15次元 紫冥の果て紫翠に数多の嫣紅添えし次元
今日は。フフフ、今回も中々早い投稿が出来ました。(超短編になったけれどもね!)
タイトルがどんどん長くなって行く症候群に掛かり乍らも短編です。結局纏まらないんだよなぁ・・・。
さて、今回は前回から奇跡の復活(分かっていた)を遂げたセレの全快記念回。段々チート染みて行きます。最近流行の異世界転生系や主人公最強系、其等に染まらない様に書きたいのに少し偏るのが未だ未だ自分、弱いんだなぁと反省する最近です。
まぁ抑此の作品自体自分が小学生の時に考えていますからね。中二病、発症していますからね。一寸自分は違うかも、普通じゃないかもとか夢見ていた時ですよ。噫恥ずかしくて情けない!
其を今も書いているのも如何かと思うけれども、過去の事、言えないけれども。
・・・一寸最近ネガティブ寄りなのは彼です。体調が悪い時、只の風邪なのに死ぬのかな、とか思うのと同じです。早く自分も復活したい・・・何で彼奴丈治ってるんだ。不公平だ。
とかね、色々書いているんですけれども、何と近々、大幅なアップデートをする予定です。此の次元龍屋が、アップデートですよ!
具体的に如何なるの?と言えば挿絵が増えます。もうムフフって位増えます。戴き物が届いたので此で元気になりたいです。夏には羽化したいなぁ・・・。
さ、だらだらムードは終了です!サクッと読める程度なので適当に気が向く程度に読んで頂けたら幸いです。
旻から落ちた黔い穢れ
無数の穢れが寄り集まる
何時しか此の地の全てを覆い尽くさんと
穢れは其の眼を開け、彼の者を迎え入れる
其の手を伸ばし彼の者を誘う
さぁ黔の世界へ、此の毒を注ぎ込んで
・・・・・
閑散とした蒼の蕭森の中、セレは顕現した。
樹々は枯れている物が幾らか目立つ。
顔を上げると紫混じりの蒼の丘が小さな碧山の様に彳んでいた。
次元の主導者は彼方に居る気がする。行ってみるか。
一つ大きく息を吸う。
空気が美味しい。何と言うか今すっごい生きている感じがする。凄く気分が良い。
中々良い所だし、幸先が良い。
日陰を作ってくれていた木立から一歩足を踏み出した。
「快晴か。綺麗な驕陽だな。」
旻を見詰めて淡く蒼く光る驕陽を仰いだ。
「イギャァアァアァァアア゛ァ゛ア゛!!」
其の途端、セレの喉から正に化物の断末魔の様な絶叫が零れた。
痛い痛い痛い痛い!顔が焼ける様に、抉られる様に痛い!
両手で顔を覆って転がる様に木蔭に入り込む。
刺す様な痛みは直ぐ消えたが、じくじくと崩れる様な痛みが続く。
多分今顔が凄い爛れている気がする。目が、波紋が見えない。でも覆った手の隙間から皮と言うか何か剥がれている様な・・・痛い痛い。
「如何した、何が起きた。」
影が伸びて丗闇が顕現した。
全快した直後の筈なのに又崩れたなんて何事か。
流石に丗闇も放って置く訳には行かず、未だ転がっているセレの肩に手を置いた。
完全に不意打ちだった為可也効いた様である。両手でしっかりと顔を覆っている為被害が何位か良く分からない。
暫し丗闇は考え込んで、そっと尾の先を木蔭から出した。そして遠慮勝ちにセレの髪を一本引き抜くと陽光の元に差し出した。
すると呆気なく髪はボロボロに崩れて塵となって消えてしまった。何も残らなかった掌を見詰め、一つ丗闇は唸る。
・・・此は若しかしたら、
思案している丗闇の前で何とかセレは起き上がった。未だ可也痛む様で片手で顔を覆ってはいるが、何とか多少は落ち着いた様だ。
「う・・・あ゛、セ、丗闇。いつつ・・・。何が起きたんだ。顔が滅茶苦茶痛くって・・・、」
「・・・御前、其の顔は晒を巻いた方が良いぞ。」
「う゛、矢っ張り?ううぅう・・・。」
正直セレの顔は可也グロテスクな事になっていた。ボロボロになった皮膚が肉毎落ちてしまっている。目は潰れて血塗れだし、骨も覗いている。・・・此奴の骨が黔色だって事、初めて知った。
恐らく今の状況が分かっていないからこんなにも早く落ち着いたんだろうが、今己の顔を見れば痛みで失神するかも知れない。目が潰れて波紋を出し難くなったのは僥倖だったと言えた。
いそいそとセレは時空の穴から晒を取り出すと自分の顔に巻き始めた。最早晒だらけで不審者も甚だしいが、スプラッタよりは増しだろう。
「よ、良し、巻けたぞ。如何だ丗闇。」
「・・・一応問題はないと思う。」
「然うか、有難う。でも一体・・・。症状は治まったけれどすっごい痛い・・・。折角調子良くなったのに。」
「恐らく驕陽の所為だ。彼を浴びたからだろう。」
「え、其ってえーっと、紫外線って言うんだったか?其が凄く強いとか?」
「否。我は何ともなかった。御前丈だ、然うなるのは。恐らく先の変化が躯丈でなく、体質すらも変えたのだろう。」
「っ体質?・・・若しかして、陽光に当たると燃えるヴァンパイアみたいな具合か?」
「正に其だ。御前の場合、燃えると言うより腐っている様だが。」
「え、えぇええ!!腐るって其ゾンビじゃないか。まさかそんな急に変わるなんて、じゃあ私は金輪際、驕陽の元を歩けないのか。」
「オーバーコートや晒で隠せばある程度は可能だろうが、驕陽と定義される物は気を付けないといけないだろう。毎日腐る訳には行かないし、驕陽の具体的に何が作用しているかも不明だ。先の紫外線かも知れないし、曦其の物かも知れない。或いは光の魔力か。」
「はぁ・・・なんて事だ。まぁ仕方ないな。分かった。如何にかしよう。有難う丗闇、色々と。」
じゃあ此処地獄じゃん。どっこも燦々と降ってるけれど。
「れ、礼は・・・良い。でも如何しても厳しい様なら次元を変えるのも手だが。」
「冗談。死なない様頑張るよ。」
丗闇が過保護になっている・・・。若しかして印を解いた事、責任を感じているのかな。其ともそんなに自分の顔面、酷い事になっているのか?そんなに照れもせずに気にしてくれているけれど。
「我が口を出す事でもなかったな。御前の好きにすると良い。」
其丈言い残すと丗闇の姿は掻き消えた。オーバーコートのフードを可也目深に被る。
髪もフードの中に入れた。・・・先ので禿げなくて本当良かった。若し禿げていたら余りのショックで次元を変えていたかも知れない。
・・・って、うっわ若しかして此の地面に落ちている黔いの、自分の肉片だろうか?うわぁグロいグロい。
死体とか見るのは慣れていても自分のを見るのはきつい。こんな経験、したくもなかった。
置いて置く訳にも行かないので軽く土を掘って埋めて置いた。自分の命を現在進行で救ってくれている此の木立の栄養にでもなるのだろうか。
・・・自分の肉の所為で此の碧樹が枯れた、なんて事はない様願おう。
「・・・あれ、同族・・・ですか?」
声がしたので振り返ると少し離れた所から此方を窺っている少年と目が合った。
もう波紋も使えるので少年の存在には気付いていたが、声を掛けてくれたのは好都合だ。
少年は辺りをきょろきょろと見渡すとそそくさと此方に寄って来た。
