30次元 灰の街と路地に揺れる幽独の尾の次元
どうも今日は。思っていたよりめちゃくちゃ短い話になったので金成短期間での今日はです。
如何足掻いても一万文字の壁は越えられませんが、可也の短編である事は間違いないです。
今回も散歩をする話です。歩いていれば世界は救える、凄いパワーワードな気がする。
主軸の話はずっと前から決まっていたのですが、思い付きを可也詰め込みました。思い付き丈で書くとこんな事になるみたいです。良かったのか悪かったのかは・・・胸に秘めて置きましょう。
只本当にパソコンだとかの仕様変更が可也応えています。如何して行き成りローマ字変換するの?如何して人名を認識しないの?造語位柔軟に対応してよ!「⁉」や「‼」が如何して文字化けするの?
等々言い出したら限がない位色々問題にぶち当たっています。此が変な小説を書く者への試練か・・・と言う位。自分が悪いんだから愚痴る丈で文句は言わないけれども、もっと斯う・・・自由に出来たら良いなぁ。
そんな自分の思いとは裏腹に今回の主役は自由の象徴、猫ちゃんです。彼等は自分達を一体何処へ導こうとしているのでしょうか・・・?
降り積もる灰に何を見出す
噫其が積もった所で元の姿に等戻れないのに
否最早元の姿も忘れたか
其でも灰は降り積もる
贖罪の様に、欲望の様に
・・・・・
此処は其処其処賑わいを見せる商店街。
煉瓦で出来た家屋に色取り取りのテントを広げて通りは鮮やかだった。
時分も御昼時なのだろう、人々が集まっては話に花を咲かせている。
魚、果物、野菜と並ぶ品物は何も新鮮そうだ。
「フフ、此処は中々当たりの次元を引いたみたいね。」
通りを見渡し、ロードは何処となく嬉しそうだ。
彼女の隣に立つ皐牙も物珍しそうに辺りを見ていた。
「ふーん、中々良いんじゃねぇの。良い匂いもするし。」
「でも次元の主導者が居ないわね・・・。おかしいわね、何処にいるのかしら。」
「ってか彼奴も居ねぇぞ。何処で油売ってんだ?」
皐牙も良く良く見渡すと店と店の間の隙間へ鏡が入って行くのが見えた。
「あ、彼のヤロー何迷子になりに行ってんだ。一寸呼んで来るゼ。」
ロードに声を掛け、さっさと皐牙は駆け出した。
やっと出来た後輩が斯うなんだからなぁ、目が離せないゼホント。
「おい何処行ってんだよ。其方に次元の主導者は居ねぇだろ流石に。」
肩を掴むと鏡は首丈回してずれた眼鏡を直した。
「猫神似、見付けたから。」
「猫神?其って御前の居た次元の神とかか?」
鏡は一つ頷いて指を差す。
其処には一匹の猫が居たが猫は全身灰色で模様は絵の具をぶちまけた様にぐちゃぐちゃだった。
其の模様の所為で猫は可也汚れている様に見えたが別段健康そうで、鏡を見上げて尾で体を叩いていた。
叩いた傍から埃か何か舞っているので実際汚れているのかも知れない。
こんな路地裏に居るんだし野良猫だろうけど。
「次元の主導者知ってる?」
「い、いや猫に素で話し掛けんなよ。」
「おう!誰だ貴様、何か用か?」
何処からか声がして皐牙は周りを見渡した。
誰かに声を掛けられた?でも後ろからじゃなかった気がしたけど。
「次元とか神とか知ってる?」
「あー俺そんな賢くねぇからなぁ。」
「え・・・は?」
足元から声がした気がした。嫌な予感がして皐牙は奥の猫を見遣った。
「何だよオメー俺の顔に何か付いてんのか。」
「うぁ、ね、猫が喋ったぁああ‼」
「猫神だから当然。」
「いや俺猫神じゃないけど。」
如何見ても喋ってる。口元を何丈見ても動いている。
絶句する皐牙を他所に鏡は猫を捕まえて抱え上げた。
猫は矢張り汚れていた様で彼の服に灰の汚れが付いていたが気にしていない様だった。
「オイオイ俺を如何するつもりなんだ兄チャン。」
「猫神連れてく。宜しく。」
「・・・まぁ俺も暇してたし良いけど。」
「へ、連れて行くの?まぁ嫌がってないなら勝手にしろって感じだけど。」
少しずつ皐牙も現実を理解し始めた様でまじまじと猫を見遣る丈にした。
