったと言う事だろう。何で・・・そんな酷い事が出来るんだ。
「・・・だから吾は今から此の過去で生きてやる。そして何があったのか、其を知りたい。折角過去に来れたんだし、見定めてやるさ。」
「じゃあ御前もその・・・店に居るって事か?」
其は一寸・・・と言うかこんな柄が悪いのを店に置きたくない。
何より俺の未来が斯うなるって知られたくない。絶対セレとかに何か言われるじゃん・・・。
「あ゛ぁ゛⁉何だよ其の露骨に嫌そうな顔は。吾だって好きでやってんじゃねぇよ。吾の過去がこんな腑抜けだってのも未だ信じらんねぇ。でも嫌な者同士なら、互いに変えようって思うだろうが。あー手前にとって未来、をよ。」
「まぁ・・・然うだけどさ。」
未来の自分を好きになれないとか悲しいな。何だか虚しい。
「っても別にずっと居る訳じゃねぇ。吾だってそんなの勘弁だ。だから普段吾は曦として傍に居てやる。必要な時丈呼べよ。其の方が楽だかんな。」
其は此方としても悪くない提案だった。
ずっと居るのは此方としても願い下げだ。此方に其の権限を与えられるのなら其の方が気が楽で良い。
「本当に必要な時丈にしろよ。此処は特に・・・居心地が悪いんだよ。こんな所、ずっと居られっか。」
「でも其だと何かややこしいな。未来の俺って何て呼べば良いんだよ。何か自分の名前言うのも恥ずかしいし、安直だけど未来とかって呼んだ方が良いんじゃないか?」
「何吾に指図してんだよ。吾は吾だ。勝手に変な名前付けんじゃねぇ。吾は丗曦だ。其以外の何者でもねぇよ。」
「え?セ、丗曦って言ったか?いやあの・・・俺そんな名前じゃないんだけど、俺はガルダリューだし・・・若しかして神違いじゃないか?」
丗曦、なんて聞いた事もない。俺の知らない名前だ。
「んな事ねぇよ。間違いなく吾だっつぅの。まぁでも名前が違うなら楽で良いじゃねぇか。恐らく何処かで神格が上がった時に改名したんだろ。吾は、丗曦輝煌龍(セギキコウリュウ)だ。長ったらしい本名だから丗曦で良い。分かったな?」
「何だか・・・丗闇みたいな物かな。」
感覚丈だけど。何時もは見えないで憑いてるみたいだなんてそっくりだ。
丁度属性も対応する様に反対だし。・・・まぁ未来の自分なんだけど。
其は決定的に丗闇と違う所だな。
「丗闇・・・だと?」
何故か彼は其処に丈喰い付いた。
記憶は、無い筈なのに。
「噫懐い出した事、一つ丈あるぜ。」
途端彼は酷く歪んだ笑みを浮かべた。迚も光の神の名を冠する者がするとは思えない笑みを。
世界全てを嘲る様に。
「其奴は、吾が殺したくて仕方がない奴だ。」
「な、え・・・セ、丗闇をか?何でそんな事、」
殺したいなんて、思った事ある訳ない。
確かに恐い神だけど少なくともセレには然うでないし、嫌ってなんていない。
其に丗闇が死んでしまったらセレは如何なる?そんな事、望む訳もない。
「理由は忘れたがよ。兎に角彼奴は殺さねぇと吾の気が済まねぇんだよ。何でこんな大事な事忘れちまってたんだろうなぁ。ヒャハッ、なぁ手前、今其奴が何処に居るか知ってんのか?」
「知ってる・・・と言うか一緒に住んでるけど。」
「じゃあ吾を連れて行け。良いな?吾みたいになりたくないって手前が思うんなら言う通りにした方が賢明だぜ。」
「・・・・・。」
連れてったら・・・殺すって事だろ。
丗闇は勁い。だから負けるとは思えないけれど、其でもそんな事させる訳には行かない。
殺されて良い訳ないじゃないか。セレを何度も救ったのは間違いなく彼の神だ。
「黙りかよ。ま、別に良いけどな。じゃあ吾は寝る。あんま騒ぐなよ。」
丗曦は然う言うと緩りと振り返った。
其の姿が段々と滲んで消えて行き、
終には俺の意識も其の皓の世界から剥がれて行ったのだった。
・・・・・
ゆるゆると目を開ける。
視界には見慣れた天井。此処は俺の部屋か。
彼は夢?否手の奥に眠る熱がある。此は間違いなく彼奴の物だ。
何だか流れる様にされてしまったけれど、実際此は如何しよう。
正直、未来の俺だって言われても信じられないし、抑信用出来る奴でもなかったし。
だからと言って俺の手では如何にも出来ないのも事実だ。俺じゃあ彼奴には勝てない。
・・・はぁ、何で俺がこんな面倒事を・・・。俺関わりたくもなかったよこんな事。
兎に角、追い出す事も出来ないなら相談はした方が良いよな・・・。
まぁ丗闇は普段表に出ないんだし、態々言わない限り大丈夫だよな・・・?
