24次元 秘密の1次元 小さき者達は会議で踊ル
一月前振りです。最近良く会いますね。然う今回は短編です。短編も短編。やっと書きました番外編です。
番外編自体は沢山元データがあったのですが、入れるタイミングを逃し続けて現在です。此処に来てやっと一つ目です。五十話近く番外編書いてるのにね。
今回何で入れたのかは、まぁ店も良くない雰囲気出てるし、軽い話入れたいなぁ~と思ったからですね。とか言いつつ今回から数回は明るめの話です。
重い物は少し先にセッティングしました。こんな気配りが出来るなんて流石筆者!惚れる!憧れる!(褒めて伸びる子なんです、察してあげて下さい。)
其の記念すべき一回目の番外は、鎮魂の卒塔婆です!(何故其方サイドからするんだ。)
個人的に鎮魂の卒塔婆好きなんですよね。キャラの付き合いも長いし、愛着あります。まぁレイ君みたいに殺す時は殺すけどね(ニッコリ)。
そんな鎮魂の卒塔婆の日常の一端、少し覗いてみませんか?
「・・・此にて定時報告を終える。解散だ。」
フォードが紙の束を机で整え、小脇に抱えて足早に去ってしまう。
挨拶もそこそこに行ってしまった。何時もより愛想なかったけれど、何かの実験の途中だったのかも知れない。
「フー今回も皆御疲れ様ね。」
「えぇ、フォード又忙しくなりましたよね。何だか最近ガルダさんが帰って来ていたみたいで、其が原因だとか。」
「・・・いや、流石に其は嘘でしょ。何家みたいな感覚で言ってるのよ。彼の子一応裏切り者扱いだし、其処迄馬鹿じゃないでしょ。・・・ね、BDE‐00。」
「はい、窓から侵入してフォード様と会談した後、又窓から出て行かれました。そしてフォード様からは直ぐ忘れる様命を受けました。」
会議が終わったが、出て行く者はそんなに居ない。悲しい事に自分達は其処迄する事もないので別段出て行く用事もないのだ。
てっきりBDE‐00も直ぐフォードの後を追うと思っていたのに何処からか出した作業台で珈琲何ぞ作っている・・・。後でフォードに出す特性ブレンドだろう。
唯一彼女にしか出来ない事で、其が唯一彼女の出来る事で、フォードに褒められた特技なのだ。
一体如何作っているのかは知らないが、聞かない事にしている。其の特性ブレンドがインスタント珈琲に湯を注ぐ丈の様な具合だったら?彼女の仕事を奪いたくはないのだ。不憫過ぎる、私も其処迄の意地悪はしない。
彼女も其以外出来れば完璧だったのに、行き成りポンコツ具合が出ている。此の仕様は彼女本来の性質なのか、装着しているBDE‐00の物なのかは分からない。
「・・・恐らく其、誰にも話さない様にしなさいって所丈綺麗に忘れてしまった様ね。分かってて何でフォードは貴方に然う命じちゃったのかしら。」
忘れろと言う命令すら忘れてしまうのだから救い様がないと言えば然うなんだろうけれど。
「ははっ、其処も含めてBDE‐00さんだからじゃないんですか?僕も此の位の方が話し易くて好きですよ。」
「・・・何の話かは良く分かりませんでしたが、圷様が私を侮辱した事丈は何となく分かりました。私の侮辱は私を作ってくれたフォード様への侮辱となります。・・・御覚悟を。」
ちらとBDE‐00のスカウターが絳く灯り、圷を睨む。
其丈で圷は小さく跳び上がった。
「あっ、いや、そんなつもりじゃあ、ご、御免ね。・・・っ、だ、だから其の包丁仕舞って、ね?御願い!」
BDE‐00は基本無表情なので本気か如何か分かり難い。
只無言で包丁を持って睨まれると反射的に謝ってしまう気持は分かる。
・・と言うより彼女、珈琲を作ってたのよね?何で包丁なんて持ってるのかしら。
まぁ目の前で殺神事件が起きたら報告書とか面倒然うだし、少し丈助けるとしましょうか。
「BDE‐00、少し待ってくれないかしら。先のは彼よ、友達に対して砕けた話し方になる其の一環よ。圷はフォードと仲が良いでしょう?だから貴方にも然う接している丈よ。貴方が一番フォードの傍に居てくれているんだからね。」