まぁ斯う言う猫がいる次元もあるんだろう。良く見たら髭も無いし、オレの知っている猫似の何かなんだろう。
「二柱ともこんな所で如何したのかしら。あら可愛い猫さんね。」
ロードが追い付いて少し息を付く。
そんなロードを見遣って猫は一つ鳴いた。
「宜しく姉チャン。俺はHi!猫って言うんだ。」
「あら御親切に如何も。私はロードよ。貴方も一緒に来てくれるのかしら。」
「・・・勝手に攫われてる丈だけどねぇ。」
「あれ、あんま驚かないのかよ筋肉天使は。」
「まぁ話せる猫は沢山見た事があるし今更驚かないわ。」
何だか残念。ビビったのが自分丈とか少し面白くない。
「兎に角此の近くに次元の主導者は居ないみたいなの。だから適当に歩いて探しましょう。」
「分かった猫神、変な物見付けたら教えて。」
「・・・御前が一番変わってるけどな。」
片目を眇めつつもHi!猫は大人しくしているのだった。
・・・・・
暫く一同は通りを歩いたが特に気になる物は見付からなかった。
「・・・なぁ何かオレ腹減って来たし何か食わねぇか?」
もうすっかり昼だ。通りは其処等で美味しい物を売ってるし、そろそろ疲れても来た。
「然うね。只肝心の御金がない分は如何仕様もないわよ。」
「そんなん又炭売ったら・・・、」
「む、君達、一寸待ってくれないか。」
声を掛けられロードが振り返ると一人の甲冑に身を包んだ者が立っていた。
旻色のマントを羽織り、先の尖った兜から燃える様な長い絳髪が零れている。
其の風貌は明らかに此の次元に即してはいなかった。
「あら、貴方は一体。」
「噫此は失礼。如何も同族と思しき様子だったので声を掛けさせて貰ったのだ。私は光の国、ライネス国のクルスティード尖塔の戎兵、神族の楪と言う者だ。」
「御丁寧に有難う御座います。私も同族のロードと申します。此の次元には観光で来てみたんですが。」
クルスティード尖塔・・・店にとって余り良い所とは言えない。
彼等の目的は世界平和だ。だとしたらセレは討伐対象になってしまう筈。
皐牙も察してか黙って兜を見詰めていた。
「然うか。あの・・・少し申し上げ難いのだが、次元龍屋と言う店を知らないか?其の事で少し話をしたいんだが。」
「若しオレ達が然うだって言ったら御前は如何する気なんだ?」
「其は・・・その、少し話をしてみたくてな。実は私は少し丈其処の者と親交があるんだ。最近見掛けないから如何なのかと思ってな。」
嘘は無い様に見えた。楪は少し背を低くして声を潜めた。
若しかして・・・前ハリーが言っていた神だろうか。敵で無礼な奴だけど話が出来る奴に会ったって言っていた事があったけれども・・・。
「親交と言うと具体的には如何言った物かしら。」
自らの正体を晒す様だが、一応確認は必要だろう。相手が何丈の情報を持っているのか分からないのだ。
「君達、同国の者では一応ないな?その・・・ガルダとハリーと言う者に力を貸して貰った事があったのだ。彼等の御蔭である次元が護られた。私は彼等を戦友と認めているのだ。」
―此は・・・信じて良いんじゃねぇの筋肉天使。―
皐牙がそっとテレパシーを送る。
其に静かにロードは頷いた。
光の国は正義に忠実だ。嘘や虚を嫌う為に騙す様な行動も然う取らない。
何より彼の仕草が嘘とは思えなかった。
若し本当に彼が店と親交があったなら、其の事実が漏れれば彼は無事では済まないだろう。
「其処迄言うなら信じてやるゼ。オレはカーディナル=皐牙。其の店の一員だゼ。オレと其処の筋肉天使と後・・・もう一柱一応いるんだけど。」
辺りを見渡したが鏡の姿がない。
ふらふらと何処かへ行ってしまったのだろうか。餓鬼じゃねぇんだから放っといても良いだろうけど。
「然うね。警戒の為とは言え嘘を吐いて御免なさい。」
「いや、私の方こそ信じて貰えて嬉しい。其の様子だと調子が良さそうで良かった。」
楪の声音は幾分柔らかくなった。本当に安心した様だ。
「君ィ!炭持ってるのかい⁉」
突然の大声に一同の背が伸びる。
見渡してみると何処ぞの店の前で鏡と一人の男が話し合っている様だ。