意を決し、手早く準備を終えるとガルダは部屋を出、セレの部屋をノックする。
「ん・・・グッドタイミングと言う可きか?どうぞ入ってくれ。」
セレからの歓迎の声。グッドタイミング?今一分からないけれど入る事にする。
「っわっと、て・・・え、セ、丗闇・・・?」
扉を開けた、其の先に丗闇が居た。
正に目の前に。
丗闇は何時も少し浮いている所為でセレより目線が高く、近い。
心臓に悪い、扉を開けた目の前に居るとか恐過ぎる。無言で扉を閉めそうになった。
だって何も言わずに只立ってるんだぜ?然も此方を見た儘・・・俺何かしたっけ。
ってか何で丗闇が居るんだ、こんな時に限って!
「何か丗闇がガルダに用があると言ってたんだが、まさか其方の方から来てくれるとはな。何と言うか珍しい事と言うか。」
俺の動揺なんて露知らず椅子に座った儘セレは不思議そうに俺を見遣った。
確かに珍しい事だろう。でも丗闇が俺に用?・・・何だ一体。
恐い様な、恐ろしい様な・・・でも其より先に先の夢の話をしないと。
「・・・居るな。」
トン、と丗闇に胸を突かれた。
彼の黔く歪な指で。まるで悪魔が心臓を抉り出そうとしているかの様に。
丗闇の目も又、何時もと同じく笑っておらず、据わっていた。・・・本当に心臓を盗られるのかも知れない。
「丗闇、余ガルダを苛めないでくれ。部屋に入れないだろう。」
「あ、いや良いんだ。俺も話があって、只丗闇は・・・居ない方が良いと思うんだけど。」
「ほら恐がられてるじゃないか。ガルダは私と話があるんだから。」
「・・・別に、苛めたい訳ではない。だが我が納得する迄帰らんぞ。」
丗闇が不満そうな顔をしつつも下がったのでセレは忍び笑いを浮かべた。
「と言う事だガルダ。悪いが其の儘で話して貰っても良いか?どうせ丗闇は中に居ようと外に居ようと話は聞こえるんだから問題ないだろう?然うガルダも邪険にしないで欲しいな。」
「いや然ういう訳じゃないんだけど・・・分かった。」
未だ丗曦は出て来ていない。丗闇の名前も呼んだのに。
若しかして俺が彼奴を此処に呼ばない限りは大丈夫なのかな。
然う言えば起きてからは別に呼んでないんだし、如何言う風に彼奴が出て来るかも分かってないんだよな。
セレに促される儘に向かいの椅子に座った。
丗闇もセレに無理矢理ベッドに座らされる。少しは・・・緊張が解けるかな。
「あのセレ、話って言うのは昨日の霄俺ある奴に会ってさ。」
「霄?誰も来なかったと記憶しているが、誰なんだ?」
来たのは精々偵察兵位の筈。其に誰一柱帰りもしなかった筈だ。
「うーん其が、夢の中・・・で会ったみたいな感じでさ。・・・嗤わないでくれよ。未来の俺が来たんだ。」
良く考えると此、伝えるの滅茶苦茶難しいな。俺は至って真面目に話しているんだけど。
「其は・・・未来の御前を夢で見たと言う事か?予知夢だとか。」
「然うじゃなくて、未来の俺が、過去のと言うか今の俺に会いに来たんだよ。そして、今も居る。曦になって傍に居るって言ってたからさ。」
「曦になれるなんて相当な力の持ち主だな。いやまぁ其がガルダの秘められた力と言う事かな。未来から来るとなると・・・過去を変えたいとかそんな所か?」
可也話をすんなりと呑み込んでる。
前から此の呑み込みの速さは流石だなぁと思う許りだ。
「そんな所だな。肝心の何が起きたのかの辺りは憶えてないらしいんだけど。・・・信じてくれるのか?言っちゃあなんだけど俺とんでもない話してるぞ?」
「魔力だって喋るんだ。今更タイムトラベル位何とも思わない。ガルダだって信じてくれたんだし、私が疑う理由なんて一つも無いだろう?」
「そっか・・・。有難な。だからその、其奴、自分の事丗曦だって。丗曦輝煌龍だって言ってたんだけど、何かあったら呼んだら来てくれるって、そんな事を言ってたんだ。」
「成程。何だか丗闇に少し似ているな。つまりは新しい仲間が増えたと言う事か。良い話じゃないか。まぁ未来の自分と一緒に居るって言うのは変な気分かも知れないが、私からすればガルダが二柱になれば頼もしさも二倍だから有り難い話だな。」