「私が・・・一番、っ分かりましたアーリー様、助言頂き有難う御座います。」
「僕からも、有難う御座いますアーリーさん。」
「此位、年長者の務めよ。」
何とか赦して貰えたみたいでBDE‐00はそっと包丁を仕舞った。
分かり易く大仰に圷も息を付く。
「・・・何だか安心したら御中空いちゃったな。後で何か食べに行こうかな。アーリーさんも如何ですか?」
「あら私を誘ってくれるの?嬉しいわ、行きましょうか。此処は古参同士でフォードを誘いたい所だけど、BDE‐00如何かしら。」
「フォード様は今大変忙しいので重要な案件以外拒否する様言付かっております。」
「もう釣れないわね。そんなんだからチビの儘なのよ。成長期なんだから栄養のある物を食べる可きよ。」
「神に成長期って、ははっ、其はアーリーさんもでしょ?」
「・・・物理的に貴方の頭身をもっと下げてあげても良いのよ?私の刃でね。私は此で成体なの。貴方達子供に言われたくないわ。皆して私を子供扱いするんだから。」
「あのアーリー様、相対的に見ても私の方が背が高いのは事実だと思います。」
「でも精神は子供でしょ?私はそんな貴方達に合わせてあげているのよ。失礼な事を言われても直ぐ許せる寛大さは大人の其でしょう?」
「・・・団栗の背競べ。」
「ばらしたら其の滅茶苦茶な思考回路の頭、もっと軽くなると思うけど、如何かしら。私に其の修理、一寸頼んでみない?」
「ほらほらアーリーさん、大人になって大人になって。」
「もう全く。貴方達は直ぐ然う私を揶揄うんだから。下手したら差別になるんだから然う言うの、控えた方が良いわよ。」
然う言い澄ましてみせるも、悲しい事に彼女はフォードの次に低身長の神である。何と彼女が言おうと部下の中には彼女が子供だと信じる者は少なくない。強がりにしか聞こえないのである。
ある程度言葉を交わせば其の外見には相応しくない大人びた様子とのちぐはぐさに彼女は古い神なのだと分かるだろうが、如何せん気紛れな彼女の事である。彼女に其の気が無ければ話す事も儘ならないのだ。
「其にしても何でフォードってああも小さいのかしら。だから此処も舐められるのよ。ボスが子供だから皆子供扱いされるんだわ、本当嫌になるわ。」
一番子供扱いをしているのはアーリーさんなんだけどなぁ。
と圷は心の中で丈呟く事にする。子供だとか然う言うのを一番気にしているのはアーリーだったりするのだが、彼女は其の辺り如何区切りを付けているんだろう。
理屈を捏ねて聞いたら卸されそうだし、黙っていよう。
何気に圷にとってフォードの次に付き合いが長いのはアーリーだった。
其の為彼女との付き合い方も彼は疾っくの昔に習得済みだった。
遊撃部隊隊長だし、子供の事になると切れて恐ろしい事になり勝ちな彼女だが、実際は迚も優しい神なのだと知っている。
だから恐がりな自分でも彼女を恐れず話す事が出来るんだ。
全てを諦めてしまって、世界の在り方其の物に疑問を抱いてしまった彼女は使命だとかより今が幸せである様にと願う様になった。
そんな神だからこその付き合い方なのかも知れない。こんな下らない会話も、彼女にとっては生きる糧なんだ。
屹度そんな彼女の前世は冥い。絶望の内に死んでしまった、然う言うタイプなんだろうとは気付いている。
不幸せな話を嫌う彼女だから些とも其の話題は振らないけど。
「でも小さい事は責められないんじゃないかな。其はほら・・・神になった時の事だし、アーリーさんも今更大きくはなれないんでしょう?」
「だから私の次元では此の位が平均って丈で別に大きくなりたい訳じゃないのよ。私からしたら皆化物サイズよ。ってそんな事じゃなくて、私が言っているのは頭の事よ。」
「え?其こそフォードは大人だよ。だって百年以上生きてるんだし、僕よりずっと賢いよ。研究だって僕些とも分からないし。」