鏡は声を荒げる男に炭を押し付けている様だ。彼は良く人々に自身の貯蔵する炭を振舞う事があるのだ。
少し目を離した隙に又何か起こしたらしいが一体何をしているんだろう。
そっとロードが近付くと何やら話は進んでいるらしく、男は嬉しそうに鏡の背を叩いた。
「こんな上質な炭をくれるなんて、丁度店で使う分が無くなって、取引先も事故で遅れていて困ってたんだよ。本当に助かる!御礼をさせてくれ、どうぞうちの店で食って行けよ!」
「おぉ!超ラッキーじゃんオレ腹減っててさ、なぁ行こうゼ。」
「じゃあ楪さんも御一緒に如何ですか?若し良ければ一緒に食事でも。」
「え⁉い、良いのか私何かが御一緒しても・・・、」
「良いって言ってんだから良いだろ。早くしようゼ。」
先に店に通された鏡の後に続いて一同は煉瓦造りの店へ入って行くのだった。
・・・・・
「いやー丁度良かったゼ。結構良いスタートなんじゃねぇの?」
店の奥のテーブルに一同は腰掛けた。
店はそれなりに繁盛している様で店内は賑わっていた。御蔭で一同の姿が紛れる。
「何彼の方あんな小汚い猫なんか連れて。」
「こら俺の客に文句言うんじゃねぇ。旦那、店の奴が失礼を言って済みません。」
「気にしてない。大丈夫、何か御勧め頂戴。」
鏡は膝にHi!猫を乗せた儘だった。
男は此の店の店主らしい。人の良さそうな笑みを残して店の奥へと入ってしまった。
「・・・御前偉く気に入られたんだな。」
「然う言えば鏡さんは幸せの神だったかしら。斯う言う幸運は御手の物なのね。」
「皆優しい丈、此方が特別な訳じゃない。」
「あ、あの私も御馳走になってしまって、有難いのだが彼だな。次元龍屋の者は皆こんな気さくな者許りなのか?此方で聞いていたのと全く違うんだが。」
「然うね。ライネス国では私達の事随分勝手に言い然うね。けれども今貴方が見ている現実が真実よ。だから私も入ったんだし。」
「オレは半ば無理矢理だったけど、ま、居心地は悪くないゼ。ってか暑苦しいから其の兜取れよ。別に食べる丈なんだし。」
「然うしたいのは山々なんだが私は余り一般に晒せる姿でなくてな。申し訳ないが。」
「噫オレのグローブみたいな物か。悪かったなそんな事聞いちまって。」
「此方こそ気遣い感謝する。君達みたいな神に恵まれて店も上々なのだな。」
話し込んでいると先程の店主が何皿か持って来た。
皿には魚の煮付けや焼き鳥が載っており、香辛料の良い香りが漂った。
「美味しそう、良い焦げ目付いてる。」
「御前焦げとけば良いのか?変な奴、ま、御前の御蔭なんだし好きなの食えよ。」
「楪さんは如何かしら。兜の儘でも大丈夫かしら。」
「問題ない。私は魚料理が好物でな。久し振りだから本当に楽しみだ。頂こう。」
然う言うと楪はナイフとフォークで魚を切り分け、器用にも兜の下へ押し込んだ。此の姿での食事には慣れている様だ。
「所で、君達は変わりないか?最近次元にも変化が出ている様だから中々対応が難しくてな。」
「ふーん、そんな変わってるって思わねぇけどな。炭売ってたら終わった次元もあったし。」
「其処楽しそう、今度連れてって。」
「御前の故郷だっての。ってか口にすげぇ焦げ付いてっぞ。」
「然うなのか?何だか楽しそうな所だな、確かに。」
「迷子の蛇助けた所、あった。」
淡々と続ける鏡に楪は目をぱちくりとさせた。兜の下と言えども彼女の表情は分かり易い。
中々鏡の話が珍しく写った様だ。
「・・・何だか君達の仕事は随分楽しそうに聞こえるな。ちゃんと次元を救えている様で良かった。私の任務は相変わらず偵察だからな。然うしている間に君達は又世界を救っている。」
「何だか然う言われるとむず痒いわね。其処迄大それた事はしていないわよ。」
「いや、十分に凄い事だ。現に私の目の前でガルダは命を掛けてくれた。彼が、私には忘れられない。同じ事が果たして出来たかと。えっと・・・セレ、さんも重畳かな。」
楪が少し言い淀んだのをちらとロードは見遣った。
肉を頬張り乍ら皐牙は気にせず答えた。
