23次元 音を象る言ノ葉の系譜
はいどうも。・・・え!?平成30年?2018年?如何して年内?如何して年内投稿出来たんだ!?
い、今起きた事を有りの儘話すぜ。確かに自分は一日一頁書くって決めていた。確かに其は守ったぜ、でも前投稿した時は未だ一頁も書けてなかっただろ?なのに如何してこんな、此は精神と時の部屋とか、やる気とか奇跡とかそんなちゃちなもんじゃねぇ、只単純に短い話だったからだ!
・・・と、ネタパクるならちゃんとパクッてって感じですが、兎に角、全く予想だにしてなかった年内投稿です。12月28日に書き終わり、あれ、此間に合うんじゃね?って事で少し頑張ってみました。
仕事はあってもプライベートな予定が無い御蔭で計画が立てられたと言う訳ですね!寂しくなんかないですよ、今年最後にこんな達成感が得られるなんて最高じゃないですか!
と、長々な語りは置いといて、今回は又もや迫間の話。セレ、成長期の巻です。トロッコからハイパーループになった位の勢いで話が進・・・めば良いなぁ。寧ろ速過ぎて止まって見えるって奴にならないかなぁなんて。
兎に角加速したのは確かです。では一体如何成長するのか、どうぞ御楽しみに。
繋ぐ言ノ葉幾数多
綴る願いを形にすれば
言ノ葉を忘るるな
其は彼の地への轍をなぞる
願わくば、新たな楔を穿て
変化を望むのも疎むのも言ノ葉の性と知れ
・・・・・
「今帰った。」
「フー此で彼の旨い飯とフッカフカベッドとは御然らばかぁ。」
「そんな残りたいなら別に良かったのに皐牙。」
「ジョーダン、骨なんて趣味わりぃし、そんな事したら店主にビームで城毎消されそうだし。」
悪戯っぽく皐牙は然う笑った。未だそんな冗談が言えるとは。
「いやあんな歴史的価値がある物なら流石の私も然う壊しはしないぞ?やるなら御前の居る一室丈を波紋で見付けて吹っ飛ばす位だ。」
「ふむ、流石セレなのだ。」
「あ、矢っ張やられるんだ。」
―もう火傷は・・・大丈夫然うやね。分かっててもホント跡にならんで良かったわ。―
「まぁ其は・・・心配してくれて有難うな、ソル。」
賑やかに談笑し乍ら一同は店へ帰って来た。
だがピンとセレの耳が立ち、ちらとリビングを見遣る。
「・・・人間・・・か?」
其処には一柱の先客が居た。
齢は八歳位だろうか。皓の長髪は其の先を編んでおり、布を十分に余らせたゆったりとした服を纏っている。
何処か間の抜けている様な顔で所在無さ気にリビングの彼方此方を見ていた様だ。
少年・・・なのだろうか。でも中性的で今一良く分からない。
彼はセレの声にピクリと反応し、ちらと彼女を見遣った。
「ッヒッ!!」
途端短い悲鳴を上げて固まってしまう。
・・・いけない癖だ。如何も又睨んでしまった様だ。
晒越しでも分かるなんて、どんな殺気立った目なんだ。六つもあるから余計然う見えるのだろうか。
其に良く良く見ると彼は自分の知る普通の人間とは違っていた。
真ん丸に開いた大きな瑠璃玉みたいな瞳の下方、頬に掛けて楔の様な模様がある。其は如何も手足にもある様だ。
そして服の一部と思っていたのだが、如何やら大きな背鰭と尾鰭も生えている様だ。
透明な水が流れる様な鰭で、少し揺れる丈で様々な曦を反射する。
・・・何よりびびった拍子に彼の触角・・・なのだろうか。髪に編み込まれて分からなかったが、其が四本出てしまっている。先が涙型になって淡く光っている様は何処となく提灯鮟鱇を連想させた。
・・・若しかして深海魚人間・・・?深海魚神?
只余りまじまじと見ていて此以上恐がらせてもいけないので視線丈逸らした。
対して少年は可也驚いた様で慌ててソファーの後ろで丸くなってしまった。只例の触角が食み出してしまい、ピョコピョコ揺れて光っている所為で全く隠れられていない。
「何だ此奴。何か魚っぽい神だな。」
セレの脇を抜けて皐牙がソファーへ回り込む。
少年の前で中腰になると繁々と彼を見遣った。
・・・本当に彼は遠慮と言う言葉が無いな。
相変わらず少年は怯えて丸くなった儘だ。動けずにいる彼を見て皐牙は意地の悪い笑みを浮かべた。
「オイ黙ってると焼き魚にして喰っちまうぞ。」
「え、あ、嫌っ!あ、あのあの、スー!スースーッ、スーッ!!」
触角を大きく揺らして少年は慌てて起き上がる。
其の必死な様が面白かったのか皐牙は腹を抱えて嗤い始めた。
「っ何だよ其のスーっての!一体何処から迷い込んで来たのか知らねぇけど、早く帰った方が良いゼ、ボーズ。此処はおっかねぇ奴が一杯居る店だからな。」
「お、おお、おっかな、ないのって、まま、ま、ま・・・お、御兄さん・・・も?」
「・・・ガオー!!」
「ッヒィ!!」
皐牙が両手を広げて急に立ち上がると其にすら驚いた少年は腰が抜けて動けなくなる。只々わなわなと震える丈だった。
こんな子供染みた真似でもそんなリアクションを取ってくれるので皐牙は大燥ぎだ。若しかしたら此処最近苛められ続けた反動が出ているのかも知れない。
―こらカーディ、そんな小さい子苛めちゃあかんやろ!―
「じゃあ御前もオレの事苛めんなよな。」
―あんたは只の馬鹿だから叱っとる丈よ!―
「バッ、オレの事馬鹿呼ばわりしやがったな!」
止めに来た筈なのに今度は其のソルとの火種が点いて皐牙は元気一杯だった。まるで発情期の猫みたいだ。
一方ハリーは少年の触角が随分気になる様で傍で見ている丈にしているが、視線は忙しなく其の光る先端を見詰めている。彼が触ろう物なら誤って引っこ抜き兼ねないので其が賢明だ。
しかし、帰るなり随分カオスな状況になってしまった。そんな空気を作るのは得意だが、宥めるのは苦手だ。と言うか面倒臭い。
如何にか上手く纏まらないかなぁと静観しているとガルダが部屋から出て来た。
「な、何かすげー賑やかだけど・・・あ、皆帰ったのか、御帰りー。」
「はわわっ!!が、ガルガルガルダしゃん!!た、たしゅけて、お、おっかなないの、いい、一杯!」
途端少年は半涕きでガルダに抱き付いた。結構なアタックだったらしく、彼の背がくの字に曲がる。
「えっとオレ別にそんな獣の鳴き声みたいな名前じゃないけど、此は・・・俺が仲介した方が良い感じか?」
「是非頼む。私も御手上げだったんだ。」
「ハハッ、御前が然うなるなんて余っ程だなぁ。」
可笑しそうに笑ってガルダは少年の両肩を掴んで引き剥がした。
そしてくるりと半回転させて立たせる。
「えーっと、ほら此処、皆仕事行っちまって無神になる事があるだろ?其の間の店の受付とかをして貰おうと思ってさ。」
「まさかそんな乳臭ぇ餓鬼雇ったのか?」
「いやまぁ・・・成り行きと言うか、拾ったと言うか。まぁ・・・付いて来たのかな。」
途端、自分は小さな目眩に襲われた。
誰かとだぶる気がする。・・・噫彼奴だ、ナレーだ。
成り行きで拾った・・・其は彼奴が良く口にする言葉だった。
此処であんな奴の事懐い出すなんて。
・・・今となっては彼奴の言っていた事は、何となく分かる。
でも其は矢張り夢物語で、自分の世界では有り得ないルールで。
赦されざる事で、自分の・・・敵だった。
若し彼奴との出会いが全て無かった事になって、再び自分の前に現れよう物なら、
屹度・・・殺してしまうな、彼奴の事。今の自分なら。
自分の視線が下がった事に気付いてか彼の少年が此方を見遣ったが、自分は無視を決め込んだ。
―・・・御前は彼奴の事が嫌いなのか。―
久し振りに丗闇の声が頭に響いた。
―嫌いだなぁ。出来れば二度と会いたくない。勝手にくたばって欲しい物だな。丗闇は?違うのか?―
―我は・・・嫌いだけれども、憎めない奴だと・・・思った。―
僅かに目を張った。まさかまさかの回答だ。
―意外だな。あんな煩い奴は嫌いだと思ったのに。―
―・・・我も、良く・・・分からない。―
丗闇にしては珍しくそんな歯切れ悪く言って其限口を閉ざしてしまった。
嫌いだけど憎めない、か、矢っ張り私と違うなぁ・・・。
そんな風に思いを馳せていると大分ガルダの説明を聞き逃してしまった。
一応要所は聞けている。オンルイオ国へ買物に行っていたガルダが偶々路地裏に居た少年を見付けて、気紛れでパンをあげたら付いて来た、そんな具合だった。見た目以上に齢は取っているから御留守番とか、依頼を代わりに受けたりは出来る、と言う事らしいが・・・、
「ス、ススス・・・スッ、スーって、い、言います。よ、宜しく、お、おねおね、おねが、しますっ!」
少年ことスーは頭を下げた。其も何処かぎこちない。
・・・此で接客業なんて務まるのだろうか。
まぁガルダの神選なんだし、兎や角は言わないけれども。良くパン一つで引き受けた物だ。
「・・・と、言う訳なんだけど、えと、セレ良いかな。勝手に決めちゃったんだけど。」
「別に良いんじゃないか?神手が多いに越した事はないだろう。私は・・・一寸休んでいる。」
「あ、然うか。良かった。じゃあ御疲れ、セレ。」
軽く手を振ってセレは自室へ入ってしまった。
・・・一寸機嫌悪かった様な。何時もなら彼是聞いていただろうに。
まぁ優柔不断とか、もどかしいのやもたつくっての、セレ嫌いだからなぁ。良く俺も怒られていたっけ。迷っていたら死ぬぞって叱られていた。
セレが部屋から出ると明らかにスーも安心した様だった。
連れては来たけど、相性もあるし、後でもう少し聞いてみよう。
仲間なのにこんなにビビられちゃあそりゃあ嫌だもんな・・・考えないと。
「ふーん、じゃあオレに後輩が出来たんだな!」
「お・・・おおおっかないか、か神様が・・・ぼ、僕のせ、先輩・・・。」
「・・・ガオー!!」
「ッヒィ!!」
「・・・いやそんな意地悪するなよ?先輩って呼ばれなくなるぞ。」
「い、意地悪な、なな、に、兄さん・・・。」
ガルダの足に隠れた儘スーがそっと呟く。
彼の傍では少し安心して喋られる様だ。
「う゛、わ、悪かったな。じゃあもう脅かさねぇからオレに先輩させてくれよ?そんな大した事教えねぇだろ。」
「いえ其は聞き捨て出来ないわね!」
突然一つの扉が真横に吹っ飛ぶ。
其処に現れたのはロードだった。
こ、此奴まさか先輩の権利争いをする為に扉を破壊したのか。家主の俺の目の前で。
修繕費の事で頭が一杯になったガルダの足元でスーは分かり易い位怯え、慌てていた。
折角おっかない兄さんと少し打ち解けそうな気がしたのに、もっとおっかない存在がやって来たのだ。心穏やかには済まないだろう。
・・・一応、ロードとは顔は合わせている。
だがあんな如何にも聖女っぽい神がまさか扉を吹っ飛ばして登場するなんて。
取り敢えず大きな音に驚いたスーは其処に居たのが彼女だったが為に余計取り乱してしまった様だ。
未だ彼には扉が飛んで行った訳迄考えが至らないのだろう。
まさか其が彼女の細腕から繰り出されたパワーだなんて、思いもしないだろう。
「其は最初に私が宣言したの。誰にも譲る気はないわ。」
「っぐ・・・筋肉天使相手じゃ分が悪いだろ・・・。」
打ち捨てられている扉を見遣り、皐牙は一つ生唾を呑む。同じ目には遭いたくない。
―しゃーないよカーディ。ま、先輩には変わりないんやし、友達にはなってやったら?―
「友達・・・か。今更、だけど。まぁ良いゼ。今回は其で妥協してやる。」
「然う、物分かりが良くて良かったわ。さ、スー、早速御姉さんと御話しましょう。」
「・・・お、おお、おっかない、お、御姉しゃ、さん・・・。」
終に彼も一つの解を導き出した様である。途端ロードは目を見開いた。
「ど、如何して貴方も私をそんな怯えた目で見るの!?」
「数秒前威圧的登場した事もう忘れるのかよ此のネーサン・・・。」
「・・・仕方ないわね。恥ずかしがり屋のスーは追々親睦を深めるとして、然う言えば皆帰って来てたのね。セレは・・・部屋、かしら。」
―そやで。色々あって疲れたんかも・・・。―
伏し目勝ちなソルの様子にロードは少し丈思案する。
此は・・・何かあったみたいだけれども。
「グリス、差し出がましい様だけど、此の本を貸してあげるわ。貴方を笑顔にしてくれる素敵な本よ。」
―ん・・・此、何なんや?・・・恋愛&変態?―