「然うじゃないのよ。もっと斯う、分からないかしら。彼、物凄く屁理屈を捏ねる子供なのよ。知識があれば大人って訳じゃないでしょう?」
「んー・・・精神的な事かな。確かに研究にのめり込み過ぎて見境付かなくなる事があるけど。」
「然うね、少し近付いたと思うわ。然う言う所。」
手の甲に顎を乗せ、小さく彼女は笑う。
此は、一寸御話をして行こうって事かな。
「・・・アーリー様、若しかして今、フォード様の悪口を言おうとしていますか?アーリー様でも聞き捨てなりませんよ。」
「あらそんな包丁じゃあ私は殺せないわよ。刀の錆にして欲しいのなら幾らでも受けてあげるわよ。」
「ちょ、アーリーさん冗談でも其は、」
はらはらとした面持ちで圷は立ったり座ったりと急がし気だ。
BDE‐00は又包丁を取り出し、スカウターは絳の照準をアーリーの脳天に向けていた。
其を受けても猶、アーリーは楽し気に踏ん反り返っている。流石武神と言う事なのだろうか。怯む様子はない。
「勝てないから諦めると言う話ではないんです。私が赦せるか如何かの問題です。」
「良いわね、良い覚悟だわ。じゃあ其の決意に免じて勝負の内容を変えてあげる。ずばりフォードの子供っぽいエピソード披露大会よ。」
「っ!私にフォード様の悪口を言えと言うんですか!勝負とは言え其は・・・抑フォード様の悪口なんて一つもありません!」
「あらあら、私は別に悪口なんて言っていないわ。良く言うでしょう、普段クールな人が意外な可愛い一面を見せると好感が上がる事。えと、何て言うかしら、彼。」
「・・・ギャップ萌えって奴ですか。」
少し呆れる様な、何とも言えない表情を浮かべる圷である。
一体彼が何処でそんなワードを知ったのかは謎だが。
「其よ其。だから此処は何時も真面目なフォードの意外に齢相応な子供っぽい可愛い話をして、彼の好感を上げようと言う素敵な企画よ。フォードの事、一番近くで見ている貴方なら造作も無いでしょう?」
流石に其の摩り替えは無理があるのではないだろうか。
腕を組み、取り敢えず圷は此の成り行きを見守る事にした。
勝負だったのが何時の間にか企画になっているし、ちゃっかり自分の目的へ運んでいるし。
流石に此の露骨なやり方は・・・。
と、圷は考えるも、BDE‐00の頭はフル回転し、ある答えに行き着いた。
クール、可愛いは褒め言葉である。ギャップ萌えなんて言葉は高等過ぎて意味が分からないが、其の音の響きは迚も高尚な気がする。
つまり此はフォード様を褒める会!
・・・彼女の頭は迚も幸せで素敵な出来だったのだ。
此の勝負、私に分がある。
アーリー様も矢っ張り分かってらっしゃる。然う、私以上にフォード様を分かっている方なんていない。
此はやるしかない。寧ろ率先して自分が引き上げないと。
フォード様の、誰も知らないメモリー・・・私の記憶媒体丈に留めて置きたかったけれども、黙って腐らせるのも勿体無い。披露・・・したい。
「然うですね。・・・受けて立ちますよアーリー様!私の記憶容量の奥に眠るデータ、全て打ちまけますよ。」
先其の記憶容量の浅さを自分は見せ付けられたけど。
圷は苦笑を隠す事も出来ず、一瞬声を掛けようか悩んだ。
まぁ本神は嬉しそうなんだし、良いかな。
「然うよ!全て、全て晒してみなさい。私達の知らないフォードの姿をちゃんと見せて欲しいわ。貴方の有用性を証明するのよ。」
そしてノリノリなアーリーである。
席を立ち、声高らかで、此処最近そんな元気な姿は見ていなかった気がする。
・・・若しかして御酒、飲んじゃったかな。先迄会議だったけど。アーリーさんは可也酔い易いし、躯が水の所為で一度酔ったら深酔いするって言ってた様な。
「分かりました!では一発目行きます!」
簡単に乗せられてしまうBDE‐00も席を立って高々と拳を上げている。
なんて脆弱なセキュリティなんだろう。こんな所から多分フォードにとって一番大事な機密情報が漏れて行くんだろうな・・・。