自分の此の晒だらけの有様を見た為だろう。少年は一瞬目を見開いたが、特に気には留めなかった様だ。少年は肩に掛かる位の茶髪に紫紺の瞳で、背に釼を背負っていた。
「あの僕、鎮魂の卒塔婆所属の神族で、圷(アクツ)って言います。奇遇ですね。まさか次元で同族に会うなんて。」
「あ、噫奇遇だな。私はセ、セレだ。宜しく。」
奇遇にも程がある。まさか鎮魂の卒塔婆だと。何で敵同士がこんな長閑そうな次元でばったり出会うんだ。
ついつい名乗ってしまったけれど、如何だろう・・・。晒し捲っているのが幸いして顔は分からない筈。
此処でバトルは勘弁だぞ。こんな悪条件で戦える自信はない。
「セレさんですか。・・・はい、宜しく御願いします。あの、因みに先此の辺りで何か凄い声、聞こえませんでした?何か化物か魔物の様だったので一応様子を見に来たんです。こんな平和そうな次元に似つかわしくなかったので。」
グサッと刺されてもいないのに無い筈の心臓が痛んだ気がした。
はーい其自分でーす。其の化物、目の前に居まーす。
なんて冗談でも言えない。けれど聞こえなかった振りも限界がある。優しく白状するとしよう。
「噫・・・彼は、私のね、寝言だ。此処で寝ていたんだが寝相が余りにも悪くて顔を怪我してしまったんだ。其で驚いて声が出ちゃって、晒も巻いたんだ。」
「え!?然うだったんですか。此は失礼しました。・・・然うですね。地面も何だか凸凹してますし、其にしても随分大きな声だったので。・・・大丈夫ですか?怪我は。」
其の凸凹、均さないでくれよ。肉片やら血が出ちゃうから。
まさか寝返り打って顔面崩壊するなんて普通は考えられないだろう。其は隠さないと。
「怪我は大丈夫だ。大した事はない。一応晒をしている丈だからな。後私は一寸、龍・・・と言うか、獣とかの血が入っているからあんな声を出してしまう事があるんだ。気遣い感謝する。」
つい大好きな龍族を引き合いに出してしまった。本当に然うだったら良いのに・・・なんて。
「噫獣神とか、あ!若しかして恐龍神の類の方ですか?かっこ良いですね!僕普通の人の神なので憧れます!あ、じゃあ其の手足も其の名残ですか?」
「然う然う。堅くて鋭いから余り触らないでくれ。怪我させてはいけないからな。」
「へぇー凄いなぁ・・・あ、御免なさい、根掘り葉掘り聞いてしまって!」
神同士って矢っ張り話し易い所があるな。勿論神に因るんだろうけれども、獣神とかって聞いても別に不思議と思わない様だ。まぁ巧の様な蜥蜴神も、manjuと言う饅頭も存在するのだから見慣れているのだろう。差別が無いなんて素敵だな、神族は。
まぁ自分は恐らく獣神ですらない訳だが・・・。悪魔の方が近いか?でも自分で名乗るのは少し抵抗があるなぁ。良い印象は然う無いだろうし。
其にしても、自分が殺す可きだって事、知らないのだろうか。末端の兵とか?でも、だとしたら単身でこんな所に来るか?分かった上で敢えて知らない振りをしているのか・・・?
「其は別に構わないが、何で鎮魂の卒塔婆の者がこんな所に来たんだ?何もなさそうな次元だが。」
「大丈夫です。其のつもりで来たので。えっと最近一寸色々あって、休憩と言うか、御休みです。強いて言えば何か目ぼしい物と言うか。面白い物があったり、良い景色でも見られたら友神を連れて来たいと思ったんです。彼も最近凄く疲れているみたいだからリラックス、出来ないかなって。」
嘘・・・ではなさそうだ。普通に良い子然うではある。
愛想笑いにも微妙に影を感じる。相当御疲れの様だ。・・・其の原因は自分にあるかも知れないが。
「然うか。だとしたら此処は割と良い次元だと思うぞ。空気も良いし、でも友神は良いな。そんな風に思って貰えて。良い事だと思うぞ。」
「はは、有難う御座います。彼とは本当、永い付き合いなんで。神になって友神が出来るなんて恵まれているなって思うんです。友神・・・あの、フォードって言うんですけど、一寸気難しいけど良い奴なんですよ。」
然う言って圷は屈託なく笑った。
でも自分は冷汗を流して微妙に微笑んで固まる許りだった。
・・・やっばい。絶対末端じゃない。寧ろ重鎮だよ。多分自分を殺した方が其の御友神はリラックス出来ると思うよ。其か若しかして目ぼしい物として連絡されたりして・・・。一柱で居るの見付けたって。此処は逃げるが吉か?
いや、でも反対に考えろ。見た所此奴も一柱で来ているらしい。少なくとも波紋には他に誰も映らない。二柱限だ。
自分には彼の零星も干渉力もある。何より今は絶好調だ。顔面崩壊しても元気だ。やれる。・・・勝てる筈だ。
此処で彼を懐柔するか神質にすれば鎮魂の卒塔婆を上手く出し抜けるかも知れない。
ククッ、フォードに友神か。思ってもいない情報だったけれど、彼の神にもこんなプライベートがあったとは。
圷は鎮魂の卒塔婆にとってアキレス腱になるかも知れない。
棚から牡丹餅、貴重な時間だ。此処の出方で事と次第が大きく変わる!
―・・・御前、今凄く悪い顔になっているぞ。やるのは自由だが、先あんなに頑張って生き永らえたのに生を実感した直後にするのが神攫いか。―
―ちょっ、誤解しないで丗闇さん!あわよくば、あわよくばだから。前面には出さない。抑私には懐柔させる話力も、マインドコントロールをする技術も無いんだ。―
―でも無理矢理屈服させられる力はあるだろう破壊神。―
―い、いやー其程でも。まさか丗闇に実力を認められるなんて。―
―・・・御前の下劣さは認めるが褒めてはいない。―
「えっと・・・聞いても良いですか?セレさんは一体何の御用で来られたんですか?」
晒の御蔭で自分の邪悪な笑みは見えなかったらしい。すっかり黙って仕舞った様に感じたのだろう圷は、そんな遠慮勝ちに尋ねて来た。
まさか自分を攫う計画を立てているなんて、考えないだろうな。
さて、何処迄正直に話す可きかな。
「んん、大した用もないんだが、今適当に旅をしているんだ。で、序でに次元の主導者でも見付けて次元を正そうかな、なんて。」
「次元を正す。・・・あ、黔日夢の次元の修復って事ですか?若しかして其が使命だとかですか?」
「いや、使命じゃないけれど、まぁ此も一つの縁って事で。」
然う言えば自分の使命って何なんだろう。完全体になれたら分かるのかな。
「す、凄い!慈善事業って所ですか。偉いなぁ、僕そんな崇高な志もないし、何が出来るか考えた事も無かったのに。」
「凄いだなんてそんな。本の一寸した事で案外次元は救える物だし。」
「いやいや、だって黔日夢の次元を起こした本神は今も何処かでのうのうと生きてるんですよ。だのに赤の他神のセレさんが尻拭いをしてあげてるなんて。純粋な善意でないと出来ないですよ。」
や、やばい。無い筈の心臓が裂かれる様だ。此奴、精神攻撃が出来るのか。
然うだよ。其ののうのうと生きている神が自分だよ。自分で自分の償いしてるんだよ。滑稽だろう?