何処からともなくロードが出したのは例の石竹色の書物だった。
「然う『恋愛&変態 十巻〜コイゴコロは積乱雲の如し〜』よ。」
―・・・あ、あの、励ましとるんか好意なんか揶揄っとるんか突っ込み待ちなんか分からんのんやけど・・・。―
「可愛いグリスの笑顔が見たいって丈よ。大丈夫、私は何時でも貴方の仲間よって、其の本を通して教えてあげたい丈なの。」
「本当に其のタイトルの本で其、伝わるのか?」
じりじりと果てには触れ合いそうな程ロードがソルに躙り寄る。
確かに此はおっかないかも・・・。
良くない空気を背に感じ、ソルは愛想笑いを返す事にした。
―あ、有難、うん。今度又読ませてや。うち今用事あって、傷付けてもいけんし。―
「然う、じゃあ何時でも、何時でも!待ってるから。・・・じゃあ私もセレに話があるし、失礼するわね。」
優しく咲ってロードはセレの部屋へ入って行った。
ロードもいなくなり、スーは肩の力を抜いた。
もう彼の二柱が余りにもおっかなかった所為で他は慣れて来てしまった感がある。
相変わらずガルダの足に隠れ乍らもスーの触角はピコピコ動いていた。
「・・・なぁ、御前ってマジで魚なのか?」
「へ、あ、い、いや、魚じゃあ・・・な、ない・・・様な、一寸ち、違うけど。お、泳ぐのに、苦手、だし。」
種族の事を彼是聞くのは大分無礼に当たったりするのだけれども、皐牙は何処吹く風でガツガツと新神に聞いて来た。
何だ彼だで矢張り後輩は興味があるみたいだ。
半目になってソルも見ていたが、スーも嫌そうにはしていなかったので黙認する事にした。
ハリーはセレが部屋へ行ってしまったので少し悄気ていた様だが、彼も新神が気になる様で少しずつ近付いて来た。
「はぁ!?そんな立派な鰭が付いてるのに?浪属性じゃないのか?」
「属性って、魔法のここ、事、だよね・・・?全然其もつ、使えなくて、うぅ。」
「ふーん、魔力が無い次元っつーことか。」
―カーディ、聞くんなら自分の事も話さんと。多分深海魚みたいな種なんやない?海底でじっとしている様な。―
皐牙に丈テレパシーを送る。相方の不始末は付けないといけないだろう。自分から話す可きだろうか。
堂々と言える種でもないんだけど・・・面と向かって魚って言われるより、鳥だって言う方が軽いだろう。
―うち、先祖が鵄と翡翠の魔物なんよ。でも羽根も余りないし、飛べんのやけどね。―
「っひぃ!!な、なっ、何此の、此の声!!ゆ、ゆゆ、ゆ、ゆう、幽霊、とか・・・。」
「おいおい此じゃあ話進まねぇぞ。」
ちらとソルを見遣ると、勇気を出したのに幽霊呼ばわりされたのが大分効いたらしく、少し悄気てしまっていた。
此処は、真面目なオレが一肌脱ぐ必要がありそうだな。
「オイ落ち着けって、先のは其のネーちゃんの声だって。テレパシーって知らねぇのか?」
「い、今の、が、テ、テテ、テレパ、シー?初めて、聞いた。だ、誰も僕に話し掛けたり・・・なんて、し、しし、しなかったし、」
「じゃあ練習するこったな。後、オレは此処とか、鱗生えてるだろ?此処に居るのは変わりもんばっかなんだからそんなオドオドすんなよ。意気地なしな後輩ならオレ要らねぇゼ。」
皐牙がグローブを外し、絳と黔の甲を見せ付ける。
唾を飲んでスーは一つ頷いた。
「何より店主なんてすげぇぞ。羽も尻尾も爪もあるし、目も一杯あるんだろ?確か。ビームも吐けるし、其と比べたら深海魚なんて大した事ねぇだろ。」
「う、あ・・・や、矢っ張り、あ、彼の神、おっ、お・・・おっかない神・・・なんだ。」
途端震え出したスーに皐牙は一つ溜息を付く。
揶揄う分には楽しいけど、オレだってうじうじした奴は嫌いだ。はっきりしろってど突きたくなる。
「確かに店主は勁いよ。でも、別に御前に何もしてねぇだろ。仲間は護る奴なんだから、そんなおっかない奴と一緒なのは寧ろ心強いだろうが。」
―カーディ・・・零星が降る日丈良い事言うんやね。―
「う、うるせぇ、俺は何時でもかっこいいし、真面目で良い奴だぞ!先輩がちゃんと教えるのは当然だろ。」
「自分で言ったら台無しなのだ。」
少し頬を掻いて皐牙は外方を向いてしまった。
スーは上目遣いに皐牙を見遣り、小さく一つ頷いたのだった。
・・・・・
「セレ、一寸良いか?」
「ん、ガルダか。如何かしたか?」
ベッドに腰掛けていたセレがちらと此方を見遣った。
自分の部屋なのに晒をした儘だ。未だ、目については慣れていないのかも知れない。
然う言えば先入った筈のロードが居ないな・・・。
スーが皐牙達と打解け然うだったのでそっと見守る程度に留めていたけれど、ついぼーっとしてしまったのか結構時間が経っていた様だ。
「えと、若し良かったら一寸散歩でも如何かなってさ。」
「散歩って・・・今昼間だぞ?」
昔のセレに一寸戻ったな。
何となく懐かしさを覚える言葉だ。彼女は殆ど昼夜逆転の生活を送っていた。昼は寝る時間なのだ。
・・・けど、此処の所昼間も起きてるし、一体何時寝てるんだろ。躯壊さなきゃ良いけど。
「いや、行きたい所とかあったらさ、一緒に如何かなって。俺少しなら道案内出来るし、外歩きたい気分なんだよ。」
まぁ最近のセレの干渉力と言うか、如何も其が高過ぎて躯が勝手に目的地に向かっちゃうみたいだけどさ。
然う、此は只の・・・気分転換だ。
「然う・・・だな。」
少し考える素振りを見せたが、直ぐ彼女は顔を上げた。
「図書館、然う言うのが次元の迫間にあれば行ってみたいんだが。少し調べたい事があるんだ。」
「へぇ、勉強家だなぁ・・・。良いぜ。俺其処なら案内出来るし、直ぐ行くか?」
「噫、私も丁度薫風に当たりたかったし、行こうか。」
軽く伸びを一つして直ぐセレも立ち上がった。
・・・・・
「今日も良い天気だなぁ、あ、フードとか大丈夫か?」
「噫、少し曇っているし、問題ない。」
ちらと見遣ったセレは少し丈フードの端を引っ張った。
斯うして二柱並んで歩くのは何だか新鮮な気がした。
昔は霄しか出来なかったしな。
「前の次元は上手く行ったか?」
「然うだな。龍にも沢山会えたし、一応は。・・・まぁ皐牙達に叱られてしまったがな。」
じっとセレは其の見えない瞳で俺を見ていた。
そしてふっと苦笑を浮かべる。
「・・・私なんかに、気を遣わなくても良いぞ、ガルダ。」
「え、気なんて、」
「別に、今は二柱なんだ。言いたい事があれば言ってくれて構わない。短い付き合いじゃないんだ。・・・前然う言ってくれただろう?」
「・・・じゃあ、単刀直入に。」
彼女の目からは、逃れられない気がした。
俺の言いたい事、もう全て彼女は分かっていて、只俺が其を口にすると言う意思を、求めて、確認している丈。
「スーの事なんだけどさ、矢っ張急に決めちゃったし、別に何処か優れてて、向いてるなって思って連れて来た訳じゃないんだ。だから・・・良く考えて、必要ないって思ったら、辞めさせても、俺は全然、」
何時もの様に黙って彼女は聞いてくれる。
幽風がそんな彼女の髪を玩んだ。
「其に俺、一寸考えなさ過ぎたと思ってさ。矢っ張・・・嫌だよな。他神がどんどん増えて、剰え住まわせちゃってさ、希望があって入るなら良いけどさ、飽く迄も、俺達は隠れなきゃいけない存在だ。大っぴらにし過ぎたら良くないよな。」
「だから、気を遣わなくて良いって言ってるじゃないか。」
苦笑を湛えた儘、でも先より酷く苦しそうで。
「其の儘、言ってくれれば良いんだよ。私はガルダを板挟みになんてしたくない。そんな辛い役目、背負わせたくないよ。そんな想いをさせる位なら私から去るよ。」
何を・・・言ってるんだ。
「っ行かないでくれよっ!そんな急に、冗談でも言って良い事といけない事があるだろ。俺は・・・そんな話がしたいんじゃなくて、」
つい彼女のオーバーコートの裾を掴んでしまう。
そんな俺を見て、彼女は何て思うんだろう。昔から変わらず、引き止める丈の俺に。
「然うだな。今は未だ、何処にも行かない。約束は護る。其に私も・・・しなければいけない事がある。其が終わる迄は。」
其の声音に俺は悪寒が走った。
如何してだか、急に彼女が遠くへ行ってしまった様な気がした。
「でも・・・然うだな。先私が思ったのは・・・線引きが、難しいなって思ったんだ。」
線引き・・・嫌な言葉だ。
「店の皆を護る責が私にはある。其は私が巻き込んだからだ。でも・・・屹度、此が私が化物の訳なんだろうけれど、本当に大きな危機が起きたとして、自分が死んでしまう可能性が出てしまえば、私は・・・仲間を見捨てる。然う言う奴だ。誓った所で、願った所で、本質は変わらない。私は、私が一番大事だ。全てに替えても。」
其は意外な言葉だった。
何時もの彼女と真逆の言葉だ。自分が一番大事だなんて、其は当たり前の事だ。そして其の当たり前が出来ないのが彼女だと思っていたのに。
何時も自己犠牲が過ぎて、自分が死ねば良いだなんて冥い憖いを抱えている物だと。
・・・否、然うか。憖いだ。セレは、自分の憖いをずっと抱いている。
其を掲げて、譲らないと言う事は、延いては自分も護る事だ。
憖いも又、自分なのだから。何時死ぬのか、諦めるのかは自分で決める。
「自分が大切なのは当たり前だろ。其は仕方ない所があるんじゃないか?」
「其は正しくて、でも・・・本当じゃないんだ。・・・然うだな。如何言えば良いのかな。私が仲間を護るのも、抑其が自分の為だからだ。自分を壊さない様、必要な物は護る。でも然うして行くと、昔は・・・ガルダ丈だったのに、今はこんなにも増え過ぎた。もう悲しみたくないからって、私は皆を傷付ける者すら殺そうとするだろう。近付く者を敵と思うだろう。大切の基準が、曖昧になって来たんだ。」
一つ息を付き、セレは旻を見上げた。フードを又被る。
「何処迄が私の大切な物なのか、其の線引きは。そして私は未だ、ちゃんと其を理解しているか、正しく線引きが出来ているのか、自分ですら分からなくなる。」
セレは又視線を此方へ寄越して、優しく咲った。
果てしない切なさと寂しさを、俺は其の裏で見た気がした。
「話し過ぎたな。いけないな。ガルダ相手だとつい話してしまう。」
途端自嘲気味に笑って、先が透明に光って垂れる前髪を鬱陶し気に掻き上げた。
「今のは忘れてくれ。・・・いや、其は難しいか。じゃあ何も、言わなくて良いから。おかしいなら、間違っているならちゃんと御前の言葉で教えて欲しい。でも其は御前の中でちゃんと結論が出てからで良いから。だからそんな顔、しないでくれ。」
言葉を失って固まってしまっていた俺の肩を叩き、セレは少し足を速めた。
間違っている・・・間違っているんだ、全て。
でも俺は何て言えば良いのか分からなかった。彼女に掛ける可き言葉が見付からない。
「・・・話が逸れてしまったな。スーの事は実際神手が少ないんだし、私は別に構わないよ。只、後はスー次第だ。彼奴が辞めたいと言えば其迄だし、だから若し良ければガルダの方から聞いて欲しい。」
「分かった。・・・然うする。」
今回も、何も・・・言えない儘。
俺達は只並んで歩いて行った。
・・・・・
「・・・あ、見えて来た。」
暫く歩いていたが、ガルダが何か見付けて立ち止まった。
・・・でも、一体何が見えて来たのだろう。
ガルダは目視の筈。自分は波紋なのだからずっと前から此処の景色は見えている。
だが、何処にも図書館らしき物は見えない。ガルダが可也変わった所と言ってたが、抑建物が無いのだ。
此処は・・・只の高原だ。碧樹も無く、足元の華が揺れる丈。
「ガルダ、何が見えるんだ?若しかして暗視の術とかが掛かっているのか?」
「え?いや、ほら彼だよ。」
ガルダが高原の先を指差す。
・・・いや確かに其処には何かある。でも彼は流石に店じゃない。
其処にあるのは全長5mはあろうかと言う巨大な毛玉だった。
真皓い毛玉はころころ転がる丈で、如何見てもモファンターである自分を捕らえる罠にしか見えない。
だ、騙されないぞ。あんな見え見えの罠。でも下劣な罠だ。あんなモフモフを餌に使うなんて、触りた・・・っ駄目だ!捕まるぞ!