一柱気付きつつも圷は別段止めようとはせず、熱を持って語るBDE‐00の話に黙って耳を傾けるのだった。
・・・・・
「もう昼じゃないか!研究に没頭し過ぎたな・・・。BDE‐00、七時になったら伝えてくれと頼んだんだが。」
昨日から徹霄でフォードは実験室に籠っていた。
其の様をじっとBDE‐00は見守っていたのだ。
唐突に声を掛けられ、BDE‐00はすっと背筋を伸ばす。
「はい、其の為フォード様が声を掛けられたら七時になったと御伝えしようと思っていました。」
「・・・御伝えされても困るんだが、時辰儀よりタイマーになって欲しかったんだがな。作業中でも良いから次は声を掛けてくれ。」
「分かりました。・・・所で、七時を疾っくに過ぎてますが、何か用事でもあったんですか?」
「いや今更・・・、然うだな。来週も同じになっても困るし、テレビを見たかったんだ。」
「フォード様、其でしたら録画済みです。」
テレビ、其はフォード様の唯一と言って良い娯楽。
実験を至高とし、食事も睡眠も疎かになり勝ちな彼でもたった一つ手を止める事があるのだ。其がアニメだった。
如何やらフォード様は甚く此を気に入っているらしく、勝手乍ら録画なる物をしてみたのだ。
機械の扱いなら、それなりに自信がある。
本来は勉強しようと自分用に録っていたのだけれども、フォード様が喜んでくれるならこんなに嬉しい事はない。
「因みに録画したのは七時のヒーロータイムか?八時のスーパータイムか?九時のキューティータイムなのか?」
「全てです。」
正直自分には違いが分かっていなかったので全て録って置いたのだ。
「フッ君は優秀だな。」
「あ、有難き光栄です!」
彼に褒められる事は滅多にない。だから記念すべき此の日を私はずっと記憶し続けている。
・・・・・
「・・・え、何彼の子、見た目と齢一緒なの?」
「えっと百年以上生きてるよ、うん。」
「然う・・・よね。アニメって子供が見る物じゃないの?特に先の三つって。」
「大人が見ても問題ないと思います!彼を作ってるのは大人達ですよ?」
只其のエピソードを一番に出したと言う事はBDE‐00も心の中でアニメは子供向けと認識している事になるのだが、其処を突くとショートしそうだから黙っていよう。
「確かに然うね。・・・今のは偏見だったわ。御免なさい。でも本当に其見てるの?フォードが?」
アーリーさんが疑うのも分かる。
正直僕も知らなかった。思っていたよりもヘビーな記録が晒された物だ。
まぁ屹度フォードの前世に然う言う物が無かったから此方に来て填まったってのはある事だと思う。相当貧乏だったって話丈は聞いた事があったから、神になって初めてテレビを見たとしても不思議じゃない。
其にしても絶対其の話、フォードして欲しくなかっただろうな。彼の性格上、知られたら悶死レベルの話じゃないかな。
「・・・因みに何時フォードって其見てるの?スケジュール少し教えてくれないかしら。」
「覗く気ですかアーリーさん・・・。」
其は止めた方が良い気がする。多分恐らく屹度彼は其の場で自殺してしまう。
「・・・然う言えば見た事無いです。と言うよりフォード様、録画してくれるなら研究が終わってから纏めて見ようと言っていました。私のメモリーに移しているので見る時声を掛けられると思っていたのですが・・・。」
「待って其、何時の会話なの?」
「・・・六十年位前です。」
「其、シーズンとか丸っきり終わってるよね。」
矢っ張り彼は常に忙しい様だ。六十年もアニメすら見られないとか如何して過労死しないんだろうってレベルだ。
抑神に迄なって過労死って最期は余だと思うけど。
BDE‐00も折角褒められたのに頼られていない事に六十年越しに気付き、少し悄気てしまった。
此は良くない。元々アーリーさんの企画だとは言え、こんな所で終わらせると余だ。
「えとじゃあ僕も一つありますよ。」