何だか其の台詞は少し照れ臭い。頼もしいなんて、まぁ勿論嬉しいけど。
「でも態々未来から来たのか・・・。因みに未来は如何なっていたかだとかは聞いてみたのか?」
「其が・・・良く分かんなくてさ。聞いた限りの状況証拠だと恐らく俺は・・・独りになってる。何万、何億って時間を独りで過ごした感じだった。只何があって独りになったのか、其の肝心の所が分かってないんだ。」
「・・・本当に其奴は時を渡って来たのか。時間旅行なんて、神でも不可能な筈の代物だぞ。」
滅茶苦茶疑われてる・・・。納得が行かないのか何時もより丗闇は不機嫌そうに見えた。
「まぁでも丗闇、何だって未来だぞ?タイムトラベル位出来る様になっているかも知れないじゃないか。若しかしたら魔力達に頼んだら連れて行ってくれるかも知れないぞ。」
「だから抑の時間の概念と物理法則からして・・・まぁ良い。御前に話した所で相容れんだろう。」
「確かに未来のガルダが何をしたのかだとかは気になる所だけどな。其でも忘れてしまった事は仕様が無いし、懐い出した時に聞けば良いだろう。現状其で良いと思うが。只然うだな、私も一度会ってみたいんだが、呼んで貰う事は出来るのか?」
会いたい・・・か。まぁどんな性格か知らないんだし、興味本位で然う思うよな。
「出来るのは出来るけど、其が一寸問題あってさ。あの彼奴・・・あ、名前も先の通り変わってるから丗曦って名乗ってたけど、何だか其奴、凄い丗闇を目の仇にしててさ。だから会わせ難くって。」
「へぇ、然う言えば名前言っていたな。益々丗闇に似ているけれど、未来のガルダと丗闇がなぁ、何だか変な感じだな。だ然うだけど丗闇?」
「構わん、呼べ。」
半ば食い気味に言われてしまった。随分気合が入ってるな。
「で、でも喧嘩になるかも知れないし、」
喧嘩で・・・済めば良いんだけど。
「問題ないと言っている。自分の身位自分で護れる。抑我が用事があるのは最初から其奴だ。何処から兎も角急に強大な力が近くに現れたから確かめたかった丈の事だ。」
「噫其でガルダに用事があるって言ってたのか。うん、まぁ丗闇が大丈夫って言ってるんだし良いんじゃないのかガルダ。少し狭いが此処で呼んでみても。」
「・・・分かった。じゃあ、呼んでみる。」
一抹の不安はあれど、言われた通りにガルダは心の中で丗曦の名を呼んだ。
すると途端に皓い曦の渦が彼を包む。其の曦は浪の様にうねり、束ねられて一つの神影を作る。
「ったく何だよ行き成り呼び付けやがって。」
然うぼやきつつも丗曦は顕現した。
夢で会った儘だ。翼に尾も出して、手足も毛皮を纏っている所為で随分と体格が大きく見える。
セレも丗闇も驚いて目を見張り、暫し黙った。
丗曦も又面倒そうに頭を掻いていたが、其の視線が泳ぎ、丗闇に向けられた。
其の途端、彼の口端が釣り上がる。
「へぇ、約束は守ってくれたみてぇだな。じゃあ遠慮なく、」
「御前は、」
丗闇が何か言い掛けたのを遮り、突然丗曦は丗闇の頸を掴んだ。
其の儘彼女を無理矢理立たせ、一気に締め上げる。
「じゃあさっさと死ね!丗闇!」
完全に不意打ちだった。
丗闇は慌てて彼の腕を掴んだが力が入らないのか全く振り払えそうになかった。
手加減等一切なく、苦しそうに丗闇の顔が歪む。身じろいだ所で事態は一転しそうになかった。
背後に居たガルダも光の鎖の様な物で縛られて声も出せずに立ち竦んでいた。止めようとしたのがばれてしまったのだろう。
「其の手を放せっ‼」
瞬間セレを黔い魔力の渦が包む。そして丗曦に向かって飛び掛かった。
「邪魔、すんじゃねぇよ!」
だが丗曦は手を緩めずセレに向かって牙を剥いた。
途端何処からともなく光の刃が現れ、セレの胴を斬り裂いた。
声も手も、何一つ出せなかった。伸ばした手は宙を掴み、セレの躯は軽々と吹き飛ばされる。
其の儘壁に激突し、足を投げ出して上体を壁に預ける。
丗闇もガルダも、誰も何も言えなかった。動けず、只見ている丈で、
彼女の服が、此処からでも分かる位どす黔くなって行く。
「セ・・・オッ、」
小さく呟いて其でも手を伸ばそうとしたが其処で縷が切れた様に彼女の上体はぐらつき、横倒しになってしまう。