警戒も顕にじりじり近付き乍ら見ているとガルダが時空の穴から小さな袋を取り出した。
麻袋の様だが、中に何か入っている様で膨らんでいる。
其を掲げて一度ガルダは振ってみた。
カサッと何かが擦れる様な音がする丈だ。しかし例の毛玉はピタリと動きを止めた。
そして此方に向けて全速力で転がって来る。
「お、おいガルダ。モ、モフモフが来るぞ。」
「そ、御前の大好きなモフモフだな。行き成り抱き付くなよ?」
興奮気味に袖を突くセレに一つ苦笑いを返す。
其の儘袋を掲げていると目前迄やって来た毛玉からにゅっと大きな平べったい嘴が出て来た。
袋が気になるのか近付いて匂を嗅ぐ様に微かに嘴が開いたり閉じたりしている。
ガルダは直ぐに袋を開けた。中にはぎっしりと干した枸杞の実が入っていた。
其の一粒を取り出し投げると、器用にも嘴は其を銜えて呑み込んだ。
じっくり味わっているのか嘴が震えている。
ガルダが眴せをしたのでそっとセレは其の毛玉に近付いてみた。
毛玉だと思っていた其は巨大な鳥の様だった。否、鳥と言うよりかは鴨嘴に近い。
鳥の足の様な節榑立った足が四本食み出している。
小さな尾が旻を指差す様に生えており、小さな翼の様なのも見える。
とすると此の鴨嘴は転けた様な形で倒れているのだろうか。御中を下にし、手足は地面に付いていないのだ。
如何も御中の羽毛が余りにもモフモフ過ぎて躯の構造が分からない。
良く良く見ていると閉じられていた大きな瞼が毛に埋もれる様にあった。其がうっすらと開かれ、ウィンクをした気がした。
そして鴨嘴は大きく仰け反って躯を震わせた。
すると如何言う絡繰か羽毛の中から扉が一枚出て来た。彼の羽毛の中に仕舞い込んでいたのだろうか。其にしても何でこんな物。
状況が分からず取り敢えずセレは鴨嘴を撫でて落ち着く事にした。
扉は一体全体如何言った代物か全く分からないが、此方は歴としたモフモフだと直ぐ分かる。
・・・す、凄い。どんどん手が沈み込む。こんな扉なんかじゃなくて自分を入れて貰えないだろうか。
「えっとセレ、此処が所謂図書館なんだ。だから早めに中に入って貰えると助かるんだけど。」
「モフモフか!モフモフの中か!?」
「いや普通に扉の中だよ。」
ガルダが扉を開けると確かに広い空間に出る様だ。
凄い、確かにイリュージョンだ。其は其で気になる。多分原理は巧が部屋を作ったのと同じなんだろうけれど。
でも今はそんな事より目の前のモフモフの方が・・・、
・・・いや、案内して貰った上でそんな我儘はいけないか。仕方ないな。
「中に入ってから色々説明するからさ。まぁ其のモフモフについてもさ。」
其なら良い。下手に目立ってもいけないし、さっさと入ろう。
ガルダに続いて扉を潜ると、一気に景色が開けた。
確かに此処が図書館の様だ。古びた紙とインクの匂が漂って来る。
沢山の本棚が遥か奥迄続き、大量の本が納められていた。
其以外にも巻物・・・だろうか。他にも文字の浮かんでいる水精や、天井や床の木目を走る模様だか文字もある。此等全て所謂書物なのだろうか。
折紙で出来た鳥が本物の様に羽搏いて囀る。
其の御蔭か室内の筈なのに何処か開放感がある。
利用者は他に居ない様だが、何だか落ち着ける所だ。
「ん、珍しいね。新参者か。」
左手にあったカウンターに肘を付いていた一柱の神が声を掛ける。
すっと背を伸ばして帽子を取り、セレに一つ御辞儀をした。
其の神は鳥神と言う可きか。2m近くの巨大な蛇喰い鷲に似ているが、体毛は真黔に濡れて光っている。頭の飾り羽根は皓く、猛禽類独特の鋭い目の周りには蒼い模様が走っている。
只彼の右手は鉤爪の付いた常人の手の様で、対した左は二翼の翼だった。
節榑立った足は三本あり、床を余りにも長い飾り羽根が擦る。
出で立ちも独特で、二枚の長方形の布丈で作られたマントの様な物を羽織り、其の下はスカートを穿いていた。
眼光は鋭くとも其の口端は上がっている様で、神当たりは良さ然うである。
そんな彼の隣には鳥籠が置かれており、其の中には一羽の小鳥が入っていた。
彼も又鳥神なのだろうか。美しい翠と蒼の羽根を広げているが、其の翼の所々と尾は鱗の様に堅そうで、金属の様に光沢があった。
小鳥も又其の長い嘴を籠の隙間から伸ばした。
「初めまして、私はセレだ。少し調べたい事があって連れて来て貰ったんだが。」
「然うかい。中々活きの良さそうな神じゃないか。ま、好きにして貰って構わんさ。私はクロウスター・ジベッタ、此方が私の兄、スェラ・ジベッタ、外の弟がロゥニー・ジベッタだ。一つ宜しく。」
「噫此方こそ宜しく頼む。」
三兄弟だったのか。全く違う鳥類の様だが、其に兄は籠の中で弟は野外って、其で彼等は良いのだろうか。
「御前は確か・・・前T&Tの社長と来ていたな。斯うして神同士の縁が出来ると言うのも珍しい物だ。」
「然うだよなぁ。もう結構前だな。えとセレ、一応此処は図書館だって言ったけど、実の所少し此処は特殊でさ、言葉保管庫、だっけ。みたいな所なんだよ。まぁ本も沢山あるから調べ物には向いてるけどな。」
「言葉の保管庫って・・・つまりは色んな国とか地域とか、次元の言葉を集めていると言う事か?」
「噫其の通りさ。要らなくなった絵巻や本、文庫だとかを回収し捲っているのさ。元々は私達の家だったんだが、何処から噂を聞き付けたのか調べ物をしに神が集まる様になって、此処を開放する事にしたのさ。弟は好物の枸杞の実さえあげれば誰でもほいほい入れてしまうしな。」
クロウスターは鳥籠の中に居るスェラを見遣る。彼は嘴を出して小さく囀った。
「確かに此処は結構な本があるな。私が知らない物も大勢あるし、屹度博識な神なんだろうな。」
「はっはー良い冗談だセレ神さん。悪いが私達は読書なんて嗜まないんだな。此処は図書館じゃあないんでさ。飽く迄も言葉を集めてるのさ。ラングエッジストリート、本の山、隠れ本屋、皆好き勝手呼んでいるが、私は『言ノ杜』が気に入ってるんだ。」
「え、じゃあ彼って集めている丈なのか?」
ガルダも知らなかった様だ。ちらと本棚を見遣るが果ては見えない。
「其だと・・・一体如何して本なんて集めているんだ?」
其は純粋な疑問だった。
本は読む為の物の筈。集める丈だなんて、コレクターが趣味なのだろうか。
本の装丁だとかが好きで集めるなら分からなくもないが、飽く迄も彼は言葉集めに執着している様だ。其は一体如何言う意味なのだろうか。
「然うだな。言ってしまえば此処は私達の狩場なんだ。言葉のな。」
少し帽子を下げ、此方を見遣る目の眼光がぎゅっと鋭くなる。
獲物を見る、猛鳥の目だ。
「丁度良い。序でに面白い物見せてやろうか。」
クロウスターは地を蹴るとふわりと浮かんでカウンターから飛び立つ。
片翼を目一杯広げて少し丈滑空すると、ある本棚の前へ降り立った。
其処の本は何故だか少し動いている気がした。カタカタと、まるで本が生きているみたいだ。
見た目は普通の本みたいだが・・・。
「鼠か何か居るのかな。」
「いや、そんな影は見えないが。」
波紋を飛ばしてはいるが、もぞもぞと本のページの隙間が震える丈だ。あんな所に鼠が居ればペシャンコになってしまう。
クロウスターは慎重に息を詰め、彫像の様に動かなくなり、完全に気配が消えていた。
すると本から何か黔い紐が垂れて来た。
だが其の紐は生きている様で身をくねらし、其の度に其の躯は少しずつ変化している様だった。
細い鰭や特徴的な突起が幾つも生え、独特な模様も其の躯に現れ、淡く光る。
其の突起が足の様になったり、尾になったりと紐は蜥蜴や蛇等様々な生物の様な姿を取って少しずつ全体を本から出した。
其は自分を見ていたセレ達に気付いた様で頭を擡げて此方を見て居た。
其の背後から緩りとクロウスターが近付く。
然うして足を大きく振り上げ、迷う事なく其の頭を踏み潰した。
同時にびくっと背の伸びる観客の二柱。セレに至っては若しや龍なのではと思った直後なので何とも複雑そうな顔を浮かべていた。
其の儘クロウスターは野性宛らに其の蛇か何かを啄み始めた。
食べ易い様引き裂いたりして粗方食べ終わると残った尾の端を銜えて戻って来た。
そして其の尾の端を鳥籠の中へ落としてやる。スェラも又其の長い嘴で必死に突き始めた。
「・・・・・。」
二柱はちらと互いを見遣ったのみで黙である。何と言うか・・・言葉が出て来なかった。
静かで落ち着いた空間と定評のある図書館でまさか生々しい捕食が見られるなんて誰が思う?