御免、フォード。
新たなる話題を出す事でしか圷は此の空気を如何にかする術を思い付かなかった。
「あら、旧友の話だと掘り出し物がありそうね。」
アーリーが視線を寄越し、BDE‐00も気になる様で顔を上げた。
・・・取り敢えず、彼の無駄な恥晒しにはならなそうだ。
「フォードって結構牛乳を飲んでるんだけど、一回一応ね、聞いてみた事があるんだ。其の時の事なんだけれど、」
意を決し、圷は心の中で親友に謝り乍らも口を開いた。
・・・・・
「フォード、牛乳好きなの?BDE‐00さんが作ってくれる珈琲以外其飲んでるよね。」
「何だ悪いか?」
何とも分厚い資料を読んでいる彼の机にはホットミルクが置かれていた。彼は水や御茶よりも圧倒的に其を飲んでいる。
好きで飲んでいるのなら良いけど、如何しても傍から見てると気にしているのかなって思う物だ。・・・身長を。
「知ってる?牛乳を飲んでも背は・・・、」
「其位知ってる!でも斯うでもしないと示しが付かないだろう。」
思った以上に噛み付いて来た。結構気にしていた様だ。
意外だ。彼、外見には囚われない質だと思ったのに。
若しかしたら他の塔の神達から言われた事、根に持ってるのかな。
ボスの癖にチビだって。見た目の所為で如何しても鎮魂の卒塔婆は馬鹿にされ勝ちだもんね。
だったら其を責めるのは酷だろう。此処は一つ僕の持論を披露しよう。
「其ならフォード、本当に背が伸びる物、飲んだ方が良いんじゃないの?だったらもう牛乳、飲まなくて良いでしょ?」
「・・・あるのか、そんな物。」
資料から目を放し真直ぐフォードが視線を寄越した。
すっごく食い付いてる・・・研究よりも今の彼には大事らしい。
だったら背が伸びる薬でも研究すれば良いのにね。
「考えてみてよフォード、牛とか別に背が高くないでしょ。」
「・・・ま、まぁな。でも此はカルシウムの摂取であって、」
ごにょごにょとフォードは何か理屈立てていたが、そんな小難しい事考えなくても確たる証拠があると言うのに。
時々斯うして彼は見境が無くなるから僕達がしっかりサポートしてあげないと。
別に足を引っ張っている訳じゃあない。
「だから背の高い奴を食べれば良いんだよ。ジラフとか。」
「いや其の理論はおかしいだろう。」
途端半目になって視線を外された。もう見限られてしまったのだろうか。其は余りにも早過ぎる。
「・・・あ、でも然うか。ジラフ食べたらジラフ柄になっちゃうかもね。背じゃなくて首が伸びるかも知れないし、此方は最終手段だね。」
「・・・其だと僕はもう牛柄になるだろう。」
溜息混じりで何とも投げ遣りだ。心外だなぁ、此方は結構真面目なのに。
「若しかして術で消したんじゃないの?フォード彼の何でも消せる術あったよね?」
「そんな痛い事はしないし、其、示しも何も無いじゃないか。」
又ちらと彼は視線を寄越した。其の顔は意外にも久しく見られなかった形に口が歪んでいて、
彼が笑う所を数年振りに見たなって、寧ろ僕が驚かずにはいられなかったんだ。
・・・・・
「・・・って事があったんだけど、如何かな。」
「良いじゃない。研究者なのにあんな迷信信じちゃってるなんて可愛いわね。」
「フ、フォード様って牛柄なんですか・・・そ、そんな、」
何を如何解釈したのかBDE‐00は顔面蒼白になって譫言の様に繰り返している。
「あら、まさかBDE‐00、大好きなフォード様が牛柄だった程度で揺らぐ忠誠心じゃあないんでしょう?」
アーリーさんは意地悪だ。敢えて悪乗りしているけれど、今後フォード=牛柄で彼女にインプットされたら如何するんだろう。・・・多分僕の所為ってばれるんだろうな、フォードに。
「いえ、然うじゃなくて、てっきり私、フォード様は牛になりたんだと思って、だから子牛の様に牛乳を飲んでいるのだと。其で此の前私が偶々貰った牛の着包み型のパジャマをフォード様にあげたんですが・・・。」