「あの、セレさん、良ければ共に同行って御願いしても良いですか?次元の主導者探しに行くんですよね?」
「噫別に良いぞ。一緒に行こうか。彼の丘の中心へ行くつもりなんだ。」
指を差すと圷も其を目で追い、感嘆の声を漏らす。
「彼所ですか。彼所なら僕も都合が良いかも知れません。宜しく御願いします!」
「此方こそ宜しく。じゃあ早速行こうか。後私の事は呼び捨てで構わない。私も圷と呼ばせて貰うからな。」
「分かりました。では行きましょう。」
言うや否や圷はさっさと丘を目差す。
「・・・・・。」
然うか。然うだよな。勿論歩いて行かないとな。此処から動かないとな。此の安全地帯を出ないといけないよな。
一つ長く息を付いて立ち上がる。
出る前に最終確認。オーバーコートから出ている所は全て晒を巻いているし、フードも目深に被った。今回は顔にも晒をしているから鼻先が晒される事も無い。
そろそろと足を陽の元に出してみる。
・・・大丈夫、何とも無い。
緩りと全身を陰から出すが、如何にか上手く隠せている様だ。
一応一安心。
ほっと胸を撫で下ろして直ぐ様圷の後に続いた。
・・・・・
暫く黙々と歩いていたのだが、圷はずっと物珍しそうに何度か辺りを見渡していた。
「其にしても旅って良いですよね!だって色んな次元に行くなんて。此処みたいに一つ一つ全く違うでしょうし、迚も楽しそうです。具体的にどんな所へ行って来たんですか?」
御世辞ではなく本気で興味があるらしく、迚も目が輝いていた。冒険譚とかに憧れる年頃なのだろう。
「然うだな・・・。そんな大した所には行っていないけれども。始めて日も浅いし、こんな蕭森とか、瀛海とか、雪山とか、廃墟になった街とか、噫土を掘り続けた次元もあるな。」
「雪山!?其って勿論銀雪、あるんですよね?僕一回も見た事がなくて、旻から皓い埃が降って来るんですよね?其が積もる程だなんて不思議で、多分嚏が止まらなくなるでしょうけど、一回見てみたいんです。雲華の上で神が大掃除をしてるって言うじゃないですか。だから旻は綺麗なんだって聞いて・・・。」
「いや、其は多分銀雪じゃない。そんな次元もあるかも知れないけれど・・・。私が知っている銀雪は水で出来ているんだ。」
埃が降るって、そんなの自分は絶対行きたいって思わないぞ。汚過ぎるだろう。
「え!?水!?何で水が皓くなって積もるんですか?若しかして牛乳とか・・・?え、旻に牛が居るんですか?」
「ミルキーウェイって言う零星の集まりがある事は聞いた事があるが・・・一回本物を見た方が良い。百聞は一見に如かずだ。」
「そ、然うですね。然うします。・・・でもアーリーさんに、あ、同僚の事なんですけど、彼女に教えて貰ったんですよ。アーリーさんの次元は然うだったのかな。」
いや、其の銀雪の次元に居たのがアーリーだし、絶対揶揄われているぞ。
・・・でも彼のアーリーを同僚か。確か遊撃部隊隊の隊長だったか?矢っ張り圷の階級はそれなりに高いらしい。
「ん・・・然う言えば先から気になってたんですけど、何なんでしょうか。此。」
圷が近くの木立の枝から生えている中心が黔っぽい紫水精を突っ突いた。
丘の中心に向けて少しずつ増えている気がする。
碧樹の枝や洞から幾本も生え、時には根から生えたのか地面の一部分が結晶化している所もあった。
綺麗と言えば然うだが、でも進むにつれて枯れた草木が目立って来たのも確かで。水精の生えた碧樹と枯れた碧樹、此の二つにはっきりと分けられる様になった。
「樹液とかの一種かも知れないが、其が原因で枯れているのかも知れないし、余り触らない方が良いんじゃないか?」
「然うかもしれませんね。此の黔い所、何か不気味ですし・・・。何か動いている気がするんですよね。何かの卵とかだったら嫌ですし、放っときましょうか。」
「卵・・・か。其の発想は無かったな。でも動いているのか?じゃあ水精の中は液体が入っているのか?」
「うーん、焔みたいに動いてますけど、液体か如何か迄は。でも何の水精もありますよ。」
波紋の性質上水精の中は見え難い。でも黔い焔みたいか。自分としては幻想的とも思えるけれど、想像しているのより余程激しいのだろうか。不気味に見える、か。
「・・・?・・・ひぇ、え。」
圷が足元に違和感を覚えて見ると、黔く細い手が圷の足首をがっしりと掴んでいた。
其の腕は酷く細く、枯枝を集めて作ったかの様に節榑立っている。そして其の先は木立の影からだった。
否、影ではない。良く見ると其は地面に広がっていた黔い染みだった。
何時の間に、と思う間もなく、其の黔い染みから頭と思しき物が生えて来た。そして大きな目玉が圷を上目遣いに見遣る。
突然圷の膝が砕け、尻餅を付いてしまう。力が抜けてしまって立てない。
「う、うわ、セ、セ、セレ。あ、あの此、」
「ん。何だ此奴は。」
セレが圷の傍で屈んで其の染みを見詰める。すると彼の目玉もセレを見詰め、笑った様な気がした。
そっとセレが手を伸ばすと黔い腕は圷の足を開放し、直ぐ染みの中へ引っ込んでしまった。其に続いて目玉も染みの中へと沈んで行った。
「何なんだ此は。」
「わ、分かりませんけど、助かりました。有難う御座います。」
少し青褪めた面で圷が頭を下げる。
対してセレは耳をピンと立てると立ち上がった。
「いや、未だ助かっていないかも知れないぞ。」
波紋に映る幾つもの影。
何時の間にか辺りは無数の彼の染みが広がっていた。
そして先と良く似た手や瞳が幾つも這い出していた。彼等が動くと同時に見る間に辺りの嫩草が枯れて行く。
「若しかして彼の所為で碧樹が枯れているのか?」
「僕の力が抜けたのも其かも・・・。彼に触られると生命力が奪われるのかも知れません。・・・ってえぇ!!」
へたり込んでいた圷に先程の彼の染みから無数の手が生えて襲い掛かった。
圷を押し倒し、手や足に絡み付いて行く。そして沢山の瞳がすっかり怯えてしまった圷に注がれた。
周囲からもどんどん手が伸ばされて行く。救いを求める様に、縋る様に次から次へと。
「おい、彼方へ行け、圷から離れろ!」
自分が手を伸ばすと直ぐ皆引っ込めるが限がない。
染みもどんどん広がり、すっかり辺りの草木は枯れてしまった。
「セ、セレ助け・・・、」
「くっ、此奴等鬱陶しいな。」
セレが口を開けると黔い球体が渦を巻いた。そしてレーザーとなって放たれる。
圷に絡まっていた腕は直ぐに引っ込み、染みも消えて行く。其の儘レーザーを薙ぎ払って周囲も満遍なく当ててやる。
頃合いを見てレーザーを止め、一つ息を付いた。
うん、彼の染みはなくな・・・おぉぉお。
改めて辺りを見て驚愕する。辺り一面完全な焼け野原。もう枯木も水精の付いた碧樹も関係ない。燃えている。所か可也地面も抉られている。怪獣が暴れたかの様だ。
や、遣り過ぎた。威嚇のつもりが殲滅になっている。何より此の儘だと大火事だ。
其が不味いのは嫌でも分かる。次元の主導者には会っていないけれど、此は此の次元を滅す行為と言うのは断定出来る。早く消火しないと。
「盧水!」
唱えると大きな揺れが襲った。嫌な予感がしてももう遅い。
地面から間歇泉の様に勢い良く盧く染まった水鉄砲が放たれた。
其は直ぐ様火事を呑み込み、木々を流して広大な泥濘へ変貌させる。
水が引いた頃には丘は更地となってしまっていた。
「・・・・・。」
―・・・破壊神、元気になったのは良いが戯れに破壊を試みるのは如何かと思うが。其とも黔日夢の次元の再来が希望か。―