「フー中々の大物だったなぁ・・・っと済まない御二柱さん。すっかり夢中になって御恥かしい所を御見せしてしまったな。」
「・・・先のが御前達の獲物と言う訳か。」
「然うさ、見た事無かっただろう。」
「まぁ然うだな。でも抑彼は何だったんだ?」
「セレ、良く彼を見た直後で其聞けるな・・・。」
そっとガルダが耳打ちをした。
「確かに初めは驚いたけれども、良く良く考えたら昔私が虫を捕まえて喰っていたのと同じだなと思って、一撃で仕留めた分随分綺麗な捕食シーンだったし。」
「え!?御前虫喰った事あるのか!?」
「おいガルダ、此処で騒ぐのはマナー違反だぞ。」
「然うだな。他の言葉に此処も侵されたら困るしな。」
「う゛・・・わ、悪かったよ。」
然うは言いつつも何処か複雑な表情を浮かべるガルダである。
其程ショックな告白だっただろうか。
「さてと、話を戻すぞ。まぁ先の奴は所謂『本の虫』って奴さ。此処に集まる書物は大抵可也の歴史を持つ物許りだ。そして言葉には・・・魔力が宿る。」
「詠唱に言葉は使うけれども。でも言葉自体にも魔力が籠るのか。」
「目に見えない物は総じて恐ろしい力を持つ物さ。然うして溜め込まれた魔力が何らかの切っ掛けを得て具現化し、先の様な本の虫になる。本の言葉に触れて、作用したんだな。」
「・・・んん、本の中で一つの魔術が出来たと言う事か?術で武器だとかを創れる様に。」
「然うだな。其が自然の力のみで生まれた位の差しかないだろうさ。でも中でも本の虫が作用し易いのは負の言葉さ。負の感情は、負の懐いは勁い力を生み易い。今迄其の本を読んだ奴の憎しみや怒りも連れているからな。野放しにすると暴れたりして危険なのさ。」
「成程、其で斯うして御前達が管理しているのか。食事にも在り付けるのだし、適任だったと言う事だな。」
「まぁ然う言う事さ。だから私達は本の虫を作る温床でもある書物さえあれば良い。好きに見て行ってくれて構わないさ。」
「然うか。色々有難う。因みに魔力だとか、魔術に関する本を探しているんだが、何の辺りにあるのかだとかは分かるか?」
「其なら彼の碧の本棚の所だ。背表紙に魔法陣が書いてある本や水精書体が多いから直ぐ分かるだろう。・・・噫、此奴が案内してくれるってさ。」
先程から辺りを飛び交っていた鳥が一羽カウンターに降り立つ。
蒼色の小鳥だが、如何見ても紙で出来た折り紙鳥の様だ。だが本物宛ら小首を傾げたり小さく鳴き交わしたりしている。式神だとかの一種だろうか。
まじまじと見ているとクロウスターは合点が行ったのか口端を上げた。
「其奴は本の虫の一種さ。幸せの蒼い鳥、そんな童話を読んだ事があるかい?」
「一応聞いた事があるな。其の鳥を捕まえると幸せになれるからって人々が鳥を求めて蹴落としたり騙し合ったりして終には鳥を死なせてしまう。幸せとは何なのか其の本質的価値を見直す話だろう?」
「多分其違うと思うぜセレ・・・。」
ガルダに苦笑いをされてしまう。・・・はて、じゃあ一体如何言う話だったかな。
「私もそんな話じゃなかった記憶はあるが・・・まぁ良い。此の鳥は其の本から生まれたのさ。斯う言う大人しくて役に立つ奴は残しているのさ。」
「然うか。此が本質的価値か。」
「いやそんな目で蒼い鳥を見てやるなよ、一寸可哀相だろ。」
「其じゃあ道案内を頼めるか?」
少し屈んで声を掛けると蒼い鳥は短く一声鳴き、ホバリングをし乍ら緩り飛び始めた。
「あ、然うだ。ガルダは如何するんだ?私は暫く掛かるかも知れないし、先に帰っても良いぞ。此処迄連れて来てくれて有難う、助かった。」
「んー俺も一寸調べたい事があるし、気にせず調べてきたら良いと思うぜ。ま、終わったら声掛けてくれよ。」
「分かった。じゃあ然うする。」
軽く手を振って別れると、セレは早速小鳥に付いて行く。
其の際ちらと鳥籠を見遣った。スェラは本の虫を食べ終え、満足そうに毛繕いをしていた。
・・・モフモフしたいけれども“貴方の御兄様を触らせては貰えませんか”って頼むのは何か色々不味い気がする。
あんなに可愛いのに・・・仕方ないか。
少し歩くと確かに目当ての本棚は直ぐ見付かった。蒼い鳥も棚に留まって何度か囀る。
「有難う、御蔭で直ぐ見付かったよ。」
青い鳥は一声鳴くと何処かへ飛び去ってしまった。
取り敢えずと何冊か本を取って開いてみた。・・・開き方すら分からない本もあるが、此は後回しだな。
案の定だ。何て書いてあるのかは分からない。見た事のない文字だ。
でも不思議だ。言葉は読めなくとも何となく意味は読み取れる。
次元に行っても言葉が通じるのと同じ感じなのだろうが、文字にも其は適応される様だ。
此も、言葉に魔力が籠っているのと同じ具合なのだろうか。言葉の持つ意味を伝える力。
・・・実は先の話で自分はある仮説を立てていた。そして其こそが此処に来た目的でもあったりする。
まぁ取り敢えず知識を深めて、もう少し後で考えてみるか。
「此は・・・丗闇の使っていた奴か?」
一際古そうな本から手を出していると、読めなくても意味は分かる筈なのに、其でも分からない文字列が出て来た。
・・・否、読めないんじゃなくて此は、意味が籠り過ぎているんだ。じっくり見れば読めない事もない。でも此だと一文字読む丈で可也時間が掛かりそうだ。
其にしても此の線の細い楔と蛇の様な線を足した文字、雰囲気が何となく丗闇の術と似ている気がする。・・・何となくだけれど。
彼の闇魔術しか唱えられなくなる縛りを科す術、彼の異国の言葉の様な祝詞。
―・・・まさか御前其が読めるのか?―
―いや、読めないけれど、何となく似ている気がして、勘だよ。―
然う言えば図書館は私語厳禁だった。先色々話し込んでしまったが、せめて読書中は静かにしようか。
―其処迄魔力を感じる力が強くなっているのか。他の四つの目の御蔭かも知れないが、確かに其処に載っている言葉は彼の術式で間違いない。―
―噫然うか、確かに此の目の御蔭かもな。―
そっと晒越しに触ってみる。
目と言っても魔力の結晶体の様な物なので触っても痛くも何ともない。
―でも成程な。確かに此の文字は私には御手上げだ。少し難解過ぎる。感覚で術を使う私には向かない様だ。まぁ何かヒントにはなるかも知れないし、一応読んでみるかな。―
―精進すると言う其の意気込みは良いだろう。折角の機会だ。無駄にはするな。―
―勿論だ。・・・?―
不図本の端を見ると一部の文字がうねっている気がした。
息を詰めて見詰める。彼の文字は何て意味だろう。
・・・えと、深淵より闇出でて・・・千里の道をば閉ざせば・・・っ矢っ張り此の言葉は難し過ぎる!たった一文字で何丈深いんだ。
暫く見ていると文字は頁から出て来て実体を持つ。
木の枝の様な文字を蠢かし、少しずつ何かを象って行く。
然うして何時しか文字は大きな水精の目を持った鼬の様な姿になった。如何やら此が完成形らしい。
きょろきょろと辺りを見遣り、危な気な足取りで二、三歩歩いては又見遣っている。
あどけない仕草であるが、此は恐らく、と言うか確実に、
―本の虫、だな。―
―噫、早く彼の神を呼べ。其ともまさか其奴を飼うとか言うまいな。―
―いやそんな責任重いから背負いたくはないけれど。―
然う呟いた限セレは只其の本の虫を見ていた。
向こうも向こうで良く状況が分かっていないのか、相変わらず本の上をよたよたと歩いている。
―魔力の構造を見てみたいんだ。―
何となく丗闇の痛い視線を内側から感じるので然う言訳めいた言葉を呟いた。
―誰かが唱えた訳でもない。だのに此の文字に宿る魔力は其の力を使って斯うして疑似的にも生物を創り上げている。特に確固たる目的もなさそうだし、此も術と言うには余りにも不自然じゃないか?―
―・・・何を言いたい。―
―・・・魔力に意思は無いのかなって思ったんだ。―
暫く沈黙が続く。如何やら可也考えあぐねている様だ。
―意味が・・・良く分からないのだが。―
―然うだな。魔力って色んな所にあるじゃないか。色んな特徴を持ったり、変化したり。後、最近此の目の御蔭ではっきり見えて来たんだが、一柱一柱同じ魔力と言っても其々の形と言うか、波長が違う気がしたんだ。だからそんな差異があるなら若しかして、魔力自体にも意思の様な物があるんじゃないかと思って。只其を伝える術を彼等は持たない丈なのかも知れないし。―
何とか言葉にしたが、又沈黙が続く。
認識の違いが大き過ぎる様だ。
―彼等と言うのは・・・魔力を指していると言う事だな。そんな見方を彼にした奴は聞いた事が無いが。つまり御前は魔力も又生物か何かの様に存在している物だと考えているのか。―
―然うだ。其の通りだ丗闇。―
―・・・・・。―
いやに慎重な丗闇だ。其処迄荒唐無稽な話と言う事か。
―・・・抑魔力は術を使う元で、自然エネルギーの一種だ。だから変化に富むのも魔力が様々な物に影響を受け、変化し易いエネルギーと言う丈で、其が恰も一つの生物の様に捉えるのは無理があると思うが。―
―んん・・・でも此の本の虫は如何説明するんだ?意思がある様に見えないか?―
―其は何方かと言うと精霊の類に近いだろう。精霊は魔力と自然エネルギー、世界の負荷で生まれる事がある。確かに彼等に意思はあるが、其は飽く迄も精霊の生まれる条件と言うのが其の次元の枠にあり、其に当て嵌まった場合丈、自我や思考を与えられた精霊と言う生物に生まれ変わる、という物だ。魔力が元になっている丈で全くの別物だ。生物を構成する元素を集めた所で何かになる訳では無いだろう。―
―成程精霊か。然う言えばロードも先言っていたな。ノロノロって言う・・・彼方は妖精だったけど。其も気になるけれども、でもだからと言って其が魔力に意思が無いという確証にはならないぞ。―
斯う言う専門的な話になると恐ろしい迄に丗闇が喰い付くなぁ。
こんな小難しい話が好きなのかな。戦術指南も良くしてくれるし、説明が好きなのかも。
教えるのが好きだから誤解の無い様ちゃんと話したいのかもな。
―・・・ふむ、其処迄言うのなら意思の定義の話になるな。次元には因るが、意思や感情と言うのは脳と言う器官の働きであったり、魂に根本的に宿された物であったりする。では反対に問うが御前は時間や空間、次元にも意思が有ると思っているのか。―
―噫、私の話の筋を通すと然うなるな。魔力は世界の源だ。魔力で世界は繋がっている。だったら然う然る可きだ。まぁ先のを引っ張るなら寧ろ魔力で出来たからと言って其に意思が宿るとも限らないけれども。でも其の可能性は否定出来ない。所か私は、世界其の物にも意思が有ると見ているよ。―
―世界に・・・だと。―
空気が凍えた気がした。呼吸も憚られる様な。
言い過ぎた・・・か?何が丗闇に触れた?