其以上もうセレは動かず、壁に飛び散り、染み込んだ黔が事態の深刻さを物語っていた。
「っセ、レ・・・っ、」
静寂を破いたのは丗闇で、何とか丗曦の腕に爪を立てた。
「・・・全部手前の所為なんだよ。手前が死ねば全部丸く収まってたのに、此の偽善者が。」
吐き捨てる様に丗曦は呟くが、セレの事は全く意識していない様だ。
只真直ぐに丗闇を見詰め、足掻く彼女を嗤っていた。
「手前には何も出来ねぇし、護れねぇ。好い加減分かれよ。其とも矢っ張馬鹿はきっちり殺してやんねぇと直らねぇかぁ!」
「っ、御前、はっ!」
丗闇は目を見開き、丗曦を凝視する。
忽ち其の姿は霞んで行き、丗曦は手の感触が薄れたのを不審に思った。
丗闇の姿が闇と同化する。其の儘部屋の一角を闇が占めた様に広がる。
そして一刹那丗曦の隣に丗闇が顕現したかと思うと、彼に激痛が走った。
頸を大きく裂かれ、殆ど皮丈で繋がる。内臓が破裂し、腹から飛び出す。両腕は骨が捩じ切れる様に折れ曲がり、足は複雑骨折をしたかの様に骨が飛び出る。
一瞬で起きた惨事に流石に丗曦は立っていられなくなり、崩れ落ちた。
即座に回復はしている様だが其の瞬間から又破裂や損傷が続き、拮抗状態だった。
「こん、なの・・・あ、挨拶、だろ、が・・・よ、っ、次迄。頸、洗って待、」
声なんて殆ど出せない様な喉で血と空気を吐き乍ら其でも丗曦は嗤っていた。
だが言い終わらない内に顕現した丗闇に頭を踏み潰され、其の躯は血の一滴さえ全て曦になって消えてしまった。
「っ、セ、セレ大丈夫かっ⁉」
頭を一つ振って急いでガルダは立ち上がりセレの元へ駆け寄った。
丗曦が消えた事で拘束が解けたのだろう。
ガルダの声にハッとして丗闇の視線も動く。
ガルダはそっとセレの肩に触れた。
息は・・・微かにしている。
躯に力が入っていない。気絶している様だ。
只出血が酷い。失血のショックで気絶したのか。其に光魔術は彼女にとって毒だ。本来以上のダメージを負ったのかも知れない。
「・・・大丈夫・・・なのか?」
丗闇は如何しても其以上セレに近付けなかった。
彼の様に、手に触れる事は到底無理だった。
只青くなって自分の手を握り締めていた。
「大丈夫・・・だと思うけど、早く、手当てしないと不味いな。・・・御免セレ。」
何度も謝り乍らガルダはそっとセレを抱き上げてベッドに寝かせた。
彼の一撃で粗一刀両断されている。此の怪我、思ったより不味い。
「・・・我の所為か。」
丗闇はそっと自分の頸を掴んだ。
未だ熱を持って痛む喉を。
何度か咳き込んでしまい、息はし難い。
其でも丗闇は只其の言葉を繰り返し呟いていた。
・・・・・
「ねー未だ精霊さん起きない訳?」
軽く扉をノックして飃が入って来た。
ちらとベッドで寝ているセレを見遣って一つ溜息を付いた。
途端傍に座っていた丗闇に軽く睨まれてしまう。
「もうそんな怒んないでよ。もう寝込みは襲わないからさ。僕としては仕事、一緒に行くって約束したのにすっぽかされたのが嫌な丈だよ。」
「別に御前が如何しようが勝手だ。だが今回は・・・駄目だ。」
「ふーん、そんな喰えない化物に何かしたからって、別に責任感じる事、無いと思うけどね。まぁ良いや。じゃ好きにしたら?僕は一寸遊んだら又来るよ。」
大して部屋には入らず飃は少し丈部屋を見渡した。
・・・あんな睨まれちゃあ暗器の一つ、仕込めないじゃないか。
今回ってのが何処迄有効なのか知らないけど、其が終わる迄静かにする方が賢明かな。
「・・・本当、丗闇は優し過ぎるからな。」
「っ、お、起きたのか。」
慌てて丗闇が振り返ると、セレは僅かに目を開けていた。
可也気怠い様で小さく欠を噛み殺した。
「珍しいな飃が居るなんて。若しかして私は一本取られたのかな。」
「取ろうとしたけど其処の邪神に邪魔されたんだよ。良かったね。優秀な奴と契約して。」
「邪神ではない。」
「其以外は否定しないけどな。有難う丗闇。」
「お、起きて直ぐ位もう少し大人しくしたら如何だ、全く。」
即顔を背けられた。
随分と真赤じゃないか。熱があるんじゃないか?