「元気そうだゼ。最近益々勁くなりやがったし。ま、其でも良く無茶はするからオレ達結構頑張ってるんだゼ?」
「然うか・・・。頑張るのは、努力は良い事だと思う。続けて欲しいな。」
「因みに次元に変化があるのは具体的にどんな事かしら。私達も気を付けた方が良いかしら。」
「噫、君達はコロシの一族を知っているか?」
フォークを扱う手を止め、楪は声を潜めた。
コロシ、其の言葉に僅かにロードの眉が動く。
「確かに然うね。最近現れた彼の黔い魔物でしょう?」
「あー何か聞いたな其。オレ未だ見た事ねぇけどヤバい奴だろ。」
「然うだ。私達の所も未だ確かな事は分かっていないが、只殺す事のみを機械の様に繰り返す不気味な奴等だ。突然現れるし、此が中々強敵でな。仲間も随分やられてしまったのだ。」
「成程、だから中々私達と接触しなかったのね。其方の対応に取られていたと。」
彼程の実力ならライネス国も苦戦するだろう。確かに彼等は危険だ。
「然うだ。でも矢張り君達も彼には苦戦しているのだな。其が聞けて良かった。店を疑う者もいてな、私は黔日夢の次元発生により環境変化で生まれた新種の存在だと信じていたんだ。余り君達も疑いたくないしな。」
「彼は只破壊しか生まない存在よ。あんなのを生み出しても私達に何の得もないわ。」
「ケッ、悪かったら全部此方の所為ってか。御目出度い奴等だゼ。」
「・・・余り私は其処に言及出来ないな。斯うして君達と実際会ったから考えが変わったが、其が無ければ矢張り私も、」
「其は仕方ないと思うわ。ライネス国は然う言う所よ。然うやって規律を護って国を作っているんだから其処は私も責められないわ。」
「・・・気遣い感謝する。君達はライネス国に詳しいんだな。中に入るのも厳しいのに、ガルダも同じ様に言ってくれたよ。」
「然う言えば然うだな。オレも全く知らないゼ。見事な塀があるし、ホント鎖国って所だよな。」
「私は特殊な所の出だから知っている丈よ。でも・・・然うね、ガルダは如何して知っているのかしら。」
確かに彼は可也知っている節がある。
そして・・・憎んでる。彼の国を。
てっきりセレを狙うからだと思ったけれど、良く考えたら何だか其以上の恨みを持っている様だし。
昔、何かあったのかしら。追放されたとかそんな事が。
「で、其の光の国でも結局彼は何か知らねぇって事か。弱点とかさ。オレの相棒も会って大変だったんだよ。一撃でも喰らったら此方が死ぬような最終兵器持ってるしさ。」
「分からない・・・な、本当に。謎だ。私と別で調査隊も結成されたから、今から調査が進むと思うが。」
「光の国でもそんな物なのか。ふーん。」
「危険、危ない。会わない事、祈らないと。」
「貴方は幸運の神なんだし、屹度祈れば大丈夫だと思うわ。」
ちらと彼の膝の猫を見遣る。
大人しく丸くなっている。此方の話には興味がない様だ。
「でも楪さん、余り此方に肩入れしない方が良いんじゃないかしら。私達は歓迎するけれども貴方の立場は余りにも危険だわ。」
隠し通せるのなら要らぬ心配だろう。
でもハリーの話した彼女と、今の自分の印象を統合すると、彼女に此の橋は危険過ぎる。
真直ぐ過ぎるのだ。普通の、一般教育をされた光の兵だ。
先だって彼の声の掛け方は、若し私がライネス国の者なら尋問レベルだ。
「私の心配をしてくれるのか、有難い。・・・確かに、危険なのは分かっている。でも知ってしまっては、もう無視出来ないだろう。私も、何かしたいんだ。」
「へぇー良いんじゃねぇの然う言うの。一緒に頑張るのは良いと思うゼ。」
鶏肉を適当に切り分け、美味しそうに彼は頬張った。
鏡がじっと見ていた事に気付き、彼はそっと上の焦げを彼の皿に置いてやった。
「危険良くない、安心一番。」
「然う・・・だな。噫分かった。気を付けるに越した事はないからな。」
一つ大きく頷いて楪はコップの水を仰ぐのだった。
・・・・・
「すっかり御馳走になってしまったな。本当に有難う美味しかった。」
「噫御礼なら其処の猫持ってる奴に言えよ。オレ達も便乗した丈だし。」