―・・・先のは戯言と判断しよう。一体其の突飛な発想が何処から湧いて来たのかは知る由もないが、愚かだと一笑するのは簡単だ。でも其は我も考えた事すらない事だ。・・・御前の事だ。然う切り出したと言う事は何か考えがあるのだろう。我は別に其を阻んだりはしない。好きにすると良い。―
―然うか、有難う丗闇。―
改めて本の虫を見遣る。変わらず其は本の上から動けずにいた。取り敢えず敵意はなさそうだが。
「えと、初めま・・・、」
先ずはコンタクトを取ってみようと声を掛けようとしたが、其処で不図ある気配に気付く。
自分の直ぐ背後、ぴったりとくっ付いてクロウスターが立っていたのだ。
此処迄完璧に気配を隠せるなんて。置物の様になると波紋でも其と気付き難いな。認識其の物から隠れられると厄介なんだな。
そんなクロウスターはにゅっと首を伸ばし、ちらと此方を見遣る。纏うマントから仄かに香水の甘い香りがした。
「いやに古い本を御求めの様だから一匹位居るんじゃないかと思ったが。」
「噫クロウスター、一寸本の虫に興味があったから少し観察していたんだ。終わったら直ぐ呼ぶつもりだったんだが。」
別に疚しい事をしていた訳では無いのだが、彼の目が鋭い。
流石猛鳥、全く見逃さない其の目はじっと此方を動じず見遣るが、本の虫の気配も又、探っている様だった。
天敵の気を察してか本の虫は尾を上げて威嚇の体勢を取る。
直ぐ飛び掛かったりはしない様だが。
「えとクロウスター、少し聞いてみるんだが、本の虫とコミュニケーションを取る事は可能だと思うか?」
「偉く其奴を気に入った様だな。だが其は難しいぞ。此方の言葉に別に反応した訳でもなく、只好き勝手に動いている。利害が一致した奴を置いている丈だからな。」
「然うか・・・。じゃあもう一つ魔力に意思はあると思うか?」
「ハハッ、本当面白い神だなセレ神さん。随分と突飛な話だけれども、然う言う本を御求めなのかい?只其は何とも言えないな。魔術に私は疎くてさ、其については考えた事もないな。」
「ん、然うか。有難う、良く分かった。」
「然うかい。御役に立てたのなら良かったさ。じゃあ此奴は貰って行くぞ。」
言うや否やクロウスターはさっさと本の虫を銜えて行ってしまった。
残念、少し試したい事があったんだが、まぁ別の方法もあるし、此処のルールに従おう。
後は頓読書だな。今迄大して本に触れる事もなかったし、気合入れないと。
自分には魔術の知識が圧倒的に欠けている。其を少しでも補わないと。
一つ息を付くとセレは早速一文字目の解読から始めるのだった。
・・・・・
「長く待たせて悪かったな、ガルダ。」
「言う程経ってないし、気にするなよ。御前が満足然うで良かったよ。連れて来た甲斐があったし。」
「噫、本当に感謝している。後は・・・実践丈だな。」
言ノ杜を出て二柱はのんびりと帰路に着いていた。
次元の迫間は又姿を変え、一面湖が広がっている。其の所々に歩ける程度の浅瀬があるので其を選んで歩いていた。
淡く光る穴の開いた鍾乳石が幾つも突き出ており、其の穴から濃い霧を放っている様で視界が悪かった。
ガルダのくれた髪飾りの御蔭で水中と言えども浅瀬がある所位は見る事が出来る。霧なんて波紋の前ではあって無い様な物だし、難なく渡る事が出来た。
「・・・ガルダ、もう目的も達成したし、折角外に出たのだから何処か次元に行って来ても良いか?」
半歩下がって顔色を窺うセレにガルダは苦笑を返した。
「御前こそ気を遣い過ぎだろ。俺だって分かってるよ。」
僅かにセレは目を張り、瞬いた。晒越しでも多少は驚いてくれた事位は分かった。
「此でも鎮魂の卒塔婆で鍛えられたんだ。右は俺がやるから左を頼むぜ。」
途端声を潜め耳打ちすると小さく彼女は頷き、ぱっと身を翻す。
「憖うは武、振るうは狂、応え・・・破壊の時だ。」
足を出すのと同時に声を紡ぐ。
「慈紲星座。」
瞬時に彼女を零星が包んだ。
「輝光」
軽く上げたガルダの指先が光り、一気に輝きを増して瞬いた。
そして世界が其の眩い皓一色なった瞬間ガルダは駆け出した。
「牙皓!」
湖の底から皓い巨大な牙が何本か生える。
其の先には服の裾が掛かり、釣り上げられてしまった一柱の神の姿があった。
コートのフードを深く被っているので其の面は分からない。
だがばたつかせた手足は蒼く、水掻きの様な物が付いていた。
恐らく水の中でも息が出来るタイプの種族なんだろう。然うして潜った儘後を付けられたんだ。
如何にもなスポットだったし、何となく視線を感じたから可能性の高い所を取り敢えず当たったけど、あってて良かった。
「光鎖」
続けて唱え、淡く光る鎖を形成する。
牙から生えた其は其の神を縫い付ける様牙に縛り付けた。
「さーてと、一柱確保。」
神の前迄行き、ちらと一瞥する。抵抗しようと暴れているけど中々抜け出せない様だ。しっかりと手足を縛っているし、大丈夫かな。
こんな近距離なら術を使っても直ぐ対応出来るし。
「セレ、其方は、」
「い、命丈は、っ、」
鋭い懇願の声が響き、慌てて振り返る。
其の瞬間と、セレの零星の大釼が神の首を刎ねる瞬間が合わさる。
セレの足元には既に二柱の神の屍があったのだ。
もう一柱も既に首が無くなっている。先叫んでいた方は手足もばらされていた様だ。
一瞬だった。躊躇も慈悲も無い。いや、襲撃者なのだから当然の対応と言えば然うなのかも知れないけれど。
一応向こうは未だ手を出していなかったんだ。覗き見されたとは言え、直ぐ敵と判断して抹殺するのは一寸・・・。
「然うだな。本当にガルダも勁くなったな。前世と見違えるみたいで嬉しいよ、私は。」
「っああ゛ぁ゛ああ゛ぁ゛あっ!!」
突然背後から悲鳴が上がり、飛び退く。
其の悲鳴は先捕らえた神の物だった。
魔術の牙に鎖で縛り付けていたのに、其の神の胸元や腹、手足に顔迄、満遍なく黔い刃が突き刺さっている。
釼山に突き立てられた様に抉った鋭利な鋒から血が零れ落ちた。
一撃で絶命している。此は、此の魔術は闇の物じゃないか。
神の姿は直ぐにぼやけてなくなってしまう。同時に黔い刃を生やした皓の牙も脆く崩れ去る。
「・・・一寸遣り過ぎたか。」
「一寸って、こ、殺す事無いだろ。一体何処の奴かも分からなかったし、こんな・・・殺し方って、」
少し、吐きそうだ。先の神の潰れてしまった目、裂かれて溢れた生々しい内臓、剥がれ掛けた爪、覗けた肉の絳黔さ。
うっかり近くでそんな生々しい屍を見せ付けられて、気分が一気に悪くなった。
黔日夢の次元で少しは・・・慣れたと思ったのに。
「情報は先の奴が吐いてくれた。『6890:鐘楼』と言われる所らしいけれど、知っているか?」
「其って若しかしてライネス国の6890:鐘楼か?」
「矢っ張り光の国か。殺して正解だったな。生かすメリットが無い。」
「・・・そ、然うかも知れないけどさ。」
「何だ。折角の勝利なのに随分引っ掛かりがあるな。本当に勁くなったよ。十分御手柄だ。私も安心出来るよ。6890:鐘楼の事は又今度教えてくれ。」
何が可笑しいのかずっとセレは微笑を湛えた儘で、たった今三柱も神を殺した奴には見えなかった。
・・・昔から確かにセレは殺し屋だった。でも、何か、違う。
前は、最後の手段として選んでいた事を、何時の間に最適手になった?
殺さない様にする努力を、何時放棄してしまったんだ。
・・・なんて、俺は言えなかった。反論されるのが恐くて、俺は其にちゃんと答えを返せる気がしなくて。
「さてと、昼の外出も中々面白かったけれども、こんなに絡まれては台無しになってしまうな。私はさっさと次元に行く事にするよ。ガルダも早く帰った方が良い。」
神の屍は全て綺麗になくなっていた。其の様を一瞥し、一つセレは息を付く。
「本当に・・・次元に行くんだよな。」
「何だ疑っているのか?なんて意地悪が過ぎたな。勿論だガルダ。心配してくれて有難う。」
「・・・分かった。俺も直ぐ帰るから気を付けろよ。」
俺は、止めていた足を動かす。
少しずつ、彼女から離れて行く。
分かってる。屹度彼女は何か隠している。でも俺からは近付けない。傷付けたくなんてないから。
面倒臭がられて捨てられるより、都合の良い存在でありたい。
捨てられるのが・・・恐いんだ。彼女はそんな事しないって信じてる。でも、もう俺はセレの事が分からなくなってるんじゃないか。
如何すれば彼女を笑顔に出来るのか分からない。何故先彼女が笑っていたのか分からない。
何処へ行きたいのか、何に成りたいのか、分からない。
傷付け合わないと、気付けない所迄来ているのは分かってるんだ。彼女は俺に正してくれと言った。間違ってるなら教えて欲しいと。
其は彼女なりの最大の歩み寄りだったのかも知れないのに。
其でも俺は・・・恐いんだ。
彼女が何処か消えてしまいそうに見えて、焦っているのかも知れない。
前に、冗談だったとしても彼女の口から、自分から去ると言う言葉を聞いてしまって、本当に彼の瞬間は恐ろしかった。死んでしまった様に全身が凍えた気がして、もうあんな懐いはしたくなかった。
正しい事が出来ない。だって俺達は正しくない。
正しい事を、彼女は嫌うだろう。何をしても生きると、俺の縛りに囚われた彼女は。
何時か・・・屹度全て話してくれる。
そんな根拠の無い希望を、俺はずっと捨てられずにいる。
・・・・・
「ちゃんと次元には行くよ。用事が終わったらな。」
約束丈は護るから。
ガルダの背が見えなくなり、セレは踵を返した。
もう、隠せないな。
自分が誰かを殺す所なんて、見られたくないなって思っていたけれど。
自分はもう普通じゃない。否、初めから壊れている。
器用でもないから、ずっと綺麗事丈を押し付けるのは無理だ。
だから目の前で殺した。
自分の当たり前を押し付けた。
だって、斯うでもしないと自分達は生きられないよ。
生き永らえたいなら、形振りなんて構っていられない。
然うだろうガルダ、御前が私に言ってくれたんだ。
生きて欲しいって、何度も何度も、言葉丈じゃなく、仕草で、行動で、私を少しずつ縛って行ったんだ。
じゃあ私は其に縋るよ。どんなに汚くても其を盾にするよ。
“自分は死んでも良いって思っているけれど、仲間の懐いに応える為に生きているんだ。”
ククッ、良いじゃないか。私らしい綺麗事だ。
だから頼るよ、御前の事。だから飽きたらさっさと捨ててくれ。
ボスとした様な御別れは、出来れば御前とはしたくないんだよ。
数歩足を進める。
波紋が密に広がり、景色がクリアになって行く。
漣一つ立っていないけれども、後三柱は居る筈。
殺した数と、最初波紋に写った数が違うんだ。報告の為に逃げたのかは分からないが此処で仕留めないと。
只幾ら波紋が強くなったと言っても水中深くに居る奴を探知するのは難しいな・・・。未だ魚に成れる程干渉力も強くないし・・・先のを試してみるか。
そっとオーバーコートを捲ると瞬く魔力の結晶が幾つも浮いていた。
先の零星の残りだ。解いたのは手先丈の物で、未だ使っていなかったのは一応残していたんだ。
其の内の一つに触れる。すると其処から碧樹の根の様に光る線が四方へ伸びて行く。
其の零星を手に取ってそっと水に触れてみた。
暫くすると波紋でもはっきりと分かる位大きく水面が揺れ始めた。
幽風も無いのに渦を巻き、少しずつ激しくなって行く。
「何だ突然っ!?」
水の中から声がしたと思うと四柱の神が湖から飛び出した。
出で立ちは似ているが正体は分からないな。水の膜の様な物を張った合羽の様な物を羽織り、透明になったかの様に其の内側は見えない。
勢い良く出た割には水から弾き出された様にも見えた。
四柱共状況が分かっていない様で不審そうに湖を見遣っている。
「っまさか御前の仕業か。」
「然うと言えば然うだろうし、違うと言えば其も間違いじゃあないとは思うが。」
現に斯う言う形で対面するとは思っていなかったんだ。少々面食らっているのは自分も同じだ。
「巫山戯るのも大概にしろ。」
音も無く湖の上を走る様に蹴り、横合いから一柱の神が飛び掛かる。
其の手には鋭い鉤爪が備わっていた。
波紋が無かったら気付けなかったかも知れない。其程の速さと、気配が完全に隠れていた。前のど素神達とは違うな。
オーバーコートを払う。其の中には予めナイフへ変換していた零星が隠されていた。
ナイフは吸い寄せられる様に其の神の頸へ向けて突っ込む。
一呼吸の後に生々しい肉の骨毎切断される音が響いて神の首が落ちた。
其の首が湖の底へ沈むに連れて其の躯も傾いで行く。
其の間に零星を両手に纏った。ナイフの先には又彼の曦の線が出ている。
何処にも繋がらない星座の先だ。
どうせ同じ所の奴だろうし、生かす意味も無いだろう。
もう屍等顧みず三柱へ向き直ると足元に鋭利に削がれた氷柱が突き刺さった。
危ないな、頭とかの急所なら反射的に避けられるが、疎かになり勝ちな足元から狙うとは。
不覚にも一寸楽しいじゃないか。
「exa」
一歩大きく足を出し、上体を一気に低くする。
其の上を新たな氷柱が飛んで行く。
涼の魔術、詠唱から発動が早いな。小声過ぎて聞き取れないし、初動が読めないのは苦しい。
手にした斧の先の星座が震える。
此の反応は・・・良くない。何を自分に伝えたい?