「何か僕御邪魔みたいだし、席は外すけど。僕との約束もちゃんと守ってよね。」
然う言い残すと飃はさっさと部屋を出て行った。そして入れ替わりにガルダがやって来る。
「あ、起きたのか。良かった・・・。気分は悪くないか?」
「御中、無くなったって聞いたよ。大丈夫?」
「モフモフさせてくれたら大丈夫だと思うぞ。」
ガルダのポケットからケルディが出て来てベッドの端に座る。
手を出すと飛び跳ね乍らやって来てくれたのでそっと抱き寄せた。
「セレあの・・・御免、俺が止める可きだったのに、彼奴がやばいって知ってたのに止められなくて、」
気まずそうに視線を彷徨わせるので取り敢えず椅子を勧めた。
彼奴・・・噫そっか、然う言えば自分は未来のガルダに襲われたんだっけ・・・?
少し記憶が曖昧だ。
確か・・・然うだ、丗曦だ。丗曦が出て来て、そして・・・、
「っ然うだ丗闇、丗闇大丈夫か⁉何処か怪我とか、」
「我は問題ない。」
一瞬はっと顔を上げたが直ぐ伏せられた。
今日の彼女は何時もの渋面と違う。凄く・・・苦しそうだ。
「只、我が軽率な行動を取ったから此の事態を招いてしまった。・・・済まない。」
「其を言うなら私こそ随分慢心してしまった様だし、まさか一撃でやられるなんて、不甲斐なくて済まなかったな。」
「御前は悪くないっ‼」
突然二柱から怒鳴られて思わずびくつく。
び、吃驚した。何二柱共、何時の間に異口同音する位仲良くなったの。
そっとケルディをもっと引き寄せた。
ケルディは良い子だからな、自分を驚かせたりはしないよな。
「強大な力は感じていたし、警告も受けていた。其を容認したのは我だ。我の事故に御前が勝手に巻き込まれた丈だ。」
「もっとはっきり俺が言って置けば良かったんだよ。危険だって分かってたのに結局彼奴を呼んだのは俺なんだよ。」
「い、いや私も考え無しに突っ込んだし、一番しゃしゃり出てあっさりやられたのは事実だし、」
不味い、ネガティブモードだ。皆同調圧力に侵されている。
別に責めたい訳でも責められたい訳でもない。
もう其で良いじゃないか。そんな落ち込まれたら自分が死んだみたいじゃないか。
起きて見たのが皆のそんな顔って、結構来る物がある。
現に彼の時の自分は判断ミスを犯した。
魔力の力を過信し過ぎていた。
真直ぐとは言え、術を唱える隙を与えなかったから護り切れると思った。
魔力にも声は掛けていた。だけれど、彼の術は勁過ぎた。
一瞬で魔力達は作用され、自分から離れてしまった。其の所為で直撃してしまったのだ。
あんなんじゃあラッキーヒットであっさり殺されてしまう。賭けの様な戦い方は感心しない。
盤石に行きたかったのに此の様だ。本当にたった一撃で落ちるなんて。
少しは・・・勁くなれたと思ったのに。上には上がいるのは当たり前だが、今回の事は割合ショックだった。
「いや、御前が一番に動いた御蔭で・・・助かった。奴に隙が出来たのは確かだ。」
然うじゃない。自分が伝えたかった事はそんな事じゃない。
噫もう何て言えば良いんだろう。全部終わった、皆無事だった。其で良かったって、如何すれば伝えられるんだ。
其の儘、言うしかないのかな。うーん、如何も斯う言うのは苦手だ。
ケルディは何も言わず鼻をひくつかせていた。見詰めても答えはくれない様だ。
「えっと・・・その、もう良いじゃないか。何とか乗り越えたんだし、もう顔を上げてくれ。起きて直ぐそんな顔されちゃあ私は又寝るぞ。」
「今回は良くても次は・・・駄目かも知れない。そんな油断が赦される訳ないだろう。」
うーん、此は中々手厳しい。
割と自分の考えと近いから何とも言えないな。でも別に其は自分に課している丈であって皆も同じ扱いをして欲しい訳でもないんだ。
・・・なんて言うと簡単に反論されるのは目に見えているな。別の道を探そう。丗闇を折る話題は丁度良い所に一つある。
「然う言えば丗闇、一つ聞いてみたいんだけれど若しかして私の名前呼んでくれたか?」
目に見えて丗闇がぎくりと背を揺らす。
・・・矢っ張りか。何で斯う言う時丗闇は滅茶苦茶過敏に反応するんだろう。
黙って置けば幻聴だったのかなって思う余地はあったのに。
ガルダも僅かに口を開けて丗闇を見ている。
此処最近、ガルダは良く丗闇に其の顔をしている気がする。
「・・・だったら如何した。」
「ん、いや初めてだなーって思った丈だよ。」
気絶と粗同時だったから余憶えていないけど。
何方かと言うと呼ばれたから一瞬起きた気がした具合だ。
「では何故そんなにやけている。」
あ、怒った。
照れるかな、と思ったけどそっか。一体何が原因だろう。
「斬られちゃったけど、まぁプラスはあったかなと思って。」
「っ御前は何時も何時も!そんな下らん事ばっかり考えて我は全く理解出来ない!」
「良いじゃないか丗闇、今後とも然う名前で呼んでくれた方が私は嬉しいよ。若し私に何か負い目を感じているって言うなら然う言う努力をしてくれれば嬉しいなって。」