「いや誘ってくれた事自体が嬉しかったんだ。又会えた時も宜しく頼む。」
楪が頭を下げると皐牙は顎を掻いて外方を向いた。
「貴方は如何するのかしら。然う言えば仕事中だったのね。すっかり引き留めてしまったけれども。」
「其は問題ない。此の次元は君達が居るのならもう大丈夫だろう。力のない私の代わりに如何か救って欲しい。私は別の次元へ調査に行くよ。」
楪は何度も御礼を言い、通りの人込みの中へ消えて行った。
「さて、ああ言われちゃあ仕方ないわね。私達も仕事に戻りましょうか。」
「っても如何すんだよ。やっぱ次元の主導者探す訳?」
「其一番、猫神も居る、大丈夫。」
「いや猫に頼られてもさぁ。」
Hi!猫は気の抜けた声で返事をする。
店では鏡の膝ですっかり丸くなって寝てしまっていたのだ。時々鏡が食べ物もくれたので彼にとって天国の様な所だったのだ。
「其じゃあ取り敢えず次元の主導者探しの続きとしましょうか。」
通りの賑わいを一瞥してロード達は適当に歩き始めるのだった。
・・・・・
何丈時間が経っただろうか。突然鏡は近くの公園を通り掛かり、さっさと中へ入ってしまった。
中々進展のない次元の主導者探しに疲れたのだろうか。
然う納得して一同も後に続く。
鏡も歩き疲れている節はあった。何度飛ぼうとしたのを阻止したか。
一応辺りを見ても自由に飛んでいる人は居なかったのだ。そんな目立つ行動は見過ごせないだろう。
後を追うと案の定鏡は日陰のベンチに腰掛けていた。
一体何処で手に入れたのか其の手にはジュース缶があり、Hi!猫が不思議そうに匂を嗅いでいた。
「あ、彼奴自由過ぎだろ。ぜんっぜんオレの言う事聞かねぇんだけど。」
「フフ、古の神だから猶の事難しいわよ。でも彼の真似をしたら貴方にも幸運が舞い込むかもね。」
「確かに其はありかもな・・・。よっしゃ!じゃあ御零れ作戦だ。」
皐牙はさっさと鏡の隣のベンチに腰掛けた。
すると鏡は透かさず新しいジュース缶を差し出した。早速一つ幸運にあり付けた様だ。
ロードも近くのベンチに掛けると手渡して来た。少し温かくなっているが未だ冷たい。有難く頂こう。
「此、一体如何したの?」
「先、其処の人、此売る機械壊れた。勿体無いから、くれた。」
「・・・何か御前の傍に居る丈で億万長者になれそうだな。」
一同が休憩がてらジュースを飲んでいると涼んでいた猫が顔を上げた。
「んで、結局御前達は誰を探してる訳?」
「変な人。」
「いや次元の主導者だろ。・・・ってかそんな事も知らずに何してたんだよ御前。」
何で皺寄せが此方に来るんだ。
次元の主導者の印象が悪くなるだろ。其に今最も変な奴は御前だからな。
「ふーん、で其奴を探すのに俺が要る訳?」
「えっと其は・・・屹度鏡に何か考えがあっての事なのよ。だからもう少し辛抱して頂戴ね。」
適当な事を言ってしまったけれど、多分考えはない気がする。
巻き込んで申し訳ないけれども未だ鏡は猫を手放す気がなさそうだし、もう少し丈我慢して貰おう。
「ま、良いけどさ。此処はあんま長居しない方が良いぜ。用がないならさ。」
「あ、猫だぁー!」
「変な柄のニャン子だー。」
猫が一つ尾を振ると公園で遊んでいた子供達が寄って来た。
矢張り動物は子供に人気がある物なのだろうか。
鏡がそっとHi!猫を傍のベンチへ置いた為子供達が撫でようと近付く。
猫も嫌ではない様で横になった儘だ。
其の為遠慮なく子供達は猫をもみくちゃにせん許りに撫で始めた。
「一寸!そんな野良猫と遊ばないの!」
だが突然そんな声が上がり、一人の母親が子供の手を取った。
其を皮切りに子供達は親に手を引かれて離れて行く。
「汚いでしょ、咬まれたら如何するの。」
「ほら手を洗って、変な病気になったら如何するの。」
「何時も何食べてるか分からない様な猫なのよ。」
「・・・ったく何なんだよ好き放題言いやがって。」
あっと言う間に猫は一匹限りになり、静かになってしまった。
面白くないと皐牙は一柱息を付く。