「あげた神が誰か気になる所だけれども。隠れBDE‐00ファンとか・・・?其にしても性癖が・・・。まぁ良いわ。で、フォードは?彼は何て言ったのよ。」
「凄く半笑いで、でも何か複雑そうな顔をされて、“選りに選って君はまさか神を皮肉る感情を獲得したのか”って。其から結局着ても貰えず、意味も分からなくて私、如何すれば良かったのか分からなかったんです。」
「其でフォードが牛柄だって事に驚いたのね。其じゃあ貴方は如何するのかしら。」
「然うですね・・・。フォード様が牛ならもう着包みなんて要りません。もっとフォード様に必要なのは本物の仲間。だから私、牛を捕って来ます。野性の牛なら前近くで見たんです。彼の子をフォード様に献上します!」
途端アーリーは大爆笑。
口元丈で笑うのも限界を迎え、机に突っ伏して肩を震わせた。
僕も如何反応して良いか分からない。良くフォードは何時も対応出来るなって感心する許りだ。
「・・・?アーリー様如何されましたか?発作ですか?」
揶揄われている事に些とも気付かないBDE‐00は自分の決意を現在進行で彼女が馬鹿にしている事すら理解出来ていない様だった。
僕の言葉は直ぐ拾ったのにアーリーさんは如何して彼所迄彼女を玩具に出来てしまうんだろう。真似るつもりは毛頭ないけれど、何かテクニックみたいなのがあるのかも知れない。
只其でもBDE‐00は其のおかしな発言のおかしさに気付かず、ポンコツ具合を露呈してしまっている。
アーリーは何とか大きく息を吸って顔を上げた。
其でも未だ笑いから解放されていない様で苦しそうに御中を摩っている。
「あーもう、凄いわ、貴方と居ると例え五十年、百年だろうと楽しそうね。フォードは良い部下を持ったわ。噫もう、神なんだからそんな笑わさないでよね、本当。」
「っ!あ、有難う御座いますアーリー様!」
ピシッとBDE‐00は背筋を伸ばして目を輝かせてるけど、褒めていないって言う可きなんだろうか。
其とも若しかしたらフォードも其処を見込んで彼女を置いているとか・・・いや、彼の性格だと只疲れそうだけれど。
あ、でも一つ丈訂正しないといけないよね。じゃないとフォードが疲れるだろうし。
「でもBDE‐00、牛をあげるのは一寸控えた方が良いと思うよ。ほら、フォード今忙しいからね。」
近くに居るらしい牛神さんに迷惑も掛けられないし。
「何でよ良いじゃない。“フォード様、牛を捕って来るので休暇を下さい。”って大真面目に此の子が言ったら彼、どんな顔をするか見てみたくないの?」
「・・・其が実現しそうだから止めたんですよ。」
「然う・・・ですね。確かに。では牛は又の機会にします。」
「其の時は声を掛けて頂戴。私も手伝うわよ。」
「アーリー様、心強いです。宜しく御願いします。」
本当何時になったら彼女は揶揄われているって気付いてくれるんだろう。大好きなアーリー様だからもう疑うって言う選択肢はプログラムから排除されているのかな。
此がフォードに美味しい牛肉を食べさせてあげようとかって話なら未だ理解出来たけど、フォードの仲間にする為に牛を生け捕りにするって話なんだから一体何が如何して斯うなったのか、僕にはもう分からないよ。
差別する訳じゃあないけれど、同僚が牛ってのも一寸嫌だな。
「あ、然うだわ。飲み物って言ったら私も一つあるわ、フォードの話。言い出しっ屁なんだし、私丈喋らないのも不公平よね。」
単に話したい丈なんだろうな、と気付きつつももう圷も口を出さない。
「私も気になります。教えて下さい。」
最早BDE‐00もすっかりノリノリだ。
此はもう只の下らない雑談なんだな、と圷は苦笑し乍らも、別に軌道修正する様な話でも元々ないんだし、と完全に黙認したのだった。
・・・・・
「偶には珈琲も良いかしら。あらフォード良い所に来たわね。折角だから私が淹れてあげるわよ?彼の子に許り作らせても悪いでしょう?私水の感覚が鋭いから珈琲淹れるのは得意なのよ。」