「・・・っ、」
外方を向かれてしまった。
悪くはない話だと思うけどなぁ。
丗闇の身も軽くなるし、自分は楽しいし、winwinじゃないか。
まぁもう丗闇は大丈夫だろう。無理矢理だけれど納得してくれた。
「ガルダも有難う。今回も適切な処置で感服だ。後は私の回復力次第か。」
御中周りに幾重も繃帯が巻かれている。
恐らく此をしたのは丗闇だろう。其処に至る迄の一悶着を見てみたかった。
うーん、自分が怪我した時丈のイベントだからな・・・如何にかして見られない物かな。
話していると少し頭が回り始めて来たし、少し起きてみるか。自分丈寝ているのもな。
「っおいおい駄目だってセレ!何起きようとしてんだよ!」
手を突いたら即止められた。確かに一瞬無理かもって気がしたけど、そんなに酷いのか此の繃帯の下。
大人しく又横になる。でも確かに余り体勢、変えられないんだよな・・・。
「セレ、自分じゃあ気付いていないと思うけど、今御前真っ二つになってるんだよ。辛うじてくっ付いている状態だから動かないでくれよ。」
「え・・・え?真っ二つ?何だ其、私は何かマジックショーでもしたのか?其って普通助かる怪我だっけ。」
まさか其処迄やられていたとは。大ダメージじゃないか。
じゃあガルダが手術だとかしてくれたのだろうか。彼にそんな医療術があったとはな。
「普通は・・・助からない。脊椎迄重さに耐えられず折れていた筈だ。だが、御前の躯は勝手にくっ付いたんだ。」
「くっ付いたって・・・何だ其、そんな事今迄なかったぞ。」
其が本当なら今迄あんな大怪我しなかったと思うけど。まぁ斬られた所とくっ付ける事も然うしなかった訳だけど。
「いや本当にさ、怪我の状態を見ようと思ってたら黔い膜みたいなのが斬られた所から出てさ、其でくっ付いちゃったんだよ。其から血も出ていないし、強度は低そうだけど其の儘にした方が良さそうだったからさ。」
「まさか私にそんな防衛機能が付いていたとは。」
つまりは内臓も其の黔い何かで癒着しているのか。中々凄い図だ・・・。
「だから余り動くなよ。多分其の儘で居たら治るとは思うからさ。痂みたいな物だろうし。」
「成程、我乍ら吃驚身体機能だな・・・。ふーん。」
ちらと繃帯の上から腹を叩くが、其の程度だと全く分からない。
柔軟性のある痂か。色々実験してみたくなるけれど、流石に今は治療に専念しよう。
「まぁ俺も・・・一応斬られた所とかはくっ付けたら治るから似た物だとは思うけど、流石に俺程再生力は高くないんだから呉々も無茶はするなよ。」
「ガルダも出来るのか?其は凄いな、流石守護神だ。」
じゃあ頑張れば自分も其の真似事は出来るかも知れないって事か・・・釘は刺されたから直ぐにはしないけれど。
「然う言えば丗曦は如何したんだ?・・・はぁ、本当あんなあっさりやられた所為で私丈置いてきぼり喰らったな。」
見た所二柱は怪我もないみたいだし、二柱は大丈夫だったのは勿論良い事だけれど、自分丈大怪我をしたと言うのも情けない。
「噫彼奴は・・・丗闇が倒してくれたから今はいないよ。多分未だ俺の中に入る。死んではないけど、如何したもんかな。」
「流石丗闇、矢っ張り勁いな。良かった、本当に。」
丗闇が殺されていたら・・・考えた丈でもぞっとする。
彼の時の丗曦は、間違いなく本気で殺すつもりだった。
未然に防げて、本当に良かった・・・。
「・・・別に褒められる様な手際じゃあない。」
丗闇は先から冥い儘だ。中々顔を上げてくれない。
「まぁ勁さは本物だろうし、ガルダが困った時彼奴は呼べば良いとは思うけれど、もう丗闇は会わない方が良いよな?諦めては無いんだろう?」
「だと思う。今回のは挨拶だって言ってたし、正直、もう呼ぶ気は無いけどさ。」
「でも使える力は使った方が良いぞ。ガルダに何かあった方が大変だ。かと言って未来のガルダには悪いが丗闇を殺させる訳には行かないし。・・・然うだ丗闇、丗闇は如何思う?元々丗曦を気にしていたのは丗闇だし、丗闇の意見も聞きたい。」
「一応此奴にも言って置いたが、概御前と同意見だ。我と会わない様気を付ければ良いだろう。もう我もあんな事は・・・御免だ。一番良いのは彼奴を未来に帰す事だが、其が出来ないのなら詮無いだろう。」
「うーん、二柱共寛容と言うかなんと言うか・・・。まぁ分かったよ、然うする。出来ればもう会わない事を願うよ。」
「私としては少し話してみたい所ではあるけれど、まぁ其は又別の機会だな。」
「話してみたいって、言っちゃあ彼だけど彼奴性格悪いぞ。今回の一番の被害者なのに何で然う言う発想が出るんだよ・・・。又何かあったら、」
「でもガルダはガルダだろう?話してみたいじゃないか。未来の事とか色々な。」
話せたら面白いと思うけどな。斬られた事は別に責めないから。
未来の事、自分の事、そして如何して丗闇を殺したいのか。
ガルダに一体何があったのか、気になるのは当然だろう?