「ほぅーらよ、俺は嫌われ者の猫なんだ。御前もあんま傍に居ると怒られるぞ。」
「別に嫌う必要、ない。」
鏡は近くの子供達の所へ寄ると何処からか炭を取り出した。
其をそっと子供達に何本か分けてあげた。
子供達には物珍しかった様で軽い、黔いと言っては又燥ぎ始めた。
積み木の様にしては砂場に刺して遊んでいる様だ。
又公園は何時もの賑わいを見せ、子供達の声が谺する。
猫は其の様子を見て不思議そうに尾を振った。
「此で、大丈夫。もう親怒ってない。」
「フン、妙な真似するじゃんか。」
「ふーん、御前いっつもあんな感じな訳?少し洗っちまえばそんな風に言われねぇだろ。」
「然うね。折角貴方御話が出来るんだし、子供達とかなら直ぐ友達になれるんじゃないかしら。」
「あ、洗うなんて止めてくれよ!折角の灰が落ちちまうよ。別に餓鬼に好かれたい訳じゃねぇんだから。」
Hi!猫は心底嫌そうな顔をして一つ尾を振った。
「へーじゃあ先から出てたの灰だったのかよ。ってか鏡服位払えよ。付いてるぞ。」
鏡が指摘される儘に服を払うと灰がぱっと宙に舞う。
少し煙たそうだが鏡は気にせず残った炭を齧っていた。
まぁ灰も炭も少しは似た物・・・かな。
「何か・・・居る気する。彼方気になる。」
鏡は炭を齧り終えると又Hi!猫を抱えて歩き始めた。
最早猫は何かを言う気力もないらしく、されるが儘になってしまっている。
「おーい・・・ったくホント自由な奴だな。」
「先輩は大変ね。面倒見ないと。」
其を聞いて皐牙は苦虫を噛んだ様な顔を浮かべたが直ぐ席を立って後を追うのだった。
鏡はどんどん公園の奥の瓊林へ向かっている様だ。
手入れはされている様で程良く陽の入る瓊林だが、誰も居ない様な気がする。
何か居るって何だよ。・・・変な奴じゃねぇよな。彼のストーカー野郎とかはマジ勘弁だぞ。
暫く進むと少し視界が開けて来た。
中央に青々とした大木一本、其の周りに机やベンチ、竈の様な物もある。
一見するとキャンプ場の様だった。公園のエリアの一角なのだろう。
そして其の大木を見上げて鏡は立ち止まっていた。
皐牙も直ぐ其の訳を察する。
やっと見付けた。此の碧樹こそが、
「次元の主導者がこんな変哲もねぇ碧樹なのかよ。」
何だか気配も薄いけれど間違いない。此の碧樹だ。
「然うみたいね。でも如何してこんな離れた所にあったのかしら。」
自分達は次元を救う為に来たんだ。だとしたら普通は碧樹の近くへ呼ばれる筈なのに。
若しかして此処に至る迄の道中が、大切だったのだろうか。
「何、じゃあ此の碧樹が御前達の探してた物なのか?変な人じゃなくて。」
「変な人、居なかった。此の碧樹だった。」
「フン、じゃあオレの役目は終わりだな。」
鼻を鳴らしてHi!猫は身を捩り、鏡の手から逃れた。
不思議そうに首を傾げて見詰める鏡をHi!猫は見返した。
「御前達何処か遠くから来たんだろ、此処の奴等と匂が違うぜ。」
「ま、然うだな。全然違う所から来たし、用が終われば帰るけどさ。」
でも何かがおかしい。次元の主導者は見付けたが、未だ何か残っている、そんな気がする。
然うだ。だって此処がスタート地点だ。此処からオレ達は何をすれば良い?
「気紛れで俺をこんな所迄連れて行きやがって。俺は如何すれば良いんだよ。」
鏡は膝を付いてそっとHi!猫を撫でた。猫はそっと尾で払う。
「行きたい所、連れて行く。好きな所、ない?」
猫は一度顔を洗う様に舐めるとそっと鏡から離れた。
そしてキャンプ用なのだろう竈の中へ入ってしまう。
「何だよ拗ねちまったのか?ってもオレ達未だ仕事終わってないんだけど。」
「然うね・・・取り敢えず此の碧樹を当分護れば良いとは思うけれども具体的な事が分からないわね。」
追い付いたロードは碧樹を見詰めて一つ息を付いた。
「あーぁめんどくさ。なぁ一応危ないし猫彼処から出した方が良いんじゃ・・・、」
皐牙が竈を見遣るが声が出なくなる。
竈から何か・・・食み出してる?
長い灰色の舌の様な・・・猫の舌ってあんな長いのか?