―ち、違うんだ丗闇。何時も通り、何時も通りにしたつもりなんだ。だのに、何か威力が二乗所か三乗、其以上に膨れ上がっていて、―
―其が御前の本来の干渉力なのかも知れないな。欠けていた所を補った結果だろう。・・・未だ上があるとは思っていなかったが、慣れるしかないな。―
でも完全体になったと言っても其から成長する事もあり得る。姿が変化する程の干渉力は有しているのだから神であり乍らも卵から孵った雛の様に、完全体になったからこそ卵から孵った。スタート地点に立ったとも考えられる。同種が分からない分、慎重に考えないといけない。此以上の脅威になる可能性を。
―な、成程。まさかこんな簡単に勁くなってしまうなんて。思ってなかったな。―
チートみたいで何となく申し訳なく思う。まぁ存分に使うが。
―・・・子供が何時か大人になるのと一緒だ。両者の違いは自分の行いに責任が持てるか如何かだ。力がある物には其丈責任を伴う。蔑ろにはしない事だ。―
―然うだな。良く分かった。有難う丗闇。―
波紋を飛ばすがもう近くに彼の染みはない様だ。
すっかりびしょ濡れになった圷がきょとんとした風に辺りを見ていた。
「も、若しかして先の、セレがやったんですか?」
「あ、噫一応・・・可也遣り過ぎてしまったけれど、力加減が苦手なんだ。服を濡らしてしまって済まなかったな圷。」
頭を掻いて困った様に眉間を寄せるセレの顔をじっと圷は見詰めていた。
「ビーム、吐けるんですか。」
「まぁ・・・然うだな。」
「闇魔術も使ってましたよね。」
「噫其が一番得意なんだ。」
「何方も迚も高威力でした。そんじょ其処等のレベルではなく。」
「其は如何も。御褒めに預り光栄だ。」
・・・やばい、流石に自分が黔日夢の次元の実行者ってばれたか。
ばれてしまっては仕方ない。自分の力は十分伝わっただろう。怪我したくなければ大人しく神質になって貰おうか。・・・うん、口上としては十分だろう。後は彼を縛るなりなんなりして・・・。
セレの苦笑交じりの笑顔に冥い陰が忍び込む。
其を知ってか知らずか立ち上がった圷はセレの正面に立つ。服からポタポタと雫が落ちるが気にしていない様だった。
「セレ、一つ御願いをしたいのですが、其の力、僕達に貸しては貰えませんか!」
はきはきと言い切り、丁寧に御辞儀をされてしまう。・・・さて、此は如何言う流れかな。
「僕一柱だと如何なっていたか・・・。セレの御蔭で助かりました。本当に有難う御座います。其の腕を見込んでなんですが、御存知ですか?鎮魂の卒塔婆は今、黔日夢の次元の実行者であるセレ・ハクリューを討伐しようと活動しているんです。如何か其の手助けをしてくれませんか。もう十分実力は分かりました。貴方なら屹度勝てると思うんです!皆で協力すれば屹度!」
「ん、ん!?え、あーっと・・・えーっと・・・。」
まさかの勧誘だと!?其は考えていなかった。此はチャンスか?いや、罠の可能性が高い。自ら敵地にゲストとして呼ばれるなんて不利過ぎる。
そりゃあ勝てるとは思うよ。自殺すれば済む話だからな。誰がするかそんな事。頼まれても駄目だ。
でも断ると印象が悪くなるな、懐柔路線は厳しいか。矢張り神質にした方が手っ取り早いか?
「あ、矢っ張り知らないですよね。然うなんです。黔日夢の次元を起こしたのは貴方と同名のセレって言う化物なんです。最初名前を窺った時、少し丈疑ってしまって済みませんでした。でも大丈夫です!貴方と彼の化物は全く違いますから。・・・えっと、僕も会った事はないのでどんな姿なのかは知らないんですけど、聞いた所に因ると彼方はもう翼とか尻尾も生えてて、非情で心なんて無い程酷い奴なんです。でも貴方は違う!自ら世界を救う為に旅をしてるなんて、其に一柱だと言うのにそんなにも強かで、僕感動したんです!未だ世界にはこんな素晴らしい方が居たって。だから一緒に頑張ってみませんか。皆で手を取り合えば、」
「んん、随分高く買ってくれているみたいだけれど、私は団体行動が苦手だし、御前が思い描く様な正義のヒーローでもない。でも圷の願いも良く分かったよ。だから一先ず保留にさせてくれないか?」
然う、正に其の通り、非情で心なんか無い程酷い奴だからな。随分沢山語ってくれたけれど、そして驚く可き事に其の特徴に尾鰭が全く付いていないのだが、其でもだ。何一つ間違った事は言っていないのにそんな正義感でそんな元気良く自分を殺そうと勢い込んでいるのを見ていると沸々と怒りが沸いて来る。自分を殺すだと?やれるもんならやってみろ。
何か自分、完全体になってから性格も変わってしまったらしい。変わったと言うか、より歪んだか。生きる事で我儘になってしまった。ガルダが生きろって言ったから生きているんだって。ククッ、我乍ら本当に最低な奴だ。
圷が悪い奴じゃないのは分かっている。でも自分は悪い奴だからな。そんな自分は一般的な善良な市民面した奴が一番嫌いなんだ。然う言う奴等が一番自分に石を投げて来たからな。
「然うですか・・・。あ、いや、気にしないで下さい。然うですよね、直ぐ決められないですよね。でも僕の気持は本物ですから。何時でも返事、待ってますから。」
「噫有難う。じゃあ取り敢えず先に行こうか。・・・あ、いや、一寸待ってくれ。」
「?如何かしましたか?・・・あ、彼って・・・。」
遠くから何かがやって来るのが見える。動物?いや、何だろう此の感じ。
其の儘此方迄やって来たのは鳥と鏡餅の様な獣が其々六匹程。
「龍族だ。瞿玉鳥(クギョクチョウ)とモンタ・・・、」
やって来た鳥の様な龍族達が一斉に其の儘セレの顔に飛び付き、己の翼で抱き付いて来た。
「・・・・・。」
・・・懐かれているのかな。攻撃じゃないと信じたい。
晒の所為でモフモフが堪能出来ないなんて・・・。まぁ取っても痛い丈だけれど。ってかフードと晒取るなよ。取った瞬間御前達の羽根を毟って即席フードを作るからな。
「ふぉふ、ふぁぶっ、ふぇふんぶふぁ。」
「・・・セレ、取り敢えず引き剥がした方が良いと思いますよ。」
そっと両手を出し、先ず顔面に張り付いているのを捕まえて引き剥がした。すると他にも引っ付いていた龍が頭から離れて辺りを飛び交う。
捕まえた奴も大人しくしていた。特に抵抗もせず其の儘ぶら下がっている。
其の龍は直径30㎝位の絳の毛玉に嘴や翼の生えた様な姿をしていた。
沢山の尾羽根や飾り羽根を持ち、迚もモフモフしている。目は無く、黔く四方に分かれている嘴の先に紫の瓊を銜えており、其に黔の縦縞が入る。彼等瞿玉鳥の最大の特徴と言えるだろうか、彼等の銜えている其の瓊が彼等の瞳なのだ。宝石の様でもあるので割と重宝されているらしい。目玉よりモフモフの方が重要だと思うが。
目玉を銜えていると言うと恐ろしそうな印象を持つが、彼等は飛属性だし、今知った事だが中々大人しくて懐こい様だ。ぶら下がった儘の瞿玉鳥の瞳が一所懸命自分を見ようとクルクル回るのを見ると不思議と可愛く見えて来る。
―神様ガ居テ良カター!迚モ助カター!―
甲高いテレパシーを上げて足に擦り寄るのはモンターヴと言う龍だ。此方も小型で全長20㎝位の鏡餅に垂れ耳が付いた様な姿をしている。先の割れた細長い尾と、頭の頂点に撮みの様な不思議な触覚がある。頭と耳に翠属性の甲を持つが、素晴しいのは其の薄い翡翠の体躯が全てモフモフで形成されていると言う事だ。足が無いのでピョンピョンと跳ねて足に擦り寄って来るのだが、もう幸せである。