「全く御前は、好奇心丈は立派だな。まぁ御前の好きにしろ。只今は寝てろ。」
「丗闇に褒められちゃあな。でも丗闇だって気になるだろう?私の第一印象は不良だぞ。一体如何してあんなぐれたのか、気にならないか?」
丗闇はちらと丈ガルダを見遣り、顎に手を置いた。
「・・・確かに其は一理あるな。」
「え、あ、あるの・・・?」
てっきり俺の事なんて如何でも良いと思ってるんだろうなって思ってたのに。
「避けられているのは分かっていたとは言え、まさか本心では我の事を然う思っていたとは流石に心外だったからな。」
「然うだな丗闇、まさか謀反を企てていたとはな。気を付けないと何時憾みを買うのか分かった物じゃないな。」
心底楽しそうにセレは喉の奥で笑っていた。其の様をちらと見て丗闇は僅かに目元を和ませた。
「え、ち、違うって!俺絶対そんな事考えてないって!だから俺と彼奴はもう丸っきり違ってて、俺謀反とかもう全然、」
ガルダが慌てて両手を振り全力で否定するのでもう堪え切れなくなったセレは声を出して笑ってしまった。
そっと抱えていたケルディを優しく撫でるが一瞬其の顔が歪む。
「っ笑い過ぎて腹が痛いじゃないか、全くガルダは。まぁガルダが然うじゃないって知ってるさ。な、ケルディ。」
「うん、ガルダは臆病だからね。そんな恐い事はしたくても出来ないよ。」
「いやケルディ其は・・・もう良いや、どうせ皆分かってくれてるんだろ。そんな体力使って迄馬鹿すんなよ・・・。でも正直俺も、何があったらあんな風になっちまうのか全く心当たりが無いんだよ。・・・何だか恐いよな。」
想像も出来ない行程は・・・恐ろしい。一体俺に此以上何があるって言うんだ。
「然うだな。答えは見付けて置きたいけれども全て憶測の域は出ないだろうな。でも彼の様子だと恐らく未来で私は死んでいるんだろうな。流石にガルダがぐれるの位は止めるだろうし。」
「・・・・・。」
何か言ってやりたかったけれど言葉が出なかった。
否定したいのに、其こそ否定出来ない冗談だった。
「まぁ私は日頃の行いが悪いし、死んだと言うより殺されているだろうな。若し其でガルダが仇討だとかしてくれたのならまぁ其は其でぐれるのも分らなくもないけれど、でも結局其は其で繋がらないよな。」
「・・・我が御前を殺したから仇討に来たとは、考えられないのか。」
「え?丗闇まさか私を殺したいだなんて思っていたのか?そんな事冗談でも有り得ないだろう。何だ彼だ言って私の事好きな癖に、愛し合った仲に限って有り得ないだろう。」
「・・・今確かに我は御前に殺意を持ったがな。」
半目になった丗闇を見て又彼女は笑い出してしまった。
其の所為で傷が痛むのか彼女は少し丈躯を捩った。心配そうに見上げるケルディを一つ撫でる。
「だから馬鹿をする位なら寝ろ。未だ痛むのに燥ぐな。」
「でもこんな馬鹿な事で生きようかなって気になるんだから安い物だろう。」
喉の奥で笑い続ける彼女の前で丗闇は一つ溜息を付いた。
本当に此奴は、言った所で分かったりしない。
「だから寝るのはもう少し先延ばしにさせてくれ。少しは馬鹿も止めるから。忘れる前に話したい事があったんだけれど・・・、」
言い掛けて少し彼女の目が泳いだ。
ケルディがそっと頬を舐めるが彼女の目は未だ宙にある。
「話ってのは・・・何の事なんだセレ、」
ガルダも促すがセレは何か考えている様だった。
「・・・忘れてしまったな。いけないな、ぼやけた頭で話す物じゃないか。分かった、丗闇の言う通りもう大人しく寝るよ。」
怪我をしても内臓迄くっ付くのなら其を活かして出来る事があるって思い付いてたんだけれど。
・・・流石に其の話をしたら丗闇に一発殴られそうだって事位分かる。ぼやけた頭でも容易に導き出せるさ。