其の儘見遣っていると竈から細長い碧樹の枝の様な両手が出て来た。そして竈の縁を持ってズルリと、全体を引き出す様に身を捩る。
然うして姿を現したのは、猫とは似ても似つかない者だった。
節榑立った細長い頸の先にひし形の頭、其の頭には大きな瞳が一つあり、じっと一同を見詰めている。胴は背が泡立つ様に膨らんでは棘が何本も生え、対する腹は粘性のある液体の様に滴っていた。
そんな躯を支える足は何本もあり、尾は伸ばされた手の様で蠢く様に何本も揺れていた。
全身が灰色のそんな化物は音もなく突然現れ、じっと一同を見詰めていた。
「な、なな、何だよ彼ェ‼」
腰が抜けて皐牙は尻餅を付いてしまう。
鏡もロードも声すら出せず化物を見上げる事しか出来なかった。
化物はそっと舌を揺らして何本もある足を器用に使い、そんな皐牙に近付いて行く。
そしてそっと枝の様に複数に分かれた其の舌で皐牙の頬を舐めた。
「イッギャァアァアアァ‼何だ此の化物ォ⁉」
途端彼の中の何かが爆発した様で彼は火達磨になった。
魔力の暴走の様な物だろうが流石に突然叫んで燃え上がった彼に化物も驚いた様で数歩下がった。
「オ、オイ猫は如何した⁉まさか此奴に喰われちまったのか?」
腰が抜けた儘だが皐牙の声に弾かれた様に鏡が竈の中を確認した。
「猫神、居ない。消えた。」
「喰われてんじゃねぇかぁあ‼」
叫ぶと同時に更に彼の躯は燃え上がった。
離れた所から見れば場所が場所な丈に見事なキャンプファイヤーに見えただろう。
「くそっ!返せよ、手前ェ、先鎧の奴が言ってた彼の化物の仲間かよ!」
燃え上がった焔は鎮火したが、代わりに皐牙の口から焔が噴射される。
其は真直ぐ化物にぶち当たり、さっさと化物は避難した。
細長い手を器用に使い、碧樹の幹に手を掛けて躯を巻き付けて行く事で大きい乍らも中々素早く移動出来る様だ。
其でも完璧に回避する事は出来なかった様で燃えた手足は幾本か崩れてなくなった。
只化物は別段其には気にも留めず、じっと一同を見詰めていた。
「よっしゃ!先ずは一撃!」
「火、危ない。此処も燃える。」
「う、煩ぇ!猫助ける為だろうが!」
「でも危ないのは事実だわ。私も手を貸すわ。」
然う言ってロードは近くの丸太を引き抜いた。
恐らく遊具の一つとして埋められていた物だろうが、優に3mはある。
其を肩に担いでロードは化物と正面から対峙した。
「お、おぉう・・・まぁ筋肉天使なら余裕で相手出来そうだな。」
威圧感が本当に凄い。勝てる気がしない。
「先ずは動きを止めるわよ。」
其の儘ロードは丸太を投擲し、化物の幾本もある尾の根元を捉える。
釘を打ち込む様に丸太は化物の尾を地面に打ち込んだ。
だが其の途端化物の尾は灰の様に崩れ去ってしまう。
化物は別段痛がる様子もなく只驚いた様に碧樹から碧樹へ移動して警戒してロードを見遣った。
「・・・此の儘押せば勝てそうだけど彼は何なのかしら。此の次元の者ではなさそうだけど。」
「彼の竈から出て来たんだゼ!絶対やばい奴だろ。なぁ此奴が例の化物なんじゃねぇのかよ。」
「其は・・・違うと思うわ。手応えが無さ過ぎるもの。見た目は恐ろしくても目的は何なのかしら。」
「猫神・・・何処にも居ない。隠れてない。」
「未だ捜してたのか?だから彼の猫は喰われたんだって!」
飛んで捜していたのだろう鏡が樹々の隙間から顔を出してロードを見遣った。
「喰われた、違う。猫神竈の中入ってった。」
「だから其の竈から化物が出ただろ!」
「・・・っ!然う言う事ね。」
ロードは何かを察して時空の穴からスカウターを取り出した。
即座に掛けてじっと化物を見遣る。化物も只同じ様に見詰め返していた。
そんなロードのスカウターにある文字が並んで行く。
「分かった・・・分かったわ。貴方が彼の猫なのね。」
其を聞いて化物はにぃ、と笑った。
「何だぁ随分あっさりばれちまったな。」
其の一言を最後に化物の姿は灰の様に凱風に崩れ去った。
然うして残ったのは彼のHi!猫一匹となった。
「え、は?え、オイ彼の猫生きてっぞ。」
腰を抜かしていた皐牙だったが正体が分かるや否や鏡に声を掛けた。
鏡はそっとHi!猫に近付いてしゃがみ込んだ。
猫は、動かない。只じっとしていた。
「其の猫はHi!猫、龍族の一種よ。宙属性の龍。灰を被る事で化物に変身したり、色んな灰を撒ける様ね。」