「此方が瞿玉鳥で、足元に居るのがモンターヴって言うんだ。私はセレだ。宜しく。此方は圷だ。」
―ヨーシク!―
モンターヴ達がてんでバラバラに拙いテレパシーを送って来る。頭の触角の先がピカピカ発光している。
其、然う言う用途だったのか。・・・何か癒されるな、此奴等。
「セレ、大龍気ですね。名前も知ってるなんて。でもちゃんと名乗るんですね。魔物・・・みたいな物じゃないですか。」
「其は偏見じゃないか圷。私だって人間とは似ても似付かないし、意思疎通が取れるならコミュニケーションは取る可きだ。種の違いなんて大した事ないだろう。」
な、と捕まえた儘の瞿玉鳥に声を掛けると嬉し然うに口端を上げた気がした。銜えていた目玉がくるんと一回転する。
モンターヴも其の愛らしい円らな瞳で見詰めて来る。噫可愛い。人間より余っ程良い。寧ろ自分としては彼等に対しての方が礼を尽くすだろう。自分程の化物だって他にいないし。
「あ・・・そ、然うですね。失礼な事を言いました。御免なさい瞿玉鳥さん、モンターヴさん。・・・屹度セレのそんな誠意が伝わったから彼等もセレに懐くんですね。」
「そ、然うか?皆からは散々性格悪いと言われているけれど、其の自覚もあるのに。」
ずっと掴んだ儘だった瞿玉鳥を放してやると頭に乗っかってしまった。・・・まぁ好きにさせとくか。
フリューレンスが言っていたな。多分自分が彼等に斯うも懐かれるのは然う言う体質らしいけれど。
「でも扱いに慣れている様ですけど、矢っ張り沢山の龍に会ってるんですか?」
「噫、大鷲だとか氷鏡の曦を浴びたら飛べるのだとか、碧樹が生えているのだとか。幻を作れるのと・・・心が読める奴もいたな。」
「へぇーじゃあ龍族って言っても全然別物なんですね。」
「其は神も一緒だろう。次元だってバラバラだし、名称に大した意味も無いんだろう。」
「其も然うですね。あ、然う言えば助かったって如何言う意味ですか?」
「黔日夢の次元以降龍達は次元を行き来出来なくなったからな。神に会う事で次元の迫間だとかに行ける様になるんだ。然う言う意味だろう。」
―ソートーリ!―
モンターヴ達が同意のテレパシーを上げる。屈んでそっと撫でてやると嬉しそうにキューキュー鳴き始めた。
つい抱き締めたくなるが、こんな腕である。何とか踏み止まって其の分存分に撫でる事にする。
「黔日夢の次元の被害って次元丈じゃあなかったんですね・・・。若しかして龍に詳しいのは彼等を捜し乍ら旅をしているからですか?もう沢山会ってるんですよね。」
「然うだな。此も縁だし、皆可愛いし。」
依頼、とは言わない方が良いな。店を勘付かれてしまう。
「凄い!彼等が懐くのも納得ですね。尊敬しますセレ!」
「は、はは有難う。」
彼等をこんな目に遭わせたのも自分だから何とも言えないけれど、寧ろ彼等が寛容過ぎるんだ。
―此カードースルノ?帰ルノ、ディローニ?―
「いや、私達は次元の主導者の所へ行くつもりなんだ。此の丘の上に居る筈だからな。」
―ジャー一緒行クー!此ノ次元護テー!痛イ陰霖ト、彼カラ!御願ー!―
「彼?・・・ひ、ま、又出た!」
圷が振り返ると何時の間に集まっていたのか又黔い染みが広がっており、彼の目で此方を見詰めていた。
「又か・・・退け。でないと又焼き払うぞ。」
口を少し開けて形成される彼の黔い球体を見せ付けるが、彼等は一瞬引き掛けた丈で寄って来る。
だったら仕方ない。言って分からないなら実力行使だ。
セレが漆黔のレーザーを其の瞳達へ放った。
直ぐ目は地面に引っ込んで避けたが、レーザーが薙ぎ払われた事で地面は盛大に抉れ、土砂は巻き上げられ、焼け焦げてしまった嫩草の匂いが立ち昇る。
もう染みなのか焦げ跡なのか如何でも良くなる位酷い有様にしてしまった。
威力が高過ぎる、もう少し自制しないと・・・。
―少し荒過ぎないか?本気で破壊神を目指しているのか。―
丗闇からの小言だ。少し頭を掻いて渋面を作る。
―分かっているんだけれど調整が難しくて・・・。後何かレーザー出せる様になったんだ。前は術として使っていたのに今は普通に、体内エネルギー圧縮袋がある様な感じ。気を抜いたら欠の時も出そうなんだ。―
―変化は体内も勿論あると思ったがレーザーか・・・。呉々も扱いには気を付けろ。―
―だな。ん、今度練習して置こう。―
―練習も如何かと思うが・・・。―
確かに一寸荒っぽくなっている気がする。変化の影響が性格にも出てしまうのだろうか。
別に暴れん坊になりたい訳ではない。力を手に入れて気が大きくなるなんて御免だ。気を付けないと。
「もう大丈夫そうだな。」
「や、矢っ張り勁い!レーザーって良いですよね!恐龍みたいで!焔は吹けないんですか?」
「恐龍ってレーザー吐けたか?焔は吐けないけれども。」
恐龍ってでっかい蜥蜴だろう?何でレーザーが吐けるんだ?
あ、でも焔は頑張れば吐けるかも。
レーザーを吐かずに溜める丈にしたら崩れて火焔っぽくならないかな・・・。高エネルギーを小さく複数爆発させれば・・・ってか何で焔?こんな所で出したら先みたく大火事になっちゃうよ。
―行ーコ行ーコ早ク、早ク。―
「あ、然うですね。行きましょうセレ。」
「噫、又彼奴等が来ないとも限らないし。」
丘の頂上は此の先、もう直ぐだ。次元の主導者も屹度其処に居る。
・・・・・
「わぁ、大きな嵒ですね。」
少し開けた所に出た。割と此処は碧が多い。矢張り枯れた樹もあるのはあるが、でも雑草も多い。此処は他と違って彼の水精で覆われている地面も広がっていた。
其の中央には歪な大きな嵒があった。自分達よりもずっと大きい。4m位の高さだろうか。
其の嵒の所々に例の水精が付いていた。其は良く見ると嵒の下方に連れびっしりと付いている。
「此の嵒が次元の主導者みたいですね。」
「然う・・・だな。大き過ぎる所為か次元の主導者の気配が強過ぎて特定し難いけれども。」
もう此の辺り一帯が次元の主導者な感じ。土地が次元の主導者って事もない事はないだろう。
「でも一体何をしたら・・・ん。」
更に良く見て見ると少しずつではあるが嵒から水精が生えている気がする。下方の嵒の切れ目や隙間からニョキッと釼の鋒の様に生えて来る。
圷も其に気付いた様で僅かに後退した。
「も、若しかして此の嵒の中か下、其処に水精の本体と言うか、大本があるんじゃないですか?此の嵒が割れたら溢れ出るのかも知れないですね。」
「成程、其を防げと言う事か。」
「でも此の水精綺麗ですよね。紫に透き通って。時間が経つと周りのみたいに中が黔くなっちゃうのかな・・・。」
中の色が違うのか・・・。其は言ってくれないと分からなかったな。でも綺麗か。其は同意するけれども何方かと言うと自分としては此から少し嫌な感じがするから余り近付きたくない。力を阻まれる気がする。
暫く眺めているとずっと辺りを羽搏いていた瞿玉鳥達が何が楽しいのかフードに留まって重なり合って行く。一寸重たいし、バランスが厳しい。
若しバランスを崩してフードがずるっと取れた時には圷が綺麗と言っていた水精を此の血で真黔に染めてしまうので止めて頂きたい。非常に危なっかしい。
後晒を突っ突くな。自分は玩具じゃないんだ。足元で群がるモンターヴ達ももう少し離れて欲しい。本当如何してこんな晒塗れの不審者なのにこんな懐かれるのだろう。
良いんだけれど、嬉しいんだけれど、一方的な好意に甘えられる程良い教育は受けていない。素直に受け止められない自分は如何しても裏があるのかと必要以上に構えてしまう。