先から牽制しているのは一番右側に居る小柄な神か。
長身な方は彼を護る様に構えているし、もう一方は見ている丈か、観察役か?
畳み掛けても良いけれども零星の動きが良くない。少し下がるか。
横跳びに一気に距離を取る。離れた所の浅瀬へ降り立った。
もう一度集中して、零星を集めて、
向こうも構えた丈で一度手を止めた。仕切り直しだ。此処で声を掛けて置くか。
―ノロノロさん、初めましてだな。ロードから話は聞いた。時間があるから話をしたいんだが、今大丈夫か?―
ロードから良く良く言われていた。妖精の類は必ず愛称で呼ぶ事。魔術の詠唱と同じで、其の音に妖精は反応するのだ。話をする分には其処迄気にしなくても良いが、契約だとかの重大な事を成すには特に気を付けないと、喰われてしまう、と。
―本当ノロカ!?直ぐ、直ぐ行くノロ!―
良し、と。じゃあ自分はもう少し練習をしようか。
・・・此が本番だなんて思っていない。此の程度の相手で、自分は止まる訳には行かないんだ。
さぁ、殺し合おう。
瞬きの後に地を滑る様に走るセレを影が覆う。
神の一柱が飛び上がり、象の足の様に巨大で硬質化した両腕を振り下ろして来たのだ。
其の横合いから焔が爆ぜる。彼に飛び込めば爆発してしまうだろうか。
退路を断たれてしまったな。
別に構わない。力任せにやって来る奴の土手っ腹に穴を開けて道を作れば良い。
此の零星の斧ならそんな足位貫くのなんて余裕だ。
どうせ此の零星が武器だなんて思われていないだろう。先の奴が死んだ原因、此奴等はちゃんと理解出来ているのか?
息を詰めて斧を横薙ぎに構える。
慎重に狙って、何の一点を突けば其の巨体を崩せるか見極めて、
「ッガアァ!!」
「あぁ゛あ゛あ!!」
其の肉を切り裂くよりも先に悲鳴が二つ上がり、影がぐらつく。
攻撃じゃない、此奴は既に、
慌てて横跳びすると先の焔の術も消え失せ、難なく脱する事が出来た。
改めて見遣ると何時の間にか二柱の神の屍が出来上がってしまっている。
両腕が巨大化した神は縦半分に半身が爆裂でもしたかの様に消し飛び、僅かに痙攣しているのみだった。
もう一柱、恐らくは焔の術をぶつけて来た神だが、其方は下半身が裂かれて放り投げられており、片手も同様に千斬れてしまっている。
だが良く見ると未だ生きてはいる様で残った手で這って此方を睨め付けていた。
「っ・・・な、何・・・を゛、っごぼ、」
血反吐を吐き、僅かに残った躯を震わせる。流石にもう反撃は出来ないみたいだ。
「まさかこんな容赦のないやり方をするなんて、私がやった方が苦しまなくて済んだのに悪い事をしたな。」
心にもない謝罪を口にして其の瞳から色が消えるのを見届ける。
一寸扱い難いな。強力過ぎて全て一撃で葬ってくれるけれど、自分の手柄迄盗られるとな・・・。
「さてと、後は御前丈か。呆気ないもんだな。」
自分が向き直るのと同時に最後の神は又湖へ身を投じた。
即逃げる一択か。連携を取ったりと先から嫌な行動許りしてくれる。
情報を持ち帰るつもりだろうか。今回は別にへまをした訳でもないし、碌な情報は無い筈。彼奴が見たのは精々勝手に爆ぜた仲間の姿位だろう。
驕陽に弱い事も問題ない筈。新調したオーバーコートの御蔭で可也隠し易くなったし。
・・・一応其の事はソルドにばれてはいるが、彼奴の性格上自分の手で仕留めたいだろうし、どうせ此方の事を過小評価しているだろうから無暗に誰かに話さないと踏んでも大丈夫だろう。
かといって決して今の神を此の儘野放しにする訳じゃあないんだけれど。
さて、未だ手助けはしてくれるかな。
零星を幾つか星座を作り掛けの儘水へ投じる。
こんな深くに潜られちゃあ自分はもう捜せない。他の手段が必要だ。
又水面が大きく揺れ、中を巨大魚でも泳いでいるかの様に廻瀾が分かれ、渦を巻く。
数瞬もしない内に又水中から先の神が跳び出した。
「矢張り一筋縄には行かないか。」
水中から呟く声。同じ手は読まれていた様で、もう神の両手には水の刃が握られていた。
其を投じて一気に間合いを詰められる。
刃が水の欠片を散らし、空気を裂く。
「ノロノロ〜ン、御指名頂き光栄ノロ、初めましてセレ神ノロ〜。」
「噫初めまして、後ろ。」
神が躍り掛かった所で自分の翳が伸びて一柱の影が姿を現す。
真黔い照る照る坊主の様な風貌、間違いない。彼がノロノロだ。
自分がそっと彼の背後を指差す。ノロノロは不思議そうに素直に振り返った。其の間に零星で水の刃丈先に壊して置く。
「ノロ?うし・・・!ノロノローン!?」
ノロノロからしたら彼の神が音も無く自分へ飛び掛かって来た様に映っただろう。其の神と目が合って小さく飛び上がる。
向こうも向こうで突然現れた謎の生命体に警戒してか其の速度は幾分弱まった。
其の為何とかノロノロは横跳びに其を躱し、自分もノロノロに合わせて飛び退った。
突進が空振りした神は両手を交差し、小さく何かを唱える。
すると彼の背後に雨雲が立ち込め、重力等無視して地面と平行に陰霖が降って来た。
だが其の陰霖は如何やらナイフの様に先が尖っている様に見える。
水圧カッターの様な物だろうか。彼に触れると躯が蜂の巣になるのかも知れない。
「め、滅茶苦茶御取込み中じゃないノロカー!」
「いや、ほら私は色々と神気者だから。次、右から来るぞ。」
慌ててノロノロは大きく一歩飛び退いた。
確かに此の反応、ロードの言った様に戦闘は苦手そうだ。態ととは言え突然巻き込んで悪い事をしたな。
でも此のタイミングでノロノロに来て貰ったのには訳がある。予定より早く来てくれたので手順が狂ったが、ちゃんと狙い通り動いてみよう。
何はともあれ、今は彼の神の動きを止めないとノロノロと御話が出来ない。威嚇丈でもして足止め出来ないだろうか。
自分も地擦れ擦れに跳び、神の前で左手を出した。
其処には崩れ掛けの斧の星座が握られている。
其の切れて繋がらない星座に意識を向ける。
途端自分の腕を黔い渦が包んだ。
そして神一柱等簡単に呑み込め然うな程巨大な黔の狼の頭を形成した。
目と思しき所は空虚で、並ぶ牙は透明で幽風で出来ている様。
狼の頭自体何処か現実味が無く、霧か靄を幽風が形を整える様に吹いて象った物の様に見えた。
自然が作った人工物、そんな具合のちぐはぐさが残る。
自分の腕から生える様に顕現した狼、自分の波紋には其が実物よりもはっきりと映っていた。
然う、此の狼は純粋な魔力の塊で出来ていたのだ。
何の属性の術とかではなく、飽く迄魔力の塊。
「一体、此・・・は、」
神は大きく目を見開き、つい固まってしまう。
自分も、此が一体何で、如何言った代物なのかは分からなかった。
まさか自分の呼び掛けにこんな形で応えてくれるなんて。
でも此って、此の形態って、相手を一撃で仕留める物じゃあ・・・、
狼が牙を剥き、動けずにいる神を丸呑みにせんと許りに吼えて、飛び掛かる。
「っ遣り過ぎだ!!」
流石に此は放っとけない。
未だ一撃で沈められては困るんだ。
慌てて手を引くと、虎鋏みの様に大きな音を立てて狼の顎門は閉じられた。
何とか空を咬んだ程度で済んだ様だ。
腕を下げると跡形もなく狼の頭は掻き消えた。
流石に目の前であんな物を見せられちゃあ元々死んでいるとは言え、生きた心地はしなかっただろう。
反応が遅れ、固まった神に代わりに回し蹴りを御見舞いした。
見事に頭に命中し、神は一言呻いて片足が沈む。
其の隙に自分は大きく飛び退いてノロノロと並んだ。
―彼奴に鈴を付けて、一時的で良い、此方の姿を隠す事は出来るか?―
一応聞かれない様にテレパシーで。
ノロノロは此方を見遣り、少し首を傾げたが、途端其の口を歪めた。
・・・笑っている様には見えるな。
―ボスより妖精遣いが荒いとは恐れ入ったノロ。でも此方の方が楽しそうノロ!―
地を蹴ってノロノロは旻中一回転を極める。
其の間はためいているマントから生えていた帯は伸び上がり、一瞬ノロノロの落書の様なグルグルの目を覆った。
そしてまるで生きている様に帯が自分達を包もうとはためき、刹那漆黔の世界に覆われる。
否、完全な闇ではない。
黔く濃い霧に包まれてしまった様に、幽かに周りの景色は見る事が出来た。
「此で大丈夫ノロ。ノロノロの秘術を二つ一遍に御見せするなんて、然も契約もしていないのに。そんな破天荒な神は屹度ノロノロ史上初ノロヨ。」
「其は褒めてくれていると取って良いのかな。」
暫くすると先の神が慌てて顔を上げた。だがきょろきょろ辺りを見渡す丈で自分達には気付いていない様だ。
可也警戒をした様だったが、終には諦めて神は又湖へ身を投じ、何処かへ行ってしまった。
「彼の神、6890:鐘楼の兵ノロネ。真直ぐ塔へ帰ってはいるみたいノロケド、考えが足りないノロネ〜。」
楽しそうに大口を開けてノロノロは小さく飛び跳ねた。
「因みにどんな素敵な鈴を彼奴に付けてくれたんだ?」
「彼の神が見聞きした物は全て筒抜けになるノロ。対象が一柱なら此位造作もないノロ、先ずばれないノロ。」
「其は凄いな。姿も隠せるし、流石大妖精様だ。」
「ちゃんと売り込みをしないと、契約して貰えなかったら困るノロカラネ。」
辺りを包んでいた黔い霧が晴れる。ノロノロが術を解いた様だ。
すると其と同時に自分の中の闇も晴れた。何があったのかと思った刹那、丗闇が顕現したのだ。
此のタイミングなんて、一体如何したんだろう。
ちらと視線を上げると、彼女は何も言わずじっと自分を見ている。心做し、緊張している様にも見える。
「丗闇、如何し・・・、」
其処ではたと気付いた。丗闇の着ている服、正確にはオーバーコート。
其は紛れもなくプレゼントであげた彼のオーバーコートだった。
ちゃんと着てくれていたんだ。良かった、矢っ張り似合っている。
滅多に出て来てくれないから、と言うより若しかしたら意図的だったのかも知れないが、オーバーコートをあげてから一度も、丗闇は表に出る事が無かったので今回が初御披露目だった。
「丗闇、良く似合ってるじゃないか。サイズも合ってる様で良かった。」
其処で初めて丗闇も気付いた様だ。はっとしてわたわたと落ち着きがなくなって行く。
こんな丗闇を見られる機会なんて一生に一回あるか如何かじゃないだろうか。あっても此の後丗闇に照れ隠しで殺されてしまうかも知れないが。
と言うより其の反応、矢っ張り隠していたと言う事か。素直に見せてくれれば良かったのに。彼の日の屈辱を思い出して赤くなってを繰り返したのかな。
「え、あ、その、こ、此は一応貰った物で・・・物に罪はないし・・・、」
「然うか然うか。別に遠慮する事もないし、良いんじゃないか。」
「御前がそんな顔をするから嫌なんだ。」