魔力達とも話したいけれど今は無理だな。何より此以上丗闇やガルダを困らせたくないのは事実だ。
心配されるのは、一種の毒だ。頭迄浸かる前に起きないといけない。
「・・・やっとか。さっさと寝ろ。」
「此丈話せたら大丈夫そうだし、後は躯丈だから此の際しっかり休んでくれよ。」
ガルダがケルディをそっと抱き上げたので彼は手を振って挨拶をした。
「噫、皆有難う。・・・御休み。」
毛布を深く被り、目を閉じる。
此は形丈とは言え大人しくするサインだ。此の間は流石に丗闇も例え起きていたとしても怒られないだろう。
だって、考えるのを止められる訳ないじゃないか。
突然現れた光の神、未来のガルダの姿、そして其の未来に・・・自分は居ない。
確率としては可也高い妥当な未来だろう。自分が居ない世界が当たり前なんだ。
だったら今ある此の奇跡を自分は何としても護らないといけない。
護れないから全てを傷付けて滅ぼして自分の場所を創るんだ。
・・・矢っ張り、彼と話してみたいな。別に怪我をさせたから罪悪感を抱くタイプには見えなかった。其の線では難しいだろうから気を付けないといけないけれど。
イレギュラー過ぎる出演者の彼を、如何にかしないと。
若し彼が変えようとしてくれる未来が自分の消失なら、話は出来るだろう。
大丈夫、屹度。ガルダと同じなら話を・・・聞いてくれる。
此はチャンスだ。此の怪我も全てプラスにしてみせるさ。
其位、出来ないとさ。私は・・・消えるんだろう?
生き残れる訳ないさ。こんな中途半端な奴が。
曦すら、殺める瞳を、如何か此の手に。
私の未来は誰にも・・・奪わせない。
私が、全ての未来を壊すんだ。
・・・・・
我は闇
世界の全てを閉ざす者なり
変わらぬ世界を見護る為に我は有る
奏でよ、終わらない世界の詠を。永遠に残る様に
詠え詠え、命を、存在を全て使って
如何して其の詠を、我は・・・こんなにも懐かしく思うのだろう
如何しても二万文字の壁が越えられない筆者です。如何して何時も超えてしまうんだ。超えられる越えられない壁状態になっている。もう何言ってるのか良く分からない。
滅茶苦茶短編書きたい。目に優しい文章量にしたい。セレが真っ二つになる丈の話なんだし余裕やろ!って思っていたのに。思っていたんだよ。
まぁ書いた物は仕様がないので出しちゃうけれどね。一番セレが斬られちゃった辺りが書くの楽しかったです。主人公(人ではない)苛められるの興奮する系の筆者です。気持悪いですね。
後何気丗闇が可也可愛くなって来た回です。自分が介抱されていたらいちころで下僕に成り下がっていた事でしょう。“噫丗闇様、本日も麗しゅう。”とか多分言ってます。
そして世曦さんですね。名前は初代次元龍屋から酷いな、と思っていたんですが最早定着していたので其の儘となりました。本当に其の儘丗闇様の言い換えです。一体彼に何があったのか、明かして行くのが今から楽しみですね。
個人的には彼は結構好きな子です。ヤンキー系はやっぱギャップ萌えだよね!強がっている気は弱い子とか、然う言うのありだと思います。さて彼は一体どんな属性かな。
彼に付いて考えたのは二人称でしょうか。元々は手前ェ(てめぇ)が基本だったんですが、漢字の後に片仮名って如何なんだろう、と思ったりかと言って平仮名にすると何かダサいし。名前はもう如何しようもないから話し方丈でもかっこ付けさせてあげたいんですよね。で、色々していたら手前がゲシュタルト崩壊して羊若しくは山羊の鳴き声にしか見えなくなりました。だから何時か皓山羊の神ってネタにすると思います。御免ね世曦君、此は運命なんだよ。
と言う事でグダグダ書きましたが今回此処迄です。次回も何か筆のノリが良いので近い内に会えるかも知れません。其では良い御縁があります様に。