「・・・ん、陰霖か。」
陰霖の匂いに鼻が動き、波紋が直ぐ様其の小さな粒を捉える。
黔い陰霖だ。少し不吉だな。薄く掛かる雲華の割に其の陰霖の所為で冥く見える。
―ア、ア、嫌ナ陰霖ダ。痛イ陰霖ダ。―
―ニーゲロ、ニーゲロ。―
戯れていた龍達が一斉に近くの碧樹へ雨宿りする。
痛い陰霖・・・?然う言えば先も其、然り気なく言っていた気がするな。如何言う意味だろう。
「あ、あれ、何か又・・・力が。」
圷が少し丈ふら付いて嵒に手を着いた。
「疲れが出たのか圷。」
「い、いえ、何か急に、疲れが出たと言うより、力が無くなる様な。」
―早クコーチ!其ノ陰霖、変ナノ!此方、休ンデ!―
其を聞いて圷はいそいそと碧樹の下へ雨宿りをする。そして一つ息を付いて地面に座り込んだ。
「ほ、本当だ。陰霖が掛からなくなったら少し楽になりました。セレは大丈夫なんですか?」
「噫、寧ろ陰霖の方が調子が良いな。」
波紋が良く見えるし、何となく濡れる程楽になる気がする。闇の魔力でも含まれているのだろうか。其ともそんな体質も獲得したのだろうか。
「・・・げ、ま、又来ましたよ!」
圷が指差すとわらわらと此迄の比じゃない程の彼の黔い染みの瞳が此方を見詰めていた。指を指した所丈ではない。此の丘全体が此奴等に囲まれてしまっている。仲間を集めて来たのか。其とも巣やコロニーがあるのだろうか。
「矢っ張り彼の嵒を壊しに来たんですよ!屹度彼の水精を取り出して仲間を増やす気なんです。何とかして追い払わないと。」
圷は背に掛けていた釼を取り出した。
其の釼は酷く刃毀れしており、くすんでいて錆びていた。石を削って出来ている柄の端に無色透明の鎖が付いている。年代物の様ではあるが凡そ戦闘で使える様な代物ではなかった。
「錦地四握、地隆!」
其の儘釼を地に突き刺す。すると周囲の地面から砂が塊になって隆起し、真直ぐ彼の染み達へ突き出された。
「錦地二握、地堅。」
隆起した砂が嵒と化し、地面へと激突し、地を揺らした。
そして何匹かの染みを地面から弾き出し、吹き飛ばす。大半は碧樹だとかにぶつかり、地面に叩き付けられたが、一部の染みは掻き消えた。
「圷、今のは。」
「あ、此が僕の武器なんです。砂を操れる釼なんですけど。形を自由に変えられるのは良いんですが、元々砂なので脆いのが難点で。・・・ほら、」
圷が顔を上げると確かに先隆起した嵒は陰霖に打たれてぼろぼろと崩れて行く。
其の上良く見ると周りの樹々や嫩草がみるみる萎れて行く様である。そして枯れた樹からもひょこひょこと数多の目が此方を見詰めていた。
「此は・・・限がないな。」
「でもやるしかありません。セレは陰霖が大丈夫なら嵒を護って下さい。僕は僕で如何にか防いでみます。」
「分かった。・・・然うだ。圷、一寸屈んでくれ。瞿玉鳥も低く飛んでくれ。一気に蹴散らす。」
「一気に?分かりました。」
指示通りに圷が屈んでくれたので左手を後ろに逸らし、広げる。
「憖うは武、振るうは狂、応え・・・破壊の時だ。」
自分の内側から世界へと。思いの儘に零星を吐く。
「慈紲星座。」
蒼の零星が散り、両手に収束する。
矢っ張り、干渉力が上がっている。其の御蔭で零星の数がぐんと増えている。
「DROWSTAERG「efink「was「rebas「raehs」
一気に唱えると零星が星座を紡ぎ、滅茶苦茶な武器を創造する。
先ずは刃渡り60mはあろうかと言う刀が両手に。そして其の刃の下からぞろぞろと釼や鋸が大量に現れる。
此の零星の武器は実際に質量を持っていない為重くもなく、刃毀れしないので扱い易い。何より最大の特徴は、
両手を振るい、じっと見詰めて来る染み達を薙ぎ払う。斬っても又生えて来そうだったので、今回は敢えて鈍にして其の刃の背に大量の染みを叩き付ける様に乗せ、吹き飛ばす。
だが飛ばされたのは染み丈。碧樹や、勿論圷達も怪我一つない。
上手く行って良かった。念の為圷達には伏せて貰ったけれども、斬り分けが出来た。
此の零星の武器は自分の魔力と干渉力の結晶だ。其の為思いの儘に変化させ易い。染み以外が触れた時は一時的に星座が切れる様に意識したんだ。
辺り一帯の染みを吹き飛ばし、刃の星座を解いた。
何十体もの染みが掻き消えるが、余り減った感じがしない。・・・全部は消せなかったか。
「・・・っ!矢っ張り。彼の黔いの、水精に吸われているみたいです!彼が水精に当たると水精は黔くなるけれども彼も消えます!」
「然うか、然う言う事か。」
波紋に頼っている自分には分からなかったが、然うか。消えたと思った染みは全て水精に吸われていたのか。
つまりは、如何言う事だ。・・・整理しないと。全ての種がもう揃っている筈。
陰霖が降り続いている。
気付けば又地面に彼の染みが広がって手や瞳が無数に生まれた。
「ひ、い、一体何処から湧いて来るんですか此奴等・・・。」
染みの瞳が圷達に向けられ、じりじりと近付いて行く。
意外にも嵒の近くにいる自分の元へは一匹も来ない。興味が無いのだろうか。
然う言えば彼の染みに掴まると力が抜けてしまうんだったか。
・・・若しかして、此の樹々が枯れる陰霖。彼の染みの正体は実は此の陰霖ではないのか。
彼の染みは水精に触れると吸収される。そして・・・然うだ。枯れていない碧樹には皆、水精が付いている。
水精は彼の染みの卵なんかじゃない。彼の水精の御蔭で此の蕭森は生きているんだ。
ちらと背後の嵒を見遣る。
此の下に・・・水精の温床がある。此を開放すれば・・・染みも消える。
「kwahamot!」
挙げた左手に零星が収束し、10m程の大斧を象る。
其を思い切りセレは嵒に叩き込んだ。
岩に罅が入り、一気に砕け散る。そして間歇泉の様に其の下から紫の水精が溢れ出した。
内部は液体なのか水精の塔はうねり乍ら伸びて行き、砕け散っては其の欠片を丘全体へと散蒔いて行く。黔い陰霖に混ざって紫の欠片が降り注がれる。
「此で・・・如何だ。」
星座を崩し、波紋を広げる。
幻想的な紫水精の噴水を圷も瞿玉鳥もモンターヴも、染み達でさえ見詰めていた。
だが突然其の噴水に真黔の塊が混ざった。
其は目も何も無い真黔の鰭を幾つも持つ蛇の様だった。全長は100mを優に超え然うだ。
寛と身をくねらせ乍ら旻を飛び、紫水精の塔を幾重にも取り囲む。
「ヒギュァア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛!!」
蛇が耳を劈く程の叫び声を上げる。すると周りにいた染み達と、水精に閉じ込められていた染み、旻を覆っていた黔雲迄もが蛇に吸い寄せられて取り込まれた。
其により更に蛇は肥大化した。もう波紋でも其の全体は掴み難い。まるで世界を包むヨルムンガルドの様だ。
「まさか此奴が元凶ですか!如何にかしないと此の次元が壊されてしまいます!」
蛇が此方に気付き、突進を繰り出した。
此の儘当たれば此処等一帯が枯れ果てる。紫水精さえ駄目になるかも知れない。此処で止めないと。
「錦地四握、地隆!」
砂が集まり、巨大な壁を作る。
「wasniwt」
自分も両手に巨大な鋸を零星で編む。鋏の様に斬るのが理想だが、果たして届くだろうか。
蛇が土壁に激突し、振動で地面が大きく揺れる。
だが壁はあっさり砕かれ、顎門を開けた蛇の頭が目前迄迫った。
「圷!出来る限り下がれ!私が止める!」
両手の刃を広げるも、蛇の口幅程大きくない。だったら一気に左頬を斬り付けて進路を逸らす!