「へぇ〜随分俺の事詳しく知ってんだな。俺生まれてからずっと独りだったから知らなかったぜ、そんな事。」
「何でこんな事、したの?」
「へっ、何でだろうな。御前達が帰るみたいだからちょっかい出したくなったのかもな。」
「ちょっ、ちょっかいってオレ御前が死んだのかと、っ心臓に悪いだろこんなん!」
皐牙ががなるがHi!猫は悪びれる様子もなく外方を向いた。
「然うね、危ないのは事実よ。若しかして何時もああやって人を襲ったりしているのかしら。」
猫は何も答えない。そんな猫をじっと鏡は見遣っていた。
「・・・仕事、危ないから連れては行けない。でも君に会いたがってる神いる。」
「会いたがってる?そんな物好きがいる訳?ま、連れてってくれるなら行ってやるぜ。」
「其は・・・リュウさんの所かしら。まぁ確かに彼なら喜ぶでしょうけど。」
「セレ神が、独りの子は連れてけ、言ってた。リュウ神、大丈夫だって。」
「お、おいでもこんな奴連れて行くのか?猫かと思ったら化物だし、然も龍って・・・何か急に狂暴になるしさ。」
やっと皐牙も現実が理解出来た様で、騙されたと気付いた彼は少し不満そうだった。
「狂暴、違う。寂しかったから・・・行って欲しくなかった丈。」
猫は外方を向いて鼻を鳴らした丈だったのでそっと又鏡は猫を抱いた。
「此方、連れてく。・・・良い?」
「ま、良いんじゃねーの。あ、でもオレの後輩喰っちまったらホント赦さねーからな!」
皐牙は少し猫に凄んでみせたが、其で一応満足した様でそっと猫から離れた。
「・・・だったらもう此の次元も大丈夫そうね。此の儘帰りましょうか。」
大木を見詰め、ロードは一つ息を付いた。
「・・・ホントだ、何かもう良さそうな気はするけど何でだ?オレ達猫連れた丈で此の碧樹、次元の主導者には何もしてねぇゼ?」
「間接的に護る・・・なんて事もあるんじゃないかしら。一応仕事は完了よ。」
「じゃあ此方、リュウ神の所行って来る。其の後、店戻る。」
「・・・御前は怒らないのか?折角俺あんなに化けたのに。」
「別に。気持、少し分かるから。若し此方も力あれば、同じ事・・・してたと思うから。」
「フン、相変わらず変な奴。もう良いや、連れてってくれよ。」
一つ頷いて鏡の姿が霞む。
そんな彼等の話を聞いてロードは一柱微笑を湛えていた。
彼女には何となく分かっていたのだ。此の次元が迎える筈だった悲劇が。
其は、皆に伝えなかったHi!猫の、龍古来見聞録にあった一文。
Hi!猫は、灰を被る事で化物にもなれるが、とある灰を撒く事も出来る。
其の灰は時に死者をも蘇らせる聖灰や、全ての物を死に至らしめる死の灰。
若し彼が彼の儘誰にも会わずにずっと独り限りでいたのなら或いは・・・。
屹度然り気なく誰かを救って行く其の行動こそが彼の幸運なのだろう。
青々と茂る大木を一瞬見遣って一同の姿は掻き消える。
公園の隅で又其の瓊林は静寂に包まれるのだった。
・・・・・
積もる灰は静かに声を隠す
埋もれた願いも知らず又土足で踏み荒らされるだろう
でも確かに息衝く息吹は何時か芽を出す
灰に隠れようと、其の上に積もろうと
其の碧に何時しか立ち止まる足音が一つ
短い!以上!
最近クトゥルフ神話TRPGが再熱しているので如何しても其がちらつく話となりました。
竈から化物が出る所とか絶対SANチェックだよなぁ、とか思って一人で笑ってました。然う言う状況を想像するのって結構楽しいですよね。ある意味自作自演ですが、其でも面白い物は面白いって思っちゃう。此処に人間性が出る訳ですね。
Hi猫ちゃんはずっと出したいなぁ、と思っていた子でした。只ストーリーはめちゃくちゃ変わりました。元々メモ帳にあった方は猫を連れ回すのはセレになっていました。灰に塗れていてもモフモフだから手放せない、そんな具合だったんですね。只ストーリーのゴールを考慮すると、絶対セレには出来ない条件があったので彼女には暇を与えました。(何処についてなのかは恐らく想像に難くない筈。)
次も確実に短編なので割と早目に出るとは思うんですが、もっと深みのある物語も書きたいなぁ。
複線も可也ばらまかれ始めたので、そろそろ集約しても良い頃です。又そんな縁があれば御会いしましょう!