適当に食堂の棚を見遣っていると珍しい事にフォードが通り掛かったのだ。
彼がこんな所迄降りて来るのは珍しい。何時もは根っからの引き籠りなのに。
まぁ何かの実験の序ででしょうけど、珈琲の一杯位付き合っても良いじゃない。
「・・・然うだな、頼む。」
フォードが足を止め、此方へやって来る。
其の間に手際良くアーリーは準備を終え、見る間に珈琲の良い香りが漂い始めた。
「さてと、ブラックで良かったわよね、はい。」
「噫、有難う。」
アーリーからカップを渡され、フォードは受け取ると即座に席を立った。
珈琲位緩り飲めば良いのに。
アーリーが珈琲を一口含んでいると如何やらフォードは直ぐ上へ上がらず、冷蔵庫を漁っている様である。
若しかして間食だろうか・・・。
何の気なしに見ていると其の手には瓶が握られていた。
其の中の液体は・・・橙色である。
彼は、えっとあれ・・・彼は如何見ても・・・オレンジジュース・・・?
珈琲の後に飲むのかしら、其にしても変な組み合わせ・・・。
まぁ神其々よね、私には関係ないわ。
其の儘自分は緩りと珈琲を味わった。
そしてフォードは珈琲の中に其のオレンジジュースを投入した。
・・・は?
え、あれ、私未だ寝ているのかしら。
いやでも如何見ても珈琲の中にオレンジを・・・、
も、若しかしたらフォードの方が寝惚けているのかも、研究で最近忙しいんだし、
思わず手を止めて事の顛末を見届ける。
・・・此の緊張感、まるで戦場で敵兵の尾行をしている様だわ。
只、何て事はなくフォードは其の儘オレンジ入り珈琲のカップに口を付けた。
そして、
「うん、美味しい。確かに良い香りだ。」
「其珈琲じゃないからっ!!」
思わず突っ込んでしまった。
こんなの柄じゃないのに・・・でも、だって、
そんなナチュラルに折角私の入れた珈琲なのにあんな物突っ込んじゃあ、
此処からだって分かる。珈琲となった水と、オレンジジュースが混ざって此の世の物とは思えない断末魔を水が上げている。其の珈琲は苦しんでいるの!
「珈琲は珈琲だろう。比率は7:3だ。七割珈琲なのだから名称も珈琲で問題ない。」
「いやだから其、三割は異物が入ってるのよ。え、貴方何時も然うやって飲んでたの?あの、一寸在り得ないと言うか・・・水的に。」
「其は偏見だろう。一度味わえば分かる。此の酸味と微かな甘み、鼻を突く柑橘の香はリラックス効果も期待出来て・・・、」
「はいはい分かったから。其の気持の悪い汚水さっさと持って上がりなさい。次からはもうBDE‐00にでも頼みなさいよ。」
「酷い言われ様だな。此は元々彼女が作った物だぞ。まぁでも然うだな。此なら作れそうだし今後も頼むか。」
然う言いつつ其の汚水を二、三口啜るとフォードは部屋を出て行った。
初めて見た、あんな毒物・・・。
水を苦しめて迄作った物が美味しい訳ないわ。いや、若しかしたら世界の何処かに然う言った物が若しもの若しもで存在しているのかも知れないけれども。
少なくとも私が彼へ淹れた珈琲は珈琲として飲んで欲しがっていた。彼の水には本当に悪い事をしてしまったわ。
今更悔やんでも仕方ない。もう二度と彼にコーヒーを淹れないと言う教訓に生かそう。
アーリーは一口自慢の珈琲を啜り、一つ息を付いたのだった。
・・・・・
「いや、彼は今でも忘れられないわ・・・。」
「・・・あれ、でも其、フォードがオレンジジュース好きって丈で子供の証明じゃない気がするけど。」
「あんな水の悲鳴も聞こえないだなんて子供以外に在り得ないわ。感性が、共感性が足りないのよ。」
水の悲鳴なんてのは屹度アーリーさんしか知らないと思うけど。
でもそんなはっきりフォードの悪口を言っちゃうとBDE‐00が何て言うか・・・。
ちらと彼女へ視線を寄越すと如何言う訳か彼女は又顔面蒼白になってわなわなと震えていた。
アーリーが青いのは屹度水の悲鳴を思い出したからなんだろうけど、何で彼女も?