狙いを付けて刃を揃える。そして蛇へと一歩踏み出す。
―助ケて!!―
「・・・え、」
唐突に届いたテレパシー。其は蛇からの物の様で。
思わず固まってしまったセレを其の儘蛇は鋸の刃毎丸呑みして又上昇した。
「セレ!!」
何とか蛇の突進を免れた圷が急いで辺りを見渡して状況整理する。
セレが居ない。彼の蛇は無傷の様だ。
モンターヴ達が怯えた様に固まっている。
呑まれたのか、彼の蛇に。
「は、早く助けないと!」
圷は釼を構え、しっかりと蛇を見据えた。
でもあんな化物、如何すれば。
あんなに勁かったセレがあっさり食べられた。僕なんかが出しゃばった所で・・・。
いや、考える丈無駄だ。行け、動け、足!
身をくねらせた蛇も圷と相対する様に見据えていた。
・・・・・
「う・・・んっ、」
頭を押さえて波紋を飛ばす。
此処は・・・何処だ。何があった。
確か自分は、然うだ。彼の蛇に食われて・・・。
じゃあ此処は奴の腹の中なのか?
波紋が上手く働かない。上下も分からない。
何だか真黔の水で満たされた容器の中に閉じ込められた様だ。
でも不思議と息は出来る。其と妙な安心感があった。周りが闇一色だからだろうか。
兎に角、早く此処から出ないと。今は何ともないが消化されてしまう。痛いのは御免だ。
陽で溶けて次は蛇ってか。嫌だよ其。
自分の此のかったい手足が溶けるか如何かは別にして。
零星は何時の間にか解除されているが又唱えてしまえば、
不図気付けば闇の中から大量の手が伸び、自分に絡み付く。
真黔の手。関節が曖昧で迚も長い。
「っ放せ!」
手を振り解こうとして竦み上がってしまう。大量の瞳が闇の中から自分を見詰めていたのだ。
目、目、目・・・。
目は嫌いだ。見て欲しくない。気付かないで欲しい。
何とか堪えて先ず一つ目の腕を掴んだ時だった。
頭に直接声が届いた。先の彼のテレパシーとは別の、無数の不協和音が。
―アア゛、アア゛アア、我が主、主、我等が主よ。今こそ力を、創られた命を、仮初の生を、貴方様へ返す時が来た。どうぞ受け取って。では左様なら左様なら左様なら左様なら。―
主・・・力を?・・・噫然うか。何を今更気付いているんだ。
自分がしたんじゃないか。此の次元を枯らせたのは。
丘を覆っていた紫水精を破壊し、其の大本を嵒で塞ぎ、黔い陰霖を降らせた。
此の染みは本来自分の力だ。其が自分が帰って来たから彼等と言う術が解けた丈。
途端に辺りを覆う闇が崩れて、一気に自分の中へ流れ込んだ。
噫、此の力、懐かしい闇が満ちて行く。
「・・・御疲れ。有難う。」
彼等は世界を破壊しようとした。其は世界から殺されてもおかしくない筈の罪だ。
世界に嫌われた自分が然うである様に。
自分達は世界に牙を剥き、爪を振るう。
彼等はそんなうんざりする程吐き気のする道を共に歩んでくれた。彼等は術なのだから感情も無いだろうし、自分が然うある様に抑創っているけれども、其でも感謝せずにはいられないだろう。
世界を壊してくれて有難う。こんな自分を主と呼んでくれて。
そして御免。そんなに尽くしてくれた御前達を自分は只消滅させてしまう。只の魔力として還元する事しか出来ない。利用する丈して壊れる迄使って、壊れたら捨てる。其丈。
全ての闇が自分に還り、視界が晴れる。散り散りになった蛇。
でも其の中に、只落ちる丈だった自分を受け止める手があった。
―有難う。本当に助かりました。―
届くテレパシーは迚も穏やかな正女の物。
セレを両手で包む様に受け止めたのは此又巨大な龍だった。
全長100m以上はあるだろうか。細長い長身の龍で、筒状の口に嫋やかな翡翠の瞳。嫩葉色の体躯の所々に水精が生え、尾は其が巨大化した物だ。背には頭からスカーフかマントの様に、金色で何らかの模様が描かれた淡黄の皮膚が変化した布状の物が広がっている。
脚は無いが手は四本あり、細長い手の肘から巨大で鋭い水精がまるで翼の様に生えていた。
此又、とんだ大物が現れたな・・・。
「セルバ=フォデランス。御前が此の次元の次元の主導者、彼の紫水精を護っていたのか。」
聖の龍。水精を護り、其の水精に聖なる加護を与える龍。上位の龍と言えよう。
―えぇ。ですが私の力及ばず、完全に力に屈服していました。せめて次元の主導者を護らねばと思い彼の穢れを全て取り込んで地下で眠りに就いていたのです。―
翡翠の瞳でじっとセレを見詰めるセルバ=フォデランス。其の瞳は迚も澄んでいて流水の様だ。
「其は・・・済まなかったな。御前ももう分かっているんだろう。彼の穢れは私のだ。私が黔日夢の次元を起こしたセレ・ハクリューだ。礼を言われる筋合いはない。」
地上に居る圷には聞かれない様に、もあるが意気揚々と言える事でもないのでつい小声で返してしまう。
セルバ=フォデランスは旻を寛と漂い乍ら僅かに首を傾けた。
―勿論、存じております、ですが感謝をするのは私の勝手でしょう?私は貴女に助けられました。其の事実は変わりません。貴女は私の彼の汚れた姿を目にしていたのに、私の声を聞き止めてくれた。貴女だから助けられたのです。でないと私は死んでいました。―
「いや、だから抑御前を殺し掛けたのも私で・・・はぁ、如何して龍族は斯うも皆優しんだ。皆一寸心が広過ぎるぞ。」
怒る所ではないけれども、何時ももやもやしてしまう。理解出来ないのは嫌だ。
―・・・大きな力には其丈責任が伴います。だから力は正しく使わなければいけません。では若し其の力が壊す力だったら?正しいも何も壊す事しか出来ないのです。正しいとか如何とか、壊す事が罪だとか騒ぐのは形ある者丈です。例えば各々の次元に住まう者だとかでしょう。でも私達はクリエーターが創った存在です。其故に世界に近しい存在です。世界に正しいも何もありません。ある様にしか存在し得ないのです。其丈の事です。―
何だか分かった様な分からない様な・・・。煙に巻かれた気分だ。
だけれど流石聖の龍と言うか、何だか其の言葉、少し救われる様な気がする。
―其に貴女を見れば分かります。貴女へ同族達の親愛の印が結ばれていますから。私達の良き朋友として、私も其に加えて欲しいのです。大丈夫。貴女の誠意は伝わっていますから。貴女は貴女の為可き事をすれば良いのです。―
「・・・有難うセルバ=フォデランス。一寸、楽になった気がする。」
―フフ、やっと笑ってくれましたね。噫御仲間を待たせてしまいました。では降りましょうか。―
セルバ=フォデランスは方向転換をして緩り圷の所へ降りて行く。
圷はと言うと如何すれば良いか分からず呆然としていた様だがモンターヴ達がセルバ=フォデランスは同族だと話してくれたのだろう。もう釼は収めていた。
「セレ!大丈夫ですか、御怪我はありませんか?」
「噫圷、大丈夫だ。万事解決だ。」
セルバ=フォデランスが地擦れ擦れ迄降りてくれたのでそっと其の手から地面へ着地する。
―どうも有り難う御座いました。御蔭で此の次元は助かりました。―
「え、あ、いえ僕、何も出来なかったので・・・。」
大仰に手を振って圷は後退る。流石に100m以上もある龍にたじろいだのだろう。
・・・あ、然う言えば、