おっと顔に出ていたか。
凄い睨んで来るなぁ・・・。其の視線丈で殺せそうだ。折角可愛い服を着ているのに。
「此は此は丗闇漆黎龍様ノロ!?然うノロカ、セレ神と契約していたから御姿が見られなかったノロネ!?」
「・・・あ、然うか。先客が居たのか。では後で良い。」
「珍しいな、丗闇。何かあったのか?急用があると言う事だろう。」
丗闇のうっかりも珍しい。余っ程気になる事でもあるのかな。
「ノロノロの事なら気にしないで良いノロヨ、丗闇漆黎龍様の邪魔をするなんて恐れ多いノロ。」
すっごい丗闇崇められている・・・大妖精に迄だなんて、本当に凄い神なんだなぁ。
でも今更関係を変える訳にも行かないし、まぁ良いか。
「然うか、済まない。・・・では手短に。」
先から丗闇の視線が外れない。一体如何したんだろう、何かしたっけ・・・。
「先の術は何だ。狼の頭と、他にも湖に何か干渉したな。後は・・・二柱の神が自爆をした様に見えた。闇魔術の釼山に貫かれた奴もいたな。彼は一体何の真似だ。」
「流石丗闇、全部トリックが同じって見抜いていたか。いやまさか私もああなるとは思ってなくてな。結構新鮮だったな。」
「茶化すな。・・・いや待て、其の言い方、まさか御前がしたのは、」
ある答えに行き着き、丗闇が目を張った。
「先調べたんだし、折角だから使ってみようと思ったんだ。丗闇にも聞いてみただろう?魔力に意思はあるのか如何か。」
徒っぽく笑ってみせたが、丗闇は渋面の儘だ。
「意思が若しあるのなら、話し掛けてみようと思ったんだ。だから先、“彼奴等を殺すのを手伝ってくれ”って頼んでみたんだ。結果は・・・先の通りだな。」
「まさかそんな、では応えたと言うのか、魔力が。」
「現に私は零星のナイフと斧しか術は使っていないよ。ガルダの手柄を横取りしたのも、水の中に隠れていた彼奴等を引き摺り出したのも、私より先に神の躯を引き千斬ったのも、怯ませる程度にしようと思っていたら元気一杯な狼になって咬み付いたのも、全て魔力が勝手にした事だ。私は力を使っていない。」
「・・・でも如何やって、魔力に話し掛けている素振りは無かっただろう。此の言い方もおかしいが。」
一つ息を付いて丗闇は視線を下げた。
結構食い付いて来るなぁ。・・・まぁ永年の常識が覆されてしまって焦っているのかも知れない。自分としてはなくはない話だと思っていたんだけれどな。
「先星座の先を敢えて繋いでいないのを使っていただろう。魔力には魔力を使った方が良いと思ったんだ。だから彼の切れた端から空間に向けて意識をし、テレパシーを送ったんだ。只、自分も良く要領は分かっていないから、水中には水中の魔力へと直接触れさせて試みたんだ。」
「・・・聞いていたら面白い話をしているノロネ。若し其が本当なら表彰レベルの大発見ノロヨ。」
「え、そんなにか。まぁでも応えがあったかと言うと難しいな。別に返事があった訳じゃあないし、でも先起こった奇怪な現象は全て、私を手助けしようとしてくれたのかなって、私は考えているよ。」
丗闇は渋々乍らも静かに一つ頷いた。
「でも然うだとしたら魔力は彼だな。私の思っていた以上に血気盛んな奴等なのかも知れないな。」
あんなあっさり殺して行くだなんて、意思はあったとしても感情だとかは如何なるんだろうか。
「只、良く見極めて使わないといけないのは確かだな。私としては御手伝いをして貰う感覚だから如何行動するかは魔力に任せるし、未だ不安定な所もあった。其に何か魔力から要求されるかも知れないしな。」
でも一体如何したら魔力って喜ぶんだろう。もっと話をしてみたいな。
「成程・・・御前の話は分かった。まさかそんな結果になるとはな。其の話を聞いても我からすれば荒唐無稽な話だ。そんな事を思い付くのは御前位の物だろうと断言出来る。・・・上手く使えば可也強力な武器になるだろう。でも呉々も扱いには気を付けろ。」
「噫勿論だ。・・・因みにノロノロさん、此の話は御内密に出来るな?まさか其方のボスに御話なんてしないだろう?」
「勿論ノロ、契約してくれればの話ノロケドネ。」
嫌な笑みを浮かべている。・・・中々やるな、此奴。
「じゃあ早目に其の話に取り掛かろうか。丗闇、如何だ?若し気になる事とかあれば聞くけれども。」
「いや、もう十分だ。・・・面白い事を聞いた。未だ見極める必要があるだろうが、其は我の役目ではないだろう。・・・邪魔したな。」
「邪魔なんてそんな。御元気そうな御姿が見られて良かったノロ!」
丗闇は軽く目を伏せ、其の姿は掻き消えた。一応納得はしてくれたらしい。
「・・・初めて御話したノロケド、話し易い神だったノロネ。昔は何を聞いても無反応で、只世界を見て移ろう丈の神だったノロニ。」
小声で呟き、ノロノロは一度瞬いてセレを見遣った。
「さて、じゃあノロノロさん。商談と行こうか。ロードから話は一応聞いているんだが、御前の口から改めてちゃんと聞きたい。改めて、私は次元龍屋の店主のセレ・ハクリューだ。私に一体何の御相談で?」
「良いノロヨ。ノロノロはセレ神との契約を望んでいるノロ。そして如何か今ノロノロと契約している虚器惟神の楼閣のボス、ソルドを殺して欲しいノロ。」
表情の読み難い顔の儘淡々と、ノロノロは然う言い切った。
「然うか。彼奴を殺すのは元々私の目的の一つにはあるが、でも物騒な話だな。若し私がOKを出せば折角契約を結んだのに彼奴は其の妖精に背中を刺されると言う事だろう?其処迄は良いにしても次其の矛先が私とは限らないと言う事だよな。」
「其は断じてないノロ!ボスの契約はノロノロの意に沿わない契約ノロ。契約は本来対等な関係で結ぶ物ノロ、だのにあんな一方的に無理矢理契約して、奴隷の様にノロノロを使うなんて、あんなのは契約者に相応しくないノロ。ノロノロだって、契約者はずっと一緒に居られる様な神になって欲しいんノロヨ。」
ノロノロは興奮して来たのかガバッと大口を開ける。
嘘は無い様に見えるが・・・。
「だからセレ神とする契約は本来の形式通りでするノロ。其なら後からでも此の契約の方が効力が上ノロ。セレ神を本当のパートナーと見做して、本来の力を発揮出来るノロ。勿論ボスの命令も上書きが出来るノロ。」
「成程、でも今回する契約は恐らく二重契約と言うのになるんじゃないのか?大抵其は禁忌に触れる物だろう?正式な方法だとしてもだ。其をするとソルドにばれるんじゃないか?」
「ばれるノロ。仮とは言え、現契約者ノロカラ・・・。でも大した事はないノロ。何の道ボスはセレ神との再戦を希望しているノロ。ノロノロは沢山いるから腹癒せに何体かは殺されてしまうかも知れないノロケド、其でも今の儘よりずっとましノロ。」
「然うか。まぁ其丈の覚悟があるなら此方も悪くない話だけれども。因みに如何して私なんだ?ソルドを殺せる可能性が高いからか?其丈の制限付きの契約になるのか?」
「違うノロ、セレ神だからこそノロ。確かにボスに遣われてからセレ神の事を知ったノロケド、本来ノロノロは闇や呪い、負の妖精ノロ。でも其はボスの様なやり方は好かないノロ。静かで、怪しくて、求めてしまいそうな闇、其こそがノロノロの求める物ノロ。其に今最も近しいのがセレ神なんだノロ!」
「んん・・・何だかフリューレンスみたいな事を言い始めたな。」
一寸難しい。要は気に入られたと言う事だろうか・・・。
「難しいノロカ?若しかして気付いていないノロカ?斯うしてセレ神と会う事でノロノロの確信は本物になったノロ。セレ神はノロノロ達と似た、精霊に近しい神ノロヨ?」
「え?私が精霊?」
又其は突飛な話だ。丗闇の反応を窺ったが、何だかじっと考え込んでいる様な気配がする。
と言うより自分、別に精霊って柄じゃない気がするんだが。
こんなだって・・・さぁ。
精霊と妖精は又別物なんだろうけれど、つまりはそんな小さくて華の上にちょこんと居る様な、そんな奴等だろう?
いや、柄じゃないと言うか、うーん、全然違うだろう。冗談にしても笑えない。笑い所が分からない。
「此はちゃんと御話した方が良いみたいノロネ。良いノロヨ。序でに教えるノロ。妖精は嘘なんて吐かないノロヨ。然う言う存在だから其処は信頼して欲しいノロ。」
「・・・噫、頼む。私にはさっぱりだ。」
「抑妖精は何かの象徴として存在するノロ。富を与える神がいれば、其の富を象徴した精霊や妖精が生まれる、然う言う関係ノロ。物質や特定の物事を象徴するのが主に精霊で、感情だとか、精神的な物の象徴が妖精になり易いノロ。後は構造ノロネ。精霊は象徴其の物を主体にしていて、妖精は魔力や何らかの存在が複雑に絡まり合って生まれるノロ。凡はそんな具合ノロカネ。」
成程、先の自分のイメージは華の精って事か。・・・で、じゃあ自分は一体何の象徴だって言いたいんだ?
「神には元になった前世がある事が多いノロ。元から存在する者だから存在が安定し易いノロ。でもノロノロの様な妖精は象徴する物の存在次第で変わってしまうノロ。水が澱めば、闇が晴れれば、碧樹が枯れれば其に宿る精霊達は消えてしまうノロ。」
つまりは精霊にとっての使命が其の象徴を生かすなり護るなりする事なのだろうか。そして象徴が消えれば共に滅びると言った、ある意味分かり易い関係と言う事か。
「でも其の分、其の象徴の力が強ければ其の精霊も又力を得るノロ。・・・覚えがないノロカ?存在が希薄になって消え掛けたりだとか、急に力を付けたりだとか。確実でない者だからこそ変化が大きいノロ。何にでも成れてしまうのが精霊なんだノロ。」
其はあり過ぎる位当て嵌まる事だった。死に掛けた事も、力を付けた事もある。
丗闇は自分を自分で肯定出来ないからだと言っていたが、然う言うのも原因としてあったのかも知れない。
「確かに其の経験はある。でもまさか其の原因が、私が精霊だったからだなんて。・・・因みに私の象徴って何なんだ?然う言うのも分かるのか?」
「分かるノロヨ、セレ神は『死』の象徴ノロ!いや、一寸違うノロネ・・・、然うノロ!『殺し』の象徴ノロ、セレ神は『殺し』を象徴する神兼精霊ノロ!」
「お、おぉう・・・。」
何とも物騒な答えが返って来た。
いや、其の類だろうなぁとは思っていたけれども、せめて闇とか、黔とか、然う言うのに留めてくれると思ったんだけど。
『殺し』って、がっつりだよなぁ。此以上ない位不吉な精霊になった物だ。
其に如何して此のノロノロはそんなはっきり嬉し気に言うんだろう。いや、別に今更其処を否定する訳じゃないけれど、別に自分は殺しが好きって訳じゃないんだよ。
一応其処は分けて考えているんだからさ。
でも自分と契約する奴が『殺し』の象徴だなんて、御前は其で良いのか?本当に良いのか?