「ど、如何してアーリー様が私の特別ブレンドを知っているのですか・・・。」
「え゛、何彼の子、未だ彼の下手物飲んでたの・・・。と言うより貴方が其、ブレンドしてたの?いや、ブレンドって何よ。」
「はい、一度間違えて作ってしまったのですが、其が却って気に入られてしまって、命じられてからはずっと作っています。最近は新鮮さを出そうとオレンジジュースから生のオレンジを搾った物へ変えたんです。其がまさか知られていたなんて、」
あ、BDE‐00が何時も作ってたのって其だったんだ・・・。こんな所で知ってしまうなんて何だか申し訳ない。
然も僕でも作れるレベルだなんて。
「噫其でオレンジを切る為に包丁を持っていたのね。でも私あんな下手物精神的に作れないし、レシピが知られた所で問題ないわよ。」
「アーリー様でも作れないのですか?」
「私にだって出来ない事位あるわよ。近付くのも御免だわ。」
余っ程アーリーさんにとってブレンド珈琲は醜悪な物らしい。
「っ私頑張ります!アーリー様の分も此に込めて作ります!」
「あら然う頑張ってね。」
実に冷淡な返しだった。
「あら、もう結構な時間じゃないの。そろそろ行きましょうか。・・・然うね、BDE‐00は如何かしら、先の続きしたくないかしら。二回戦と洒落込みましょうよ。貴方の話、もっと聞いてみたいわ。」
「是非、私も御一緒したいです。行きましょう。」
随分と威勢良くBDE‐00は立ち上がった。
未だ未だ秘蔵のデータが有り余っているのだろう。話したくて仕方ない様だ。悲しい事に彼女は他者の秘密を話す楽しみを覚えてしまった様だ。
「さて、圷、随分御待たせしちゃって御免なさい。早速行きましょうか。」
「然うですね、BDE‐00さんも来られるなんて、一寸奮発して良い所行きますか。」
一同は席を立ち、会議室を後にする。
不幸と後悔で奇しくも繋がった僕達だけど、廻り合った先が此処で良かったと、今は思っている。
何だ彼だで皆フォードの事を見て、気に掛けてるのだ。
其は、此の数十年で築いた彼との信頼の証だと思った。
・・・・・
「珈琲・・・遅いな。」
自室で一柱フォードは走らせていたペンを止める。そして一つ大きな嚏をした。
先から此の調子だ。・・・風邪か?
自分でも知らない内に無理をしてしまったのだろうか。
「・・・仕方ないな。今日位寝るか。」
一つ溜息を付き、フォードは部屋の照明を切るのだった。
吃驚する位明るい話でした。けれども自分は割と好きですね。
斯う言う日常編、大好物です。斯う言う日々があってこそ極上の悲劇が生まれるという物です。
リア充が爆発するよりも細やかな幸せが壊れる方が涕ける物です。
此の話如何しても入れたかったんです。本当にもっと早く入れたかった。
前何処かで書いた気がするんですが、本当の悪人は然ういないってのが此の物語の肝だったりします。正義の敵は別の正義と言う奴です。
だから次元龍屋の明確な敵と言うポジションに彼等はいますが、彼等も彼等で憎めない子許りで、実際良い奴も多くて、只立場が違うからだと言う丈なんです。
だから皆の事、嫌いにならないであげてね。
と言う話でした。斯う言うの、もっと書きたいなぁ・・・。
次もまぁ短めの話です。又近々見えるかも知れません。
其では皆さんも穏やかな日々を過ごせます様、御縁がある事、御祈りしています。