辺り一面に散らばっている紫水精の内、形の綺麗な手頃なのを手に取る。其は驕陽に照らされて柔らかく輝いた。
「圷、然う言えば言っていたよな。何か手土産はないかと。此なんかは如何だ?聖の力が宿っているし、迚も良い加護が得られると思うんだが。」
何せセルバ=フォデランスの水精である。レア度も迚も高いだろう。良い値で売れ然うだ。
―噫其ならどうぞ差し上げます。幾らでも創れますから。―
「え、良いんですか?有難う御座います!まさかこんな良い物が手に入るなんて。本当に、本当に有難う御座います!」
セレから水精を受け取って圷は何度も頭を下げた。そしてほっとした様に笑って両手の上で少し水精を転がした。
・・・あ、良い事考えた。神質作戦はリスクが高いにしても其の水精に細工するのは容易じゃないか。
中に自分の彼の零星を一つ詰め込んで、何日か経ったら釼が飛び出す様な感じに。
別にもう帰って来ない魔力なんだから盛大に使って大爆発を起こしても良い。然うすれば鎮魂の卒塔婆位倒壊するだろう。若し倒壊に至らなくてもテロと取られれば勝手に内部から瓦解するかも・・・。何の道混乱に持ち込めれば襲撃のチャンスはある。
―御前の卑劣さ加減は本当に感服だ。やりたいならどうぞやれ破壊神。自分の頸を絞め兼ねない行為だがそんなハイリスクを呑めるのなら。―
―いやいや冗談だよ丗闇さん。まさか私が本気でそんな事すると思ったか?然う思われていたのなら心外だな。―
やってしまえば結局自分だとばれるだろう。何の道ハイリスクなのは分かっている。
―相変わらず素晴らしい記憶力と性格だな。前科しかないだろうが。―
―そんな風に褒められると益々付け上がりそうだ。忠告どうも。大丈夫だ。今回は見送るよ。―
く、丗闇の監視網が鋭い・・・。口を挟むのは全く構わないけれど。
無意識で此の方法を実行出来る位の卑劣さが未だ自分には欠けているらしい・・・。
でも丗闇の忠告も最もだ。自分が圷の力量を見誤っている可能性もある。
逆に利用されるのも癪だし、今回は当たり障りの無い様にして別れるとしよう。
命拾いしたな、フォード、圷。ククッ。
まさか自分に優しくしてくれている彼女がこんな黔い算段を立てている等露知らず、圷は大事そうに水精を時空の穴へ入れた。
「僕の目的、無事達成出来ました。とっても楽しかったです。まさかこんな簡単に次元を正せちゃったなんて、凄いですね、セレ。僕本当に尊敬します!」
「別に私は只一寸魔力と干渉力が高い変わり者だよ。圷だってコツさえ分かれば直ぐ出来る。仕事が落ち着いたら一寸試してみるのも良い経験になると思うぞ。」
本当に良い子だな、圷は。屹度笑顔の仮面を被った冷酷な奴も、口丈が綺麗な心の汚れた奴も会った事が無いんだろう。何方も併せ持ったのが目の前に居ると言うのに。
本当に良い奴は其を教えてくれる奴だろう。でも自分は全くそんな事が無いので如何しても彼を何とかして貶めてやろうかと考えてしまう。同じ神でも斯うも違うんだな。
「ははは、世界を一寸試すって、もう其処が違いますね。規模と言うか。寧ろセレは僕達の様な組織に所属する可きではないのかも知れませんね。自由だからこその強みと言うか、真の力が発揮出来ると言うか。えへへ、若し又何処かで御一緒出来たら又付いて行っても良いですか?其ともっと色んな旅の話、聞かせて下さい。」
「噫良いぞ。約束だ。」
其の約束は絶対果たされる事が無いだろうけれど。
圷の仕事が落ち着くのは自分が死んだ時だろう。其か鎮魂の卒塔婆が滅ぼされた時だ。
何時かは潰さないと。
明らかな自分の敵だ。仲間を危険に曝す可能性がある。自分の今を脅かす恐れがある。排除しなくては。
今は力を蓄えて、そして必ず。自分が終わらせてやる。
「はい!じゃあ皆さん御元気で!」
手を振り乍ら圷の姿は霞んで行き、終には消えてしまった。
「私も行くか。御前達は如何するんだ?」
―次元助カータ。本当ニ有難ウ!ダカラ残ル!―
モンターヴ達が又足に擦り寄って来る。瞿玉鳥もパタパタと羽搏く丈だ。
セルバ=フォデランスを見遣ると静かに頷いてくれた。
「然うか。分かった。じゃあな、又縁があったら会おう。」
―えぇ、頑張って下さい。私達は貴女の味方ですから。―
頼もしいセルバ=フォデランスの言葉を聞き乍ら、セレの姿も又次元から掻き消える。
紫に染め上げられた丘は陽光を受け、何時迄も瞬いていた。
・・・・・
解き放たれた紫水精
天も地も艶やかに染めるだろう
毒を呑んで己に飼い、華を咲かせて寄り添い遂げる
碧樹よ蒼の御手を伸ばせ、高麗なる世界に彩を
紫の丘は只己が映す空模様に、本当の姿の元、微睡む
御疲れ様です。勁くなった分遂にセレに大きな弱点が現れましたね。ノーリスクで然うステップ踏ませる物ですか。オッドアイだなんて一寸御洒落をした代償にもう陽を浴びたら腐る様になりました。御愁傷様です。
ビームも吐ける様になったし、と本当に付属品の多い主神公です。キャラ紹介文丈どんどん長くなりますね・・・。彼女の生態調査をすると論文一つ書けそうです。
因みに今回、前ちょこっと丈出て居た圷君が登場しましたね。此の子、付き合い長いので思い入れがあります。特徴が無いのが彼の特徴です。次元龍屋の原案(小学生の時の黒歴史)を見ると茶髪の釼を背負った少年、と丈ありました。村人Aみたいな説明文です。
其の為筆者はあるミスを犯してしまいました・・・。圷と言う名前、珍しいとは思うんですよ。もう名前や地名用の字なので。一発で読めた方は然ういないんじゃないかって。筆者も最近其の名字の方と初めて御会いしたのですが、アクツさんですか?と言うと滅茶苦茶吃驚されました。初めて一発で読んで貰えたんだそうです。いやぁ何か照れるなぁ。
いや、そんな事は良いんですけれど。ミス、然う、ミスがですね。実は彼の名前、最近設定を見返すと渓 圷(タニ アクツ)とあったんです。もう圷君のインパクトが強過ぎて苗字を忘れると言う・・・。まぁ別に日本人って訳じゃないんだから寧ろ此の儘で良いじゃんって事で放っときました。(何て筆者だ。)
ま、其は置いといて、又NG集がちょこちょこっと出来てしまったので適当に載せてしまいましょう!
「・・・・・。」
俺には何も出来ない。俺は松田。
此は一寸前の廃墟の次元での話ですね。セレとガルダが良い感じの空気の中霄の御話をしていた所です。セレが去った直後のガルダの心情だったのですが。
正しくは俺は待つ丈、だったのに唐突な自己紹介になりました。そして此を直す際、更に俺は松茸。と言う更に巫山戯た間違いを犯しました。
圷を押し倒し、手や足に絡み付いて行く。そして沢山の瞳がすっかり御煮えしまった圷に注がれた。
圷君ピンチって時のです。もうピンチを通り越してしまいました。圷君は染み達に美味しく料理されてしまいましたとさ。
さてと、余り長くなっていもいけませんし、今回は此の位で。次も・・・此の位の頻度で出来るかなぁ。(自信は無い)
ま、趣味なんでね。適当に、適当にやって行きたいです。
では又縁がありましたら御会いしましょう!