「・・・んん?何か納得していない顔ノロネ。此って同じ妖精からしたらチート並みの象徴ノロヨ?つまりセレ神が誰かを殺せば其丈でセレ神は力を得るノロ。次元で戦争が起きたり、殺人事件が起きたら其丈でも効果はあるノロ。然う言う意味でもノロノロの契約者として適任なんだノロ。」
「確かに、然うだな。私の目的からしても好都合ではあるか・・・。前私が弱り掛けたのは殺し足りなかったと言う事か。自分が生き残る為には結構な犠牲を作らなければいけないのか。」
屍を喰らう為に殺すのではなく、只、殺す事、其の行為自体が自分には必要なのか。
確かに前丗闇が助けてくれた時、如何しようもなく殺意が溢れた。彼は防衛本能の様な物だったのかも知れない。自然と躯は生き残る術を得ようとしていた訳だ。
「然うノロネ。新参者の精霊に序でにもう少し教えるノロ。今時新しい精霊だなんて可也珍しいノロカラネ。抑セレ神は完全な精霊と言う訳でもないノロケド。・・・一つ聞くノロケド、セレ神は初めから然う言う体質だったノロ?」
「いや、普通に前世もあるし、普通の神だと思ったが、抑神が精霊になったりする物なのか?崇められて神格化して神としての性質が変わったと言う事なのか?」
「んー然うノロネ。此はノロノロも初めての事ノロ。精霊神って言う存在はいるノロケド、彼方は精霊だし、普通神は精霊にならないノロ。本質的構造が違うノロカラネ。若しかしたらセレ神は本来他者の能力を吸収出来る能力を持っているのかも知れないノロネ。もう元の形も分からない程に。・・・って言っても此は完全に戯れの様な出鱈目な憶測ノロ、余鵜呑みにして欲しくはないノロネ。」
「能力を吸収・・・?成程、其は些とも考えていなかったな。出鱈目な憶測だとしても面白い話だと思うよ。抑の種と言うか、其も分かっていないからな。案外然うなのかも知れないな。」
若し本当に然うなら其の法則だとか知りたいな。確かになくはない話だと思う。リュウも知らない種だって言っていたし、若しかしたら・・・。
「ノロノロ、然う考えると契約はより魅力的になるノロネ。其の存在を肯定すればする程、精霊は力を増すノロ。互いに悪い話じゃないノロ。」
「契約をした丈で、力が手に入るのか・・・。」
ノロノロの力を使う訳でもないのに、不思議な感覚だ。
「ノロ〜現にセレ神は一人契約しているノロネ。丗闇漆黎龍様のと違って、皓い・・・女王ノロカ?魂が一つ繋がれているノロ。」
「女王って・・・まさか、見えるのか!?」
女王と言えば一人しかいない。前の次元、彼の骨の城の女王、彼女の最期は気掛かりな物だった。
“貴方は、一緒に居ると言ってくれた。私の願いを叶えてくれた。だから次は私の番。貴方の願いを叶える為に、私は一緒に居るわ。此は・・・契約よ。”
女王は知っていたのか、自分の存在を。だからあんな提案をした?
そっと胸元に手を置く。未だ意識をすれば感じる。彼女の気配を、鎖の様に繋ぎ止めて、放さない彼女の漂う様な気配を。繋がれているのは、何方だ。
彼女が契約と口にした途端、魔力が溢れた。彼が力と言う事か。
彼女は一緒に居る事を、自分は契約する事其の物を条件に互いが手を取ったのか。
然うすると此方の条件許りが何だか軽いな・・・。いや、存在を保つ為と言えば大事なんだけれど、でも相手は兎に角契約さえすれば願いが叶うと言う状態になる訳だ。何だか狡い。
まぁ抑自分と契約したがる奴なんているのかな。象徴が『殺し』なら其に関する契約許りされそうだな・・・。
誰かを殺してくれだとか・・・まぁ此方としては美味しい話だけれどな。
商売としてはあり・・・かも。完全に殺し屋となってしまう訳だけれど。
なに、別に完全に足を洗った訳じゃないんだ。
必要だからしていると言う丈の事。殺さなくて済むのなら然うするさ。・・・本当だよ。
然うすると例えば・・・呪いの一つみたいな物だろうか。殺して欲しい奴がいて、魔法陣を描くなりして自分を召還して、上手く契約を結べれば願いを叶えて貰えるみたいな。
殆ど悪魔の所業だなぁ・・・。でも結構色々と案が出て来て悪くはない具合だ。
「然うノロネ・・・。後、契約してくれたら色々御負けするノロ。ノロノロもセレ神を唯一神として崇めるノロ。情報も提供するノロヨ。」
「あ、崇めるって、契約は対等な関係で結ぶんじゃなかったか?ソルドの所為で奴隷根性が染み込んでいるぞ大精霊様。」
「然うノロケド、でも此は本心ノロ。出会えた事ではっきりとノロノロは自覚したノロ。基本は対等ノロケド、此方が勝手に慕うのは問題ないノロ。対等より崇める様な存在と契約出来る方がノロノロも光栄ノロ。何より此方から結びを御願いしているノロカラネ。下手に出るノロ。其でセレ神が勁くなれるのなら猶の事ノロ。」
「まぁ神の性質からしたら然うかも知れないけれど。・・・然うだな、じゃあ私も勝手に御前を敬うとしよう。其なら良いだろう?私も出来れば御前と良いパートナーになりたいんだ。」
「ノロノロ〜ン、良いノロヨ。然う言うのも新鮮で面白そうノロ。其じゃあもう一つ、セレ神の名を其となく世界に広めるノロ。二つ名があれば格段に力を増すノロカラ、隠語も全て結び付けてしまうんだノロ。」
「二つ名・・・か、一寸其は気恥しいな。存在を残す意味で必要なのは何となく分かるが、斯う・・・自分から宣伝するのは一寸、」
抵抗がある。そんな事したら苦笑いで返され然うだ。ネーミングセンスも要るし。
「其処はシンプルに行くから大丈夫ノロヨ!ノロノロに任せるノロ。抑セレ神は黔日夢の次元の影響で色んな名があるノロ。其等を少しずつ関連付けて纏めてしまえば良い丈ノロヨ。もう十分な功績はあるノロ。然うノロネ、例えば『霄ノ破壊神』とか、如何ノロ?」
「お、おぉう、其っぽいけれど、まぁ嫌じゃないけれど、勝手に広めてくれるなら。」
自分からは其、絶対名乗らないけれどな。
・・・あ、でも相手から其で呼ばれると恥ずかしくなって力が抑えられてしまうかも知れない。其じゃあマイナスじゃないか。
“彼奴は霄ノ破壊神!?こんな真昼間に出るなんて、”
“皆逃げろ、破壊されるぞ!!”
・・・多分一番最初に自分が逃げるな。
まぁでも其の羞恥心さえ堪えれば・・・堪えられれば此方の物だ。悪い話ではない。
抑契約自体吝かじゃあなかったんだが、でも此方としても優位な状況でいたい。
対等ではありたいと言いつつも、此でも現ソルドの手先なんだ。
食えない所もある。自分よりずっと長生きで強かなのだから。
信用はしているが、信頼は別だな。
最終的に契約するにしてももう少し丈、聞きたい事もあるし、掘り下げてみるか。
「因みに契約とは如何するんだ?そんな直ぐ出来る物なのか?私と御前、何方も契約をするタイプの種なら、何方のやり方になるんだ?」
「ノロノロは別に難しい事を要求しないノロ。意思があったら出来るノロヨ。抑殆どの精霊の契約は其の程度ノロ。術式や手順があるのは其の意志をより高めようとしている丈で、本質的には同じノロ。だからセレ神の方法って言ってもノロノロと同じノロヨ。」
「そ、然うなのか。結局は約束事と言う事か。」
確かに女王とはあっさり出来たもんな。彼も正式だった訳だ。
「一応、互いの意思がないと解除も出来ないノロケドネ。如何するノロ?実際やった方が分かり易いノロヨ。」
「・・・然うだな。悪くない話だ。私からも御願いしよう。今の御前を縛るソルドを殺してみせるから私に力を貸してくれ。だからノロノロさん、私と契約をしてくれないか?」
「勿論ノロ!宜しく御願いするノロ!」
自分が手を出すとノロノロもマントの下に隠れていた彼の碧樹の様な大きく、不形の手を差し出した。
其の刹那、確かに見えた。自分とノロノロを繋ぐ黔い鎖が。
そして自分の中へ溢れる魔力・・・確かに、此の感覚だ。
「・・・此で、契約成立ノロネ。」
小さく自分も頷く。
此の力、しっかり活用しなくては。
何となく、方針は分かった。ノロノロが教えてくれた精霊の在り方、そして自分の体質。
本当に他者の能力を自分が無意識に真似ているのだとしたら。
不変な筈の自分の存在を、朧げになってしまう程自分は変えられると言うのなら。
使ってやるさ、全て。自分の憖いの為に。
幽風が静かに頬を撫でる。
六つに分かれた自分の瞳は其の中の魔力を象り、見詰めていた。
世界も精霊も味方に付けて、全て全て、巻き込んでしまおう。
どうせ、自分のする事は世界にとって赦されざる事だ。だったら、真向からぶつかって壊してやる。
―此からも宜しくな。―
誰とはなしに放ったテレパシー、だがちゃんと届いたのか又幽風が一陣、不規則に頬を撫でて行くのだった。
・・・・・
全ての言ノ葉は世界の欠片
全て繋げば世界を象ろう
留まるはより世界を編み
進むなら壊せよ、言ノ葉の世界
変われるか滅びるか、確かめよ我等を纏いて
詠い、共に歩むのも又、言ノ葉の性なのだから
大分良い雰囲気になって来ました。最近此しか言ってないね。
冥いと言うか、ダークな雰囲気です。此の息をするのも苦しい様な空気好きです。神だの龍だの精霊だの魔力だの、一体彼女は何になるんでしょうね。
サブタイトルを付けるなら『此は私に成る為の物語』みたいな?臭い上に受験シーズンっぽいタイトルですね。別に主人公最強系の話はそんな書きたくないので、何方かと言うと不和、孤独な化物の悪足掻きみたいな話になって行く予定です。彼女の牙は世界に届くのか。
最近あるゲームをして、狂気エンドが本当に狂気に囚われた衝撃的なエンドだったので、今可也インスピレーション受けています。皆殺しのストーリーとか書き始めたら完全に影響を受けています。
と言うのも、最早恒例ではあるのですが、次話を如何しようかなと言う所なんです。バランスとしては次元を入れたい。でも未だ迫間でやる事あるんだよなって所で。
話の流れが変わってしまうので、終点は一緒だとしても何方のレールがより苦難な道なのか、少し模索したい訳です。
其と普通にリアルが可也忙しくなるので次の更新は確実に遅れると思います。もう見栄は張りません。きついです。次、絶対遅くなる。
でも絶対挫折とかはする気は無いので気長に待って貰えると嬉しいです。
では皆さん、前回も書きましたが、良い御年を!
又、御縁があります様に。




